特許第6296979号(P6296979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296979
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20180312BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20180312BHJP
   A61M 5/31 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   A61M5/315 550N
   A61M5/315 550X
   A61M5/24 502
   A61M5/24 510
   A61M5/31 520
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-519545(P2014-519545)
(86)(22)【出願日】2012年7月12日
(65)【公表番号】特表2014-520615(P2014-520615A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】EP2012063623
(87)【国際公開番号】WO2013010887
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2015年7月1日
(31)【優先権主張番号】11174122.9
(32)【優先日】2011年7月15日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/570,307
(32)【優先日】2011年12月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・バトラー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ムーア
(72)【発明者】
【氏名】ポール・リチャード・ドレイパー
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・フランシス・ギルモア
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/116090(WO,A1)
【文献】 特表2005−508205(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/052275(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/24
A61M 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと;
送達されるべき薬物用量を設定するために、薬物送達デバイスの使用者により回転させるように構成された回転可能ダイヤルと;
複数の接点と;
ハウジングの内部で回転自在に支持されるように構成された円筒状部材の外面が、エンコーダを一緒に形成する複数のトラックを備え、各トラックは導電性セグメントおよび非導電性セグメントを備え、該円筒状部材は、各トラックが複数の接点のうちのそれぞれの接点によって係合されるようにハウジング内に支持される、該円筒状部材と;
第1の位置では、トラックの第1のバンクと第2のバンクを電気的に接続するように;
第2の位置では、トラックの第1のバンクと第2のバンクを電気的に絶縁するように
構成されたスイッチと
スイッチの位置を判定し、それによって薬剤送達デバイスがダイヤル・モードであるか投薬モードであるか判定するように構成され、かつ接点に電圧を供給し、接点からの信号を検出し、それによって円筒状部材の回転位置を判定するようにも構成されたプロセッサと
を備え、
複数のトラックは、トラックの第1のバンクおよび第2のバンクに配置される、薬物送達デバイス。
【請求項2】
複数のトラックが螺旋トラックであり、ハウジングおよび円筒状部材は、ハウジングに対して第1の回転方向に回転したとき円筒状部材がハウジングに対して第1の軸方向に動くように構成される、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項3】
複数のトラックの導電性セグメントおよび非導電性セグメントはグレイ・コードとして配置される、請求項1または請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
第1のバンクおよび第2のバンクの各々の内部の導電性セグメントは、そのバンク内の導電性セグメントのすべてに電気的に接続される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の
薬物送達デバイス。
【請求項5】
薬物送達デバイスからの薬物の排出を引き起こすように構成された、使用者作動プランジャをさらに備え、そのプランジャを押し下げることによって、スイッチが第1の位置から第2の位置に切り換わる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
円筒状部材の外面は7つの螺旋トラックを備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項7】
各接点は、円筒状部材が第1の回転位置にあるとき、各それぞれのトラックの第1のセグメントと係合するよう構成され、各第1のセグメントは導電性セグメントである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項8】
デバイスがディスプレイをさらに備え、
プロセッサは、接点から電気信号を受信して解釈するように、およびディスプレイの動作を制御するように構成される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項9】
プロセッサは、接点への電気信号の印加を制御するように構成される、請求項8に記載の薬物送達デバイス。
【請求項10】
プロセッサは、電気信号を接点のうちの第1の接点に印加させ、同時に、接点のうちの他の接点において信号をモニタし、その後、電気信号を接点のうちの第2の接点に印加させ、同時に、接点のうちの他の接点において電気信号をモニタするように構成される、請求項9に記載の薬物送達デバイス。
【請求項11】
プロセッサは、第1のバンクに関連する接点の各々に電気信号をある順序で印加するように、および他の接点において結果として得られる電気信号を処理して、スイッチが閉じられたかどうか判定するように構成される、請求項5に従属する場合の請求項10に記載の薬物送達デバイス。
【請求項12】
プロセッサは、電気信号を接点のうちの少なくとも第1の接点に印加させ、同時に、円筒状部材の位置を判定するために接点のうちの他の接点において信号をモニタするように構成される、請求項10に記載の薬物送達デバイス。
【請求項13】
プロセッサは、円筒状部材の位置から選択された薬物用量への変換を与えるルックアップ・テーブルを検索することによって、選択された薬物用量を判定するようにさらに構成される、請求項12に記載の薬物送達デバイス。
【請求項14】
