特許第6296823号(P6296823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296823
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】建築用接合金物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20180312BHJP
   E04B 1/26 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   E04B1/58 507L
   E04B1/26 E
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-34738(P2014-34738)
(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2015-161060(P2015-161060A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133135
【氏名又は名称】株式会社タナカ
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(72)【発明者】
【氏名】久保田 和也
(72)【発明者】
【氏名】菊田 元樹
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−192557(JP,A)
【文献】 実開昭52−117811(JP,U)
【文献】 特開2006−322275(JP,A)
【文献】 実公昭51−036679(JP,Y2)
【文献】 特開2012−007328(JP,A)
【文献】 実開昭60−124450(JP,U)
【文献】 日経ホームビルダー,日経BP社,2010年 7月22日,2010年8月号,p.94
【文献】 栗山百造総合カタログ,株式会社栗山百造,2009年12月,Vol.1.1001,p.19
【文献】 品質性能試験報告書,財団法人建材試験センター,2007年11月 8日,発行番号第07A0611号
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/00−1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接合木材の側面に第2接合木材の端面を当接して、両木材を接合する際に使用する接合金物であって、以下のように構成することを特徴とする建築用接合金物。
(1) 前記接合金物は、前記第2接合木材の側面と密着固定される基板に、前記第1接合木材側から第2接合木材側に至る棒状接合部材の端縁部を固定する支持定着部を設ける。
(2) 前記基板で、前記第2接合木材の側面に密着当接する面を裏面とし、該裏面の反対側を表面とする。
(3) 前記基板の第1接合木材側の縁を連設縁として、該連設縁に差込突起を一体に突設する。
(4) 前記差込突起は、前記連設縁より前記基板の反対側に突出して、かつ先端部が前記基板の裏面よりも前記第2接合木材側に突出するように形成する。
(5) 前記差込突起は、前記基板に連設する突起基部と、裏面側に突出する突起本体部とから形成する。
(6) 前記突起基部が一旦基板の表面側から前記基板から離れるように屈曲し、前記突起本体部が前記基板の裏面よりも前記第2接合木材側に突出するように形成する。
【請求項2】
第1接合木材と第2接合木材とを接合する際に、前記第2接合木材に固定して使用する接合金物であって、以下のように構成することを特徴とする建築用接合金物。
(1) 前記接合金物は、前記第2接合木材の側面と密着固定される基板に、前記第1接合木材に固定された他の接合金物を固定する支持定着部を設ける。
(2) 前記基板で、前記第2接合木材の側面に密着当接する面を裏面とし、該裏面の反対側を表面とする。
(3) 前記基板で、前記第2接合木材に引張力が作用する側の縁を連設縁として、該連設縁に差込突起を一体に連設する。
(4) 前記差込突起は、前記連設縁より前記基板の反対側に突出して、かつ先端部が前記基板の裏面よりも前記第2接合木材側に突出するように形成する。
(5) 前記差込突起は、前記基板に連設する突起基部と、裏面側に突出する突起本体部とから形成する。
(6) 前記突起基部が一旦基板の表面側から前記基板から離れるように屈曲し、前記突起本体部が前記基板の裏面よりも前記第2接合木材側に突出するように形成する。
【請求項3】
