(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記センサーチップは、前記測定装置側に、前記第1容量電極に接続された第1接触端子と、前記第2容量電極に接続された第2接触端子と、前記可変抵抗素子に接続された第3接触端子および第4接触端子とを有し、
前記チップホルダーは、前記第1接触端子と前記電圧印加部とを前記第1機械的接点スイッチを介して接続し、前記第2接触端子と前記電圧印加部とを前記第2機械的接点スイッチを介して接続し、かつ前記第3接触端子および前記第4接触端子と前記電流測定部とを接続するためのスイッチモジュールを有し、
前記スイッチモジュールは、
基板と、
前記基板の一方の面に配置された、前記第1接触端子に接触するための第1コンタクトプローブ、前記第2接触端子に接触するための第2コンタクトプローブ、前記第3接触端子に接触するための第3コンタクトプローブ、および前記第4接触端子に接触するための第4コンタクトプローブと、
前記基板の他方の面に配置された、前記第1コンタクトプローブおよび前記第2コンタクトプローブと前記電圧印加部とを接続し、かつ前記第3コンタクトプローブおよび前記第4コンタクトプローブと前記電流測定部とを接続するためのコネクターと、
前記基板に形成された、前記第1コンタクトプローブと前記コネクターとを接続する第1スルーホール配線、前記第2コンタクトプローブと前記コネクターとを接続する第2スルーホール配線、前記第3コンタクトプローブと前記コネクターとを接続する第3スルーホール配線、および前記第4コンタクトプローブと前記コネクターとを接続する第4スルーホール配線と、
前記基板の他方の面に配置され、かつ前記第1スルーホール配線と前記コネクターとの間に配置された前記第1機械的接点スイッチ、および前記第2スルーホール配線と前記コネクターとの間に配置された前記第2機械的接点スイッチと、
を有する、
請求項1または請求項2に記載の測定装置。
前記スイッチモジュールは、前記基板の他方の面に配置され、前記コネクターと接続された、前記センサーチップの周辺環境の温度を検出するための温度センサーをさらに有する、請求項3に記載の測定装置。
前記増大機構の前記第1機械的接点スイッチまたは前記第2機械的接点スイッチに対する接触面は、円柱面の一部を構成する、請求項5または請求項6に記載の測定装置。
前記センサーチップは、前記測定装置側に、前記第1容量電極に接続された第1接触端子と、前記第2容量電極に接続された第2接触端子と、前記可変抵抗素子に接続された第3接触端子および第4接触端子とを有し、
前記チップホルダーは、
前記第1接触端子と前記電圧印加部とを前記第1機械的接点スイッチを介して接続し、前記第2接触端子と前記電圧印加部とを前記第2機械的接点スイッチを介して接続し、かつ前記第3接触端子および前記第4接触端子と前記電流測定部とを接続するためのスイッチモジュールと、
その一方の面に配置された、前記センサーチップを嵌め込むための第1凹部と、その他方の面の前記第1凹部に対応する位置に配置された、前記スイッチモジュールを嵌め込むための第2凹部と、前記第1凹部の底部および前記第2凹部の底部に開口する貫通孔とを有するホルダー本体と、
を有し、
前記スイッチモジュールは、
基板と、
前記基板の一方の面に配置された、前記第1接触端子に接触するための第1コンタクトプローブ、前記第2接触端子に接触するための第2コンタクトプローブ、前記第3接触端子に接触するための第3コンタクトプローブ、および前記第4接触端子に接触するための第4コンタクトプローブと、
前記基板の他方の面に配置された、前記第1コンタクトプローブおよび前記第2コンタクトプローブと前記電圧印加部とを接続し、かつ前記第3コンタクトプローブおよび前記第4コンタクトプローブと前記電流測定部とを接続するためのコネクターと、
前記基板に形成された、前記第1コンタクトプローブと前記コネクターとを接続する第1スルーホール配線、前記第2コンタクトプローブと前記コネクターとを接続する第2スルーホール配線、前記第3コンタクトプローブと前記コネクターとを接続する第3スルーホール配線、および前記第4コンタクトプローブと前記コネクターとを接続する第4スルーホール配線と、
前記基板の他方の面に配置され、かつ前記第1スルーホール配線と前記コネクターとの間に配置された前記第1機械的接点スイッチ、および前記第2スルーホール配線と前記コネクターとの間に配置された前記第2機械的接点スイッチと、
を有し、
前記スイッチモジュールは、前記第1コンタクトプローブ、前記第2コンタクトプローブ、前記第3コンタクトプローブおよび前記第4コンタクトプローブが前記貫通孔に露出するように前記第2凹部に固定されており、
前記押圧部は、
押圧力を発生させるソレノイドアクチュエータと、
前記ソレノイドアクチュエータから加えられた押圧力を、てこの原理により増大させて、前記第2凹部に固定された前記スイッチモジュールの前記第1機械的接点スイッチおよび前記第2機械的接点スイッチに伝達する増大機構と、
を有し、
前記増大機構における、てこの原理の支点は、前記ホルダー本体により支持されている、
請求項1または請求項2に記載の測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図2は、本発明の一実施の形態に係る測定装置100の構成を示す模式図である。
図2に示されるように、測定装置100は、チップホルダー110、押圧部140、電圧印加部170、電流測定部180および制御部190を有する。チップホルダー110は、ホルダー部120およびスイッチモジュール130を有する。押圧部140は、アクチュエータ150および増大機構160を有する。測定装置100は、チップホルダー110にセンサーチップ200を装着した状態で使用される。そこで、センサーチップ200について先に説明し、その後に測定装置100について説明する。
【0015】
[センサーチップ]
図3A〜Cは、本発明の一実施の形態に係るセンサーチップ200の構成を示す図である。
図3Aは、センサーチップ200の平面図であり、
図3Bは、センサーチップ200の正面図であり、
図3Cは、センサーチップ200の底面図である。
