特許第6297075号(P6297075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297075
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】プラスチック加飾部材の製造法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20180312BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20180312BHJP
   B32B 27/00 20060101ALN20180312BHJP
【FI】
   B29C45/14
   B29C33/12
   !B32B27/00 E
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-14501(P2016-14501)
(22)【出願日】2016年1月28日
(62)【分割の表示】特願2014-533813(P2014-533813)の分割
【原出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2016-106049(P2016-106049A)
(43)【公開日】2016年6月16日
【審査請求日】2016年2月15日
(31)【優先権主張番号】11183930.4
(32)【優先日】2011年10月5日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ルクス
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ リーグラー
(72)【発明者】
【氏名】アーメト トゥラン
(72)【発明者】
【氏名】リム ベニャヒア
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−55271(JP,A)
【文献】 特開2003−11156(JP,A)
【文献】 特開2011−83961(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/123226(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/14
B29C 33/12
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック加飾部材の製造法であって、
a.ポリマーフィルム(2)を熱により予め成形し、
b.熱により予め成形された前記ポリマーフィルム(2)上に、少なくとも250℃の温度で分解に対して安定な、不透明若しくは部分的に不透明なインプリント部分(4)又は顔料着色部分を設け、
c.前記ポリマーフィルム(2)を、射出成形用金型に装填し、
d.該ポリマーフィルム(2)の後方でポリマーキャリア部材(1)を射出して、不透明なポリマーキャリア部材(1)を形成し、かつ
e.透明なポリマーカバー部材(3)を該ポリマーフィルム(2)及びポリマーキャリア部材(1)上に射出する、プラスチック加飾部材の製造法。
【請求項2】
前記ポリマーキャリア部材(1)が、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、アクリルエステル−スチレン−アクリロニトリル(ASA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ポリカーボネート(ABS/PC)、PET/PC、PBT/PC又はこれらのコポリマー若しくは混合物を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーキャリア部材(1)を、0.5mm〜10mmの厚みで射出成形する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーカバー部材(3)が、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はこれらのコポリマー若しくは混合物を含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーカバー部材(3)上に、ハードコート(6)を施与する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーフィルム(2)が、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート(PBT/PC)、スチレン−アクリロニトリル(SAN)又はこれらのコポリマー若しくは混合物を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマーフィルム(2)が、0.1mm〜3mmの厚みを有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーフィルム(2)を、静電放電により、機械的に又は真空吸引により射出成形用金型に固定する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック加飾部材の製造法、プラスチック加飾部材及びその使用を包含する。