以下のように構成することを特徴とする請求項1又は2記載の建築用接合金物。
(1) 前記突起本体部は、前記基板の裏面と略直角に形成し、かつ前記基板の裏面よりも前記第2接合木材側に突出するように形成する。
【請求項4】
以下のように構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の建築用接合金物。
(1) 支持定着部を、棒状接合部材の外径断面より大きな間隔で並列した板材の上端部を連結して、一体の略逆U字状に構成して形成する。
(2) 支持定着部を基板の長さ方向に対応させて配置し、前記板材の自由端を、前記基板の表面に固定する。
(3) 差込突起は、突起本体部を、接合縁方向で所定間隔を空けて複数個形成し、前記接合縁と直角な方向で、前記板材の位置に前記突起本体部が位置するように配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建造物で、土台と柱、柱と梁など部材を接合する際に使用する建築用接合金物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土台に柱を接合する際に、土台との結合を強めるために、土台を載せた基礎コンクリートに埋設したアンカーボルトの上端部を直接に柱に接合する建築用金物(いゆわるホールダウンアンカー)が使われていた。この場合、建築用金物には、柱に固定するための基板に透孔を空けて、基板の裏面が柱に当接してビスやボルトで基板を柱に固定していた。この場合、基板の表面にU字状の定着部を固定して、このU字状の定着部に、下方からアンカーボルトを通して、定着部を貫通したアンカーボルトの上端部(ねじ切りしてある)に、ナットを螺合して、アンカーボルトの上端部を定着部の上端に定着していた(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−85008号公報
【特許文献2】特開2012−7328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の場合、柱と土台(基礎コンクリート)の間に引張加重が作用する場合、柱を土台から引き抜く方向に引張力が建築金名物に作用していた。したがって、建築用金物の基板は柱側面に沿って、押し下げる方向に外力が作用して、基板の下端部が柱から離れるように凸に変形して、かつ下端が下方に押し下げられるように作用した。この場合、基板が曲がらないように、基板の変形を押さえるためには、基板の面積を大きくして、基板の厚さを厚くする必要があった(例えば、縦260〜540mm程度×横40mm程度×厚さ6mm程度)。この発明は、基板の大きさや厚さをできるだけ小さくして、引張力が作用する際に、基板を固定する柱が割れることを防止して、効率良い建築用金物を構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基板の連設縁に、連設縁より基板の反対側に突出して、かつ先端部が基板の裏面よりも第2接合木材側に突出するように形成する差込突起を設けたので前記課題を解決した。
【0006】
すなわち、第1の発明は、第1接合木材の側面に第2接合木材の端面を当接して、両木材を接合する際に使用する接合金物であって、以下のように構成することを特徴とする建築用接合金物である。
(1) 前記接合金物は、前記第2接合木材の側面と密着固定される基板に、前記第1接合木材側から第2接合木材側に至る棒状接合部材の端縁部を固定する支持定着部を設ける。
(2) 前記基板で、前記第2接合木材の側面に密着当接する面を裏面とし、該裏面の反対側を表面とする。
(3) 前記基板の第1接合木材側の縁を連設縁として、該連設縁に差込突起を一体に突設する。
(4) 前記差込突起は、前記連設縁より前記基板の反対側に突出して、かつ先端部が前記基板の裏面よりも前記第2接合木材側に突出するように形成する。
(5) 前記差込突起は、前記基板に連設する突起基部と、裏面側に突出する突起本体部とから形成する。
(6) 前記突起基部が一旦基板の表面側から前記基板から離れるように屈曲し、前記突起本体部が前記基板の裏面よりも前記第2接合木材側に突出するように形成する。
【0007】
また、第2の発明は、第1接合木材と第2接合木材とを接合する際に、前記第2接合木材に固定して使用する接合金物であって、以下のように構成することを特徴とする建築用接合金物であ。
(1) 前記接合金物は、前記第2接合木材の側面と密着固定される基板に、前記第1接合木材に固定された他の接合金物を固定する支持定着部を設ける。
