(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の腰用サポータは、高い腹圧を得るために、バックベルト体14の引き締め力を強くする必要があり、このため、バックベルト体14を所要の太さと長さに形成して、その両端部を背骨あたりまで延ばせるようにしている。
しかし、このような背骨あたりまで延ばすようにしたバックベルト体14は、腹部を背骨側に押さえつけるだけではなく、腹部周りの様々な部分を締め付ける結果となり、強く締め付けた割には効きが悪いという問題があった。そして、このような強い引き締めは、体を動かす作業の邪魔になるし、また、気持ち悪さを招く場合もある。
本発明は、以上の事情に鑑み、身体を締付け過ぎることなく、効率よく腹圧を高めて、腰痛を緩和ないし予防できる腰用サポータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、本発明によれば、全体が帯状であって、装着者の腹部周りに巻き付けられ、その両端部どうしが着脱自在であるベルト体と、前記巻き付けられた装着状態において、前記ベルト体の腹部に対応した位置を基端部として両脇側に向けて引き延ばされる弾性部材であり、その先端部が前記ベルト体に着脱自在である一対の弾性ベルトと、を備え、前記基端部は、前記装着状態において、丹田に配置されるようになっており、前記一対の弾性ベルトの夫々は、前記装着状態において、前記基端部から近い脇側であって、かつ、斜め上方に、引き延ばされるようになって
おり、さらに、前記弾性ベルトは、前記装着状態において、前記装着者の脇部までしか引き延されないようになっている腰用サポータにより解決される。
【0007】
このため、ベルト体を腹部周りに巻き付けて固定してから、丹田に対応した位置を基端部として一対の弾性ベルトを背中側に向けて引き延し、丹田(換言すれば、臍の下の腹直筋)を背面側に押さえつけることができる。なお、このように腹側を基端部として引き延す弾性ベルトは、背面を基端部として腹側に向かって引き延す一般的なベルトに比べて、丹田を直接的に押さえて、腹圧をより高められると考えられる。
さらに、この腹部周りに巻き付けられた装着状態において、一対の弾性ベルトの夫々は、装着状態において、基端部から近い脇側であって、かつ、斜め上方に、引き延ばされるようになっている。そうすると、この弾性ベルトの引き延ばされる方向は、丹田の左右にある腹斜筋に概ね沿うようになる(なお、当該引き延される方向と腹斜筋とは完全に方向が一致する必要はなく、その方向性が概ね合っていればよい)。そして、腹斜筋は丹田(臍の下の腹直筋)を押さえる機能を発揮する腹筋であるため、丹田をより効率よく押さえることができる。従って、例えば弾性ベルトの幅を大きくしたり、背骨付近まで引き延したりして、身体を強く引き締めるようなことをしなくても、腹圧を相当に高めて腰痛を緩和ないし予防することができる。
【0008】
ま
た、前記弾性ベルトは、前記装着状態において、前記装着者の脇部までしか引き延されないようになっている
ので、弾性ベルトを比較的、楽に引き延してベルト体に止めることができる。即ち、本発明の丹田を押さえつけるための弾性ベルトは、腹側から背中側に向かって引き延すタイプであるため、背中側から腹側に向かって引き延す一般的なサポータと比べて、弾性ベルトを引き延す際に力を入れ難いという課題がある。しかし、脇部までであれば、比較的に弾性ベルトを引き延ばし易く、当該課題を解決することができる。
【0009】
また、好ましくは、前記基端部は、前記装着状態において、丹田の左右両端部に配置可能とされていることを特徴とする。
従って、当該左右の基端部どうしの間のベルト体の部分が丹田の幅に対応するため、丹田を有効に押さえつけることができる。即ち、弾性ベルトは腹斜筋に沿って斜めに配置されるため、例えば基端部を丹田の中央に配置してしまうと、丹田を斜めに押さえつける事態になって、効率よく押さえつけられないし、また、基端部を丹田よりも脇側にしてしまうと、今度は腹斜筋をしっかり押さえつけられなくなる。従って、基端部は丹田の左右両端部であることが好ましい。
【0010】
また、好ましくは、前記弾性ベルトは、前記基端部側において上下方向に複数本に分かれており、この複数本は前記先端部において一体とされていることを特徴とする。
