(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転操作部と、前記回転操作部の回転角度を検知する回転センサと、前記回転操作部に操作反力を与えるステッピングモータと、前記ステッピングモータを制御する制御部とが設けられた回転操作装置において、
前記制御部では、前記回転センサの検知出力に基づいて、前記回転操作部の回転位置が所定のアンカー位置を中心とする一定の角度範囲のアンカー領域に入ったと判断されたときに、前記ステッピングモータの複数の制御コイルに対して、前記回転操作部を前記アンカー位置に引き込むための引き込み用の制御信号が与えられ、
前記引き込み用の制御信号は、前記回転操作部の回転角度に応じて変化する正弦波と余弦波において、前記アンカー位置に対応する同じ位相上に位置する2つの電流値が固定された信号であり、この2つの固定値の信号が、複数の前記制御コイルのうちのペアを成す2つの相の前記制御コイルにそれぞれ与えられ、
前記回転センサの検知出力に基づいて、前記回転操作部が前記アンカー領域から外れる位置へ回転させられたと判断されたときに、複数の前記制御コイルに対して、前記回転操作部に回転トルクによる操作反力を作用させるための操作反力用の制御信号が与えられ、
前記操作反力用の制御信号は、前記回転操作部の回転角度に応じて電流値が変化する正弦波と余弦波に基づく2つの信号であり、前記2つ信号が、ペアを成す2つ相の前記制御コイルのそれぞれに、回転角度に応じて電流が変化するように与えられることを特徴とする回転操作装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1などに記載されているいわゆる反力制御では、操作体を所定のアンカー位置で動かないように保持させる制御が必要とされる。ここで、アンカー位置とは、操作体が所定の姿勢に保持されて停止している位置を意味している。操作体を、アンカー位置から離れる方向へ移動させようとすると、操作体をアンカー位置に引き戻す力が作用する。
【0006】
特許文献1などに記載されている従来の制御方法では、操作体がアンカー位置からいずれかの方向へ回転させられると、回転センサの検知出力に応じてアクチュエータに対してアンカー位置へ戻す回転トルクが与えられる。操作者にとっては、前記回転トルクが、操作体をアンカー位置へ引き戻そうとする操作反力として感じられる。
【0007】
この制御方法では、操作体がアンカー位置から回転したことが回転センサで検知されると、この検知出力が制御部に与えられてトルク成分が算出され、これに基づいてアクチュエータが駆動される。そのため、回転センサによる検知からアクチュエータへの通電までに時間がかかり、さらにアクチュエータにおいても通電からトルクの発生までに時間を要する。この時間差があると、操作体にアンカー位置へ戻すためのトルクが与えられたときに、操作体がアンカー位置で停止できずオーバーランしやすくなる。このオーバーランを回復させるために、アクチュエータが逆向きのトルクを発生するように制御される。この制御が繰り返されると、操作体に継続的な振動が発生することになり、操作感触が非常に悪くなる。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、操作体をアンカー位置へ引き戻す制御を安定して行うことができ、常に良好な操作感触を実現できる反力制御機能を有する回転操作装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、回転操作部と、前記回転操作部の回転角度を検知する回転センサと、前記回転操作部に操作反力を与えるステッピングモータと、前記ステッピングモータを制御する制御部とが設けられた回転操作装置において、
前記制御部では、前記回転センサの検知出力に基づい
て、前記回転操作部の回転位置が所定
のアンカー位置を中心とする一定の角度範囲のアンカー領域に入ったと判断されたときに、前記ステッピングモータの
複数の制御コイルに対して、前記回転操作部を
前記アンカー位置に引き込むための引き込み用の制御信号が与えられ、
前記引き込み用の制御信号は、前記回転操作部の回転角度に応じて変化する正弦波と余弦波において、前記アンカー位置に対応する同じ位相上に位置する2つの電流値が固定された信号であり、この2つの固定値の信号が、複数の前記制御コイルのうちのペアを成す2つの相の前記制御コイルにそれぞれ与えられ、
前記回転センサの検知出力に基づい
て、前記回転操作部が前記アンカー領域から外れる位置へ回転させられたと判断されたときに、
複数の前記制御コイルに対
して、前記回転操作部
に回転トルクによる操作反力
を作用させるための操作反力用の制御信号が与えられ、
前記操作反力用の制御信号は、前記回転操作部の回転角度に応じて電流値が変化する正弦波と余弦波に基づく2つの信号であり、前記2つ信号が、ペアを成す2つ相の前記制御コイルのそれぞれに、回転角度に応じて電流が変化するように与えられることを特徴とするものである。
