(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296959
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】NC旋盤
(51)【国際特許分類】
B23B 31/34 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
B23B31/34
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-220094(P2014-220094)
(22)【出願日】2014年10月29日
(65)【公開番号】特開2016-83751(P2016-83751A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】311006238
【氏名又は名称】株式会社カワタテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】元屋 好生
(72)【発明者】
【氏名】川田 泰幸
【審査官】
青山 純
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−185919(JP,A)
【文献】
特開昭63−039752(JP,A)
【文献】
特開2000−301430(JP,A)
【文献】
米国特許第2732216(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00 − 31/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体および2つの把持つめを有し、主軸のまわりを回転可能であり、前記主軸はZ軸方向にのび、前記把持つめは前記主軸に垂直に移動可能であり、前記主軸に垂直の方向において、前記各つめが互いに対向し、前記各つめがそれぞれ移動し、互いに接近し、前記把持つめに被加工物を把持することができ、さらに、ハウジングが前記本体に設けられ、前記把持つめが前記ハウジングに支持され、前記把持つめは回転軸のまわりを回転可能であり、前記回転軸は前記主軸に垂直にのびるチャックと、
前記Z軸方向にのび、前記ハウジングに支持され、長さ方向に移動可能であるプッシュバーと、
刃物を支持するサドルと、
前記サドルに設けられた突出体と、
前記チャックを前記主軸のまわりに回転させ、前記サドルをX軸方向およびZ軸方向に移動させ、前記刃物を前記被加工物に係合させ、前記刃物によって前記被加工物を機械加工するとともに、前記被加工物の機械加工とは別個に、前記チャックを前記主軸のまわりに回転させ、前記サドルを前記X軸方向に移動させ、前記Z軸方向において、前記突出体とプッシュバーを互いに対向させ、その後、前記サドルを前記Z軸方向に移動させ、前記突出体を前記プッシュバーに突き合わせ、前記突出体によって前記プッシュバーを移動させるNC装置と、
前記ハウジング内において、前記プッシュバーと把持つめ間に設けられ、前記把持つめを前記プッシュバーに連動させ、前記回転軸のまわりに回転させる連動機構とからなり、
前記把持つめによって前記被加工物を回転させ、その被加工面を選択するようにしたことを特徴とするNC旋盤。
【請求項2】
本体および2つの把持つめを有し、主軸のまわりを回転可能であり、前記主軸はZ軸方向にのび、前記把持つめは前記主軸に垂直に移動可能であり、前記主軸に垂直の方向において、前記各つめが互いに対向し、前記各つめがそれぞれ移動し、互いに接近し、前記把持つめに被加工物を把持することができ、さらに、ハウジングが前記本体に設けられ、前記把持つめが前記ハウジングに支持され、前記把持つめは回転軸のまわりを回転可能であり、前記回転軸は前記主軸に垂直にのびるチャックと、
前記Z軸方向にのび、前記ハウジングに支持され、長さ方向に移動可能であるプッシュバーと、
刃物を支持するサドルと、
前記チャックを前記主軸のまわりに回転させ、前記サドルをX軸方向およびZ軸方向に移動させ、前記刃物を前記被加工物に係合させ、前記刃物によって前記被加工物を機械加工するとともに、前記被加工物の機械加工とは別個に、前記チャックを前記主軸のまわりに回転させ、前記サドルを前記X軸方向に移動させ、前記Z軸方向において、前記刃物とプッシュバーを互いに対向させ、その後、前記サドルを前記Z軸方向に移動させ、前記刃物を前記プッシュバーに突き合わせ、前記刃物によって前記プッシュバーを移動させるNC装置と、
