【課題を解決するための手段】
【0020】
それゆえ、本発明の一目的は、基板上の少なくとも1つのマイクロワイヤあるいはナノワイヤの製造法を開示することであり、この方法は、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの形成ステップに用いられるエピタキシャル成長方法に関係なく、結晶品質が良好で、基板とナノワイヤとの間の電気抵抗が従来技術に従った方法を用いて得られたマイクロワイヤあるいはナノワイヤの抵抗よりも小さい、少なくとも1つのマイクロワイヤあるいはナノワイヤをもたらすことができる。
【0021】
本発明の別の目的は、窒素極性化された核形成面で実現されるマイクロワイヤあるいはナノワイヤであって、基板とマイクロワイヤあるいはナノワイヤとの間の電気抵抗が従来技術の方法で得られるマイクロワイヤあるいはナノワイヤに比べて減少しているマイクロワイヤあるいはナノワイヤを形成するステップを備える、少なくとも1つの半導体窒化物マイクロワイヤあるいはナノワイヤの製造法を提供することである。これを達成するために、本発明は、光電気構造の形成に使われる少なくとも1つの半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤの製造法に関する。前記方法は、以下のステップ、すなわち、
‐第1面と第2面とを備える半導体基板を準備するステップと、
‐基板の第1面の上にバッファ層と呼ばれる結晶層を形成するステップであって、バッファ層は、厚さの少なくとも一部を覆って、第2面と接触している第1区域を持ち、第1区域は主にMg
xN
yの窒化マグネシウムから成るステップと、
‐バッファ層の上に少なくとも1つの半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤを形成するステップであって、接触部分と呼ばれる、前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤの少なくとも1つの部分は主に、直接バンドギャップの半導体窒化物から成り、前記部分はバッファ層と接触しているマイクロワイヤあるいはナノワイヤの部分であるステップとを備える。
【0022】
「主に窒化マグネシウムから成る」とは、窒化マグネシウムの比率が95%以上の組成のことであり、この比率は好ましくは99%より高い。
【0023】
「主にある材料から成る」というのも、組成が前記材料の比率95%以上であるという意味であり、この比率は好ましくは99%より高い。
【0024】
主にMg
xN
yの窒化マグネシウムから成る区域があることと、その結晶品質ゆえに、そのようなバッファ層は、ケイ素あるいは炭化ケイ素の基板などの半導体基板と比べて結晶格子パラメータの整合性が良好な、主に半導体窒化物から成る少なくとも1つのマイクロワイヤあるいはナノワイヤの成長と、それゆえ結晶欠陥の濃度が低い少なくとも1つのマイクロワイヤあるいはナノワイヤの成長とを可能にする。その上、従来技術で用いられるバッファ層に比べて、そのような層のインターフェース抵抗は小さい。なぜなら、その禁制帯が、従来技術のバッファ層よりも小さいからである。それゆえそのような層は、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの分極電圧が低い構造の製造を可能にし、各マイクロワイヤあるいはナノワイヤとバッファ層との間のインターフェース抵抗が小さくなる。
【0025】
その上、マイクロワイヤあるいはナノワイヤが、多数キャリアが電子である第1の伝導タイプを持つとき、バッファ層における窒素の相対的比率は、バッファ層がマイクロワイヤあるいはナノワイヤと同じ伝導タイプを持つように、コントロールされ得る。
【0026】
しかもそのようなバッファ層によって、窒素極性を持ちかつその結果特に半導体窒化物マイクロワイヤあるいはナノワイヤの成長に適合された、マイクロワイヤあるいはナノワイヤを形成するための核形成面が提供され得る。
【0027】
マイクロワイヤあるいはナノワイヤの接触部分は、窒化ガリウムから構成されていてよいであろう。
【0028】
マイクロワイヤあるいはナノワイヤの形成は、マイクロワイヤあるいはナノワイヤすなわちワイヤタイプの構造を製造するのに特に適した窒素極性を示す核形成面上で実現されるので、そのような方法は特に、窒化ガリウムマイクロワイヤあるいはナノワイヤを提供するのに適している。
【0029】
実際、このような極性を示す核形成層によって、ピラミッド形状ではなくワイヤ形状のマイクロ構造あるいはナノ構造を獲得できるであろう。それゆえこのようなワイヤタイプの構造あるいはマイクロワイヤあるいはナノワイヤは、m結晶面に沿った少なくとも1つの垂直部分を表わす。m結晶面に沿ったこの垂直部分は、核形成層と接触しているワイヤの部分の高さに設置され得る。接触しているマイクロワイヤあるいはナノワイヤの部分は、バッファ層と接触している面で、窒素極性を示し得る。
