(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スチレン、PET、PLAまたはPVCに対してアルミニウム表面をシールするためのヒートシール性塗料における水性分散液の使用であって、前記ヒートシール性塗料は、シールする前に一層で前記アルミニウム表面に塗布されるものであり、前記シートシール性塗料の少なくとも50質量%が前記水性分散液からなっており、かつ該水性分散液が、乳化重合により製造され、ここで、−20〜30℃のガラス転移温度を有するポリマーになるべき第一のモノマー混合物が最初に装入され、該モノマー混合物の重合後に、20〜50℃未満のガラス転移温度を有するポリマーになるべき第二のモノマー混合物が添加されて重合され、かつ前記2つのポリマー相が、コアシェル粒子の形態で存在しており、ここで、該第二ポリマー相が、メタクリレートと共重合可能な酸を前記2つのポリマー相の合計に対して2〜10質量%含む、ことを特徴とする前記水性分散液の使用。
前記少なくとも2つのポリマー相からの分散液が、メタクリル酸アルキルエステル25〜78質量%、アクリル酸アルキルエステル4〜40質量%、メタクリレートと共重合可能な酸2〜9質量%、(メタ)アクリレートと共重合可能であるが、それ自身は(メタ)アクリレートではないさらなるモノマー20質量%までを有するポリマーを15〜64質量%含むことを特徴とする、請求項1に記載の水性分散液の使用。
前記分散液中のポリマーが、メタクリル酸アルキルエステル49〜65質量%、アクリル酸アルキルエステル17〜30質量%、(メタ)アクリル酸3〜8質量%、およびスチレン8〜15質量%を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の水性分散液の使用。
前記分散液中のポリマーが、少なくとも1つのさらなる官能基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル2〜12質量%をさらに含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の水性分散液の使用。
前記少なくとも1つのさらなる官能基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであり、かつ該ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが、前記ポリマー中に3〜7質量%含まれていることを特徴とする、請求項5に記載の水性分散液の使用。
第一のモノマー混合物がヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートを含んでおり、第二のモノマー混合物が(メタ)アクリレートと共重合可能なカルボン酸を含んでおり、かつ前記2つのモノマー混合物の質量比が1:9〜8:2であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の水性分散液の使用。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性結合剤、およびその結合剤から製造される、ヒートシール可能な被覆のためのヒートシール性塗料に関しており、前記被覆は、プライマーを使用せずにアルミニウムに付着し、被覆されたアルミニウムシートのPSおよび/またはPVCに対する優れたシール性を可能にするものであり、かつさらに40℃超の温度でも優れた耐ブロッキング性があることを特徴とするものである。
【0002】
PS表面、PVC表面または同じくPP表面に対してアルミニウムシートを被覆するためのヒートシール系は、食品産業において、すでに数年前から確立されている被覆剤である。例えば、前記ヒートシール性被覆は、ヨーグルト容器の蓋、同じくブリスタ−(Blister)、例えば、薬剤用のブリスタ−の内側のヒートシール性被覆がある。確立された系は、多くの場合、有機溶液または有機分散液をベースとしている。したがって、すでに数年前から、水性ヒートシール性塗料の開発の関心が大きくなっている。
【0003】
