(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこのような加工食品の中には、例えばジャムパン,あんパン,クリームパンのように商品の中身が実際には異なるものの、外観や重量では判別できない商品が多くある。
【0005】
このような加工食品の場合、従来行っていたような目視チェックや画像チェックでは、チェック機能を果たさないため、加工食品を一部抜き取って中身を割って確認する抜き取りチェックが行われており、必ずしも満足のいくチェックがなされていないものであった。
【0006】
さらにこのような抜き取りチェックは、実際に割って中身を確認するため、チェック後には商品として売り物にはならず、非常にコストを要するチェック方法であり、更なるチェック方法が求められていたのが実情である。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑み、実際に割って中身を確認する必要がなく、しかも高精度に識別することのできる加工食品識別装置および加工食品識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、
本発明の加工食品識別装置は、
被識別加工食品の識別を行う加工食品識別装置であって、
識別対象となる被識別加工食品に対して測定用光を照射する光源と、
前記光源より照射された測定用光において前記被識別加工食品を透過した透過光を受光する透過光受光部と、
前記光源より照射された測定用光において前記被識別加工食品に反射した反射光を受光する反射光受光部と、
前記被識別加工食品の識別を行う識別手段と、
を少なくとも備え、
前記識別手段が、
予め参照加工食品の透過光の光量データを元に、前記参照加工食品の第1参照データを作成して保存
するとともに、前記第1参照データに基づき、前記参照加工食品の真とみなす所定範囲を設定し、
予め前記参照加工食品の反射光の光量データを元に、前記参照加工食品の第2参照データを作成して保存するとともに、前記第2参照データに基づき、前記参照加工食品の真とみなす所定範囲を設定し、
さらに前記光源から照射され透過光受光部で受光した被識別加工食品の透過光の光量データを元に、前記被識別加工食品の第1測定データを作成し、
前記光源から照射され反射光受光部で受光した被識別加工食品の反射光の光量データを元に、前記被識別加工食品の第2測定データを作成し、
前記第1参照データに基づく真とみなす所定範囲と前記被識別加工食品の第1測定データとに基づく識別と、前記第2参照データに基づく真とみなす所定範囲と前記被識別加工食品の第2測定データとに基づく識別とを行い、両方の識別結果に基づき、前記被識別加工食品の識別を行うことを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の加工食品識別方法は、
被識別加工食品の識別を行う加工食品識別方法であって、
識別対象となる被識別加工食品に対して光源より測定用光を照射する工程と、
前記光源より照射された測定用光において前記被識別加工食品を透過した透過光を透過光受光部で受光する工程と、
前記光源より照射された測定用光において前記被識別加工食品に反射した反射光を反射光受光部で受光する工程と、
前記被識別加工食品の識別を行う工程と、
を少なくとも有し、
前記識別を行う工程が、
識別手段に、予め参照加工食品の透過光の光量データを元に、前記参照加工食品の第1参照データを作成して保存
するとともに、前記第1参照データに基づき、前記参照加工食品の真とみなす所定範囲を設定し、
予め前記参照加工食品の反射光の光量データを元に、前記参照加工食品の第2参照データを作成して保存するとともに、前記第2参照データに基づき、前記参照加工食品の真とみなす所定範囲を設定し、
さらに前記光源から照射され透過光受光部で受光した被識別加工食品の透過光の光量データを元に、前記被識別加工食品の第1測定データを作成し、
前記光源から照射され反射光受光部で受光した被識別加工食品の反射光の光量データを元に、前記被識別加工食品の第2測定データを作成し、
前記第1参照データに基づく真とみなす所定範囲と前記被識別加工食品の第1測定データとに基づく識別と、前記第2参照データに基づく真とみなす所定範囲と前記被識別加工食品の第2測定データとに基づく識別とを行い、両方の識別結果に基づき、前記被識別加工食品の識別を行うことを特徴とする。
【0010】
このように参照加工食品の第1参照データと、被識別加工食品の第1測定データと、に基づいて被識別加工食品の識別を行うようにすれば、被識別加工食品を実際に割って中身(品種)を確認する必要がなく、非破壊で高精度に中身(品種)を識別することができる。
さらに、透過光の光量データとともに、反射光の光量データも利用すれば、例えば被識別加工食品の中身(品種)のチェックとともに、表層の相違についても識別でき、中身(品種)のチェックと表層チェックとを合わせて行うことができ、さらに確実な識別を行うことができる。
【0011】
また、本発明の加工食品識別装置は、
前記識別手段が、
予め複数種類の参照加工食品の透過光の光量データを元に、前記複数種類の参照加工食品の第1参照データを作成して保存し、
さらに被識別加工食品の透過光の光量データを元に、前記被識別加工食品の第1測定データを作成し、
前記複数種類の参照加工食品の第1参照データに、得られた前記被識別加工食品の第1測定データを当て嵌め、
前記被識別加工食品の第1測定データが、前記複数種類の参照加工食品の第1参照データに基づいて定められた、前記複数種類の参照加工食品のそれぞれの真とみなす所定範囲内に入る場合には、前記被識別加工食品が前記複数種類の参照加工食品のいずれであるか特定し、
前記被識別加工食品の第1測定データが、前記複数種類の参照加工食品の第1参照データに基づいて定められた、前記複数種類の参照加工食品のそれぞれの真とみなす所定範囲内に入らない場合には、前記被識別加工食品が複数種類の参照加工食品のいずれにも該当しないと判別することを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の加工食品識別方法は、
前記識別を行う工程が、
予め複数種類の参照加工食品の透過光の光量データを元に、前記複数種類の参照加工食品の第1参照データを作成して保存し、
さらに被識別加工食品の透過光の光量データを元に、前記被識別加工食品の第1測定データを作成し、
前記複数種類の参照加工食品の第1参照データに、得られた前記被識別加工食品の第1測定データを当て嵌め、
前記被識別加工食品の第1測定データが、前記複数種類の参照加工食品の第1参照データに基づいて定められた、前記複数種類の参照加工食品のそれぞれの真とみなす所定範囲内に入る場合には、前記被識別加工食品が前記複数種類の参照加工食品のいずれであるか特定し、
前記被識別加工食品の第1測定データが、前記複数種類の参照加工食品の第1参照データに基づいて定められた、前記複数種類の参照加工食品のそれぞれの真とみなす所定範囲内に入らない場合には、前記被識別加工食品が複数種類の参照加工食品のいずれにも該当しないと判別することを特徴とする。
【0013】
このように複数種類の参照加工食品の第1参照データに、得られた被識別加工食品の第1測定データを当て嵌めれば、被識別加工食品が複数種類の参照加工食品のいずれであるか、またはいずれにも該当しないかを確実に判別することができる。
