特許第6296993号(P6296993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6296993半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤの製造法と、当該マイクロワイヤあるいはナノワイヤを備える半導体構造、および半導体構造の製造法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296993
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤの製造法と、当該マイクロワイヤあるいはナノワイヤを備える半導体構造、および半導体構造の製造法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/12 20100101AFI20180312BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20180312BHJP
   H01L 33/06 20100101ALI20180312BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   H01L33/12
   H01L33/32
   H01L33/06
   H01L31/10 A
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-547954(P2014-547954)
(86)(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公表番号】特表2015-501087(P2015-501087A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】EP2012076091
(87)【国際公開番号】WO2013092665
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年12月11日
(31)【優先権主張番号】1162029
(32)【優先日】2011年12月20日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】61/584,401
(32)【優先日】2012年1月9日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アメリ・デュッサーニュ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ジレ
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・マルタン
【審査官】 百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−542560(JP,A)
【文献】 特開2007−300050(JP,A)
【文献】 特開2011−135058(JP,A)
【文献】 特開2005−294794(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0223969(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
H01L 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電気構造(10)の形成に使われる少なくとも1つの半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤの製造法であって、該製造法は、以下のステップ、すなわち、
‐第1面と第2面(100a、100b)とを備える半導体基板(100)を準備するステップと、
‐前記基板(100)の前記第1面(100a)の上にバッファ層と呼ばれる結晶層を形成するステップであって、前記バッファ層(110)は、厚さの少なくとも一部を覆って、前記第1面(100a)と接触している第1区域(110、111)を持ち、該第1区域(110、111)は主にMgの窒化マグネシウムから成るステップと、
‐前記バッファ層(110)の上に少なくとも1つの半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)を形成するステップであって、接触部分と呼ばれる、前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)の少なくとも1つの部分(151)は主に直接バンドギャップの半導体窒化物から成り、前記部分(151)は前記バッファ層(110)と接触している前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)の部分であるステップとを備え、
前記バッファ層(110)の形成ステップは、2nmから10nmの厚さの層を形成するステップである、製造法。
【請求項2】
前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤの前記接触部分は、窒化ガリウムから構成されている、請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
前記バッファ層の形成ステップにおいて形成される該バッファ層(110)は主に、Mgの窒化マグネシウムから成る、請求項1あるいは2に記載の製造法。
【請求項4】
前記バッファ層(110)の形成ステップにおいて、該バッファ層(110)は、厚さを覆って、前記基板(100)の前記第1面(100a)の反対側にある前記バッファ区域(110)の表面を備える少なくとも1つの第2区域(112)を持ち、前記第2区域(112)は主に、窒化マグネシウム以外の、かつ好ましくは前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)の前記接触部分(151)とほぼ同じ組成の、直接バンドギャップの半導体窒化物から成る、請求項1あるいは2に記載の製造法。
【請求項5】
前記バッファ層(110)の形成ステップにおいて、前記第1区域は、主にMgの窒化マグネシウム好ましくは単結晶から成る、請求項1からのいずれか1項に記載の製造法。
【請求項6】
前記バッファ層(110)の形成ステップは、多数キャリアが電子である伝導性を有する層を形成するステップであり、半導体窒化物は少なくとも、前記バッファ層(110)と同じ伝導タイプを有する前記接触部分(151)を形成する、請求項1からのいずれか1項に記載の製造法。
【請求項7】
少なくとも1つのマイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)の形成ステップの間、少なくとも前記接触部分(151)を形成する直接バンドギャップの半導体窒化物は、窒化ガリウム(GaN)と、窒化アルミニウム(AlN)と、窒化インジウム(InN)と、xが0から1であるInGa1−xNタイプの窒化インジウムガリウムと、x+yが0から1であるAlInGa1−x−yNタイプの窒化アルミニウムガリウムインジウムとを備えるグループから選択される、請求項1からのいずれか1項に記載の製造法。