US6,194,514は、アルミニウム上のプライマー、ならびにこの乾燥されたプライマー上の水性結合剤の第二の層からなる水性2層系を明確に記載している。プライマーとして、例えば、2つの共重合体からなる水性ポリ(メタ)アクリレート分散液が記載されている。ここで、前記共重合体のうちの1つは、グリシジル官能性またはヒドロキシ官能性モノマーを2〜10質量%含んでおり、別の共重合体は、アクリル酸またはイタコン酸を2〜10質量%含んでいる。EP0417570は、上記材料をシールするための水性コポリマー分散液を開示している。この共重合体は、少なくとも70質量%がC
1〜C
4アルキルエステルを有するメタクリレート、ならびにアクリルアミド、メタクリルアミド、アミノアルキルアクリレート、またはアミノアルキルメタクリレートの群からの、少なくとも1種の官能性モノマーからなっている。この系は、確かに優れたヒートシール強度を示すが、2層系としてしか作用せず、溶媒をベースとする確立された系よりも必要な焼成時間(Einbrennzeiten)が明らかに長い。
【0004】
DE3921256では、水性ポリマー分散液がヒートシール性塗料として記載されている。ここで、水およびアンモニアを添加し、続いて溶媒を蒸留により除去して、溶液重合体から二次分散液が製造される。この方法は非常に費用がかかるものである。さらに、前記溶媒の残留物を、全く完全に除去するのはきわめて難しく、特に、食料品の接触を伴う用途の場合は欠点となりうる。
【0005】
EP0574803は、50〜150℃もしくは−50℃〜50℃のガラス転移温度を有する2つの共重合体を含む、シール可能な被覆のための水性分散液を記載している。ここで、前記2つの共重合体の1つは、3〜70質量%の酸官能性モノマーの含分を有している。しかし、前記系は、耐ブロッキング性およびヒートシールシーム強度(Heisssiegelnahtfestigkeit)の優れた組み合わせを有していない。ここで、耐ブロッキング性とは、ヒートシール性塗料が、シール温度を下回る温度で、第二のアルミニウムシートもしくは第二の、塗料が被覆されたアルミニウムシートと不所望に付着することであると理解される。この耐ブロッキング性は、特に被覆されたアルミニウムシートの貯蔵に関して役割を果たしている。
【0006】
WO2011/017388には、ヒートシール可能な被覆であって、−60〜0℃のガラス転移温度T
gであり、ならびにエチレン性不飽和の酸もしくはその無水物を0.2〜10質量%有する第一コポリマーを含む前記被覆のための水性分散液が記載されている。さらに、50〜120℃のガラス転移温度を有する、第二の硬質コポリマーが含まれている。これらの系も、耐ブロッキング性およびヒートシールシーム強度の充分な組合せを有していない。
【0007】
US6,368,707は、コポリマー分散液からなるヒートシール可能な基材を記載しており、この分散液中には、乳化重合を用いて製造された、高くても−10℃のガラス転移温度を有する(メタ)アクリレート系ポリマーが、水溶性もしくは水分散可能である、20℃超のガラス転移温度を有するコポリマーであって、そのカルボキシ基が塩基で中和された前記コポリマーと一緒に含まれている。アルミニウムに対するシール適性は記載されていない。
【0008】
本発明の課題は、先行技術を踏まえて、ヒートシール性塗料である水性結合剤分散液でアルミニウムシートを被覆するため、およびPSまたはPVCに対してアルミニウムシートをシールするための新規の方法を開発することであった。
【0009】
本発明の課題は、特に、プライマーを使用せずに塗布した後のヒートシールシーム強度が、少なくとも5N/15mmであることを実現できる相応の結合剤を開発することであった。
【0010】
本発明の課題は、殊に、適当な乾燥時間、およびシール後の優れた耐ブロッキング性を有する、水性分散液によるヒートシールのための方法を提供することであった。
【0011】
さらに、本発明の課題は、有機溶媒を含んでおらず、このような溶媒を使用せずに製造することができる水性結合剤分散液が使用される方法を開発することであった。特に、本発明の課題は、アンモニアを添加しなくても作用する水性結合剤分散液を提供することであった。
【0012】
特に、本発明の課題は、ポリスチレンに対してアルミニウムをシールする場合に、破断箇所がこのポリスチレン側にあることであった。
【0013】
さらなる明確に挙げられていない課題は、本願の記載、例、または先行技術より直接明らかにすることができる。