【0014】
また、本発明の加工食品識別装置は、
前記識別手段が、
予め前記参照加工食品の透過光の光量データを元に、前記参照加工食品の第1参照データを作成して保存し、
さらに前記被識別加工食品の透過光の光量データを元に、前記被識別加工食品の第1測定データを作成し、
前記参照加工食品の第1参照データと、得られた前記被識別加工食品の第1測定データと、を対比させ、
前記被識別加工食品の第1測定データが、前記参照加工食品の第1参照データに基づいて定められた、前記参照加工食品の真とみなす所定範囲内に入る場合には、前記被識別加工食品が、前記参照加工食品と同一であると判別し、
前記被識別加工食品の第1測定データが、前記参照加工食品の第1参照データに基づいて定められた、前記参照加工食品の真とみなす所定範囲内に入らない場合には、前記被識別加工食品が、前記参照加工食品と異なると判別することを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の加工食品識別方法は、
前記識別を行う工程が、
予め前記参照加工食品の透過光の光量データを元に、前記参照加工食品の第1参照データを作成して保存し、
さらに前記被識別加工食品の透過光の光量データを元に、前記被識別加工食品の第1測定データを作成し、
前記参照加工食品の第1参照データと、得られた前記被識別加工食品の第1測定データと、を対比させ、
前記被識別加工食品の第1測定データが、前記参照加工食品の第1参照データに基づいて定められた、前記参照加工食品の真とみなす所定範囲内に入る場合には、前記被識別加工食品が、前記参照加工食品と同一であると判別し、
前記被識別加工食品の第1測定データが、前記参照加工食品の第1参照データに基づいて定められた、前記参照加工食品の真とみなす所定範囲内に入らない場合には、前記被識別加工食品が、前記参照加工食品と異なると判別することを特徴とする。
【0016】
このように参照加工食品の第1参照データと、得られた被識別加工食品の第1測定データと、を対比するようにすれば、被識別加工食品が参照加工食品と同じであるか否かを確実に判別することができる。
【0020】
また、本発明の加工食品識別装置は、
前記識別手段が、
予め複数種類の参照加工食品の反射光の光量データを元に、前記複数種類の参照加工食品の第2参照データを作成して保存し、
さらに被識別加工食品の反射光の光量データを元に、前記被識別加工食品の第2測定データを作成し、
前記複数種類の参照加工食品の第2参照データに、得られた前記被識別加工食品の第2測定データを当て嵌め、
前記被識別加工食品の第2測定データが、前記複数種類の参照加工食品の第2参照データに基づいて定められた、前記複数種類の参照加工食品のそれぞれの真とみなす所定範囲内に入る場合には、前記被識別加工食品が前記複数種類の参照加工食品のいずれであるか特定し、
前記被識別加工食品の第2測定データが、前記複数種類の参照加工食品の第2参照データに基づいて定められた、前記複数種類の参照加工食品のそれぞれの真とみなす所定範囲内に入らない場合には、前記被識別加工食品が複数種類の参照加工食品のいずれにも該当しないと判別することを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明の加工食品識別方法は、
前記識別を行う工程が、
予め複数種類の参照加工食品の反射光の光量データを元に、前記複数種類の参照加工食品の第2参照データを作成して保存し、
さらに被識別加工食品の反射光の光量データを元に、前記被識別加工食品の第2測定データを作成し、
前記複数種類の参照加工食品の第2参照データに、得られた前記被識別加工食品の第2測定データを当て嵌め、
前記被識別加工食品の第2測定データが、前記複数種類の参照加工食品の第2参照データに基づいて定められた、前記複数種類の参照加工食品のそれぞれの真とみなす所定範囲内に入る場合には、前記被識別加工食品が前記複数種類の参照加工食品のいずれであるか特定し、
前記被識別加工食品の第2測定データが、前記複数種類の参照加工食品の第2参照データに基づいて定められた、前記複数種類の参照加工食品のそれぞれの真とみなす所定範囲内に入らない場合には、前記被識別加工食品が複数種類の参照加工食品のいずれにも該当しないと判別することを特徴とする。
【0022】
このように複数種類の参照加工食品の第2参照データに、得られた被識別加工食品の第2測定データを当て嵌めれば、被識別加工食品が複数種類の参照加工食品のいずれであるか、またはいずれにも該当しないかを確実に判別することができる。
【0023】
また、本発明の加工食品識別装置は、
前記識別手段が、
予め前記参照加工食品の反射光の光量データを元に、前記参照加工食品の第2参照データを作成して保存し、
さらに前記被識別加工食品の反射光の光量データを元に、前記被識別加工食品の第2測定データを作成し、
前記参照加工食品の第2参照データと、得られた前記被識別加工食品の第2測定データと、を対比させ、
前記被識別加工食品の第2測定データが、前記参照加工食品の第2参照データに基づいて定められた、前記参照加工食品の真とみなす所定範囲内に入る場合には、前記被識別加工食品が、前記参照加工食品と同一であると判別し、
前記被識別加工食品の第2測定データが、前記参照加工食品の第2参照データに基づいて定められた、前記参照加工食品の真とみなす所定範囲内に入らない場合には、前記被識別加工食品が、前記参照加工食品と異なると判別することを特徴とする。
【0024】
さらに、本発明の加工食品識別方法は、
前記識別を行う工程が、
予め前記参照加工食品の反射光の光量データを元に、前記参照加工食品の第2参照データを作成して保存し、
さらに前記被識別加工食品の反射光の光量データを元に、前記被識別加工食品の第2測定データを作成し、
前記参照加工食品の第2参照データと、得られた前記被識別加工食品の第2測定データと、を対比させ、
前記被識別加工食品の第2測定データが、前記参照加工食品の第2参照データに基づいて定められた、前記参照加工食品の真とみなす所定範囲内に入る場合には、前記被識別加工食品が、前記参照加工食品と同一であると判別し、
前記被識別加工食品の第2測定データが、前記参照加工食品の第2参照データに基づいて定められた、前記参照加工食品の真とみなす所定範囲内に入らない場合には、前記被識別加工食品が、前記参照加工食品と異なると判別することを特徴とする。
【0025】
このように参照加工食品の第2参照データと、得られた被識別加工食品の第2測定データと、を対比するようにすれば、被識別加工食品が参照加工食品と同一であるか否かを確実に判別することができる。
【0026】
また、本発明の加工食品識別装置および加工食品識別方法は、
前記光源より照射される測定用光の波長が、400〜1700nmの範囲内であることを特徴とする。
このような波長の範囲内であれば、確実に被識別加工食品の識別を行うことができ好ましい。
【0027】
また、本発明の加工食品識別装置および加工食品識別方法は、
前記光源が、
ハロゲンランプ,または識別に必要な特定波長のLEDまたはLEDアレイのいずれかであることを特徴とする。
【0028】
このような種類の光源であれば、確実に被識別加工食品の識別を行うことができる。なお、被識別加工食品に多くの熱量が加わることを防止したい場合には、熱量の比較的少ないLEDまたはLEDアレイのいずれかを選択することが好ましい。