【請求項8】
少なくとも1つの半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)の形成ステップは、以下のサブステップ、すなわち、
‐前記バッファ層(110)の上にいわゆるマスキング層(120)を析出させるステップであって、該マスキング層(120)を形成する材料は、半導体窒化物の適合されたエピタキシャル析出の間、前記マスキング層(120)の上に析出なしに、前記バッファ層(110)の上で半導体窒化物の選択的成長を可能にするよう適合されているステップと、
‐前記バッファ層(110)に至る少なくとも1つの開口部(121)を前記マスキング層(120)に形成するステップと、
‐選択的エピタキシャル析出によって、各開口部(121)にマイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)を形成するステップとを備える、請求項1からのいずれか1項に記載の製造法。
【請求項9】
電磁放射線を放出するために考案された半導体構造(10)であって、
‐第1面と第2面(100a、100b)とを備える半導体基板(100)と、
‐前記第1面(100a)と接触している結晶バッファ層(110)と、
‐該バッファ層(110)と接触している少なくとも1つの半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)であって、前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)の少なくとも1つのいわゆる接触部分(151)は主に直接バンドギャップの半導体窒化物から成り、前記接触部分(151)は、前記バッファ層(110)と接触している前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)の部分であり、該マイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)は、極性化されると電磁放射線を放出するよう適合されたアクティブ区域(152)も持つ、半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)と、
‐前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)とそのアクティブ区域(152)とを極性化するよう適合された、前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)の電気的結合を行う手段とを備え、
前記バッファ層(110)は、厚さの少なくとも一部を覆って、前記基板の前記第1面(100a)と接触している第1区域(110、111)を持ち、該第1区域(110、111)は主にMgの窒化マグネシウムから成り、前記バッファ層(110)の厚さは2nmから10nmである、半導体構造(10)。
【請求項10】
電磁放射線を受信しかつそれを電気信号に変換できる半導体構造(10)であって、前記構造(10)は、
‐第1面と第2面(100a、100b)とを備える半導体基板(100)と、
‐前記第1面(100a)と接触している結晶バッファ層(110)と、
‐該バッファ層(110)と接触している少なくとも1つの半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)であって、前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤの接触部分(151)と呼ばれる少なくとも1つの部分は主に直接バンドギャップの半導体窒化物から成り、前記接触部分(151)は、前記バッファ層(110)と接触している前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)の部分であり、該マイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)は、電磁放射線を受信しかつそれを電気信号に変換するよう適合されたアクティブ区域(152)も持つ、半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤと、
‐電気信号を読み出すために、前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)の電気的結合を可能にするよう適合された、電気的結合手段とを備え、
前記バッファ層(110)は、厚さの少なくとも一部を覆って、前記基板(100)の前記第1面(100a)と接触している第1区域を持ち、該第1区域(110、111)は主にMgの窒化マグネシウムから成り、前記バッファ層(110)の厚さは2nmから10nmである、半導体構造(10)。
【請求項11】
光電気構造(10)の製造法であって、該構造は請求項あるいは10に記載の構造であり、前記製造法は以下のステップ、すなわち、
‐請求項1に記載のマイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)の製造法に従って、少なくとも1つのマイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)を形成するステップと、
‐前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤ(150)のための電気的結合手段を形成するステップとを備える、製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射線の検出と測定と放出の分野に関し、かつ電磁放射線の検出と測定と放出のために用いられる装置に関する。
【0002】
ここ10年間は、光電子工学と光電子工学に由来する装置の大きな発展によって特徴付けられている。このような装置は、電磁放射線の検出、測定あるいは放出に適した半導体構造を用いる。
【0003】
これらの構造は、検出と測定の場合には電磁放射線受信のための、あるいは電磁放射線放出のための、高効率のポテンシャルがあるマイクロワイヤあるいはナノワイヤをベースにした半導体構造を含む。これらの効率はまた、このような構造の使用が光起電用途に想定され得るほど、充分に高いものでもある。
【0004】
このような構造は、それらが電磁放射線の検出、測定あるいは放出にあるいは光起電用途に使われるかどうかに関係なく、より一般的には光電気構造と呼ばれてよい。
【0005】
それゆえ、上記と本文書の残りの箇所において、光電気構造という用語は、電気信号を電磁放射線にあるいはその逆に変換するのに適したあらゆるタイプの半導体構造のことを指す。
【0006】
本発明はより具体的には、少なくとも1つの半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤの製造法と、電磁放射線を放出するであろう半導体構造と、電磁放射線を受信しかつそれを電気信号に変換できる半導体構造と、光電気構造の製造法とに適用可能である。
