特許第6297076号(P6297076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6297076-トランスミッション 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297076
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】トランスミッション
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/021 20120101AFI20180312BHJP
【FI】
   F16H57/021
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-15620(P2016-15620)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2017-133649(P2017-133649A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2017年11月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 恭太
(72)【発明者】
【氏名】檀上 弥輝
(72)【発明者】
【氏名】原田 淳平
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−116625(JP,A)
【文献】 特開平6−323380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/021
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるトランスミッションであって、
第1回転軸と、第2回転軸と、サンギヤ、キャリア、ピニオンギヤおよびリングギヤを含む遊星歯車機構とを備え、
前記第1回転軸の回転軸線方向の一方側の第1端部に、当該第1端部の端面で開放される中空部が形成されており、
前記中空部は、回転軸線を中心とする円筒状の内周面を有し、
前記第2回転軸の回転軸線方向の他方側の第2端部は、前記内周面の内径よりも小さい外径を有する円柱状に形成され、前記中空部に挿入されており、
前記内周面と前記第2端部の外周面との間に、ベアリングが介在されており、
前記遊星歯車機構は、前記中空部の周囲に設けられ、
前記サンギヤは、前記第1回転軸における前記中空部が形成されている部分に外嵌されている、トランスミッション
【請求項2】
入力側のプライマリプーリと出力側のセカンダリプーリとの間に無端状のベルトが巻き掛けられた構成を有し、
前記セカンダリプーリは、前記第1回転軸に支持されており、固定シーブ、前記固定シーブに対して回転軸線方向に移動可能に設けられた可動シーブおよび可動シーブとの間に前記可動シーブに作用する油圧が供給されるピストン室を形成するピストンとを含み、
前記ピストンには、第2のベアリングの内輪が固定されており、
前記第2のベアリングの外輪がケースに保持されることにより、前記第1回転軸が前記第2のベアリングを介して前記ケースに支持されている、請求項1に記載のトランスミッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のトランスミッションに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両では、駆動源からの動力がトランスミッション(変速機)に入力され、トランスミッションで変速された動力がトランスファやデファレンシャルなどを介して駆動輪に伝達される。
【0003】
トランスミッションには、複数の回転軸が備えられている。たとえば、ベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)では、入力側のプライマリプーリと出力側のセカンダリプーリとの間に無端状のベルトが巻き掛けられており、動力が入力されるインプット軸および動力を出力するアウトプット軸に加え、プライマリプーリおよびセカンダリプーリをそれぞれ支持するプライマリ軸およびセカンダリ軸が備えられている。
【0004】
トランスミッションでは、複数の回転軸のうちの2つを同軸上に並べて配置したレイアウトが採用されることがある。この場合、同軸上に並べて配置される2つの回転軸は、それぞれの両端部に外嵌されるベアリングを介して、トランスミッションのケースに支持される。そのため、同軸上に4つのベアリングが並び、トランスミッションの軸線方向の寸法が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−145682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、軸線方向の寸法の縮小を図ることができる、トランスミッションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係るトランスミッションは、車両に搭載されるトランスミッションであって、第1回転軸と、第2回転軸と、サンギヤ、キャリア、ピニオンギヤおよびリングギヤを含む遊星歯車機構とを備え、第1回転軸の回転軸線方向の一方側の第1端部に、当該第1端部の端面で開放される中空部が形成されており、中空部は、回転軸線を中心とする円筒状の内周面を有し、第2回転軸の回転軸線方向の他方側の第2端部は、内周面の内径よりも小さい外径を有する円柱状に形成され、中空部に挿入されており、内周面と第2端部の外周面との間に、ベアリングが介在されており、遊星歯車機構は、中空部の周囲に設けられ、サンギヤは、第1回転軸における中空部が形成されている部分に外嵌されている。