図3A〜Cに示されるように、センサーチップ200は、2つのセンサー素子210、センサーチップ基板220、2つの第1接触端子230、2つの第2接触端子240、2つの第3接触端子250および2つの第4接触端子260を有する。センサー素子210の天面は、被検出物質を検出するための反応部218(反応場)として機能する。
【0016】
(センサー素子)
図4A,Bおよび
図5A,Bは、センサー素子210の構成を示す図である。
図4Aは、センサー素子210の平面図であり、
図4Bは、センサー素子210の底面図である。
図5Aは、
図4Bに示されるA−A線の断面図であり、
図5Bは、
図4Bに示されるB−B線の断面図である。
図4A,Bおよび
図5A,Bに示されるように、センサー素子210は、第1容量電極211、第1端子212、第1絶縁膜213、第2絶縁膜214、第2容量電極215、第2端子216、可変抵抗素子217および反応部218を含む。
【0017】
第1容量電極211は、板状の導電体または半導体である。第1容量電極211は、センサー素子210の基板としても機能する。たとえば、第1容量電極211は、不純物をドープしたシリコン基板である。第1容量電極211の素材の他の例には、ゲルマニウムやヒ化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、テルル化亜鉛(ZnTe)、アルミニウム、マグネシウムなどが含まれる。第1容量電極211の厚みは、特に限定されず、例えば0.5mm程度である。
【0018】
第1端子212は、第1容量電極211の裏側(センサーチップ基板220側)に配置されており、第1容量電極211に電気的に接続されている(
図5A参照)。第1端子212は、第1容量電極211とセンサーチップ基板220の第1スルーホール配線221(後述)とを電気的に接続する。第1端子212は、例えばポリシリコン、金属または合金からなる膜である。
【0019】
第1絶縁膜213は、第1容量電極211の裏側の面に配置された絶縁膜であり、第2絶縁膜214は、第1容量電極212の表側の面に配置された絶縁膜である。第1絶縁膜213は、第1容量電極211と第2容量電極215との間、および第1容量電極211と可変抵抗素子217との間を絶縁する。第2絶縁膜214は、第1容量電極211と反応部218との間を絶縁する。第1絶縁膜213および第2絶縁膜214は、いずれも単層であってもよいし、2層以上から構成されていてもよい。第1絶縁膜213および第2絶縁膜214は、例えば酸化シリコン膜である。第1絶縁膜213および第2絶縁膜214の素材の他の例には、窒化シリコンや酸化アルミニウム、酸化チタン、アクリル樹脂、ポリイミドなどが含まれる。第1絶縁膜213および第2絶縁膜214の膜厚は、特に限定されない。
【0020】
第2容量電極215は、第1絶縁膜213上に配置されている、導電体または半導体からなる部材である。第2容量電極215は、第1絶縁膜213を挟んで第1容量電極211と対向している。第1容量電極211、第1絶縁膜213および第2容量電極215は、容量(キャパシタ)を構成する。第2容量電極215は、例えばポリシリコン、金属または合金からなる膜である。第2容量電極215を構成する金属および合金の例には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などが含まれる。なお、第1容量電極211が不純物をドープしたシリコン基板であり、第2容量電極215が不純物をドープしたポリシリコン膜である場合は、第1容量電極211にドープされた不純物の極性と、第2容量電極215にドープされた不純物の極性とは、同じであってもよいが、互いに異なることが好ましい。
【0021】
第2端子216は、第2容量電極215上に配置されており、第2容量電極215に電気的に接続されている(
図5A参照)。第2端子216は、第2容量電極215とセンサーチップ基板220の第2スルーホール配線222(後述)とを電気的に接続する。第2端子216は、例えばポリシリコン、金属または合金からなる膜である。
【0022】
可変抵抗素子217は、第1絶縁膜213上に配置されており、トランスデューサーとして機能する。可変抵抗素子217は、第1絶縁膜213上に配置された基体217aと、基体217aの一方の端部に電気的に接続された第3端子217bと、基体217aの他方の端部に電気的に接続された第4端子217cとを含む。第3端子217bは、基体217aの一方の端部とセンサーチップ基板220の第3スルーホール配線223(後述)とを電気的に接続する。第4端子217cは、基体217aの他方の端部とセンサーチップ基板220の第4スルーホール配線224(後述)とを電気的に接続する。後述するように、被検出物質を検出するときには、第3端子217bと第4端子217cとの間に電圧を印加した状態で、第3端子217bと第4端子217cとの間に流れる電流を測定する。可変抵抗素子217(基体217a)は、第1容量電極211内に蓄積された孤立電荷、および反応部218で生成された電荷に誘起された第1容量電極211内の電荷の影響で抵抗値が変化する。
【0023】
基体217aは、例えばカーボンナノチューブまたはポリシリコン膜である。基体217aがポリシリコン膜である場合は、基体217aは、低濃度の不純物をドープしたポリシリコン膜であってもよいし、ノンドープポリシリコン膜であってもよい。第3端子217bおよび第4端子217cは、例えばアルミニウム膜である。また、基体217aがポリシリコン膜である場合は、第3端子217bおよび第4端子217cは、不純物をドープしたポリシリコン膜であってもよい。基体217aが低濃度の不純物をドープしたポリシリコン膜であり、第3端子217bおよび第4端子217cが不純物をドープしたポリシリコン膜である場合は、基体217aにドープされた不純物の極性と、第3端子217bおよび第4端子217cにドープされた不純物の極性とは、同じであることが好ましい。なお、基体217aがポリシリコン膜であり、第3端子217bおよび第4端子217cが不純物をドープしたポリシリコン膜であり、かつ第1容量電極211が不純物をドープしたシリコン基板である場合は、第1容量電極211にドープされた不純物の極性と、第3端子217bおよび第4端子217cにドープされた不純物の極性とは、同じであってもよいが、互いに異なることが好ましい。
【0024】
