(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記重合槽にフィードされる前記有機リチウム化合物を含む溶液における有機リチウム化合物の濃度が0.01〜1質量%である、請求項1又は2に記載の重合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。
【0010】
なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
<重合体の製造方法>
本実施形態の重合体の製造方法は、重合槽に共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物を含む単量体を連続的にフィードする工程(1)と、重合槽に有機リチウム化合物を含む溶液を連続的にフィードする工程(2)と、を含み、前記工程(2)において、有機リチウム化合物を含む溶液のフィード口の開口部での線速度が0.1〜5m/secである。
【0012】
本実施形態においては、工程(1)における単量体が共役ジエン化合物を含む単量体であると、本発明の効果が著しく発現されるため好ましい。
【0013】
本実施形態の製造方法は、これら単量体を、重合開始剤(有機リチウム化合物)を用いて重合させることにより共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体を得ることができる。
得られる重合体は共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体であることが好ましく、共役ジエン化合物の重合体であることが好ましい。
【0014】
本実施形態に用いる重合プロセスは、バッチ式、セミバッチ式、連続式のいずれでもよいが、連続式であると本発明の効果が著しく発現されるため好ましい。本実施形態において、連続重合としては、特に限定されないが、例えば、開始剤、単量体、溶剤等の原料を重合槽に所定のフィード速度で継続的にフィードすることで重合反応を継続して行い、その結果得られる重合体を含む重合反応溶液を重合槽から継続的に排出する形式の重合プロセスが挙げられる。
【0015】
<共役ジエン化合物の重合体>
本実施形態において、共役ジエン化合物の重合体とは、共役ジエン化合物の重合体、又は共役ジエン化合物と共重合可能な芳香族ビニル化合物や他の単量体との共重合体をいう。
【0016】
<共役ジエン化合物>
本実施形態の重合体の製造方法に用いる共役ジエン化合物は、重合可能な単量体であれば特に限定されず、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは1種のみならず2種以上を併用してもよい。共役ジエン化合物中に、アレン類、アセチレン類等が不純物として含有されていると、後述する変性反応を阻害するおそれがある。そのため、共役ジエン化合物中のこれらの不純物の含有量濃度(質量)の合計は、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることが更に好ましい。
【0017】
アレン類としては、特に限定されないが、例えばプロパジエン、1,2−ブタジエン等が挙げられる。アセチレン類としては、特に限定されないが、例えばエチルアセチレン、ビニルアセチレン等が挙げられる。
【0018】
<芳香族ビニル化合物の重合体>
本実施形態において、芳香族ビニル重合体とは、芳香族ビニル化合物の重合体、又は芳香族ビニル化合物と共重合可能な共役ジエン化合物や他の単量体との共重合体をいう。
なお、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を含む場合は、含有質量比の多い単量体の重合体とする。
<芳香族ビニル化合物>
本実施形態に用いる芳香族ビニル化合物は、特に限定されず、例えばスチレン、m又はp−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、スチレンが好ましい。これらは1種のみならず2種以上を併用してもよい。
【0019】
<共役ジエン化合物又は芳香族ビニル化合物と共重合可能な他の単量体>
共役ジエン化合物又は芳香族ビニル化合物と共重合可能な他の単量体としては、特に限定されず、例えばメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロペンテン等が挙げられる。これらは1種のみならず2種以上を併用してもよい。
【0020】
<共役ジエン化合物の重合体、芳香族ビニル化合物の重合体の重合形式>
共役ジエン化合物の重合体、芳香族ビニル化合物の重合体が共重合体である場合、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
【0021】
ランダム共重合体としては、特に限定されないが、例えばブタジエン−イソプレンランダム共重合体、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレンランダム共重合体等が挙げられる。共重合体鎖中の各単量体の組成分布は特に限定されないが、例えば統計的ランダムな組成に近い完全ランダム共重合体、組成分布に勾配があるテーパー(勾配)ランダム共重合体等が挙げられる。共役ジエンの結合様式、すなわち1,4−結合や1,2−結合等の組成は、分子鎖によって均一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
