【実施例】
【0019】
図面に基づきこの発明の建築用金物40の実施例について説明する。
【0020】
1.製造用基材50
【0021】
(1) 厚さt0(例えば、3.2mm)の鋼板を打ち抜き、製造用基材50を構成する。製造基材50は、基板予定部1A、補強リブ予定部13A、13A及び差込突起予定部20Aとからなる(
図3)。短辺5、6(長さL2。例えば、45mm)と長辺3、4(長さL1。例えば、240mm)からなる長方形から基板予定部1Aを構成し、基板予定部1Aの一短辺5に差込突起予定部20Aを連設して、基板予定部1Aの両長辺3、4で、一短辺5側の端から補強リブ予定部13A、13Aを連設する。
基板予定部1Aと補強リブ予定部13A、13Aの境界(すなわち、長辺3、4の一短辺5側)は第1折り曲げ線51、51、基板予定部1Aと差込突起予定部20Aとの境界(すなわち、一短辺5)は第2折り曲げ線52を形成する(
図3)。
【0022】
(2) 補強リブ予定部13Aは、補強リブ予定部13Aの長辺方向の長さL3は、基板予定部1Aの長辺方向の長さL1に対して、「2分の1」以上形成する(例えばL3=140mmで形成する)。
また、基板予定部1Aには、一短辺5側で、長さ方向(L1方向)で中央部に第1補強凹凸部7を形成する。第1補強凹凸部7は裏面2a側から表面2側に向けて、短辺5、6側を丸めた縦長長方形状に押し上げて形成する。従って、裏面2a側では、第1補強凹凸部7の形状が凹に形成される。
また、基板予定部1Aの長さ方向(L1方向)で中央部から他短辺6の間にビス用の透孔11、11を設ける。一部の透孔11は、第2補強凹凸部9の中に形成するが、その透孔11の周りには、凹凸部を形成しない。
また、基板予定部1Aの長辺3、4で、補強リブ予定部13A、13Aの他短辺6側の縁(第1折り曲げ線51の付近)に、折り曲げ用の半円形の切り欠き53、53を形成する。
また、基板予定部1Aの長さ方向(L1方向)で、透孔11、11を形成しない部分に第2補強凹凸部9を形成する。第2補強凹凸部9は、第1補強凹凸部7と同様に、裏面2a側から表面側に向けて突出させ、裏面2a側は凹に形成される。
第2補強凹凸部9と補強リブ予定部13A、13Aとは、長さ方向(L1方向)で若干重なっている。言い換えれば、第2補強凹凸部9一短辺5側の端10は、補強リブ予定部13Aの他短辺6側の縁14bよりも、他短辺6側に位置する。
【0023】
(3) 差込突起予定部20Aは、基板予定部1Aの一短辺5の長さと同じ幅L2の突起基部21と、突起基部21の幅方向で(基板予定部1Aの一短辺5方向)、突起基部21の両端部に突起本体部23、23を連設して構成する。
【0024】
3.接合金物40の製造
【0025】
(1) 第1折り曲げ線51を谷に折り曲げ、基板予定部1Aに対して、補強リブ予定部13A、13Aを略直角に立ち上げる。
(2) 続いて、差込突起予定部20Aで、突起本体部23の基端部24(突起基部と連設した側)を「4分の1」円に屈曲して、突起本体部23の先端部25を直線状のままとして、かつ基板予定部
1Aの裏面2a側に向けて突出した形状となるように形成する。この状態で、突起本体部23の先端部24は、基板予定部1A(突起基部21)と略直角となり、突起本体部23の先端は、長さL4だけ、基板予定部1Aの裏面2aより突出する。実施例では、長さL4=2mm程度で形成するが、L4=1〜5mm程度とする。要は、基板予定部1Aの厚さ(製造用基材50の厚さ)t0程で形成すればよい。
(3) 続いて、別途の鋼板を屈曲して、断面U字状に形成して、内側の間隔L7の板体32、32の上端が半円状に連設された構造の支持定着部30とする。支持定着部30の板体32、32を、第1補強凹凸部9を挟んで、基板予定部1Aの表面2に固定する。支持定着部30の板体32、32の内側の幅L7は、使用するアンカーボルトの太さよりも大きく、外側の幅L8は螺合するナット47の最大径よりも短く設定される。
(4) 以上のようにして、接合金物40を構成し、基板予定部1Aが基板1を、補強リブ予定部13Aが補強リブ13を、差込突起予定部20Aが差込突起20を、それぞれ構成する(
図1、
図2)。
【0026】
4.接合金物40の使用
【0027】
(1) この接合金物40は、いわゆるホールダウン金物と同様に使用する。
すなわち、例えば、コンクリート基礎上43に土台(第1接合木材)44を配置し、土台44の上面に柱(第2接合木材)45の下面を当接して接合する構造に適用する(
図4)。例えば、コンクリート基礎43に埋設したアンカーボルト46の上部が土台44を貫通して、柱45の一側面45aに沿って配置されている。
この構造で、柱45の一側面45aに、差込突起20を下にして基板1の裏面2aを密着当接し、かつアンカーボルト46を逆略U字状の支持定着部30の下端(一短辺5側の縁31)から挿通部34を通って、上端(他短辺6側の縁)31aから上方に突出させる。基板1の透孔11、11から柱45側にビス48、48を打ち込み、基板1と柱45とを固定すれば、差込突起20の突起本体部23、23の先端部25、25が、柱45の一側面45aと略直角に柱45の一側面45a内に押し込まれ埋設される(
