特許第6297030号(P6297030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6297030シール高さのばらつきが低減された真空断熱ガラス(VIG)窓ユニット及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297030
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】シール高さのばらつきが低減された真空断熱ガラス(VIG)窓ユニット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/06 20060101AFI20180312BHJP
   E06B 3/66 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   C03C27/06 101E
   C03C27/06 101A
   E06B3/66 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-515039(P2015-515039)
(86)(22)【出願日】2013年5月20日
(65)【公表番号】特表2015-525190(P2015-525190A)
(43)【公表日】2015年9月3日
(86)【国際出願番号】US2013041747
(87)【国際公開番号】WO2013180998
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2016年4月22日
(31)【優先権主張番号】13/484,597
(32)【優先日】2012年5月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593005002
【氏名又は名称】ガーディアン・インダストリーズ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100170346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 望
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】デニス ティモシー エー.
(72)【発明者】
【氏名】パンケ アンドリュー ダブリュー.
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0330309(US,A1)
【文献】 特開2007−182347(JP,A)
【文献】 特開2008−201662(JP,A)
【文献】 特開2007−182752(JP,A)
【文献】 特開2005−200301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00−29/00
E06B 3/66−3/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周長を有し、機器によって堆積されて、未焼成で約0.6mm〜0.9mmの高さを有するシール材を、第1ガラス基板上に堆積させるステップと、
真空断熱ガラス窓ユニットが焼成後の高さのばらつきが約0.20mm未満のシール材を有するように、前記第1ガラス基板と、第2ガラス基板と、前記第1ガラス基板と前記第2ガラス基板との間に挟まれた前記シール材と、を含む部分組立品を焼成するステップと、
を含み、
前記焼成するステップは、実質的に少なくとも約20から30分の間、前記部分組立品に適用される対流サイクルを含み、
前記対流サイクル中の温度ばらつきは、約2℃以下である、
真空断熱ガラス窓ユニットの製造方法。
【請求項2】
機器によって堆積された前記シール材の未焼成での高さは約0.6mm〜0.7mmの範囲内であって、前記焼成するステップは短波赤外線処理を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記周長における焼成後の前記シール材の高さのばらつきは、約0.15mm以下である、
請求項から請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記周長における焼成後の前記シール材の高さのばらつきは、約0.10mm以下である、
