(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296968
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】リリーフバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 17/04 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
F16K17/04 D
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-245487(P2014-245487)
(22)【出願日】2014年12月4日
(65)【公開番号】特開2016-109178(P2016-109178A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2016年12月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(72)【発明者】
【氏名】小島 啓介
【審査官】
冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−038475(JP,U)
【文献】
特開2011−043094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト形バルブボディ(20)の中心部に形成されて基端面(20P)に開口した中空部屋(25)に弁体(12)と弾性部材(13)とが収容されて前記中空部屋(25)の開口が蓋体(40)にて閉塞され、前記弁体(12)は、前記弾性部材(13)に付勢されて、通常は、前記ボルト形バルブボディ(20)の先端部の弁孔(11)を塞ぐと共に、前記弁孔(11)側から受ける流体圧力が基準圧以上になると後退して流体を前記弁孔(11)から前記蓋体(40)が有する排出孔(14)の外へと逃がすリリーフバルブ(10)において、
前記蓋体(40)に形成されて、前記ボルト形バルブボディ(20)の基端面(20P)から突出した円筒部(43)と、
前記円筒部(43)の周方向の複数位置に配された複数の前記排出孔(14)と、
前記円筒部(43)の外側に回転可能に嵌合して前記複数の排出孔(14)の一部を閉塞するカバー体(45)と、
前記カバー体(45)に形成されて、前記カバー体(45)の回転位置に応じて任意の前記排出孔(14)を開放する開口開放部(47)とを備えたことを特徴とするリリーフバルブ(10)。
【請求項2】
前記カバー体(45)に形成されて、前記排出孔(14)に係止する係止突部(48)を備えたことを特徴とする請求項1に記載のリリーフバルブ(10)。
【請求項3】
前記カバー体(45)に設けられ、前記円筒部(43)の端面から突出するカバー体操作突部(46)を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のリリーフバルブ(10)。
【請求項4】
前記開口開放部(47)は、前記カバー体(45)の任意の回転位置で必ず何れかの前記排出孔(14)の少なくとも一部を開放する大きさになっていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載のリリーフバルブ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁孔を通じて弁体にかかる流体圧力が基準圧より大きくなったときに開弁して排出孔から流体を排出するリリーフバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のリリーフバルブとして、ボルト形バルブボディの中心部に形成された中空部屋に弁体と弾性部材とを収容して備えると共に、先端面に弁孔、基端面に排出孔を有したものが知られている。そして、このリリーフバルブは、例えば、カーエアコンに取り付けられて流体(具体的には、冷媒)が異常に高圧になった場合に弁孔が開き、流体の一部を排出孔から外部に排出する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−125348号公報(段落[0003]、[0005]、[0006]、