【背景技術】
【0002】
自動車における二酸化炭素排出量に対する規準がますます厳しくなっていく中で、さらに、車両の重量ひいてはその燃料消費量を低減することにも著しい努力がなされている。プラスチック分野における絶え間ない開発によって、金属製の車体の大部分を、より軽量のポリマー材料によって置き換えることが可能になる。特に窓領域の部材、あるいはまた窓領域全体を、ポリマー材料から成る部材で代用することができる。これらは、多くの場合において、明らかにより低い重量で、鋼鉄製の車体窓の場合に匹敵する硬度、安定性及び耐負荷性を示す。さらに、重量低下に基づいて、車両の重心がさらに下方に移動され、これはハンドリングに良い影響を及ぼす。そのうえ、ポリマー材料は、金属と比較して明らかにより低い温度で製造、加工及び成形することができる。これにより材料を製造する際に必要とされるエネルギー量及びコストが低減される。
【0003】
ここで、ポリマー材料から成る成形部材は、実際には任意の所望の形状及び幾何学的配置で製造することができる。例えばアラミド又はケブラーといった特定の高性能プラスチックは、非常に高い強度及び安定性を示す。
【0004】
プラスチックから成る多くの材料部材は、様々な要求及び機能を満たさなければならない。この場合に重要なパラメータは、安定性、破壊挙動、引掻強度、耐衝撃性又はノッチ付き衝撃強さである。個々の構成部材の重量及び強度といった技術的な観点に加えて、形状、幾何学的配置及び外観も、ますます重要な役割を果たすようになってきている。なかでも自動車工業においては、機械的な特性に加えて、デザイン及び美的な外見の領域における特徴も非常に大切である。
【0005】
ポリマー材料における様々な特徴を一つにまとめるために、これらは、様々に形作られた、かつ様々な性質を持ったベース材料から構成されている。これらの材料を製造するための既定の方法は、2種類以上の成分の射出成形法を包含している。この方法で、例えば、耐候性、表面光沢及び耐破壊性又はねじれ安定性といった特徴を互いに一つにまとめることが可能である。そのうえ、非常に高価な材料の割合を低減することができる。
【0006】
DE19633959A1は、キャリアと外側の加飾フィルムとから成る成形体を開示している。外側のフィルムは、加飾層及び保護層を有し、ここで、保護層は、光重合可能な樹脂組成物から成る。
【0007】
WO2006/094484A1は、2つの成分を含む平面状のプラスチックボディ部材の製造法を開示している。有利な実施形態においては、第一の成分は、透明なポリカーボネートから成り、かつ第二の成分は、不透明なポリカーボネートから成る。
【0008】
DE19722551A1は、2成分射出成形法でのプラスチック部材の製造法を開示している。
【0009】
EP1695808A1は、自動車用の加飾部材、例えば加飾ストリップを開示している。加飾部材は、熱可塑性プラスチックとカバー部材とから成るキャリア部材を包含する。加飾部材は、有利には多成分射出成形法により製造される。
【0010】
光学的な効果を生じると共に表面を封止するために確立されている方法は、フィルムインサート成形法(FIM/フィルムインサート成形)である。この方法では、相応するフィルムが射出成形用金型に装填され、かつ適切なプラスチックが後方から射出される。この方法で、ポリマー材料の表面特性及び幾何学的配置に、適切かつ多面的に影響を及ぼし、かつ変更を加えることができる。しかしながら、フィルムインサート成形の方法を適用するための前提条件は、フィルムが温度安定性であることである。そのうえ、フィルム上に存在するインプリント部分も、ポリカーボネートといった液体ポリマーによる後方からの射出に耐えられる程度に耐熱性でなければならない。そのうえ、この方法では、ポリマー相内部の材料の適切な変性は不可能である。ここで、特に透明な材料は、空間的及び視覚的な造形可能性について幅広い選択肢を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】DE19633959A1
【特許文献2】WO2006/094484A1
【特許文献3】DE19722551A1