【0030】
バッファ層の形成ステップにおいて、バッファ層は主にMg
xN
yの窒化マグネシウムから成ってよい。
【0031】
それゆえ、バッファ層の形成ステップの後、基板の第1面の反対側のバッファ層の表面は、バッファ層の別の区域を形成する必要なしに、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの成長に適している。
【0032】
バッファ層の形成ステップにおいて、バッファ層は、厚さを覆って、基板の第1面の反対側にあるバッファ区域の表面を備える少なくとも1つの第2区域を持ち、前記第2区域は主に窒化マグネシウム以外の、かつ好ましくはマイクロワイヤあるいはナノワイヤの接触部分とほぼ同じ組成の、直接バンドギャップの半導体窒化物から成る。
【0033】
バッファ区域の表面を含むこのような第2区域は、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの接触部分を形成する材料との良好な結晶格子適合性を、成長表面に提供することができ、それゆえマイクロワイヤあるいはナノワイヤの形成ステップの間マイクロワイヤあるいはナノワイヤに結晶欠陥ができるリスクを制限する。第2区域も、多数キャリアの濃度がほとんど同一のマイクロワイヤあるいはナノワイヤと同種の伝導性を持ち、それゆえ前記区域とマイクロワイヤあるいはナノワイヤとの間のインターフェース抵抗を制限する。
【0034】
バッファ層の形成ステップは、1nmから100nmの厚さの層を形成するステップであってよく、厚さは好ましくは2nmから10nmである。
【0035】
バッファ層のこのような厚さは、半導体基板と比べて、良好な結晶格子適合性をもたらし得る。この厚さは、有機金属気相エピタキシー(MOVPE)などの成長ステップを用いるマイクロワイヤあるいはナノワイヤの製造法のために、基板を汚染するリスクも制限する。
【0036】
バッファ層の形成ステップにおいて、第1区域は、主にMg
3N
2の窒化マグネシウム好ましくは単結晶から成ってよい。
【0037】
マグネシウムと窒素とから作られるこのような組成は、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの成長ために、結晶品質の高いバッファ層をもたらすことができる。その上、バッファ層のこの品質は、適したタイプと多数キャリアの濃度とを有するマイクロワイヤあるいはナノワイヤの供給を可能にする。同様に、単結晶バッファ層は、バッファ層の結晶面に直接関連した所与の方向に沿って、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの成長をもたらす。
【0038】
バッファ層の形成ステップは、多数キャリアが電子である伝導性を有する層を形成するステップであってよく、半導体窒化物は少なくとも、バッファ層と同じ伝導タイプを有する接触部分を形成する。
【0039】
少なくとも1つのマイクロワイヤあるいはナノワイヤの形成ステップの間、少なくとも接触部分を形成する半導体窒化物は、窒化ガリウム(GaN)と、窒化アルミニウム(AlN)と、窒化インジウム(InN)と、xが0から1であるIn
xGa
1−xNタイプの窒化インジウムガリウムと、x+yが0から1であるAl
xIn
yGa
1−x−yNタイプの窒化アルミニウムガリウム
インジウムとを備えるグループから選択されてよい。
【0040】
これらの半導体窒化物は、紫外線から遠赤外線の範囲内で電磁放射線の検出、測定あるいは放出に適したマイクロワイヤあるいはナノワイヤを結果的にもたらすことができる。
【0041】
少なくとも1つの半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤの形成ステップは、以下のサブステップ、すなわち、
‐バッファ層の上にいわゆるマスキング層を析出させるステップであって、マスキング層を形成する材料は、半導体窒化物の適合されたエピタキシャル析出の間、マスキング層の上に析出なしに、バッファ層の上で半導体窒化物の選択的成長を可能にするよう適合されているステップと、
‐バッファ層に至る少なくとも1つの開口部をマスキング層に形成するステップと、
‐選択的エピタキシャル析出によって、各開口部にマイクロワイヤあるいはナノワイヤを形成するステップとを備えてよい。
【0042】
少なくとも1つのマイクロワイヤあるいはナノワイヤを形成するこのようなステップは、基板と当該基板に形成された他の構造とに対して各マイクロワイヤあるいはナノワイヤの位置をコントロールする可能性を有して、選択的かつ完全にコントロールされる成長を可能にする。