従って、弾性ベルトが一本の幅の大きい帯状であると、引き延す角度の変化に伴って縒れるため、身体から大きく浮いた部分が生じて、腹斜筋を押さえる力が弱まってしまうが、弾性ベルトが複数本に分かれているので、多少角度が変わっても、身体から大きく浮くような縒れを防止して、腹斜筋を有効に押さえつけることができる。従って、人によって腹斜筋の角度が多少異なり、或いは、腕を腹斜筋に沿わせて動かすことが困難な場合、所定の範囲で弾性ベルトを引き延す角度に違いがあっても、それに対応したサポータを提供することができる。また、先端部は一体とされているため、引き延す際は一箇所を把持して引き延せばよい。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明によれば、身体を締付け過ぎることなく、効率よく腹圧を高めて、腰痛を緩和ないし予防できる腰用サポータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
また、以下の説明において、「内面」は腰用サポータを装着した状態における身体側の面を、「外面」はその反対側の面を意味する。
【0014】
本発明の実施形態に係る腰用サポータは、腰痛緩和ベルト、腰痛ベルトなどとも呼ばれ、腹圧を高めて脊柱の正しい位置を安定させるためのものである。
この腰用サポータは、身体を締め付け過ぎることなく、腰痛を緩和なし予防可能であることから、体を動かす者に好適に使用され、本実施形態の場合、女性の体型を考慮して形成されている。なお、本実施形態では例示として体を動かす女性を対象にしているが、本発明の腰用サポータは、寝たきりの病人、男性、等の使用を除外するものではない。
【0015】
この腰用サポータの構成を詳しく説明する前に、腹圧を高めるための基本的な考え方について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は上半身の側面図であり、破線で示すように通常の脊柱2は湾曲し、腹部3の背面8側にある脊柱2の部分2aは腹部3側に湾曲をしている。この腹部3に対応した脊柱の部分2aが腹部3側に湾曲し過ぎないように、腹圧を高めるのが本腰用サポータである。
腹圧を高めるためには、
図2(A)に示すように、腹筋の中でも最も深部にあり、コルセットのように体に付いている腹横筋4を押さえつけるのが効果的である。しかし、この腹横筋4は面積の大きな腹筋であって、これを押さえつけると装着者の動きを妨げ過ぎる恐れがあるし、また、この腹横筋4の外側には、
図2(B)に示すように腹直筋5と腹斜筋6があるため、
図2の腹横筋4を効果的に押し付けるのも困難である。
そこで、本発明では、腹横筋4の外側にある腹直筋5と腹斜筋6の方を利用して、腹圧を高めるようにした。即ち、腹直筋5の内、湾曲した脊柱2の部分2aの前方にある部分7(臍の少し下辺り)を、
図1の矢印Fのように、背中8側に押さえつけるようにした。本実施形態では、臍の少し下辺りの腹直筋5の部分7を「丹田」と位置づけている。
【0016】
次に、本実施形態の腰用サポータについて、
図3乃至
図6を用いて詳細に説明する。
これらの図の腰用サポータ10は、全体が一方向に長い帯状であり、腹部周りに巻き付けることができるベルト体12と、このベルト体12に接続された弾性部材からなる一対の弾性ベルト30,30とを有している。なお、
図3及び
図5に示すように、正面視及び背面視において、腰用サポータ10は後述する雄部材21を除いて左右対称である。
ベルト体12は、長手方向に伸縮可能であると共に弾性力を発揮する弾性部材(本実施形態の場合はパワーネット)が基材とされている。そして、ベルト体12は、長手方向(
図3の左右方向)に引き延すことで、丹田のある腹部周りに巻くことができる長さLを有し、
図6に示すように、その両端部14,15どうしが丹田の位置で着脱自在とされている。
【0017】
ベルト体12の両端部14,15は、腹部周りに巻いた装着状態において、端部14と端部15を重ねて止着できるように、複数の突起を有する雄部材21と、繊維質材から形成された雌部材22とからなる面ファスナーが設けられている。
図3及び
図5に示すように、雄部材21は、ベルト体12の端部14の内面に接続された舌片状であって、その一部21aがベルト体12の縁から突出して、端部14と端部15とを剥がす際の摘みになっている。雌部材22は、端部14とは反対側の端部15の外面に面状に設けられている。このベルト本体12の面ファスナーが接続された部分(端部14,15、等)は伸縮性を発揮しない部分である。
【0018】
図のベルト体12の場合、両端部14,15がそれぞれ上下2本に分かれており、ウエスト側に巻かれるベルト上部12−1に比べて、ヒップ側に巻かれるベルト下部12−2の方が長くなっている。これにより、ウエストとヒップとの寸法差が大きい女性用であっても、体にフィットして巻き付けることができる。
