特許第6297006号(P6297006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6297006二酸化炭素製造設備及び二酸化炭素製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297006
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】二酸化炭素製造設備及び二酸化炭素製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/50 20170101AFI20180312BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20180312BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20180312BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20180312BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20180312BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   C01B32/50
   B01D53/78
   B01D53/14 210
   B01D53/14 220
   B01D53/50 200
   B01D53/62
   B01D53/04
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-69684(P2015-69684)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-188161(P2016-188161A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2017年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390022873
【氏名又は名称】NSプラント設計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】若村 修
(72)【発明者】
【氏名】萩生 大介
(72)【発明者】
【氏名】三村 知弘
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−130009(JP,A)
【文献】 特開平10−130010(JP,A)
【文献】 特開2008−126154(JP,A)
【文献】 特開2014−226622(JP,A)
【文献】 特開2013−158685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00−32/991
B01D 53/02−53/12
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を製造するための原料ガスである排ガスが供給される脱硫装置と、
前記脱硫装置からの排ガスとアミン溶液とが気液接触する吸収塔と、
二酸化炭素を吸収した前記吸収塔からのアミン溶液を加熱処理する再生塔と、
還元触媒が収容されており、前記再生塔からの二酸化炭素含有ガスと前記還元触媒とが接触する還元処理装置と、
活性炭が収容されており、前記還元処理装置からの二酸化炭素含有ガスと活性炭とが接触する吸着処理装置と、
を備えるとともに、
前記吸収塔への前記排ガスの供給を止める遮断装置を前記吸収塔の上流側に備え、前記排ガスの硫黄酸化物濃度が所定値を越えたときに前記遮断装置によって前記排ガスの供給を遮断する、二酸化炭素製造設備。
【請求項2】
前記原料ガスは硫黄酸化物を含有し、前記脱硫装置内において、前記原料ガスと、アルカリ水溶液とが気液接触する、請求項1に記載の二酸化炭素製造設備。
【請求項3】
前記原料ガスは、一酸化炭素、メタン、炭素数2〜4の炭化水素及び窒素からなる群から選ばれる一種以上の成分を含有し、当該成分は前記吸収塔から排出される、請求項1又は2に記載の二酸化炭素製造設備。
【請求項4】
前記原料ガスは、硫化水素、芳香族炭化水素及び炭素数5以上の炭化水素からなる群から選ばれる一種以上の成分を含有し、当該成分は前記吸着処理装置における前記活性炭に吸着される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二酸化炭素製造設備。