(2) 前記基板で、前記第2接合木材の側面に密着当接する面を裏面とし、該裏面の反対側を表面とする。
(3) 前記基板で、前記第2接合木材に引張力が作用する側の縁を連設縁として、該連設縁に差込突起を一体に連設する。
(4) 前記差込突起は、前記連設縁より前記基板の反対側に突出して、かつ先端部が前記基板の裏面よりも前記第2接合木材側に突出するように形成する。
(5) 前記差込突起は、前記基板に連設する突起基部と、裏面側に突出する突起本体部とから形成する。
(6) 前記突起基部が一旦基板の表面側から前記基板から離れるように屈曲し、前記突起本体部が前記基板の裏面よりも前記第2接合木材側に突出するように形成する。
【0009】
また、前記両発明において、以下のように構成することを特徴とする請求項1又は2記載の建築用接合金物である。
(1) 前記突起本体部は、前記基板の裏面と略直角に形成し、かつ前記基板の裏面よりも前記第2接合木材側に突出するように形成する。
【0011】
さらに、前記両発明において、以下のように構成したことを特徴とする建築用接合金物である。
(1) 支持定着部を、棒状接合部材の外径断面より大きな間隔で並列した板材の上端部を連結して、一体の略逆U字状に構成して形成する。
(2) 支持定着部を基板の長さ方向に対応させて配置し、前記板材の自由端を、前記基板の表面に固定する。
(3) 差込突起は、突起本体部を、接合縁方向で所定間隔を空けて複数個形成し、前記接合縁と直角な方向で、前記板材の位置に前記突起本体部が位置するように配置する。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、第2接合木材に密着固定する基板の連設縁に、連設縁より基板の反対側に突出して、かつ先端部が基板の裏面よりも第2接合木材側に突出するように形成する差込突起を設けたので、第2接合木材に、第1接合木材側に向けて引張力が作用した場合であっても、差込突起が第接合木材の表面で突っ張り、引張力を負担することができる。さらに、基板を第2接合木材に固定するビス類やボルト類により第2接合木材に割れが発生することを遅らせることができる。総じて、第1接合木材と第2接合木材の接合部の接合強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、この発明の接合金物の実施例で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は左側面図を表す。
図2図2は、同じく接合金物の実施例で、(a)は背面図、(b)はA−A断面図を表す。
図3図3は、接合金物の製造用基材で、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は右側面図を表す。
図4図4は、接合金物を使用した土台と柱の接合構造の斜視図を表す。
図5図5は、同じく接合金物を使用した土台と柱の接合構造で、接合金物をB−B断面図で表現した図を表す。
図6図6は、この発明の接合金物の他の実施例で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は左側面図を表す。
図7図7は、同じくこの接合金物の実施例で、(a)は底面図、(b)はC−C断面図、(c)はD−D断面図を表す。
図8図8は、同じくこの接合金物を使用した土台と柱の接合構造の斜視図を表す。
図9図9は、この発明の接合金物の他の実施例で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図を表す。
図10図10は、この発明の接合金物の他の実施例で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1) 長辺3、4の長さL1、短辺5、6の長さ(幅)L2、厚さt0で、基板1を構成する。基板1の一短辺5、他短辺6において、一短辺5に差込突起20を一体に連設して、他短辺6の両端の角を丸めてある。また、基板1の中央部から他短辺6側にかけて、ビス止め用の透孔11、11を穿設する。ここで、短辺5が連設縁に対応する。
また、基板1の一短辺5側に、基板1の裏面2aに凹を形成して基板1の表面2側に凸となる第1補強凹凸部7を形成する。第1補強凹凸部7は短辺5、6側を丸めた縦長長方形状に押し上げて形成する。また、基板1の他短辺6側で透孔11、11を形成しない部分に、第2補強凹凸部9を形成する。第2補強凹凸部9も、第1補強凹凸部7と同様に、裏面2a側に凹を形成して、表面2側に凸とるように形成される。