ブロック共重合体としては、特に限定されないが、例えばブロックが2個からなる2型ブロック共重合体、3個からなる3型ブロック共重合体、4個からなる4型ブロック共重合体等が挙げられる。ここでスチレン等の芳香族ビニル化合物からなるブロックをSで表し、ブタジエンやイソプレン等の共役ジエン化合物からなるブロック及び/又は芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体からなるブロックをBで表すと、ブロック共重合体としては、特に限定されないが、例えばS−B2型ブロック共重合体、S−B−S3型ブロック共重合体、S−B−S−B4型ブロック共重合体等が挙げられる。
【0023】
上式において、各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。例えばブロックBが芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の場合、ブロックB中の芳香族ビニル化合物は均一に分布していても、又はテーパー状に分布していてもよい。また、ブロックBに、芳香族ビニル化合物が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。さらには、ブロックBに、芳香族ビニル化合物含有量が異なるセグメントが複数個共存していてもよい。共重合体中にブロックS、ブロックBがそれぞれ複数存在する場合、それらの分子量や組成等の構造は、同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0024】
<有機リチウム化合物>
本実施形態の重合体の製造方法において、重合開始剤として用いる有機リチウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、低分子化合物や可溶化したオリゴマーの有機リチウム化合物が挙げられる。また、有機基とリチウムとの結合様式で表した有機リチウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、炭素−リチウム結合を有する有機リチウム化合物、窒素−リチウム結合を有する有機リチウム化合物、錫−リチウム結合を有する有機リチウム化合物等が挙げられる。
【0025】
炭素−リチウム結合を有する有機リチウム化合物としては、特に限定されないが、例えばn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム等が挙げられる。
【0026】
窒素−リチウム結合からなる有機リチウム化合物としては、特に限定されないが、例えばリチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジ−n−ヘキシルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムモルホリド等が挙げられる。
【0027】
有機リチウム化合物としては、上記のモノ有機リチウム化合物だけでなく、多官能有機リチウム化合物を使用して、又は、モノ有機リチウム化合物と多官能有機リチウム化合物とを併用することもできる。
【0028】
多官能有機リチウム化合物としては、特に限定されないが、例えば1,4−ジリチオブタン、sec−ブチルリチウムとジイソプロペニルベンゼンとの反応物、1,3,5−トリリチオベンゼン、n−ブチルリチウムと1,3−ブタジエン及びジビニルベンゼンとの反応物、n−ブチルリチウムとポリアセチレン化合物との反応物等が挙げられる。さらに、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されている有機リチウム化合物も使用することもできる。
【0029】
有機リチウム化合物としては、工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点から、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムが好ましい。
【0030】
有機リチウム化合物は1種のみならず2種以上の混合物として用いてもよい。
【0031】
本実施形態の重合体の製造方法において、有機リチウム化合物は、取扱い性及び重合溶液への分散性を良くするために、有機リチウム化合物を含む溶液とした状態で重合に用いる。有機リチウム化合物を含む溶液としては、特に限定されないが、例えば、有機リチウム化合物を炭化水素溶剤で希釈した溶液等が挙げられる。炭化水素溶剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、C4〜C8の脂肪族炭化水素やトルエン、キシレン等が挙げられる。溶剤として用いられる炭化水素は、環式でもよく、不飽和結合や分岐構造を含んでいてもよい。炭化水素溶剤としては、沸点や蒸気圧が製造工程上取り扱いやすいことからC5及びC6の炭化水素が好ましく、具体的にはペンタン、ノルマルヘキサン(n−ヘキサン)、シクロヘキサンが好ましく用いられる。
【0032】