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リリーフバルブは、排出する流体が、その流体を受けて劣化する部品にかからないように配置する必要がある。また、カーエアコンに取り付けられるリリーフバルブでは、運転者に不安を与えないために、目立たない場所に流体が排出されるように配置する必要がある。しかしながら、上記した従来のリリーフバルブでは、流体の排出方向がバルブボディの軸方向を向いているので、上記した必要とされる条件を満たすために、取り付け位置の自由度が低くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来より取り付け位置の自由度が高いリリーフバルブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るリリーフバルブ(10)は、ボルト形バルブボディ(20)の中心部に形成されて基端面(20P)に開口した中空部屋(25)に弁体(12)と弾性部材(13)とが収容されて中空部屋(25)の開口が蓋体(40)にて閉塞され、弁体(12)は、弾性部材(13)に付勢されて、通常は、ボルト形バルブボディ(20)の先端部の弁孔(11)を塞ぐと共に、弁孔(11)側から受ける流体圧力が基準圧以上になると後退して流体を弁孔(11)から蓋体(40)が有する排出孔(14)の外へと逃がすリリーフバルブ(10)において、蓋体(40)に形成されて、ボルト形バルブボディ(20)の基端面(20P)から突出した円筒部(43)と、円筒部(43)の周方向の複数位置に配された複数の排出孔(14)と、円筒部(43)の外側に回転可能に嵌合して複数の排出孔(14)の一部を閉塞するカバー体(45)と、カバー体(45)に形成されて、カバー体(45)の回転位置に応じて任意の排出孔(14)を開放する開口開放部(47)とを備えたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のリリーフバルブ(10)において、カバー体(45)に形成されて、排出孔(14)に係止する係止突部(48)を備えたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のリリーフバルブ(10)において、カバー体(45)に設けられ、円筒部(43)の端面から突出するカバー体操作突部(46)を備えたところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載のリリーフバルブ(10)において、開口開放部(47)は、カバー体(45)の任意の回転位置で必ず何れかの排出孔(14)の少なくとも一部を開放する大きさになっているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
[請求項1の発明]
請求項1のリリーフバルブ(10)では、流体を排出するための複数の排出孔(14)が、ボルト形バルブボディ(20)の基端面(20P)から突出した円筒部(43)における周方向の複数位置に配置されている。そして、円筒部(43)に回転可能に嵌合したカバー体(45)によって複数の排出孔(14)の一部が閉塞されると共に、カバー体(45)が有する開口開放部(47)により、任意の排出孔(14)が開放される。これにより、リリーフバルブ(10)を流体機器に取り付けてから、カバー体(45)を任意の回転位置に配置することで流体の排出方向を所望の方向に向けることができ、従来よりリリーフバルブ(10)の取り付け位置の自由度が高くなる。
【0012】
[請求項2の発明]
請求項2のリリーフバルブ(10)では、カバー体(45)に排出孔(14)に係止する係止突部(48)が備えられているので、円筒部(43)に対するカバー体(45)の回転位置が安定すると共に、カバー体(45)が円筒部(43)から離脱することを防ぐことができる。
【0013】
[請求項3の発明]
請求項3のリリーフバルブ(10)では、円筒部(43)の端面から突出したカバー体操作突部(46)をカバー体(45)に設けたので、カバー体(45)の回転操作が容易になる。
【0014】
[請求項4の発明]
請求項4のリリーフバルブ(10)では、カバー体(45)の回転位置によらず何れかの排出孔(14)の少なくとも一部が常に開放されるので、弁体(12)が弁孔(11)側から受ける流体圧力が基準圧以上になったときに、確実に流体を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るリリーフバルブの正断面図
【
図5】回転途中におけるカバー体及び蓋体の平断面図
【
図6】第2実施形態に係るリリーフバルブの平断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を
図1〜5に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態のリリーフバルブ10は、雄螺子部20Aの基端部に平面形状六角形のヘッド部20Bを有するボルト形バルブボディ20(以下、単に「バルブボディ20」という)を備えている。バルブボディ20の中心部には、中空部屋25が形成されている。バルブボディ20に基端面20Pには、中空部屋25の一端部が部品挿入口25Aとして開口している。また、中空部屋25の奧面の中心部とバルブボディ20の先端面との間には、弁孔11が貫通形成されている。そして、中空部屋25の奧面における弁孔11の開口縁から円筒状の弁座11Zが突出している。