【0014】
前記課題は、スチレン、PET、PLA(ポリ乳酸)またはPVCに対してアルミニウム表面をシールするためのヒートシール性塗料における水性分散液の新規の使用により解決される。ここで、前記ヒートシール性塗料は、少なくとも50質量%が、好ましくは70〜95質量%が前記水性分散液から構成される。
【0015】
ここで、本発明により使用される水性分散液は、−20〜30℃、好ましくは−10〜25℃、特に好ましくは−5〜5℃のガラス転移温度を有する第一のポリマー相、および20〜50℃未満、好ましくは30〜45℃のガラス転移温度を有する第二のポリマー相を有している。ここで、前記第二のポリマー相は、前記2つのポリマー相の合計に対して2〜10質量%のメタクリレートと共重合可能な酸を含んでいる。
【0016】
前記ヒートシール性塗料は、シールの前に、好ましくは一層で前記アルミニウム表面に塗布される。ここで、前記含まれている水性分散液は、1つまたは複数のポリマーを15〜64質量%含んでいるのが好ましい。これらは、さらにまたメタクリル酸アルキルエステルを好ましくは25〜78質量%、特に好ましくは37〜〜70質量%、殊に好ましくは49〜65質量%、アクリル酸アルキルエステルを好ましくは4〜40質量%、特に好ましくは12〜35質量%、殊に好ましくは17〜30質量%、好ましくは(メタ)アクリル酸であるメタクリレートと共重合可能な酸を好ましくは2〜9質量%、特に好ましくは3〜8質量%、および(メタ)アクリレートと共重合可能であるが、しかし、それ自体は(メタ)アクリレートではなく、好ましくはスチレンであるさらなるモノマーを好ましくは20質量%まで、特に好ましくは4〜20質量%、殊に好ましくは8〜15質量%有している。
【0017】
さらに、前記分散液中の1つまたは複数のポリマーは、さらに、少なくとも1つのさらなる官能基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを2〜12質量%、好ましくは3〜7質量%、特に好ましくは4〜6質量%含んでいてよい。前記少なくとも1つのさらなる官能基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、好ましくは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0018】
(メタ)アクリル酸という表現は、本願の関連において、メタアクリル酸、アクリル酸またはそれらの混合物を示す。(メタ)アクリレートという表現にも同じことが当てはまり、この(メタ)アクリレートには、メタアクリレートもアクリレートもまたはそれらの混合物も含まれる。それと比べてアクリレートもしくはメタクリレートという表現は、それぞれ正にそれ自体であると理解される。
【0019】
特に、本発明は、ヒートシール性塗料における水性分散液の使用に関しており、ここで、この分散液中のポリマーは、メチルメタクリレートおよび/またはブチルメタクリレート25〜78質量%、好ましくは37〜70質量%、特に好ましくは49〜65質量%、アクリル酸C
1〜C
4アルキルエステル4〜40質量%、特に好ましくは12〜35質量%、特に好ましくは17〜30質量%、殊に好ましくは20〜30質量%、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート、特に好ましくはヒドロキシエチルアクリレート3〜7質量%、好ましくは4〜6質量%、(メタ)アクリル酸、特に好ましくはアクリル酸およびメタクリル酸の混合物2〜9質量%、好ましくは5〜7質量%、ならびにスチレン4〜20質量%、好ましくは8〜15質量%から構成されている。
【0020】
前記水性分散液は、乳化重合を用いて製造されるのが好ましい。ここで、−20〜30℃のガラス転移温度を有するポリマーになるべき第一のモノマー混合物が装入されて、このモノマー混合物の重合後に、20〜50℃未満のガラス転移温度を有するポリマーになるべき第二のモノマー混合物が添加されて、重合される。
【0021】
ここで、前記第一のモノマー混合物は、前記ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートを含んでおり、前記第二のモノマー混合物は、前記(メタ)アクリレートと共重合可能なカルボン酸を含んでいるのが特に好ましい。ここで、前記2つのモノマー混合物の質量比は、1:9〜8:2である。