【0010】
本発明では、前記アンカー領域は、前記アンカー位置を中心として正方向と逆方向へそれぞれステッピングモータの
2ステップ角度だけ進む範囲である。
【0011】
本発明の回転操作装置は、前記ステッピングモータを2相ステッピングモータで構成し、
前記2つの固定値の信号の電流値の比を決めることで、前記アンカー位置を任意の角度に設定することが可能になる。
【0012】
本発明の回転操作装置は、
前記制御コイルに与えられる
前記引き込み用の制御信号の
電流値を変化させることで、前記アンカー位置で回転操作部を停止させている静止トルク
の大きさが変化させられるものとすることができる。
【0013】
さらに本発明の回転操作装置は、前記ステッピングモータは2相ステッピングモータで
あり、ペアを成す2つの相の前記制御コイルに与えられる
前記操作反力用の制御信号の電流値を変えることで、回転トルクによる操作反力
の大きさが変化させられるものとして構成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の入力装置は、アンカー位置に保持されている回転操作部を手で保持して回転させたときに、回転操作部の回転角度がアンカー領域の範囲内であるときは、ステッピングモータのステータがロータを一定の位置へ引き付ける力のみで、回転操作部がアンカー位置へ引き戻される。したがって、モータの回転駆動力で回転体を引き戻すときのように、オーバーランに基づく振動などが発生することがない。また、ステータに与える一定の制御信号のレベルを制御することで、操作者の手に、回転操作部をアンカー位置へ引き戻そうとする適度な操作反力を与えることができる。
【0015】
回転操作部がアンカー領域を外れる角度まで回転させられた後は、ステッピングモータに所定の周波数の制御信号が与えられ、回転操作部には、モータの回転トルクによる操作反力が与えられる。そのため、制御信号を制御することにより、任意の操作反力を生成することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、本発明の実施の形態の回転操作装置1は、入力・反力制御ユニット10と、表示制御ユニット30と、両ユニット10,30を接続するインターフェース2とで構成されている。
【0018】
図2に示すように、入力・反力制御ユニット10には、回転操作部11が設けられている。回転操作部11によって回転軸12が回転させられる。回転軸12には操作歯車13が固定されている。入力・反力制御ユニット10には、回転センサ15が設けられている。回転センサ15は、操作歯車13と噛み合う従動歯車16と、従動歯車16で回転させられるマグネット17と、マグネット17に対向するセンサ基板18とを有している。センサ基板18には巨大磁気抵抗効果素子(GMR)などの磁気センサが固定され、この磁気センサがマグネット17に対向している。
【0019】
なお、回転センサ15は、磁気検知式に限られず、光学検知方式などによるものであってもよい。
【0020】
回転操作部11の回転力は、操作歯車13から回転センサ15に伝達され、回転センサ15によって、回転操作部11の回転角度が検知される。
図2では、回転操作部11に回転軸12が固定され、回転軸12に操作歯車13が固定されて、回転操作部11と操作歯車13とが一対一の関係で回転するが、回転操作部11と操作歯車13との間に増速歯車機構などが介在されていてもよい。
【0021】
前記回転操作部11に操作反力を与えるアクチュエータとしてステッピングモータ40が設けられている。前記回転軸12はステッピングモータ40の出力軸でもある。
【0022】
図1に示すように、入力・反力制御ユニット10には制御部20が設けられている。制御部20は、CPUを主体としメモリなどを含むものであり、予めインストールされたソフトウエアに基づいて制御動作が行われる。
図1には、制御部20で実行される制御ステップとして、回転センサ15からの検知出力に基づいて回転操作部11の回転角度(回転位置)を検出する位置検出部21と、ステッピングモータ40へ制御信号を与えるモータ制御部20とを有している。
【0023】
表示制御ユニット30には、表示部31が設けられている。表示部31はカラー液晶パネルやエレクトロルミネッセンスパネルなどを備えている。表示制御ユニット30にも制御部32が設けられている。制御部32はCPUを主体としメモリなどを含むものであり、予めインストールされたソフトウエアに基づいて制御動作が行われる。制御部32の機能として、表示部31を制御する表示制御部33が含まれている。
【0024】
入力・反力制御ユニット10に通信部23が設けられ、表示制御ユニット30に通信部34が設けられており、通信部23と通信部34は、インターフェース2を介して接続されている。
【0025】
