特許第6296952号(P6296952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6296952-パッケージ型自動消火設備 図000002
  • 特許6296952-パッケージ型自動消火設備 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296952
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】パッケージ型自動消火設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/02 20060101AFI20180312BHJP
   A62C 35/11 20060101ALI20180312BHJP
   A62C 37/40 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   A62C35/02 B
   A62C35/11
   A62C37/40
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-198660(P2014-198660)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-67515(P2016-67515A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】東峰 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】沢田 浩希
(72)【発明者】
【氏名】武吉 賢司
(72)【発明者】
【氏名】崎原 誠
(72)【発明者】
【氏名】植田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】青木 貞憲
(72)【発明者】
【氏名】吉田 享介
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−219188(JP,A)
【文献】 特開平11−070185(JP,A)
【文献】 特開平10−258136(JP,A)
【文献】 特開2006−288804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 35/02
A62C 35/11
A62C 37/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火剤が貯蔵されたタンクユニットと、
前記タンクユニットに接続され、前記タンクユニット内の消火剤が流れる放出導管と、
前記放出導管を流れる消火剤を放射する消火剤放射部と、
前記放出導管に設けられ、前記タンクユニットから前記消火剤放射部への前記消火剤の供給を制御する電動弁と、
前記消火剤放射部の設置場所の火災を検知する火災感知部と、
前記火災感知部における火災の検知に基づいて前記電動弁の動作を制御する制御部と
を有し、
前記制御部は、前記火災感知部が火災を検知した際、連続放射期間は前記消火剤放射部から前記消火剤が連続的に放射され、前記連続放射期間経過後は、消火剤の放射を停止する放射停止期間と、再び消火剤の放射を行う固定の再放射期間とが繰り返され、前記消火剤放射部から前記消火剤が断続的に放射されるように、前記電動弁を制御するものである
ことを特徴とするパッケージ型自動消火設備。
【請求項2】
前記制御部は、前記放射停止期間の経過後であって前記火災感知部が再び火災を検知したときに、消火剤の再放射を開始するように制御するものであることを特徴とする請求項に記載のパッケージ型自動消火設備。
【請求項3】
消火剤が貯蔵されたタンクユニットと、
前記タンクユニットに接続され、前記タンクユニット内の消火剤が流れる放出導管と、
前記放出導管を流れる消火剤を放射する消火剤放射部と、
前記放出導管に設けられ、前記タンクユニットから前記消火剤放射部への前記消火剤の供給を制御する電動弁と、
前記消火剤放射部の設置場所の火災を検知する火災感知部と、
前記火災感知部における火災の検知に基づいて前記電動弁の動作を制御する制御部と
を有し、
前記消火剤放射部は、消火区画毎に複数設置されており、
前記制御部は、前記火災感知部が火災を検知した際、火災が検知された消火区画の前記消火剤放射部から前記消火剤が放射されるように、前記電動弁を制御するものであり、
前記消火剤を放射している消火区画に隣接する隣接消火区画で火災を検知した場合、隣接消火区画の前記消火剤放射部から前記消火剤断続的に放射されるように前記電動弁を制御するものであるパッケージ型自動消火設備。
【請求項4】
消火剤が貯蔵されたタンクユニットと、