【0029】
また、本発明の加工食品識別装置および加工食品識別方法は、
前記被識別加工食品および参照加工食品が、
光透過性の包装材で包装されていることを特徴とする。
このような被識別加工食品および参照加工食品は、包装されていても包装されていなくても、識別を行うことができるが、本発明の加工食品識別装置および加工食品識別方法では、少なくとも透過光の光量データを利用するため、包装材で包装されている場合には、包装材が光透過性の包装材(光透過性包装材)である必要がある。例えばアルミ製包装材のように、光を透過しない包装材では透過光の光量データを得ることができない。
【0032】
なお、中身となる被識別加工食品の識別に影響を及ぼさない、例えば包装材の外周部分にアルミなどが用いられている場合などには、識別は可能である。
本発明においては、最低限、被識別加工食品の上下と側部に位置する包装材について、透過光の光量データを得ることができる光透過性包装材であることが重要である。
【0033】
また、本発明の加工食品識別装置および加工食品識別方法は、
前記被識別加工食品および参照加工食品が、
ベルトコンベアを備えてなる搬送ライン上に載置されて連続的に搬送されることを特徴とする。
このようにベルトコンベアを備えてなる搬送ライン上に載置されて連続的に搬送されていれば、複数種類の被識別加工食品を、短時間で効率的に識別することができる。
【0034】
また、本発明の加工食品識別装置は、
前記搬送ラインの上流から下流に向けて搬送される前記参照加工食品および被識別加工食品に対し、前記上流から下流に向けて所定の間隔毎に透過光の光量データおよび/または反射光の光量データを取得し、
前記所定の間隔毎に対応する前記透過光の光量データおよび/または反射光の光量データから、前記参照加工食品および被識別加工食品の所定の間隔毎の中身の位置および/または中身の量を特定するよう構成されていることを特徴とする。
【0035】
さらに、本発明の加工食品識別方法は、
前記搬送ラインの上流から下流に向けて搬送される前記参照加工食品および被識別加工食品に対し、前記上流から下流に向けて所定の間隔毎に透過光の光量データおよび/または反射光の光量データを取得し、
前記所定の間隔毎に対応する前記透過光の光量データおよび/または反射光の光量データから、前記参照加工食品および被識別加工食品の所定の間隔毎の中身の位置および/または中身の量を特定することを特徴とする。
【0036】
このように所定の間隔毎の中身の位置および/または中身の量を特定するようにすれば、被識別加工食品を所定の間隔毎に分割して情報を得ることができるため、位置情報を得ることができ、例えば被識別加工食品の中身の品質に加えて、被識別加工食品の中身の位置や中身の量も判別することができ、より高精度に被識別加工食品の識別を行うことができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の加工食品識別装置および加工食品識別方法によれば、少なくとも参照加工食品の透過光の光量データを元に、参照加工食品の第1参照データを作成するとともに、被識別加工食品の透過光の光量データを元に、被識別加工食品の第1測定データを作成し、この参照加工食品の第1参照データと被識別加工食品の第1測定データとに基づいて、被識別加工食品の識別を行うため、被識別加工食品を割って実際に中身を確認する必要がなく、非破壊で高精度に中身(品種)を識別することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいてより詳細に説明する。
本発明の加工食品識別装置および加工食品識別方法は、識別対象となる被識別加工食品が、所望(真)の加工食品で有るか否か、または複数種類の加工食品において具体的にどの加工食品で有るか否かの識別を行うものである。
【0040】
なお、本明細書中で「被識別加工食品」とは、実際に識別対象となる加工食品であり、「参照加工食品」とは、識別の際に参照用となる正しい真の加工食品である。
また「第1参照データ」は、参照加工食品の透過光の光量データを検量線処理して得られたデータ,もしくは参照加工食品の透過光の光量データをスペクトル処理して得られたデータであり、「第2参照データ」は、参照加工食品の反射光の光量データを検量線処理して得られたデータ,もしくは参照加工食品の反射光の光量データをスペクトル処理して得られたデータである。
【0041】
さらに「第1測定データ」は、被識別加工食品の透過光の光量データを検量線処理して得られたデータ,もしくは被識別加工食品の透過光の光量データをスペクトル処理して得られたデータであり、「第2測定データ」は、被識別加工食品の反射光の光量データを検量線処理して得られたデータ,もしくは被識別加工食品の反射光の光量データをスペクトル処理して得られたデータである。
【0042】
検量線処理の例としては、光量データを1次微分,2次微分などする方法が挙げられる。但し、本明細書中における「第1参照データ」には、光量データを元に算出された透過率,吸光度なども含まれ、さらに参照加工食品の透過光の光量データそのものも含まれ、また「第2参照データ」には、光量データを元に算出された透過率,吸光度なども含まれ、さらに参照加工食品の反射光の光量データそのものも含まれるものである。
【0043】
また、本明細書中における「第1測定データ」には、被識別加工食品の透過光の光量データそのものも含まれ、また「第2測定データ」には、被識別加工食品の反射光の光量データそのものも含まれるものである。
【0044】
「光量データ」としては、透過光量などが挙げられる。
さらに、図面における被識別加工食品(参照加工食品)は、説明の便宜上、中身が確認できるよう断面形状を記しているが、本来は全く中身の確認が不能な状態で識別が行われるものである。
【0045】
[第1の実施形態]
図1に示したように、本発明の加工食品識別装置10は、識別対象となる被識別加工食品60に対して測定用光22を照射する光源20と、この光源20より照射された測定用光22において被識別加工食品60を透過した透過光24を受光する透過光受光部30と、被識別加工食品の識別を行う識別手段40と、を少なくとも備えて成るものである。
【0046】
そして、この識別手段40は、予め真となる参照加工食品70の透過光24の光量データを取得し、この参照加工食品70の透過光24の光量データを元に、参照加工食品70の第1参照データを作成して保存し、さらに、光源20から照射され透過光受光部30で受光した被識別加工食品60の透過光24の光量データを元に、被識別加工食品60の第1測定データを作成する。
【0047】
そして、最後に参照加工食品70の第1参照データと被識別加工食品60の第1測定データに基づいて、被識別加工食品60の識別を行っている。
図1中、符号64は被識別加工食品60の中身、74は参照加工食品70の中身である。
【0048】
そして本実施形態の加工食品識別装置10では、被識別加工食品60および参照加工食品70は搬送ライン50上に載置され、
図1中矢印で示した搬送方向52(
図1では左から右の方向)に連続的に搬送されるようになっている。
【0049】
搬送ライン50は、例えばベルトコンベアの真ん中に隙間を形成しておき、この隙間を介して光源20からの測定用光22を透過光受光部30で受光できるように構成することが好ましい。
【0050】