請求項から請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記シール材の前記周長によって規定されたキャビティの圧力を大気圧未満にするステップをさらに含む、
請求項から請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記シール材は、フリットを含有する接着剤を含む、
請求項から請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記シール材は、バナジウムを含む、
請求項から請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1基板と前記第2基板との間に複数のスペーサーを配置するステップをさらに含む、
請求項から請求項のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、真空断熱ガラス(VIG)窓ユニットの構成及びVIG窓ユニットの製造方法に関する。具体的には、本開示は、VIG窓ユニット端部シールの構成、及びVIG窓ユニットの端部シールの周長(perimeter)によって規定されてガラス基板の間に形成されるキャビティを真空状態にするために用いられるポンプダウン手順のうち、端部シールの付近でVIG窓ユニットの破損の可能性を減らすために最終的な端部シール高さのばらつきを減少させる端部シール材を配置する方法に関する。本開示は、キャビティの真空引きの前に端部シール高さのばらつき(例えば、許容値)を減少させるためのユニットの構造配置及び寸法のサイジングに関する。
【背景技術】
【0002】
真空断熱ガラス(VIG)ユニットは、典型的に、離隔された少なくとも2つのガラス基板を備えており、これらガラス基板の間には真空引きした又は低圧の空間/キャビティが囲まれている。基板は、外周端部シールで相互接続されており、典型的に、ガラス基板間の間隔を維持するため及び基板間に存在する低圧環境が原因で生じ得るガラス基板の崩壊を回避するためにガラス基板間にスペーサーが含まれている。いくつかのVIG構造例は、例えば、米国特許第5,657,607号、同第5,664,395号、同第5,657,607号、同第5,902,652号、同第6,506,472号及び同第6,383,580号に開示されており、これら公報の開示全体をいずれも参照として本明細書に組み込む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図1及び図2は、典型的なVIG窓ユニット1及びVIG窓ユニット1の構成要素を表している。例えば、VIGユニット1は、離隔された2つの実質上平行なガラス基板2,3を備えていてよく、これらガラス基板の間には真空引きした低圧の空間/キャビティが囲まれている。ガラスシート又は基板2,3は外周端部シール4で相互接続されており、外周端部シールは、例えば、溶融はんだガラス製であってよい。基板2,3の間に存在する低圧の空間/間隙6を考慮して、支柱/スペーサー5の配列をガラス基板2,3の間に備えてVIGユニット1の基板2,3の間隔を維持することもある。
【0004】
排気管8は、例えば、はんだガラス9によって、一方のガラス基板2の内表面から当該ガラス基板2の外表面にある任意の凹部11の底面に通じる又は場合により当該ガラス基板2の外表面に通じる開口部/穴10に気密封止されていてよい。排気管8に吸引装置を取り付けて、例えば、連続ポンプダウン操作を利用して内部キャビティ6を低圧まで真空引きする。キャビティ6を真空引き後、排気管8の一部(例えば、先端)を溶融することで低圧キャビティ/空間6を真空密封する。この任意の凹部11は、封止された排気管8を保持することができる。場合によって、一方のガラス基板、例えば、ガラス基板2の内表面に配置された凹部13にはゲッター材12が含まれていてもよい。ゲッター材12は、キャビティ6の真空引き及び封止後に残存している可能性のある特定の残留不純物を吸着する、又は特定の残留不純物に結合するために使用され得る。
【0005】
溶融はんだガラス外周端部シール4の付いたVIGユニットは典型的に、ガラスフリットを溶液状態(例えば、フリットペースト)で基板2(又は基板3)の外縁周囲に配置させることによって製造される。このガラスフリットペースは最終的にはガラスはんだ端部シール4となる。もう一方の基板(例えば、3)を、2つの基板2,3の間にスペーサー/支柱5とガラスフリット溶液が挟持されるように基板2上に下ろす。次に、ガラス基板2,3、スペーサー/支柱5及びシール材(例えば、溶液又はペースト状態のガラスフリット)を備える組立品全体を少なくとも約500℃の温度まで加熱することで、ガラスフリットが溶融してガラス基板2,3の表面を濡らし、そして最終的に気密性の外縁/端部シール4となる。