【請求項5】
前記原料ガスは、NO及び酸素の少なくとも一方を含有し、前記再生塔からの二酸化炭素含有ガスに残存するNO及び酸素は前記還元処理装置の前記還元触媒によって除去される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の二酸化炭素製造設備。
【請求項6】
前記吸収塔において二酸化炭素を吸収したアミン溶液を、一時的に受け入れるとともに滞留させるバッファ部を更に備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の二酸化炭素製造設備。
【請求項7】
二酸化炭素を製造するための原料ガスである排ガスを脱硫処理する第1工程と、
前記第1工程後の排ガスとアミン溶液とを吸収塔において気液接触させる第2工程と、
二酸化炭素を吸収した前記吸収塔からのアミン溶液を再生塔において加熱処理する第3工程と、
前記再生塔からの二酸化炭素含有ガスと還元触媒とを接触させる第4工程と、
前記第4工程後の二酸化炭素含有ガスと活性炭とを接触させる第5工程と、
を備えるとともに、
前記原料ガスの硫黄酸化物濃度が所定値を越えたとき、前記吸収塔へのガスの供給を遮断する工程を備える、二酸化炭素製造方法。
【請求項8】
前記原料ガスは硫黄酸化物を含有し、前記脱硫処理は、前記原料ガスと、アルカリ水溶液とを気液接触させるものであり、前記排ガスの硫黄酸化物濃度を5体積ppm以下にまで低減する、請求項に記載の二酸化炭素製造方法。
【請求項9】
前記原料ガスは、一酸化炭素、メタン、炭素数2〜4の炭化水素及び窒素からなる群から選ばれる一種以上の成分を含有し、当該成分を前記吸収塔から排出する、請求項又はに記載の二酸化炭素製造方法。
【請求項10】
前記原料ガスは、硫化水素、芳香族炭化水素及び炭素数5以上の炭化水素からなる群から選ばれる一種以上の成分を含有し、当該成分は前記第5工程における前記活性炭に吸着される、請求項のいずれか一項に記載の二酸化炭素製造方法。
【請求項11】
前記第4工程において、前記再生塔からの二酸化炭素含有ガスに残存するNOを還元することによって二酸化炭素含有ガスに残存するNO濃度を5体積ppm以下にまで低減する、請求項10のいずれか一項に記載の二酸化炭素製造方法。
【請求項12】
前記吸収塔において二酸化炭素を吸収したアミン溶液を、バッファ部に導入するとともに前記バッファ部において当該アミン溶液を滞留させる、請求項11のいずれか一項に記載の二酸化炭素製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含む排ガスから高い純度の二酸化炭素を製造するための設備及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離する方法として、吸収法(化学吸収法及び物理吸収法)、吸着法(PSA法)並びに膜分離法などが知られている。特許文献1〜3は、二酸化炭素を含む混合ガスをPSA法などによって処理する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−176416号公報
【特許文献2】特許第5325435号公報
【特許文献3】特開昭63−97214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通常、排ガスには二酸化炭素の他に種々の微量成分(不純物)が含まれている。微量成分の例として、硫黄化合物、窒素化合物、炭化水素、一酸化炭素、酸素などが挙げられる。従来の分離方法ではこれらの微量成分が製品二酸化炭素に混入しやすく、より高純度の二酸化炭素を製造するには未だ改善の余地があった。
【0005】
本発明は、比較的コンパクトでありながら高い純度の二酸化炭素を製造可能な二酸化炭素製造設備を提供するとともに、高い純度の二酸化炭素を効率的に製造可能な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、二酸化炭素の分離法の一つである化学吸収法において、設備及びその運転に要するコストを抑えながら高純度の二酸化炭素を製造する技術の開発に取り組んだ。本発明者らは、二酸化炭素の吸収液として使用されるアミン溶液に対して排ガス中の微量成分がどのような特性を有するか、より具体的には上記微量成分がアミン溶液に悪影響を及ぼすか否か、また上記微量成分がアミン溶液に取り込まれるか否かについて評価試験を行った。以下の本発明は、この試験結果によって得られた新たな知見に基づいてなされたものである。
