(54)【発明の名称】うつ病及び神経障害性疼痛の治療における(2R,6R)−ヒドロキシノルケタミン、(S)−デヒドロノルケタミン及び他の(R,S)−ケタミンの立体異性デヒドロ及びヒドロキシル化代謝生成物の使用
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
【文献】
J. D. ADAMS,BIOLOGICAL MASS SPECTROMETRY,1981年11月 1日,V8 N11,P527-538
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
双極性うつ病、大うつ病性障害、統合失調症、アルツハイマー痴呆、筋委縮性側索硬化症、複合局所疼痛症候群(CRPS)、慢性疼痛、又は神経障害性疼痛の治療のための組成物であって、単離した(2S,6S)−ヒドロキシノルケタミン、単離した(2R,6R)−ヒドロキシノルケタミン、単離した(2S,6R)−ヒドロキシノルケタミン、単離した(2R,6S)−ヒドロキシノルケタミン、又は前記の任意の組み合わせの有効量を含む、組成物。
双極性うつ病、大うつ病性障害、統合失調症、アルツハイマー痴呆、筋委縮性側索硬化症、複合局所疼痛症候群(CRPS)、慢性疼痛、又は神経障害性疼痛に対する、ケタミン不応答の患者の治療のための組成物であって、
単離した(2S,6S)−ヒドロキシノルケタミン、単離した(2R,6R)−ヒドロキシノルケタミン、単離した(2S,6R)−ヒドロキシノルケタミン、単離した(2R,6S)−ヒドロキシノルケタミン、又は前記の任意の組み合わせの有効量を含むことを特徴とする組成物。
該単離した(2S,6S)−ヒドロキシノルケタミン、単離した(2R,6R)−ヒドロキシノルケタミン、単離した(2S,6R)−ヒドロキシノルケタミン、単離した(2R,6S)−ヒドロキシノルケタミン、又は前記の任意の組み合わせを追加の活性物質と共に含むことを特徴とする、請求項13又は14に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[用語]
本明細書に開示の化合物は標準の命名法に従って記載する。別に定義しない限り、本明細書にて使用する技術用語及び科学用語はすべて、本開示が属する分野の当業者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。
【0026】
不定冠詞「a」及び「an」は数量の限定を意味するものではなく、言及した事項の少なくとも1つが存在することを意味する。
【0027】
式(I)はそのすべての下位式を包含する。例えば、式(I)は式(I)及び下位式の式(II)〜(V)で示される化合物、その薬学的に許容される塩、プロドラッグと他の誘導体、水和物、多形を包含する。
【0028】
用語“キラル”は、その鏡像体の重ね合わせができないという性質を有する分子をいう。
【0029】
“立体異性体”とは、同一の化学的構造を有するが、原子又は基の空間的配置に関して違いのある化合物である。
【0030】
“ジアステレオマ”とは、2つ以上のキラリティの中心をもつ立体異性体であって、その分子が互いに鏡像体とならないものである。ジアステレオマは異なる物性を有し、例えば、融点、沸点、スペクトル特性、及び反応性が異なる。ジアステレオマの混合物は、高分解能分析手段、例えば、電気泳動、分割剤存在下の結晶化、又は例えば、キラルHPLCカラムによるクロマトグラフィなどにより分離し得る。
【0031】
“エナンチオマ”とは、互いに重ね合わせることのできない鏡像体である化合物の2つの立体異性体をいう。エナンチオマの50:50混合物はラセミ混合物又はラセミ化合物といい、化学反応もしくは工程において、立体選択性又は立体特異性がなかった場合に生じ得る。
【0032】
本明細書にて使用する立体化学の定義及び慣行は、一般に、以下の文献に従う。S.P.Parker,Ed.,McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms(化学用語辞典)(1984)McGraw−Hill Book Company,New York。Eliel,E.and Wilen,S.,Stereochemistry of Organic Compounds(有機化合物の立体化学)(1994)John Wiley & Sons,Inc.,New York。多くの有機化合物は光学的に活性な形状で存在する、即ち、それらは平面偏光の平面を回転する能力を有する。光学的に活性な化合物を記載する場合には、接頭辞D及びL又はR及びSを用いて、そのキラル中心についての分子の絶対配置を示す。接頭辞d及びl又は(+)及び(−)は該化合物による平面偏光の回転記号を示すために使用され、(−)又はlは該化合物が左旋性であることを意味する。(+)又はdの接頭辞をもつ化合物は右旋性である。
【0033】
“ラセミ混合物”又は“ラセミ化合物”は、2種のエナンチオマ種の等モル(又は50:50)混合物であり、光学活性を欠いている。ラセミ混合物は、化学反応もしくは工程において、立体選択性又は立体特異性がなかった場合に生じ得る。
【0034】
化合物が種々の互変異性体の形状で存在する場合、本発明は特定の互変異性体のいずれか1つに限定されるものではなく、むしろすべての互変異性体の形状を包含する。
【0035】
本開示は、該化合物中に存在する原子のすべての可能な同位体を有する式(I)の化合物を包含する。同位体は同じ原子番号を有するが、異なる質量数を有する原子である。一般的な例示であって、限定するものではないが、水素の同位体はトリチウムと重水素を含み、炭素の同位体は
11C、
13C、及び
14Cを含む。
【0036】
本明細書では、特定の化合物が可変記号、例えば、R
1〜R
4を含む一般式を用いて記載されている。別に明記しない限り、式(I)内の各可変記号は、他の可変記号から独立して定義される。従って、1つの基が、例えば、0〜2個のR
*で置換されているという場合、当該基は2個までのR
*基で置換されていてもよく、各個のR
*はR
*の定義から独立して選択される。また、置換基及び/又は可変記号の組み合わせは、かかる組み合わせが安定な化合物を生じる場合にのみ可能である。
【0037】
本明細書にて使用する場合、“置換された”という用語は、指定された原子又は基上の少なくとも1個の水素が、記載された群より選択されたものと置換わっていることを意味するが、ただし、指定された原子の正規の原子価を超えないものとする。置換基がオキソ(すなわち、=O)である場合、該原子上の2個の水素が置き換えられる。芳香環部分がオキソ基により置換されている場合、該芳香環は相当する部分的不飽和環により置き換えられる。例えば、オキソが置換したピリジル基はピリドンである。置換基及び/又は可変記号の組み合わせは、かかる組み合わせが安定な化合物又は有用な合成中間体を生じる場合にのみ可能である。安定な化合物又は安定な構造は、反応混合物からの単離と、引き続く有効な治療薬への製剤に耐え得る十分な強さをもつ化合物を当然伴うことを意味する。
【0038】
2つの文字もしくは記号間のダッシュ(“−”)は、置換基の結合点を示すために使用する。例えば、−(CH
2)C
3−C
7シクロアルキルはメチレン(CH
2)基の炭素を介して結合する。
【0039】
“アルキル”とは分枝及び直鎖両方の飽和脂肪族炭化水素基を含み、特定の炭素原子数、一般的に1個から約12個の炭素原子を有する基である。本明細書にて使用される用語C
1−C
6アルキルは、1個から約6個の炭素原子を有するアルキル基をいう。C
0−C
nアルキルが他の基、例えば、(フェニル)C
0−C
4アルキルと結合して本明細書で使用される場合、指定された基(この場合フェニル)は、単一共有結合(C
0)で直接結合するか、あるいは特定数の炭素原子、この場合は1個から約4個の炭素原子を有するアルキル鎖を介して結合する。アルキルの例は、限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、3−メチルブチル、t−ブチル、n−ペンチル、及びsec−ペンチルである。
【0040】
“アルカノイル”とはケト((−C=O)−)架橋を介して結合する上記定義のアルキル基である。アルカノイル基は指定数の炭素原子を有するが、ケト基の炭素も炭素原子数に含まれる。例えば、C
2アルカノイル基とは、式CH
3(C=O)−で示されるアセチル基である。
【0041】