【0015】
(2) 基板1の長辺3、4の縁で、一短辺5から、長辺3、4の中央部を越えた位置まで、補強リブ13、13をそれぞれ連設する。補強リブ13は、基板1の表面2に対して略直角に形成する。
また、第2補強凹凸部9と補強リブ13とは、長さ方向(L1方向)で若干重なっている。言い換えれば、補強リブ13の他短辺6側の縁(中央部)14aは、第1補強凹凸部9の一短辺5側の縁10より、他短辺6側に位置する。
【0016】
(3) 基板1の一短辺5に、一短辺5に連続して延長するように、差込突起20の突起基部21の基端22側を連設する。したがって、突起基部21は、一短辺5の長さ(幅)L2と略同一の幅L5(≒L2)で形成される。
突起基部21の先端22a側に、幅L6の2つの突起本体部23、23を、所定距離L6を離して(幅L6の間隙)連設する。両突起本体部23、23の外側は突起基部21と面一に連続し、すなわち基板1の長辺3、4に沿って形成される。また、差込突起20(突起基部21、突起本体部23)厚さも基板1と同じ厚さt0と略同一に形成する。
突起本体部23、23は基端部24が突起基部21と連続して、若干基板1の表面2から基板1より離れるように屈曲して、さらに「4分の1」円状に下方に向けて屈曲して、先端部25は直線状に、基板1の裏面2aと略直角に、かつ基板1の裏面2aよりL4だけ突出する。L4は、基板1の厚さ(≒差込突起20の厚さ)t0程度で形成される。
【0017】
(4) 基板1と略同一の厚さ(t0)の鋼板を屈曲して、半円状の屈曲部33から直線状の板体32、32が連続した略U字状の支持定着部30を形成する。支持定着部30の板体32、32の内側の間隔L7は、使用するアンカーボルト(棒状接合部材)を通過できる挿通部34を形成し、その大きさはアンカーボルトの外径より大きく形成し、板体32、32の外側の間隔L8は、そのアンカーボルトに螺合するナットが載せられるように形成される(図1(c))。
このように形成した支持定着部30の板体32、32先端を、基板1の表面2に、第1補強凹凸部7を挟むように固定する。支持定着部30の一短辺5側の縁31は、一短辺3より若干離して配置され、かつ、支持定着部30の他短辺6側の縁31aは補強リブ13の中央部付近に位置する。
また、一短辺5方向で、支持定着部30の板体32、32の材厚部分は、差込突起20の突起本体部23、23の幅L5、L5内に納まるように配置される(図1(a)(b))。
【0018】
(5)以上のようにして、接合金物40を構成する(図1図2)。
【実施例】
【0019】
図面に基づきこの発明の建築用金物40の実施例について説明する。
【0020】
1.製造用基材50
【0021】
(1) 厚さt0(例えば、3.2mm)の鋼板を打ち抜き、製造用基材50を構成する。製造基材50は、基板予定部1A、補強リブ予定部13A、13A及び差込突起予定部20Aとからなる(図3)。短辺5、6(長さL2。例えば、45mm)と長辺3、4(長さL1。例えば、240mm)からなる長方形から基板予定部1Aを構成し、基板予定部1Aの一短辺5に差込突起予定部20Aを連設して、基板予定部1Aの両長辺3、4で、一短辺5側の端から補強リブ予定部13A、13Aを連設する。
基板予定部1Aと補強リブ予定部13A、13Aの境界(すなわち、長辺3、4の一短辺5側)は第1折り曲げ線51、51、基板予定部1Aと差込突起予定部20Aとの境界(すなわち、一短辺5)は第2折り曲げ線52を形成する(図3)。
【0022】
(2) 補強リブ予定部13Aは、補強リブ予定部13Aの長辺方向の長さL3は、基板予定部1Aの長辺方向の長さL1に対して、「2分の1」以上形成する(例えばL3=140mmで形成する)。
また、基板予定部1Aには、一短辺5側で、長さ方向(L1方向)で中央部に第1補強凹凸部7を形成する。第1補強凹凸部7は裏面2a側から表面2側に向けて、短辺5、6側を丸めた縦長長方形状に押し上げて形成する。従って、裏面2a側では、第1補強凹凸部7の形状が凹に形成される。
また、基板予定部1Aの長さ方向(L1方向)で中央部から他短辺6の間にビス用の透孔11、11を設ける。一部の透孔11は、第2補強凹凸部9の中に形成するが、その透孔11の周りには、凹凸部を形成しない。
また、基板予定部1Aの長辺3、4で、補強リブ予定部13A、13Aの他短辺6側の縁(第1折り曲げ線51の付近)に、折り曲げ用の半円形の切り欠き53、53を形成する。
また、基板予定部1Aの長さ方向(L1方向)で、透孔11、11を形成しない部分に第2補強凹凸部9を形成する。第2補強凹凸部9は、第1補強凹凸部7と同様に、裏面2a側から表面側に向けて突出させ、裏面2a側は凹に形成される。