ここで光源20より照射される測定用光22の波長は、400〜1700nmの範囲内であることが好ましく、500〜1000nmの範囲内であることがさらに好ましい。
光源20の具体的な例としては、ハロゲンランプ,識別に必要な特定波長のLEDまたはLEDアレイなどが挙げられ、主に近赤外光,可視光が用いられる。
【0051】
また測定用光22は、略平行光であっても良く、スリット板,レンズなどを配置して集光したスポット光であっても良いものである。
さらに光源20は、照射される測定用光22の強さを調整可能な調整装置(図示せず)が設けられていても良いものである。
【0052】
なお、識別対象となる被識別加工食品60や参照用となる参照加工食品70(真の加工食品)は、包装材(図示せず)で包装されていない状態であっても、または包装材で包装されて成る状態であっても構わないものである。
【0053】
但し、包装材で包装されて成る状態の場合には、包装材が光透過性包装材である必要がある。理由としては、アルミ製包装材のように光を透過しない包装材は透過光の光量データを得ることができないためである。
【0054】
光透過性包装材としては特に限定されるものではないが、例えばプラスチックフィルム、ビニールなどを挙げることができる。
なお、包装材の外周部分にのみアルミなどが用いられている場合など、被識別加工食品60や参照用となる真の参照加工食品70のデータ取得に影響を与えないような場合には、部分的に光を透過しない包装材を用いても良いものである。
【0055】
また透過光受光部30としては、近赤外分光カメラ(受光素子としてフォトダイオード、CCDなど)、バンドパスフィルタとフォトダイオードの組合せなどを用いることができる。
【0056】
さらに識別手段40としては、透過光24,72の光量データおよび後述する反射光84,86の光量データを取得し、参照加工食品70の第1参照データおよび第2参照データを作成して保存し、さらに第1測定データおよび第2測定データを作成し、参照加工食品70の第1参照データおよび第2参照データと、被識別加工食品60の第1測定データおよび第2測定データと、に基づいて被識別加工食品60の識別を行うため、専用高速演算装置、またはパーソナルコンピュータ(PC)などのハードディスク(HDD)を備える演算装置を用いることが好ましい。
【0057】
識別手段40による参照加工食品70の第1参照データおよび第2参照データの保存は、
参照加工食品70の第1参照データおよび第2参照データを取得した時点で行われれば良いものであるが、透過光72の光量データおよび後述する反射光86の光量データを取得した時点で一端保存しておくようにしても良いものである。
【0058】
なお識別手段40は、他にも光源20,80の劣化を感知したり、透過光受光部30や後述する反射光受光部90,処理基板(図示せず)などの温度依存を補正するための補正手段(図示せず)を備えても良いものである。
【0059】
補正手段については、これらの温度依存を補正するためのプログラミングソフトおよび演算処理部(図示せず)を備え、例えば非接触の放射温度計を用いた温度センサーを用いることが好ましい。
【0060】
このような補正手段(図示せず)を備えることにより、環境温度の変化(生産する時期や場所により温度が相違)や加工食品そのものの温度の変化(生産したばかりの加工食品と、時間を置いた加工食品とでは、温度が相違)によるドリフト等を補正することができ、被識別加工食品60の識別の繰り返し精度を長期維持させることができる。
【0061】
具体例としては、環境温度の変化に合わせ、参照加工食品のデータを40℃,20℃,10℃のように複数の温度の異なる環境下で収集しておき、実際の被識別加工食品60のデータ収集の際に参照加工食品70のデータを収集した際の環境温度と相違する場合には、検量線処理により、被識別加工食品60のデータを参照加工食品70のデータに合わせて補正することができる。加工食品自体の温度の変化についても環境温度の変化の場合と同様にして、複数の温度の違いによる参照加工食品のデータを収集しておくようにすれば良い。
【0062】
また参照加工食品70および被識別加工食品60については特に限定されるものではないが、例えばパン,おにぎり,和菓子(饅頭,大福),洋菓子(チョコレート,ケーキ),冷凍食品(餃子,ハンバーグ)などが挙げられる。
【0063】
このような外観からは概ね中身(品質)の識別が困難な加工食品の識別に、本発明の加工食品識別装置10および加工食品識別方法が好適である。
このようにしてなる本実施形態の加工食品識別装置10では、特に参照加工食品(真の加工食品)70の透過光72の光量データを元に作成された参照加工食品70の第1参照データと、被識別加工食品60の透過光24の光量データを元に作成された被識別加工食品60の第1測定データと、に基づいて被識別加工食品60の識別が行われる。
【0064】
以下、具体的な識別方法について詳しく説明する。
<識別方式1>
まず、
図1に示した搬送ライン50上に参照加工食品(真の加工食品)70を載せ、矢印で示した搬送方向52に搬送しながら参照加工食品70の上方に位置する光源20から、参照加工食品70に測定用光22を照射し、参照加工食品70の下方に位置する透過光受光部30で参照加工食品70を透過した透過光72を受光する。
【0065】
光源20からの測定用光22の照射および透過光受光部30での透過光72の受光は、初め参照加工食品70が無い状態から始まり、参照加工食品70の右側の端部から左側の端部に至るまで行われ、所定の間隔ごとに参照加工食品70の透過光72の光量データが得られる。
【0066】
そして、得られた参照加工食品70の所定の間隔ごとの光量データを取得し、この参照加工食品70の光量データの取得を、複数種類の参照加工食品70a,70b,70cに対してそれぞれ行う。ここで複数種類の参照加工食品70a,70b,70cはそれぞれ別の品種(外観は同じでも中身がそれぞれ異なる真の加工食品であり、例えばジャムパン,あんパン,チョコパンなど)を意味するものである。
【0067】
複数種類の参照加工食品70a,70b,70cのそれぞれの所定の間隔ごとの透過光72の光量データは、検量線処理され、それぞれの第1参照データが作成され、これが識別手段40に保存される。
【0068】
本識別方式1では、
図2に示したように、第1参照データとして、参照加工食品70aを番号「1」と設定し、同様に参照加工食品70bを番号「2」,参照加工食品70cを番号「3」と設定することとする。
図2ではX軸方向に、複数種類の参照加工食品70a,70b,70cのそれぞれに対して設定した番号順に並べている。)
なお、それぞれの参照加工食品70a,70b,70cをどのように設定するかについて特に限定されるものではなく、例えば「A」,「B」,「C」や「○」,「△」,「□」などと設定しても良いものである。
【0069】
そして、この番号が設定された参照加工食品70a,70b,70cのそれぞれの第1参照データを元にして、それぞれの参照加工食品70a,70b,70cに対して「真とみなす所定範囲」を設定する。「真とみなす所定範囲」とは、本物の加工食品であるとみなすことのできる範囲のことである。
【0070】
例えば