【0007】
すなわち、本発明に係る二酸化炭素製造設備は、二酸化炭素を製造するための原料ガスである排ガスが供給される脱硫装置と、脱硫装置からの排ガスとアミン溶液とが気液接触する吸収塔と、二酸化炭素を吸収した吸収塔からのアミン溶液を加熱処理する再生塔と、還元触媒が収容されており再生塔からの二酸化炭素含有ガスと還元触媒とが接触する還元処理装置と、活性炭が収容されており還元処理装置からの二酸化炭素含有ガスと活性炭とが接触する吸着処理装置とを備える。
【0008】
上記二酸化炭素製造設備は、上流側から下流側に向けて、脱硫装置、吸収塔、再生塔、還元処理装置及び吸着処理装置がこの順序で配置されている。なお、吸収塔及び再生塔はCO化学吸収装置を構成している。
【0009】
上記二酸化炭素製造設備を構成する装置及び塔の配置は、上述の新たな知見、すなわち、原料ガスに含まれる微量成分のアミン溶液に対する特性に本発明者らが着目し、得られた知見に基づくものである。ここでいう微量成分としては、硫黄分(還元性/酸化性)、芳香族系化合物、NO(一酸化窒素及び二酸化窒素)、芳香族化合物、炭化水素、タール分、一酸化炭素及び酸素等を意味する。
【0010】
排ガスに含まれ得る成分のアミン溶液に対する特性及びそれを除去するための対策は以下のとおりである。
(1)硫黄酸化物
硫黄酸化物はアミン溶液の性能を低下させる特性を有する。このため、脱硫装置はCO化学吸収装置(吸収塔及び再生塔)の上流側に配置すべきである。脱硫装置における処理によって排ガスの硫黄酸化物濃度を5質量ppm以下程度にまで低減することが好ましい。脱硫処理に使用する溶液としてはアルカリ水溶液が挙げられる。
【0011】
(2)一酸化炭素、メタン、炭素数2〜4の炭化水素及び窒素
これらの成分は、アミン溶液に特に影響を及ぼさず、また吸収塔内においてアミン溶液と接触してもアミン溶液に吸収されにくい特性を有する。したがって、これらの成分の大部分は吸収塔上部から排出される。ただし、例えばメタンのごく少量はアミン溶液に吸収され又は気泡として混入し、その後、再生塔において気相に移行し、二酸化炭素含有ガスの不純物の一部となる。これらの成分の原料ガス中の量を基準とすると、二酸化炭素含有ガス中のその量は1/50〜1/10000にまで希釈される。したがって、これらの成分については追加の対策を施さなくてもよい。
【0012】
)NO(一酸化窒素及び二酸化窒素)及び酸素
これらの成分は、アミン溶液と接触してもアミン溶液に吸収されにくい特性を有する。したがって、これらの成分の大部分は吸収塔上部から排出される。ただし、例えば酸素のごく少量はアミン溶液に吸収され又は気泡として混入し、その後、再生塔において気相に移行し、二酸化炭素含有ガスの不純物の一部となる。これらの成分の原料ガス中の量を基準とすると、二酸化炭素含有ガス中のその量は1/50〜1/10000にまで希釈される。これらの成分の含有量を更に低減することが必要な場合は、吸着処理装置の上流側に配置した還元処理装置によってNO及び酸素を除去する。NO及び酸素の除去には例えば水素と貴金属触媒を用いた還元分解装置などを使用すればよい。除去処理により、二酸化炭素含有ガスに残存するNO及び酸素の濃度を5質量ppm以下にまで低減してもよい。
【0013】
)硫化水素、芳香族炭化水素(BTX)及び炭素数5以上の炭化水素
これらの成分は、アミン溶液に特に影響を及ぼさないものの、吸収塔においてアミン溶液に吸収される特性を有する。アミン溶液に吸収されたこれらの成分は、再生塔において加熱されることによって気化し、二酸化炭素含有ガスの不純物の一部となる。この二酸化炭素含有ガスにおいては、原料ガスと比較すると二酸化炭素の純度が上がることにより全体のガス量が少なくなるため、これらの成分は濃縮される結果となる。濃縮されたガスを吸着処理装置に供給することで、当該装置において効率的な除去処理が可能である。なお、BTXとはベンゼン、トルエン及びキシレンを意味する。
【0014】