【0018】
中空部屋25の内部には、弁体12が直動可能に収容されている。弁体12は、全体が円柱状をなし、先端面に凹部12Aを有して、そこにエラストマー製のシール部材12Bを備えている。そして、このシール部材12Bが弁座11Zに当接して弁孔11が閉じられる。また、弁体12の基端面からは、弁体12全体より小径の中央突部12Cが突出している。そして、本発明の「弾性部材」としての圧縮コイルバネ13が、下端部が中央突部12Cの外側に嵌合した状態になって中空部屋25に収容されている。
【0019】
弁体12及び圧縮コイルバネ13を中空部屋25に抜け止めするためにバルブボディ20の基端面20Pには、蓋体40が取り付けられている。蓋体40は、例えば、板金のプレス成形品であって、上端が天井壁42によって閉塞されかつ下端が開放した円筒部43を備えて、その円筒部43の下端から側方に当接フランジ41を張り出した形状をなしている。また、この蓋体40に対応して、バルブボディ20の基端面20Pの外縁寄り位置には、中空部屋25と同心の環状突壁27が突出している。そして、当接フランジ41が基端面20Pにおける環状突壁27より内側部分に重ねられた状態で、環状突壁27が内側に倒されるようにカシメられて蓋体40がバルブボディ20に回転不可能に固定されている。これにより、中空部屋25が蓋体40の内側まで延長され、上記した圧縮コイルバネ13の上端部は、蓋体40の天井壁42と弁体12との間で突っ張り状態になっている。なお、天井壁42の内面には、弁体12の中央突部12Cに対応した中央突部42Tが形成され、その中央突部42Tの外側に圧縮コイルバネ13の上端部が嵌合している。
【0020】
図2に示すように、円筒部43には、周方向を6等分する位置に排出孔14が形成されている。また、各排出孔14は、略円形になっている。
【0021】
蓋体40の円筒部43の外側には、カバー体45が嵌合している。カバー体45は、帯状の板金を円弧状に湾曲させてなり、円筒部43の外周面のうち約2/3を覆っている。また、円筒部43の周方向におけるカバー体45の両端部の間は、本発明に係る開口開放部47になっていて、円筒部43の外周面の約1/3が開口開放部47を通して外側に露出している。ここで、排出孔14は、上記したように円筒部43の周方向を6等分する位置に配置されているので、カバー体45を円筒部43回りの任意の回転位置に配置しても、必ず、何れかの1つの排出孔14は全開した状態になる。なお,
図3に示すように、カバー体45の両先端部は、円弧状になっている。
【0022】
カバー体45の両端寄り位置からは、円筒部43側に半球面状の1対の係止突部48,48が突出している。これらの1対の係止突部48,48は、円筒部43の中心を挟んで対向配置され、円筒部43のうち対向配置された任意の2つの排出孔14,14に凹凸係合する。また、
図2及び
図4に示すように、係止突部48が排出孔14に凹凸係合してカバー体45が円筒部43に位置決めされると、2つの排出孔14,14が開放した状態になる。
【0023】
また、
図1に示すように、カバー体45の下端部は、カシメられた環状突壁27の先端面と円筒部43との間の隙間27Sに収められ、カバー体45の上端部は蓋体40の上面より上方に突出して本発明に係るカバー体操作突部46になっている。そして、例えば、図示しない工具によりカバー体操作突部46の内側からカバー体45を隙間27Sの範囲で押し広げることで係止突部48と排出孔14との凹凸係合を解除して、カバー体45を任意の位置へと回転させることができる。また、カバー体45は、内側から押し広げずに単に回転力を付与してもよい。すると、
図5に示すように、係止突部48が排出孔14の開口縁に乗り上がってそれらの凹凸係合が解除され、任意の位置へとカバー体45を回転させることができる。
【0024】
本実施形態のリリーフバルブ10の構成に関する説明は以上である。次に、このリリーフバルブ10の作用効果について説明する。
図1に示すように、リリーフバルブ10は、流体機器90(例えば、エアコンやボイラ回路、エンジン潤滑系の油圧調整機器等)の流体排出孔91に装着された状態で使用される。そして、流体排出孔91内の内圧が所定の基準値以下の場合には、リリーフバルブ10は閉弁状態に維持され、流体排出孔91内の内圧が基準値よりも大きくなると、弁体12が弁座11Zから離間して、弁孔11が開く。すると、流体機器90の流体が中空部屋25に流れ込み、バルブボディ20の基端側の排出孔14から外部に排出される。なお、リリーフバルブ10は、雄螺子部20Aの基端部にシール材であるOリング35を取り付けた状態で、流体排出孔91の内面に形成された雌螺子部92に螺合される。これにより、バルブボディ20と流体排出孔91との間の隙間からの流体の漏出が防止される。
【0025】