基体217aの形状および大きさは、特に限定されない。外部からのシールド効果を利用する観点からは、基体217aは、第2容量電極215に囲まれていることが好ましい(
図4B参照)。したがって、基体217aの大きさは、第2容量電極215に囲まれうる大きさであることが好ましい。
【0025】
反応部218は、第2絶縁膜214上に配置されており、被検出物質を含みうる検体を提供される。反応部218では、第2絶縁膜214上に被検出物質と反応できる認識物質219が予め固定化されている(
図4Aでは省略されている)。認識物質219の種類は、被検出物質と反応できれば特に限定されず、有機物質であってもよいし、無機物質であってもよい。認識物質219の例には、抗体、抗原、酵素、レクチン、核酸などが含まれる。反応部218に検体を提供されると、検体に含まれる被検出物質と、第2絶縁膜214上に固定化されている認識物質219とが反応する。
【0026】
なお、ここでは、第1容量電極211と反応部218との間に第2絶縁膜214が存在するセンサー素子210について説明しているが、第2絶縁膜214は無くてもよい。すなわち、反応部218は、第1容量電極211の表側の面に直接配置されていてもよい。この場合、認識物質219は、第1容量電極211の表側の面に固定化される。
【0027】
本実施の形態では、2つのセンサー素子210が1枚のセンサーチップ基板220上に配置されている。すなわち、センサーチップ200は、2つのセンサー素子210を有する。この場合、一方のセンサー素子210は検出用に使用され、他方のセンサー素子210は参照用に使用されうる。測定装置100は、2つのセンサー素子210,210の出力の差分値を利用して外部環境の影響を排除することができるため、より高精度かつ高感度に被検出物質を検出することができる。
【0028】
センサー素子210の製造方法は、特に限定されない。センサー素子210は、一般的な半導体素子の製造工程により製造されうる。
【0029】
(センサーチップ基板)
センサーチップ基板220は、絶縁性の板である。本実施の形態では、センサーチップ基板220の表側の面には、2つのセンサー素子210が配置される。センサーチップ基板220の裏側(測定装置100側)の面には、2つの第1接触端子230、2つの第2接触端子240、2つの第3接触端子250および2つの第4接触端子260が配置される。センサーチップ基板220は、例えばガラスコンポジット基板やガラスエポキシ基板などである。
【0030】
センサーチップ基板220は、2つの第1スルーホール配線221、2つの第2スルーホール配線222、2つの第3スルーホール配線223および2つの第4スルーホール配線224を有する。第1スルーホール配線221は、センサー素子210の第1端子212の直下に配置されており、第1端子212と第1接触端子230とを電気的に接続する。第2スルーホール配線222は、センサー素子210の第2端子216の直下に配置されており、第2端子216と第2接触端子240とを電気的に接続する。第3スルーホール配線223は、センサー素子210の第3端子217bの直下に配置されており、第3端子217bと第3接触端子250とを電気的に接続する。第4スルーホール配線224は、センサー素子210の第4端子217cの直下に配置されており、第4端子217cと第4接触端子260とを電気的に接続する。
【0031】
センサーチップ基板220の表側では、第1スルーホール配線221、第2スルーホール配線222、第3スルーホール配線223および第4スルーホール配線224は、それぞれ、プリント配線を介さずにセンサー素子210の第1端子212、第2端子216、第3端子217bおよび第4端子217cに接続されている。各端子との接続には、ハンダや銀ペーストなどの導電性固着材などが使用されうる。一方、センサーチップ基板220の裏側では、第1スルーホール配線221、第2スルーホール配線222、第3スルーホール配線223および第4スルーホール配線224は、それぞれ、プリント配線を介して第1接触端子230、第2接触端子240、第3接触端子250および第4接触端子260に接続されている。したがって、センサーチップ200では、プリント配線がセンサーチップ基板220の裏側に集中している。なお、センサー素子210をより確実にセンサーチップ基板220に固定するために、センサー素子210とセンサーチップ基板220との間に絶縁性接着剤を注入し、硬化させてもよい。
【0032】
(接触端子)
第1接触端子230、第2接触端子240、第3接触端子250および第4接触端子260は、センサーチップ基板220の裏側(測定装置100側)の面に配置されている。これらは、例えば金属または合金からなる膜であり、測定装置100との接触端子として機能する。第1接触端子230は、第1スルーホール配線221を介してセンサー素子210の第1端子212に電気的に接続されている。第2接触端子240は、第2スルーホール配線222を介してセンサー素子210の第2端子216に電気的に接続されている。第3接触端子250は、第3スルーホール配線223を介してセンサー素子210の第3端子217bに電気的に接続されている。第4接触端子260は、第4スルーホール配線224を介してセンサー素子210の第4端子217cに電気的に接続されている。
【0033】
(センサー素子の使用方法)
次に、センサーチップ200に含まれるセンサー素子210を用いた被検出物質の検出手順の一例と、推察される検出メカニズムについて説明する。
図6A〜Cは、センサー素子210の動作原理を説明するためのセンサー素子210の断面模式図である。理解の促進のため、これらの図では、各構成要素の位置および形状を変えている。また、認識物質219が省略されている。可変抵抗素子217の第3端子217bおよび第4端子217cは、予め電流計(測定装置100の電流測定部180)に接続されている。
【0034】
まず、第1端子212および第2端子216を電源(測定装置100の電圧印加部170)に接続し(図中黒丸で表示)、第1容量電極211と第2容量電極215との間に所定の電圧を印加する。このとき、第1容量電極211の第1絶縁膜213側の部分および第2容量電極215の第1絶縁膜213側の部分に空乏層ができないように、電圧を印加することが好ましい。前述のとおり、第1容量電極211、第1絶縁膜213および第2容量電極215は、容量を構成する。したがって、