プロセッサは、選択された薬物用量から残りの薬物用量を減算することによって、送達された薬物用量を判定するようにさらに構成される、請求項13に記載の薬物送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ペン型薬物送達デバイスは、正式な医学的トレーニングを受けていない人による定期的な注射が行われる場合に適用されている。これは、自家療法によって患者が糖尿病の効果的な管理を行うことが可能である糖尿病の患者の間でますます一般的になっている。
【0003】
良好なまたは完璧な血糖コントロールのために、インスリンまたはインスリングラルギンの用量は、達成されるべき血糖値に応じて各個人ごとに調整されなければならない。本発明は、マルチドーズ(multidose)カートリッジから医薬品を注射することによって投与する種類の注射器である注射器、たとえば携帯型注射器、特にペン型注射器に関する。より詳細には、本発明は、使用者が用量を設定することができるこのような注射器に関する。
【0004】
インスリンの自己投与を行う使用者は、一般に、1から80国際単位の間で投与する必要がある。
【0005】
投薬管理において、服薬遵守、すなわち患者が医学的指示およびプロトコルにどの程度従うかは、多くの場合、極めて重要である。薬剤の注射に関して、服薬遵守を判定する1つの重要な態様は、注射された薬物の実際の用量の判定である。別の重要な態様は、設定された用量の判定である。したがって、用量量識別システムを備えた薬剤送達デバイスおよび/またはシステムを提供することが望ましい。
【0006】
当技術分野で知られているシステムは、使用者が注射履歴の記録を取ることができるように薬物の排出された用量の量を示す信号を提供するための検出器を備える。この種類のシステムは、実際に投薬された用量に関する情報を提供する。しかし、排出された用量が目的とする用量に等しいことを示す、利用可能な情報はない。第2のセンサは、この特徴を実施するために必要とされる。
【0007】
当技術分野で知られている他のシステムは、回転基材(rotational matrix)とセンサとを備える投与可能(doseable)量識別子を備え、コントローラ回路は、検知されたデータを解釈して、送達されるべき薬の量を判定する。この回転基材は、多くの場合、用量設定および注射中に回転するように実施される。たとえば、この基材は、1つの旋回/回転にのみ絶対的な位置の符号化を提供するスリーブ上に周方向に配置される。用量のダイヤルを回すことと注射を区別するため、プロセッサは、追加の別個のスイッチからの入力を使用する。このスイッチは、用量ボタンに機械的に連結させることができ、したがって、用量ボタンを押すと、たとえばスライダ、または斜めの領域を有するバレルによって、スイッチが閉じる。しかし、用量量識別子およびスイッチ配置を必要とする実装はかなり複雑である。両方の特徴は、誤動作ならびに製作公差に対する高い信頼性および耐性で実施される必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は;
ハウジングと;
複数の接点と;
ハウジングの内部で回転自在に支持されるように構成された円筒状部材の外面が、エンコーダを一緒に形成する複数のトラックを備え、各トラックは導電性セグメントおよび非導電性セグメントを備え、該円筒状部材は、各トラックが複数の接点のうちのそれぞれの接点によって係合されるようにハウジング内に支持される、該円筒状部材と;
を備える薬物送達デバイスを提供する。
【0009】
円筒状部材は、たとえば、円筒状部材を用量ダイヤル・グリップに固着することによって、および円筒状部材と用量投与中に駆動されるスピンドルに連結された内側ハウジングとの間の回転可能な係合を有することによって、用量設定および送達機構に動作可能に連結させることができる。
【0010】
複数のトラックは螺旋トラックとすることができ、ハウジングおよび円筒状部材は、ハウジングに対して第1の回転方向に回転したとき円筒状部材がハウジングに対して第1の軸方向に動くように構成されてもよい。円筒状部材の外面は、7つの螺旋トラックを備えることができる。
【0011】
複数のトラックの導電性セグメントおよび非導電性セグメントは、グレイ・コードとして配置されてもよい。
【0012】
複数のトラックは、トラックの第1のバンクおよび第2のバンクに配置されてもよい。
【0013】
第1のバンクおよび第2のバンクの各々の内部の導電性セグメントは、そのバンク内の他の導電性セグメントのすべてに電気的に接続されてもよい。
【0014】
デバイスは:
第1の位置では、トラックの第1のバンクと第2のバンクを電気的に接続するように;
第2の位置では、トラックの第1のバンクと第2のバンクを電気的に絶縁するように
構成されたスイッチをさらに備えることができる。
【0015】
デバイスは、薬物送達デバイスからの薬物の排出を引き起こすように構成された、使用者作動プランジャをさらに備えることができ、そのプランジャを押し下げることによって、スイッチは、第1の位置から第2の位置に切り換わることができる。
【0016】
各接点は、円筒状部材が第1の回転位置にあるとき、各それぞれのトラックの第1のセグメントと係合するように構成されてもよく、各第1のセグメントは導電性セグメントであってもよい。
【0017】
デバイスは;
ディスプレイと;
接点から電気信号を受信して解釈するように、およびディスプレイの動作を制御するように構成されたプロセッサと;
をさらに備えることができる。
【0018】
プロセッサは、接点への電気信号の印加を制御するように構成されてもよい。プロセッサは、電気信号を接点のうちの第1の接点に印加させ、同時に、接点のうちの他の接点において信号をモニタするように、その後、電気信号を接点のうちの第2の接点に印加させ、同時に、接点のうちの他の接点において信号をモニタするように構成されてもよい。
【0019】
プロセッサは、第1のバンクに関連する接点の各々に電気信号をある順序で印加するように、および他の接点において結果として得られる電気信号を処理して、スイッチが閉じられたかどうか判定するように構成されてもよい。
【0020】
プロセッサは、スイッチが閉じられているか閉じられていないか判定し、このステータス情報をデバイスの動作モードに関連付けるように構成されてもよい。プロセッサは、スイッチから受けた情報を解釈して、デバイスの動作モードを判定するように構成されてもよい。プロセッサは、デバイスがダイヤル・モードであるか投薬モードであるか判定するように構成されてもよい。
【0021】
プロセッサは、電気信号を接点のうちの少なくとも第1の接点に印加させ、同時に、円筒状部材の位置を判定するために接点のうちの他の接点において信号をモニタするように構成されてもよい。プロセッサは、円筒状部材の位置から選択された薬物用量への変換を実現するルックアップ・テーブルを検索することによって、選択された薬物用量を判定するようにさらに構成されてもよい。プロセッサは、選択された薬物用量から残りの薬物用量を減算することによって、送達された薬物用量を判定するようにさらに構成されてもよい。
【0022】
次に、実施形態について、単に例示として添付の図面を参照しながら説明する:
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施に適した薬物送達デバイスの外観図である。