表示制御ユニット30は、車載用電装装置の一部として自動車のインストルメントパネルなどに設けられる。また、入力・反力制御ユニット10は運転者が操作者となって操作可能な位置に配置される。表示制御ユニット30が、ゲーム装置やパーソナルコンピュータなどの各種電子装置に配置されるときは、入力・反力制御ユニット10は、操作者が操作できるように操作パネルなどに配置されている。
【0026】
入力・反力制御ユニット10において、
図2に示す回転操作部11が操作者の手で保持されてCW方向またはCCW方向へ回転させられると、回転センサ15の検知出力が位置検出部21で検出されて、制御部20において回転操作部11の回転角度情報(回転位置情報)が生成される。回転角度情報は通信部23からインターフェースを介して表示制御部32の通信部34に与えられる。
【0027】
表示制御ユニット30の制御部32では、入力・反力制御ユニット10から送られた回転角度情報が分析され、表示制御部33では、回転角度情報を反映した表示信号が生成されて表示部31に与えられる。表示部31の表示画面に映し出された画像は、回転操作部11の回転操作に対応して変化する。
【0028】
回転操作装置1が車載用電装装置の一部を構成している場合には、回転操作部11の回転操作に対応した回転角度情報が、自動車の各種機能を司るコントロールユニットにも与えられる。
【0029】
表示制御ユニット30の制御部32では、入力・反力制御ユニット10から送られた回転角度情報を分析し、回転操作部11の回転位置に対応した反力データが生成される。この反力データはインターフェース2を介して入力・反力制御ユニット10に与えられ、モータ制御部22からステッピングモータ40に制御信号が与えられる。回転操作部11が手で回転させられると、前記反力データに基づいて、回転位置に応じた反力がステッピングモータ40から回転操作部11に与えられる。
【0030】
なお、反力データは、表示制御ユニット30から送られるのではなく、入力・反力制御ユニット10の制御部20において生成されてもよい。
【0031】
ステッピングモータ40を制御する反力データは、個々の入力・反力制御ユニットごとに設定された固定データとして生成され、回転操作部11を回転操作する際に常に同じ反力が与えられる。あるいは、操作モードが切換えられる度に、反力データが変更され、回転操作部11に与えられる操作反力が変更されるものであってもよい。
【0032】
図4には、ステッピングモータ40の内部構造が模式的に示されている。
ステッピングモータ40は2相ステッピングモータであり、ロータ41と2相のステータ42A,42Bを有している。ロータ41とステータ42A,42Bの構造はハイブリッド型であり、ロータ41の外周面に永久磁石が設けられ、回転方向に向けてN極とS極が交互に現れるように着磁されている。ステータ42Aには制御コイル43Aが巻かれ、ステータ42Bには制御コイル43Bが巻かれて、バイポーラ型の2相ステッピングモータが構成されている。この2相ステッピングモータの駆動方式としては、1相励磁方式と2相励磁方式のいずれであっても回転トルクを発生させることができる。
【0033】
実施の形態に使用されるステッピングモータ40は、
図4に示すステータ42A,42Bのペアが22組設けられ、ローラ41の着磁も前記ペア数に対応した数で着磁されたものであり、相角が16.36度である。2相励磁駆動によりロータ41を1回転させるためのステップ数は88であり、1ステップのロータ41の回転角度は4.09度である。
【0034】
図2に示す入力・反力制御ユニット10に設けられたステッピングモータ40は、回転操作部11が手で回転させられたときに、操作者の手に対して操作反力を感じさせるための静止トルクや回転トルクを発生させるものである。反力を与えるためのトルクは、回転操作部11の回転角度に対応して生成された前記反力データによって制御される。
【0035】
図6(A)以下では、制御コイル43Aに与えられる制御信号である制御電流がIacで示され、制御コイル43Bに与えられる制御信号である制御電流がIbdで示されている。また、制御電流(制御信号)Iacの通電によりロータ41に与えられるトルクがTacで示され、制御電流(制御信号)Ibdの通電によりロータ41に与えられるトルクがTbdで示されている。またトルクTacとトルクTbdのベクトルの加算値がTsumで示されている。
【0036】
なお、ここでの制御コイル43A,43Bは、22組設けられた磁極ペアのうちのいずれか1組を示している。
図6(A)(B)以下の線図の横軸に示される360度は、制御電流Iacと制御電流Ibdの周期を意味しており、ステッピングモータ40の回転角に換算すると、線図の横軸の360度が、前記相角の16.36度に相当している。22組の全てのペアの制御コイル43A,43Bに対して、
図6(A)(B)に示す制御電流が順番に与えられることによって、ステッピングモータ40で1回転分の回転トルクを発生させることができる。