【0006】
基板間に端部シール4を形成した後、排気管8を介して真空にすることで基板2,3間に低圧の空間/キャビティ6を形成する。空間6内の圧力は、真空引き工程によって大気圧未満、例えば、約10−2Torr未満の程度にしてよい。この空間/キャビティ6内の低圧を維持するために、基板2,3を気密封止する。小さな高強度スペーサー/支柱5を基板間に配置することで、大気圧下で基板が互いにほぼ平行に分離したままになる。上述の通り、基板2,3間の空間6を真空引き後、排気管8は、例えば、レーザなどを用いてその先端を溶融させることによって封止してよい。
【0007】
キャビティを大気圧未満の圧力まで真空引きした後、キャビティを真空引き又はパージするために使用する排気管の端部を加熱してその入口を溶融させ、その結果VIG窓ユニットのキャビティを封止することにより、排気管の封止工程を行ってもよい。例えば、これに限定されないが、この加熱及び溶融工程は、排気管の先端にレーザを照射することによって行ってもよい。
【0008】
一部の例では、キャビティ真空引き工程中に、端部シール近辺でVIGユニットガラスの破損が観察された。キャビティ真空引き工程中に発生したこのような破損の原因を特定するために、かなりの時間とリソースが費やされた。最終的に、シール高さのばらつきは、破損の問題に関連し得るものと認識された。例えば、フリット材料を含む接着剤などのような端部シールを形成するのに用いられる物質は、キャビティを定義するシールの周長における高さのばらつきが過度に大きいものを含む場合がある。複数の試験を行った後、驚くべきことに、シール厚さのばらつき許容値とキャビティ真空(又はポンプダウン)工程中の破損事例との間に相関関係が存在することが分かった。驚くべきことに、シール高さのばらつきは、VIGユニットのガラス基板の間に形成されたキャビティを真空状態にする途中にシールの近辺でVIGユニット上の応力に影響を及ぼすことが分かった。真空引き工程は、場合によってプルダウン(pull−down)又はポンプダウン(pump−down)手順と呼ぶこともできる。驚くべきことに、シール高さのばらつきが大き過ぎる場合、シールの周囲及び典型的にシール近辺の内側でVIGユニットのガラスを破損し得るポンプダウン中に十分な応力が発生する場合があることが分かった。例えば、これに限定されないが、シール高さのばらつきが大き過ぎる場合、支柱又はスペーサーと少なくとも1つのガラス基板との間に間隙が生じ、それによって、ガラス基板がポンプダウン中に曲げや撓みが生じる。シールの周長におけるシール高さのばらつきが非常に大きい場合、ガラスが破損することが分かった。
【0009】
また、シール高さの大きいばらつきを起こすことに様々な原因があることが分かった。例えば、これに限定されないが、初期に配置したグリーン(例えば、未焼成)シール材(例えば、フリット)の均一性、焼成工程中にガラス基板の曲げや撓みを含んでもよい。このような条件は、最終的なシール高さの大きいばらつき(例えば、非均一性)に寄与することが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ポンプダウン中のガラスの曲げや撓みに起因するガラスの破損に伴う欠陥を解決するために、端部シールの周長におけるシール高さのばらつきを減らすことによって、ポンプダウン中のVIGユニット上の応力を緩和して(例えば、ガラス基板の曲げや撓みレベルを減らす)、ポンプダウン中のVIGユニットガラスの破損の事例を減少させた。試験の結果、例えば、これに限定されないが、シール材(例えば、フリット材料)の初期ディスペンスの高さを調節すること、焼成中にシール材の流れを調節すること、及び封止工程中に均一に温度を調節することによって、シール高さのばらつき又は許容値を好ましい小さいレベルに減少させることができた。例えば、これに限定されないが、最終的な端部シール高さのばらつきを、好ましくは約0.20mm未満、さらに好ましくは約0.15mm未満、及びより好ましくは約0.10mm未満に調節することによって、ポンプダウン中のガラスの破損をかなり減少させた。焼成中にガラス基板が曲がるのを減らし、また、シール材の流れを調節した焼成工程を提供することが好ましく、これは、端部シール高さのばらつきの減少を助ける。
【0011】