本発明者らはアミン溶液に対する各微量成分の挙動を把握し、これを二酸化炭素製造設備における各装置の配置に反映させた。これにより、各微量成分の効率的な除去処理が実現される。微量成分の種類及び濃度によっては製品である二酸化炭素中に希釈され、そもそも除去処理を行う必要がない成分((2)の成分)もある。他方、アミン溶液に吸収され又は混入した成分(成分(3)及び成分(4))は二酸化炭素含有ガス中に比較的濃縮された状態となる。これらのことから、本発明によれば、設備をコンパクト化できるとともに、使用する吸着材量及び触媒量を低減できる。これに対し、各装置を上記のような配置とせず、例えば、排ガスに含まれる有害な微量成分の全種類を、CO化学吸収装置(吸収塔及び再生塔)の上流側で除去しようとした場合、微量成分の濃度が低く且つ多量の排ガスを各装置(還元処理装置及び吸着処理装置など)に供給しなければならない。この場合、必要とされる吸着剤及び触媒の量が膨大な量となり設備が大型化するとともに経済的に見合わないものとなる。
【0015】
本発明は二酸化炭素製造方法を提供する。この方法は、二酸化炭素を製造するための原料ガスである排ガスを脱硫処理する第1工程と、第1工程後の排ガスとアミン溶液とを吸収塔において気液接触させる第2工程と、二酸化炭素を吸収した吸収塔からのアミン溶液を再生塔において加熱処理する第3工程と、再生塔からの二酸化炭素含有ガスと還元触媒とを接触させる第4工程と、第4工程後の二酸化炭素含有ガスと活性炭とを接触させる第5工程とを備える。この方法によれば、十分に高純度の二酸化炭素を効率的に製造できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、十分に高い純度の二酸化炭素を効率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る二酸化炭素製造設備の一実施形態を模式的に示す構成図である。
図2】本発明に係る二酸化炭素製造設備の他の実施形態を模式的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<二酸化炭素製造設備>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1に示す二酸化炭素製造設備20は、脱硫装置1と、吸収塔2と、再生塔3と、触媒塔(還元処理装置)8と、吸着塔(吸着処理装置)9とを備え、これらが上流から下流に向けてこの順序で配置されている。吸収塔2と再生塔3とによってCO化学吸収装置10が構成されている。以下、各装置について説明する。以下の説明において、流体を移送するための配管を「ライン」と称する。
【0019】
脱硫装置1は、原料ガスである排ガスに含まれる硫黄酸化物を除去するための装置である。ラインL1を通じて排ガスが脱硫装置1に供給される。脱硫装置1は、内部に充填槽1aを有する。脱硫装置1には図示しないラインを通じてアルカリ水溶液が供給される。充填槽1aにおいて原料ガスとアルカリ水溶液とが気液接触することでアルカリ溶液に硫黄酸化物が吸収される。アルカリ水溶液としては、炭酸カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液及びアンモニア水などが挙げられる。
【0020】
二酸化炭素製造用の原料ガスとなり得る排ガスとしては、例えば製鉄所等の設備からの排ガス又は燃焼排ガスが挙げられる。その他の原料ガスとして、LNG火力発電所排ガスのようなCO濃度が比較的低い(≧5体積%)ガスから、製油所の水素製造工程からのオフガスのようなCO濃度が比較的高い(≦60体積%)ガスなどが挙げられる。
【0021】
原料ガスである排ガスは、二酸化炭素の他に以下の成分(1)〜(4)を含み得る。成分のグループ分けは、上述のとおり、アミン溶液に対する特性に基づくものである。なお、原料ガスとして使用し得る排ガスは、必ずしも成分(1)〜(4)の全てを含んでいる必要はなく、これらの成分のうちいずれかを含有しなくてもよい。例えば、製鉄所高炉ガス(BFG)は、硫黄酸化物及び窒素酸化物はほとんど含まないガスである。
成分(1)硫黄酸化物
成分(2)一酸化炭素、メタン、炭素数2〜4の炭化水素及び窒素
成分(3)NO(一酸化窒素及び二酸化窒素)及び酸素
成分(4)硫化水素、芳香族炭化水素(BTX)及び炭素数5以上の炭化水素
【0022】
表1に原料ガスとして使用可能な排ガスに含まれる成分及びその含有量の好適な範囲を示す。なお、表1中の成分(2)は、上述のとおり、吸収塔内においてアミン溶液と接触してもアミン溶液に吸収されにくい特性を有し、その大部分は吸収塔上部から排出されるため、含有量の好適な範囲は特にない。
【0023】
【表1】
【0024】
吸収塔2は、二酸化炭素を含む排ガスとアミン溶液とを気液接触させてアミン溶液に排ガス中の二酸化炭素を吸収させるためのものである。脱硫装置1の上部に接続されたラインL2を通じ、脱硫処理後の排ガスが吸収塔2へと移送される。アミン溶液としては、モノエタノールアミン溶液(MEA溶液)、メチルジエタノールアミン溶液(MDEA溶液)などのアミン類を使用でき、特に制限されない。