“アルケニル”とは1つ又はそれ以上の不飽和炭素−炭素結合を含む直鎖及び分枝の炭化水素鎖を意味し、その不飽和結合は該鎖の任意の安定な点に存在し得る。本明細書に記載されたアルケニル基は、一般に2個から約12個の炭素原子を有する。好適なアルケニル基は低級アルケニル基、2個から約8個の炭素原子を有するアルケニル基、例えば、C
2−C
8、C
2−C
6、及びC
2−C
4アルケニル基である。アルケニル基の例は、エテニル、プロペニル、及びブテニル基である。
【0042】
“アルコキシ”とは、酸素架橋を介して結合した指定数の炭素原子を有する上記定義のアルキル基を意味する。アルコキシの例は、限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、3−ヘキソキシ、及び3−メチルペントキシである。
【0043】
“モノ及び/又はジアルキルアミノ”とは、二級もしくは三級のアルキルアミノ基を意味するが、この場合のアルキル基は上記定義のものであり、また指定数の炭素原子を有する。該アルキルアミノ基の結合点は窒素上である。該アルキル基は独立して選択される。モノ及びジアルキルアミノ基の例は、エチルアミノ、ジメチルアミノ、及びメチル−プロピル−アミノを含む。“モノ及び/又はジアルキルアミノアルキル”基は、特定数の炭素原子をもつアルキルリンカーを介して結合したモノ及び/又はジアルキルアミノ基であり、例えば、ジメチルアミノエチル基である。三級アミノ置換基は、N−R−N−R’という形の呼称により表され得るものであり、その基R及びR’は共に単一の窒素原子に結合していることを示す。
【0044】
“アルキルエステル”とはエステル結合を介して結合した上記定義のアルキル基を意味する。該エステル結合は、例えば、式−O(C=O)アルキルの基又は式−(C=O)Oアルキルの基などのいずれの配向であってもよい。
【0045】
“炭素環”とは、炭素環原子のみを含む3から8員の飽和、一部不飽和、もしくは芳香環であるか、又は炭素環原子のみを含む6員から11員の飽和、一部不飽和、もしくは芳香二環性炭素環系である。別に明記しない限り、該炭素環は置換するペンダント基に、安定な構造を生じる任意の炭素原子において結合し得る。本明細書に記載された炭素環は、それを示す指された場合、生ずる化合物が安定であるならば、利用可能な任意の環炭素において置換していてもよい。炭素環基は、シクロプロピル及びシクロヘキシルなどのシクロアルキル基、シクロヘキセニルなどのシクロアルケニル基、架橋シクロアルキル基、及びフェニルなどのアリール基を含む。
【0046】
“シクロアルキル”とは、特定数の炭素原子、通常、3個から約7個の環炭素原子を有する飽和炭化水素環基を意味する。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシルを含む。
【0047】
用語“ヘテロ環”は、N、O、及びSから選択される1個から約4個のヘテロ原子と炭素である残りの環原子を含有する5員から8員の飽和、一部不飽和、もしくは芳香族環を意味するか、又は7員から11員の二環状の飽和、一部不飽和、又は芳香族ヘテロ環系もしくは10員から15員の三環系であって、N、O、及びSから選択される多環系において少なくとも1個のヘテロ原子を含み、また多環系の各環においてN、O、及びSから独立して選択される約4個までのヘテロ原子を含む環系を意味する。別に明記しない限り、該ヘテロ環は安定な構造を生じる任意のヘテロ原子又は炭素原子において置換する基に結合し得る。本明細書に記載されたヘテロ環は、それを示された場合、生成する化合物が安定であるならば、炭素上又は窒素原子上に置換し得る。ヘテロ環中の窒素原子は選択肢として四級化してもよい。好適なのは、ヘテロ環状基のヘテロ原子の総数が4を超えないこと、ヘテロ環状基のS及びO原子の総数が2を超えないこと、より好ましくは1を超えないことである。ヘテロ環状基の例は、ピリジル、インドリル、ピリミジニル、ピリジジニル、ピラジニル、イミダゾリル、オキサゾリル、フラニル、チオフェニル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソオキサゾリル、キノリニル、ピロリル、ピラゾリル、ベンズ[b]チオフェニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、チエニル、イソインドリル、ジヒドロイソインドリル、5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン、ピリジニル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、ピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、及びピロリジニルを含む。
【0048】
“5員又は6員のヘテロアリール”とは、N、O、及びSから選択される1個から4個、又は好ましくは1個から3個のヘテロ原子を、炭素である残りの環原子と共に含む安定な5員から6員の単環状環を意味する。ヘテロアリール基のS及びO原子の総数が1を超える場合、これらのヘテロ原子は互いに隣接していない。好ましいのは、ヘテロアリール基のS及びO原子の総数が2を超えないことである。取り分け好ましいのは、ヘテロアリール基のS及びO原子の総数が1を超えないことである。ヘテロアリール基の窒素原子は選択肢として四級化していてもよい。かかるヘテロアリール基は、指示された場合、炭素もしくは非炭素原子又は基によりさらに置換されていてもよい。かかる置換は、N、O、及びSから独立して選択される1個又は2個のヘテロ原子を任意に含む5員から7員の飽和環状基に融合して、例えば、[1,3]ジオキソロ[4,5−c]ピリジル基を形成するものでもよい。ヘテロアリール基の例は、限定されるものではないが、ピリジル、インドリル、ピリミジニル、ピリジジニル、ピラジニル、イミダゾリル、オキサゾリル、フラニル、チオフェニル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソキサゾリル、キノリニル、ピロリル、ピラゾリル、ベンズ[b]チオフェニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、チエニル、イソインドリル、及び5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリンを含む。
【0049】
“ヘテロシクロアルキル”とは、N、O、及びSから選択される1個から約3個のヘテロ原子と、炭素である残りの環原子とを含む飽和の環状基を意味する。ヘテロシクロアルキル基は3個から約8個の環原子を有し、より典型的には5個から7個の環原子を有する。ヘテロシクロアルキル基の例は、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、及びピロリジニル基を含む。ヘテロシクロアルキル基中の窒素は選択肢として四級化してもよい。
【0050】
“ハロアルキル”は、1個又はそれ以上のハロゲン原子から一般的には最大可能な数のハロゲン原子までで置換された特定数の炭素原子を有する分枝及び直鎖両方のアルキル基を意味する。ハロアルキルの例は、限定されるものではないが、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、2−フルオロエチル、及びペンタ−フルオロエチルである。
【0051】
“ハロアルコキシ”とは、酸素橋(アルコール遊離基の酸素)を介して結合した上記定義のハロアルキル基を意味する。
【0052】
本明細書にて使用する“ハロ”又は“ハロゲン”は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードをいう。
【0053】
“活性物質”とは、単独で、又は他の物質と組み合わせて患者に投与した場合に、直接的に、又は間接的に患者に対する生理作用を付与する何らかの化合物、成分、又は混合物を意味する。活性物質が一化合物である場合、その遊離化合物もしくは塩の塩、溶媒和物(水和物を含む)、該化合物の結晶性及び非晶質形態、並びに様々な多形が包含される。化合物は立体形成中心、立体形成軸などの1個又はそれ以上の不斉元素、例えば、不斉炭素原子を含み、それによって該化合物は異なる立体異性体形状で存在し得る。これらの化合物は、例えば、ラセミ化合物又は光学活性形状であってもよい。
【0054】