図5)。
また、アンカーボルトの上端部46aのネジ部から必要ならばワッシャーを通してナット47を螺合して、ナット47を締め付けすれば、支持定着部30の上端31aにナット47が押し込まれ、アンカーボルト46の上端部46aが接合金物40の支持定着部30の上端31aに固定される(
図5)。
【0028】
(2) このようにして、構築された土台44、柱45の接合構造では、土台44から柱45が引き抜かれる方向の外力に抵抗して、土台44、柱45の接合構造を強固に保つ。
さらに大きな引き抜き力が柱45に作用した場合、アンカーボルト46は強固にコンクリート基礎43に固定されているので、柱45の一側面45aに対して、基板1には、他短辺6から一短辺(連設端縁)5に向かう方向に引張力が作用して、柱45に対して、基板1を土台側に引っ張る。したがって、基板1の中央部が若干離れるように若干凸と変形して、接合金物40を柱45に対して下方に押し下げる方向に、外力が作用する。この場合、差込突起20の突起本体部23、23が、柱45の一側面45aにめり込んでいるので、接合金物40の下方へのズレを防止して、接合金物40の大きな変形、破壊を防止できる。実験によれば、40kN程度の引張力に対しても充分に抵抗できた。
これに対して差込突起20が無い場合には、このような大きな引き抜き力の作用により、接合金物40は柱45の側面45aに沿って、アンカーボルト46とともに土台44側に移動し、かつ中央部が大きく凸となるように変形して、基板1を柱45に固定したビス類の位置で、柱45に割裂破壊するが、この接合金物40では、柱45に割裂破壊を未然に防止して、結果として柱45と土台44の接合部で耐力を増強できた。
【0029】
(3) また、前記例では、土台・柱の接合構造に適用したが、いわゆるホールダウン金物を適用する構造、その他、羽子板ボルトを使用する接合構造など、接合する部材を引き離す方向に外力(引張力)が作用する他の接合構造にも適用できる。
【0030】
5.他の実施例
【0031】
(1) 前記実施例は、引張強度40kN程度に対応したものであるが、引張強度25kN程度に対応して、同じ基板の厚さt0(=3.2mm)で、長さL2=140mm、幅L2=40mmに形成して、同様に接合金物40を構成することもできる(
図6〜
図8)。
【0032】
(2) また、前記実施例において、厚さt0の製造用基材50を屈曲して接合金物40を製造するので、差込突起20は基板1の厚さt0と同じに形成され、かつ基板1と差込突起20の一体性が得られるが、差込突起20を別部材として、基板1に溶接などの方法で固定することもできる(図示していない)。
【0033】
(3) また、前記実施例において、差込突起20の突起本体部23を幅L5で2つ形成したので、引張力が作用した際に、柱45にめり込みやすいが、L6の間隙26を無くして、幅(L5+L6+L5)の1つの突起本体部23とすることもできる(図示していない)。また、この場合、突起基部21に比して、突起本体部23を幅狭に形成することもできる(
図9参照)。
【0034】
(4) また、前記実施例において、突起本体部23の先端部は、基体1の裏面2aに対して直角に形成して、柱45側に先端を突出させたので、短辺6から短辺5側に向かう方向と、突起本体部23の先端部が先端に向かう方向とは、約90°となっている。この角度は90°となるので、引張力作用時の差込突起20の柱45へのめり込み(突っ張り)を有効に作用させることあができるので望ましいが、この角度は10°〜60°程度で形成することもできる(
図9)。この場合には、突起本体部23の自由端の材厚部分の面と、柱45の側面45a側のエッジ27により、突起本体部23は柱45へめり込むことになる。
【0035】
(5) また、前記実施例において、差込突起20は円弧状の屈曲部を形成して、一旦、基板1の表面2から外方に離れるように形成したので、屈曲部分がバネのように作用して、差込突起20が負担する引張力を増強できるが、屈曲部分を省略することもできる。例えば、突起基部21を基板1に連続した直線状に形成し、突起先端部を柱45の側面45a側に向けて傾斜して屈曲する(
図10)。この場合にも、突起本体部23の自由端の材厚部分の面と、柱45の側面45a側のエッジ27により、突起本体部23は柱45へめり込むことになる。したがって、この場合にも、短辺6から短辺5側に向かう方向と、突起本体部23の先端部が先端に向かう方向と成す角は10〜60°とすることが望ましい。
【0036】
(6) 前記実施例において、支持定着部30を逆U字状の構造としたが、接合構造によって、適宜変更して使用することもできる(図示していない)。