ここで、本実施形態のリリーフバルブ10では、複数の排出孔14が、バルブボディ20の基端面20Pから突出した円筒部43における周方向の複数位置に配置されている。そして、円筒部43に回転可能に嵌合したカバー体45によって複数の排出孔14の一部が閉塞されると共に、カバー体45が有する開口開放部47により、任意の排出孔14が開放されるようになっているので、リリーフバルブ10を流体機器90に取り付けてから、カバー体45を任意の回転位置に配置することで、任意の排出孔14を開放して流体の排出方向を所望の方向に向けることができる。
【0026】
これにより、流体を受けると劣化し得る特定部品の近くにリリーフバルブ10を配置しても、流体の排出方向を所定の方向に向けることで、特定部品に流体がかからないようにすることができる。また、流体機器90がカーエアコンの場合には、運転者にとって目立ち難い位置に流体を排出させることもできる。つまり、本実施形態のリリーフバルブ10では、特定部品に流体がかからないようにする等の制約条件のために取り付け位置の自由度が奪われることが少なくなる。換言すれば、従来より取り付け位置の自由度が高くなる。また、カバー体45の回転位置によらず何れかの排出孔14が常に開放されるので、弁体12が弁孔11側から受ける流体圧力が基準圧以上になったときに、確実に流体を排出することができる。しかも、カバー体45には排出孔14に係止する係止突部48が備えられているので、円筒部43に対するカバー体45の回転位置が安定すると共に、カバー体45が円筒部43から離脱することを防ぐことができる。さらには、円筒部43の端面から突出したカバー体操作突部46をカバー体45に設けたので、カバー体45の回転操作を容易に行うことができる。
【0027】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を
図6に基づいて説明する。本実施形態のリリーフバルブ10Vは、カバー体45を備えていない点及び蓋体40Vが回転可能となっている点が第1実施形態と大きく異なる。具体的には、本実施形態の蓋体40Vは、排出孔14が1つのみ備えられている点以外は前記第1実施形態の蓋体40と同じになっている。そして、この蓋体40Vがバルブボディ20に対して回転可能となるように、環状突壁27が、蓋体40Vの当接フランジ41との間にクリアランスを空けた状態にカシメられている。
【0028】
本実施形態のリリーフバルブ10Vによっても、蓋体40Vを回転させることで流体の排出方向を任意の方向に変更することができるので、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、カバー体45を備える必要がないので部品点数を少なくすることができる。
【0029】
なお、本実施形態のリリーフバルブ10Vでは、円筒部43が本発明に係る「基端筒部」に相当し、環状突壁27及び当接フランジ41が本発明に係る「回転連結部」に相当する。また、本発明に係る「基端筒部」は、円筒状でなくてもよく、角筒状、楕円筒状であってもよい。
【0030】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0031】
(1)上記第1実施形態では、カバー体45が板金を湾曲させて構成され、その両端部の間が開口開放部47となっていたが、
図7及び
図8に示したリリーフバルブ10Wのようにカバー体45Wを円筒状とし、その周方向の一部に開放貫通孔47Wを、本発明に係る「開口開放部」として設けて、任意の1つの排出孔14のみが開放貫通孔47Wと重なる構成としてもよい。
【0032】
(2)上記第1実施形態では、カバー体45の外周面が平坦となっていたが、
図8に示したリリーフバルブ10Wのように、カバー体45Wの周壁に外側に突出した突部45Tを設けてもよいし、
図9に示したリリーフバルブ10Xのように、カバー体45Xの両端部を外方に向けて丸めた操作部45Sを設けてもよい。このように突部45T又は操作部45Sを設けた場合、指がかかりやすくなり、カバー体45Xの回転操作が容易になる。
【0033】
(3)上記第1実施形態では、蓋体40が環状突壁27のカシメによりバルブボディ20に固定されていたが、接着剤や溶接によって固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10,10V,10W,10X リリーフバルブ
11 弁孔
12 弁体
13 圧縮コイルバネ(弾性部材)
14 排出孔
20 ボルト形バルブボディ
20P 基端面
25 中空部屋
27 環状突壁(回転連結部)
40,40V 蓋体
41 当接フランジ(回転連結部)
43 円筒部
45,45W,45X カバー体
45S 操作部
45T 突部
46 カバー体操作突部
47,47W,47X 開口開放部
47V 開放貫通孔(開口開放部)
48 係止突部