【0025】
吸収塔2の塔底部は、ラインL2が接続された入口2aと、二酸化炭素を吸収したアミン溶液(リッチ液)を排出する出口2bとを有する。出口2bにはラインL3が接続されている。吸収塔2の塔頂部は、再生塔3からのリーン液が供給される入口2cと、アミン溶液に吸収されないガスを排出する出口2dとを有する。入口2cには再生塔3からのリーン液を移送するラインL5が接続されている。吸収塔2は、排ガスとアミン溶液とを効率的に接触させるため、例えば金属製又は樹脂製の充填槽2eを内部に有する。なお、出口2dにはアミン溶液に吸収されないガスを放出するためのラインL4が接続されている。
【0026】
入口2cからのアミン溶液(リーン液)が充填槽2eにおいて排ガスと接触すると、発熱を伴う反応によって排ガス中の二酸化炭素を吸収する。これによりリーン液がリッチ液となる。なお、ここでいうリーン液及びリッチ液はそれぞれ二酸化炭素濃度を基準とするものであり、二酸化炭素が所定濃度未満であるアミン溶液をリーン液といい、二酸化炭素が所定濃度以上であるアミン溶液をリッチ液という。
【0027】
再生塔3は、吸収塔2からのリッチ液を加熱することにより、リッチ液から二酸化炭素を高い濃度で含む二酸化炭素含有ガスを回収するためのものである。再生塔3における加熱処理によってリッチ液が再生されてリーン液となる。
【0028】
再生塔3の塔底部は、ラインL5が接続された出口3aを有する。ラインL5は途中で分岐したラインL5aを有する。なお、ラインL5aは再生塔3の本体から分岐していてもよい。ラインL5aの途中にはリボイラ4が設けられ、また、その先端は再生塔3の下部に形成された入口3bに接続されている。リボイラ4はリボイラ4内のアミン溶液の温度を制御するための温度制御部4aを有する。
【0029】
再生塔3の塔頂部は、ラインL3が接続された入口3cと、二酸化炭素含有ガスを排出するための出口3dとを有する。再生塔3は、例えば金属製又は樹脂製の充填槽3fを内部に有する。リッチ吸収液が充填槽3fを下方へ流れ、その際に二酸化炭素が分離される。またリボイラ4による加熱によっても二酸化炭素が分離される。リッチ液からは二酸化炭素と同時に水蒸気も分離される。二酸化炭素等が分離されて再生したアミン溶液(リーン液)は出口3aから排出され、ラインL5を通じて吸収塔2へと返送される。
【0030】
リッチ液を再生塔3に移送するためのラインL3は、その途中にポンプP1と、熱交換器H1とを有する。ラインL3で移送されるリッチ液は、熱交換器H1におけるリーン液との熱交換によって所定温度まで加熱される。
【0031】
リーン液を吸収塔2に返送するためのラインL5は、その途中にポンプP2と、熱交換器H2とを有する。リーン液は、熱交換器H1,H2における熱交換によって所定温度まで冷却される。
【0032】
再生塔3の出口3dには二酸化炭素含有ガスを移送するためのラインL6が接続されている。ラインL6内を流れる二酸化炭素含有ガスは、例えば他のガスとの熱交換によって冷却され、ラインL6の途中に設けられた気液分離器5によって水分が除去される。気液分離器5で回収された水は、再生塔3上部に設けられた入口3eからラインL7を通じて再生塔3内に戻される。気液分離器5で分離された二酸化炭素含有ガスは、ラインL6及びラインL8を通じて触媒塔8へと移送される。ラインL8の途中には、再生塔3の圧力を制御するための圧力制御弁6と、二酸化炭素含有ガスを昇圧するための圧縮機7とが設けられている。
【0033】
触媒塔8は、二酸化炭素含有ガスに含まれるNO及び酸素を除去するためのものである。ラインL8を通じて再生塔3からの二酸化炭素含有ガスが触媒塔8に供給される。触媒塔8は、還元触媒が充填された触媒層8aを内部に有し、二酸化炭素含有ガスが触媒層8aを通過することで、二酸化炭素含有ガスに含まれるNO及び酸素が除去される。還元触媒としては、公知の脱酸素触媒を使用でき、担体(例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム)に貴金属(例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム又はこれらの合金)を担持させた触媒を使用できる。これらの成分が除去された二酸化炭素含有ガスは、ラインL9を通じて吸着塔9へと移送される。
【0034】