図2においては、それぞれの参照加工食品70a,70b,70cに対して各5個の第1参照データを元に、真とみなす所定範囲が設定される。点線で囲われた範囲32は、参照加工食品70aとみなす範囲、点線で囲われた範囲34は、参照加工食品70bとみなす範囲、点線で囲われた範囲36は、参照加工食品70cとみなす範囲である。
【0071】
次に、実際に識別したい被識別加工食品60を、上記した参照加工食品70a,70b,70cの場合と同じように搬送ライン50上に載せ、矢印で示した搬送方向52に搬送しながら、今度は被識別加工食品60の上方に位置する光源20から、被識別加工食品60に測定用光22を照射し、被識別加工食品60の下方に位置する透過光受光部30で被識別加工食品60を透過した透過光24を受光する。
【0072】
光源20からの測定用光22の照射および透過光受光部30での透過光24の受光は、初め被識別加工食品60が無い状態から始まり、被識別加工食品60の右側の端部から左側の端部に至るまで行われ、所定の間隔ごとに被識別加工食品60の透過光24の光量データが得られる。
【0073】
そして、この被識別加工食品60の透過光24の光量データを、検量線処理し、それぞれの第1測定データを作成する。
次いで、予め識別手段40で作成しておいた参照加工食品70の第1参照データに、被識別加工食品60の第1測定データを当て嵌める。具体的には、
図2に示した参照加工食品70a,70b,70cのそれぞれの真とみなす所定範囲32,34,36に対して、被識別加工食品60の第1測定データを当て嵌め、被識別加工食品60の第1測定データが、
図2に示した複数種類の参照加工食品70a,70b,70cの真とみなす所定範囲32,34,36内のいずれかに入った場合には、被識別加工食品60が具体的に複数種類の参照加工食品70a,70b,70cのいずれであるか特定することができる。
【0074】
例えば所定範囲32内に被識別加工食品60の第1測定データが入った場合には、この被識別加工食品60は、参照加工食品70aと同一であると識別することができる。
被識別加工食品60を具体的に特定した際には、その特定情報を加工食品識別装置10の下流側に設けられた仕分け装置(図示せず)などに送ることで、仕分け作業を円滑に行うことができる。
【0075】
一方、この
図2に示した参照加工食品70a,70b,70cのそれぞれの真とみなす所定範囲32,34,36に対して、被識別加工食品60の第1測定データを当て嵌め、被識別加工食品60の第1測定データが、
図2に示した複数種類の参照加工食品70a,70b,70cの真とみなす所定範囲32,34,36内のいずれにも入らなかった場合には、被識別加工食品60が具体的に複数種類の参照加工食品70a,70b,70cのいずれにも該当しないと判別されることとなる。
【0076】
被識別加工食品60が複数種類の参照加工食品70a,70b,70cのいずれにも該当しないと判別された場合には、上記した仕分け装置(図示せず)などに情報を送ることで、所望(真)の加工食品のいずれとも異なる加工食品として確実に仕分けを行うことができる。
【0077】
この識別方式1は、複数種類の参照加工食品70a,70b,70c(例えばジャムパン,あんパン,クリームパン)の透過光72の光量データを元にそれぞれの第1参照データを作成しておくため、搬送ライン50に複数種類の被識別加工食品60a,60b,60c(例えばジャムパン,あんパン,クリームパン)が混在して搬送されてきた場合にも、確実に個々の被識別加工食品60a,60b,60cを特定することができ、下流側で確実に仕分けを行うことができる。
【0078】
なお、参照加工食品70aは被識別加工食品60aと、参照加工食品70bは被識別加工食品60bと、参照加工食品70cは被識別加工食品60cと、それぞれ同じ加工食品である。
【0079】
また、識別手段40に保存しておいた複数種類の参照加工食品70a,70b,70cとは別に想定していない全く別の被識別加工食品60が誤って搬送ライン50に混在してしまった場合にも、その被識別加工食品60を、参照加工食品70a,70b,70cとは別のものであると識別して下流側で仕分けすることができる。
【0080】
したがって被識別加工食品60の具体的な特定および誤混入された被識別加工食品60を特定することができる。
なお識別方式1では、
図2に示したように、複数種類の参照加工食品70a,70b,70cに対してそれぞれ番号「1」,「2」,「3」を設定するようにしたが、他にも公知の主成分分析により複数種類の参照加工食品70を分類するようにしても良い。
【0081】
具体的には、例えば包装していない5種類の参照加工食品(
図3ではクリームパン,ジャムパン,つぶあんパン,白あんパン,カレーパンの5種類のパン)各10個について、透過光72の光量データ(近赤外透過スペクトル)を取得し、この5種類の参照加工食品70の透過光72の光量データを元に、参照加工食品70の第1参照データを作成して識別手段40に保存する。
【0082】
第1参照データとしては、透過光72の光量データの透過光量を元に吸光度を算出し、更に2次微分をかけてベースライン補正を行い数値を得る。
得られた第1参照データを元に、公知の主成分分析方法を用いてX軸方向に主成分1、Y軸方向に主成分2を取り、5種類の参照加工食品70についてプロットすると、
図3に示したように、5種類の参照加工食品70がそれぞれ実線で囲ったように互いに重なり合うことなく分類されることが確認できる。このため、これと同様にして被識別加工食品60の第1測定データを作成し、被識別加工食品60の第1測定データを元に、主成分分析方法を用いてX軸方向に主成分1、Y軸方向に主成分2を取り、この被識別加工食品60について、上記した
図3のグラフにプロットして当て嵌めれば、被識別加工食品60の識別を行うことができる。
【0083】
<識別方式2>
次に識別方式2について説明する。
まず、
図1に示した搬送ライン50上に参照加工食品70を載せ、矢印で示した搬送方向52に搬送しながら参照加工食品70の上方に位置する光源20から、参照加工食品70に測定用光22を照射し、参照加工食品70の下方に位置する透過光受光部30で参照加工食品70を透過した透過光72を受光する。
【0084】
光源20からの測定用光22の照射および透過光受光部30での透過光72の受光は、初め参照加工食品70が無い状態から始まり、参照加工食品70の右側の端部から左側の端部に至るまで行われ、所定の間隔ごとに参照加工食品70の透過光72の光量データが得られる。
【0085】
そして、この所定の間隔ごとの参照加工食品70の光量データを取得し、この参照加工食品70の光量データを元に、参照加工食品70の第1参照データを作成して、識別手段40に保存する。
【0086】
第1参照データは、参照加工食品70の所定の間隔ごとの透過光72の光量データをスペクトル処理したものである。具体的には光量データを元に透過率,吸光度などを算出し、1次微分,2次微分などして得たものであるが、光量データそのものであっても構わないものである。ここでの光量データは、透過光量などである。
【0087】
次に、実際に識別したい被識別加工食品60を、上記した参照加工食品70の場合と同じように搬送ライン50上に載せ、矢印で示した搬送方向52に搬送しながら、今度は被識別加工食品60の上方に位置する光源20から、被識別加工食品60に測定用光22を照射し、被識別加工食品60の下方に位置する透過光受光部30で被識別加工食品60を透過した透過光24を受光する。
【0088】