重合槽にフィードされる際の有機リチウム化合物を含む溶液における有機リチウム化合物の濃度は、重合開始効率と単量体との均一混合性の観点から、0.005〜1質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.5質量%であり、特に好ましくは0.01〜0.1質量%である。
【0033】
有機リチウム化合物は、取扱い性の観点から、通常は10〜20質量%の濃度となるように溶剤(例えば、炭化水素溶剤)で希釈した状態で貯槽タンクに保存される。本実施形態においては、有機リチウム化合物を含む溶液は、重合槽にフィードする直前に有機リチウム化合物の濃度を上記範囲に調整することが好ましい。有機リチウム化合物の濃度の調整方法は特に限定されないが、重合槽にフィードする際の配管中で連続的に有機リチウム化合物の濃度を調整する方法が効率性に優れ好ましい。具体的には、連結する配管の一方に10〜20質量%の濃度の有機リチウム化合物を含む溶液を流し、もう一方に希釈溶剤(例えば、炭化水素溶剤)を流し、双方の配管の結合地点で両者を混合させる方法である。
上記方法では混合性を良くすることを目的に、ベンチュリ管が用いることが好ましい。希釈溶剤がベンチュリ管を流れ、10〜20質量%の濃度の有機リチウム化合物を含む溶液がベンチュリ管の絞り部分で合流することで、有機リチウム化合物の均一性が向上する効果がある。
重合槽において有機リチウム化合物を含む溶液を供給する位置は特に限定されないが、重合槽の底部であると、重合反応の収率の観点から好ましい。ここで重合槽の底部とは重合槽の縦方向の高さ半分より下方であり、より好ましくは重合槽の縦方向の高さ1/5以下である。
【0034】
<工程(1)>
本実施形態の重合体の製造方法は、重合槽に少なくとも共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物を含む単量体をフィードする工程(1)を含む。工程(1)において、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物を含む単量体は重合槽に連続的にフィードされる。
【0035】
工程(1)において、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物を含む単量体は、単独で重合槽にフィードしてもよく、溶剤を含む溶液の状態で重合槽にフィードしてもよいが、単量体の精製工程や重合工程での取扱い性の観点から、溶剤を含む溶液の状態でフィードすることが好ましい。前記溶剤としては、C4〜C8の脂肪族炭化水素やトルエン、キシレン等が挙げられる。前記溶剤として用いられる炭化水素は、環式でもよく、不飽和結合や分岐構造を含んでいてもよい。前記溶剤としては、沸点や蒸気圧が製造工程上取り扱いやすいことから、C5及びC6の炭化水素が好ましく、具体的にはペンタン、ノルマルヘキサン(n−ヘキサン)、シクロヘキサンが好ましく用いられる。
【0036】
溶剤を含む溶液の状態における単量体の濃度は、単量体と有機リチウム化合物との混合性や重合熱の除熱の観点から10〜50質量%であることが好ましい。
【0037】
<工程(2)>
本実施形態の重合体の製造方法は、重合槽に有機リチウム化合物を含む溶液をフィードする工程(2)を含む。工程(2)において、有機リチウム化合物を含む溶液は重合槽に連続的にフィードされる。また、有機リチウム化合物を含む溶液は、重合槽にフィードされる際に前述の方法により希釈されることが好ましい。
【0038】
工程(2)において、有機リチウム化合物を含む溶液のフィード口の開口部での線速度は、ゲル生成の抑制と収率との観点から、0.1〜5m/secである。当該線速度は、重合槽内での有機リチウム化合物と単量体との混合性の観点から、0.5〜2m/secあることが好ましく、0.7〜1.5m/secであることがより好ましい。ここで線速度とは、重合槽内にフィードされる有機リチウムの流量(F〔m3/sec〕)をフィード配管の断面積(S〔m
2〕)で除して得られる数値(F/S)である。また、フィード口の開口部とは、有機リチウム化合物を含む溶液のフィード配管と重合槽との結合部分をいう。
【0039】
本実施形態において、工程(1)と工程(2)とは同時に継続して行われることが好ましく、重合槽において共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合反応が継続して行われることが好ましい。この場合、生成する共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体溶液も連続的に重合槽から排出されることが好ましい。
【0040】
<重合槽>
重合槽としては連続式、バッチ式、セミバッチ式の何れの重合槽でもよいが、連続式の重合槽であると、本発明の効果が著しく発現され、好ましい。連続式の重合槽は、特に限定されないが、例えば、1個又は2個以上の連結された重合槽が挙げられるが、2個以上の連結された重合槽であると、得られる共役ジエン化合物や芳香族ビニル化合物の重合体の分子量分布を狭くすることができ、分子量分布の制御の観点からも好ましい。
【0041】
本実施形態に用いる重合槽は、特に限定されないが、例えば、撹拌機付きの槽型若しくは管型の重合槽等が挙げられる。
【0042】