触媒塔8に供給される二酸化炭素含有ガスの量は原料ガスの量の数分の一程度にまで低減されるため、触媒塔8を吸収塔2よりも上流側に設ける場合と比較して触媒塔8の処理ガス量を十分に小さくできる。
【0035】
吸着塔9は、触媒塔8からの二酸化炭素含有ガスに含まれる硫化水素、炭素数5以上の炭化水素及び芳香族炭化水素(BTX)等を除去するためのものである。吸着塔9は、活性炭が充填された活性炭層9aを内部に有し、二酸化炭素含有ガスが活性炭層9aを通過することで、二酸化炭素含有ガスに含まれる上記成分が除去される。吸着塔9にはラインL10が接続されており、ラインL10を通じて製品二酸化炭素が目的地(例えばCO液化設備)まで移送される。吸着塔9の処理ガス量は上述の触媒塔8と同様、吸着塔9を吸収塔2よりも上流側に設ける場合と比較して吸着塔9の処理ガス量を十分に小さくできる。
【0036】
<二酸化炭素製造方法>
次に、上述の二酸化炭素製造設備20によって製品二酸化炭素を製造する方法について説明する。まず、ラインL1を通じて排ガス(原料ガス)を脱硫装置1に供給し、脱硫装置1内において排ガスの脱硫処理を行う(第1工程)。
【0037】
脱硫装置1内においては、排ガスに対してアルカリ水溶液を例えば噴霧することによって排ガスに含まれる硫黄酸化物をアルカリ水溶液に吸収させる。後段のアミン溶液に与える影響を十分に小さくする観点から、脱硫装置1における処理によって排ガスの硫黄酸化物濃度を5質量ppm以下程度(より好ましくは1質量ppm以下)にまで低減することが好ましい。
【0038】
脱硫装置1からの排ガスをラインL2を通じて吸収塔2に供給し、吸収塔2内において排ガスとアミン溶液とを気液接触させる(第2工程)。これにより、アミン溶液に二酸化炭素を吸収させる。アミン溶液には二酸化炭素とともに上記成分()も吸収される。一方、成分(2)及び成分()の大部分はアミン溶液に吸収されずに出口2dから排出される。原料ガス中の上記成分(2)及び成分()の量を基準とすると、二酸化炭素含有ガス中のその量の希釈度は1/50〜1/10000となる。
【0039】
吸収塔2内の温度は、例えばアミン溶液の種類に応じて設定すればよく、好ましくは20〜50℃であり、より好ましくは30〜40℃である。吸収塔2内の圧力は0〜1.0MPa程度とすればよい。
【0040】
再生塔3にラインL3を通じてリッチ液を供給し、再生塔3内においてリッチ液を加熱処理する(第3工程)。これにより、リッチ液から二酸化炭素を分離させるとともにリッチ液をリーン液に再生させる。リッチ液からは二酸化炭素とともに上記成分(2)〜(4)も分離される。再生塔3内の温度は、例えばアミン溶液の種類に応じて設定すればよく、好ましくは80〜130℃である。再生塔3内の圧力は0〜0.3MPa程度とすればよい。
【0041】
再生塔3からの二酸化炭素含有ガスをラインL6を通じて気液分離器5に供給して水分を除去した後、更にラインLを通じて触媒塔8に供給する。触媒塔8に供給される二酸化炭素含有ガスの二酸化炭素濃度は、好ましくは99体積%以上であり、より好ましくは99.9体積%である。この時点での二酸化炭素濃度が99.9体積%以上であれば、十分に高い純度の製品二酸化炭素を最終的に製造できる。
【0042】
触媒塔8内において、二酸化炭素含有ガスと還元触媒とを接触させる(第4工程)。これにより、二酸化炭素含有ガスに含まれる成分(3)を分解除去する。貴金属担持触媒を使用する場合は、水素雰囲気下とし還元処理をすればよい。触媒塔8内の温度は100〜300℃程度とすればよい。触媒塔8内の圧力は0〜3MPa程度とすればよい。
【0043】
製品二酸化炭素の品質確保の観点から、触媒塔8における処理によって二酸化炭素含有ガスのNO濃度を5質量ppm以下(より好ましくは1質量ppm以下)にまで低減することが好ましい。
【0044】
吸着塔9内において、二酸化炭素含有ガスと活性炭とを接触させる(第5工程)。これにより、二酸化炭素含有ガスに含まれる上記成分(4)を除去する。吸着塔9内の温度は0〜40℃程度とすればよい。吸着塔9内の圧力は0〜3MPa程度とすればよい。
【0045】
表2に製品二酸化炭素の純度の好適な範囲とともに、これに残存し得る不純物(微量成分)の許容量の範囲を示す。製品二酸化炭素は、下表の条件を満たすことにより工業用二酸化炭素(例えば飲料用及び溶接用)として使用することも可能である。表2中、「N.D.」は不検出(Not Detected)を意味する。
【0046】
【表2】