【背景技術】
【0007】
マイクロワイヤあるいはナノワイヤを基礎とする半導体光電気構造は大抵、半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤと、前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤの電気的結合を行う手段とが備わった半導体支持体を備える。前記各マイクロワイヤあるいはナノワイヤは、半導体接合点として、電気信号を電磁放射線にあるいはその逆に変換可能にできる、アクティブ区域を持つ。
【0008】
このアクティブ区域は、電磁放射線を電気信号にあるいはその逆に変換可能にするために、電磁放射線の吸収かあるいは放出に適合されなくてはならない。これらの場合のどちらも、適合には特に、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの各アクティブ区域が、少なくとも部分的に1つあるいはいくつかの直接バンドギャップの半導体材料から作られることが必要である。
【0009】
直接バンドギャップの半導体材料とは、前記半導体材料のエネルギー分散図において、価電子帯の最大エネルギーの波数ベクトル値kと伝導帯の最小エネルギーの波数ベクトル値kがほぼ同じである半導体材料を意味する。
【0010】
光電気用途のために最もよく用いられる直接バンドギャップの半導体材料は、窒化ガリウム(GaN)のような半導体窒化物である。マイクロワイヤあるいはナノワイヤの製造法によって強いられた技術的限界により、このようなアクティブ区域のために、支持体と接触している各マイクロワイヤあるいはナノワイヤの部分もまた、直接バンドギャップの半導体窒化物から作られる。
【0011】
それゆえ、アクティブ区域が少なくとも部分的に直接バンドギャップの半導体窒化物から作られている、マイクロワイヤあるいはナノワイヤを基礎とする光電気構造の製造法は、基板上でマイクロワイヤあるいはナノワイヤを形成する方法を実行するためのステップを含み、当該ステップにおいては、基板と接触しているマイクロワイヤあるいはナノワイヤの部分は、半導体窒化物から作られている。
【0012】
マイクロワイヤあるいはナノワイヤを形成するこのような方法は、大抵以下のステップ、すなわち、
‐第1面と第2面とを備える半導体基板を準備するステップと、
‐基板の第1面の上にいわゆるバッファ層を形成するステップであって、当該層は窒化アルミニウムから成るステップと、
‐バッファ層の上に半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤを形成するステップであって、前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤのいわゆる接触部分は主に直接バンドギャップの半導体窒化物から成り、前記部分はバッファ層と接触しているマイクロワイヤあるいはナノワイヤの部分であるステップとを備える。
【0013】
バッファ層の形成ステップは、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの形成に適したステップと組み合わさったいくつかのタイプの基板に補足的なものであるが、それにもかかわらず、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの結晶品質を保証するために一般的に用いられるステップである。
【0014】
バッファ層は、基板結晶格子とマイクロワイヤあるいはナノワイヤの結晶格子との間の結晶格子整合を行うために用いられ得、それゆえヘテロエピタキシーに関連する制約を減らす。マイクロワイヤあるいはナノワイヤ成長ステップの間用いられるいくつかのタイプのエピタキシープロセスのために、基板の表面を、この表面と、基板の表面上で欠陥を引き起こしかねないガリウム(Ga)などのマイクロワイヤあるいはナノワイヤを形成するいくつかの要素との間の起こり得る相互作用から保護することもできる。
【0015】
結晶格子パラメータを適合させかつ基板を保護する機能を与える既知の1つの方法は、窒化アルミニウム(AlN)からバッファ層を形成することである。
【0016】
このようなバッファ層は、基板を汚染するいかなるリスクもなしに高品質のマイクロワイヤあるいはナノワイヤの形成を可能にしているが、それにもかかわらず、多くのデメリットがある。窒化アルミニウムは、非常に大きいバンドギャップの半導体であり、それゆえ伝導率が低く、それゆえ半絶縁性材料のように作用する。
【0017】
それゆえこれが、このようなバッファ層が、基板とマイクロワイヤあるいはナノワイヤとの間の電気抵抗を小さくできない理由である。結果的に、このようなバッファ層を用いる光電気構造は大抵、使用電圧が比較的高い。
【0018】
その上、窒化アルミニウムのバッファ層には、アルミニウム極性を有する核形成面がある。窒化ガリウムのマイクロワイヤあるいはナノワイヤの成長には、理想的には、窒素極性を有する核形成面が必要である。実際、アルミニウム極性などの窒素とは別の極性があれば、ピラミッド型構造などの別のタイプの構造の形成を避けるために、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの成長状況は、厳密に決定されなくてはならない。それで窒化アルミニウムバッファ層の使用には、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの形成ステップが、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの代わりにピラミッド型の構造の成長を引き起こさないようなやり方で、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの製造法のキャリブレーションの長くてコストのかかるプロセスが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、これらのデメリットを克服するために考案されている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
それゆえ、本発明の一目的は、基板上の少なくとも1つのマイクロワイヤあるいはナノワイヤの製造法を開示することであり、この方法は、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの形成ステップに用いられるエピタキシャル成長方法に関係なく、結晶品質が良好で、基板とナノワイヤとの間の電気抵抗が従来技術に従った方法を用いて得られたマイクロワイヤあるいはナノワイヤの抵抗よりも小さい、少なくとも1つのマイクロワイヤあるいはナノワイヤをもたらすことができる。
【0021】
