特許第6296905号(P6296905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296905
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】滑り支承
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20180312BHJP
   E01D 19/04 20060101ALI20180312BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   F16F15/02 E
   E01D19/04 A
   F16F15/02 L
   E04H9/02 331E
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-115928(P2014-115928)
(22)【出願日】2014年6月4日
(65)【公開番号】特開2015-230033(P2015-230033A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 銘崇
(72)【発明者】
【氏名】磯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】上田 栄
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕二
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−130216(JP,A)
【文献】 特開平11−190390(JP,A)
【文献】 特開2006−104687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
E01D 19/04
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にV形凹状の下摺接面を有し、構造物の下部構造体の上部に固定される下沓と、
下面にΛ形凹状の上摺接面を有し、構造物の上部構造体の底部に固定される上沓と、
前記下摺接面に対して一方向に摺動可能な下摺動面、及び前記上摺接面に対して前記一方向と直交する他方向に摺動可能な上摺動面を有する摺動子と、を備えた滑り支承であって、
前記摺動子には、前記下摺動面及び上摺動面のうちの少なくとも一方の摺動面の両側方において、当該一方の摺動面が摺動する沓の両側面に対してそれぞれ摺動可能な一対のガイド部が設けられており、
前記ガイド部は、前記一方の摺動面が摺動する沓の側面に対して摺動可能な滑り面を有する滑り軸受を有し、
前記一方の摺動面が摺動する沓は、沓本体と、その沓本体の側面に固定されたサイドスライドプレートと、を有し、
前記サイドスライドプレートは、前記滑り面が摺動する案内摺接面を有することを特徴とする滑り支承。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記摺動子の前記下摺動面の両側方に設けられている請求項に記載の滑り支承。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記摺動子の前記上摺動面の両側方にも設けられている請求項に記載の滑り支承。
【請求項4】
上面にV形凹状の下摺接面を有し、構造物の下部構造体の上部に固定される下沓と、
下面にΛ形凹状の上摺接面を有し、構造物の上部構造体の底部に固定される上沓と、
前記下摺接面に対して一方向に摺動可能な下摺動面、及び前記上摺接面に対して前記一方向と直交する他方向に摺動可能な上摺動面を有する摺動子と、を備えた滑り支承であって、
前記摺動子は、単一のブロック体からなる摺動子本体をさらに有し、
前記摺動子本体の下面には、前記下摺動面の両側方において、当該下摺動面が摺動する前記下沓の両側面に対してそれぞれ摺動可能な一対の下ガイド部が設けられ、
前記摺動子本体の上面には、前記上摺動面の両側方において、当該上摺動面が摺動する前記上沓の両側面に対してそれぞれ摺動可能な一対の上ガイド部が設けられ、
前記下ガイド部は、前記下沓の側面に対して摺動可能な下案内滑り面を有する第2下滑り軸受を有し、
前記上ガイド部は、前記上沓の側面に対して摺動可能な上案内滑り面を有する第2上滑り軸受を有し、
前記下沓は、下沓本体と、その下沓本体の両側面に固定された一対の下サイドスライドプレートと、を有し、
前記上沓は、上沓本体と、その上沓本体の両側面に固定された一対の上サイドスライドプレートと、を有し、
前記下サイドスライドプレートは、前記下案内滑り面が摺動する下案内摺接面を有し、