【特許文献4】EP1695808A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、部分的に透明な部分を有する材料ボディの光学特性及び外観を調整及び変更することができる方法を提供するという課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の前記課題は、独立請求項に記載の方法によって解決される。
【0014】
本発明の有利な実施態様は、それぞれの従属請求項から明らかとなる。
【0015】
プラスチック加飾部材を製造するための本発明による方法は、ポリマーフィルムを射出成形用金型にインサートする第一の工程を包含する。引き続き、このポリマーフィルムの後方から、不透明なポリマー材料相が射出され、これがプラスチック加飾部材のキャリア部材を形成する。"フィルム"との用語は、本発明によれば、均質な一成分若しくは多成分フィルムのみならず、異なるか、若しくは同一の材料から織られた、編まれた、若しくは層状の多成分フィルム又はテキスタイルも一緒に包含する。ポリマーフィルムは、有利には静電的相互作用により射出成形用金型の鋼表面に固定される。静電荷は有利には、電荷発生器から高電圧を供給される帯電電極により無接触でポリマーフィルムに移動させられる。代替的に、ポリマーフィルムは、機械的に又は真空吸引により射出成形用金型に固定することができる。ポリマーキャリア材料の液状の出発材料は、射出成形用金型内のフィルム上に射出され、このようにしてポリマーフィルムとキャリア部材との間で素材結合が得られる。ポリマーキャリア部材は、プラスチック加飾部材の安定性を保証し、かつ可能な限り高い強度、引掻強度、耐衝撃性又はノッチ付き衝撃強さ及びより低い破壊感受性を有するポリマー材料を含有する。代替的な実施態様においては、まずキャリア部材が射出成形され、かつ射出成形用金型が開かれた後に、ポリマーフィルム、有利には自己粘着性ポリマーフィルムが、完成したキャリア部材上に配置される。ポリマーフィルムは、少なくとも250℃の温度、有利には少なくとも320℃の温度で分解に対して安定な、不透明若しくは部分的に不透明なインプリント部分(Aufdruck)又は顔料着色部分(Farbpigmentierung)を有する。"部分的に不透明なインプリント部分"との表現は、本発明によれば、カラーインプリント部分及びグレースケールにおけるプリント部分も包含する。不透明なインプリント部分は、有利には、温度安定性の有機顔料を有する印刷インキ、例えばウレタンアクリレートポリマー、炭素、アゾ染料又は多環式化合物を含有する。代替的に、無機顔料、例えば二酸化チタン、カーボンブラック、辰砂、ビスマス顔料(バナジン酸ビスマス)、スピネル顔料、鉛顔料、水銀顔料、ジルコン顔料、鉄顔料、カドミウム顔料、銅顔料、コバルト顔料、ニッケル顔料、クロム顔料;アルミニウムシリケート(群青)が含まれていてよい。より高い温度安定性に基づき、有利には無機顔料が使用される。代替的な態様においては、着色顔料は、均質にポリマーフィルム中に組み込まれていてもよい。これは、例えば、着色顔料をポリマーフィルムの粒状物に混ぜて、結果生じる混合物を続けて押出することによって行うことができる。更に別の任意の可能性としては、着色顔料を溶液としてポリマーフィルム上に噴霧してもよい。最後の工程においては、ポリマーカバー部材が、ポリマーフィルム及びポリマーキャリア部材の構造体上に注入される。ポリマーカバー部材は、有利には光学的に透明に形成される。ポリマーカバー部材は、有利には、400nm〜800nmの範囲で60%超、有利には80%超の平均(波長全体で平均化)光透過率を有する。高い光透過率は、僅かばかりの正味重量及び高い成形性と一緒に、ポリマーカバー部材にガラス様の外観を付与する。
【0016】
プラスチック加飾部材は、有利には多成分−射出成形法若しくは多成分−射出圧縮成形法で、特に有利にはターニングプレート(Wendelplatten)、ロータリーテーブル(Drehteller)及び/又はインデックスプレート(Indexplatten)を使った技法と組み合わせて製造される。代替的に、プラスチック加飾部材は、ターニングプレート、ロータリーテーブル及び/又はインデックスプレートを使った技法単独でも製造されることができる。
【0017】
ポリマーキャリア部材は、有利にはポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、有利にはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、アクリルエステル−スチレン−アクリロニトリル(ASA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ポリカーボネート(ABS/PC)、PET/PC、PBT/PC及び/又はこれらのコポリマー若しくは混合物を含有する。