“投与”とは、いずれかの適切な経路を経て使用の化合物又は該化合物を含有する組成物を供給することを意味し、例えば、固体もしくは液体投与形態での経口投与、吸入、注射、坐剤投与、又は経皮接触などを意味する。“投与”とはまた、化合物又は該化合物を含有する組成物を、固体もしくは液体投与形態での経口投与、吸入、注射、坐剤投与、又は経皮接触などを介して、任意の適切な経路で適用することも含む。“投与”は、ケタミン又はノルケタミンを消費したか、又はそれらで処理したヒト又は動物の代謝経路により、生体内で該化合物が生成することは包含しない。
【0055】
“抑うつ症状”とは、低調な気分、低下した活動意欲、精神運動の減速又は高揚、食欲変化、集中力低下又は優柔不断、過剰な罪悪感又は無価値感、及び自殺念慮などであり、抑うつ性障害、双極性障害、一般的な医学的状態による気分障害、物質誘発性気分障害、その他の不特定気分障害の状況下で起こり得るものであり、また種々の他の精神医学的障害と関連しても存在し得るものであって、前記障害は限定されるものではないが、精神障害、認知障害、摂食障害、不安障害及び人格障害を包含する。該障害の長期的な経過、症状の履歴と種類、及び素因などが、気分障害の様々な形態を互いに区別する一助となる。
【0056】
“抑うつ症状尺度”は、うつ病における症状及び症状の重症度を測定するために利用される多くの標準的問診票、臨床用計器、又は症状一覧表の任意のものをいう。かかる尺度は、臨床研究において、研究のエントリーポイントからエンドポイントまでの変化に基づき、治療のアウトカムを明確にするためにしばしば使用される。かかる抑うつ症状尺度は、限定されるものではないが、自己記入式の抑うつ症状の簡易一覧表(QIDS−SR
16)、17項目のハミルトンうつ病尺度(HRSD
17)、抑うつ性の包括的症状の30項目一覧表(IDS−C
30)、又はモンゴメリイ−アスパーグのうつ病尺度(MADRS)を含む。かかる尺度は患者の自己記入であってもよく、あるいは医師が評価してもよい。臨床試験の過程全般で(開始点からエンドポイントまで)、うつ病尺度のスコアの50%以上低下は、殆どの抑うつ症状尺度について有望な効果があったと一般に見做される。うつ病の臨床研究における“寛解”とは、しばしば抑うつ症状尺度上、特定の数値尺度スコア以下の目標達成をいう(例えば、HRSD
17では7に等しいか7未満、又はQIDS−SR
16では5に等しいか5未満、又はMADRSでは10に等しいか10未満)。
【0057】
“患者”とは、医療処置の必要なヒト又は非ヒト動物を意味する。医療処置は、既存の状態、例えば、疾患もしくは障害の処置、予防処置又は予防的処置、又は診断的処置であり得る。一部の実施態様において、患者はヒト患者である。
【0058】
“医薬組成物”とは、少なくとも1種の活性物質(例えば、式(I)で示される化合物又は塩)及び少なくとも1種の他の物質(例えば、担体、添加剤、又は希釈剤)を含んでなる組成物である。
【0059】
本発明の医薬組成物に適用される用語“担体”は、共に活性化合物を投与する希釈剤、添加剤、又は媒体をいう。
【0060】
“薬学的に許容される添加剤”は、一般に安全で、非毒性であり、生物学的にもその他の面でも望ましくないものではない、医薬組成物を調製する際に有用な添加剤を意味し、獣医学用並びにヒトの医薬用として許容される添加剤を含む。本出願において使用される“薬学的に許容される添加剤”はかかる添加剤の1種及びそれ以上を含む。
【0061】
“薬学的に許容される塩”とは、開示された化合物の誘導体であり、その非毒性の酸又は塩基付加塩を作ることにより親化合物を修飾したものであって、さらにはかかる化合物及びかかる塩の水和物などの薬学的に許容される溶媒和物をいう。薬学的に許容される塩の例は、限定されるものではないが、アミンなどの塩基性残基の鉱酸もしくは有機酸付加塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリもしくは有機付加塩など、及び上記塩の1種以上からなる組み合わせである。該薬学的に許容される塩は、例えば、非毒性の無機酸もしくは有機酸から形成される親化合物の非毒性塩及び四級アンモニウム塩である。例えば、非毒性酸塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導される塩である。その他の許容される無機塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩などの金属塩、及びカルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、及び前記塩の1種以上からなる組み合わせを含む。
【0062】
薬学的に許容される有機塩は、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、メシル酸、エシル酸、ベシル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、HOOC−(CH
2)
n−COOH(式中、nは0〜4である)などの有機酸から調製される塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩などの有機アミン塩、及びアルギン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などのアミノ酸塩、及び前記塩の1種以上からなる組み合わせを含む。
【0063】
“プロドラッグ”とは、哺乳類動物対象に投与したときに、例えば、プロドラッグの代謝時に本発明の化合物となる任意の化合物を意味する。プロドラッグの例は、限定されるものではないが、本発明化合物中の官能基(例えば、アルコール又はアミン基)の酢酸エステル、ギ酸エステル、及び安息香酸エステルなどの誘導体である。
【0064】
用語“治療有効量”又は“有効量”とは、ヒト又は非ヒト患者に投与したときに、何らかの治療効果をもたらす有効な量を意味する。治療効果は症状の改善、例えば、抑うつ性障害又は疼痛の症状を低下させるために有効な量である。ある化合物の治療有効量とはまた、疾患、障害、又は状態の徴候に有意なプラスの効果をもたらすのに十分な量、例えば、抑うつ症状又は疼痛の頻度及び重篤度を有意に低下させるために充分な量である。障害又は状態の徴候に対する有意な効果とは、スチューデントのT検定などの統計的な有意性の標準的パラメーター試験において統計的に有意である(p<0.05)ことを含むが、その効果は一部の実施形態においては有意である必要はない。
【0065】
[化学上の説明]
<化合物の構造>
(2R,6R)−ヒドロキシノルケタミンの構造は、リョン及びベイリイ(Leung and Baillie)(J.Med.Chem.,(1986)29:2396−2399)が示している。
【化2】
【0066】
この化合物は(Z)−6−ヒドロキシノルケタミンとして知られている。そのIUPAC名は(2S,6S)−2−アミノ−2−(2−クロロフェニル)−6−ヒドロキシシクロヘキサノンである。(Z)−6−ヒドロキシノルケタミンはCAS登録番号111056−64−5及び95342−35−1を有する。
【0067】
(S)−デヒドロノルケタミンの構造は以下のとおりである。
【化3】
【0068】
そのIUPAC名は(S)−1−アミノ−2’−クロロ−5,6−ジヒドロ−[1,1’−ビフェニル]−2(1H)−オンである。本開示の他の化合物は次の構造をもつ(2S,6S)−ヒドロキシノルケタミンを含む。
【化4】
【0069】
本開示はヒドロキシノルケタミン及びデヒドロノルケタミンのすべての立体異性体を包含する。
【0070】
本開示は(2R,6R)−ヒドロキシノルケタミン及び(R)−及び(S)−デヒドロノルケタミンなどのヒドロキシノルケタミンジアステレオマのプロドラッグ、並びにこれら化合物の立体異性体のプロドラッグである新規化合物を包含する。
【0071】
<化合物の機能>
理論により拘束されるものではないが、出願人は式(I)で示される特定の化合物が、セリンラセマーゼの阻害を介して作用すると信じている。ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)が鎮痛における標的として有効であると認められていることから、出願人は2種類のnAChRサブタイプ、α
7及びα
3β
4nAChRに対するDHNKの活性を検討した。全細胞系のパッチクランプ法を用いて、α
7及びα
3β
4ニューロンアセチルコリンエステラーゼ受容体(nAChR)に対するケタミン、ノルケタミン、DHNK及びHNK代謝生成物の機能的活性を検討した。α
3β
4nAChRに対するこれら化合物の活性は、α