本実施形態に用いる重合槽は、有機リチウム化合物を含む溶液をフィードするためのフィード口を有する。フィード口の位置は特に限定されないが、連続重合のスタート時の操作性の観点から、重合槽の底面部にあることが好ましい。また、フィード口の内径は、上述した有機リチウム化合物を含む溶液のフィード口の開口部での線速度を与える上で支障がない範囲で、適宜、選ぶことができる。フィード口の配管の内径は1〜100mmであることが好ましく、3〜50mmであることがより好ましく、5〜30mmであることが更に好ましい。
また、溶液中の有機リチウム化合物の濃度(C質量%)と開口部における溶液の線速度(Vm/sec)の関係は、1<(V/C)<200が好ましく、7<(V/C)<110がより好ましく、10<(V/C)<50が特に好ましい。
【0043】
本実施形態に用いる重合槽は、生産性と除熱とのバランスの観点から、0.05〜100m
3の大きさであることが好ましい。また重合槽の長さ(L)と内径(D)との比(L/D)は重合反応の収率と分子量分布の制御との観点から0.5〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましい。
連続式の重合においては重合槽内が完全に重合溶液で満たされていると、気相部内壁面への重合物の付着が抑制されることから好ましい。
工程(1)、(2)における温度は0〜80℃であることが好ましく、20〜40℃であることがより好ましい。
【0045】
○溶媒をフィードする工程
本実施形態の重合体の製造方法において、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合反応は、溶媒中で行うことが好ましい。そのため、本実施形態の重合体の製造方法は、重合槽に溶媒をフィードする工程を含むことが好ましい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が挙げられる。具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素等が挙げられる。
【0046】
これらの溶媒は、アレン類やアセチレン類等の不純物を含む場合がある。このような場合、重合反応に供する前に、溶媒中の不純物を有機金属化合物で処理することは、高濃度の活性末端を有する重合体が得られる傾向にあり、更には重合体を変性する場合、高い変性率が達成される傾向にあるため好ましい。
【0047】
溶媒は、単量体や有機リチウム化合物と混合した状態で重合槽にフィードしてもよいし、単独で重合槽にフィードしてもよいが、重合槽内での均一混合性の観点から、単量体や有機リチウム化合物と混合した状態で重合槽にフィードする方が好ましい。
【0048】
○極性化合物をフィードする工程
本実施形態の重合体の製造方法において、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合反応においては、極性化合物を添加してもよい。そのため、本実施形態の重合体の製造方法は、重合槽に極性化合物をフィードする工程を含んでいてもよい。極性化合物は、芳香族ビニル化合物を共役ジエン化合物とランダムに共重合させるために用いることができ、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤としても用いることができる。また、重合速度の改善等にも効果がある。
【0049】
極性化合物としては、特に限定されないが、例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミラート、カリウム−t−ブチラート、ナトリウム−t−ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等を用いることができる。これらの極性化合物は、それぞれ単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
極性化合物の使用量は、特に限定されず、目的等に応じて選択することができる。通常、重合開始剤1モルに対して0.01〜100モルであることが好ましい。このような極性化合物(ビニル化剤)は重合体共役ジエン部分のミクロ構造の調節剤として、所望のビニル結合量に応じて、適量用いることができる。
【0051】
多くの極性化合物は、同時に共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合において有効なランダム化効果を有し、芳香族ビニルの分布の調整やスチレンブロック量の調整剤として用いることができる。共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをランダム化する方法としては、特に限定されないが、例えば特開昭59−140211号公報に記載されているような、共重合の途中に1,3−ブタジエンの一部を断続的に添加する方法を用いてもよい。
【0052】
極性化合物は、単独で重合槽にフィードしてもよく、溶剤を含む溶液状態、又は単量体溶液との混合液の状態で重合槽にフィードしてもよいが、均一混合性の観点から単量体溶液との混合液の状態で重合槽にフィードすることが好ましい。
【0053】
○重合工程