本発明の別の目的は、窒素極性化された核形成面で実現されるマイクロワイヤあるいはナノワイヤであって、基板とマイクロワイヤあるいはナノワイヤとの間の電気抵抗が従来技術の方法で得られるマイクロワイヤあるいはナノワイヤに比べて減少しているマイクロワイヤあるいはナノワイヤを形成するステップを備える、少なくとも1つの半導体窒化物マイクロワイヤあるいはナノワイヤの製造法を提供することである。これを達成するために、本発明は、光電気構造の形成に使われる少なくとも1つの半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤの製造法に関する。前記方法は、以下のステップ、すなわち、
‐第1面と第2面とを備える半導体基板を準備するステップと、
‐基板の第1面の上にバッファ層と呼ばれる結晶層を形成するステップであって、バッファ層は、厚さの少なくとも一部を覆って、第2面と接触している第1区域を持ち、第1区域は主にMgの窒化マグネシウムから成るステップと、
‐バッファ層の上に少なくとも1つの半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤを形成するステップであって、接触部分と呼ばれる、前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤの少なくとも1つの部分は主に、直接バンドギャップの半導体窒化物から成り、前記部分はバッファ層と接触しているマイクロワイヤあるいはナノワイヤの部分であるステップとを備える。
【0022】
「主に窒化マグネシウムから成る」とは、窒化マグネシウムの比率が95%以上の組成のことであり、この比率は好ましくは99%より高い。
【0023】
「主にある材料から成る」というのも、組成が前記材料の比率95%以上であるという意味であり、この比率は好ましくは99%より高い。
【0024】
主にMgの窒化マグネシウムから成る区域があることと、その結晶品質ゆえに、そのようなバッファ層は、ケイ素あるいは炭化ケイ素の基板などの半導体基板と比べて結晶格子パラメータの整合性が良好な、主に半導体窒化物から成る少なくとも1つのマイクロワイヤあるいはナノワイヤの成長と、それゆえ結晶欠陥の濃度が低い少なくとも1つのマイクロワイヤあるいはナノワイヤの成長とを可能にする。その上、従来技術で用いられるバッファ層に比べて、そのような層のインターフェース抵抗は小さい。なぜなら、その禁制帯が、従来技術のバッファ層よりも小さいからである。それゆえそのような層は、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの分極電圧が低い構造の製造を可能にし、各マイクロワイヤあるいはナノワイヤとバッファ層との間のインターフェース抵抗が小さくなる。
【0025】
その上、マイクロワイヤあるいはナノワイヤが、多数キャリアが電子である第1の伝導タイプを持つとき、バッファ層における窒素の相対的比率は、バッファ層がマイクロワイヤあるいはナノワイヤと同じ伝導タイプを持つように、コントロールされ得る。
【0026】
しかもそのようなバッファ層によって、窒素極性を持ちかつその結果特に半導体窒化物マイクロワイヤあるいはナノワイヤの成長に適合された、マイクロワイヤあるいはナノワイヤを形成するための核形成面が提供され得る。
【0027】
マイクロワイヤあるいはナノワイヤの接触部分は、窒化ガリウムから構成されていてよいであろう。
【0028】
マイクロワイヤあるいはナノワイヤの形成は、マイクロワイヤあるいはナノワイヤすなわちワイヤタイプの構造を製造するのに特に適した窒素極性を示す核形成面上で実現されるので、そのような方法は特に、窒化ガリウムマイクロワイヤあるいはナノワイヤを提供するのに適している。
【0029】
実際、このような極性を示す核形成層によって、ピラミッド形状ではなくワイヤ形状のマイクロ構造あるいはナノ構造を獲得できるであろう。それゆえこのようなワイヤタイプの構造あるいはマイクロワイヤあるいはナノワイヤは、m結晶面に沿った少なくとも1つの垂直部分を表わす。m結晶面に沿ったこの垂直部分は、核形成層と接触しているワイヤの部分の高さに設置され得る。接触しているマイクロワイヤあるいはナノワイヤの部分は、バッファ層と接触している面で、窒素極性を示し得る。
【0030】
バッファ層の形成ステップにおいて、バッファ層は主にMgの窒化マグネシウムから成ってよい。
【0031】
それゆえ、バッファ層の形成ステップの後、基板の第1面の反対側のバッファ層の表面は、バッファ層の別の区域を形成する必要なしに、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの成長に適している。
【0032】
バッファ層の形成ステップにおいて、バッファ層は、厚さを覆って、基板の第1面の反対側にあるバッファ区域の表面を備える少なくとも1つの第2区域を持ち、前記第2区域は主に窒化マグネシウム以外の、かつ好ましくはマイクロワイヤあるいはナノワイヤの接触部分とほぼ同じ組成の、直接バンドギャップの半導体窒化物から成る。
【0033】
バッファ区域の表面を含むこのような第2区域は、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの接触部分を形成する材料との良好な結晶格子適合性を、成長表面に提供することができ、それゆえマイクロワイヤあるいはナノワイヤの形成ステップの間マイクロワイヤあるいはナノワイヤに結晶欠陥ができるリスクを制限する。第2区域も、多数キャリアの濃度がほとんど同一のマイクロワイヤあるいはナノワイヤと同種の伝導性を持ち、それゆえ前記区域とマイクロワイヤあるいはナノワイヤとの間のインターフェース抵抗を制限する。
【0034】
バッファ層の形成ステップは、1nmから100nmの厚さの層を形成するステップであってよく、厚さは好ましくは2nmから10nmである。
【0035】
バッファ層のこのような厚さは、半導体基板と比べて、良好な結晶格子適合性をもたらし得る。この厚さは、有機金属気相エピタキシー(MOVPE)などの成長ステップを用いるマイクロワイヤあるいはナノワイヤの製造法のために、基板を汚染するリスクも制限する。
【0036】
バッファ層の形成ステップにおいて、第1区域は、主にMgの窒化マグネシウム好ましくは単結晶から成ってよい。
【0037】
マグネシウムと窒素とから作られるこのような組成は、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの成長ために、結晶品質の高いバッファ層をもたらすことができる。その上、バッファ層のこの品質は、適したタイプと多数キャリアの濃度とを有するマイクロワイヤあるいはナノワイヤの供給を可能にする。同様に、単結晶バッファ層は、バッファ層の結晶面に直接関連した所与の方向に沿って、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの成長をもたらす。
【0038】
バッファ層の形成ステップは、多数キャリアが電子である伝導性を有する層を形成するステップであってよく、半導体窒化物は少なくとも、バッファ層と同じ伝導タイプを有する接触部分を形成する。
【0039】
少なくとも1つのマイクロワイヤあるいはナノワイヤの形成ステップの間、少なくとも接触部分を形成する半導体窒化物は、窒化ガリウム(GaN)と、窒化アルミニウム(AlN)と、窒化インジウム(InN)と、xが0から1であるInGa1−xNタイプの窒化インジウムガリウムと、x+yが0から1であるAlInGa1−x−yNタイプの窒化アルミニウムガリウムインジウムとを備えるグループから選択されてよい。