3β
4nAChRを発現するHEK293細胞において、ニコチン刺激性86Rb+流出アッセイ法により検討した。DHNKはα
7nAChRの強力な阻害剤であると確認された(IC
50=0.05μM)が、一方、ケタミンとノルケタミンは不活性であると判定された。DHNKはα
3β
4nAChRに対して不活性であるが、ケタミンは弱い非競合的阻害剤(IC
50=10μM)である。
【0072】
出願人は、ケタミンがセリンラセマーゼを阻害し、それによってNMDA受容体との相互作用に利用可能なD−セリンの濃度を抑えることでNMDA(N−メチル−D−アスパラギン酸)受容体を阻害することをつきとめている。ケタミン又はケタミン代謝生成物によるnAChR活性の阻害を介するSR活性の間接的阻害が仮説として立てられた。PC12細胞を選択してこの仮説を試験したが、その理由は該細胞株が活性なSRとα
7及びα
3β
4nAChRとを発現するからである。出願人は、DHNKが1321N1星状細胞腫細胞においてD−セリンの細胞内濃度を大きく低下させるα
7nAChRの強力な選択的阻害剤であることをつきとめた(IC
50=16.37nM)。
【0073】
現行の“ケタミン理論”に反して、下流のケタミン代謝生成物は活性であり、また臨床的に観察される親薬物の抗侵害受容作用に寄与し得ると思われる。このことは、ケタミンとNKの暴露だけではケタミンの鎮痛性を説明しないことを示す以前の薬物動態学/薬力学的研究の結果と矛盾しない。さらに、一部のCRPS患者におけるケタミンの顕著な臨床効果は、ケタミン代謝能力に個体差のあることを反映している可能性がある。
【0074】
<化合物の実施形態>
式(I)で示される化合物を含有する医薬組成物に加えて、“発明の概要”の項で定義したように、本開示は、(2R,6R)−ヒドロキシノルケタミンなどのヒドロキシノルケタミンジアステレオマ類のプロドラッグを包含する(ここでの可変記号、例えば、R
1〜R
6は次の定義を有する)。本開示は結果として安定な化合物を生じる可変記号の定義の任意の組み合わせを有する式(I)で示される化合物を包含する。
【0075】
従って、本開示は式(I)で示される化合物と塩を包含する。
【化5】
式(I)
(式中では以下の条件が満たされる。)
【0076】
<式(I)の下位式>
本開示は下記式(I)の下位式の化合物類及び塩類を包含する。
【化6】
式(II) 式(III) 式(IV)
式(III)のR
1はHではない。
【化7】
式(V) 式(VI)
【0077】
本開示はまた式(I)〜(VI)の化合物及び塩であって、2−クロロフェニルが2−フルオロフェニル又は2−ブロモフェニルと置換わり、そのそれぞれがR
5で置換されているものを包含する。
【0078】
本開示はまた下記式の化合物及びその薬学的に許容される塩、並びにこれらの化合物及び塩と少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物を包含する。
【化8】
【0079】
特定の実施形態において、本開示は下記式の化合物及びその薬学的に許容される塩、並びにこれらの化合物又はその塩の一方もしくは両方と少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物を包含する。
【化9】
【0080】
<プロドラッグ化合物>
さらに包含されるのは、式(I)のプロドラッグ化合物及び塩であって、可変記号R
1〜R
4は下記の定義を有するものである。
【0081】
R
1は、水素、ヒドロキシル、又は基−A
1B
1である(式中、A
1は−O−、−O(C=O)−、−(C=O)O−、−O(C=O)O−、−O(C=O)NR
6−、−OS(O)
2−、−OS(O)
3、又は−OP(O)
3−であり、B
1はC
1−C
8アルキル、C
2−C
8アルケニル、C
2−C
8アルキニル、(炭素環)C
0−C
4アルキル又は(ヘテロ環)C
0−C
4アルキルであり、そのそれぞれはハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C
1−C
4アルキル、C
1−C
4アルコキシ、C
1−C
6アルキルエステル、モノ及びジ(C
1−C
4アルキル)アミノ、(C
3−C
7シクロアルキル)C
0−C
2アルキル、(ヘテロシクロアルキル)C
0−C
2アルキル、C
1−C
2ハロアルキル、及びC
1−C
2ハロアルコキシから独立して選択される0から4個の置換基により置換されている)。ただし、−A
1B
1は(4−メチルフェニル)−S(O)
2O−ではないものとする。
【0082】
R
1が結合する6員環は、R
1がヒドロキシル又は−A
1B
1である場合、完全飽和である。
【0083】
R
2は、水素又は−A
2B
2である(式中、A
2は結合であるか、−O(C=O)−、−(C=O)O−、−S(O)
2−、−(S=O)NR
6−、又は−(C=O)NR
6−であり、B
2はC
1−C
8アルキル、C
2−C
8アルケニル、C
2−C
8アルキニル、C
2−C
6アルカノイル、(炭素環)C
0−C
4アルキル、(ヘテロ環)C
0−C
4アルキル、又はC末端でA
2に共有結合したアミノ酸もしくはジペプチドであり、そのそれぞれはハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C
1−C
4アルキル、C
1−C
4アルコキシ、C
1−C
6アルキルエステル、モノ及びジ(C
1−C
4アルキル)アミノ、(C
3−C
7シクロアルキル)C
0−C
2アルキル、(ヘテロシクロアルキル)C
0−C
2アルキル、C
1−C
2ハロアルキル、及びC
1−C
2ハロアルコキシから独立して選択される0から4個の置換基により置換されている)。ただし、A
2が結合又は−(C=O)O−である場合、B
2はメチルではないものとする。
【0084】
R
1は、R
2が水素である場合、水素又はヒドロキシルではない。
【0085】
R
3は水素又はC
1−C
6アルキルである。
【0086】
R
4及びR
5は、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C
1−C
4アルキル、C
1−C
4アルコキシ、モノ及びジC
1−C
4アルキルアミノ、C
1−C
2ハロアルキル、及びC
1−C
2ハロアルコキシから独立して選択される0又は1個以上の置換基である。
【0087】
R
6は水素又はC
1−C
6アルキルである。
【0088】
さらに包含されるのは、下記条件を満足する実施形態である。これらの定義はまた、治療方法及び医薬組成物にも適用し得る。本開示は安定な化合物が得られる限り、これらの可変記号のすべての組み合わせを包含する。
【0089】
(1)R
1は水素又はヒドロキシルである。
【0091】
R
4及びR
5はそれぞれ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C
1−C
2アルキル、及びC
1−C
2アルキルから独立して選択される0から2個の置換基である。
【0093】
(2)R
2は、−A
2B
2である(式中、A
2は結合であるか、−(C=O)O−、−S(O)
2−、−(S=O)NR
6−、又は−(C=O)NR
6−であり、B
2はC
1−C
6アルキル、C
2−C
4アルカノイル、(フェニル)C
0−C
2アルキル、(C
3−C
7シクロアルキル)C
0−C
4アルキル、(ヘテロシクロアルキル)C
0−C
2アルキル、(5員もしくは6員のヘテロアリール)C
0−C
2アルキル、又はC末端でA
2に共有結合するアミノ酸であり、そのそれぞれはハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C
1−C
4アルキル、C
1−C
4アルコキシ、C
1−C
6アルキルエステル、モノ及びジ(C
1−C
4アルキル)アミノ、C
1−C
2ハロアルキル、及びC
1−C
2ハロアルコキシから独立して選択される0から4個の置換基により置換されている)。
【0094】
(3)A
2は結合であり、B
2はC末端でA
2に共有結合するアミノ酸である。
【0095】
(4)B
2は、
【化10】
である。
【0096】
(5)A
2は結合又は−(C=O)O−であり、B
2はC
2−C
6アルキル、(フェニル)C
0−C
2アルキル、又は(C
3−C
7アルキル)C
0−C
4アルキルであり、そのそれぞれはハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C