【0022】
特に、前記第二のモノマー混合物は、調整剤を使用して、好ましくは前記モノマーに対して0.2質量%のn−DDM(n−ドデシルメルカプタン)を使用して重合することができる。
【0023】
特に、自体公知のアニオン性、カチオン性、または非イオン性の乳化剤および少なくとも1種のラジカル形成開始剤の存在下での水相における乳化重合は、2段階の反応で製造される。このような乳化重合は、その実施に関して、例えば、H.Rauch−Puntigam,Th.Voelker(Acryl− und Methacrylverbindungen,Springer−Verlag 1967,217〜230ページ)で確認できる。ここで、第一の重合段階は、供給法を用いて実施され、ここで、脱イオン水および乳化剤からの装入物に、撹拌器および加熱装置が装備された好適な反応容器内で、定められた温度に達した後、前記開始剤、特に無機過酸化物、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウムまたはペルオキソ二硫酸アンモニウム(KPS、APS)が、好ましくは水中に溶解させて、添加される。前記装入物中の開始剤の含有量は、前記第一段階の供給のモノマーに対して、例えば、0.01モル%〜2モル%の範囲にある。
【0024】
前記モノマーの総質量に対して0.01〜2.0質量%の量で使用されるイオン性乳化剤として、特に、アニオン性乳化剤が考慮に入れられる。その例は、Cyanamid BVのAEROSOL OT75(登録商標)、Evonik Tego Chemie GmbHのREWOPOL SB DO 75、またはDOW Europa SAのDowfax 2A1である。そのためには、前記供給バッチ法では、ある程度の時間にわたって、例えば2時間以内に、第一段階で前記特徴付けられた混合物が供給流として添加される。供給流1は、第一段階のモノマーと一緒に、水分全体を例えば20〜60質量%含んでいる。
【0025】
第一段階の重合後、さらにある程度の時間にわたって、例えば、1時間にわたって、高められた温度、例えば、80℃で後撹拌されてよい。その後、第二のモノマー組成物の供給が開始される前に、例えば30℃に冷却されてよい。 この第二の供給は、例えば、30分の時間にわたって行われてよい。次に、例えば40℃の第二の重合温度に加熱され、再び開始剤が添加される前に、前記混合物を例えば4時間の比較的長い時間にわたって、膨潤させるのが有利であることがある。ここで、レドックス開始剤が使用されるのが好ましい。その例は、ペルオキソ二硫酸塩、亜ジチオン酸塩および硫酸鉄である。添加後、発熱が観察され、その達成後、温度は、比較的高く、例えば80℃に調整される。最終的に、前記重合を完全にするために、例えば、2時間、後撹拌される。代替的に、第二の重合段階は、同じく供給重合として、例えば、2時間の時間にわたって実施されてよい。
【0026】
イオン性乳化剤の使用に対する代替案は、非イオン性乳化剤、例えば、エトキシ化アルコールまたはメトキシポリエチレングリコールのメタクリル酸エステル0.01〜5.0質量を添加することでもあり、例えば、Carbowax550またはアルキルフェノールが考えられる。イオン性乳化剤および非イオン性乳化剤の組み合わせも使用可能である。
【0027】
本発明による分散液の任意の使用では、シールの前にpH値を調整するため、少量のアンモニアが前記分散液に添加される。この実施態様によって、コロイド状の安定性および被覆特性の改善を達成することができる。
【0028】
一般に、このようにして製造された分散液は、直接、それ自体が被覆に使用されてよい。特別な場合、制限された量の増粘剤、耐ブロッキング剤または塗膜形成剤が添加されてよい。前記被覆は、スプレー、刷毛塗り、流し込み、浸漬、ドクターブレードまたはロールにより塗布することができる。一般に、アルミニウムシートへの塗布は、乾燥時に2〜10μmの層が形成されるような厚さで行われる。
【0029】