前記上サイドスライドプレートは、前記上案内滑り面が摺動する上案内摺接面を有することを特徴とする滑り支承。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り支承に関する。
【背景技術】
【0002】
地震時に発生するエネルギーが、ビルや戸建住宅等の構造物に伝達するのを低減させる免震機構として、当該構造物の上部構造体と下部構造体との間に配設され、地震時に下部構造体に対して上部構造体を水平方向に滑動自在に支持する滑り支承が知られている。
このような滑り支承は、一般に、構造物の下部構造体の上部に固定される下沓と、構造物の上部構造体の底部に固定される上沓と、下沓と上沓との間に介在する摺動子とからなる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されている滑り支承は、図6に示すように、上面にV形凹状の下摺接面101aを有する下沓101と、下面にΛ形凹状の上摺接面102aを有する上沓102と、下摺接面101aと上摺接面102aとの間に介在する摺動子103とを備えている。
摺動子103は、下摺接面101aに沿ってX−X方向に摺動可能なV形凸状の下摺動面103aと、上摺接面102aに沿ってX−X方向と直交するY−Y方向に摺動可能なΛ形凸状の上摺動面103bとを有している。摺動子103の下摺動面103aは、通常時には、下沓101の長手方向中央部において当該下沓101の下摺接面101aに接触している。摺動子103の上摺動面103bは、通常時には、上沓102の長手方向中央部において当該上沓102の上摺接面102aに接触している。
【0004】
図7(b)に示すように、下沓101には、その下摺接面101aの両側方において摺動子103の両側面がそれぞれ摺動する一対の下ガイド部101bが形成されている。図7(a)に示すように、上沓102には、その上摺接面102aの両側方において摺動子103の両側面がそれぞれ摺動する一対の上ガイド部102bが形成されている。下ガイド部101bと上ガイド部102bとの間には、両者が干渉しないように所定の隙間Sが設けられている。
これにより、摺動子103は、下沓101の一対の下ガイド部101b同士の間においてX−X方向にのみ摺動可能に保持され、上沓102の一対の上ガイド部102b同士の間においてY−Y方向にのみ摺動可能に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−130216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記滑り支承にあっては、図8(a)に示すように、沓101(102)の一対のガイド部101b(102b)の摺動方向の長さ寸法L’は、摺動子103自体の摺動方向の長さ寸法L1と、摺動子103の摺動距離(L2+L3)とが必要になり、X−X方向(Y−Y方向)にそれぞれ長く形成しなければならない。このため、沓101(102)に各ガイド部101b(102b)を加工するときに、両ガイド部101b(102b)間の距離寸法D’の精度を摺動方向の全長に亘って一定に保つことが困難であった。
【0007】
前記距離寸法D’の精度を一定に保つことができないと、例えば、図8(b)に示すように、一対のガイド部101b(102b)の長手方向両端部における摺動子103との摺接面が互いに近づくように湾曲形成される場合がある。この場合、摺動子103が沓101(102)の長手方向に摺動するときに、摺動子103の両側面がガイド部101b(102b)の前記湾曲形成された部分と干渉して摺動子103を十分に摺動させることができないため、免震機能が低下するという問題があった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ガイド部の加工精度を向上させて適切な免震機能を維持することができる滑り支承を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の滑り支承は、上面にV形凹状の下摺接面を有し、構造物の下部構造体の上部に固定される下沓と、下面にΛ形凹状の上摺接面を有し、構造物の上部構造体の底部に固定される上沓と、前記下摺接面に対して一方向に摺動可能な下摺動面、及び前記上摺接面に対して前記一方向と直交する他方向に摺動可能な上摺動面を有する摺動子と、を備えた滑り支承であって、前記摺動子には、前記下摺動面及び上摺動面のうちの少なくとも一方の摺動面の両側方において、当該一方の摺動面が摺動する沓の両側面に対してそれぞれ摺動可能な一対のガイド部が設けられていることを特徴としている。
【0010】