前記タンクユニットに接続され、前記タンクユニット内の消火剤が流れる放出導管と、
前記放出導管を流れる消火剤を放射する消火剤放射部と、
前記放出導管に設けられ、前記タンクユニットから前記消火剤放射部への前記消火剤の供給を制御する電動弁と、
前記消火剤放射部の設置場所の火災を検知する火災感知部と、
前記火災感知部における火災の検知に基づいて前記電動弁の動作を制御する制御部と、
前記電動弁に並列に接続されたバイパス配管と、
前記バイパス配管に設けられ、前記バイパス配管への消火剤の流通を制御するバイパス電動弁と
を備え、
前記火災感知部は、消火区画毎に複数設置されており、
前記制御部は、前記火災感知部が火災を検知した際、前記消火剤放射部から前記消火剤が放射されるように、前記電動弁を制御するものであり、
前記火災感知部が設置された消火区画の位置に応じて、前記電動弁の開閉と同時に前記バイパス電動弁の開閉を制御するものであるパッケージ型自動消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクユニットに貯蔵された消火剤を用いて消火を行うパッケージ型自動消火設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からタンクユニットに貯蔵された消火剤をノズルから放射するパッケージ型自動消火設備が知られている(例えば特許文献1、2参照)。特許文献1には、火災が検知された際、消火薬剤貯蔵容器に貯蔵された消火剤が導管を介して火災発生箇所付近の消火薬剤噴射ヘッドに自動的に放射する家庭用セントラル消火システムが開示されている。特許文献2には、消火剤を貯蔵するタンクと、タンク内を加圧する加圧手段を備え、火災時にはタンク内を加圧手段により加圧する自動消火設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−104506号公報
【特許文献2】特開平10−216262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2のようなパッケージ型自動消火設備は、出火区画に対しタンク内に貯蔵された全量の消火剤を放射して消火活動を行う。燃焼物の表面が燃えている場合、消火剤が直接火元に放射して消火活動を行うことができる。しかしながら、ノズルと火元との間に障害物等があり直接火元に消火剤がかからない場合、タンクユニット内のすべての消火剤を放射しても消火できないことがある。消火しきれずに燃焼が継続していたとしても、タンクユニット内には消火剤がなく、再び消火剤を放射できない状態であるため、出火区画の火災拡大を抑制することができない。
【0005】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、タンクユニットに貯蔵された消火剤を用いて消火活動を行う際に、火災拡大を抑制する効果を高めることができるパッケージ型自動消火設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパッケージ型自動消火設備は、消火剤が貯蔵されたタンクユニットと、タンクユニットに接続され、タンクユニット内の消火剤が流れる放出導管と、放出導管を流れる消火剤を放射する消火剤放射部と、放出導管に設けられ、タンクユニットから消火剤放射部への消火剤の供給を制御する電動弁と、消火剤放射部の設置場所の火災を検知する火災感知部と、火災感知部における火災の検知に基づいて電動弁の動作を制御する制御部とを有し、制御部は、火災感知部が火災を検知した際、連続放射期間は消火剤放射部から消火剤が連続的に放射され、連続放射期間経過後は、消火剤の放射を停止する放射停止期間と、再び消火剤の放射を行う固定の再放射期間とが繰り返され、消火剤放射部から消火剤が断続的に放射されるように、電動弁を制御するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパッケージ型自動消火設備によれば、連続放射期間の間は連続して消火剤を放射し、連続放射期間の経過後は断続的に消火剤を放射するように制御することにより、連続放射期間において消火しきれなかった場合であっても、タンクユニットに残存する消火剤を用いて断続的に放射し消火活動を行うことができるため、火災拡大を抑制する効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のパッケージ型自動消火設備の実施形態を示す模式図である。
図2図1のパッケージ型自動消火設備の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながらパッケージ型自動消火設備の実施形態について説明する。図1は、本発明のパッケージ型自動消火設備の実施形態を示す模式図である。図1のパッケージ型自動消火設備1は、火災により生じる熱もしくは煙を感知し、自動的に消火剤を放射して消火を行うものである。パッケージ型自動消火設備1は、タンクユニット2、放出導管5、電動弁(選択弁)6、消火剤放射部9、火災感知部10、制御部20を備えている。