図2図1の薬物送達デバイス内に存在する電子的構成要素のうちのいくつかの概略図である。
図3】本発明と共に使用するのに適した薬物送達デバイスの用量設定機構を示す図である。
図4図3の用量設定機構の詳細を示す図である。
図5図3において「A」と示されている領域のクローズアップを示す図である。
図6図3から5の用量設定機構のドライバ形成部材の詳細を示す分解組立図である。
図7】本発明の一実施形態による符号化部材を示す図である。
図8図7の符号化部材の製造における使用に適したコード化されたストリップを示す図である。
図9図7の符号化部材が所定の位置に取り付けられた、薬物送達デバイスの内部を示す図(internal view)である。
図10】本発明における使用に適したグレイ・コードを示す表である。
図11】符号化部材の回転位置の判定に関与する工程を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
最初に図1を参照すると、本発明の実施形態による薬物送達デバイス100の外観図が示されている。図1に示されるデバイス100は、細長い円筒状形状を有する、インスリンなどの薬剤を設定および送達するためのペン型注射デバイスである。デバイス100は、第1のハウジング部材104と第2のハウジング部材106とを有するハウジング102を備える。回転可能ダイヤル108が、第1のハウジング部材104の第1の(または近位)端にある。回転可能ダイヤル108は、第1のハウジング部材104と実質的に同じ外径を有する。第2のハウジング部材106は、第1のハウジング部材104の第2の端に取り外し可能に連結させることができる。第2のハウジング部材106は、それに取り付けられた針(図示せず)または類似の薬物送達装置を有するように構成される。これを達成するため、第2のハウジング部材106の第2の(または遠位)端は、ねじ付き部分110を有することができる。ねじ付き部分110は、第2のハウジング部材106の残りの部分より小さい直径を有することができる。
【0025】
ディスプレイマウント112は、第1のハウジング部材104上にある。ディスプレイは、ディスプレイマウント112上で支持することができる。このディスプレイは、LCDディスプレイであってもよいし、セグメント化ディスプレイであってもよいし、他の任意の適切なタイプのディスプレイであってもよい。ディスプレイマウント112は、第1のハウジング部分104内の凹部(図示せず)を覆うことができる。図2を参照してより詳細に説明するいくつかの電子的構成要素は、ディスプレイマウント112の下に配設することができる。
【0026】
第1のハウジング部材104は、薬物用量設定および送達機構を含む。第2のハウジング部材106は、薬物カートリッジ(図示せず)を含む。薬物カートリッジに含まれる薬物は、任意の種類の薬剤とすることができ、好ましくは、液体形態であることができる。第1のハウジング部材104の薬物送達機構は、薬物の排出を容易にするために、第2のハウジング部材106の薬物カートリッジと係合するように構成されてもよい。第2のハウジング部材106は、薬物カートリッジを挿入するため、または使用済みのカートリッジを取り外すために、第1のハウジング部材104から分離することができる。第1のハウジング部材104と第2のハウジング部材106は、任意の適切な方法で、たとえば、ねじまたはバヨネット・タイプの連結により、互いに連結することができる。第1のハウジング部材104および第2のハウジング部材106は、薬物カートリッジが薬物送達デバイス100と共に恒久的に含まれるように、非可逆的に互いに連結することができる。さらに、第1のハウジング部材104および第2のハウジング部材106は、単一ハウジング部材の一部を形成することができる。
【0027】
回転可能ダイヤル108は、送達されるべき薬物用量を設定するために、薬物送達デバイス100の使用者による手動で回転させるように構成される。ダイヤル108は、ダイヤル108が第1の方向に回転するときダイヤル108をハウジング102から軸方向に変位させる内部ねじ切りシステムに連結させることができる。ダイヤル108は、両方向に、または第1の方向にのみ回転可能とすることができる。デバイス100は、いったん回転可能ダイヤル108の回転によって薬物用量が設定されると、使用者がデバイスの近位端に軸方向力を及ぼすとき、設定された薬物用量を送達するように構成される。回転可能ダイヤル108は、設定された薬物用量を送達するために押さなければならないボタン(図示せず)を支持することができる。ディスプレイ112は、設定および/または送達された薬物用量に関する情報を表示するように構成されてもよい。ディスプレイ112はさらに、実際の時刻、前回の使用/注射の時刻、バッテリの残容量、1つまたはそれ以上の警告標識および/またはその他などの追加情報を示すことができる。
【0028】
次に図2を参照すると、薬物送達デバイス100の一部を形成する電気回路200の概略図が示されている。回路200は、マイクロプロセッサ202と、ROM204などの不揮発性メモリと、RAM206などの揮発性メモリと、ディスプレイ210と、接点212と、これらの構成要素の各々を接続するバス208とを備える。回路200は、構成要素の各々に電力を供給するためのバッテリ214または何らかの他の適切な電源と、以下でより詳細に説明するスイッチ216も備える。
【0029】
回路200は、デバイス100と一体化してもよい。あるいは、回路200は、デバイス100に取り付けることができる電子モジュール内に含まれてもよい。さらに、回路200は、光センサまたは音響センサなどの追加のセンサを備えることができる。
【0030】
ROM204は、ソフトウェアおよび/またはファームウェアを収納するように構成されてもよい。このソフトウェア/ファームウェアは、マイクロプロセッサ202の動作を制御することができる。マイクロプロセッサ202は、RAM206を利用して、ROMに収納されたソフトウェア/ファームウェアを実行し、ディスプレイ210の動作を制御する。したがって、マイクロプロセッサ202は、ディスプレイ・ドライバも備えることができる。
【0031】
バッテリ214は、接点212を含む構成要素の各々に電力を供給することができる。接点212への電気の供給は、マイクロプロセッサ202によって制御することができる。マイクロプロセッサ202は、接点212から信号を受信することができ、したがって、いつ接点が通電されるか判断することができ、これらの信号を解釈するように構成される。情報は、ソフトウェア/ファームウェアおよびマイクロプロセッサ202の動作によって適切な時刻にディスプレイ210上で提供され得る。この情報は、接点212からマイクロプロセッサ202によって受信された信号から判定される測定値を含むことができる。
【0032】
いくつかの接点212は、デバイス100内に存在することができる。好ましい一実施形態では、7つの接点212が存在し、マイクロプロセッサによって個別に対処することができる。これらの7つの接点212は、接点の2つのグループに配置され得る。いくつかの実施形態では、3つの接点212は接点の第1のグループを構成し、4つの接点212は接点の第2のグループを構成する。接点212は、ハウジング102の内表面上に取り付けることができる。