【0037】
図3に示すように、回転操作部11には位置表示部11aが設けられ、この位置表示部11aによって操作回転位置を確認することが可能である。
【0038】
実施の形態の回転操作装置1では、表示制御ユニット30の制御部32で生成される反力データによって、操作反力が以下のように設定される。
【0039】
図3では、回転操作部材11の位置表示部11aがアンカー位置(i)に向けられている。アンカー位置(i)とは、制御コイル43A,43Bに一定の電流を与え続けて、回転軸12とロータとを停止させている状態での、前記回転操作部11の位置を意味している。
【0040】
アンカー位置(i)を中心としてCW方向とCCW方向へそれぞれ角度αの広がりを持つ範囲がアンカー領域である。アンカー領域は相角に等しく、角度αは、相角の1/2である。この実施の形態ではα=8.18度である。アンカー領域を超えてから回転位置(ii)までの範囲がCW操作領域β1であり、アンカー領域を超えてから回転位置(iii)までの範囲がCCW操作領域β2である。
【0041】
図3の実施の形態では、アンカー位置(i)が1か所でその両側に操作領域β1、β2が設定されているが、アンカー位置が複数箇所に設定され、それぞれのアンカー位置の間に操作領域が設定されていてもよい。
【0042】
図6(A)(B)は、手で保持した回転操作部11をCW操作領域β1またはCCW操作領域β2において時計方向(CW)へ回転操作したときの操作反力の一例を示している。このとき、前記反力データがモータ制御部22に与えられて、
図6(A)に示すように、ステッピングモータ40のステータ42Aに
ほぼ正弦波曲線の制御電流Iacが通電され、ステータ42Bに
ほぼ余弦波曲線の制御電流Ibdが通電される。よって、ロータ41にCCWへの回転力が与えられ、回転操作部11を操作している手に対してCCW方向への操作反力が伝達される。
【0043】
図6(B)には、回転操作部11に与えられる反力トルクTsumが示されている。この反力トルクTsumは、制御電流Iac,Ibdの電流量を変化させることで大小を可変制御できる。この電流制御により、回転操作部11を時計方向へ回転させるのにしたがってCCWの操作反力を徐々に大きくしたり、あるいは徐々に小さくしたり、または操作反力の大小を周期的に変化させることなどが可能である。
【0044】
図7(A)(B)は、手で保持した回転操作部11をCW操作領域β1またはCCW操作領域β2において反時計方向(CCW)へ回転操作したときの操作反力の一例を示している。このとき、前記反力データにより
図7(A)に示すように、ステッピングモータ40のステータ42Aに制御電流Iacが通電され、ステータ42Bに制御電流Ibdが通電され、ロータ41にCWへの回転力が与えられ、回転操作部11を操作している手に対してCW方向への操作反力が伝達される。
【0045】
図7(B)には、回転操作部11に与えられる反力トルクTsumが示されているが、反力トルクTsumは、制御電流Iac,Ibdの大きさによって可変制御できる。この場合も、回転操作部11を反時計方向へ回転させるのにしたがってCWの操作反力を徐々に大きくしたり、または徐々に小さくしたり、または操作反力の大小を周期的に変化させることなどが可能である。
【0046】
次に、回転センサ15からの検知出力により、回転操作部11の位置表示部11aが、アンカー位置(i)に至ったと判断されると、あるいはアンカー位置(i)±αの角度範囲であるアンカー領域に至ったと判断されると、前記反力データに基づいてアンカー制御が行われる。このアンカー制御では、モータ制御部22によって、ステッピングモータ40に周波数成分を持たない一定の制御電流が継続的に与えられ、位置表示部11aがアンカー位置(i)に向けられた状態でロータ41が保持されて停止する。
【0047】
ステッピングモータ40を2相励磁で駆動しているときには、制御コイル43Aへ与える制御電流Iacと制御コイル43Bへ与える制御電流Ibdを、所定の比率で一定値とすることで、任意の回転角度位置にアンカー位置(i)を設定することができる。また、前記比率を変えることで、アンカー位置(i)を任意の位置に変更することができる。
【0048】
図8(A)には、ローラ41を一定のトルクで駆動するときの制御電流Iacが実線で示され、制御電流Ibdが破線で示されている。このときの制御電流Iacと制御電流Ibdは、ほぼ正弦波曲線と余弦波曲線に近似した関係になる。そこで、制御電流Iacの値と制御電流Ibdの値が、前記正弦波曲線上と前記余弦波曲線上の同じ位相上に位置するように、電流Iac,Ibdの比率を制御して電流値を固定させることで、前記相角内のどの回転角度位置であってもロータ41を停止させることができ、その回転位置をアンカー位置(i)とすることができる。
【0049】
図8(A)では、制御電流Ibdの位相がほぼ110度となる位置がアンカー角度に設定されており、