ベルト上部12?1の外面に設けられた雌部材22は、端部15だけではなく端部14にも配設され、夫々、長手方向に沿って中央に向かって延伸し、その中央寄りの部分23,28が、
図6に示すように、装着状態において脇部SDもしくは脇部SDより少し背面側に配置されるようになっている。これら中央寄りの部分23,28は、ベルト体12の両端部14,15どうしを止着するものではなく、後述するように、弾性ベルト30を止着するためのものである。
【0019】
図3に示すように、ベルト下部12−2の外面に設けられた雌部材22も、端部15だけではなく端部14にも配設されている。この両端部14,15の雌部材22は第1の雌部材25であり、そこから間隔を空けて、中央寄りに第2の雌部材26が配置されている。第2の雌部材26は、引き延ばされていない弾性ベルト30の端部30aを着脱可能に止着するためのものである。
ベルト上部12−1にある中央寄りの雌部材の部分23,28と、ベルト下部12−2にある第2の雌部材26とは一体的に形成されており、雌部材の部分23,28は、第2の雌部材26に比べて中央寄りに位置している。
なお、ベルト体12の雌部材22,23,25,26,28が配置されていない部分は、多数の小孔が開いたパワーネットが露出しており、これにより蒸れを防止している。
【0020】
ベルト体12の長手方向の中央部29は、
図6(B)に示すように、装着状態において、背中の幅方向の中央部に配置される部分である。中央部29には、ベルト体12の中で最も剛性の高い棒状のボーン17が、上下方向に沿って、脊柱の左右に配置されるように形成されている。これにより、脊柱が左右方向に歪まないようにサポートできる。なお、ボーン17は、左右方向には撓まないが、上下方向には撓むことが可能であり、背中の湾曲に沿って配置できる。
【0021】
一対の弾性ベルト30は、展開した
図3の状態において、ベルト体12と接続された接続部33,33から、それぞれ中央部29に向かって延伸している。
この接続部33,33は、腹部周りに巻き付けられた
図6の装着状態において、丹田7(
図2参照)に対応した位置にあり、この接続部33,33を基端部として、そこから近い両脇側に向けて引き延ばされるようになっている。
好ましくは、2箇所の接続部(基端部)33,33は、装着状態において、
図1の丹田7の左右両端部7a,7bにそれぞれ配置されるのがよく、これにより、
図6の装着時における端部14と端部15とを重ねた際の長さL2を
図1の丹田7の幅Wに合わせることができる。本実施形態では、ベルト体12を腹部周りに巻いて、一方の端部14の雄部材21を、他方の端部15の接続部33の近くに止着した際、接続部33,33どうしの間が
図1の丹田7の幅寸法Wに対応するようになっている。
【0022】
なお、弾性ベルト30の弾性力はベルト体12の弾性力に比べて強く、例えば弾性ゴム等の弾性部材を利用できる。
また、弾性ベルト30の先端部30aには面ファスナーの雄部材が設けられており、上述のように、引き延ばされていない
図3の状態では、第2の雌部材26に着脱可能とされている。
【0023】
このような一対の弾性ベルト30,30は、
図6に示すように、装着状態において、両脇側であって、かつ、斜め上方に(概ね
図3の矢印F1の方向に)、それぞれ、弾性力に抗して引き延ばされるようになっており、これにより、
図2(B)の丹田7の左右にある腹斜筋6に概ね沿って配置されることになる。
図3の弾性ベルト30はベルト下部12−2に縫合され、これにより斜め上方に引き延して、その端部30aをベルト上部12−1に配設された雌部材の部分23,28に止着可能とされている。なお、本発明において、弾性ベルト30の端部30aが止着される場所は、ベルト上部12−1に限られるものではなく、腕を縮めるようにして上にあげる動作が困難な使用者については、例えばベルト上部12−1とベルト下部12−2との中間領域ARであっても構わない。
【0024】
そして、このように使用者によって弾性ベルト30を引き延ばす方向が異なることから、当該引き延す方向が変わったとしても、弾性ベルト30が大きく縒れて身体から浮いてしまうことを防止するため、
図3及び
図4に示すように、弾性ベルト30は、接続部(基端部)33側において上下方向に複数本に分かれている。図の場合、弾性ベルト30は2本に分かれて、上側弾性ベルト36及び下側弾性ベルト37を有し、上側弾性ベルト36と下側弾性ベルト37とは先端部30aにおいて一体となっている。また、本実施形態の弾性ベルト30は、一本のベルトを先端部30aで角度を付けて折り返すことで、接続部(基端部)33側で2本に分かれるようにしている。なお、弾性ベルト30の当該分かれた本数は2本に限られず、3本以上であっても構わない。