本実施形態の重合体の製造方法において、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物を含む単量体の重合反応(重合工程)により共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体が得られる。
【0054】
重合温度は、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物を含む単量体の重合反応が進行する温度であれば、特に限定されないが、生産性の観点から、0℃以上であることが好ましく、重合終了後の重合体の活性末端に対する変性剤の反応量を充分に確保する観点から、120℃以下であることが好ましい。
【0055】
○変性工程
本実施形態の重合体の製造方法は、上述の重合工程で得られる共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体に変性剤を反応させ、変性重合体を得る工程(変性工程)を含んでいてもよい。上述の重合工程で得られる共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体は、通常、重合活性末端を有する。このような重合体の重合活性末端に、官能基を有する変性剤を反応させることで、変性重合体を得ることができる。変性剤としては好適にはグリシジル基、アルコキシシリル基、カルボニル基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、酸無水物基、リン酸エステル基、亜リン酸エステル其、エピチオ基、チオカルボニル基、チオカルボン酸エステル基、ジチオカルボン酸エステル基、チオカルボン酸アミド基、イミノ基、エチレンイミン基、ハロゲン基、アルコキシシラン基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、共役ジエン基及びアリールビニル基からなる群より選択される1種以上の官能基を有する化合物が用いられる。
【0056】
アルコキシシリル基を有する変性剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ジメトキシジメチルシラン、キシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、トリフェノキシビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリ(2−メチルブトキシ)エチルシラン、トリ(2−メチルブトキシ)ビニルシラン、トリフェノキシフェニルシラン、テトラフェノキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)シラン、フェノキシジビニルクロロシラン、メトキシジエチルクロロシラン、ジフェノキシメチルクロロシラン、ジフェノキシフェニルヨードシラン、ジエトキシメチルクロロシラン、ジメトキシエチルクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリフェノキシクロロシラン、トリス(2−エチルヘキシルオキシ)クロロシラン、フェノキシメチルジクロロシラン、メトキシエチルジクロロシラン、エトキシメチルジクロロシラン、フェノキシフェニルジヨードシラン、フェノキシジクロロシラン、ジメトキシジクロロシラン、ビス(2−メチルブトキシ)ジブロモシラン等が挙げられる。
【0057】
更に、アルコキシシリル基を有する変性剤の中でも、分子内に窒素(N)原子と複数個のアルコキシシリル基を有する化合物を用いることが好ましい。
【0058】
分子内に窒素(N)原子と複数個のアルコキシシリル基とを有する化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−(4−トリメトキシシリルブチル)−1−アザ−2−シラシクロヘキサン、2,2−ジメトキシ−1−(5−トリメトキシシリルペンチル)−1−アザ−2−シラシクロヘプタン、2,2−ジメトキシ−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ,2−メチル−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ,2−エチル−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ,2−メチル−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ,2−エチル−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、1−[3−(トリアルコキシシリル)−プロピル]−4−アルキルピペラジン、1−[3−(アルキルジアルコキシシリル)−プロピル]−4−アルキルピペラジン、1−[3−(トリアルコキシシリル)−プロピル]−3−アルキルイミダゾリジン、1−[3−(アルキルジアルコキシシリル)−プロピル]−3−アルキルイミダゾリジン、1−[3−(トリアルコキシシリル)−プロピル]−3−アルキルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(アルキルジアルコキシシリル)−プロピル]−3−アルキルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリアルコキシシリル)−プロピル−1−アルキル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、3−[3−(アルキルジアルコキシシリル)−プロピル]−1−アルキル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン等が挙げられる。