【0018】
ポリマーキャリア部材は、有利には不透明若しくは部分的に不透明に形成される。ポリマーキャリア部材の不透明な着色は、有利には透明なポリマーカバー部材との対比によって、ポリマーフィルムのインプリント部分を際立たせる。
【0019】
ポリマーキャリア部材は、有利には0.5mm〜10mmの厚みで、特に有利には1mm〜5mmの厚みで射出成形される。ポリマーキャリア部材の厚みは、完成した構成部材の寸法及び安定性要件に依存する。
【0020】
ポリマーカバー部材上には、有利にはハードコート、特に有利には熱硬化性若しくはUV硬化性の塗料、殊に有利にはポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート及び/又はこれらの混合物又はコポリマーが施与される。ハードコートは、エージング、機械的な消耗現象、引掻損傷、風化による影響、紫外線並びに/又は空気若しくは飛沫からの腐食性化学薬品に対する耐性を改善する。付加的に、ハードコートは、さらに装飾的な機能、例えば光沢効果又はパール効果も発揮することができる。
【0021】
ポリマーフィルムは、有利にはポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート(PBT/PC)、スチレン−アクリロニトリル(SAN)及び/又はこれらのコポリマー若しくは混合物を含有する。
【0022】
ポリマーフィルムは、0.1mm〜3mm、有利には0.12mm〜1mmの厚みを有する。大きさは、ポリマーキャリア部材及びポリマーカバー部材の寸法に依存して変動し得る。ポリマーフィルムは、予め成形され、特に有利には熱により予め成形される。ポリマーフィルムを予め形状付与に供することにより、カバー部材の幾何学的形状に、より適切に適合させることが可能になる。さらに、このことにより、ポリマーフィルムの後方でポリマーキャリア部材を射出する際に、ポリマーキャリア部材とポリマーフィルムとの間でポリマー材料相が浸潤することが回避される。
【0023】
さらに、本発明は、少なくとも1つのキャリア部材、ポリマーカバー部材及びポリマーフィルムを包含するプラスチック加飾部材を包含する。ポリマーフィルムは、ポリマーキャリア部材とポリマーカバー部材との間に配置されており、ここで、ポリマーフィルムは、少なくとも250℃、有利には320℃の温度で分解に対して安定な、不透明若しくは部分的に不透明なインプリント部分を有する。ポリマーキャリア部材は、プラスチック加飾部材の安定性を保証し、かつ上記の通り、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、有利にはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、アクリルエステル−スチレン−アクリロニトリル(ASA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ポリカーボネート(ABS/PC)、PET/PC、PBT/PC及び/又はこれらのコポリマー若しくは混合物を含有する。
【0024】
ポリマーキャリア部材は、有利には無機充填材又は有機充填材、特に有利にはSiO2、Al23、TiO2、粘土鉱物、シリケート、ゼオライト、ガラス繊維、炭素繊維、ガラス球、有機繊維及び/又はこれらの混合物を含有する。充填材は、キャリア部材の安定性をさらに高めることができる。そのうえ、充填材は、ポリマー材料の割合を減らすことができ、そのため構成部材の製造コストを下げることができる。
【0025】
ポリマーカバー部材は、装飾的な機能も、道具としての安定性の領域での機能も担うことができる。これに関する例は、耐候性、耐紫外線又は耐化学性を高める表面又はコーティングである。ポリマーフィルムは、少なくとも250℃、有利には320℃の温度で分解に対して安定な、不透明若しくは部分的に不透明なインプリント部分のキャリアとして用いられる。不透明若しくは部分的に不透明なインプリント部分の高い温度安定性は必要不可欠である。なぜなら、それがないと、インプリント部分又は顔料着色部分は、ポリマーカバー部材の注入時に分解するか又は浸出する恐れがあるからである。不透明若しくは部分的に不透明なインプリント部分は、有利には150℃〜350℃、特に有利には200℃〜320℃の範囲で、分解に対して熱的に安定である。ポリマーフィルムは、有利には、同様に少なくとも150℃、特に有利には少なくとも320℃で分解に対して安定であり、さもなければ、気泡及び変色が、完成したワークピースのポリマーフィルムの領域で生じる可能性がある。
【0026】