【0010】
タンクユニット2は、消火剤を貯蔵するものであって、例えば筐体内に複数(例えば3つ)の消火薬剤貯蔵容器2Aが配管によって互いに接続された構造を有している。タンクユニット2は、放出導管5に接続されており、消火剤を放出導管5へ供給する。なお、タンクユニット2が3つの消火薬剤貯蔵容器2Aを備えている場合について例示しているが、上記構造に限られず、1つの消火薬剤貯蔵容器2Aからなっていてもよいし、2以上の消火薬剤貯蔵容器2Aを配管によって互いに接続したものであってもよい。
【0011】
タンクユニット2には、加圧用ガス容器3が起動弁4を介して接続されている。加圧用ガス容器3には例えば窒素ガス等のタンクユニット2内の圧力を加圧するための加圧用ガスが充填されている。起動弁4は、タンクユニット2への加圧用ガスの供給を制御するものであり、その動作は制御部20により制御されている。そして、火災発生時にタンクユニット2から放出導管5へ消火剤が供給される際には起動弁4が開き、加圧用ガス容器3からタンクユニット2へ加圧用ガスが供給され、タンクユニット2内が加圧される。これにより、タンクユニット2内の消火剤を所定の圧力で放出導管5側へ供給することができる。
【0012】
放出導管5は、タンクユニット2と消火剤放射部9とを接続するものであり、図1においてはタンクユニット2から例えば3本の放出導管5が分岐して接続されている。また、各放出導管5は、それぞれ所定の部屋毎に分岐し、各部屋に設置された複数の消火剤放射部9に接続されている。放出導管5には、タンクユニット2から消火剤放射部9への消火剤の供給を制御する電動弁6が設けられている。そして、電動弁6が閉止しているときにはタンクユニット2から消火剤放射部9側へ消火剤は供給されず、電動弁6が開放したときにタンクユニット2から消火剤放射部9側へ消火剤が供給される。言い換えれば、放出導管5は、タンクユニット2と電動弁6とを接続する1次側配管5aと、電動弁6と消火剤放射部9とを接続する2次側配管5bとに区別されており、電動弁6が開放することにより2次側配管5bに消火剤が供給される。
【0013】
定流量弁7は、電動弁6の2次側(下流側)に直列に接続されており、タンクユニット2(1次側配管5a側)から消火剤放射部9(2次側配管5b側)へ一定の流量の消火剤が供給されるように調整するものである。すなわち、定流量弁7は、電動弁6の入口側(1次側配管5a側)または出口側(2次側配管5b側)の圧力変化に関わらず、流量を一定に保持する調整弁である。
【0014】
特に、パッケージ型自動消火設備1は、電動弁6及び定流量弁7に並列接続されたバイパス配管21と、バイパス配管21上に設けられたバイパス電動弁22とを有している。バイパス電動弁22の動作は制御部20により制御されており、バイパス電動弁22が開放したとき、バイパス配管21を介してタンクユニット2から2次側配管5bへ消火剤が供給される。
【0015】
定流量弁7及びバイパス配管21の流出側(2次側配管5bの入口側)には、フロースイッチ8が設けられており、フロースイッチ8は感熱開放継手10Aの作動によってタンクユニット2から放出導管5の2次側配管5bへの消火剤の供給を検知して制御部20に送る機能を有している。
【0016】
さらに、放出導管5の2次側配管5bには、給水管40を介して給水装置30が接続されている。給水装置30は、水を貯留する給水タンク31と、給水タンク31内の水を放出導管5内に水圧を掛ける補助加圧ポンプ32とを有する。2次側配管5bには給水装置30により給水管40を介して充水されるとともに、低い水圧が掛けられた状態になっている(湿式)。給水管40には、加圧ライン遮断弁41が設けられており、加圧ライン遮断弁41は制御部20の指令により給水装置30からの水の供給を遮断する。
【0017】
消火剤放射部9は、タンクユニット2から供給された消火剤を放射するものであり、放出導管5を介してタンクユニット2に接続されている。消火剤放射部9は、例えば開放型スプリンクラーヘッドからなり、建物の部屋毎にそれぞれ複数設置されている。消火剤放射部9は、部屋内における所定の放射区画ERに消火剤を放射して消火を行うようになっている。消火剤放射部9には定流量弁7を介して消火剤が供給されるため、放射する際の圧力を一定にして定流量の放射を行うことができる。なお、消火剤放射部9が開放型スプリンクラーヘッドからなる場合について例示しているが、消火剤を放射するものであればその構成を問わず、例えば閉鎖型スプリンクラーヘッド等の公知の技術を適用することができる。