前記ハウジング内において、前記プッシュバーと把持つめ間に設けられ、前記把持つめを前記プッシュバーに連動させ、前記回転軸のまわりに回転させる連動機構とからなり、
前記把持つめによって前記被加工物を回転させ、その被加工面を選択するようにしたことを特徴とするNC旋盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、NC旋盤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、NC旋盤はチャックおよびサドルを有する。チャックは主軸のまわりを回転可能であり、主軸はZ軸方向にのびる。さらに、チャックに把持つめが設けられ、把持つめが主軸に垂直に移動し、把持つめに被加工物が把持される。そして、サドルに刃物が支持され、チャックが主軸のまわりを回転し、サドルがX軸方向およびZ軸方向に移動し、刃物が被加工物に係合し、刃物によって被加工物が機械加工される。
【0003】
ところで、刃物によって被加工物が機械加工されるが、機械加工されるのは単一の被加工面とは限らない。被加工物のまわりにおいて、複数の被加工面が角度間隔を置いて位置し、各被加工面がそれぞれ機械加工されることも多い。この場合、機械加工毎に、手作業で把持つめおよび被加工物を操作し、被加工物を回転させ、その被加工面を選択していたが、面倒であり、時間および労力が要求されるという問題がある。
【0004】
なお、特許文献2に記載されているように、マシニングセンタのインデックス装置としてプッシュバー式のものがあるが、特許文献1のNC旋盤では、プッシュバーによって刃物が交換される。
【0005】
この発明は、NC旋盤によって被加工物が機械加工されるとき、その被加工面が自動的に選択されるようにすることを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5372260号公報
【特許文献2】特許第3371605号公報
【発明の概要】
【0007】
この発明によれば、NC旋盤のチャックにプッシュバーが組み合わされ、チャックは本体および把持つめを有し、主軸のまわりを回転可能であり、主軸はZ軸方向にのびる。把持つめは主軸に垂直に移動可能である。したがって、把持つめに被加工物を把持することができる。さらに、ハウジングが本体に設けられ、把持つめがハウジングに支持される。把持つめは回転軸のまわりを回転可能であり、回転軸は主軸に垂直にのびる。一方、プッシュバーはZ軸方向にのび、ハウジングに支持され、長さ方向に移動可能である。さらに、サドルに刃物が支持され、突出体がサドルに設けられる。さらに、NC装置によってチャックおよびサドルが駆動され、チャックが主軸のまわりを回転し、サドルがX軸方向およびZ軸方向に移動し、刃物が被加工物に係合し、刃物によって被加工物が機械加工される。さらに、被加工物の機械加工とは別個に、チャックが主軸のまわりを回転し、サドルがX軸方向に移動し、Z軸方向において、突出体とプッシュバーが互いに対向する。その後、サドルがZ軸方向に移動し、突出体がプッシュバーに突き合わされ、突出体によってプッシュバーが移動する。さらに、ハウジング内において、連動機構がプッシュバーと把持つめ間に設けられ、把持つめがプッシュバーに連動し、回転軸のまわりを回転する。したがって、把持つめによって被加工物を回転させ、その被加工面を選択することができる。
【0008】
NC旋盤のチャックを主軸のまわりに回転させ、サドルをX軸方向に移動させ、Z軸方向において、突出体とプッシュバーではなく、刃物とプッシュバーを対向させる。その後、サドルをZ軸方向に移動させ、刃物をプッシュバーに突き合わせ、刃物によってプッシュバーを移動させるようにしてもよい。この場合、突出体をサドルに設ける必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】Aは
図1のチャックの側面図、BはAのチャックの正面図である。
【
図3】Aは
図1の被工作物の側面図、BはAの被工作物の底面図である。
【
図4】Aは
図1のNC旋盤の突出体とプッシュバーを対向させた状態を示す側面図、BはAのチャックの正面図である。
【
図5】
図1のNC旋盤の連動機構を示す断面図である。
【