ポリマーキャリア部材は、有利には不透明に形成されており、かつポリマーカバー部材は、有利には透明に形成されている。この態様においては、不透明若しくは部分的に不透明なインプリント部分は非常に良好に目視可能である。
【0027】
ポリマーフィルムは、有利には200℃〜300℃の範囲で、熱分解に対して安定である。この場合、適したフィルム材料は、なかでもポリメチルメタクリレート(PMMA)及びポリカーボネート(PC)である。これらのポリマーフィルムは、カバー部材を形成する多数の透明なポリマーで重ねて射出することができる。ポリマーフィルムは、代替的な態様においては、彩色されているか、黒色若しくは灰色に着色されていてもよい。
【0028】
ポリマーキャリア部材とポリマーカバー部材との間には、有利には、ポリマーフィルムを有していない0.1cm〜5cmの周縁領域が配置されている。フィルムを有していない周縁領域は、非常に均一な周縁シールを保証する。付加的に、周縁領域は、装飾的な機能を担うことができる。
【0029】
本発明は、さらに、乗り物、有利にはピラーカバー、計器盤部品又は配電盤部品における、屋内用途又は屋外用途のためのプラスチック加飾部材の使用を包含する。プラスチック加飾部材は、有利には、自動車におけるAピラー、Bピラー又はCピラーの被覆部として使用される。
【0030】
以下では、本発明を、図面を手がかりにして詳細に説明する。図面は、単に概略的に説明するものであり、かつ縮尺通りではない。これらは、本発明を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】先行技術によるプラスチック加飾部材の略図を示す
図2】本発明によるプラスチック加飾部材の略図を示す
図3】プラスチック加飾部材の本発明による製造法のフローチャートを示す
【0032】
図1は、先行技術によるプラスチック加飾部材(I)の略図を示す。ポリマーキャリア部材(1)、例えば自動車の計器盤のコンポーネント上には、装飾的なインプリント部分(4)を有するポリマーフィルム(2)が配置されている。周縁領域(5)の色は、ポリマーキャリア部材(1)と同じでも、他の色でもよい。
【0033】
図2は、本発明によるプラスチック加飾部材(II)の略図を示す。アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)製の不透明なポリマーキャリア部材(1)上には、PC又はPMMA製の透明なポリマーカバー部材(3)が配置されている。ポリマーキャリア部材(1)とポリマーカバー部材(3)との間には、装飾的なインプリント部分(4)を有するポリマーフィルムが配置されている。透明なポリマーカバー部材(3)は、ポリマーフィルム(2)を、紫外線、摩耗及び損傷から保護し、かつ同時にポリマーフィルムの装飾的なインプリント部分(4)(例えばspinel black No.38,銅−クロム−鉄−スピネル,Kremer Pigmente GmbH & Co.KG,Aichstetten,Germany)の表面上でガラス様の効果を生み出す。装飾的なインプリント部分(4)を有するポリマーフィルム(2)は、周縁領域(5)により取り囲まれている。
【0034】
図3は、本発明によるプラスチック加飾部材(II)の製造法のフローチャートを示す。第一の工程段階では、ポリマーフィルム(2)に、少なくとも320℃の温度で分解に対して安定な、不透明若しくは部分的に不透明なインプリント部分(4)を備え付ける。インプリント部分(4)は、有利にはスクリーン印刷法又はインクジェット印刷法により施す。ポリマーフィルム(2)を、引き続き射出成形用金型に装填し、かつポリマーキャリア部材(1)(ポリマーキャリア部材の液化ポリマー材料)を後方から射出する。最後の工程では、ポリマーカバー部材(3)を、ポリマーフィルム(2)及びポリマーキャリア部材(1)上に注入する。ポリマーカバー部材(3)の硬化後、有利にはさらにハードコートを、機械的安定性及び化学的安定性の改善のために施与する。殊にポリカーボネート(PC)製のカバー部材の場合、有利にはハードコートを施与する。ハードコートは、流し塗り、スプレー塗り、浸し塗りの方法により、ポリマーカバー部材に施与することができる。ポリマーカバー部材(2)をポリシロキサン−ハードコートでコーティングする場合、さらに、通常は安全ガラスのみに課せられる非常に高い要件を満たすことができる(硬質プラスチック製のガラス,ECE R43 Annex 14,Class/M)。
【符号の説明】
【0035】
(1) ポリマーキャリア部材、 (2) ポリマーフィルム、 (3) ポリマーカバー部材、 (4) インプリント部分、 (5) 周縁領域、 (I) 先行技術に従ったプラスチック加飾部材、 (II) 本発明によるプラスチック加飾部材
図1
図2
図3