【0040】
これらの半導体窒化物は、紫外線から遠赤外線の範囲内で電磁放射線の検出、測定あるいは放出に適したマイクロワイヤあるいはナノワイヤを結果的にもたらすことができる。
【0041】
少なくとも1つの半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤの形成ステップは、以下のサブステップ、すなわち、
‐バッファ層の上にいわゆるマスキング層を析出させるステップであって、マスキング層を形成する材料は、半導体窒化物の適合されたエピタキシャル析出の間、マスキング層の上に析出なしに、バッファ層の上で半導体窒化物の選択的成長を可能にするよう適合されているステップと、
‐バッファ層に至る少なくとも1つの開口部をマスキング層に形成するステップと、
‐選択的エピタキシャル析出によって、各開口部にマイクロワイヤあるいはナノワイヤを形成するステップとを備えてよい。
【0042】
少なくとも1つのマイクロワイヤあるいはナノワイヤを形成するこのようなステップは、基板と当該基板に形成された他の構造とに対して各マイクロワイヤあるいはナノワイヤの位置をコントロールする可能性を有して、選択的かつ完全にコントロールされる成長を可能にする。
【0043】
本発明は、電磁放射線を放出するために考案された半導体構造にも関し、
‐第1面と第2面とを備える半導体基板と、
‐第1面と接触している結晶バッファ層と、
‐バッファ層と接触している少なくとも1つの半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤであって、前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤの少なくとも1つのいわゆる接触部分は直接バンドギャップの半導体窒化物から作られ、前記接触部分は、バッファ層と接触しているマイクロワイヤあるいはナノワイヤの部分であり、マイクロワイヤあるいはナノワイヤは、極性化されると電磁放射線を放出するよう適合されたアクティブ区域も持つ、半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤと、
‐マイクロワイヤあるいはナノワイヤとそのアクティブ区域とを極性化するよう適合された、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの電気的結合を行う手段とを備え、
バッファ層は、厚さの少なくとも一部を覆って、基板の第2面と接触している第1区域を持ち、第1区域は主にMgの窒化マグネシウムから成る。
【0044】
それゆえ、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ各々の結晶特性が良好なので、そのような構造は、従来技術の構造よりも低い作動電圧を持ちながら、良好な放出効率を持ち得る。なぜなら、各マイクロワイヤあるいはナノワイヤと基板との間の電気抵抗が小さいからである。
【0045】
本発明は、電磁放射線を受信しかつそれを電気信号に変換できる半導体構造にも関し、前記構造は、
‐第1面と第2面とを備える半導体基板と、
‐第1面と接触している結晶バッファ層と、
‐バッファ層と接触している少なくとも1つの半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤであって、前記マイクロワイヤあるいはナノワイヤの接触部分と呼ばれる少なくとも1つの部分は、直接バンドギャップの半導体窒化物から作られ、前記接触部分は、バッファ層と接触しているマイクロワイヤあるいはナノワイヤの部分であり、マイクロワイヤあるいはナノワイヤは、電磁放射線を受信しかつそれを電気信号に変換するよう適合されたアクティブ区域も持つ、半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤと、
‐電気信号を読み出すために、マイクロワイヤあるいはナノワイヤの電気的結合を可能にするよう適合された、電気的結合手段とを備え、
バッファ層は、厚さの少なくとも一部を覆って、基板の第2面と接触している第1区域を持ち、第1区域は主にMgの窒化マグネシウムから成る。
【0046】
それゆえ、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ各々の結晶特性が良好なので、そのような構造は、基板とマイクロワイヤあるいはナノワイヤ各々との間の電気抵抗ゆえに、従来技術に従った構造で起こり得るものより少ない損失で、電磁放射線を検出および/あるいは測定するための、良好なキャリア光生成効率を持っていてよい。
【0047】
本発明は、本発明に従った光電気構造の製造法にも関し、前記製造法は以下のステップ、すなわち、
‐本発明に従ったマイクロワイヤあるいはナノワイヤの製造法に従って、少なくとも1つのマイクロワイヤあるいはナノワイヤを形成するステップと、
‐マイクロワイヤあるいはナノワイヤのための電気的結合手段を形成するステップとを備える。
【0048】
そのような方法は結果的に、効率の良い光電気構造をもたらし得る。なぜなら、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ各々は、良好な結晶品質と比較的低い使用電圧も持つからであり、基板とマイクロワイヤあるいはナノワイヤとの間のインターフェース抵抗は、主に窒化マグネシウムから成る第1区域の存在ゆえに、より小さい。
【0049】
本発明は、添付の図に関連して以下の例示された実施形態を読んだ後によりよく理解されるであろう。当該実施形態は、インフォメーションのためにのみ与えられ、かつ決して限定されるものではない。図に示されるのは以下である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明の第1実施形態に従った半導体構造である。
図2A図1で示された半導体構造を製造する、様々なステップである。
図2B図1で示された半導体構造を製造する、様々なステップである。
図2C図1で示された半導体構造を製造する、様々なステップである。
図2D図1で示された半導体構造を製造する、様々なステップである。
図2E図1で示された半導体構造を製造する、様々なステップである。
図2F図1で示された半導体構造を製造する、様々なステップである。
図3A】半導体構造の第2実施形態を製造する、様々なステップである。
図3B】半導体構造の第2実施形態を製造する、様々なステップである。
図3C】半導体構造の第2実施形態を製造する、様々なステップである。
図3D】半導体構造の第2実施形態を製造する、様々なステップである。
図3E】半導体構造の第2実施形態を製造する、様々なステップである。
図3F】半導体構造の第2実施形態を製造する、様々なステップである。
図4】本発明の1つの可能性に従ったマイクロワイヤである。
【0051】
様々な図の同一のあるいは類似のあるいは同等の部材は、異なる図の間での比較を容易にするために、同じ参照番号が印されている。