【0008】
この構成によれば、第1回転軸の第1端部には、中空部が形成されている。中空部は、回転軸線方向の一方側に開放され、回転軸線を中心とする円筒状の内周面を有している。一方、第2回転軸の第2端部は、内周面の内径よりも小さい外径を有する円柱状に形成されている。そして、第2端部は、中空部に挿入されて、その外周面と中空部の内周面との間に介在されるベアリングに支持されている。これにより、その第2端部を支持するベアリングと第1回転軸の第1端部を支持するベアリングとの距離を短くすることができる。その結果、トランスミッションの軸線方向の寸法を縮小することができ、トランスミッションケースなどの小型化による軽量化を図ることができる。
トランスミッションは、入力側のプライマリプーリと出力側のセカンダリプーリとの間に無端状のベルトが巻き掛けられた構成を有し、セカンダリプーリは、第1回転軸に支持されており、固定シーブ、固定シーブに対して回転軸線方向に移動可能に設けられた可動シーブおよび可動シーブとの間に可動シーブに作用する油圧が供給されるピストン室を形成するピストンとを含み、ピストンには、第2のベアリングの内輪が固定されており、第2のベアリングの外輪がケースに保持されることにより、第1回転軸が前記第2のベアリングを介してケースに支持されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トランスミッションの軸線方向の寸法を縮小することができ、トランスミッションケースなどの小型化による軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る軸支持構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
<構成>
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る軸支持構造1を示す断面図である。なお、図1では、断面を示すハッチングの付与が省略されている。
【0014】
軸支持構造1は、車両のトランスミッションに適用される。ベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)11は、車両のトランスミッションの一例であり、入力側のプライマリプーリと出力側のセカンダリプーリ12との間に無端状のベルト13が巻き掛けられた構成を有している。図1には、無段変速機11の出力側の構成が示されている。
【0015】
無段変速機11は、セカンダリプーリ12を支持するセカンダリ軸14と、セカンダリ軸14に伝達される動力を出力するためのアウトプット軸15とを備えている。セカンダリ軸14とアウトプット軸15とは、同軸上に配置され、それらの回転軸線が一致している。
【0016】
セカンダリ軸14には、セカンダリプーリ12の固定シーブ16が一体に形成されている。セカンダリプーリ12の可動シーブ17は、固定シーブ16に対して回転軸線方向の一方側(図1における右側。以下、「右側」という。)において、セカンダリ軸14に外嵌されて、回転軸線方向に移動可能に設けられている。可動シーブ17のシーブ面は、ベルト13を挟んで、固定シーブ16のシーブ面と対向している。
【0017】
可動シーブ17の右側には、ピストン18が設けられている。可動シーブ17とピストン18との間には、可動シーブ17に作用する油圧が供給されるピストン室(油室)19が形成されている。ピストン18は、セカンダリ軸14に外嵌されている。セカンダリ軸14におけるピストン18が外嵌される部分は、可動シーブ17が外嵌されている部分よりも小径に形成され、セカンダリ軸14の外周面には、可動シーブ17が外嵌されている部分とピストン18が外嵌されている部分との間で段差が生じている。
【0018】
その段差によって形成される面20とピストン18の内周端部との間には、可動シーブ17の移動を規制するための円環板状のストッパ21が介在されている。
【0019】
また、セカンダリ軸14の外周面において、ピストン18が外嵌されている部分の右側に隣接する部分には、ねじ22が切られている。ねじ22が切られた部分には、ロックナット23が螺着される。このロックナット23の締め付けにより、ピストン18およびストッパ21の各内周端部が面20とロックナット23との間で圧接されて、ピストン18およびストッパ21がセカンダリ軸14に固定されている。
【0020】
セカンダリ軸14には、回転軸線に沿って延びる軸心油路24が形成されている。軸心油路24は、セカンダリ軸14の回転軸線方向の他方側(図1における左側。以下、「左側」という。)の端面で開放されている。
【0021】
セカンダリ軸14の左側の端部25は、固定シーブ16から左側に突出している。端部25には、ベアリング31の内輪(インナレース)32が外嵌されている。ベアリング31の外輪(アウタレース)33は、無段変速機11のケース34に保持されている。
【0022】
また、ピストン18は、セカンダリ軸14の外周面から回転径方向に延び、途中部が左側に屈曲して延びている。その左側に延びた部分には、ベアリング35の内輪36が外嵌されている。ベアリング35の外輪37は、ケース34に保持されている。
【0023】
これにより、セカンダリ軸14は、2つのベアリング31,35を介してケース34に支持されている。
【0024】