【0033】
次に、第2のハウジング部材106の内部で支持される用量設定および送達機構の動作のより完全な説明を、図3から6を参照して行う。図3は、薬物送達デバイスの用量設定機構400の断面図である。図4は、用量設定機構400の一部分の詳細図である。図5は、図3において「A」と示されている領域のクローズアップ図を示す。
【0034】
用量設定機構400は、外側ハウジング404と、内側ハウジング408と、符号化部材406とを備える。これらの構成要素は、好ましくは、同心状に配置された中空シリンダである。符号化部材406は、外側ハウジング404と内側ハウジング408の間に配設される。内側ハウジング408は、内側ハウジング408の外表面434に沿って設けられた溝432を備える。符号化部材406の内表面438上に設けられた溝ガイド436は、この溝432と回転自在に係合する。符号化部材406は、以下で図7から10を参照してより詳細に説明するように、その外面440上に符号化された情報を有する。符号化部材406は円筒状形状である。
【0035】
用量ダイヤル・グリップ402は、外側ハウジング404の近位端にある。用量ダイヤル・グリップ402は、符号化部材406の近位端の外面のまわりに配設される。用量ダイヤル・グリップ402の外径は、好ましくは、外側ハウジング404の外径に対応する。用量ダイヤル・グリップ402は、これらの2つの構成要素間の相対的な移動を防止するために、符号化部材406に固着される。用量ダイヤル・グリップ402は、図1の外観図では、回転可能ダイヤル108によって示されている。用量ダイヤル・グリップ402は用量ボタン416を支持し、用量ボタン416は、ばねによる付勢(sprung bias)を近位方向に有し、デバイス100の使用者によって用量ダイヤル・グリップ402に押し込まれるように構成される。
【0036】
スピンドル414は、機構400内部の中心に配設される。スピンドル414は、少なくとも1つの螺旋状溝を備える。図示の実施形態では、スピンドル414は、好ましくはスピンドルの長さの少なくとも大半にわたって延びる、2つの対向する向きの重複する溝形状を有する。各溝形状は、効果的に、いくつかの巻き(turn)にわたって連続的である。好ましい一配置では、スピンドルの各溝は、ボディ部分上またはドライバ上のどちらかにある非連続的な螺旋状溝形状を係合する。好ましくは、非連続的ねじ山のどちらかまたは両方が本体上で形成され、ドライバは、完全な1回転未満のねじ山からなる。スピンドル414の第1のねじ山は、内側ハウジング408の一部分と連結するように構成される。
【0037】
用量設定機構400はまた、ばね401と、クラッチ405と、第1のドライバ部分407と第2のドライバ部分412とを有するドライバ409とを備える。これらのドライバ部分407、412は、スピンドル414のまわりに延びる。第1のドライバ部分407および第2のドライバ部分412は両方とも、略円筒状である。クラッチ405は、ドライバ409のまわりに配設される。一配置では、第1のドライバ部分407は、第1の構成要素部材410と、第2の構成要素部材411とを備える。あるいは、第1のドライバ部分407は、一体的な構成要素部材である。
【0038】
用量設定機構400により、使用者が用量ダイヤル・グリップ402を用いて用量のダイヤルを回すとき、金属ばね401は、捕らえられた両方の連結の係合を維持するのに十分なほど強いように選択される:クラッチ405と符号化部材406の間の捕らえられた連結および第1のドライバ部分407と第2のドライバ部分412の間の捕らえられた連結。符号化部材406は、使用者が用量ダイヤル・グリップ402を回転させると、符号化部材406も回転するように、用量ダイヤル・グリップ402に連結される。符号化部材406が第1の回転方向に回転させられるとき、符号化部材406は、内側ハウジング408へのそのねじ接続により、軸方向で近位方向に移動する。
【0039】
薬物送達デバイスが投薬されているとき、使用者は、機構400の近位端にある用量ボタン416に軸方向負荷を加える。用量ボタン416はクラッチ405に軸方向に連結され、これによって、相対的な軸方向移動が防止される。したがって、クラッチ405は、用量設定機構400のカートリッジ端すなわち遠位端の方へ軸方向に移動する。この移動によって、符号化部材406からクラッチ405が外れ、間隙「a」を閉鎖しながらの相対的な回転が可能となる。クラッチ405がクリッカ420に対して、したがって内側ハウジング408に対して回転することが防止される。しかし、このシナリオでは、第1のドライバ部分407と第2のドライバ部分412の間の連結が外れることも防止される。したがって、用量ボタン416に軸方向に負荷を加えるとき、いかなる軸方向の負荷がスピンドル414にかかっても、第1のドライバ部分407および第2のドライバ部分412のみが外れる。したがって、これは投薬中には発生しない。
【0040】
用量制限器418(図4で視認可能である)は、第1のドライバ部分407上に設けられ、図示の配置では、ナットを備える。用量制限器418は、第1のドライバ部分407の螺旋状溝に適合する内部螺旋状溝を有する。好ましい一配置では、用量制限器418の外面および内側ハウジング408の内面は、スプラインとして共にキー止めされる。これによって、これらの2つの構成要素の間の相対的な長手方向移動を可能にしながら、用量制限器418とハウジング408の間の相対的な回転が防止される。
【0041】
図6は、図3から5に示される第1のドライバ部分407および第2のドライバ部分412の第1の配置を詳細に示す。図10に示されるように、第2のドライバ部分412は、形状としては略管状であり、第2のドライバ部分412の遠位端にある少なくとも1つの駆動ドッグ450を備える。第1のドライバ部分407も略管状の形状を有し、第2のドライバ部分412上の駆動ドッグ450と係合するようなサイズにされた複数の凹部452を備える。駆動ドッグおよび凹部の構造によって、第1のドライバ部分および第2のドライバ部分が共に軸方向に押されるとき、駆動ドッグ450との解放が可能になる。また、この構造によって、これらの構成要素が別々にはね返されるときに回転連結が形成される。
【0042】
いくつかの実施形態では、第1のドライバ部分407は、第2の部分(第2の構成要素部材)411に恒久的に留められる第1の部分(第1の構成要素部材)410を備える。この配置では、第2の構成要素部材411は複数の凹部452を備え、第1の要素部材410は、用量制限器418のナットのための外側溝と、ならびに内部溝454とを含む。この内部溝454は、スピンドル414に連結するために使用され、用量投与中にスピンドル414を駆動する。図示の実施形態では、内部溝454は、完全な螺旋状溝ではなく部分的な螺旋状溝を備える。この配置の1つの利点は、一般に製造がより容易であることである。
【0043】