図8(B)に示すように、制御電流Iacがほぼ−0.3が固定され、制御電流Ibdがほぼ+0.9に固定されて、110度上でローラ41を保持できるようにしている。なお、前述のように、
図8の線図の横軸の360度はいずれかのヨークペア(制御コイルペア)の相角である16.36度に対応している。
【0050】
ここで、ステッピングモータ40を1相励磁で動作させるときは、ロータ41の着磁部がステータ42Aと42Bのいずれかに対向したときのみロータ41が保持されるため、アンカー位置は1ステップ角度(4.09度)毎の段階的な設定になる。しかし、
図8に示すように、2相励磁駆動を行って、制御電流Iacと制御電流Ibdを、正弦波曲線上と余弦波曲線上の同じ位相上の値となる比率で固定することで、アンカー位置をどの角度にでも設定することが可能になる。
【0051】
図9には、ロータ41がアンカー位置(i)で保持されているときに、ロータ41ならびに回転操作部11に与えられる静止トルクが+Tmaxで示されている。アンカー位置(i)から、回転操作部11をCW方向へ回転させようとすると、その角度がα=8.18度の範囲内であれば、ロータ41に対して回転操作部11をCCW方向へ引き込む力が作用する。また、アンカー位置(i)から、回転操作部11をCCW方向へ回転させようとすると、その角度がα=8.18度の範囲内であれば、ロータ41に対して回転操作部11をCW方向へ引き込む力が作用する。
【0052】
この引き込み力により、回転操作部11がアンカー領域の回転角度内にあれば、アンカー位置(i)に確実に引き込まれて保持される。回転操作部11をアンカー位置に引き込む力はモータ駆動力の回転トルクによるものではなく、ステータ42A,42Bがロータ41を保持する静的な力によるものであるため、従来のように、引き込み力によりロータ41がアンカー位置をオーバーランしたときに、モータが正逆交互に駆動されて振動を生じるという現象が生じなくなる。
【0053】
また、
図8(A)に示す正弦波曲線と余弦波曲線の振幅を大きく設定して、その曲線に対応するように、
図8(B)において、固定値である制御電流Iac,Ibdの値を選択することで、アンカー位置(i)の静止トルクの大小を可変することも可能である。
【0054】
図9に示すように、回転操作部11をアンカー位置(i)に引き込もうとするトルクは、アンカー位置(i)から離れるにしたがって徐々に弱くなり、CW方向とCCW方向へα=8.18度まで回転したときに引き込み力がゼロになり、その後は隣の磁極ペア(ステータペア)にロータ41が引き込まれ、ロータ41がアンカー領域から外れる方向へ回転しようとする。よって、回転操作部11の回転角度がアンカー位置(i)から±αの角度になったら、または±αの角度に近づく寸前に、
図6(A)(B)または
図7(A)(B)に示すように、回転トルクによる操作反力の設定に切換えられることが好ましい。
【0055】
図5は操作反力を設定するための制御動作の一例を示すフローチャートである。実際の制御動作では、位置検出部21で検出された角度情報が一定の周期で制御部32に与えられ、制御部32では、与えられた角度情報に基づいてその角度に対応する反力データが出力されて、モータ制御部22に与えられる。
【0056】
図5に示すST1(ステップ1)の制御開始は、制御部32が角度情報を得たタイミングを意味している。ST2では反力データが更新されたか否かが監視される。制御部32から送られてくる反力データが更新されていないときは、ST4に移行する。制御部32から送られてくる反力データが更新され、例えばアンカー位置(i)の設定の変更があったときは、ST3に移行して、新たに設定されたアンカー位置(i)が算出され、ST4に移行する。ST4では、回転操作部11(ロータ41)が現在どの角度位置にあるかを算出する。
【0057】
ST5において、回転操作部11の回転角度がアンカー領域内にあるとするとST6とST7に移行する。ST6とST7では、
図8に基づいて、設定されたアンカー角度でロータ41を停止させるための制御電流Iac,Ibdが求められ、制御コイル43A,43Bに、ロータ41を保持するための一定の電流である制御電流Iac,Ibdが与えられる。
【0058】
ST5において、回転操作部11の回転角度がアンカー領域ではなく、CW操作領域β1またはCCW操作領域β2であると判断されると、ST8とST9に移行し、
図6または
図7に示すよう
に、制御電流Iac,Ibdが決められて、反力データに対応した操作反力が設定される。
【0059】
上記のように、回転操作部11の回転角度がアンカー領域に位置するときは、ステータ42A,42Bがロータ41を保持する静的な力を使用し、CW操作領域β1またはCCW操作領域β2のときは、ロータ41に与えられるモータ駆動の回転トルクで操作反力を発生させることで、多様な操作反力を与えることが可能になる。