【0052】
図中で示される異なる部材は、図をより読みやすくするために、必ずしも同じ縮尺で描かれているわけではない。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、電磁放射線を放出するよう適合されている本発明の第1実施形態に従った半導体構造10を、図式的に示している。
【0054】
そのような半導体構造10は、
‐第1分極性電極171と、
‐第1面100aと第2面100bとを備える半導体基板100であって、第2面は第1分極性電極171と接触している半導体基板100と、
‐基板100の第1面100aと接触している、いわゆるバッファ層110と、
‐バッファ層110と接触しているマスキング層120であって、マスキング層120は3つの開口部121を持つマスキング層120と、
‐開口部121の1つを通ってバッファ層110とそれぞれ接触している3つの半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150であって、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150各々は、バッファ層110と接触している接触部分と呼ばれる部分151と、接触部分151と接触しているアクティブ区域152と、アクティブ区域152と接触している極性部分と呼ばれる部分153とを備える半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150と、
‐極性部分153でマイクロワイヤあるいはナノワイヤ150各々と接触している分極性電極172とを備える。
【0055】
上記と本文書の残りの箇所において、半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤという用語は、3つの寸法を有する半導体構造のことであり、そのうち2つの寸法は、5nmから2.5μmの同じ桁であり、第3の寸法は、他の2つの寸法の最大のものよりも少なくとも10倍大きい。
【0056】
基板100は、炭化ケイ素、サファイアあるいはゲルマニウムで作られたケイ素基板などの半導体基板である。基板100は、ほぼ平面である。
【0057】
基板100は、第1の伝導タイプを持つ。基板100は、基板100とマイクロワイヤあるいはナノワイヤ150との間の電気抵抗に関する電気損失を制限するために、高い濃度の多数キャリアを持つ。
【0058】
それゆえ、基板100は、その伝導タイプが大部分のキャリアが電子であるようなケイ素基板である、図1に示される実施形態に従えば、多数キャリアの濃度は、1019cm−3のオーダーとして選択され得る。
【0059】
基板100の第2面100bは、第1金属電極171と接触している。
【0060】
第1電極171は、基板100の第2面100b上に延在する伝導層の形状をしている。第1電極171は、基板100と第1電極171との間にオーム接点を生み出すように、基板100の伝導タイプに適合された伝導性材料から成る。多数キャリアが電子であるケイ素から基板100が作られる、図1に示される実施形態において、第1電極171を形成する材料は、たとえばニッケルシリサイドNiSi、アルミニウムAlあるいはチタニウムTiであってよい。
【0061】
基板100の第1面100aは、バッファ層110と接触している。
【0062】
バッファ層110は、基板100の第1面100a上に延在する半導体層である。バッファ層110は、主にMgの窒化マグネシウムから成り、言い換えれば、少なくとも95%の窒化マグネシウムから成る。バッファ層110は結晶層であり、好ましくは単結晶である。バッファ層110は、厚さが1nmから100nm、好ましくは1nmから10nmである。
【0063】
本発明の好ましい一実施形態に従えば、バッファ層110は、主にMgの窒化マグネシウムから成る。
【0064】
バッファ層110は、バッファ層110と基板100との間のインターフェース抵抗を制限するために、第1の伝導タイプを持つ。この第1実施形態において、第1の伝導タイプは、中の多数キャリアが電子であるタイプであり、かつバッファ層内の多数キャリアの濃度が少なくとも1×1018cm−3に等しくなるように、過剰な比率の窒素がある。
【0065】
バッファ層は、基板100とは反対側の面に、窒素(N)極性を持つ。
【0066】
これによって、たとえば窒化ガリウムなどの半導体窒化物のマイクロワイヤあるいはナノワイヤの成長を得ることができる。ワイヤは、m結晶面に沿った垂直部分を備える垂直構造である。それゆえ垂直部分は、バッファ層110と接触している部分であり得る。マスキング層120は、基板100の反対側にある、バッファ層110の表面に延在する。マスキング層120は、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150を作り上げる要素が、エピタキシャル析出の間、析出されない材料から作られる。マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150のためのマスキング層120を形成する材料は、ヒ化ガリウム(GaAs)、窒化ケイ素(SiN)、チタニウム(Ti)、窒化チタン(TiN)あるいは二酸化ケイ素(SiO)であってよい。マスキング層120の厚さは、1nmから50nmであってよい。
【0067】
マスキング層120は、貫通する3つの開口部121を備え、これらの開口部121各々は、バッファ層110の表面上に開口している。開口部121は、ほぼ円形の形状であり、直径は、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150の直径に応じて選択される。
【0068】
開口部121各々は、1つのマイクロワイヤあるいはナノワイヤ150を含む。
【0069】
マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150各々は、バッファ層110の表面に対してほぼ垂直の方向に伸びた半導体構造である。各マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150は、一般的に伸ばされた円柱形の形状である。マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150各々の直径は、これらを含む半導体構造10の用途に応じて選択される。たとえば、図1に示される実施形態において、各マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150の直径は、100nmから5μmである。
【0070】
各マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150の高さは、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150の直径の少なくとも10倍よりも大きく、1μmから50μmである。
【0071】
各マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150は、バッファ層110の表面と接触している接触部分151を備える。
【0072】
図1に見られ得るように、各接触部分151は、対応するマイクロワイヤあるいはナノワイヤ150の大部分に相当する。各接触部分151は主に、第1の伝導タイプを有する直接バンドギャップの半導体窒化物から成る。接触部分151が作られる半導体窒化物は、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150を備える半導体構造10の用途に応じて適合される。
【0073】
それゆえ、図1で示される実施形態において、各接触部分151は窒化ガリウム(GaN)から作られ、多数キャリアの濃度は1×1018cm−3から5×1018cm−3の間である。ターゲット用途に応じて、接触部分151各々が作られる材料は、窒化ガリウム(GaN)と、窒化アルミニウム(AlN)と、窒化インジウム(InN)と、xが0から1であるInGa1−xNタイプの窒化インジウムガリウムと、x+yが0から1であるAlInGa1−x−yNタイプの窒化アルミニウムガリウムインジウムとを備えるグループから選択されてよい。
【0074】
各アクティブ区域152は、対応するマイクロワイヤあるいはナノワイヤ150の接触部分151と接触している。各アクティブ区域152は、対応する接触部分151の周辺部の一部上かつ端部において、接触部分151を覆う層であり、接触部分151の前記端部は、バッファ層110の反対側の端部である。対応する接触部分151の1つの端部と周辺部とに同時に接触している、アクティブ区域152のこのような構成は、シェルタイプと呼ばれる。
【0075】
アクティブ区域152は、少なくとも部分的に、第1の伝導タイプとは反対の第2の伝導タイプを有する直接バンドギャップの半導体窒化物から作られる。
【0076】
それゆえ、各アクティブ区域152は、対応する接触部分151との半導体接合点を形成する。アクティブ区域152は、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ各々の放出効率を高めるために、多重量子井戸などの閉じ込め手段を備えてよい。
【0077】
図1に示される実施形態において、アクティブ区域152は、InGa1−xNの窒化インジウムガリウムから作られる。この実施形態に従えば、多重量子井戸は、インジウムInとガリウムGaの2つの異なる相対組成をアクティブ区域152の厚さにわたって交互に置くことによって得られる。この実施形態において、各アクティブ区域152内の多数キャリアの濃度は、1×1016cm−3から1×1018cm−3の間であり、厚さにわたって変えられてよい。
【0078】
アクティブ区域152はそれ自体、当業者によく知られているので、本文書内でさらに詳細に記述されることはない。
【0079】
各アクティブ区域152は、対応するマイクロワイヤあるいはナノワイヤの極性部分153と、外縁部の周りで接触している。
【0080】
極性部分153は、対応するマイクロワイヤあるいはナノワイヤ150の接触を可能にし、構造10が電磁放射線の放出に適合された構造である場合には、電子ブロック層としても作用する。
【0081】
そのような電子ブロック層の機能は、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150各々の放出効率を高めるために、アクティブ区域152において、電子・正孔再結合の場所を決めるのを可能にする。
【0082】
極性部分153は好ましくは、主に直接バンドギャップの半導体窒化物から成る。極性部分153各々は、第2の伝導タイプを持つ。各極性部分153における多数キャリアの濃度は、1×1017cm−3から1×1018cm−3の間である。
【0083】
図1に示される実施形態において、電子ブロック層としても作用する極性部分153は、アクティブ区域152と接触している、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)から作られる第1区域153aを備える。
【0084】
この実施形態に従えば、第2電極172とアクティブ区域との間の良好な電気的接触をもたらすために、各極性部分153は、極性部分153の第1区域153aと接触している、窒化ガリウム(GaN)から作られる第2区域153bも備える。
【0085】
各極性部分153は、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150各々の極性化を可能にするために、その第2区域153bを通じて、第2電極172と接触している。
【0086】
第2電極172は、極性部分153でマイクロワイヤあるいはナノワイヤ150各々の極性化を可能にするよう適合されており、かつマイクロワイヤあるいはナノワイヤ150によって放出されたあるいは受信された電磁放射線が貫通するのを可能にするようにも適合されている。
【0087】
これら2つの機能は、図示されていないが、異なる2つのステージ、すなわちマイクロワイヤあるいはナノワイヤのすべての極性部分を接触させるための、少なくとも部分的に透明な薄い伝導層から形成される第1ステージと、伝導層の表面のわずかな部分のみを覆い、たとえばくしの形をした第2分配ステージとから形成される第2電極を使って得られてよい。第2分配ステージの厚さは、直列抵抗を減らすために、第1ステージを形成する伝導層の厚さよりも大きい。
【0088】
この構成に従えば、第1ステージは、ニッケル金(Ni−Au)あるいはインジウムスズ酸化物(ITO)の層から形成されてよい。この構成における第2ステージは、ニッケル金のくしから形成されてよい。
【0089】
一緒に、第2電極と第1電極とは、各マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150とそのアクティブ区域152とを極性化するよう適合された、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150を結合する手段を形成する。
【0090】
そのような半導体構造10は、図2Aから図2Fに示されるような製造法を用いて、得ることができる。
【0091】
第1実施形態に従った、半導体構造10の製造法は、以下のステップ、すなわち、
‐半導体基板100を準備するステップと、
図2Aから図2Fには示されていない第1電極171を、基板100の第2面上に形成するステップと、
図2Aに示されるように、バッファ層110を形成するステップであって、バッファ層110は主にMgの窒化マグネシウムから成り、前記層は結晶であるステップと、
‐マスキング層120を析出するステップと、
図2Bに示されるように、マスキング層120を貫通する開口部121を形成するステップであって、開口部121のこの形成は場合により、リソグラフィーサブステップとエッチングサブステップとの組み合わせによって得られるステップと、
図2Cから図2Eに示されるように、開口部121にマイクロワイヤあるいはナノワイヤ150を形成するステップと、