内側ハウジング408を利用するこの用量設定機構400の1つの利点は、符号化部材406の溝ガイド436および溝432に対する摩擦を最小にするエンジニアリング・プラスチックから内側ハウジング408を作製することができることである。たとえば、1つのこのようなエンジニアリング・プラスチックはアセタールを含むことができる。しかし、低い摩擦係数を有する他の同等のエンジニアリング・プラスチックも使用することができることが、当業者には理解されよう。外側ハウジング404は、通常の動作中に、動く構成要素を係合しないので、このようなエンジニアリング・プラスチックを使用することによって、審美性または触覚に関する理由で、摩擦に関係する要件なしに、外側ハウジング404の材料を選定することが可能になる。
【0044】
符号化部材406と内側ハウジング408の間の溝付き境界面の有効な駆動直径(「D」によって表される)は、同じ本体外径の特定の既知の薬物送達デバイスに比べて減らされる。これによって、効率が改善され、薬物送達デバイスが、この溝と溝ガイドの接続に関して、より低いピッチ(「P」によって表される)で機能することが可能になる。言い換えれば、ねじのねじれ角によって、符号化部材は軸方向に押されたときに回転するか内側本体にロックされるかどうかが判定され、このねじれ角はP/Dの比に比例する。
【0045】
薬物送達デバイス100の外側ハウジング404内の凹部442は、図3で見ることができる。この凹部442は、インサートすなわち電子モジュール(図示せず)を受けるように構成されてもよく、このインサートは、マイクロプロセッサ202と、ROM204と、RAM206と、表示電子機器と、接点212と、前に説明したバッテリ214とを備える。あるいは、接点212は、外側ハウジング404の内表面上の別の位置に支持され、導電性経路または導電性ワイヤによってマイクロプロセッサ202およびバッテリ214に結び付けられてよい。図1に示されるディスプレイマウント112は、インサートの上に配設されてもよいし、インサートと一体化されてもよい。ディスプレイマウント112は、ディスプレイ210を支持するように構成される。ディスプレイ210は凹部442より大きくてもよく、したがって、外側ハウジング404から突き出すことがある。あるいは、ディスプレイマウント112とディスプレイ210の両方は、ディスプレイ210が外側ハウジング404の外面と面一であるように凹部442によって受けられるように構成されてもよい。図7から10を参照してより詳細に説明するように、接点212は、符号化部材406の回転位置の判定を容易にするために符号化部材406と接触するように構成される。
【0046】
図3〜6に示される用量設定機構400は、付着された薬物カートリッジ内の薬剤が放出された後に初期位置に再設定されるように構成される。これによって、新しいカートリッジを挿入し、薬物送達デバイス100を再使用することができる。この再設定は、スピンドル414の遠位端、すなわち通常、薬物カートリッジと係合し、カートリッジ・ホルダの取り外しに関連する機構を必要としない端を軸方向に押すことによって、達成することができる。図3および4に示されるように、第1のドライバ部分407が第2のドライバ部分412の方へ軸方向に押される(すなわち、近位方向に押される)と、ドライバ409は、用量設定機構400の残りから切り離される。
【0047】
スピンドル414にかかる軸方向力によって、スピンドル414が、内側ハウジング408へのそのねじ接続により回転する。次に、スピンドル414のこの回転および軸方向移動によって、第1のドライバ部分407が第2のドライバ部分412の方へ軸方向に移動する。最終的には、これによって、第1のドライバ部分407および第2のドライバ部分412が切り離される。
【0048】
第1のドライバ部分407がこのように第2のドライバ部分412の方へ軸方向に移動することによって、ある一定の利点が得られる。たとえば、1つの利点は、金属ばね401が圧縮され、したがって、図3〜5に示される間隙「a」を閉鎖することである。次に、これによって、クラッチ405がクリッカ420からまたは符号化部材406から外れることが防止される。第2のドライバ部分412はクラッチ405にスプラインを付けられるので、第2のドライバ部分412の回転が防止される。クリッカ420は、内側ハウジング408にスプラインを付けられる。したがって、間隙「a」が減少するまたは閉鎖されるとき、第2のドライバ部分412は、内側ハウジング408または符号化部材406のどちらかに対して回転することはできない。その結果、符号化部材406は、内側ハウジング404に対して回転することはできない。符号化部材406が回転することが防止される場合、スピンドル414は用量設定機構400へと後退させられ、それによって再設定されるので、力がスピンドル414に加えられる結果として、符号化部材406が用量設定機構400の近位側から押し出されるリスクはない。
【0049】
用量設定機構400が内側ハウジング408を備える別の利点は、再設定可能な薬物送達デバイスと再設定不可能な薬物送達デバイスの両方を支持することがここで可能な薬物送達デバイス・プラットフォームとして、若干の変更を加えて、用量設定機構400を設計することができることである。単なる一例として、図3〜6に示される再設定可能な用量設定機構400の変形態を再設定不可能な薬物送達デバイスに修正するため、第1のドライバ部分407の第1の構成要素部材410および第2の構成要素部材411と第2のドライバ部分412は、1つの一体的部材として成形することができる。これによって、薬物送達デバイス構成要素の総数が2つ減少する。その他の場合、図3〜6に示される薬物送達デバイスは、変更されないままとすることができる。このような使い捨てデバイスでは、第2のハウジング部材106は、第1のハウジング部材104に固定されるか、または単一の一体的な本体およびカートリッジ・ホルダとして作製される。
【0050】
上記で説明した用量設定機構は、符号化部材406を支持するのに、および本発明を実施するのに適した機構の一例に過ぎない。他の機構も適切であり得ることが、当業者には明らかであろう。たとえば、内側ハウジング408を含まないが符号化部材406は依然としてセンサ112で見える機構も同様に適切であろう。
【0051】
図7は、符号化部材406を示す。符号化部材406は、外面440と内面438とを有する中空シリンダである。外面440は、互いに隣接して配置された、いくつかの螺旋トラック300を備える。各トラック300は、導電性セグメントおよび非導電性セグメントからなる。図7では、導電性セグメントは黒色で示され、非導電性セグメントは白色で示されている。部材406の内表面438は、螺旋ねじ山(図3から5では内側溝436として示される)を有することができる。このねじ山436は、1回の巻きまたは部分的な巻きにわたって延び得る。あるいは、このねじ山436は、いくつかの巻きを備えることもできる。部材406は、プラスチック材料から作製されてもよい。符号化部材406は、図3から5に示される薬物送達デバイス100に組み込まれるように構成される。内側ハウジング408を含めることによって、符号化部材406が外面440ではなく内表面438上に螺旋ねじ山436を有することが可能になる。この結果、いくつかの利点がもたらされる。たとえば、この結果、符号化部材406の外面440に沿ってより多くの表面積を螺旋トラック300に提供するという利点がもたらされる。別の利点は、この内側溝436は汚れの侵入から保護されるようになるということである。言い換えれば、符号化部材406の外面440に沿って溝が設けられる場合、汚れがこの内側溝境界面内に入ることは、より困難である。この特徴は、再設定不可能なデバイスに比べてはるかに長い期間にわたって機能することが要求される再設定可能な薬物送達デバイスにとって特に重要である。