このような化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)−プロピル]−3−エチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリブトキシシリル)−プロピル]−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、3−[3−(ジメトキシメチルシリル)−プロピル]−1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、1−(2−エトキシエチル)−3−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−イミダゾリジン、(2−{3−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−テトラヒドロピリミジン−1−イル}−エチル)ジメチルアミン等が挙げられる。
【0059】
これらの中でも、変性剤の官能基とシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点から、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジンが好ましい。
【0060】
変性剤は、単独で重合槽にフィードしてもよいし、溶剤で希釈してから重合槽にフィードしてもよいが、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体溶液への均一分散性の観点から、溶剤で希釈してから重合槽にフィードする方が好ましい。溶剤は、リビングポリマーや変性剤に対して反応性が無ければ特に限定されないが、具体的には、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素等が挙げられる。
【0061】
○重合後の工程
本実施形態の重合体の製造方法は、重合終了後、得られる共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体溶液に必要に応じて、失活剤、中和剤等を添加する工程を含んでいてもよい。失活剤としては、特に限定されないが、例えば水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等が挙げられる。中和剤としては、特に限定されないが、例えばステアリン酸、オレイン酸、バーサチック酸等のカルボン酸、無機酸の水溶液、炭酸ガス等が挙げられる。
【0062】
また、本実施形態の重合体の製造方法は、重合後のゲル生成を防止する観点や、加工時の安定性を向上させる観点から、得られた共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体に対して、ゴム用安定剤を添加する工程を含むことが好ましい。ゴム用安定剤は、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピネート、2−メチル−4,6−ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等の酸化防止剤が好ましい。
【0063】
さらに、本実施形態の重合体の製造方法は、重合終了後、得られる共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体溶液から共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体を取得する工程を含むことが好ましい。
【0064】
共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体を共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体溶液から取得する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えばスチームストリッピング等で共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体溶液から溶媒を分離した後、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体を取得する方法;共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体溶液をフラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押し出し機等で脱揮して共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体を取得する方法;共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体溶液をドラムドライヤー等で直接脱揮して共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体を取得する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0065】