図6Aに示されるように、第1容量電極211および第2容量電極215内に印加電圧および容量の容量値で一義的に制御できる電荷を蓄積することができる。
【0035】
この後、第1端子212および第2端子216を電源から切り離し(図中白丸で表示)、第1容量電極211および第2容量電極215を孤立状態にする(図示省略)。これにより、第1容量電極211および第2容量電極215内の蓄積電荷が孤立電荷となる。この孤立電荷は、センサー素子210の検出感度に大きく影響を及ぼす。したがって、第1容量電極211と第2容量電極215との間に印加する電圧は、要求される検出感度に応じて適宜設定される。
【0036】
この状態で、一度、第3端子217bと第4端子217cとの間に所定の電圧を印加して(図中黒丸で表示)、第3端子217bと第4端子217cとの間の電流値を測定する(図示省略)。
【0037】
次いで、反応部218に検体を提供し、検体に含まれる被検出物質と第2絶縁膜214に固定化された認識物質219とを反応させる。
図6Bに示されるように、この反応により第2絶縁膜214上には電荷が生成される。さらには、
図6Cに示されるように、第1容量電極211内においても第2絶縁膜214上で生成した電荷の作る電界により分極する新たな電荷が誘起される。第2絶縁膜214が無い場合は、第1容量電極211の表側の面に直接固定化された認識物質219と、検体に含まれる被検出物質との反応で生成された電荷が作る電界により、第1容量電極211内に分極する電荷が新たに誘起される。
【0038】
この状態で、再度、可変抵抗素子217の第3端子217bと第4端子217cとの間に所定の電圧(一回目の測定と同じ電圧)を印加して、第3端子217bと第4端子217cとの間の電流値を測定する。検体提供後の二回目の測定は、検体が乾燥する前に行ってもよいし、乾燥した後に行ってもよい。検体提供前の一回目の測定では、可変抵抗素子217の抵抗値が、第1容量電極211内に蓄積された孤立電荷により形成される電界で決まる。一方、検体提供後の二回目の測定では、可変抵抗素子217の抵抗値が、第1容量電極211内に蓄積された孤立電荷と、反応部218で生成された電荷によって分極誘起された第1容量電極211内の電荷とにより形成される電界で決まる。したがって、検体提供前後の電流値の変化から、被検出物質の有無または量を検出することができる。
【0039】
電界と可変抵抗素子217の抵抗値との関係を見た場合、通常、抵抗値が鋭敏に変化する範囲は限定されている。このため、反応部218での反応に起因する電界の変化により可変抵抗素子217の抵抗値が鋭敏に変化するように、第1容量電極211内の孤立電荷の量を調整することが必要である。
【0040】
以上の手順により、センサー素子210を用いて被検出物質の有無または量を検出することができる。
【0041】
なお、検出精度を向上させる観点からは、第1容量電極211と第2容量電極215との間に電圧を印加する直前に第1容量電極211および第2容量電極215の残留電荷を除去することが好ましい。このようにすることで、第1容量電極211内の孤立電荷の量を、より高精度に制御することが可能となる。
【0042】
本実施の形態に係るセンサーチップ200では、測定装置100との接続用の各接触端子(第1接触端子230、第2接触端子240、第3接触端子250および第4接触端子260)を、センサー素子210の直下近傍に配置している。また、センサー素子210の各端子(第1端子212、第2端子216、第3端子217bおよび第4端子217c)と測定装置100との接続用の各接触端子(第1接触端子230、第2接触端子240、第3接触端子250および第4接触端子260)とを、スルーホール配線(第1スルーホール配線221、第2スルーホール配線222、第3スルーホール配線223および第4スルーホール配線224)を介して最短距離で接続している。また、センサーチップ基板220の表側(センサー素子210側)の面には配線を配置せず、センサーチップ基板220の裏側(測定装置100側)の面にのみ配線を配置している。これらの特徴により、センサーチップ200内における浮遊容量の低減が実現される。センサーチップ200内における浮遊容量を低減することで、センサー素子210を用いた測定の感度を向上できると考えられる。
【0043】
[測定装置]
次に、測定装置100について説明する。前述のとおり、測定装置100は、チップホルダー110、押圧部140、電圧印加部170、電流測定部180および制御部190を有する(
図2参照)。
【0044】
(チップホルダー)
チップホルダー110は、センサーチップ200を保持する。
【0045】
図7は、チップホルダー110の構成を示す分解斜視図である。
図8Aは、チップホルダー110の構成を示す分解断面図である。
図8Bは、チップホルダー110の構成を示す断面図である。これらの図では、理解の促進のため、センサーチップ200も図示している。
図7、
図8Aおよび
図8Bに示されるように、チップホルダー110は、ホルダー部120およびスイッチモジュール130を有する。ホルダー部120は、ホルダー本体121および蓋部127に分けられる。なお、
図2では、ホルダー部120(ホルダー本体121および蓋部127)を一体として図示している。また、
図7では、蓋部127を省略している。
【0046】
ホルダー本体121は、蓋部127とともにセンサーチップ200を保持する。また、ホルダー本体121には、スイッチモジュール130(後述)が固定されており、ホルダー本体121は、センサーチップ200の各接触端子とスイッチモジュール130の各コンタクトプローブとを接触させる。
図7、
図8Aおよび
図8Bに示されるように、ホルダー本体121は、表側の面に配置された第1凹部122と、裏側の面の第1凹部122に対応する位置に配置された第2凹部123と、第1凹部122の底部および第2凹部123の底部に開口する第1貫通孔124と、6つの第1マグネット125とを有する。第1凹部122は、センサーチップ200の外形と略同一形状であり、センサーチップ200を嵌め込まれるための凹部である。第2凹部123は、スイッチモジュール130の外形と略同一形状であり、スイッチモジュール130を嵌め込まれるための凹部である。センサーチップ200の裏側の面(各接触端子が配置されている面)とスイッチモジュール130の表側の面(各コンタクトプローブが配置されている面)とは、第1貫通孔124を介して互いに対向することができる(