最終的に、端部シール高さのばらつきを減少させるために、本発明者は、例えば、これに限定されないが、配置工程中の機器を用いて未焼成シール材の初期ディスペンスの高さを調節して最終的なシール高さの均一性を著しく改善し、上記のように、最終的にシール高さのばらつきを許容範囲内になるようにする。また、例えば、焼成中の温度の均一性を調節することによって、ガラス基板の曲げや撓みを減らし、最終的にシール高さのばらつきを減らす。また、焼成中のシール材の流れを調節し、例えば、シール材が焼成中に支柱/スペーサーの高さにマッチングされるように流れる長い焼成工程を実施することによって、例えば、最終的にシール高さのばらつきを改善する。
【0012】
このような利点及びその他の利点は、真空断熱ガラス窓ユニットによって提供されるものであって、これは第1基板と第2基板、及び第1基板と第2基板との間に形成されたキャビティの周囲に設けられ、第1基板と第2基板との間に挟まれたシール材を含み、第1基板と第2基板との間に気密封止を形成し、低圧のキャビティ周辺における前記シール材の高さのばらつきは、好ましくは約0.20mm未満、さらに好ましくは0.15mm以下、より好ましくは約0.10mm以下である。
【0013】
また他の利点は、真空断熱ガラス窓ユニットの製造方法によって提供されるものであって、周長を有し、機器によって堆積され、未焼成高さが約0.6mm〜0.9mmを有するシール材を第1ガラス基板上に堆積させるステップと、焼成したシール材の高さのばらつきが好ましくは約0.20mm未満、さらに好ましくは約0.15mm以下、より好ましくは約0.10mm以下である真空断熱ガラス窓ユニットの部分組立品を提供するために、前記第1ガラス基板、第2ガラス基板、及び前記第1ガラス基板と第2ガラス基板との間に挟まれた前記シール材を含む部分組立品を焼成するステップとを含む。
【0014】
これら及びその他の実施態様及び利点は、本明細書では特定の実施態様例に対して以下の図面を参照して記載され、類似の参照符号は同様の要素を意味するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来のVIGユニットの概略断面図である。
図2】従来のVIGユニットの平面図である。
図3】例示的な実施形態に従う例示のVIGユニットの端部を示す概略部分断面図である。
図4】例えば、シール材の高さを含む多様な工程条件が調節される、特定の実施形態例に従うVIGユニット製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書では、以下の図面を参照して特定の実施態様例を詳述する。図面中、同様の参照符号は同様の要素を指すものとする。本明細書に記載の実施態様は、限定ではなく例示を目的とするものであり、また、当業者は、本明細書に添付する特許請求の範囲の真の趣旨及び全範囲を逸脱することなく様々な変更が可能であると考えることができることが分かるであろう。
【0017】
図3を参照すると、VIG窓ユニット例1の一部の概略断面図が示されている。VIG窓ユニット1は、離隔された第1及び第2透明ガラス基板2,3を備えており、これら第1及び第2透明ガラス基板2,3は、端部シール4で相互接続することができ、端部シール4は例えば、これに限定されないが、バナジウム系若しくはVBZ型のシール又ははんだガラス型シールであってもよく、あるいはこれらを含んでいてもよい。バナジウム系又はVBZ型のシール組成物例は、2012年1月20日出願の米国特許出願番号第13/354,963に開示されており、この開示全体を参照として本明細書に組み込む。VBZ(例えば、バナジウム、バリウム、亜鉛)系のシール組成物は、前記公報第13/354,963に記載されており、また、特定の実施態様例では端部シール4として使用可能である。従来のはんだガラスフリット材料もまた、特定の実施態様例では、端部シール4として使用可能である。VBZ系のシール組成物を用いる場合は、低温封止用の熱プロファイルを利用して、VIGユニットのガラスの所望のテンパーを維持する。これは、VBZ組成物の焼成温度が、VIGユニットにおいてシールを形成するのに使用可能な特定の他の従来のガラスフリット組成物の温度(例えば、約500℃)よりも低い(例えば、<250℃)ためである。本明細書に開示される実施態様も同様に、任意の好適なシール材を用いたVIG構造に適用可能であると考えることができる。上記のように、端部シール4の周長は、基板の間が真空状態になるように気密封止されたキャビティ6を定義する。