ポリメタクリレートの有機溶液、例えば、溶解された懸濁重合体の形態で、例えば、Evonik IndustriesのDEGALAN(登録商標)P 24の添加下に、本発明による水性分散液を使用することも可能である。代替案は、本発明による分散液にEP0417570A1に記載の水性メタクリレート分散液、例えば、Evonik IndustriesのDEGALAN(登録商標)4032 Dを添加することでもある。
【0030】
さらなる適用可能性では、本発明による分散液を用いて製造された,乾燥された被覆は、耐ブロッキング性および耐水性をさらに改善するために、EP0417570A1に記載の結合剤、例えば、DEGALAN(登録商標)4032 Dの層が被覆されてもよい。しかし、この任意の適用は、好ましくない、それというのは、このような措置によって一層のヒートシール層の利点が失われることがあり、本発明による分散液がすでにきわめて優れたヒートシール特性をもたらすからである。
【0031】
実際に、前記被覆されたアルミニウムシートの乾燥は、目的に応じて、乾燥炉または連続トンネル乾燥機(kontinuierlich durchlaufender Trockentunnel)において、場合によって減圧で、および100〜240℃の温度で行われる。必要な乾燥時間は、一般に、乾燥温度が高ければ高いほど短く、例えば、5秒〜5分である。場合によって、複数回塗布することも可能である。好ましくは、前記水性分散液は、非多孔性の独立気泡の基材表面、例えば、プラスチックシート、または特に金属シート、例えば、アルミニウムシートまたは鉄の表面に塗布するのに好適である。
【0032】
ヒートシールするために、前記被覆中では、前記ポリ(メタ)アクリレートのガラス転移温度が超過されていなければならない。ヒートシール温度は、接触時間が短ければ短いほど、必要なシール温度よりも高くなければならず、それだけいっそう前記基材層を通る熱伝導は悪くなる。薄い金属シートは、仮に、実際に、可能な限り迅速にシールするために、たいてい明らかに比較的高いヒートシール温度、例えば100〜240℃が選択されるにしても、きわめて優れた熱伝導性を有しており、前記ポリ(メタ)アクリレートの溶融温度をほんの少しだけ上回る前記ヒートシール性塗料の温度を許容する。プラスチック基材のガラス転移温度は、ヒートシール温度に限度を定めることがある。高いシール強度を達成するために、ヒートシールでの圧力は、少なくとも1kp/qcm、好ましくは3〜6kp/qcmが適用されるのが望ましい。
【0033】
ヒートシール試料のシールシーム強度の試験を、本発明の範囲において、DIN51221に準拠して実施する。
【0034】
本発明を説明するために以下の例を用いる。
【0035】
例
例1〜例11ならびに比較例1および比較例3の製造
使用する出発材料の合成の実施および種類は、例9に基づいて詳細に記載されている。例9は、第1表から読み取ることができる第一段階および第二段階のモノマー組成、ならびに以下に算出されるいくつかの出発材料の分配が、例1〜例8、例10および例11ならびに比較例1および比較例3とは異なる。重合は、すべて二段階で行い、ここで、それぞれモノマー520gを前記2つの段階に分配した。乳化剤含有量は、0.52%であり、そのうち52.4%を第一段階で、47.6%を第二段階で使用する。ここで、第一段階の乳化剤のうち、10%を反応器装入物に、90%を乳化で使用する。エマルションは、それぞれ含水量34質量%で作成する。開始剤として、第一段階のモノマーに対して0.09505モル%の過硫酸アンモニウム(APS)を使用する。さらに、第二段階のモノマーに対して0.1062モル%の開始剤を、第二段階のエマルションに添加する。
【0036】
例9の製造
Quickfitキャップ、温度計および撹拌器を備えるQuickfit丸底フラスコ1リットルに、VE(完全脱塩)水224g、乳化剤Rewopol SBDO75 0.19gを秤量導入して、水浴内で撹拌しながら(150rpm)内部温度を約80℃に加熱する。第一段階のエマルションを製造するために、Woulffボトル内で、Rewopol SBDO 75 1.70g、ヒドロキシエチルアクリレート36.40g、MMA162.0g、n−ブチルアクリレート165.6g、および完全脱塩水188.0gを秤量導入する。前記混合物を5分撹拌し、1分放置して、その後再び15分撹拌する。
【0037】