【0052】
部材406の外面440上に形成される螺旋トラック300は、1つまたはそれ以上の金属ストリップ302を部材406に巻くことによって形成されてもよい。この目的に適した単一の金属ストリップ302が図8に示されている。金属ストリップ302は、金属層を支持するための非導電性裏打ち(backing)を有することができる。非導電性裏打ちは、ストリップ302を部材406の外面440に固着するための接着剤を裏側に有することができる。
【0053】
螺旋トラック300は、トラックの2つのバンクに分割することができる。このトラックの2つのバンクは、非導電性ストリップによって分けてもよい。いくつかの実施形態では、部材406の外面440は、3つのトラックからなる第1のバンクおよび4つのトラックからなる第2のバンクに配置された7つの螺旋トラック300を備える。いくつかの実施形態では、第1の金属ストリップは螺旋トラックの第1のバンクを備え、第2の金属ストリップはトラックの第2のバンクを備える。
【0054】
いくつかの他の実施形態では、トラック300は、非導電性基板上にプリントされた導電性インクからなってもよい。この非導電性基板は、部材406そのものであってもよいし、二次基板であってもよく、この二次基板はその後、部材406に取り付けられる。
【0055】
電気伝導経路(図示せず)は、トラック300の2つのバンクを接合することができる。この電気伝導経路内に、スイッチ216が配設される。スイッチ216は、デバイス100が使用されていないとき、または薬物用量が回転可能ダイヤル108の回転によって設定されるとき、トラック300の2つのバンクを電気的に接続するように構成される。スイッチ216は、選択された薬物用量が送達されているとき、トラック300の2つのバンクを電気的に絶縁する、または切断するように構成される。スイッチ216は、回転可能ダイヤル108によって支持される用量ボタン416に連結され、したがって、ボタンが押されると、スイッチ216はトラック200の2つのバンクを切断する。
【0056】
接点212の各々は、符号化部材406上の螺旋トラック300のそれぞれのトラックを係合するように構成される。図9は、初期構成である符号化部材406および接点212の相対的位置を示す薬物送達デバイス100の内部を示す図である。接点212は、凹部442内に支持されて示されている。接点212は、安定した電気接続を提供するために、コード化部材406の外面440に対して付勢されてもよい。接点212は、3つの接点からなる第1のバンクおよび4つの接点からなる第2のバンクに分割されて示されている。接点212は、デバイス100の長手方向軸に対して螺旋トラック300のピッチと同じ程度傾斜している。螺旋トラック300のピッチは、内側ハウジングの溝432と係合する符号化部材406の溝ガイド436のピッチと同じである。したがって、符号化部材406がハウジング102の内部で回転して軸方向に移動するとき、螺旋トラック300は常に、接点212の真下に位置する。
【0057】
マイクロプロセッサ202は、接点212の各々に個別に対処するように構成される。マイクロプロセッサ202はまた、バッテリ214から各接点への電気の流れを制御するように構成される。しかし、バッテリ214が、電圧を有する信号を接点のうちの1つに供給するとき、接点のうちの特定の他の接点はまた、螺旋トラック300の導電性セグメントを介して、第1の接点と電気接続することによって通電することができる。したがって、バッテリは、接点のうちの第1の接点(たとえば)に電圧を供給することができ、マイクロプロセッサ202は、トラック300を介した第1の接点への電気接続によって通電される接点の各々からの信号を検出することができる。マイクロプロセッサ202は接点212に個別に対処することができるので、他の接点212からの信号をモニタリングするたびに、信号を異なる接点に順に印加することが可能である。
【0058】
螺旋トラック300の導電性セグメントおよび非導電性セグメントは、1種のグレイ・コードすなわち交番2進コードを形成するように配置されてもよい。グレイ符号は、1つの2進ビットのみが各連続した符号化された値の間で値を変更する2進符号化システムである。例示的なグレイ・コードが図10の表500に示されている。図10は、図8に示される金属ストリップ302を表で示したものである。1から7という名前の付いた列は、符号化部材406の螺旋トラック300を表す。図7から10では、色の濃い領域は導電性セグメントを表し、色の薄い領域は非導電性セグメントを表す。「1」の値を持つコードの桁は導電性セグメントによって表され、「0」の値を持つコードの桁は非導電性セグメントによって表される。図10に示されるグレイ・コードは、位置「0」では接点212はすべて「1」の値を有するように配置される。動作不能な接点は最初に値を登録しないので、この配置は、デバイス100のエラー・チェックにより支援される。
【0059】
図1に示される薬物送達デバイス100がインスリンのペン型注射デバイスである場合、使用者は、1から80国際単位の間のインスリン用量を設定することを必要とすることがある。図示の7ビット符号化システムは、27=128位置を符号化部材406上で符号化することができることを意味する。したがって、注射デバイスのための全部で0〜80単位のダイヤルを回すことが可能な用量は完全に符号化することができ、余剰な位置を利用することができる。表500の最後の列は、各回転位置における接点212からの信号が受けられるときにマイクロプロセッサ202によって得られる2進の結果を示す。表500の第1の列は、2進の結果を符号化する用量単位を示す。
【0060】
各バンク内部の各導電性セグメントは、そのバンク内部のあらゆる他の導電性セグメントに電気的に接続される。図示の実施形態のグレイ・コードは、0〜80単位の間のすべての増分に対して、導電性セグメントであるトラック300の各バンク内部に少なくとも1つのセグメントがあるように設計される。したがって、符号化部材406のすべての回転位置において、電圧が接点212に供給されるとき、各バンク内の少なくとも1つの接点では、「1」の2進値が登録される。これによって、専用の電力ラインまたは接地ラインを必要としない、説明した通信エンコーダ方法の使用が可能となる。そのうえ、スイッチ216が、2つのバンクを接合する導電性経路に組み込まれるので、専用スイッチ信号トラックは必要ではない。
【0061】
デバイス100の使用者が、回転可能ダイヤル108を回転させて薬物用量を設定すると、マイクロプロセッサ202が起動することができ、接点212上での周期的チェックを実行して、符号化部材406の絶対的な回転位置したがってダイヤルが回された薬物用量を判定するための、ROM204内に収納されたソフトウェアによって制御されてもよい。マイクロプロセッサ202はまた、スイッチ216のステータスを、したがってデバイス100がダイヤル・モードであるか投薬モードであるかを判定することができる。マイクロプロセッサ202はまた、送達された薬物単位の数を判定するように構成されてもよい。