図8B参照)。第1貫通孔124の深さ(第1凹部122の底面と第2凹部123の底面との間隔)は、第1凹部122にセンサーチップ200を嵌め込んだときに、スイッチモジュール130の各コンタクトプローブ(後述)の抵抗値が所望の範囲内になるように適宜設定される。第1マグネット125は、蓋部127の第2マグネット129と引き合うことで、蓋部127を所定の位置に固定する。ホルダー本体121(第1マグネット125を除く)の素材は、特に限定されないが、センサー素子210との間の浮遊容量を低減する観点から樹脂が好ましい。第1マグネット125の数は、蓋部127を固定することができれば特に限定されず、任意に選択されうる。
【0047】
蓋部127は、ホルダー本体121の上に配置され、ホルダー本体121の第1凹部122に嵌め込まれたセンサーチップ200の外周部を上側から押さえつける。蓋部127は、第2貫通孔128および6つの第2マグネット129を有する。センサーチップ200のセンサー素子210は、第2貫通孔128を介して外部に露出する。したがって、センサーチップ200がホルダー部120(ホルダー本体121および蓋部127)にセットされていても、ユーザーは、センサー素子210の反応部218に検体を提供することができる。蓋部127(第2マグネット129を除く)の素材は、特に限定されないが、センサー素子210との間の浮遊容量を低減する観点から樹脂が好ましい。第2マグネット129の数は、通常第1マグネット125と同数であるが、蓋部127を固定することができれば特に限定されない。
【0048】
スイッチモジュール130は、ホルダー本体121の第2凹部123に固定されており、センサーチップ200の各接触端子(第1接触端子230、第2接触端子240、第3接触端子250および第4接触端子260)と、測定装置100の電圧印加部170および電流測定部180とを接続する。より具体的には、スイッチモジュール130は、センサーチップ200の第1接触端子230と電圧印加部170とを第1機械的接点スイッチ135を介して接続し、センサーチップ200の第2接触端子240と電圧印加部170とを第2機械的接点スイッチ136を介して接続する。また、スイッチモジュール130は、センサーチップ200の第3接触端子250および第4接触端子260と電流測定部180とを接続する。
【0049】
図9A〜Cは、スイッチモジュール130の構成を示す図である。
図9Aは、スイッチモジュール130の平面図であり、
図9Bは、スイッチモジュール130の正面図であり、
図9Cは、スイッチモジュール130の底面図である。
図9A〜Cに示されるように、スイッチモジュール130は、スイッチモジュール基板131、2つの第1コンタクトプローブ133a、2つの第2コンタクトプローブ133b、2つの第3コンタクトプローブ133c、2つの第4コンタクトプローブ133d、2つのコネクター134、2つの第1機械的接点スイッチ135、2つの第2機械的接点スイッチ136および2つの温度センサー137を有する。
【0050】
スイッチモジュール基板131は、絶縁性の板である。スイッチモジュール基板131の表側(センサーチップ200側)の面には、2つの第1コンタクトプローブ133a、2つの第2コンタクトプローブ133b、2つの第3コンタクトプローブ133cおよび2つの第4コンタクトプローブ133dが配置される。スイッチモジュール基板131は、例えばガラスコンポジット基板やガラスエポキシ基板などである。
【0051】
スイッチモジュール基板131は、2つの第5スルーホール配線132a、2つの第6スルーホール配線132b、2つの第7スルーホール配線132cおよび2つの第8スルーホール配線132dを有する。第5スルーホール配線132aは、第1コンタクトプローブ133aの直下に配置されており、第1コンタクトプローブ133aと第1機械的接点スイッチ135とを電気的に接続する。第6スルーホール配線132bは、第2コンタクトプローブ133bの直下に配置されており、第2コンタクトプローブ133bと第2機械的接点スイッチ136とを電気的に接続する。第7スルーホール配線132cは、第3コンタクトプローブ133cの直下に配置されており、第3コンタクトプローブ133cとコネクター134とを電気的に接続する。第8スルーホール配線132dは、第4コンタクトプローブ133dの直下に配置されており、第4コンタクトプローブ133dとコネクター134とを電気的に接続する。
【0052】
スイッチモジュール基板131の表側では、第5スルーホール配線132a、第6スルーホール配線132b、第7スルーホール配線132cおよび第8スルーホール配線132dは、それぞれ、プリント配線を介さずに第1コンタクトプローブ133a、第2コンタクトプローブ133b、第3コンタクトプローブ133cおよび第4コンタクトプローブ133dに接続されている。各コンタクトプローブとの接続には、ハンダや銀ペーストなどの導電性固着材などが使用されうる。一方、スイッチモジュール基板131の裏側では、第7スルーホール配線132cおよび第8スルーホール配線132dは、それぞれ、プリント配線を介してコネクター134に接続されている。また、第1機械的接点スイッチ135、第2機械的接点スイッチ136および温度センサー137も、プリント配線を介してコネクター134に接続されている。したがって、スイッチモジュール130では、プリント配線がスイッチモジュール基板131の裏側に集中している。これにより、スイッチモジュール130内における浮遊容量の低減が実現される。スイッチモジュール130内における浮遊容量を低減することで、センサー素子210を用いた測定の感度を向上できると考えられる。
【0053】