前記反応器装入物を、内部温度80℃に加熱して、次に、APS(10質量%)7.0mlを添加して、5分間撹拌する。3分間、前記エマルションを毎分3.3gの計量供給速度で計量供給する。ここで、わずかな温度上昇が起こり、計量供給を4分間中断する。ここで、残りのエマルションを、毎分3.3gの計量供給速度で計量供給して、終了後、20分、後撹拌する。
【0038】
第二段階のためのエマルションを製造するために、Woulffボトル内に、乳化剤Rewopol SBDO75 1.72g、アクリル酸15.6g、スチレン31.2g、n−ブチルメタクリレート109.2g、および完全脱塩水81gを秤量導入する。この混合物を5分撹拌し、1分放置して、その後再び15分撹拌する。さらに、過硫酸アンモニウム3.1gを添加して、強く撹拌する。
【0039】
第一段階の反応時間の終了後、第二段階は、毎分3.3gの計量供給速度で計量供給し、60分の後反応時間が続く。前記分散液の冷却後、この分散液を、150μmのふるいでろ過する。
【0040】
比較例VB2の製造
比較例VB2は、WO2011017388、例2の先行技術にしたがって製造した。
【0041】
使用するシート材料
厚さ38μmの軟質アルミニウムシート、ならびに厚さ500μmのPSシートおよびPVCシートを使用した。
【0042】
実験室におけるヒートシール分散液の塗布
前記水性結合剤を、KハンドコーターNo.3で塗布した。
【0043】
実験室における被覆されたシートの乾燥
前記シートを、前記水性結合剤の塗布直後に、循環炉内で15秒間、180℃にて乾燥させた。
【0044】
ヒートシールおよびシールシーム強度の確認
シールは、LOWA GmbH社のヒートシール装置で行った。
【0045】
シールシーム強度を確認するため、試料を15mm幅のストリップに切断して、Instron社引張試験機型式No.1195またはZwick社引張試験機型式No.1454で、毎分100mmの速度で引っ張った。この引き取り試験の間に、すでに互いに分離したシート部分が、まだ引き取られていない残部と角度90°を形成することに留意した。
【0046】
水浸漬
前記塗料の耐水性を測定するため、シールされたストリップを、48時間、水道水に浸け、続いて乾燥させて、その後、上述の通り、ヒートシール強度を測定した。
【0047】
切断点の測定:
切断点を測定するために、上述のヒートシール装置を使用するが、ここで、加熱されたチャックの1つを加熱されていないゴムチャックと取り替えた。2つの塗装されたアルミニウムストリップ(上述の通り準備されたもの)を、塗料と塗料とを合わせて、定められた温度にて、圧力1barで30秒間、前記装置内で押し付けた。切断点は、前記アルミニウムストリップの片方のみが固定されている場合に、前記アルミニウムストリップが互いに付着し続ける温度である。温度が比較的低い場合、前記アルミニウムストリップが分離し合うには前記ストリップ自体の重さで足りる。5℃毎に測定した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
例1〜例9および例11は、同一のモノマー構成要素であるが、個々の段階の範囲内では組成が明らかに異なり、特に段階1対段階2の比が明らかに異なる分散液を含んでいる。この幅広いバリエーションにもかかわらず、それでもなお一貫した優れたヒートシール強度が優れた耐ブロッキング性で得られる。例11(段階1の割合がごくわずかである)では、驚くべきことに、水浸漬後にPSに対する依然として優れた強度が観察できる。例10は、当業者に理解できる、個々のモノマーの比率の変化が維持される限り、ブチルアクリレートの使用は絶対に必須ではなく、前記モノマーが、例えば、エチルアクリレートで置き換えることができることを示している。しかし、比較的長い側鎖、例えば、n−ブチルアクリレートまたはエチルヘキシルアクリレートを有するモノマーを使用することによって、とりわけ、前記塗料のより優れた耐水性が期待できる。
【0052】
比較例1は、EP0574803に記載の先行技術からの系に相当しており、著しいヒートシール強度を示していない。
【0053】
比較例2は、WO2011017388の例2に相当する。耐ブロッキング性は、不充分であるにすぎない。
【0054】
比較例3は、単に不充分なヒートシール強度を示している。第一段階のガラス転移温度は、高すぎる。