【0062】
次に、図11を参照して、ダイヤルが回された用量を判定するプロセスを説明する。ダイヤルが回された薬物用量を判定するために、マイクロプロセッサ202は、最初に電圧を第1の接点に印加させ、次に、残りの6つの接点のうちのどれを通電するか決定する(工程1)。マイクロプロセッサ202は、次に、電圧を第2の接点に印加させ、残りの6つの接点のうちのどれを通電するか決定する(工程2)。最後に、このプロセスが第3の接点に対して繰り返される(工程3)。第2のバンク内の接点(すなわち接点4から7)がこれらの3つの工程のいずれかでも通電されない場合、次に、マイクロプロセッサ202は、デバイス100が投薬モードである、すなわち用量が現在送達中であると判定する。
【0063】
デバイス100が用量ダイヤル・モードであるとき、これらの3つの工程で行われる読み取り値の組み合わせが、全7ビット・コードしたがってダイヤルが回された薬物用量を判定するのに十分である。マイクロプロセッサ202は、これを、ROM204内に収納されたルックアップ・テーブルを検索することによって達成することができ、このルックアップ・テーブルは、7ビット2進符号の結果から、ダイヤルが回された用量単位への変換を実現する。
【0064】
たとえば、位置「0」では、7つの螺旋トラック300の各々が導電性セグメントを有する。したがって、デバイスが投薬モードでない場合、マイクロプロセッサ202は、工程1では接点2から7で正の結果を、工程2では接点1および3から7で正の結果を、工程3では接点1、2、および4から7正の結果を読み取る。実際には、2進の結果「1111111」が各工程で読み取られ、デバイス100は、位置「0」にあり、用量ダイヤル・モードであると判定される。
【0065】
デバイスが投薬モードである場合、すなわち、用量ボタン416が押された場合、スイッチ216は、トラック300の第1のバンクおよび第2のバンクを電気的に切断させる。この状況では、マイクロプロセッサ202は、工程1では接点2および3でのみ、工程2では接点1および3で、工程3では接点1および2で正の結果を読み取る。したがって、マイクロプロセッサ202は、「1110000」の2進の読み取り値を判定する。トラック300の各バンクは、各回転位置で少なくとも1つの導電性セグメントを含むことが分かっているので、マイクロプロセッサ202は、スイッチ216が切断位置にあると、およびデバイスが投薬モードであると判定する。マイクロプロセッサ202は、デバイスが投薬モードであることをデバイス100の使用者に示すための特定の記号(複数可)またはテキストを示すようにディスプレイ210を制御するように構成されてもよい。あるいは、ディスプレイ210は、デバイス100が投薬モードであるときに使用不能であってもよい。
【0066】
さらなる一例として、位置「15」では、第2の螺旋トラックは非導電性セグメントを備える。したがって、デバイス100が用量ダイヤル・モードである場合、図11の第1の工程では、マイクロプロセッサ202によって判定される2進コードは「1010011」である。図11の第2の工程では、(第2の接点の場所には導電性トラックはないので)2進コードは「0000000」であり、図11の第3の工程では、2進コードは「1010011」である。したがって、マイクロプロセッサ202は、位置が「15」であると判定することが可能である。
【0067】
選択した用量を投薬するとき、いかなる理由であれ使用者が全用量を投薬しない場合、ディスプレイ210は、投薬されずに残っている用量を示すように構成されてもよい。この状況では、マイクロプロセッサ202は、最初にダイヤルが回された薬物用量から残っている薬物用量を減算することによって、投薬された薬物用量を判定することができる。
【0068】
7ビット・システムについて説明してきたが、この方法は、3より多い任意の数の接点に同様に適用可能である。0〜80単位用量範囲すべてを絶対的に符号化することができるので、この7ビット・システムが好ましい。
【0069】
本発明のいくつかの代替実施形態では、符号化部材406は、2進コードの導電性の「1」の値を表す突出部を円周の周囲に有する金属製リングを備えることができる。その場合、「0」を表す凹部は、非導電性材料で充填することができる。この実施形態では、専用の電力ラインまたは接地ラインは必要とされない。
【0070】
本発明の一代替実施形態では、スイッチ216の動作が逆である。この代替実施形態では、スイッチ216は、デバイス100が使用されていないとき、または薬物用量が回転可能ダイヤル108の回転によって設定されるとき、トラック300の2つのバンクを電気的に切断するように構成される。スイッチ216は、選択された薬物用量が送達されているとき、トラック300のこの2つのバンクを接続するように構成される。スイッチ216は、回転可能ダイヤル108によって支持される用量ボタン416に連結され、したがって、ボタンが押されると、スイッチ216はトラック300のこの2つのバンクを接続する。
【0071】
マイクロプロセッサ202は、符号化部材を回転させる間、すなわちデバイスが投薬している間、上記で説明した周期的チェックを実行することができる。したがって、上記で説明したのと同じ方法を使用して、ダイヤルが回された用量ではなく、投薬された用量を判定することができる。
【0072】
投薬された薬物用量を判定すると、マイクロプロセッサ202は、その結果をROM204に収納することができる。ディスプレイ210は、投薬された用量の判定の結果を表示するように制御することができる。ディスプレイ210は、投薬された用量の判定の結果を所定の時間たとえば60秒間表示することができる。あるいは、またはさらに、投薬された用量の履歴は、デバイス100の使用者によって、または医療専門家によって、ROM204から電子的に取り出すことができる。デバイスのダイヤル中に、ダイヤルが回された用量は、任意の従来の方法で、たとえば番号スリーブ上に印刷された数字を使用して、使用者に示すことができる。あるいは、またはさらに、ダイヤル中に符号化部材406の絶対的な回転位置を判定するために、接点212に関してより複雑な周期的チェックを実行することができる。これは、7つの接点の各々を順にチェックすることを含んでよい。いくつかの他の実施形態では、ダイヤルが回された用量は判定されないか、または使用者に示されない。
【0073】
上記で説明した実施形態は例示に過ぎず、本発明の範囲に対して限定するものではないことが理解されるであろう。他の変形形態および変更形態は、本出願を読めば、当業者には明らかであろう。さらに、本出願の開示は、本明細書で開示されるいかなる新規な特徴もしくは特徴のいかなる新規な組み合わせまたはそのいかなる一般化をも明示的または暗黙的に含むと理解されるべきであり、本出願またはそれから導き出されるあらゆる出願の遂行中に、新しい請求項は、あらゆるこのような特徴および/またはこのような特徴の組み合わせを包含するように明確に表現することができる。