図7】Aは他の実施例を示す側面図、BはAのチャックの底面図、CはAのチャックの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1はこの発明にかかるNC旋盤を示す。このNC旋盤では、そのチャック1にプッシュバー2が組み合わされ、
図2に示すように、チャック1は本体3および把持つめ4a,4bを有し、主軸5のまわりを回転可能であり、主軸5はZ軸方向にのびる。把持つめ4a,4bは主軸5に垂直に移動可能である。したがって、把持つめ4a,4bに被加工物Wを把持することができる。この実施例では、チャック1に2つの把持つめ4a,4bが設けられ、主軸5に垂直の方向において、各把持つめ4a,4bが互いに対向し、本体3はその可動部6a,6bを有し、可動部6a,6bは主軸5に垂直に移動可能であり、把持つめ4a,4bは可動部6a,6bに支持される。さらに、本体3に駆動機構が設けられ、駆動機構によって可動部6a,6bが移動する。したがって、各つめ4a,4bが可動部6a,6bと一体的に移動し、互いに接近し、把持つめ4a,4bに被加工物Wが把持されるものである。さらに、本体3が主軸5に固定され、駆動モータが主軸5に連結され、駆動モータによってチャック1および被加工物Wが回転する。主軸5および駆動モータはベッド7に支持される。
図3に示すように、被加工物Wは複数の被加工面W1,W2,W3を有し、被加工物Wのまわりにおいて、被加工面W1,W2,W3は角度間隔を置いて位置する。
【0012】
さらに、このNC旋盤では、ハウジング8が本体3に設けられ、把持つめ4aがハウジング8に支持される。把持つめ4aは回転軸9のまわりを回転可能であり、回転軸9は主軸5に垂直にのびる。さらに、把持つめ4bも回転軸9のまわりを回転可能である。この実施例では、本体3の可動部6a,6bにおいて、ハウジング8が可動部6aに取り付けられる。把持つめ4aはハウジング8に取り付けられ、回転可能に案内され、把持つめ4bは可動部6bに取り付けられ、回転可能に案内される。
【0013】
一方、プッシュバー2はZ軸方向にのび、ハウジング8に支持され、長さ方向に移動可能である。さらに、サドル10に刃物11が支持され、
図4に示すように、突出体12がサドル10に設けられる。突出体12はロッドからなり、Z軸方向にのびる。サドル10はフレーム13に支持され、X軸方向に移動可能である。フレーム13はベッド7に支持され、Z軸方向に移動可能である。Z軸方向とは主軸5の軸方向のことで、X軸方向とは主軸5の半径方向のことである。さらに、駆動モータがフレーム13に支持され、送りねじに連結され、送りねじがサドル10にねじ合わされ、X軸方向において、駆動モータによってサドル10を移動させることができ、駆動モータがベッド7に支持され、送りねじに連結され、送りねじがフレーム13にねじ合わされ、Z軸方向において、駆動モータによってフレーム13を移動させることができる。
【0014】
さらに、駆動モータによってチャック1を回転させ、サドル10を移動させることができるが、NC装置14が駆動モータに接続され、NC装置によって駆動モータが制御される。したがって、NC装置14によってチャック1およびサドル10を駆動し、チャック1を主軸5のまわりに回転させ、サドル10をX軸方向およびZ軸方向に移動させ、刃物11を被加工物Wに係合させ、刃物11によって被加工物Wを機械加工することができる。
【0015】
さらに、このNC旋盤では、被加工物Wの機械加工とは別個に、NC装置14によって駆動モータが制御され、チャック1が主軸5のまわりを回転し、チャック1によってプッシュバー2が回転し、その位置が調節される。さらに、サドル10がX軸方向に移動し、サドル10によって突出体12が移動し、その位置が調節され、Z軸方向において、突出体12とプッシュバー2が互いに対向する(
図4A,B)。
【0016】
その後、NC装置14によって駆動モータが制御され、サドル10がZ軸方向に移動し、Z軸方向において、サドル10によって突出体12が移動し、突出体12がプッシュバー2に突き合わされる。したがって、Z軸方向において、突出体12によってプッシュバー2が押され、移動する。
【0017】
さらに、ハウジング8内において、連動機構がプッシュバー2と把持つめ4a間に設けられ、把持つめ4aがプッシュバー2に連動し、回転軸9のまわりを回転する。この実施例では、特許文献2のプッシュバーおよび連動機構と同様、