以下の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合体を以下のとおり製造した。長さ(L)と内径(D)との比(L/D)=5で、4枚パドルの撹拌翼を具備する100リットルの反応器を重合槽として用いた。重合槽に原料をフィードする配管において、水分等の不純物を除去した1,3−ブタジエンを220g/分、スチレンを71g/分、n−ヘキサンを1,290g/分の条件で混合して、混合物を得た。更に得られた混合物を、重合槽に入る直前でn−ブチルリチウム0.84mmol/分とスタティックミキサーで混合して単量体中に含まれる重合開始剤の失活原因物質を処理して単量体混合物を得た。得られた単量体混合物を、重合槽に底部から連続的にフィードし、また、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを0.40g/分の速度で重合槽に底部から連続的にフィードした。上記配管とは別に、重合開始剤フィード用の配管において、20質量%のn−ブチルリチウム(重合開始剤)を含むヘキサン溶液1.12g/分と、n−ヘキサン1,650cc/分とを配管内で混合した後、得られた混合溶液を重合槽底部から内径6mmの配管を通して重合槽にフィードした。
この時の配管出口(重合開始剤(n−ブチルリチウム)を含む溶液のフィード口の開口部)において、混合溶液の線速度は0.97m/secであり、混合溶液中のn−ブチルリチウムの濃度は0.02質量%であった。また、混合溶液中のn−ブチルリチウムの濃度(C質量%)と開口部における混合溶液の線速度(Vm/sec)の関係は、V/C=48であった。重合槽内部では1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合反応が進行し、重合槽頭頂部の出口配管からは温度90℃のリビングポリマー溶液が排出された。この際、重合槽内部は重合液で完全に充填された状態であった。このポリマー溶液に未反応のスチレン単量体や1,3−ブタジエン単量体が残存しないことはポリマー溶液のガスクロマトグラフィー測定によって確認された。上記共重合反応を120時間継続した後、原料のフィードを止めて重合槽内の溶液を全て抜出し、重合開始剤(n−ブチルリチウム)のフィード口の周辺部分を観察したが、ゲルの付着は確認されなかった。
【0067】
(実施例2)
重合開始剤フィード用の配管において、20質量%のn−ブチルリチウムを含むヘキサン溶液のフィード量を3.36g/分とし、n−ヘキサンのフィード量を1,100cc/分とした他は実施例1と同様に1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合体の製造を行った。重合開始剤フィード用の配管出口(重合開始剤(n−ブチルリチウム)を含む溶液のフィード口の開口部)において、重合開始剤を含む溶液の線速度は0.65m/secであり、重合開始剤を含む溶液中の重合開始剤(n−ブチルリチウム)の濃度は0.091質量%であった。また、V/C=7.1であった。重合槽内部では1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合反応が進行し、重合槽頭頂部の出口配管からは温度90℃のリビングポリマー溶液が排出された。このポリマー溶液に未反応のスチレン単量体や1,3−ブタジエン単量体が残存しないことはポリマー溶液のガスクロマトグラフィー測定によって確認された。共重合反応を120時間継続した後、原料のフィードを止めて重合槽内の溶液を全て抜出し、重合開始剤(n−ブチルリチウム)のフィード口の周辺部分を観察したが、ゲルの付着は確認されなかった。
【0068】
(実施例3)
1−3ブタジエンとスチレンとの共重合体を以下のとおり製造した。4枚パドルの撹拌翼を具備する200リットルの反応器を重合槽として用いた。重合槽に原料をフィードする配管において、水分等の不純物を除去した1,3−ブタジエンを440g/分、スチレンを142g/分、n−ヘキサンを2,580g/分の条件で混合して、混合物を得た。更に得られた混合物を、重合槽に入る直前でn−ブチルリチウム1.68mmol/分とスタティックミキサーで混合して単量体中に含まれる重合開始剤の失活原因物質を処理して単量体混合物を得た。得られた単量体混合物を、重合槽に底部から連続的にフィードし、また、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを0.8g/分の速度で重合槽に底部から連続的にフィードした。上記配管とは別に、重合開始剤フィード用の配管において、20質量%のn−ブチルリチウム(重合開始剤)を含むヘキサン溶液6.72g/分と、n−ヘキサン3,300cc/分とを配管内で混合した後、得られた混合溶液を重合槽底部から内径6mmの配管を通して重合槽にフィードした。