第1コンタクトプローブ133a、第2コンタクトプローブ133b、第3コンタクトプローブ133c、第4コンタクトプローブ133dは、スイッチモジュール基板131の表側(センサーチップ200側)の面に配置されている。これらは、例えばスプリングピンであり、センサーチップ200との接触端子として機能する。第1凹部122にセンサーチップ200を嵌め込んだときに、第1コンタクトプローブ133aは、センサーチップ200の第1接触端子230に接触する。同様に、第2コンタクトプローブ133bは、センサーチップ200の第2接触端子240に接触する。第3コンタクトプローブ133cは、センサーチップ200の第3接触端子250に接触する。第4コンタクトプローブ133dは、センサーチップ200の第4接触端子260に接触する。
【0054】
コネクター134は、スイッチモジュール基板131の裏側の面に配置されており、スイッチモジュール130の各素子または各端子と、電圧印加部170、電流測定部180または制御部190とを接続する。より具体的には、コネクター134は、第1コンタクトプローブ133aおよび第2コンタクトプローブ133bと電圧印加部170とを接続し、第3コンタクトプローブ133cおよび第4コンタクトプローブ133dと電流測定部180とを接続し、温度センサー137と制御部190とを接続する。この後説明するように、第1コンタクトプローブ133aとコネクター134との間には第1機械的接点スイッチ135が配置され、第2コンタクトプローブ133bとコネクター134との間には第2機械的接点スイッチ136が配置される。
【0055】
第1機械的接点スイッチ135は、第1コンタクトプローブ133aとコネクター134との間に配置され、第1容量電極211と電圧印加部170との接続状態を切り替える。同様に、第2機械的接点スイッチ136は、第2コンタクトプローブ133bとコネクター134との間に配置され、第2容量電極215と電圧印加部170との接続状態を切り替える。第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136は、押圧部140(後述)により押圧されたとき、第1容量電極211および第2容量電極215と電圧印加部170とを接続する。これにより、センサー素子210の第1容量電極211および第2容量電極215内に電荷が蓄積される。押圧部140による押圧が解除されたとき、第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136は、第1容量電極211および第2容量電極215と電圧印加部170とを遮断する。これにより、第1容量電極211および第2容量電極215内の蓄積電荷が孤立電荷となる。前述のとおり、この孤立電荷はセンサー素子210の検出感度に大きく影響を及ぼすため、蓄積電荷の経時的な変化は小さいほど好ましい。したがって、検出感度を維持する観点からは、第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136には、浮遊容量が小さく、かつオフ電流が0であることが要求される。
【0056】
上記の観点から、本実施の形態に係る測定装置100では、第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136として、押しボタン型の機械的接点スイッチを使用する。押しボタン型の機械的接点スイッチの例には、タクタイルスイッチや検知(検出)スイッチなどが含まれる。一般的な測定装置では、電気信号で制御可能なアナログスイッチやリレースイッチが使用されることが多い。しかしながら、アナログスイッチは、オフ電流が0ではなく、蓄積電荷を変化させる原因となるため、センサー素子110と組み合わせて使用するスイッチとして好ましくない(
図10A参照)。リレースイッチは、オン/オフの切り替え時にコイルの逆起電圧が発生し、スイッチ内に検出感度に影響を及ぼしうる蓄積電荷が生じてしまうため、センサー素子110と組み合わせて使用するスイッチとして好ましくない(
図10B参照)。これに対し、機械的接点スイッチは、オフ電流が0であり、かつスイッチ内に蓄積電荷が生じないため、センサー素子110と組み合わせて使用するスイッチとして好ましい(
図10C参照)。特に、タクタイルスイッチは、低背で小型化が可能であり、スイッチストロークが小さく、かつ必要とされる押圧力が小さいことから、第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136として好適である。
【0057】
図10Aは、本実施の形態に係る測定装置100において、第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136の代わりに2つのアナログスイッチを使用した場合の、可変抵抗素子217を流れる電流の経時的変化を示すグラフである。この実験では、2つのアナログスイッチをオンにした状態で第1容量電極211および第2容量電極215間に−3Vの電圧を30秒間印加した後、2つのアナログスイッチをオフにした状態で可変抵抗素子217を流れる電流を測定した(実線)。また、2つのアナログスイッチをオフにするだけでなく、さらに第1容量電極211および第2容量電極215と2つのアナログスイッチとの間の配線を除去した状態でも可変抵抗素子217を流れる電流を測定した(破線)。実線の結果から、アナログスイッチを使用した場合、可変抵抗素子217を流れる電流が経時的に変化してしまうことがわかる。2つのアナログスイッチ間の電圧に応じてグラフの傾きが変化すること、第1容量電極211および第2容量電極215と2つのアナログスイッチとの間の配線を除去すると電流の経時的変化が無くなることから、この電流の経時的変化は、アナログスイッチのオフ電流が0ではないことに起因するものと考えられる。
【0058】
図10Bは、本実施の形態に係る測定装置100において、第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136の代わりに2つのリレースイッチを使用した場合の、可変抵抗素子217を流れる電流の経時的変化を示すグラフである。この実験では、2つのリレースイッチをオンにした状態で第1容量電極211および第2容量電極215間に−3Vの電圧を30秒間印加した後、2つのリレースイッチをオフにした状態で可変抵抗素子217を流れる電流を測定した。グラフから、リレースイッチを使用した場合、可変抵抗素子217を流れる電流が測定開始直後に大きく変化(増大)してしまうことがわかる。この電流の一時的な変化は、オン/オフの切り替え時にコイルの逆起電圧が発生し、スイッチ内に生じた蓄積電荷に起因するものと考えられる。