【0043】
本発明は、電磁放射線を放出するために考案された半導体構造にも関し、
‐第1面と第2面とを備える半導体基板と、
‐第1面と接触している結晶バッファ層と、
‐バッファ層と接触している少なくとも1つの半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤであって、前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤの少なくとも1つのいわゆる接触部分は直接バンドギャップの半導体窒化物から作られ、前記接触部分は、バッファ層と接触しているマイクロワイヤあるいはナノワイヤの部分であり、マイクロワイヤあるいはナノワイヤは、極性化されると電磁放射線を放出するよう適合されたアクティブ区域も持つ、半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤと、
‐マイクロワイヤあるいはナノワイヤとそのアクティブ区域とを極性化するよう適合された、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの電気的結合を行う手段とを備え、
バッファ層は、厚さの少なくとも一部を覆って、基板の第2面と接触している第1区域を持ち、第1区域は主にMg
xN
yの窒化マグネシウムから成る。
【0044】
それゆえ、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ各々の結晶特性が良好なので、そのような構造は、従来技術の構造よりも低い作動電圧を持ちながら、良好な放出効率を持ち得る。なぜなら、各マイクロワイヤあるいはナノワイヤと基板との間の電気抵抗が小さいからである。
【0045】
本発明は、電磁放射線を受信しかつそれを電気信号に変換できる半導体構造にも関し、前記構造は、
‐第1面と第2面とを備える半導体基板と、
‐第1面と接触している結晶バッファ層と、
‐バッファ層と接触している少なくとも1つの半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤであって、前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤの接触部分と呼ばれる少なくとも1つの部分は、直接バンドギャップの半導体窒化物から作られ、前記接触部分は、バッファ層と接触しているマイクロワイヤあるいはナノワイヤの部分であり、マイクロワイヤあるいはナノワイヤは、電磁放射線を受信しかつそれを電気信号に変換するよう適合されたアクティブ区域も持つ、半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤと、
‐電気信号を読み出すために、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの電気的結合を可能にするよう適合された、電気的結合手段とを備え、
バッファ層は、厚さの少なくとも一部を覆って、基板の第2面と接触している第1区域を持ち、第1区域は主にMg
xN
yの窒化マグネシウムから成る。
【0046】
それゆえ、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ各々の結晶特性が良好なので、そのような構造は、基板とマイクロワイヤあるいはナノワイヤ各々との間の電気抵抗ゆえに、従来技術に従った構造で起こり得るものより少ない損失で、電磁放射線を検出および/あるいは測定するための、良好なキャリア光生成効率を持っていてよい。
【0047】
本発明は、本発明に従った光電気構造の製造法にも関し、前記製造法は以下のステップ、すなわち、
‐本発明に従ったマイクロワイヤあるいはナノワイヤの製造法に従って、少なくとも1つのマイクロワイヤあるいはナノワイヤを形成するステップと、
‐マイクロワイヤあるいはナノワイヤのための電気的結合手段を形成するステップとを備える。
【0048】
そのような方法は結果的に、効率の良い光電気構造をもたらし得る。なぜなら、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ各々は、良好な結晶品質と比較的低い使用電圧も持つからであり、基板とマイクロワイヤあるいはナノワイヤとの間のインターフェース抵抗は、主に窒化マグネシウムから成る第1区域の存在ゆえに、より小さい。
【0049】
本発明は、添付の図に関連して以下の例示された実施形態を読んだ後によりよく理解されるであろう。当該実施形態は、インフォメーションのためにのみ与えられ、かつ決して限定されるものではない。図に示されるのは以下である。