図2Fに示されるように、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150の極性部分153各々と接触している第2電極172を形成するステップとを備える。
【0092】
バッファ層110を形成するためのステップは、有機金属気相エピタキシー、分子線エピタキシー、ハイブリッド気相エピタキシーあるいは反応性陰極スパッタリングなどの析出法に従った、少なくとも1つのエピタキシャル析出サブステップを用いて行われる。
【0093】
バッファ層110のための析出法は、バッファ層110に必要な化学量論に応じて選択される。それゆえ、Mgタイプの化学量論のために、析出法は、有機金属気相エピタキシー、分子線エピタキシー、ハイブリッド気相エピタキシーなどの析出法の中から選択されてよい。Mgタイプの化学量論のために、析出法は、反応性陰極スパッタリングや反応性レーザーアブレーションなどの固体マグネシウムターゲットを用いる。
【0094】
マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150の形成ステップは、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ各々のための接触部分151とアクティブ区域152と極性部分153とを引き続いて形成するために、エピタキシー析出サブステップによって行われてよい。
【0095】
これらのエピタキシー析出サブステップは、有機金属気相エピタキシー、分子線エピタキシー、ハイブリッド気相エピタキシーなどの析出法を利用してよい。これらのサブステップは当業者に知られているので、本文書内でさらに詳細に記述されることはない。
【0096】
図3Aから図3Fは、本発明の第2実施形態に従った、半導体構造10を形成するための方法を示している。このような構造は、バッファ層110が主に半導体窒化物から成る第2区域112を備える点で、本発明の第1実施形態に従った構造とは異なっており、前記第2区域112は、基板100の第1面100aの反対側にあるバッファ層110の表面を含む。
【0097】
この第2実施形態に従ったバッファ層110は、基板100の第面100aと接触している第1区域111を備え、それからバッファ層110の表面を含む第2区域112を、その厚さを横切って備える。
【0098】
バッファ層110の第1区域111は、第1実施形態に従ったバッファ層110と同じ特性を持つ。
【0099】
バッファ層110の第2区域112は主に、第1の伝導タイプを有する半導体窒化物から成る。マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150の形成ステップの間、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150の成長を最適化するために、バッファ層110の第2区域は、好ましくは、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150の接触部分151とほぼ同じ組成を持つ。バッファ層110の第2区域112の厚さは1nmから1μmであり、好ましくは100nmのオーダーである。
【0100】
この第2実施形態に従った半導体構造10の製造法は、図3A図3Bとに示されるように、第1区域111と第2区域112とを連続して形成するために、バッファ層110の形成ステップが、バッファ層110の析出の間に析出される材料を変化させる点で、第1実施形態に従った半導体構造の製造法とは異なっている。図3Cから図3Fに示されるように、製造法の残りのステップは、第1実施形態に従った構造の製造法におけるステップと同一である。
【0101】
図4は、マイクロワイヤあるいはナノワイヤのアクティブ区域152*が、シェルタイプのアクティブ区域の代わりに、軸タイプのアクティブ区域152*である、本発明の1つの可能性を説明している。このようなアクティブ区域152*は、当該アクティブ区域152*が、対応する接触部分の延在に沿って存在する点と、前記アクティブ区域152*と対応する接触部分151との間の接触が、接触部分151の端部のみにおいてである点とで、上述の2つの実施形態に従ったアクティブ区域とは異なっている。
【0102】
この可能性に従えば、各極性部分153*も、対応する接触部分151とアクティブ区域152*との延在に沿って存在し、各極性部分153*と対応するアクティブ区域152*との間の接触は、アクティブ区域152*の端部でのみ行われる。
【0103】
この可能性に従った半導体構造10の製造法と、第1実施形態に従った半導体構造10の製造法との唯一の違いは、軸タイプのアクティブ区域を含むマイクロワイヤあるいはナノワイヤの形成に適合された、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150の形成ステップにある。
【0104】
上述の様々な実施形態あるいは可能性において、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150は、開口部121を有するマスキング層120を使っての選択的成長によって得られるマイクロワイヤあるいはナノワイヤである。しかしながら、本発明の範囲外に出ることなく、マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150は、触媒による局所的成長あるいは自己組織化成長によって形成されるかもしれない。
【0105】
上述の様々な実施形態あるいは可能性は、電磁放射線を放出するよう適合された半導体構造10に適用可能であるが、当業者は、このような半導体構造10を、電磁放射線を受信しかつそれを電気信号に変換するよう容易に適合するかもしれない。このような適合は、各マイクロワイヤあるいはナノワイヤ150のアクティブ区域152を適合することによって、かつ適切な極性化を半導体構造に施すことによって行われる。半導体構造10のこのような適合は、電磁放射線の測定あるいは検出を目的とした半導体構造10か、あるいは光起電用途を目的とした半導体構造10を形成するために、行われてよい。このような適合は、本発明の範囲外に出ることなく、行われてよい。
【0106】
上述の異なる実施形態と可能性とにおける第1の伝導タイプの多数キャリアは電子であるが、第1の伝導タイプの多数キャリアが、本発明の範囲外に出ることなく、孔であることが可能であり、この場合第2の伝導タイプの多数キャリアは電子であろう。
【符号の説明】
【0107】
10 半導体構造
100 半導体基板
100a 第1面
100b 第2面
110 バッファ層
111 第1区域
112 第2区域
120 マスキング層
121 開口部
150 半導体マイクロワイヤあるいはナノワイヤ
151 接触部分
152 アクティブ区域
152* アクティブ区域
153 極性部分
153a 第1区域
153b 第2区域
153* 極性部分
171 第1分極性電極
172 第2分極性電極
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4