1−C
4アルキル、C
1−C
4アルコキシ、及びモノ及びジ(C
1−C
4アルキル)アミノから独立して選択される0から4個の置換基により置換されている。
【0099】
R
4及びR
5はそれぞれ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C
1−C
2アルキル、及びC
1−C
2アルキルから独立して選択される0から2個の置換基である。
【0101】
(7)R
1は−A
1B
1である(式中、A
1は−O(C=O)−又は−O(C=O)O−であり、B
1はC
1−C
6アルキル、(フェニル)C
0−C
4アルキル、(C
3−C
7シクロアルキル)C
0−C
4アルキル、(ヘテロシクロアルキル)C
0−C
2アルキル、又は(5員又は6員のヘテロアリール)C
0−C
2アルキルであり、そのそれぞれはハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C
1−C
4アルキル、C
1−C
4アルコキシ、C
1−C
6アルキルエステル、モノ及びジ(C
1−C
4アルキル)アミノ、(C
3−C
7シクロアルキル)C
0−C
2アルキル、(ヘテロシクロアルキル)C
0−C
2アルキル、C
1−C
2ハロアルキル、及びC
1−C
2ハロアルコキシから独立して選択される0から4個の置換基により置換されている)。特定の実施形態において、R
1は−A
1B
1であり、A
1は−O−であるか、又はA
1は−O(C=O)−である。
【0102】
(8)B
1はC
1−C
6アルキル、(フェニル)C
0−C
2アルキル、又は(ヘテロシクロアルキル)C
0−C
2アルキルであり、そのそれぞれはハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C
1−C
4アルキル、C
1−C
4アルコキシ、モノ及びジ(C
1−C
4アルキル)アミノ、(C
3−C
7シクロアルキル)C
0−C
2アルキル、及び(ヘテロシクロアルキル)C
0−C
2アルキルから独立して選択される0から2個の置換基により置換されている。
【0103】
(9)式(IV)で示される化合物又は塩であって、式中、
【0105】
R
4及びR
5はそれぞれ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C
1−C
2アルキル、及びC
1−C
2アルキルから独立して選択される0から2個の置換基である。
【0107】
[医薬組成物]
本明細書に開示された化合物は原体の化学物質としても投与し得るが、好ましくは医薬組成物として投与する。従って、本開示は式(I)で示される化合物又は薬学的に許容される塩と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含んでなる医薬組成物を提供する。該医薬組成物は唯一の活性物質として式(I)で示される化合物又は塩を含み得るが、好ましくは少なくとも1種の追加の活性物質を含む。特定の実施形態において、該医薬組成物は、単位剤形において、式(I)で示される化合物を約0.1mgから約1000mg、約1mgから約500mg、又は約10mgから約200mg含み、また選択肢として追加の活性物質を約0.1mgから約2000mg、約10mgから約1000mg、約100mgから約800mg、又は約200mgから約600mg含む経口剤形である。
【0108】
本明細書に開示された化合物は、経口的、局所的、非経口的、吸入もしくは噴霧により、舌下的、経皮的、口腔内投与、直腸的、点眼液として、又は他の手段により、通常の薬学的に許容される担体を含む投与単位製剤として投与し得る。該医薬組成物は任意の薬学的に有用な形態で、例えば、エーロゾル、クリーム、ゲル剤、ピル、カプセル、錠剤、シロップ、経皮パッチ、又は点眼液として製剤化し得る。一部の投与形態、例えば、錠剤及びカプセルなどは、適当な量の活性成分、例えば、所望の目的を達成するための有効量を含有する適切なサイズの単位投与量に小分けされる。
【0109】
担体は添加剤と希釈剤を含み、治療すべき患者への投与に適切なものとするために、十分に高い純度と十分に低い毒性のものでなければならない。該担体は不活性であってもよいし、又はそれ自体の薬学的効果を有していてもよい。該化合物と共に使用する担体の量は、該化合物の単位投与量あたり投与に実用的な量の物質を提供するに十分である。
【0110】
担体の種類は、限定されるものではないが、結合剤、緩衝剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、芳香剤、滑剤、滑沢剤、保存剤、安定剤、界面活性剤、錠剤化剤、及び湿潤剤を含む。一部の担体は2以上の種類として登録され得る。例えば、植物油は一部の製剤では滑沢剤として使用され、他の製剤では希釈剤として使用され得る。典型的な薬学的に許容される担体は、糖類、デンプン、セルロース、粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、及び植物油を含む。光学活性剤も医薬組成物に含め得るが、このものは本発明化合物の活性を実質的に阻害しないものである。
【0111】
該医薬組成物は経口投与用に製剤化し得る。好適な経口投与剤形は1日当たり1回又は1日当たり2回の投与用に製剤化する。これらの組成物は式(I)で示される化合物を0.1から99重量%(wt%)、通常、該式の化合物を少なくとも約5wt%含有する。一部の実施形態では、該式の化合物を約25wt%から約50wt%、又は約5wt%から約75wt%含有する。
【0112】
[治療法]
(R,S)−ケタミンの麻酔域下量を用いての研究は、この薬物が複合局所疼痛症候群(CRPS)に罹患する患者の治療などの神経障害性及び慢性疼痛の治療に有効であることを証明した。5日間の連続点滴により(R,S)−ケタミンを投与したCRPS患者から得られた血漿サンプルを分析すると、一次薬物の(R,S)−ケタミンは、治療応答の主な原因ではないことが明らかとなった。本開示は、患者のケタミンに対する治療応答の原因となる活性物質が(2R,6R;2S,6S)−ヒドロキシノルケタミンと(R,S)−デヒドロノルケタミン(ケタミンの代謝生成物)であることを証明する。これらの代謝生成物はシトクロムP450(CYP類)、例えば、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C9、CYP2D6、及びCYP3A5などとして同定された多数の肝臓酵素により産生される。CYP類は多型的であり、このことはそれらがすべてのヒトで等しく活性となるものではないことを意味する。従って、おそらく、ケタミンが治療した患者の約30%で治療応答を誘発しなかったのは、同定されたCYP類の1種類以上の活性が患者間で相違するため、(2R,6R,2S,6S)−ヒドロキシノルケタミン及び/又は(S)−デヒドロノルケタミンの産生が一様ではないせいである。
【0113】
この発見の真髄は、応答率を増加させ、また治療を制限する(R,S)−ケタミンが原因となるCNS副作用を回避するために、患者に直接投与し得る新規化合物を同定したことである。CNS副作用はNMDA受容体に対する(R,S)−ケタミンの活性と関係している。(2R,6R;2S,6S)−ヒドロキシノルケタミン(HNK)はNMDA受容体に対して非活性であり、従ってこれらの副作用を回避する。(2S,6S)−ヒドロキシノルケタミン代謝生成物及び/又はDHNKを直接投与すると、ケタミンよりもより多くの割合の患者で治療応答が得られるという利点がある。(2S,6S)−ヒドロキシノルケタミン及びDHNKはまた、血漿中半減期が長く、また経口的に生物利用能が得られる。従って、連日投与用の経口製剤が本開示に包含される。
【0114】
治療法は、(2S,6S)−ヒドロキシノルケタミン、(2R,6R)−ヒドロキシノルケタミン、(2S,6R)−ヒドロキシノルケタミン、(2R,6S)−ヒドロキシノルケタミン、(S)−デヒドロノルケタミン、及び(R)−デヒドロノルケタミンのいずれか1種、又は前記の任意の組み合わせを投与することからなる。治療法はまた、(2S,6S)−ヒドロキシノルケタミン、(2R,6R)−ヒドロキシノルケタミン、(2S,6R)−ヒドロキシノルケタミン、(2R,6S)−ヒドロキシノルケタミン、(S)−デヒドロノルケタミン、及び(R)−デヒドロノルケタミンのいずれか1種を光学的に純粋な形態で投与することかなる。