【0018】
特定の実施態様では、透明ガラス基板2,3は、ほぼ同じ寸法であってよい。ただし、特定の実施態様例では、一方のガラス基板が他方よりも大きく、例えば、ほぼL字型のステップをVIGユニットの端部に近接して付与する場合もある。ガラス基板2,3の一方又は両方は更に場合により、例えば、これに限定されないが、低Eコーティングなどのコーティング材(図示せず)を少なくとも1つ含んでいてもよい。ガラス基板2,3の少なくとも一方の内表面には様々なコーティングが含まれていてもよく、そしてかかるコーティングはVIG窓ユニット1に様々な有益な性能特性をもたらすと考えることもできる。特定の実施態様例では、VIG窓ユニットの可視透過率は、少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%、更に好ましくは少なくとも50%、なお更に好ましくは少なくとも約60%又は70%である。
【0019】
さらに、ガラス基板2,3間のキャビティに大気圧未満の圧力が最終的に付与されることを考慮すると、基板同士の間隔を維持するためにガラス基板2,3間は支柱/スペーサー5の配列を更に含んでいてもよい。特定の実施態様例では、スペーサーの高さは、例えば、約0.1〜1.0mm、より好ましくは約0.2〜0.4mmであってよい。スペーサーの高さが真空キャビティ6の高さを決める場合もある。上述の通り、スペーサー5の寸法は、好ましくは、視覚的に目立たないほど十分に小さい。特定の実施態様例によれば、スペーサーは、はんだガラス、ガラス、セラミック、金属、ポリマー又は任意の他の好適な材料から作製されていてもよく、又はこれらを含んでいてもよい。さらに、スペーサー5は例えば、おおむね円筒形、丸形、球形、ダイム形、C形、まくら形又は任意の他の好適な形であってよい。
【0020】
排気管(図3に図示せず)は、例えば、真空ポンプを排気管に接続してキャビティを低圧(例えば、大気圧未満の圧力)まで真空引きすることにより、基板2,3間のキャビティ6を真空引きする方法において用いられる。好ましい例では、キャビティ6内の圧力は、例えば、好ましくは約10−2Torr未満、より好ましくは約10−3Torr未満、なお更に好ましくは約5×10−4Torr未満である。キャビティ6を真空引き後、排気管は、例えば、当該排気管の先端を例えば、レーザなどの任意の好適な手段で溶融することによって封止してもよい。VIG窓ユニットは、例えば、これに限定されないが、家庭用住居、オフィスビル、共同住宅、ドアなどの窓として使用され得る。
【0021】
特定の実施形態例によれば、ポンプダウン中に発生するVIGユニット上の応力を減らしてポンプダウン中にVIGユニットガラスの破損を減らすために、シール高さのばらつきを調節する。拡張試験の結果、シール高さのばらつき又は許容値は、例えば、これに限定されないが、シール材(例えば、フリット材料)の初期ディスペンスの高さを調節したり焼成中のシール材の流れを調節したり封止工程中に均一に温度を調節することによって減少させてもよい。例えば、これに限定されないが、最終的な端部シール高さのばらつきを、好ましくは約0.20mm未満、さらに好ましくは0.15mm未満、より好ましくは0.10mm未満に調節するとき、ポンプダウン中の破損がかなり減少する。「ばらつき」は、最大シール高さと最小シール高さとの間の差と考えてもよい。したがって、低圧のキャビティを囲んだ端部シールの全周にわたって、端部シールの最大高さは、0.20mm未満、さらに好ましくは約0.15mm未満、より好ましくは約0.10mm未満で変化してもよい。特定の実施形態例によれば、これに限定されないが、シール高さのばらつきは、配置工程中に、シール材(例えば、フリット)の初期ディスペンスの高さをさらに精密に調節する機器を提供することによって減少させてもよい。また、最終的な端部シール高さのばらつきに寄与し得るVIG窓ユニットのガラス基板の曲げや撓みを減らすために、例えば、低い温度ばらつき及び/又は長い焼成時間を有するさらに調節された焼成工程を用いてもよい。また、さらなる例示的な実施形態によれば、例えば、シール材が焼成中に支柱又はスペーサーの高さに一致するように流れて、シール高さのばらつきを減少させることで、焼成中のシール材の流れを調節する長い焼成工程を用いてもよい。
【0022】