第2補強凹凸部9と補強リブ予定部13A、13Aとは、長さ方向(L1方向)で若干重なっている。言い換えれば、第2補強凹凸部9一短辺5側の端10は、補強リブ予定部13Aの他短辺6側の縁14bよりも、他短辺6側に位置する。
【0023】
(3) 差込突起予定部20Aは、基板予定部1Aの一短辺5の長さと同じ幅L2の突起基部21と、突起基部21の幅方向で(基板予定部1Aの一短辺5方向)、突起基部21の両端部に突起本体部23、23を連設して構成する。
【0024】
3.接合金物40の製造
【0025】
(1) 第1折り曲げ線51を谷に折り曲げ、基板予定部1Aに対して、補強リブ予定部13A、13Aを略直角に立ち上げる。
(2) 続いて、差込突起予定部20Aで、突起本体部23の基端部24(突起基部と連設した側)を「4分の1」円に屈曲して、突起本体部23の先端部25を直線状のままとして、かつ基板予定部Aの裏面2a側に向けて突出した形状となるように形成する。この状態で、突起本体部23の先端部24は、基板予定部1A(突起基部21)と略直角となり、突起本体部23の先端は、長さL4だけ、基板予定部1Aの裏面2aより突出する。実施例では、長さL4=2mm程度で形成するが、L4=1〜5mm程度とする。要は、基板予定部1Aの厚さ(製造用基材50の厚さ)t0程で形成すればよい。
(3) 続いて、別途の鋼板を屈曲して、断面U字状に形成して、内側の間隔L7の板体32、32の上端が半円状に連設された構造の支持定着部30とする。支持定着部30の板体32、32を、第1補強凹凸部9を挟んで、基板予定部1Aの表面2に固定する。支持定着部30の板体32、32の内側の幅L7は、使用するアンカーボルトの太さよりも大きく、外側の幅L8は螺合するナット47の最大径よりも短く設定される。
(4) 以上のようにして、接合金物40を構成し、基板予定部1Aが基板1を、補強リブ予定部13Aが補強リブ13を、差込突起予定部20Aが差込突起20を、それぞれ構成する(図1図2)。
【0026】
4.接合金物40の使用
【0027】
(1) この接合金物40は、いわゆるホールダウン金物と同様に使用する。
すなわち、例えば、コンクリート基礎上43に土台(第1接合木材)44を配置し、土台44の上面に柱(第2接合木材)45の下面を当接して接合する構造に適用する(図4)。例えば、コンクリート基礎43に埋設したアンカーボルト46の上部が土台44を貫通して、柱45の一側面45aに沿って配置されている。
この構造で、柱45の一側面45aに、差込突起20を下にして基板1の裏面2aを密着当接し、かつアンカーボルト46を逆略U字状の支持定着部30の下端(一短辺5側の縁31)から挿通部34を通って、上端(他短辺6側の縁)31aから上方に突出させる。基板1の透孔11、11から柱45側にビス48、48を打ち込み、基板1と柱45とを固定すれば、差込突起20の突起本体部23、23の先端部25、25が、柱45の一側面45aと略直角に柱45の一側面45a内に押し込まれ埋設される(図5)。
また、アンカーボルトの上端部46aのネジ部から必要ならばワッシャーを通してナット47を螺合して、ナット47を締め付けすれば、支持定着部30の上端31aにナット47が押し込まれ、アンカーボルト46の上端部46aが接合金物40の支持定着部30の上端31aに固定される(図5)。
【0028】
(2) このようにして、構築された土台44、柱45の接合構造では、土台44から柱45が引き抜かれる方向の外力に抵抗して、土台44、柱45の接合構造を強固に保つ。
さらに大きな引き抜き力が柱45に作用した場合、アンカーボルト46は強固にコンクリート基礎43に固定されているので、柱45の一側面45aに対して、基板1には、他短辺6から一短辺(連設端縁)5に向かう方向に引張力が作用して、柱45に対して、基板1を土台側に引っ張る。したがって、基板1の中央部が若干離れるように若干凸と変形して、接合金物40を柱45に対して下方に押し下げる方向に、外力が作用する。この場合、差込突起20の突起本体部23、23が、柱45の一側面45aにめり込んでいるので、接合金物40の下方へのズレを防止して、接合金物40の大きな変形、破壊を防止できる。実験によれば、40kN程度の引張力に対しても充分に抵抗できた。