セカンダリ軸14の右側の端部38は、ねじ22が切られた部分からさらに右側に延びている。端部38には、その端面で開放される中空部39が形成されている。中空部39は、セカンダリ軸14の回転軸線を中心とする円筒状の内周面40を有している。内周面40は、セカンダリ軸14の外周面に切られたねじ22の右側の端部と回転軸線方向に微小な幅でオーバラップしている。これにより、ロックナット23は、中空部39に対して回転軸線方向にずれた位置に螺着される。
【0025】
アウトプット軸15の左側の端部41は、セカンダリ軸14の中空部39の内周面40の内径よりも小さい外径を有する円柱状に形成されている。端部41は、中空部39に挿入されている。中空部39の内周面40と端部41の外周面42との間には、ベアリング43が介在されている。ベアリング43は、複数の転動体を保持器で保持した構成のケージ&ローラ形ニードル軸受である。
【0026】
アウトプット軸15の右側の端部44には、ベアリング45が外嵌されている。ベアリング45は、内輪を有していない針状ころ軸受である。ベアリング45の外輪46は、ケース34に保持されている。
【0027】
これにより、アウトプット軸15は、端部41がベアリング43を介してセカンダリ軸14に支持され、端部44がベアリング45を介してケース34に支持されることにより、ケース34に回転可能に支持されている。
【0028】
また、アウトプット軸15には、ベアリング45の左側において、パーキングギヤ47が外嵌されている。パーキングギヤ47は、アウトプット軸15の外周面に対してスプライン嵌合している。
中空部39、つまりセカンダリ軸14とアウトプット軸15との接続部分の周囲には、遊星歯車機構51が設けられている。遊星歯車機構51は、サンギヤ52、キャリア53、ピニオンギヤ54およびリングギヤ55を備えている。
サンギヤ52は、セカンダリ軸14の中空部39が形成されている部分、つまりロックナット23が螺着されている部分の右側に隣接する部分に外嵌されてスプライン係合している。
キャリア53は、アウトプット軸15に相対回転可能に外嵌されている。具体的には、キャリア53は、キャリア53の回転を制動/許容するブレーキBのブレーキハブ61と一体回転可能に設けられている。具体的には、ブレーキハブ61は、アウトプット軸15に外嵌されたベアリング62の外輪から回転径方向の外側に延びる略円環板状の板状部63と、板状部63の外周端部から左側に延びる略円筒状の円筒状部64とを一体的に有している。キャリア53は、円筒状部64の左側の端部から回転径方向の内側に延びている。
ピニオンギヤ54は、キャリア53に回転可能に保持されて、サンギヤ52と噛合している。
リングギヤ55は、ピニオンギヤ54を取り囲む略円筒状を有し、サンギヤ52とリングギヤ55とを直結/分離するクラッチCのクラッチドラム65に相対回転不能に保持されている。クラッチドラム65は、ベアリング62の左側でアウトプット軸15に固定され、アウトプット軸15からブレーキハブ61の板状部63の左側を回転径方向の外側に延びる略円環板状の板状部66と、ブレーキハブ61の円筒状部64の回転径方向の内側で、板状部66の外周端部から左側に延びる略円筒状の円筒状部67とを一体的に有している。リングギヤ55は、円筒状部67に保持されて、ピニオンギヤ54に回転径方向の外側から噛合している。
クラッチCが係合され、ブレーキBが解放された状態では、遊星歯車機構51のサンギヤ52とリングギヤ55とが直結される。そのため、アウトプット軸15は、セカンダリ軸14と同一方向に同一回転速度で回転する。
一方、クラッチCが解放され、ブレーキBが係合された状態では、遊星歯車機構51のキャリア53が制動される。そのため、セカンダリ軸14およびサンギヤ52が回転すると、遊星歯車機構51のリングギヤ55がサンギヤ52と逆方向にサンギヤ52よりも低速で回転する。したがって、アウトプット軸15は、セカンダリ軸14と逆方向にセカンダリ軸14よりも低速で回転する。
【0029】
<作用効果>
【0030】
この構成によれば、セカンダリ軸14の端部38には、中空部39が形成されている。中空部39は、右側に開放され、回転軸線を中心とする円筒状の内周面40を有している。一方、アウトプット軸15の端部41は、内周面40の内径よりも小さい外径を有する円柱状に形成されている。そして、端部41は、中空部39に挿入されて、その外周面42と中空部39の内周面40との間に介在されるベアリング43に支持されている。これにより、その端部41を支持するベアリング43とセカンダリ軸14の端部38を支持するベアリング35との距離を短くすることができる。その結果、無段変速機11の軸線方向の寸法を縮小することができ、ケース34などの小型化による軽量化を図ることができる。ひいては、無段変速機11の小型化により、無段変速機11の車両への搭載性の向上を図ることができる。
【0031】
<変形例>
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することができる。
【0033】
前述の実施形態では、第1回転軸および第2回転軸がそれぞれセカンダリ軸14およびアウトプット軸15である場合を例にとったが、無段変速機11の他の回転軸、たとえば、プライマリプーリを支持するプライマリ軸および駆動源からの動力が入力されるインプット軸がそれぞれ本発明に係る第1回転軸および第2回転軸とされてもよい。
【0034】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 軸支持構造
11 無段変速機(トランスミッション)
14 セカンダリ軸(第1回転軸)
15 アウトプット軸(第2回転軸)
38 端部(第1端部)
39 中空部
40 内周面
41 端部(第2端部)
42 外周面
43 ベアリング
図1