【0115】
本開示は、双極性うつ病、大うつ病性障害、統合失調症、アルツハイマー痴呆、筋委縮性側索硬化症、複合局所疼痛症候群(CRPS)、慢性疼痛、又は神経障害性疼痛の治療法であって、式(I)で示される化合物又は薬学的に許容されるその塩の有効量と、薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物を、かかる治療の必要な患者に投与することを特徴とする方法を包含する。
【0116】
治療法は式(I)で示される化合物又は薬学的に許容される塩の一定投与量を患者に提供することからなる。1日当たり体重1キログラムにつき約0.1mgから約140mgの各活性物質の投与量は、上記の状態の治療に有用である(1日当たり患者一名につき約0.5mgから約7g)。一つの単位剤形を製造するための担体材料と組み合わせ得る活性成分の量は、治療すべき患者と具体的な投与方式によって変わる。
【0117】
一部の実施形態において、治療有効量は式(I)で示される化合物の血漿中C
maxを約0.25mcg/mLから約125mcg/mL、又は約1mcg/mLから約50mcg/mLとする量である。末梢適用の場合は、C
maxが約0.25cmg/mLから約25mcg/mLとなる製剤及び方法が好適であるが、他方、CNS適用の場合には、血漿中C
maxが約0.25mcg/mLから約125mcg/mLとなる製剤及び方法が好適である。本開示は静注医薬組成物をも包含するが、該組成物は式(I)で示される化合物を1回投与当り約0.2mgから約500mgとし、末梢適用の場合には、約0.5mgから約500mg/1回投与とする化合物が好適である。
【0118】
式(I)で示される化合物又は塩は投与する唯一の活性物質であってもよいし、あるいは追加の活性物質と共に投与してもよい。例えば、式(I)で示される化合物は以下のいずれかから選択される別の活性物質と共に投与し得る。
(抗うつ薬)
エシタロプラム(escitalopram)、フルオキセチン(fluoxetine)、パロキセチン(paroxetine)、デュロキセチン(duloxetine)、セルトラリン(sertraline)、シタロプラム(citalopram)、ブプロピオン(bupuropion)、ベンラファキシン(venlafaxine)、デュロキセチン(duloxetine)、ナルトレキソン(naltrexone)、ミルタザピン(mirtazapine)、ベンラファキシン(venlafaxine)、アトモキセチン(atomoxetine)、ブプロピオン(bupropion)、ドキセピン(doxepin)、アミトリプチリン(amitriptyline)、クロミプラミン(clomipramine)、ノルトリプチリン(nortriptyline)、ブスピロン(buspirone)、アリピプラゾール(aripiprazole)、クロザピン(clozapine)、ロキサピン(loxapine)、オランザピン(olanzapine)、ケチアピン(quetiapine)、リスペリドン(risperidone)、ジプラシドン(ziprasidone)、カルバマゼピン(carbamazepine)、ガバペンチン(gabapentine)、ラモトリジン(lamotrigine)、フェニトイン(phenytoin)、プレガバリン(pregabalin)、ドネペジル(donepezil)、ガランタミン(galantamine)、メマンチン(memantine)、リバスチグミン(rivastigmine)、トラミプロセート(tramiprosate)、又はその薬学的に活性な塩もしくはプロドラッグ、又は前記の組み合わせ。
(統合失調症薬)
アリピプラゾール(aripiprazole)、ルラシドン(lurasidone)、アセナピン(asenapine)、クロザピン(clozapine)、ジプラシドン(ziprasidone)、リスペリドン(risperidone)、ケチアピン(quetiapine)、ステラジン(stelazine)、オランザピン(olanzapine)、ロキサピン(loxapine)、フルペンチオキソール(flupentioxol)、ペルフェナジン(perphenazine)、ハロペリドール(haloperidol)、クロルプロマジン(chlorpromazine)、フルフェナジン(fluphenazine)、プロリキシン(prolixin)、パリペリドン(paliperidone)。
(アルツハイマー痴呆症薬)
ドネペジル(donepezil)、リバスチグミン(rivastigmine)、ガランタミン(galantamine)、メマンチン(memantine)。
(ALS薬)
リルゾール(riluzole)。
(疼痛薬)
アセトアミノフェン、アスピリン、NSAIDS、例えば、ジクロフェナック、ジフルニサール、エトドラック、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、メクロフェナメート、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダック、トルメチン、オピオイド、Cox−2阻害剤、例えば、セルコキシブ、及び麻薬性疼痛薬、例えば、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロポキシフェン、中枢性鎮痛薬トラマドール。
【0119】
追加の活性物質についての前記のリストは、完全に網羅的というよりもむしろ典型例を示すためのものである。上記リストに含まれていない追加の活性物質も式(I)で示される化合物と組み合わせて投与してもよい。追加の活性物質はその承認された処方情報に従って投与するが、一部の実施形態においては、追加の活性物質を通常の処方量よりも少な目で投与し、一部の例では承認された最少用量よりも少なく投与する。
【0120】
本開示は双極性うつ病及び大うつ病性障害の治療法を包含し、そこでの該化合物の有効量は、抑うつ症状を低下させるために有効な量であり、その場合の抑うつ症状の低下は、抑うつ症状尺度で認定される症状の50%以上の低下であるか、或はHRSD
17で7に等しいかもしくはそれ以下、又はQID−SR
16で5に等しいかもしくはそれ以下であるか、又はMADRSで10に等しいかそれ以下のスコアである。
【0121】
本開示は疼痛症状を低下させるために有効な量を提供するが、その場合の疼痛症状の低下は、疼痛尺度で疼痛症状の50%以上の低下達成である。
【実施例】
【0122】
[実施例1]
<ノルケタミンのリジン結合体の合成>
【化11】
【0123】
[実施例2]
<6-ヒドロキシノルケタミンのエステル結合体の合成>
【化12】
【0124】
[実施例3]
<(+/−)−(2S,6R/2R,6S)−6−ヒドロキシノルケタミンの合成>
【化13】
【0125】
(+/−)−(Z+E)−6−ブロモノルケタミンの合成
氷酢酸(50mL)中のラセミ体(+/−)−ノルケタミン(遊離塩基)(10.0g、35.8mmol)のサンプルを三臭化ピリジニウム(16.4g、51.3mmol)で処理した。得られる混合物をマイクロ波により130℃に1時間加熱した。減圧下に溶媒を除去し、粗製物質をCHCl
3に溶かして飽和のNaHCO
3で洗浄し、乾燥(Na
2SO
4)、減圧下に蒸発させてジアステレオマの粗生成物混合物(Z+E、3:1)を12.4gとして得た。このものをシリカゲルのクロマトグラフィに付し、CH
2Cl
2/MeOH/Et
3Nの濃度を99.9/0/0.1から98.9/1/0.1に変化させて溶出し、純分離異性体、(+/−)−(E)−6−ブロモノルケタミン(1.22g)(9%収率)及び(+/−)−(Z)−6−ブロモノルケタミン(6.6g)(49%収率)を得た。
【0126】
(+/−)−(E)−6−ブロモノルケタミンの分析データ:
1H−NMR:(300MHz、CDCl
3):δ7.60(m、1H)、7.20−7.10(m、3H)、5.17(dd、1H、J=12.0Hz、J=6.6Hz)、2.72−2.39(m、3H)、2.36−2.08(m、1H)、1.96−1.82(m、2H)、1.69(ブロードs、2H)。MS:(ESI)m/z(相対強度):302(77、M+H)、304(100、M+H)。
【0127】
(+/−)−(Z)−6−ブロモノルケタミンの分析データ:
1H−NMR:(300MHz、CDCl