特定の実施形態例によれば、VIG窓ユニットの製造方法が開示されている。特定の例示の方法によれば、初期のシール高さ用物質適用は、VIGユニットのガラス基板のうちの1つ上に初期のシール材をディスペンスするために機器を用いて調節されてもよい。初期ディスペンスのシール材の高さは、次の焼成に用いられる工程タイプにより異なることもある。例えば、これに限定されないが、短波赤外線(SWIR)焼成による初期のシール材堆積は、好ましくはグリーン未焼成(例えば、測定されたドライ)フリット(例えば、シール材)高さが約0.4mm〜0.9mm、さらに好ましくは約0.5mm〜0.8mm、より好ましくは約0.6mm〜0.7mmであってもよい。SWIR処理は、比較的短時間に行われるから、初期グリーンフリット高さの堆積許容値は長いサイクル焼成工程の場合からより小さい。長いピーク加熱時間によって、シール材が支柱又はスペーサーの高さまで流れたり保持されるため、例えば、これに限定されないが、長いサイクルの従来型の焼成の間、例えば、グリーン未焼成フリット高さは約0.4mm〜1.0mm、さらに好ましくは0.5mm〜0.9mm、より好ましくは約0.6mm〜0.9mmであってもよい。また他の実施形態によれば、例えば、VIGユニットのガラス基板の反りや捻れを減らし、シール高さのばらつきをさらに調節又は減少させるために、熱サイクルを調節してもよい。例えば、温度差によってガラス基板が反ったり捻れて、好ましくないシール高さのばらつきを起こす。したがって、特定の実施形態例によれば、例えば、より大きい温度均一(例えば、2.0℃未満)及び十分な加熱時間(例えば、20〜30分)を提供するために、焼成条件を調節してガラス基板が均一な温度に到達して平坦化されることによって、ガラスが安定して平坦化される。
【0023】
図3を再び参照すると、端部シール4の最終的なシール高さ(H)が示されている。特定の実施形態例によれば、VIGユニット1の端部シール4の周長における端部シール4の高さHのばらつきは、例えば、これに限定されないが、シール材(例えば、フリット)の初期ディスペンスの高さのばらつきを調節することによって調節されてもよい。上記のように、望ましい例示の初期ディスペンスフリット高さは、例えば、VIGユニットを焼成するところに用いられた工程タイプにより異なることもある。SWIR型の焼成工程を用いる特定の実施形態例によれば、初期ディスペンスのシール材の高さは、例えば、好ましくは約0.4mm〜0.9mm、さらに好ましくは約0.5mm〜0.8mm、より好ましくは約0.6mm〜0.7mmであってもよい。長いサイクルの従来型の焼成を用いるその他の例示的な実施形態によれば、例えば、初期ディスペンスのシール材の高さ(例えば、グリーン未焼成フリット高さ)は、好ましくは0.4mm〜1.0mm、さらに好ましくは約0.5mm〜0.9mm、より好ましくは約0.6mm〜0.9mmであってもよい。長いサイクルの従来型の工程のばらつきは、このようなタイプの焼成工程が典型的にさらに長いピーク加熱時間を設けるため、さらに大きくてもよい。例示的な実施形態によれば、初期のフリットディスペンスは、前記例示的な実施形態に対して近接した許容値に基づいて機械工程を用いて実施してもよい。また、特定の実施形態例によれば、焼成中のシール材の流れを容易にしてガラス基板の平坦化を容易にして最終的にシール高さのばらつきの低減を助けるために、さらに長いピーク加熱時間を設けることが望ましい。また、上記のように、温度差によってガラス基板の反りや捻れが好ましくないシール高さのばらつきを起こし得る。したがって、特定の実施形態例によれば、ガラス基板が均一な温度に到達するようにすることによって、ガラスを安定させて平坦化し、シール材の流れを可能にするために、焼成条件は、例えば大きい温度均一性(例えば、約2.0℃未満)及び十分な加熱時間(例えば、約20〜30分)を提供するように調節してもよい。得られたVIGユニットは、最終的にシール高さのばらつきが減少し、最終的な端部シール高さのばらつきは、好ましくは約0.20mm未満、さらに好ましくは0.15mm以下、より好ましくは約0.10mm以下である。
【0024】