【0047】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。図2は本発明の他の実施形態に係る二酸化炭素製造設備30を模式的に示す構成図である。図2に示すとおり、二酸化炭素製造設備30においてはラインL1に遮断装置12が設けられている。遮断装置12は、排ガスの組成が通常時の範囲から逸脱し、微量成分の含有量が所定値以上に上昇した場合に作動するように制御されている。遮断装置12を設けることで、過剰の微量成分がCO化学吸収装置10及びその下流側の装置(触媒塔8及び吸着塔9)に導入されることを防止できる。これにより、CO化学吸収装置10及びその下流側の装置の処理能力を通常時の範囲に合せて設定することができ、設備のより一層のコンパクト化が可能であるとともに設備に要するコストを削減できる。
【0048】
遮断装置12は、例えば、切替弁と、排ガス中の微量成分の量を監視するセンサーと、センサーからの信号を切替弁に送って切替弁を閉じるための発信手段とによって構成される。なお、遮断装置12は、CO化学吸収装置10の上流側に設置すればよく、ラインL1に設置する代わりに、あるいは、ラインL1に設置するとともにラインL2に設置してもよい。
【0049】
二酸化炭素製造設備30による二酸化炭素製造方法は、上述の二酸化炭素製造方法をベースとし、原料ガスの所定成分の濃度が上昇したときに吸収塔2への原料ガス(又は排ガス)の供給を遮断する工程を更に備えてもよい。例えば、原料ガスが燃焼排ガスである場合、原料ガスに含まれる未燃成分の量が増加したときに遮断装置12が作動するようにしてもよい。なお、未燃成分の増加は、燃焼排ガスの残存酸素濃度の低下、又は、残存CO濃度の上昇によって検知することができる。あるいは、排ガスの硫黄酸化物濃度が所定値を超えたときに、排ガスの供給が止まるように遮断装置12の動作を設定してもよい。排ガスの硫黄酸化物濃度が上昇したときに排ガスの供給を遮断することで、脱硫装置1で除去しきれなかった硫黄酸化物が吸収塔2に至り、アミン溶液を劣化させることを十分に抑制できる。
【0050】
また、図2に示すように、ラインL3の途中にバッファタンク15を設けてもよい。この位置にバッファタンク15を設けることで、排ガス中の微量成分であってアミン溶液に吸収され又は混入し得る成分(硫黄酸化物、硫化水素、炭素数5以上の炭化水素、芳香族炭化水素、NO及び酸素)の量が短時間(例えば1〜3分)のうちに変動しても、それを平準化できるという利点がある。これにより、再生塔3及びその下流側の装置の処理能力を平準化された微量成分量に合せて設定することができ、設備の一層のコンパクト化が可能であるとともに高品質の製造二酸化炭素を安定的且つ低コストで製造できる。また、バッファタンク15をラインL3の途中に設けることで、バッファタンク15として大規模なものを必要としないという利点がある。例えば、排ガスが移送されるラインL1又はラインL2にバッファタンクを設けようとした場合、極めて大規模なタンクを準備する必要がある。また、バッファタンク15を設けることで、製品二酸化炭素濃度及び不純物濃度の変動幅を十分に小さくできるという効果も奏される。原料ガスである排ガスの組成変動の程度にもよるが、バッファタンク15を設けない場合と比較し、これらの変動幅を数十分の一程度以下に抑えることができる。バッファタンク15の容量は、例えば排ガスに含まれる微量成分量の変動の幅及び頻度に応じて設定すればよい。バッファタンク15の滞留時間は1分以上であればよく、5〜15分程度であってもよい。なお、ここでいう滞留時間とは、バッファタンク15の容量Vを、ラインL3を流れるリッチ液(アミン溶液)の定常状態における平均流量Qによって除すことによって算出される値(V/Q)を意味する。
【0051】
また、図2に示す二酸化炭素製造設備30は、リッチ液を移送するラインL3にバッファタンク15を設けられているが、バッファタンク15の代わりにバッファ部(リッチ液のバッファ機能を果たす空間)を吸収塔2の塔底部内又は再生塔3の塔底部内、あるいは、リボイラ4に設けてもよい。更に、二酸化炭素製造設備30は遮断装置12及びバッファタンク15の両方を具備するものであるが、二酸化炭素製造設備20に対して遮断装置12及びバッファタンク15のいずれか一方のみを設けて二酸化炭素製造設備を構成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…脱硫装置、2…吸収塔、3…再生塔、8…触媒塔(還元処理装置)、9…吸着塔(吸着処理装置)、10…CO化学吸収装置、12…遮断装置、15…バッファタンク(バッファ部)、20,30…二酸化炭素製造設備。
図1
図2