上記のように構成された滑り支承によれば、摺動子には、摺動面の両側方において沓の両側面に対してそれぞれ摺動可能な一対のガイド部が設けられているので、ガイド部の摺動方向の長さ寸法は、摺動子自体の摺動方向の長さ寸法以下となり、摺動子の摺動距離に対応する長さが不要となる。したがって、本発明のガイド部の摺動方向の長さ寸法は、従来の沓に形成されるガイド部の摺動方向の長さ寸法よりも短くすることができるため、一対のガイド部間の距離寸法の精度を向上させることができる。これにより、摺動子がガイド部と干渉してその摺動が阻害されることがないので、適切な免震機能を維持することができる。
【0011】
前記ガイド部は、前記一方の摺動面が摺動する沓の側面に対して摺動可能な滑り面を有する滑り軸受を有するのが好ましい。この場合、沓の側面に対する摺動子の摩擦抵抗を滑り軸受によって低減することができる。
【0012】
前記ガイド部は、前記摺動子の前記下摺動面の両側方に設けられているのが好ましい。
従来の下沓には、V形凹状の下摺接面の両側方から一対のガイド部が立ち上がるように形成されている(図6参照)ため、下摺接面の摺動方向中央部の底部に結露水等が溜まり易い構造となっていた。これに対して、本発明の滑り支承では、摺動子の下摺動面の両側方にガイド部が設けられるため、この下摺動面が摺動する下沓にガイド部を形成する必要がない。このため、下沓の下摺接面の底部に流れた結露水等は、その底部の両側方から下沓の両側面に沿って下方に排出されるため、下沓の下摺接面に結露水等が溜まるのを防止することができる。
【0013】
前記ガイド部は、前記摺動子の前記上摺動面の両側方にも設けられているのが好ましい。
この場合、摺動子の下摺動面及び上摺動面にガイド部がそれぞれ設けられるため、この下摺動面及び上摺動面が摺動する下沓及び上沓にガイド部を形成する必要がない。このため、本発明の滑り支承では、従来の滑り支承のように両ガイド部の間に隙間を設ける必要がないため、その隙間分だけ支承全体の高さを低く抑えることができ、構造物の上部構造体を安定した状態で支持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の滑り支承によれば、ガイド部の加工精度を向上させて適切な免震機能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る滑り支承を示す平面図である。
図2図1のA−A矢視断面図である。
図3図1のB−B矢視断面図である。
図4】摺動子を下方から見た斜視図である。
図5】摺動子を上方から見た斜視図である。
図6】従来の滑り支承を分解した状態を示す斜視図である。
図7】従来の滑り支承を示す断面図である。
図8】(a)は従来の滑り支承を示す平面図であり、(b)は従来の滑り支承においてガイド部の摺接面が湾曲形成された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る滑り支承を示す平面図である。図2図1のA−A矢視断面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態の滑り支承10は、ビルや戸建住宅等の構造物の下部構造体1に対して上部構造体2を水平方向に滑動自在に支持するものである。この滑り支承10は、下部構造体1の上面に下ベースプレート3を介して固定される下沓11と、上部構造体2の底面に上ベースプレート4を介して固定される上沓12と、下沓11と上沓12との間に介在する摺動子13とを備えている。
【0017】
下沓11は、概ね直方体状に形成されたブロック体からなる下沓本体11aと、その下沓本体11aの上面に固定された下スライドプレート11bと、下沓本体11aの両側面にそれぞれ固定された一対の下サイドスライドプレート11cとによって構成されている。下沓11は、その長手方向を一方向(図中のX−X方向)に向けて配置されている。下沓本体11aの上面は、側面視において緩やかなV形凹状に形成されている。
【0018】
下スライドプレート11b及び下サイドスライドプレート11cは、ステンレス板または硬質クロムメッキされた薄板からなる。下スライドプレート11bは、側面視において下沓本体11aの上面の形状に沿って形成されており、下スライドプレート11bの上面は、摺動子13の第1下滑り軸受14(後述)が摺動するV形凹状の下摺接面11b1とされている。
下サイドスライドプレート11cは、側面視において下沓本体11aの上面の形状に対応して緩やかなV形に形成されており、下サイドスライドプレート11cの外側面は、摺動子13の第2下滑り軸受18(後述)が摺動する下案内摺接面11c1とされている。
【0019】
図3図1のB−B矢視断面図である。図1及び図3に示すように、上沓12は、概ね直方体状に形成されたブロック体からなる上沓本体12aと、その上沓本体12aの下面に固定された上スライドプレート12bと、上沓本体12aの両側面にそれぞれ固定された一対の上サイドスライドプレート12cとによって構成されている。上沓12は、その長手方向を下沓11の長手方向と水平に直交するY−Y方向に向けて配置されている。上沓本体12aの下面は、側面視において緩やかなΛ形凹状に形成されている。