【0059】
図10Cは、本実施の形態に係る測定装置100において、第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136として2つのタクタイルスイッチを使用した場合の、可変抵抗素子217を流れる電流の経時的変化を示すグラフである。この実験では、2つのタクタイルスイッチをオンにした状態で第1容量電極211および第2容量電極215間に−3Vの電圧を30秒間印加した後、2つのタクタイルスイッチをオフにした状態で可変抵抗素子217を流れる電流を測定した。グラフから、タクタイルスイッチを使用した場合、アナログスイッチまたはリレースイッチを使用した場合と異なり、可変抵抗素子217を流れる電流が少なくとも30分以上安定であることがわかる。
【0060】
温度センサー137は、スイッチモジュール基板131の裏側の面に配置されており、センサーチップ200の周辺環境の温度を検出する。検出値は、コネクター134を介して制御部190に出力される。センサー素子210の検出感度は温度依存性があるため、制御部190は、温度センサー137からの出力値を利用して検出値の補正を行うことが好ましい。温度センサー137の数は、特に限定されないが、本実施の形態のように2つの温度センサー137を使用することで、センサーチップ200の周辺環境の温度を高精度に検出することができる。
【0061】
(押圧部)
押圧部140は、第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136を押圧して、第1容量電極211および第2容量電極215と電圧印加部170との接続状態を切り替える。
図2に示されるように、本実施の形態では、測定装置100は2つの押圧部140を有し、各押圧部140は、1つの第1機械的接点スイッチ135および1つの第2機械的接点スイッチ136を同時に押圧する。
【0062】
図11は、押圧部140の構成を示す分解斜視図である。
図12は、押圧部140の構成を示す斜視図である。
図13は、押圧部140の構成を示す側面図である。
図13では、理解の促進のため、押圧部140とともに、センサーチップ200およびチップホルダー110(ホルダー本体121、蓋部127およびスイッチモジュール130)も図示している。
図11〜13に示されるように、押圧部140は、アクチュエータ150および増大機構160を有する。
【0063】
アクチュエータ150は、第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136を押圧するための押圧力を発生させる動力源である。アクチュエータ150の種類は、増大機構160を介して第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136を押圧することで、第1容量電極211および第2容量電極215と電圧印加部170との接続状態を切り替えることができれば特に限定されない。本実施の形態では、アクチュエータ150は、小型でかつ高速で応答可能なプル型のソレノイドアクチュエータである。本実施の形態の測定装置100では、アクチュエータ150の押圧力を増大機構160により増大するため、アクチュエータ150としてソレノイドアクチュエータを使用しても第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136を切り替えることができる。
【0064】
増大機構160は、アクチュエータ150から加えられた押圧力を、てこの原理により増大させて第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136に伝達する。増大機構160は、伝達部161および増大部166を有する。
【0065】
伝達部161は、アクチュエータ150の可動部に固定されており、アクチュエータ150から加えられた押圧力を、増大部166の力点に設けられた入力面167に伝達する。伝達部161は、アクチュエータ150の可動部を嵌め込まれるための第3凹部162と、増大部166の入力面167に対向する押圧面163とを有する。
【0066】
増大部166は、伝達部161から伝達された押圧力を、てこの原理により増大させて第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136に伝達する。増大部166は、伝達部161の押圧面163に対向する入力面167と、第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136に対向するプッシュロッド168と、入力面167およびプッシュロッド168の間に配置された軸部169とを有する。入力面167は力点として機能し、プッシュロッド168は作用点として機能し、軸部169は支点として作用する。プッシュロッド168は、円柱形状をしている。すなわち、増大機構161の第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136に対する接触面は、円柱面の一部を構成する。てこの原理の支点となる軸部169は、ホルダー本体121に設けられた支点用貫通孔126により支持される(
図8Bおよび
図13参照)。軸部169の基端部には、マイクロベアリングが取り付けられている。
【0067】
(電圧印加部、電流測定部および制御部)
電圧印加部170は、スイッチモジュール130のコネクター134を介して第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136に接続されている。第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136がオンのとき、電圧印加部170は、センサーチップ200のセンサー素子210の第1容量電極211および第2容量電極215に接続される。電圧印加部170は、第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136がオンのとき、第1容量電極211と第2容量電極215の間に電圧を印加する。
【0068】