これに対して差込突起20が無い場合には、このような大きな引き抜き力の作用により、接合金物40は柱45の側面45aに沿って、アンカーボルト46とともに土台44側に移動し、かつ中央部が大きく凸となるように変形して、基板1を柱45に固定したビス類の位置で、柱45に割裂破壊するが、この接合金物40では、柱45に割裂破壊を未然に防止して、結果として柱45と土台44の接合部で耐力を増強できた。
【0029】
(3) また、前記例では、土台・柱の接合構造に適用したが、いわゆるホールダウン金物を適用する構造、その他、羽子板ボルトを使用する接合構造など、接合する部材を引き離す方向に外力(引張力)が作用する他の接合構造にも適用できる。
【0030】
5.他の実施例
【0031】
(1) 前記実施例は、引張強度40kN程度に対応したものであるが、引張強度25kN程度に対応して、同じ基板の厚さt0(=3.2mm)で、長さL2=140mm、幅L2=40mmに形成して、同様に接合金物40を構成することもできる(図6図8)。
【0032】
(2) また、前記実施例において、厚さt0の製造用基材50を屈曲して接合金物40を製造するので、差込突起20は基板1の厚さt0と同じに形成され、かつ基板1と差込突起20の一体性が得られるが、差込突起20を別部材として、基板1に溶接などの方法で固定することもできる(図示していない)。
【0033】
(3) また、前記実施例において、差込突起20の突起本体部23を幅L5で2つ形成したので、引張力が作用した際に、柱45にめり込みやすいが、L6の間隙26を無くして、幅(L5+L6+L5)の1つの突起本体部23とすることもできる(図示していない)。また、この場合、突起基部21に比して、突起本体部23を幅狭に形成することもできる(図9参照)。
【0034】
(4) また、前記実施例において、突起本体部23の先端部は、基体1の裏面2aに対して直角に形成して、柱45側に先端を突出させたので、短辺6から短辺5側に向かう方向と、突起本体部23の先端部が先端に向かう方向とは、約90°となっている。この角度は90°となるので、引張力作用時の差込突起20の柱45へのめり込み(突っ張り)を有効に作用させることあができるので望ましいが、この角度は10°〜60°程度で形成することもできる(図9)。この場合には、突起本体部23の自由端の材厚部分の面と、柱45の側面45a側のエッジ27により、突起本体部23は柱45へめり込むことになる。
【0035】
(5) また、前記実施例において、差込突起20は円弧状の屈曲部を形成して、一旦、基板1の表面2から外方に離れるように形成したので、屈曲部分がバネのように作用して、差込突起20が負担する引張力を増強できるが、屈曲部分を省略することもできる。例えば、突起基部21を基板1に連続した直線状に形成し、突起先端部を柱45の側面45a側に向けて傾斜して屈曲する(図10)。この場合にも、突起本体部23の自由端の材厚部分の面と、柱45の側面45a側のエッジ27により、突起本体部23は柱45へめり込むことになる。したがって、この場合にも、短辺6から短辺5側に向かう方向と、突起本体部23の先端部が先端に向かう方向と成す角は10〜60°とすることが望ましい。
【0036】
(6) 前記実施例において、支持定着部30を逆U字状の構造としたが、接合構造によって、適宜変更して使用することもできる(図示していない)。
【符号の説明】
【0037】
1 基板
2 基板の表面
2a 基板の裏面
3、4 基板の長辺
5 基板の一短辺(連設縁)
6 基板の他短辺
7 基板の第1補強凹凸部
8 第1補強凹凸部の一短辺側の端
8a 第1補強凹凸部の他短辺側の端
9 基板の第2補強凹凸部
10 第1補強凹凸部の一短辺側の端
10a 第1補強凹凸部の他短辺側の端
11 基板の透孔
13 基板の補強リブ
14 補強リブの一短辺側の端
14a 補強リブの他短辺側の端
20 差込突起
21 差込突起の突起基部
22 突起基部の基端
22a 突起基部の先端
23 差込突起の突起本体部
24 突起本体部の基端部
25 突起本体部の先端部
26 突起本体部の間隙
27 突起本体部のエッジ
30 支持定着部
31 支持定着部の一短辺側の縁
31a 支持定着部の他短辺側の縁
32 支持定着部の板体
33 支持定着部の屈曲部
34 支持定着部の挿通部
40 接合金物
43 コンクリート基礎
44 土台(第1接合木材)
45 柱(第2接合木材)
45a 柱の側面
50 製造用基材
51 製造用基材の第1折り曲げ線
52 製造用基材の第2折り曲げ線
1A 基体予定部
13A 補強リブ予定部
20A 差込突起予定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10