図4は、特定の実施形態例に従うVIG窓ユニットを製造する方法を示す例示のフローチャートである。図4に示すように、第1ガラス基板が提供される(S1)。ガラス基板は、例えば、スペーサー又は支柱などのような典型的なVIG窓ユニットの特定の構造的特徴を提供するために処理されてもよい。ステップS3で、第1ガラス基板には、例えば、これに限定されないが、封止される領域境界にシール材が配置され、キャビティが第2ガラス基板(下記に記載)によって規定される。上記のように、VIG窓ユニット内にシールを形成するために用いられた任意の数の、可能なフリット又はシール材が存在してもよい。例えば、これに限定されないが、バナジウム系若しくはVBZ型のシール又ははんだガラス型シールを含む。例えば、バナジウム系又はVBZ型シール組成物は、2012年1月20日に出願された米国特許出願第13/354,963号に開示され、本明細書に参照として含まれる。VBZ(例えば、バナジウム、バリウム、亜鉛)系のシール組成物は、米国特許出願第13/354,963号に開示され、特定の実施形態例で端部シール4に用いてもよい。特定の実施形態例において、従来のはんだガラスフリット材料を端部シール4に用いてもよい。特定の望ましい例示的な実施形態によれば、シール材は、ステップS3において、例えば、使用される次の焼成タイプに基づいてグリーンフリット高さまで機器によって堆積される。例えば、短波赤外線(SWIR)焼成時に、グリーン赤外線フリット(例えば、シール材)高さは、好ましくは約0.4mm〜0.9mm、さらに好ましくは約0.5mm〜0.8mm、より好ましくは約0.6mm〜0.7mmであってもよい。上記のように、SWIR処理は比較的短時間で行われるため、初期グリーンフリット高さの堆積許容値は長いサイクル焼成工程の場合より小さくてもよい。例えば、これに限定されないが、前記詳細に記載された長いサイクルの従来型の焼成の間に、例えば、グリーン未焼成フリット高さは、シール材が支柱又はスペーサーの高さまで流れたり保持されるため、好ましくは約0.4mm〜1.0mm、さらに好ましくは約0.5mm〜0.9mm、より好ましくは約0.6mm〜0.9mmであってもよい。シール材がステップS3で提供された後に、ステップ5で第2ガラス基板が提供され、第1ガラス基板と第2ガラス基板との間に未焼成フリット材料及び支柱を挟持する。第1ガラス基板と第2ガラス基板は、フリットシール材と共に、例えば、これに限定されないが、SWIR又は長いサイクル対流(long cycle convection)のような任意の好適な技術を用いて焼成する(S7)。得られたVIGユニットは、好ましくは最終的にシール高さのばらつきが減少し、例えば、最終的な端部シール高さのばらつきは、好ましくは約0.20mm未満、さらに好ましくは約0.15mm以下、及びより好ましくは約0.10mm以下であってもよい。
【0025】
したがって、本発明の特定の実施形態例において、真空断熱ガラス(VIG)窓ユニットが提供されるが、これは第1基板及び第2基板、及び、前記第1基板と第2基板との間に形成されたキャビティの境界を規定する前記第1基板と第2基板との間に挟まれたシール材を含み、前記基板の間のキャビティは大気圧未満の圧力であって、前記第1基板と第2基板との間に気密封止を形成し、前記全体キャビティ周辺における前記シール材の高さのばらつきは約0.20mm未満である。
【0026】
直前の段落に記載のVIG窓ユニットにおいて、前記全体キャビティ周辺における前記シール材の高さのばらつきは、約0.15mm以下、さらに好ましくは約0.10mm以下であってもよい。
【0027】
前記2つの段落のいずれかに記載のVIG窓ユニットにおいて、前記第1基板と第2基板との間に配置される複数のスペーサーが提供されてもよい。
【0028】
前記3つの段落のいずれかに記載のVIG窓ユニットにおいて、前記シール材の高さが基板の間のスペーサーの高さと実質的に一致してもよい。
【0029】
前記4つの段落のいずれかに記載のVIG窓ユニットにおいて、前記第1基板と第2基板はガラス基板であってもよい。
【0030】
前記5つの段落のいずれかに記載のVIG窓ユニットにおいて、前記シール材はフリットを含有する接着剤を含んでもよい。
【0031】
前記6つの段落のいずれかに記載のVIG窓ユニットにおいて、前記シール材はバナジウムを含んでもよい。
【0032】
本明細書で使用されたように、「上に」、「支持された」などは特に記載されなければ、2つの要素が互いに直接隣接いていることを意味すると解釈されるべきではない。すなわち、第1層と第2層との間に1つ以上の層が存在する場合にも、第1層は第2層の上にあったり、第2層によって支持されるものと記載されてもよい。
【0033】
本明細書では特定の実施形態について説明及び開示してきたが、本明細書に記載の実施態様は、限定ではなく例示を目的とするものであり、また、当業者は、本明細書に添付する特許請求の範囲の真の趣旨及び全範囲を逸脱することなく様々な変更が可能であると考えることができることが分かるであろう。
図1
図2
図3
図4