【0018】
火災感知部10は、消火剤放射部9の設置場所に設置されるものであって、設置場所における火災を検知するものである。具体的には、火災感知部10は、感知機構の異なる2種類の感知器を有するものであって、例えば感熱開放継手10A及び感知器10Bを備えている。
【0019】
感熱開放継手10Aは、放出導管5の2次側配管5bと消火剤放射部9との間に接続されており、感熱開放継手10Aは通常時は弁体が閉じているが熱を感知すると2次側配管5b内の水圧等により弁体が開く構造になっている。例えば感熱開放継手10Aは所定の温度(例えば60℃)以上になったとき、感熱開放継手10A内の弁体が開放される。すると感熱開放継手10Aに接続されている複数の消火剤放射部9に消火剤が供給され、各消火剤放射部9から消火剤が放射区画ERに放射される。なお、消火区画FSが個々の部屋等に設定されている場合(広い空間の場合)、ひとつのノズルの放射区画は所定の範囲が定められ、例えば、感熱開放継手10Aに4つの消火剤放射部9を接続し、4つの放射区画ERを一区切りとした消火区画FSが形成される。なお、消火区画FSは、隣接する消火区画とは別系統の放出導管5に接続されるように設定されている。
【0020】
感知器10Bは、火災により生じる熱もしくは煙を感知し、制御部20に火災情報信号を送信するものであって、例えば定温式アナログ型感知器、差動式アナログ型感知器、熱電対等からなっている。感知器10Bは、感熱開放継手10Aと同様、複数の消火区画毎にそれぞれ設けられている。
【0021】
制御部20は、感知器10Bから火災情報信号を取得し、火災情報信号に基づいて電動弁6の動作を制御するものである。制御部20は、火災情報信号を取得した際、連続放射期間は消火剤放射部9が消火剤を連続的に放射し、連続放射期間経過後は消火剤を断続的に放射するように電動弁6を制御する。具体的には、制御部20は、火災感知部10から火災情報信号が発信され、火災情報信号が一定時間蓄積された場合、火災が発生したと確定し電動弁6を開放する。なお、制御部20は加圧ライン遮断弁41を閉止して放出導管5の2次側配管5bに水が供給されるのを停止する。
【0022】
この際、制御部20は、電動弁6と同時にバイパス電動弁22を開放するか否かを決定する。すなわち、制御部20は火災が発生した場所に応じてバイパス電動弁22の開閉を制御するようになっている。制御部20には、例えば複数の感知器10B毎の(ID番号)とバイパス電動弁22の開閉動作との関係がテーブルとして記憶されており、制御部20は火災情報信号に含まれるID番号とテーブルとに基づいてバイパス電動弁22の開閉動作を制御する。
【0023】
そして、制御部20は、感熱開放継手10Aの作動によってフロースイッチ8が放出導管5に消火剤が供給されたことを検知した場合、連続放射期間のカウントを開始する。制御部20には、連続放射期間として例えば120秒の期間が設定されている。この連続放射期間には、放出導管5内の水の放射が完了する期間(例えば30秒以内)と、その後に消火剤が放射される期間(例えば90秒以上)とが含まれている。制御部20は連続放射期間の経過後に電動弁6を閉止するように制御する。
【0024】
また、制御部20は、上述した連続放射期間の経過後は、消火剤を断続的に放射するように電動弁6を制御する。制御部20には、消火剤の放射を停止する放射停止期間(例えば60秒)と、消火剤を再放射する再放射期間(例えば30秒)とが予め記憶されている。そして、制御部20は、連続放射期間の経過後の放射停止期間は消火剤の放射を停止させるように電動弁6を閉止し、放射停止期間の経過後は再放射期間だけ消火剤の放射が行われるように電動弁6を開放する。制御部20は、放射停止期間の電動弁6の閉止と、再放射期間の電動弁6の開放とを繰り返す。
【0025】
特に、制御部20は、上述した消火剤の再放射を行うか否かの判断を火災感知部10の感知に基づいて行う機能を有している。すなわち、放射停止期間内もしくは放射停止期間経過後に感知器10Bの出力状態を確認する作業(復旧作業)が行われ、再び感知器10Bがリセットした状態で火災の感知を行う。そして、感知器10Bが再び火災を検知して火災情報信号を発信した場合、制御部20は再放射期間による消火剤の再放射を行うように電動弁6を制御する。一方、感知器10Bから再び火災情報信号が発信されない場合、制御部20は消火剤の再放射が行われないように制御する。言い換えれば、感知器10Bが検知するまで放射停止期間が延長された状態とみなすことができ、消火剤の再放射が必要な状態になったタイミングで消火剤の再放射を行うことができるようになっている。
【0026】