光源20からの測定用光22の照射および透過光受光部30での透過光24の受光は、初め被識別加工食品60が無い状態から始まり、被識別加工食品60の右側の端部から左側の端部に至るまで行われ、所定の間隔ごとに被識別加工食品60の透過光24の光量データが得られる。
【0089】
そして、受光した被識別加工食品60の透過光24の光量データを元に、被識別加工食品60の第1測定データを作成する。
第1測定データは、被識別加工食品60の所定の間隔ごとの透過光24の光量データをスペクトル処理したものである。具体的には光量データを元に透過率,吸光度などを算出し、1次微分,2次微分などして得たものであるが、光量データそのものであっても構わないものである。ここでの光量データは、透過光量などである。
【0090】
図4は、参照加工食品70の透過光72の波長と、参照加工食品70の第1参照データと、の関係を示したグラフである。
図4において、参照加工食品70は実線で示したような独特な曲線状となることが確認できる。
【0091】
そしてこの参照加工食品70の第1参照データに所定の範囲(
図4では実線の上下の点線間の範囲内)を設ける。この所定の範囲は、参照加工食品70の真とみなす範囲のことである。
【0092】
そして識別手段40で、作成した参照加工食品70の第1参照データと被識別加工食品60の第1測定データとを対比させる。
被識別加工食品60の第1測定データが、参照加工食品70の真とみなす所定範囲内に入る(
図4では実線の上下に付された点線間の範囲内に入る)場合には、被識別加工食品60が、参照加工食品70と同一であると判別される。
【0093】
一方、参照加工食品70の第1参照データと実際に得られた被識別加工食品60の第1測定データとを対比させ、被識別加工食品60の第1測定データが、参照加工食品70の真とみなす所定範囲内に入らない(
図4では実線の上下に付された点線間の範囲内に入らない)場合には、被識別加工食品60が、参照加工食品70と異なると判別される。
【0094】
被識別加工食品60が、参照加工食品70とは異なると判別された場合には、その情報を警報装置(図示せず)に送り、搬送ライン50が停止するようにしたり、仕分け装置(図示せず)に送って仕分けするようにすれば良い。
【0095】
なお、参照加工食品70の透過光72の波長と、参照加工食品70の第1参照データと、の関係については、参照加工食品70が別の加工食品に変わった場合には、
図5に示したグラフのように波形が異なることが確認されているため、確実に被識別加工食品60が参照加工食品70と同一で有るか否かの判別を行うことができる。
【0096】
参照加工食品70の第1参照データと、被識別加工食品60の第1測定データとが、どの程度の範囲内に入った(
図4では実線の上下に付された点線間の範囲内に入った)場合に、被識別加工食品60が参照加工食品70と同一で有ると判別するかについては、異なる複数種類の参照加工食品70a,70b,70c間で、どの程度波形が異なるかで決めれば良い。
【0097】
例えば、異なる複数種類の参照加工食品70a,70b,70c間で、似た波形となる場合には、その範囲(
図4の実線の上下に付された点線間の範囲)を狭めれば良いし、
図5に示したように異なる複数種類の参照加工食品70a,70b,70c間で、波形がそれぞれ大きく異なる場合には、この範囲(
図4の実線の上下に付された点線間の範囲)を広めにとっても構わないものである。
【0098】
特に異なる複数種類の参照加工食品70a,70b,70cがそれぞれに非常に似た加工食品同士である場合には、参照加工食品70と被識別加工食品60における、透過光の波長の波長点毎に、Y軸数値(第1参照データの数値)の差の二乗を求めて合算し、得られた合算値が一定値以下の場合に、被識別加工食品60が参照加工食品70と同一であると識別するようにすれば良い。
【0099】
なお識別方式2では、被識別加工食品60と対比する参照加工食品70のデータを、被識別加工食品60の識別前であれば、いつ取得しても構わないものであるが、例えば識別対象とする被識別加工食品60の直近の一定数(例えば100個)についてデータを取得して平均化しておき、これと被識別加工食品60のデータとを対比するようにすれば、より識別対象となる被識別加工食品60と近い条件で参照加工食品70と対比がなされ、しかも多くの参照加工食品70のデータから得られた平均値を用いるため、高精度に被識別加工食品60の識別を行うことができる。
【0100】
また、本実施形態では参照加工食品70および被識別加工食品60は、ベルトコンベアを備えた搬送ライン50上に載置され、連続的に搬送されるため、中身64,74の位置や中身64,74の大きさなどの位置情報も得ることができる。
【0101】
図6は、参照加工食品(被識別加工食品)の位置と、参照加工食品(被識別加工食品)の透過光の光量データと、の関係を示した模式図およびグラフである。
このグラフにおいてA区間は、参照加工食品70(被識別加工食品60)が光源20と透過光受光部30の間に差し掛かっていない位置であり、透過光72(24)の光量に変化が見られない箇所である。
【0102】
次いで、搬送ライン50上を矢印で示した搬送方向52側に移動する参照加工食品70(被識別加工食品60)は、光源20と透過光受光部30の間にB区間の部位が差し掛かり、このB区間の部位の透過光72(24)の光量データを取得するとグラフのB区間のようにグラフのA区間から変化が生ずる。
【0103】
同様にC区間、D区間、E区間、F区間のように所定の間隔で透過光72(24)の光量データを得るようにすれば、時間経過に応じた透過光72(24)の光量の変化が確認できるため、参照加工食品70(被識別加工食品60)の中身74(64)の位置や量なども検出することができる。なお、A〜Fまでの区間は、区切られる幅が限定されるものではなく、さらに幅を狭めて区切れば、細かな位置情報を得ることができる。
【0104】
この位置情報についても、透過光の第1参照データと併せて識別手段40に保存しておき、被識別加工食品60のデータ取得の際に位置情報も取得し、これらを対比するようにすれば、被識別加工食品60の識別をより高精度に行うことができる。
【0105】
なお、本実施形態では、搬送ライン50を挟んで上方に光源20、下方に透過光受光部30を配置しているが、これに限定されるものではなく、例えば
図7(a)に示したように、上方に光源20、側方に透過光受光部30を配置したり、
図7(b)に示したように、一方の側方に光源20、他方の側方に透過光受光部30を配置したり、
図7(c)に示したように、一方の側方に光源20、上方に透過光受光部30を配置したりしても良いものである。
【0106】
さらには、
図7(d)に示したように光源20を複数にするなどしても良く、光源20、透過光受光部30の位置や数については、被識別加工食品60や参照加工食品70の形状や大きさなどに応じて適宜選択すれば良いものである。
なお、
図7(a)〜
図7(d)の搬送方向は、手前から奥方向または奥から手前方向である。
【0107】
[第2の実施形態]
図8は本発明の加工食品識別装置10の第2の実施形態を示した
図1と同様な概略図である。
図8に示した加工食品識別装置10は、
図1に示した加工食品識別装置10と基本構成部分については同じ構成であるので、同じ構成部材には同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0108】