3):δ7.62(dd、1H、J=1.8Hz、J=7.5Hz)、7.45−7.22(m、3H)、4.90(dd、1H、J=12.0Hz、J=6.6Hz)、2.70−2.63(m、1H)、2.58−2.41(m、2H)、2.24−2.09(m、2H)、2.10−1.78(m、3H)。MS:(ESI)m/z(相対強度):302(79、M+H)、304(100、M+H)。勾配HPLC:バリアンPursuitC−18(5ミクロン)、50×2mm;0.1%TFAの水/0.1%TFAのアセトニトリルを95/5から5/95まで5分間かけた後に保持;0.200mL/分;トータル・イオン・クロマトグラム(TIC);R
t7.03、生成物純度95%。
【0128】
(+/−)−(2S,6R/2R,6S)−6−ヒドロキシノルケタミンの合成
無水エタノール(20mL)中のラセミ体(+/−)−(Z)−6−ブロモノルケタミン(2.71g、8.96mmol)のサンプルを1Mギ酸アンモニウム(pH6.8)(20mL)で処理した。得られる溶液をAr下に10日間撹拌し、微量の生成物のみを形成した。減圧下に溶媒を除去し、粗生成物混合物をDMSO(10mL)に溶かし、分取HPLCに注入することで精製した。勾配HPLC:ウォーターズ・サンファイア・プレップC18(10ミクロン)、150×30mm;5mMギ酸アンモニウムの水/アセトニトリル(90/10)で5分間、次いで(90/10)から(10/90)まで10分間、次いで維持;10mL/分、270nm;R
t9.5分。生成物画分を合体し、減圧下に蒸発させて(+/−)−(2S,6R/2R,6S)−6−ヒドロキシノルケタミン(25mg)(1%収率)を得た。
【0129】
(+/−)−(E)−6−ヒドロキシノルケタミンの分析データ:
1H−NMR:(300MHz、CDCl
3):δ7.62(dd、1H、J=1.8Hz、J=7.5Hz)、7.45−7.22(m、3H)、4.90(dd、1H、J=12.0Hz、J=6.6Hz)、2.70−2.63(m、1H)、2.58−2.41(m、2H)、2.24−2.09(m、2H)、2.10−1.78(m、3H)。MS:(ESI)m/z(相対強度):240(100、M+H)。勾配HPLC:バリアンPursuitC−18(5ミクロン)、150×4.6mm;5mMギ酸アンモニウム(pH7.6)/アセトニトリルを80/20で5分間、次いで80/20から20/80まで10分間、次いで維持;0.250mL/分;トータル・イオン・クロマトグラム(TIC);R
t17.26、生成物純度95%。
【0130】
[実施例4]
<さらなる精製ヒドロキシノルケタミン及びデヒドロノルケタミンの形態>
(S)−5,6−デヒドロキシノルケタミン
【化14】
【0131】
1H−NMR:(400MHz、CD
3OD):d7.58(dd、1H、J=8.0Hz、J=1.2Hz)、7.49(dt、1H、J=7.6Hz、J=1.6Hz)、7.40(dt、1H、J=7.2Hz、J=1.2Hz)、7.33(dd、1H、J=8.0Hz、J=1.6Hz)、7.12−7.07(m、1H)、6.38−6.34(m、1H)、3.41−3.37(m、1H)、2.60−2.51(m、1H)、2.36−2.28(m、1H)、2.15−2.04(m、1H)。MS:(ESI)m/z(相対強度):222(100、M+H)。勾配HPLC:バリアンPursuitC−18(3ミクロン)、50×2mm、アセトニトリル/10mMギ酸アンモニウム(pH7)の水を(2/98)で2.5分間、次いで(2/98)から(98/2)まで7.5分間、次いで維持;0.200mL/分、254nm;R
t4.10分;純度95%。キラルHPLC:スペルコキラルAGP(5ミクロン)、100×4mm;アセトニトリル/50mM酢酸アンモニウムの水(pH7.2)(10/90);0.700mL/分、225nm;R
t3.370分;純度98.48%。
【0132】
(R)−5,6−デヒドロキシノルケタミン塩酸塩
【化15】
【0133】
1H−NMR:(400MHz、CD
3OD):d7.58(dd、1H、J=8.0Hz、J=1.2Hz)、7.49(dt、1H、J=7.6Hz、J=1.6Hz)、7.40(dt、1H、J=7.2Hz、J=1.2Hz)、7.33(dd、1H、J=8.0Hz、J=1.6Hz)、7.12−7.07(m、1H)、6.38−6.34(m、1H)、3.41−3.37(m、1H)、2.60−2.51(m、1H)、2.36−2.28(m、1H)、2.15−2.04(m、1H)。MS:(ESI)m/z(相対強度):222(100、M+H)。勾配HPLC:バリアンPursuitC−18(3ミクロン)、50×2mm、アセトニトリル/10mMギ酸アンモニウム(pH7)の水を(2/98)で2.5分間、次いで(2/98)から(98/2)まで7.5分間、次いで維持;0.200mL/分、254nm;R
t4.18分;純度95%。キラルHPLC:スペルコキラルAGP(5ミクロン)、100×4mm;アセトニトリル/50mM酢酸アンモニウムの水(pH7.2)(10/90);0.700mL/分、225nm;R
t8.059分;純度95.29%。
【0134】
(2R,6R)−6−ヒドロキシノルケタミン塩酸塩
【化16】
【0135】
1H−NMR:(300MHz、CD
3OD):δ7.90−7.86(m、1H)、7.62−7.55(m、3H)、4.30(dd、1H、J=6.8Hz、J=11.6Hz)、3.26−3.18(m、1H)、2.33−2.27(m、1H)、2.00−1.60(m、4H)。MS:(ESI)m/z(相対強度):240(100、M+H)。勾配HPLC:バリアンPursuitC−18(5ミクロン)、150×4.6mm、5mMギ酸アンモニウムの水/アセトニトリルを(80/20)で5分間、次いで(80/20)から(20/80)まで10分間、次いで維持;0.250mL/分、270nm;R
t13.05;純度99%。キラルHPLC:スペルコキラルAGP(5ミクロン)、100×4mm;100%50mM酢酸アンモニウム水(pH7.2);0.800mL/分、215nm;R
t4.487分;純度97.68%。
【0136】
(2S,6S)−6−ヒドロキシノルケタミン塩酸塩
【化17】
【0137】
1H−NMR:(300MHz、CD
3OD):d7.90−7.86(m、1H)、7.62−7.55(m、3H)、4.30(dd、1H、J=6.8Hz、J=11.6Hz)、3.26−3.18(m、1H)、2.33−2.27(m、1H)、2.00−1.60(m、4H)。MS:(ESI)m/z(相対強度):240(100、M+H)。勾配HPLC:バリアンPursuitC−18(5ミクロン)、150×4.6mm、5mMギ酸アンモニウムの水/アセトニトリルを(80/20)で5分間、次いで(80/20)から(20/80)まで10分間、次いで維持;0.250mL/分、270nm;R
t13.05;純度99%。キラルHPLC:スペルコキラルAGP(5ミクロン)、100×4mm;100%50mM酢酸アンモニウム水(pH7.2);0.800mL/分、215nm;R
t5.574分;純度98.61%。
【0138】
[実施例5]
<セリン・ラセマーゼ阻害アッセイ>
(材料)
D−セリン(D−Ser)、L−セリン(L−Ser)、D−アラニン(D−Ala)、L−アラニン(L−Ala)、D−アルギニン(D−Arg)、L−アルギニン(L−Arg)、グリシン(Gly)、D−ロイシン(D−Leu)、L−ロイシン(L−Leu)、D−イソロイシン(D−Iso)、L−イソロイシン(L−Iso)、D−グルタミン酸(D−Glu)、L−グルタミン酸(L−Glu)、D−アスパラギン酸(D−Asp)、L−アスパラギン酸(L−Asp)、L−リジン(L−Lys)、β−シクロデキストリン(β−CD)、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)、メタノール、アセトニトリル(ACN)、及びイソチオシアン酸フルオレセインはシグマ・アルドリッチ(セントルイス、ミズーリ、米国)より入手した。脱イオン水はミリQシステム(ミリポア、ビレリカ、マサチューセッツ、米国)から得た。使用した他の化学物質はすべて分析等級のものとした。
【0139】
(細胞株及び細胞培養)