【0074】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0075】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0076】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0077】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0078】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0079】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0080】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0081】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0082】
抗体は、基本的な構造が共通している、免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。それらはアミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能ユニットは、免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIgユニットのみを含む)であり;分泌型抗体は、また、IgAとして2つのIgユニットを有する二量体型、硬骨魚IgMのような4つのIgユニットを有する四量体型、または哺乳類IgMのような5つのIgユニットを有する五量体型があり得る。
【0083】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖からなる「Y」型分子である;システイン残基の間のジスルフィド結合により結合された2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖。各重鎖は約440アミノ酸長であり;各軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、それらの折り畳みを安定化する鎖内(intrachain)ジスルフィド結合を含む。各鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは、約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて、異なったカテゴリ(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。それらは、2つのβシートが、保存されたシステインとその他の電荷アミノ酸の間の相互作用により一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0084】
α、δ、ε、γ、およびμで示される5つの型の哺乳動物Ig重鎖が存在する。現在の重鎖の型は抗体のアイソタイプを定義しており;これらの鎖はそれぞれIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM抗体で見られる。
【0085】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なる;αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含むが、μおよびεは約550個のアミノ酸を含む。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)とを有する。ある種では、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体において本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4個の免疫グロブリン領域から構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なったB細胞で生成された抗体において異なるが、単一のB細胞またはB細胞クローンにより生成されたすべての抗体に対しては同一である。各重鎖の可変領域は約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0086】
哺乳類において、λおよびκと指定される2タイプの免疫グロブリン軽鎖が存在する。軽鎖は2つの連続したドメインを有する:1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)。軽鎖のおおよその長さは、211から217個のアミノ酸である。各々の抗体は、常に同一である2つの軽鎖を有する;哺乳類の1抗体につき、軽鎖κまたはλのうちの1タイプのみ存在する。
【0087】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所定の抗体の独特の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域により判定される。より具体的には、可変のループ状で、3つの軽鎖(VL)および3つの重鎖(VH)は、抗原への結合、すなわち、その抗原特異性に原因がある。これらのループは、相補性判定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインからのCDRは抗原結合部位に寄与するので、最終の抗原特異性を判定するのは重鎖と軽鎖の組み合わせであり、それぞれ単独のみではない。
【0088】
「抗体フラグメント」は、上記で定義したように、少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、フラグメントが誘導される完全な抗体と本質的に同一の機能および特異性を示す。パパインによる限定されたタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。各々1つの完全なL鎖と約半分のH鎖とを含む2つの同一アミノ末端フラグメントは、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間でジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物と、補体結合と、FcR結合部位とを含む。限定されたペプシンの消化により、Fabフラグメント(piece)とH−H鎖間ジスルフィド結合を有するヒンジ領域との両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが生じる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖と軽鎖の可変領域は共に縮合して、単一鎖可変フラグメント(scFv)を生成することができる。
【0089】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類金属、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0090】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
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