図5に示すように、連動機構に送りつめ15、つめ車16およびスプリング17,18が使用され、スプリング17によってプッシュバー2が弾性付勢され、送りつめ15がプッシュバー2に取り付けられ、スプリング18によって送りつめ15が弾性付勢され、つめ車16が把持つめ4aに固定される。つめ車16は把持つめ4aの回転軸9に同心である。
【0018】
したがって、突出体12によってプッシュバー2が移動すると、送りつめ15がつめ車16に係合し、回転軸9のまわりにおいて、送りつめ15およびスプリング18によってつめ車16および把持つめ4aが回転する。さらに、把持つめ4a,4bに被加工物Wが把持されている関係上、把持つめ4bも回転軸9のまわりを回転し、把持つめ4a,4bによって被加工物Wが回転する。さらに、突出体12をプッシュバー2から後退させ、スプリング17によってプッシュバー2を移動させ、復帰させることができ、その後、突出体12をプッシュバー2に突き合わせ、把持つめ4aを再度回転させることができる。これを何回か繰り返し、把持つめ4a,4bによって被加工物Wを回転させ、その被加工面W1,W2,W3を選択することができ、各被加工面W1,W2,W3をそれぞれ機械加工することができる。
【0019】
たとえば、把持つめ4a,4bによって被加工物Wを回転させ、その被加工面W1を選択する。その後、サドル10をX軸方向に移動させ、被加工面W1を刃物11に対向させる。さらに、チャック1を主軸5のまわりに回転させ、サドル11をX軸方向およびZ軸方向に移動させ、刃物11を被加工面W1に係合させ、刃物11によって被加工面W1を機械加工する。
【0020】
さらに、被加工面W1の機械加工後、チャック1を再度回転させ、サドル10をX軸方向に移動させ、突出体12とプッシュバー2を互いに対向させる。さらに、サドル10をZ軸方向に移動させ、突出体12によってプッシュバー2を移動させる。そして、把持つめ4a,4bによって被加工物Wを回転させ、その被加工面W2を選択する。その後、サドル10を再度移動させ、被加工面W2を刃物11に対向させる。さらに、チャック1を再度回転させ、サドル10を再度移動させ、刃物11によって被加工面W2を機械加工する。
【0021】
さらに、その後、突出体12とプッシュバー2を再度対向させ、被加工物Wを再度回転させ、これによって被加工面W3を選択する。その後、サドル10を再度移動させ、被加工面W3を刃物11に対向させることができる。したがって、刃物11によって被加工面W3を機械加工することができる。
【0022】
したがって、このNC旋盤の場合、被加工物Wを自動的に回転させ、その被加工面W1,W2,W3を自動的に選択することができ、各被加工面W1,W2,W3をそれぞれ機械加工することができる。機械加工毎に、手作業で把持つめ4a,4bを操作し、被加工物Wを回転させ、その被加工面W1,W2,W3を選択する必要はなく、時間および労力は要求されない。
【0023】
図1の実施例において、
図6に示すように、被加工物Wの回転後、センサ19によって回転角度を確認するようにしてもよい。たとえば、サドル10にセンサ19を取り付け、把持つめ4aに回転板20を取り付け、回転板20の外周縁において、複数の凹部を角度間隔を置いて形成する。そして、被加工物Wの回転後、サドル10によってセンサ9を移動させ、センサ9が凹部に挿入され、センサ9によって回転角度が確認されるようにしてもよい。
【0024】
図7に示すように、本体3の可動部6a,6bを2分割する。そして、その分割部を分離可能に連結し、把持つめ4a,4bを他の把持つめと交換することができるようにしてもよい。
【0025】
図1のチャック1を主軸5のまわりに回転させ、サドル10をX軸方向に移動させ、Z軸方向において、突出体12とプッシュバー2ではなく、刃物11とプッシュバー2を対向させる。その後、サドル10をZ軸方向に移動させ、刃物11をプッシュバー2に突き合わせ、刃物11によってプッシュバー2を移動させる。さらに、
図1の実施例と同様、把持つめ4a,4bをプッシュバー2に連動させ、回転軸9のまわりに回転させる。そして、把持つめ4a,4bによって被加工物Wを回転させ、その被加工面W1,W2,W3を選択するようにしてもよい。この場合、突出体12をサドル10に設ける必要はない。
【符号の説明】
【0026】
1 チャック
2 プッシュバー
3 本体
4a,4b 把持つめ
5 主軸
8 ハウジング
9 回転軸
10 サドル
11 刃物
12 突出体
14 NC装置
15 送りつめ
16 つめ車
W 被加工物
W1,W2,W3 被加工面