本研究用に選択した細胞株は、ラットの副腎髄質由来PC−12褐色細胞腫、ヒト由来の1321N1星状膠細胞腫、ラット由来のC6膠芽細胞腫、及びヒト由来のHepG2肝細胞癌であった。細胞株はすべてATCC(マナッサス、バージニア、米国)から入手した。PC12細胞は、10%馬血清(加熱不活化)、5%FBS、1%ピルビン酸ナトリウム溶液、1%HEPES緩衝液及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液を補足したL−Gln含有RPMI7−1640中で維持した。1321N1及びC6細胞は、10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液を補足したL−Gln含有DMEM中に維持した。HepG2細胞は、1%L−Gln、10%FBS、1%ピルビン酸ナトリウム溶液及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液を補足したE−MEM中に維持した。
【0140】
グルタミンを含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、イーグル最少必須培地(E−MEM)、RPMI−1640、トリプシン溶液、リン酸緩衝食塩水、ウシ胎仔血清(FBS)、ピルビン酸ナトリウム溶液(100mM)、L−グルタミン(L−Gln)(200mM)及びペニシリン/ストレプトマイシン溶液(10,000単位/mlペニシリン及び10,000μg/mlストレプトマイシン含有)は、クオリティ・バイオロジカル(ゲイサースバーグ、メリーランド、米国)から入手し、馬血清(加熱不活化)はバイオソース(ロックビル、メリーランド、米国)から入手し、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)緩衝液(1M)はメディアテック・インク(マナッサス、バージニア、米国)から入手した。
【0141】
(CE−LIF(キャピラリー電気泳動−レーザ誘発蛍光)分析)
装置:CE分離はレーザ誘導蛍光検出計を備えたP/ACE−MDQシステム(ベックマン・インスツルメント、フラートン、カリフォルニア、米国)により実施した。レーザ誘発蛍光検出は励起488nm及び発光520nmで実施した。非被覆溶融シリカキャピラリーは50μm内径及び有効長50cmのものを用い、泳動緩衝液はホウ酸緩衝液[80mM、pH9.3]中で調製した0.5mM−HP−β−CD溶液から構成する。キャピラリーは各分析の前に、0.1NのNaOH、0.1NのH
3PO
4、H
2O及び泳動緩衝液を連続的にそれぞれ4分間流すことにより調整した。サンプルは1秒間0.5p.s.i.の圧力で注入し、分離電圧を0〜44分の間15kV、次いで45〜60分の間22kVの傾斜電圧として分離した。60分目に電圧を0kVに下げ、カラムを0.1NのNaOHで4分間洗い、次いで0.1Nリン酸で4分間洗浄した。総泳動時間は68分であった。定量は内部標準としてFITC−D−Argを用い、FITC−D−Serについて計算した面積比を用いて実施した。内部標準の濃度は5μMとした。
【0142】
標準溶液:0.5mMのD−Ser/ホウ酸緩衝液[80mM、pH9.3]の濃縮ストック溶液を用いて、検量線用の0.25、0.5、1、2、4、10、20、40、80、及び100μM溶液を調製した。L−Ser、D−Ala、L−Ala、D−Arg、L−Arg、Gly、D−Leu、L−Leu、D−Iso、L−Iso、D−Glu、L−Glu、D−Asp、L−Asp、L−Lysの1mM/ホウ酸緩衝液[80mM、pH9.3]の標準溶液も調製した。100μMのD−Arg/H
2O溶液を内部標準溶液として使用した。
【0143】
サンプル調製:細胞を集め、200×g、4℃で5分間遠心した。上清を捨て、細胞を1.00mlのH
2Oに懸濁し、0.050mlの内部標準を加え、得られる混合物を1分間振盪混合した。ACNのアリコート4.00mlを加え、懸濁液を20分間超音波処理した。次いで、混合物を15分間、2500×g、4℃で遠心し、その上清を集め、窒素下に流動乾燥した。残渣を0.90mlのホウ酸緩衝液[80mM、pH9.3]に溶解した。
【0144】
FITC標識:FITC溶液(3mg/ml)をアセトン中で調製し、−20℃で使用時まで保存した。標準アミノ酸の誘導化のために、内部標準溶液のアリコート0.05mlを標準溶液0.85mlに加え、0.10mlのFITC溶液を加えて、得られる溶液を室温で12時間暗所に放置した。細胞抽出物をアッセイする場合は、0.10mlのFITC溶液を0.90mlのサンプルに加え、得られる溶液を室温で12時間暗所に放置した。
【0145】
(セリンラセマーゼの活性と発現に対するケタミン代謝生成物の影響)
細胞を100×20mmの組織培養プレートに播種し、加湿した5%CO
2/空気下に、>70%コンフルエントとなるまで、37℃に維持した。当初の培地を連続濃度の試験化合物を含有する培地と交換し、そのプレートをさらに36時間培養した。0から100nMの化合物濃度、例えば、10nM、20nmM、50nM、75nM及び100nMを用いた。
【0146】
培地を除去し、分析用に細胞を集めた。本研究はすべて三重反復にて実施した。
【0147】
(ウエスタンブロッティング)
細胞は、エチレングリコール四酢酸及びエチレンジアミン四酢酸(ボストン・バイオプロダクツ、アッシュランド、マサチューセッツ、米国)を含有するRIPA緩衝液で溶解した。溶解緩衝液は、フッ化4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニル、ペプスタチンA、E−64、ベスタチン、ロイペプチン、及びアプロチニン(シグマ・アルドリッチ)から構成されるプロテアーゼ阻害剤カクテルを含有していた。タンパク質濃度は、ピアスバイオテクノロジー・インク(ロックフォード、イリノイ、米国)から入手したビシンコニン酸(BCA)試薬を用いて定量した。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により還元条件下に、4〜12%プレキャストゲル上でタンパク質(20μg/ウェル)を分離し、フッ化ポリビニリデン(PVDF)膜(インビトロジエン)に電気泳動的に転写した。ウエスタンブロットは標準法に従って実施した。該標準法は5%脱脂乳でブロックし、対象の抗体と培養し、次いで西洋わさびペルオキシダーゼ酵素結合した二次抗体と培養することで実施した。免疫反応バンドの可視化はECLプラス・ウエスタンブロッティング・デテクションシステム(GEヘルスケア、ニュージャージー、米国)により実施した。バンドの定量はイメージソフトウエアによる容量濃度計測とβ−アクチンに対する正規化により実施した。
【0148】
SRに対する一次抗体はサンタクルーズ・バイオテクノロジー(サンタクルーズ、カリフォルニア、米国)からsc−48741として、及びアブカム(ケンブリッジ、マサチューセッツ、米国)からab45434として入手し、またβ−アクチンに対する一次抗体はアブカムからab6276として入手した。これらの抗体は製造業者の推奨する希釈率で使用した。
【0149】
(統計的分析)
パーソナルコンピューター上で作動するグラフパッド・プリズム4(グラフパッド・ソフトウエア・インク、ラホヤ、カリフォルニア、米国)を使用して、EC
50及びIC
50値計算などの全ての統計データ分析を実施した。
【0150】
本開示にて考察する式(I)で示される特定の化合物は、NMDA受容体阻害及びニコチン性アセチルコリン受容体サブタイプα
7の阻害について、上記のセリンラセマーゼアッセイで試験した。ニコチン性アセチルコリン受容体サブタイプα
7のアッセイは下記の実施例6に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
DHNKはnACh受容体α
7サブタイプの強力な阻害剤であることが判明したが、一方、ケタミン及びノルケタミンはこの受容体サブタイプに対して不活性である。
【0153】
[実施例6]
<アセチルコリン受容体により誘起される電流に対する化合物の影響>
ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)が鎮痛の標的として有効であることが認められていることから、我々は2つのnAChRサブタイプ、α
7及びα
3β
4nAChRに対するDHNK(デヒドロキシノルケタミン)の活性を検討した。全細胞構成におけるパッチクランプを用いて、KXα7R1において280マイクロモルのアセチルコリンにより誘起される電流に対するケタミン、ノルケタミン、及びDHNKとHNK代謝生成物の機能的活性を試験した。データは−80mVで得て、ACh単独で誘起される電流の振幅に対して正規化した(n=4)。
【0154】
【表2】