この時の配管出口(重合開始剤(n−ブチルリチウム)を含む溶液のフィード口の開口部)において、混合溶液の線速度は1.9m/secであり、混合溶液中のn−ブチルリチウムの濃度は0.061質量%であった。また、V/C=32であった。重合槽内部では1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合反応が進行し、重合槽頭頂部の出口配管からは温度90℃のリビングポリマー溶液が排出された。このポリマー溶液に未反応のスチレン単量体や1,3−ブタジエン単量体が残存しないことはポリマー溶液のガスクロマトグラフィー測定によって確認された。上記共重合反応を120時間継続した後、原料のフィードを止めて重合槽内の溶液を全て抜出し、重合開始剤(n−ブチルリチウム)のフィード口の周辺部分を観察したが、ゲルの付着は確認されなかった。
【0069】
(実施例4)
重合開例始剤フィード用の配管において、20質量%のn−ブチルリチウム(重合開始剤)を含むヘキサン溶液のフィード量を6.72g/分とし、n−ヘキサンのフィード量を2,200cc/分とした他は実施例1と同様に1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合体の製造を行った。重合開始剤フィード用の配管出口(重合開始剤(n−ブチルリチウム)を含む溶液のフィード口の開口部)において、重合開始剤(n−ブチルリチウム)を含む溶液の線速度は1.3m/secであり、重合開始剤(n−ブチルリチウム)を含む溶液中の重合開始剤(n−ブチルリチウム)の濃度は0.093質量%であった。また、V/C=14であった。重合槽内部では1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合反応が進行し、重合槽頭頂部の出口配管からは温度90℃のリビングポリマー溶液が排出された。このポリマー溶液に未反応のスチレン単量体や1,3−ブタジエン単量体が残存しないことはポリマー溶液のガスクロマトグラフィー測定によって確認された。共重合反応を120時間継続した後、原料のフィードを止めて重合槽内の溶液を全て抜出し、重合開始剤(n−ブチルリチウム)のフィード口の周辺部分を観察したが、ゲルの付着は確認されなかった。
(実施例5)
重合槽にフィードする単量体を1,3−ブタジエン、220g/分、スチレン、71g/分の混合物の代わりに、スチレン300g/分とした他は実施例1と同様にスチレンの重合体の製造を行った。重合槽頭頂部の出口配管から排出されたポリマー溶液に未反応のスチレン単量体が残存しないことはポリマー溶液のガスクロマトグラフィー測定によって確認された。重合反応を120時間継続した後、原料のフィードを止めて重合槽内の溶液を全て抜出し、重合開始剤(n−ブチルリチウム)のフィード口の周辺部分を観察したが、ゲルの付着は確認されなかった。
【0070】
(比較例1)
重合開始剤フィード用の配管の内径を21mmとした他は実施例1と同様に1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合体の製造を行った。重合開始剤フィード用の配管出口(重合開始剤(n−ブチルリチウム)を含む溶液のフィード口の開口部)において、重合開始剤(n−ブチルリチウム)を含む溶液の線速度は0.079m/secであり、重合開始剤(n−ブチルリチウム)を含む溶液中の重合開始剤(n−ブチルリチウム)の濃度は0.02質量%であった。また、V/C=3.9であった。重合槽内部では1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合反応が進行し、重合槽頭頂部の出口配管からは温度90℃のリビングポリマー溶液が排出された。このポリマー溶液に未反応のスチレン単量体や1,3−ブタジエン単量体が残存しないことはポリマー溶液のガスクロマトグラフィー測定によって確認された。共重合反応を120時間継続した後、原料のフィードを止めて重合槽内の溶液を全て抜出し、重合開始剤(n−ブチルリチウム)のフィード口の周辺部分を観察すると、ゲルの付着が確認された。
【0071】
(比較例2)
重合開例始剤フィード用の配管において、20質量%のn−ブチルリチウムを含むヘキサン溶液1.12g/分と、n−ヘキサン3,300cc/分とを配管内で混合した後、得られた混合溶液を重合槽底部から内径3.4mmの配管を通して重合槽にフィードした他は実施例1と同様に1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合体の製造を行った。この時の配管出口(重合開始剤(n−ブチルリチウム)を含む溶液のフィード口の開口部)において、混合溶液の線速度は6.1m/secであり、混合溶液中のn−ブチルリチウムの濃度は0.01質量%であった。また、V/C=598であった。重合槽頭頂部の出口配管から得られるポリマー溶液には未反応のスチレン単量体、1,3−ブタジエン単量体が残存していることが、重合液のガスクロマトグラフィー分析により確認された。
【0072】
本出願は、2013年7月17日出願の日本特許出願(特願2013−148936号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。