【0025】
図の上側弾性ベルト36と下側弾性ベルト37は同様の幅W1であるが、幅を変えても構わない。
上側弾性ベルト36はベルト下部12−2の長手方向に略沿って延伸している。これに対し、下側弾性ベルト37はベルト上部12−1に向かって延伸するように、ベルト下部12−2の長手方向に対して角度θ(概ね15〜40度)を付けて延伸している。なお、この上側弾性ベルト36と下側弾性ベルト37の角度については、本実施形態の変形例である
図10に示すように、ベルト下部12−2の長手方向に対してより大きな角度θ1(概ね30〜45度)を付けて、当初から先端部30aが、ベルト上部12−1の面ファスナーの雌部材22の内、中央寄りの部分23,28を向いていてもよい。
【0026】
そして、
図3の弾性ベルト30は、
図6に示すように、装着状態において、装着者の脇部SDまでしか引き延されない弾性力及び長さとされている。これにより、腹側から背面側であって、かつ、斜め上方に引き延す弾性ベルト30であって、装着者にとって引き延す際に力を入れ難くても、弾性ベルト30を比較的、楽に引き延してベルト体12に止着することができる。また、弾性ベルト30を背中まで延ばして止着すると、腹部の略全周を締付けて、腹部以外の余計な部位まで締め付ける結果になってしまうが、そのようなこともなく、効率的に腹圧を高めることができる。
【0027】
次に、上述した腰用ベルト10の使用方法について、主に
図7〜
図9を用いて説明する。
腰用ベルト10を使用する際は、先ず、ベルト上部12−1の両端部14,15を把持し、そして、
図7に示すように、弾性ベルト30が見える面を外側にして、ボーン17,17が脊柱BNの左右両脇に配置されるようにし、ベルト体12の長手方向の中央部29を背中にあてがう。
次いで、ベルト上部12−1を引き延ばし、
図8のように、ウエストABに巻きつけて、端部14を端部15に止着して、ベルト体12が落ちないようにする。その後、ベルト下部12−2を引き延ばし、その端部14,15を臍の直下(丹田)に配置するように巻きつけ、端部14に設けられた雄部材21を端部15の雌部材22の上に止着する。そうすると、丹田の領域には、端部14,15どうしが重なって伸縮性の略無い部分が配置される。この際、弾性ベルト30の左側の基端部(接続部)33−1が丹田の左側の端部に、右側の基端部(接続部)33−2が丹田の右側の端部に配置されるのが好ましい。
次いで、
図9に示すように、左右の弾性ベルト30,30の端部30a,30aを把持して、これを近い脇側であって、斜め上方に、弾性力に抗して引き延ばして、
図6に示すように、端部30a,30aをベルト上部12−1に設けられた雌部材23,28に止着する。
【0028】
本実施形態の腰用ベルト10は以上のように構成され、このため、腹部周り全体をきつく締め付けることなく、丹田(腹直筋)を押さえる腹斜筋の機能を利用して、丹田をより効率よく押さえることができる。
試験によれば、本実施形態の腰用ベルト10を用いた場合の衣服圧は以下の表1の通りであった。
【表1】
【0029】
また、比較のため、装着状態におけるベルト体の背面に弾性ベルトを縫合して、背面側から腹部側に弾性ベルトを引き延ばし、そして、その両端部を丹田の中央部に止着させる腰用ベルト(以下、「試験用ベルト」という)を用いた試験も行った。その結果の衣服圧は以下の表2の通りであった。
【表2】
このことから、本実施形態の腰用ベルト10は、試験用ベルトに比べて、丹田を押す押圧力がいずれの位置でも強く、特に、丹田の左右両端部における押圧力が顕著に強かった。
しかも、本実施形態の腰用ベルト10は、背骨付近まで巻かれていないので、余計なところを締め付け過ぎることもない。
【0030】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形例を採用できる。
例えば、
図3では、両端部14,15どうしを着脱可能に接続するための部材は面ファスナーであったが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、スナップボタンなどであってもよい。
また、
図6に示すように、端部14を端部15の外面に止着しているが、端部15を端部14の外面に止着する構成にしてもよい。
また、
図3の弾性ベルト30は接続部33側で2本に分かれているが、本発明これに限られず、一本のベルトであっても構わない。