図8に示した第2の実施形態における加工食品識別装置10は、
図1に示した加工食品識別装置10と比べ、さらに別の光源80および反射光84を受光する反射光受光部90が設けられ、この点において
図1に示した第1の実施形態と異なっている。
【0109】
このような加工食品識別装置10は、参照加工食品70の透過光72の光量データをスペクトル処理して得られた第1参照データと、被識別加工食品60の透過光24の光量データを元に得られた第1測定データに加えて、参照加工食品70の反射光86の光量データを元に得られた第2参照データと、被識別加工食品60の反射光84の光量データを元に得られた第2測定データも用いて、被識別加工食品60の識別を行うものである。
【0110】
参照加工食品70の反射光86の光量データを元に得られた第2参照データと、被識別加工食品60の反射光84の光量データを元に得られた第2測定データは、例えば被識別加工食品60と参照加工食品70との表層の相違(例えば被識別加工食品60と参照加工食品70の表面に想定していない食品が付着しているか否か)について確実に識別でき、内部チェック(中身チェック)に加えて表層チェックも合わせて行うことができ、さらに確実な識別を行うことができる。
【0111】
なお、
図8においては光源80を新たに設けているが、光源20を一つだけにしても良いものであり特に限定されないものである。また光源80や反射光受光部90の位置や数についても、被識別加工食品60や参照加工食品70の形状や大きさなどに応じて適宜選択すれば良いものである。
【0112】
また反射光受光部90としては、上記した透過光受光部30と同様、近赤外分光カメラ(受光素子としてフォトダイオード、CCDなど)、バンドパスフィルタとフォトダイオードの組合せなどを用いることができる。
【0113】
本実施形態において、参照加工食品70の反射光86の光量データを元に得られた第2参照データと、被識別加工食品60の反射光84の光量データを元に得られた第2測定データの取得方法は、上記した参照加工食品70の透過光72の光量データを元に得られた第1参照データと、被識別加工食品60の透過光24の光量データを元に得られた第1測定データの取得方法と基本的には同じであるが、以下に、参照加工食品70の第2参照データと、被識別加工食品60の第2測定データと、参照加工食品70の第1参照データと、被識別加工食品60の第1測定データと、を用いた識別方法(透過光の光量データと反射光の光量データの両方を用いた識別方法)について簡単に説明する。
【0114】
<識別方式1>
まず、
図8に示した搬送ライン50上に参照加工食品70(真の加工食品)を載せ、矢印で示した搬送方向52に搬送しながら参照加工食品70の上方に位置する光源20から、参照加工食品70に測定用光22を照射し、参照加工食品70の下方に位置する透過光受光部30で参照加工食品70を透過した透過光72を受光する。
【0115】
あわせて、参照加工食品70の上方に位置する光源80から、参照加工食品70に測定用光82を照射し、参照加工食品70の上方に位置する反射光受光部90で参照加工食品70を反射した反射光86を受光する。
【0116】
そして、得られた参照加工食品70の所定の間隔ごとの透過光72の光量データおよび反射光86の光量データを取得し、この参照加工食品70の透過光72の光量データおよび反射光86の光量データの取得を、複数種類の参照加工食品70a,70b,70cに対してそれぞれ行う。ここで複数種類の参照加工食品70a,70b,70cはそれぞれ別の品種(外観は同じでも中身がそれぞれ異なる真の加工食品であり、例えばジャムパン,あんパン,クリームパンなど)を意味するものである。
【0117】
複数種類の参照加工食品70a,70b,70cのそれぞれの所定の間隔ごとの透過光72の光量データおよび反射光86の光量データは、それぞれ検量線処理され、透過光72の光量データからはそれぞれの第1参照データが、反射光86の光量データからはそれぞれの第2参照データが作成され、これを識別手段に保存する。
【0118】
本識別方式1では、参照加工食品70aに対して番号「1」を設定し、同様に参照加工食品70bを番号「2」,参照加工食品70cを番号「3」と設定する。
そして、この番号の付された参照加工食品70a,70b,70cのそれぞれの透過光72の光量データおよび反射光86の光量データから、それぞれの参照加工食品70a,70b,70cに対して真とみなす所定範囲を設定する。
【0119】
次に、実際に識別したい被識別加工食品60を、上記した参照加工食品70a,70b,70cの場合と同じように搬送ライン50上に載せ、矢印で示した搬送方向52に搬送しながら、今度は被識別加工食品60の上方に位置する光源20から、被識別加工食品60に測定用光22を照射し、被識別加工食品60の下方に位置する透過光受光部30で被識別加工食品60を透過した透過光24を受光する。
【0120】
あわせて、被識別加工食品60の上方に位置する光源80から、被識別加工食品60に測定用光82を照射し、被識別加工食品60の上方に位置する反射光受光部90で被識別加工食品60を反射した反射光84を受光する。
【0121】
そしてこの被識別加工食品60の透過光24の光量データおよび反射光84の光量データは、それぞれ検量線処理され、透過光24の光量データからは第1測定データが、反射光84の光量データからは第2測定データが作成される。
【0122】
この被識別加工食品60の第1測定データおよび第2測定データを、参照加工食品70の第1参照データおよび第2参照データにそれぞれ当て嵌める。
具体的には、参照加工食品70a,70b,70cのそれぞれの真とみなす所定範囲に対して、被識別加工食品60の第1測定データおよび第2測定データを当て嵌め、被識別加工食品60の第1測定データおよび第2測定データの両方が、複数種類の参照加工食品70a,70b,70cの真とみなす所定範囲内のいずれかに入った場合には、被識別加工食品60が具体的に複数種類の参照加工食品70a,70b,70cのいずれであるか特定することができる。
【0123】
被識別加工食品60を具体的に特定した際には、その特定情報を加工食品識別装置10の下流側に設けられた仕分け装置(図示せず)などに送ることで、仕分け作業を円滑に行うことができる。
【0124】
一方、参照加工食品70a,70b,70cのそれぞれの真とみなす所定範囲に対して、被識別加工食品60の第1測定データおよび第2測定データを当て嵌め、被識別加工食品60の第1測定データおよび第2測定データの両方が、複数種類の参照加工食品70a,70b,70cの真とみなす所定範囲内のいずれにも入らなかった場合には、被識別加工食品60が具体的に複数種類の参照加工食品70a,70b,70cのいずれにも該当しないと判別されることとなる。
【0125】
被識別加工食品60が複数種類の参照加工食品70a,70b,70cのいずれにも該当しないと判別された場合には、上記した仕分け装置(図示せず)などに情報を送ることで、所望(真)の加工食品のいずれとも異なる加工食品として確実に仕分けを行うことができる。
【0126】