電流測定部180は、スイッチモジュール130のコネクター134を介して、センサーチップ200のセンサー素子210の可変抵抗素子217(第3端子217bおよび第4端子217c)に接続される。電流測定部180は、可変抵抗素子217を流れる電流値を測定する。
【0069】
制御部190は、アクチュエータ150、電圧印加部170および電流測定部180に接続されており、これらの動作を制御する。また、制御部190は、スイッチモジュール130のコネクター134を介して、スイッチモジュール130の温度センサー137にも接続されており、センサーチップ200の周辺環境の温度に応じて電流測定部180の測定値を補正する。制御部190は、例えば、ソフトウェアを実行するコンピュータである。
【0070】
(測定装置の使用方法)
次に、
図2に示される測定装置100を用いた被検出物質の検出手順の一例について説明する。
【0071】
まず、センサーチップ200をチップホルダー110に保持させる。具体的には、ホルダー本体121の第1凹部122にセンサーチップ200を嵌め込んだ後、センサーチップ200上に蓋部127を配置する。ホルダー本体121の第1マグネット125と蓋部127の第2マグネット129とが引き合うことで、センサーチップ200が固定される。これにより、センサーチップ200の各接触端子は、スイッチモジュール130の各コンタクトプローブと接続される。
【0072】
次いで、センサーチップ200の2つのセンサー素子210について同時に、第1容量電極211と第2容量電極215との間に所定の電圧を印加する。具体的には、制御部190は、アクチュエータ150を動作させて、第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136を押圧し、センサーチップ200の第1容量電極211および第2容量電極215と電圧印加部170とを接続させる。そして、制御部190は、電圧印加部170に、第1容量電極211と第2容量電極215との間に所定の電圧を印加させる。これにより、2つのセンサー素子210のそれぞれにおいて、第1容量電極211および第2容量電極215内に印加電圧および容量の容量値で一義的に制御できる電荷を蓄積することができる。
【0073】
次いで、センサーチップ200の2つのセンサー素子210について同時に、第1容量電極211および第2容量電極215を電圧印加部170から切り離す。具体的には、制御部190は、アクチュエータ150を動作させて、第1機械的接点スイッチ135および第2機械的接点スイッチ136への押圧を解除し、センサーチップ200の第1容量電極211および第2容量電極215と電圧印加部170とを切断させる。これにより、2つのセンサー素子210のそれぞれにおいて、第1容量電極211および第2容量電極215内の蓄積電荷が孤立電荷となる。
【0074】
この状態で、2つのセンサー素子210のそれぞれにおいて、可変抵抗素子217の第3端子217bと第4端子217cとの間に同一の所定の電圧を印加して、可変抵抗素子217を流れる電流値を測定する。具体的には、制御部190は、電流測定部180に、検出用のセンサー素子210の可変抵抗素子217における電流値と、参照用のセンサー素子210の可変抵抗素子217における電流値との差分値を測定させる。この差分値が0でない場合は、電流測定部180において差分値が0となるようにオフセット調整をする。
【0075】
次いで、検出用のセンサー素子210において反応部218に検体を提供し、検体に含まれる被検出物質と反応部218に固定化された認識物質219とを反応させる。このとき、参照用のセンサー素子210の反応部218には検体を提供しない。
【0076】
この状態で、再度、2つのセンサー素子210のそれぞれにおいて、可変抵抗素子217の第3端子217bと第4端子217cとの間に所定の電圧(一回目の測定と同じ電圧)を印加して、可変抵抗素子217を流れる電流値を測定する。具体的には、制御部190は、電流測定部180に、検出用のセンサー素子210の可変抵抗素子217における電流値と、参照用のセンサー素子210の可変抵抗素子217における電流値とを測定させる。検体提供前の一回目の測定では、可変抵抗素子217の抵抗値が、第1容量電極211内に蓄積された孤立電荷により形成される電界で決まる。一方、検体提供後の二回目の測定では、可変抵抗素子217の抵抗値が、第1容量電極211内に蓄積された孤立電荷と、反応部218で生成された電荷によって分極誘起された第1容量電極211内の電荷とにより形成される電界で決まる。検体提供前に2つのセンサー素子210の電流値の差分が0になるように調整してあるので、検体提供後の2つのセンサー素子210の電流値の差分は、検出用のセンサー素子210の反応部218で生成された電荷の効果のみを反映する値である。また、2つのセンサー素子210の電流値の差分は、感度を向上させるために、電流測定部180を用いて増幅されうる。したがって、2つのセンサー素子210の電流値の差分値を測定することで、被検出物質の存在または量を検出することができる。
【0077】
このように、2つのセンサー素子210の電流値の差分値を測定することで、2つのセンサー素子210に共通する変動要因の影響を解消でき、被検出物質の効果のみを高感度に検出することができる。すなわち、センサーチップ200を用いて、高感度かつ高精度に、被検出物質の存在または量を検出することができる。
【0078】
以上のように、本実施の形態に係るセンサー素子210を含むセンサーチップ200は、従来のセンサー素子(特許文献1,2参照)のように反応部に電極を繰り返し接触させる必要がないため、高い精度で安定して被検出物質の存在または量を検出することができる。また、本実施の形態に係るセンサー素子210を含むセンサーチップ200は、第1容量電極211内の孤立電荷の量を調整することで、検出感度を容易にかつ安定して向上させることができる。
【0079】
また、本実施の形態に係る測定装置100は、押しボタン型の第1機械的接点スイッチ135および押しボタン型の第2機械的接点スイッチ136を介して、センサー素子210の第1容量電極211および第2容量電極215への電圧の印加を制御するため、第1容量電極211内の孤立電荷の量を長時間にわたり安定して維持することができる。したがって、本実施の形態に係る測定装置100は、高感度な検出を安定して行うことができる。