さらに、制御部20は、消火剤を断続的に放射している消火区画に隣接する隣接消火区画から火災情報を取得した場合、隣接消火区画の消火剤放射部9から消火剤を断続的に放射されるように電動弁6を制御する機能を有している。例えば図1において、消火区画FSにおいて消火剤が断続的に放射されている際に、隣接消火区画NFSの火災感知部10から火災情報信号が発信された場合、制御部20は、再放射期間と放射停止期間とを繰り返すように、隣接消火区画NFSに通じる電動弁6を断続的に開閉するように制御する。
【0027】
なお、給水管40には2次側配管5bの水圧を監視する水圧検知部42が設置されており、制御部20は水圧検知部42の検知結果に基づいて感熱開放継手10Aの破損を検知する。具体的には、水圧検知部42は圧力スイッチ等からなっており、感熱開放継手10Aが破損すると放出導管5内が減圧する。この際、水圧検知部42が減圧を検知することにより、制御部20は感熱開放継手10Aの破損を検知することができる。
【0028】
図2は、図1のパッケージ型自動消火設備の動作例を示すフローチャートであり、図1及び図2を参照してパッケージ型自動消火設備の動作例について説明する。はじめに、火災感知部10において、部屋等の設置場所において火災が発生したか否かが監視される(ステップST1)。そして、火災が発生した場合(ステップST1のYES)、火災感知部10の感知器10Bから火災情報信号が制御部20に発信される(ステップST2)。
【0029】
火災情報信号が一定時間蓄積されたときには、火災が発生したと確定される。制御部20で火災発生が確定した場合、起動弁4と電動弁6が開放される(ステップST3)。この際、制御部20においてバイパス電動弁22を開放するか否かが判断され、開放する必要があると判断されたときにはバイパス電動弁22も開放する。また、火災感知部10の感熱開放継手10Aにおいても火災の熱により弁体が開放すると、放出導管5から消火剤放射部9へ消火剤の供給が開始される。
【0030】
すると、タンクユニット2内に貯蔵された消火剤が、放出導管5の1次側配管5a、電動弁6、定流量弁7(バイパス電動弁22が開放されている場合はバイパス配管21)を通り、放出導管5の2次側配管5b及び感熱開放継手10Aを介して消火剤放射部9に供給される。
【0031】
消火剤が電動弁6から放出導管5の2次側配管5bに供給されると、フロースイッチ8において消火剤の供給が検知され制御部20に送られる。すると、制御部20において、フロースイッチ8の検知を起点として時間のカウントが開始され、消火剤の放射期間が設定された連続放射期間(例えば120秒)経過するまで、電動弁6を開放し続けて消火剤を消火剤放射部9から放射する(ステップST4)。なお、連続放射期間のうち、放射開始から所定期間以内(例えば30秒以内)までは、放出導管5の2次側配管5b内に充水された水が消火剤放射部9から放射される。その後、バイパス電動弁22を閉止することにより、残りの時間から消火剤が所定の流量で放射される。
【0032】
消火剤の放射期間が連続放射期間経過したとき(ステップST4のYES)、制御部20により電動弁6が閉止される(ステップST5)。その後、放射停止期間(例えば60秒)の間は、電動弁6が閉止して消火剤の放射が停止する(ステップST6)。放射停止期間の経過後(ステップST6のYES)、感知器10Bがまだ火災を検出しているかどうかを確認する復旧作業が行われ(ステップST7)、感知器10Bにおいて、燃焼物が消火されておらず再び火災が発生したか否かが監視され、火災が再び発生していると判断された場合には、火災情報信号が発信される(ステップST8のYES)。
【0033】
再び火災情報信号が発信された場合、電動弁6が開放して消火剤の再放射が行われる(ステップST9)。そして、再放射期間(例えば30秒)が経過するまで消火剤の放射が行われた後(ステップST10)、再び電動弁6が閉止される(ステップST5)。その後は、感知器10Bにおける火災検知に基づいて、消火剤が断続的に放射されることになる(ステップST5〜ステップST10)。
【0034】
上記実施形態によれば、制御部20が、火災情報を取得した際、消火剤放射部9が連続放射期間は消火剤を連続的に放射し、連続放射期間の経過後は消火剤を断続的に放射するように、電動弁6を制御することにより、出火区画の火災拡大を抑制することができる。すなわち、パッケージ型自動消火設備1は、タンクユニット2内の限られた量の消火剤を用いて消火活動を行うものである。ここで、消火剤放射部9から消火剤が放射された際に、火元に直接消火剤がかからない場合があり、一時的には燃焼物の火が消えても再び火災になることがある。しかしながら、従来のように、一度に連続してタンクユニット2内のすべての消火剤を放射してしまうと、再び火災になった場合には、タンクユニット2内に再放射する消火剤が残っていないため、火災を抑制することができない。
【0035】