【0020】
上スライドプレート12b及び上サイドスライドプレート12cは、ステンレス板または硬質クロムメッキされた薄板からなる。上スライドプレート12bは、側面視において上沓本体12aの下面の形状に沿って形成されており、上スライドプレート12bの下面は、摺動子13の第1上滑り軸受15(後述)が摺動するΛ形凹状の上摺接面12b1とされている。
上サイドスライドプレート12cは、側面視において上沓本体12aの下面の形状に対応して緩やかなΛ形に形成されており、上サイドスライドプレート12cの外側面は、摺動子13の第2上滑り軸受23(後述)が摺動する上案内摺接面12c1とされている。
【0021】
図4は、摺動子13を下方から見た斜視図である。図3及び図4に示すように、摺動子13は、概ね正方形状に形成されたブロック体からなる摺動子本体13aを有している。この摺動子本体13aの下面は、下沓11の下摺接面11b1に対応して、緩やかなV形凸状に形成されている。具体的には、摺動子本体13aの下面は、X−X方向の両端部から中央部に向かうにしたがって徐々に下方に突出するように形成された一対の下傾斜面13a1により構成されている。
【0022】
摺動子13は、摺動子本体13aの各下傾斜面13a1に固定された一対の第1下滑り軸受14を有している。各第1下滑り軸受14は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)系やPA(ポリアミド)系の樹脂により形成されており、その下面は、下沓11の下摺接面11b1に対してX−X方向に摺動可能な下摺動面14aとされている。
【0023】
図5は、摺動子13を上方から見た斜視図である。図2及び図5に示すように、摺動子本体13aの上面は、上沓12の上摺接面12b1に対応して、緩やかなΛ形凸状に形成されている。具体的には、摺動子本体13aの上面は、Y−Y方向の両端部から中央部に向かうにしたがって徐々に上方に突出するように形成された一対の上傾斜面13a2により構成されている。
【0024】
摺動子13は、摺動子本体13aの各上傾斜面13a2に固定された一対の第1上滑り軸受15を有している。各第1上滑り軸受15は、PTFE系やPA系の樹脂により形成されており、その上面は、上沓12の上摺接面12b1に対してY−Y方向に摺動可能な上摺動面15aとされている。
【0025】
図4に示すように、摺動子13には、摺動子本体13aの下傾斜面13a1の両側方に一対の下ガイド部16が設けられている。各下ガイド部16は、下傾斜面13a1よりも下方に突出するように摺動子本体13aに一体に形成された下突出部17と、この下突出部17の内側面のX−X方向両端部に固定された一対の第2下滑り軸受18とによって構成されている。第2下滑り軸受18は、下沓11の側面である下案内摺接面11c1に対して摺動可能な下案内滑り面18aを有している。
【0026】
図5に示すように、摺動子13には、摺動子本体13aの上傾斜面13a2の両側方に一対の上ガイド部21が設けられている。各上ガイド部21は、上傾斜面13a2よりも上方に突出するように摺動子本体13aに一体に形成された上突出部22と、この上突出部22の内側面のY−Y方向両端部に固定された一対の第2上滑り軸受23とによって構成されている。第2上滑り軸受23は、上沓12の側面である上案内摺接面12c1に対して摺動可能は上案内滑り面23aを有している。
【0027】
これにより、摺動子13は、下沓11に対しては一対の下ガイド部16によりX−X方向にのみ摺動可能に保持され、上沓12に対しては一対の上ガイド部21によりY−Y方向にのみ摺動可能に保持される。したがって、下部構造体1と上部構造体2との間で任意の水平方向に相対変位が生じた際には、摺動子13は、下沓11の下摺接面11b1に対してX−X方向に相対変位しながら、上沓12の上摺接面12b1に対してY−Y方向に相対変位することで、下部構造体1と上部構造体2との間で生じる任意の水平方向(全方向)への相対変位に追随して変位させることができる。なお、摺動子13は、図1に示すように、通常時の元位置では、下沓11の長手方向中央部に配置されるとともに、上沓12の長手方向中央部に配置されている。
【0028】
本実施形態の滑り支承10では、下沓11の下摺接面11b1と摺動子13の下面である下摺動面14aとの間の摩擦係数、および上沓12の上摺接面12b1と摺動子13の上面である上摺動面15aとの間の摩擦係数は、いずれも同一の摩擦係数μに設定されている。また、下摺接面11b1の水平面に対する傾斜角、および上摺接面12b1の水平面に対する傾斜角は、いずれも同一の傾斜角θに設定されている。
【0029】