この識別方式1は、複数種類の参照加工食品70a,70b,70c(例えばジャムパン,あんパン,クリームパン)の透過光72の光量データおよび反射光86の光量データを元に、それぞれの第1参照データおよび第2参照データを作成しておくため、搬送ライン50に複数種類の被識別加工食品60a,60b,60c(例えばジャムパン,あんパン,クリームパン)が混在して搬送されてきた場合にも、確実に個々の被識別加工食品60a,60b,60cを特定することができ、下流側で確実に仕分けを行うことができる。
【0127】
さらに、参照加工食品70と被識別加工食品60とが同じ中身でありながらも、表層が異なるような場合、例えば加工食品の表面に意図せずゴマなどが付されていた場合などであっても、確実にその被識別加工食品60を識別することができる。
【0128】
また、識別手段40に保存しておいた複数種類の参照加工食品70a,70b,70cとは別に想定していない全く別の被識別加工食品60が誤って搬送ライン50に混在してしまった場合にも、その被識別加工食品60を、参照加工食品70a,70b,70cとは別のものであると識別して下流側で仕分けすることができる。
【0129】
したがって被識別加工食品60の具体的な特定および誤混入された被識別加工食品60の特定を行うとともに、表層の相違も合わせて識別することができ、第1の実施形態よりもさらに高精度に被識別加工食品60の識別を行うことができる。
【0130】
<識別方式2>
次に識別方式2について説明する。
まず、
図8に示した搬送ライン50上に参照加工食品70を載せ、矢印で示した搬送方向52に搬送しながら参照加工食品70の上方に位置する光源20から、参照加工食品70に測定用光22を照射し、参照加工食品70の下方に位置する透過光受光部30で参照加工食品70を透過した透過光72を受光する。
【0131】
あわせて参照加工食品70の上方に位置する光源80から、参照加工食品70に測定用光82を照射し、参照加工食品70の上方に位置する反射光受光部90で参照加工食品70を反射した反射光86を受光する。
【0132】
そして、参照加工食品70の透過光72の光量データおよび反射光86の光量データを取得し、参照加工食品70の透過光72の光量データを元に、参照加工食品70の第1参照データを作成して識別手段40に保存し、さらに参照加工食品70の反射光86の光量データを元に、参照加工食品70の第2参照データを作成して識別手段40に保存する。
【0133】
第1参照データは、参照加工食品70の所定の間隔ごとの透過光72の光量データをスペクトル処理して得たものであり、第2参照データは、参照加工食品70の所定の間隔ごとの反射光の光量データをスペクトル処理して得たものである。
【0134】
次に、実際に識別したい被識別加工食品60を、上記した参照加工食品70の場合と同じように搬送ライン50上に載せ、矢印で示した搬送方向52に搬送しながら、今度は被識別加工食品60の上方に位置する光源20から、被識別加工食品60に測定用光22を照射し、被識別加工食品60の下方に位置する透過光受光部30で被識別加工食品60を透過した透過光24を受光する。
【0135】
あわせて被識別加工食品60の上方に位置する光源80から、被識別加工食品60に測定用光82を照射し、被識別加工食品60の上方に位置する反射光受光部90で被識別加工食品60を反射した反射光84を受光する。
【0136】
そして、受光した被識別加工食品60の透過光24の光量データおよび反射光84の光量データをそれぞれスペクトル処理し、被識別加工食品60の第1測定データおよび第2測定データを作成する。
【0137】
次いで、参照加工食品70の第1参照データおよび第2参照データと、被識別加工食品60の第1測定データおよび第2測定データとを対比させる。
そしてこの参照加工食品70の第1参照データおよび第2の参照データに所定の範囲を設け、実際に得られた被識別加工食品60の第1測定データおよび第2測定データが、参照加工食品70の第1参照データと第2の参照データに基づいて定められた、参照加工食品70の真とみなす所定範囲内に入る場合には、被識別加工食品60が、参照加工食品70と同一であると判別される。
【0138】
一方、実際に得られた被識別加工食品60の第1測定データおよび第2測定データが、参照加工食品70の第1参照データおよび第2参照データに基づいて定められた、参照加工食品70の真とみなす所定範囲内に入らない場合には、被識別加工食品60が、参照加工食品70と異なると判別される。
【0139】
被識別加工食品60が、参照加工食品70と異なると判別された場合には、その情報を警報装置(図示せず)に送り、搬送ライン50が停止するようにしたり、仕分け装置(図示せず)に送って仕分けするようにすれば良い。
【0140】
なお、「参照加工食品70の透過光72の波長」と「参照加工食品70の第1参照データ」との関係、および「参照加工食品70の反射光86の波長」と「参照加工食品70の第2参照データ」との関係については、参照加工食品70が別の加工食品に変わった場合には、波形が異なることが確認されているため、確実に被識別加工食品60が参照加工食品70と同一であるか否かの判別を行うことができる。
【0141】
参照加工食品70の第1参照データと被識別加工食品60の第1測定データ、および参照加工食品70の第2参照データと被識別加工食品60の第2測定データが、どの程度の範囲内で近似した場合に、被識別加工食品60が参照加工食品70と同一であると判別するかについては、異なる複数種類の参照加工食品70a,70b,70c間で、どの程度波形が異なるかで決めれば良い。
【0142】
なお識別方式2では、被識別加工食品60と対比する参照加工食品70のデータを、被識別加工食品60の識別前であれば、いつ取得しても構わないものであるが、例えば識別対象とする被識別加工食品60の直近の一定数(例えば100個)についてデータを取得して平均化しておき、これと被識別加工食品60のデータとを対比するようにすれば、より識別対象となる被識別加工食品60と近い条件で参照加工食品70と対比がなされ、しかも多くの参照加工食品70のデータから得られた平均値を用いるため、高精度に被識別加工食品60の識別を行うことができる。
【0143】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、例えば上記した実施形態では搬送ライン50上を搬送される被識別加工食品60や参照加工食品70を例にしたが、静止された載置台上に載置された被識別加工食品60や参照加工食品70であっても構わないものである。
【0144】
さらに本実施形態では、被識別加工食品60または参照加工食品70について、透過光24(72)の光量データおよび反射光84(86)の光量データを元にして、中身64(74)の種類や中身64(74)の位置,量を識別するようにしているが、他にも空洞の有無,糖度の違い,水分量の違いなどを識別しても良く、さらには識別する要素を複数組み合わせて識別に用いても良く、要は透過光の光量データおよび反射光の光量データが値の違いとして現れるのであれば、それを検量線データとして予め識別手段に保存しておき、これと被識別加工食品60の光量データとを用いることで様々な要素を識別することができ、より高精度に識別を行うことができるものである。
【0145】
このように本発明の加工食品識別装置および加工食品識別方法は、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変形や変更が可能なものである。