一方、図1のパッケージ型自動消火設備1において、連続放射期間においてはタンクユニット2内のすべての消火剤は放射されず、連続放射期間の経過後において消火剤が断続的に放射されるように制御している。これにより、消火区画(出火区画)において消火動作後に再び火災が継続するような場合であっても、消火剤を再放射して有効的に消火剤を利用することができる。
【0036】
特に、感知器10Bによる検知に基づいて消火剤の再放射が行われる場合、再放射が必要になったタイミングになるまでは放射停止期間を延長することになるため、消火剤の過剰な放射を抑制することができる。さらに、火災が検知されず火災が収まっている場合には、消火剤の再放射が行なわれないため、消火剤の過剰な放射を抑制することができる。
【0037】
さらに、制御部20は、消火剤を断続的に放射している消火区画FSに隣接する隣接消火区画NFSから火災情報を取得した場合、隣接消火区画NFSの消火剤放射部9から消火剤を断続的に放射されるように電動弁6を制御するとき、1区画目が断続放射状態の場合は火災の拡大を抑制している状態であり、隣接消火区画NFSにおいても火災の拡大を抑制するために断続的に放射を行い、タンクユニット2内の限られた消火剤を用いて有効的に火災の拡大を抑制することができる。
【0038】
また、パッケージ型自動消火設備1が電動弁6及び定流量弁7に並列的に接続されたバイパス配管21及びバイパス電動弁22をさらに有するとき、例えばタンクユニット2から消火剤放射部9までの距離が長く、消火剤の放射までに時間を要するような場合には、バイパス電動弁を開放することで消火剤への置換時間を早めることが出来る。
【0039】
本発明の実施形態は、上記実施形態に限定されない。たとえば、連続放射期間は120秒であり、放射停止期間は60秒であり、再放射期間は30秒である場合について例示しているが、これに限らず必要に応じて適宜設定することができる。また、火災情報信号の有無に基づいて消火剤を再放射する場合について例示しているが、消火剤を連続的に放射した後に断続的に放射するものであればよく、火災情報信号の有無に拘わらず制御部20のタイマー制御のみで消火剤を断続的に再放射するようにしてもよい。このとき制御部20にあらかじめ設定された時間で再放出時間を制御しているが、例えば火災感知器の温度情報を検出し、所定の温度以下になったら再放出を停止するようにしてもよい。
また、感熱開放継手10Aに4つの消火剤放射部9を接続し、4つの放射区画ERを一区切りとした消火区画FSが形成されるようにしたが、感熱開放継手10Aに接続される消火剤放射部9は形成したい消火区画FSの大きさによって適宜選択される。
【0040】
また、図1のパッケージ型自動消火設備1が、放出導管5内に水が充填されている湿式消火設備である場合について例示しているが、放出導管5内に水が充填されていなくてもよい(乾式)。さらに、図1において、タンクユニット2と消火剤放射部9との間に感熱開放継手10Aが介在する場合について例示しているが、これに代えて制御部20により開閉が制御される開閉弁を用いてもよい。さらに、図1において、タンクユニット2に3つの放出導管5が分岐して接続されている場合について例示しているが、複数の放出導管5毎にそれぞれタンクユニット2が接続された構造であってもよい。これらの場合であっても、消火剤を断続的に放射することにより、消火剤を効率的に用いて消火活動を行うことができる。
【0041】
また、本発明の実施形態では、感熱開放継手10Aの作動をフロースイッチ8によって検知しているが、フロースイッチ8の代わりに配管内の圧力を監視することにより、配管内の圧力が減圧すると感熱開放継手10Aの作動を検知するようにしても良い。
さらに、本発明の実施形態では、感熱開放継手10Aと感知器10Bを用いてタイマーを起動させるものとしたが、例えば検出方法の異なる火災感知器(煙感知器と熱感知器など)によってタイマーを起動させるようにしても良い。この場合、フロースイッチ8等を設けずに、両感知器が火災を検出した時点でタイマーを起動させても良い。
さらに、上記再放出の制御方法および、制御部20のタイマーの起動方法は自由に組み合わせて設定してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 パッケージ型自動消火設備、2 タンクユニット、2A 消火薬剤貯蔵容器、3 加圧用ガス容器、4 起動弁、5 放出導管、5a 1次側配管、5b 2次側配管、6 電動弁、7 定流量弁、8 フロースイッチ、9 消火剤放射部、10 火災感知部、10A 感熱開放継手、10B 感知器、20 制御部、21 バイパス配管、22 バイパス電動弁、30 給水装置、31 給水タンク、32 補助加圧ポンプ、40 給水管、41 加圧ライン遮断弁、42 水圧検知部、ER 放射区画、FS 消火区画、NFS 隣接消火区画。
図1
図2