前記摩擦係数μおよび傾斜角θは、 tanθ=(0.1〜0.4)μの関係を満たすように設定されているのが好ましい。これにより、摺動子13を元位置へ復元しようとする所望の復元力を得ることができるので、地震後に滑り支承10に残留変位が生じるのを抑制することができるとともに、構造物に生じる応答加速度が大きくなり過ぎるのを抑制することができる。
【0030】
下部構造体1と上部構造体2との間において、X−X方向及びY−Y方向を除く水平方向への相対変位が生じた場合、下ガイド部16の下案内滑り面18aは下沓11の側面である下案内摺接面11c1を押圧しながら摺動するとともに、上ガイド部21の上案内滑り面23aは上沓12の側面である上案内摺接面12c1を押圧しながら摺動する。このため、下沓11の下案内摺接面11c1と下ガイド部16の下案内滑り面18aとの摩擦係数、および上沓12の上案内摺接面12c1と上ガイド部21の上案内滑り面23aとの摩擦係数は、上記摩擦係数μと同様に、所望の復元力を得るために小さく設定されている。
【0031】
以上、本実施形態の滑り支承10によれば、摺動子13に、その摺動面14a(15a)の両側方において沓11(12)の両側面に対してそれぞれ摺動可能な一対のガイド部16(21)が設けられているので、ガイド部16(21)の摺動方向の長さ寸法L(図4参照)は、摺動子13自体の摺動方向の長さ寸法となり、摺動子13の摺動距離に対応する長さが不要となる。したがって、本実施形態のガイド部16(21)の摺動方向の長さ寸法Lは、従来の沓に形成されるガイド部の摺動方向の長さ寸法よりも短くすることができるため、一対のガイド部16(21)間の距離寸法D(図4参照)の精度を向上させることができる。これにより、摺動子13がガイド部16(21)と干渉してその摺動が阻害されることがないので、適切な免震機能を維持することができる。
【0032】
また、ガイド部16,21は、対応する沓11,12の側面である案内摺接面11c1,12c1に対して摺動可能な滑り面18a,23aを有する滑り軸受18,23を有しているため、沓11,12の側面に対する摺動子13の摩擦抵抗を滑り軸受18,23によって低減することができる。
【0033】
また、従来の下沓には、V形凹状の下摺接面の両側方から一対のガイド部が立ち上がるように形成されている(図6参照)ため、下摺接面の摺動方向中央部の底部に結露水等が溜まり易い構造となっていた。これに対して、本実施形態の滑り支承10では、摺動子13の下摺動面14aの両側方に下ガイド部16が設けられているため、この下摺動面14aが摺動する下沓11にガイド部を形成する必要がない。このため、下沓11の下摺接面11b1の底部(軸方向中央部)に流れた結露水等は、その底部の両側方から下沓11の両側面に沿って下方に排出されるため、下沓11の下摺接面11b1に結露水等が溜まるのを防止することができる。
【0034】
また、本実施形態の滑り支承10では、摺動子13の下摺動面14a及び上摺動面15aにガイド部16,21がそれぞれ設けられているため、この下摺動面14a及び上摺動面15aが摺動する下沓11及び上沓12にガイド部を形成する必要がない。このため、本実施形態の滑り支承10では、従来の滑り支承のように両ガイド部の間に隙間を設ける必要がないため、その隙間分だけ支承全体の高さを低く抑えることができ、構造物の上部構造体2を安定した状態で支持することができる。
【0035】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において適宜変更できるものである。例えば、上記実施形態では、摺動子の下側及び上側にそれぞれガイド部を設けているが、摺動子の上側及び下側のうちのいずれか一方側にのみガイド部を設け、他方側は従来と同様に沓側に設けたガイド部により摺動可能に保持されるようにしても良い。
【0036】
また、ガイド部は、摺動子本体と一体に形成されているが、摺動子本体と別体に設けられていても良い。また、本実施形態における摺動子は、滑り軸受及びスライドプレートを介して下沓及び上沓に対して摺動するようになっているが、摩擦抵抗を低く抑えることができれば、滑り軸受やスライドプレートを介さずに、下沓及び上沓に対して摺動子を直接摺動させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0037】
1 下部構造体
2 上部構造体
10 滑り支承
11 下沓
11b1 下摺接面
12 上沓
12b1 上摺接面
13 摺動子
14a 下摺動面
15a 上摺動面
16 下ガイド部(ガイド部)
18 第2下滑り軸受(滑り軸受)
18a 下案内滑り面(滑り面)
21 上ガイド部(ガイド部)
23 第2上滑り軸受(滑り軸受)
23a 上案内滑り面(滑り面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8