特許第6297117号(P6297117)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297117
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】室温加硫性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20180312BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20180312BHJP
   C08L 83/08 20060101ALI20180312BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20180312BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20180312BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20180312BHJP
   C09D 183/06 20060101ALI20180312BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180312BHJP
   C09D 183/08 20060101ALI20180312BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20180312BHJP
   C09C 3/12 20060101ALI20180312BHJP
   C09C 3/10 20060101ALI20180312BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   C08L83/06
   C08K3/26
   C08L83/08
   C08K9/04
   C08J3/20 BCFH
   C08K5/544
   C09D183/06
   C09D7/12
   C09D183/08
   C09C3/08
   C09C3/12
   C09C3/10
   C09K3/10 G
   C09K3/10 Q
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-197447(P2016-197447)
(22)【出願日】2016年10月5日
(62)【分割の表示】特願2014-513631(P2014-513631)の分割
【原出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2017-39945(P2017-39945A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2016年10月18日
(31)【優先権主張番号】61/491,940
(32)【優先日】2011年6月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ コーニング コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ステファン アルトム
(72)【発明者】
【氏名】アーロン ジェイ ザイツ
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−306488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/06
C08J 3/20
C08K 3/26
C08K 5/544
C08K 9/04
C08L 83/08
C09C 3/08
C09C 3/10
C09C 3/12
C09D 7/40
C09D 183/06
C09D 183/08
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分の非存在下で5℃以下の温度において貯蔵安定性を有するが、水分に暴露されると室温でシリコーンエラストマーへと硬化可能なシリコーンエラストマー組成物であって、該組成物は、次の成分:
(i)ジメチルヒドロキシ末端ジメチルシロキサン:100重量部、
(ii)疎水性となるように処理されるまたは処理されない炭酸カルシウム、
(iii)メチルビニルジ(N−エチルアセトアミド)シラン:2.5〜10重量部、
(iv)以下の式:
【化1】
を有し、ここで、主鎖上の基はブロック状であっても、ランダムに分布してもよい、アミノキシシリコン化合物:1〜6重量部、及び
(V)任意の、非反応性トリメチルシリル末端ジメチルシロキサン流体である希釈剤
を無水条件下で混合することによって調製される混合物を含み、
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、及びN−n−ブチルアセトアミドから選択される極性溶媒を含有せず、かつ
℃以下の温度で貯蔵される場合に目に見えて部分的に結晶化しない、シリコーンエラストマー組成物。
【請求項2】
前記炭酸カルシウムが、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステアリン酸、ステアリン酸の塩、カルボキシレートポリブタジエン、オルガノシラン、オルガノシロキサン、又はオルガノシラザンヘキサアルキルジシラザン若しくは短鎖シロキサンジオールから選択される疎水化処理剤で部分的又は完全に処理される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記炭酸カルシウムが、ステアリン酸カルシウムで処理された炭酸カルシウム及び/又は粉砕炭酸カルシウムから選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記希釈剤が、25℃で12Pa.sを上回る粘度を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
成分(i)、(ii)、(ii)、及び(iv)を無水条件下で混合して均質混合物を得る工程と、得られた組成物を、水分がこの組成物と接触するのを本質的に排除し、かつこの組成物を本質的に無水条件下で保持する貯蔵容器に入れる工程と、を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物の調製方法。
【請求項6】
成分(i)及び(ii)が、残り成分の導入より前に均質混合物に混合される、請求項5に記載の組成物の調製方法。
【請求項7】
アミノキシシリコン化合物(iv)が、成分(iii)の導入より前に前記均質混合物と混合されるか、又は、成分(iii)及び(iv)を含む混合物が、前記均質混合物に加えられる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記得られた組成物が、該組成物を前記貯蔵容器から取り出すことによって水分に暴露される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
硬化保護コーティングでコーティングされた表面を有する硬化シリコーンエラストマーの製造方法であって、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物を、硬化エラストマー表面が得られかつ均質艶消し面が発生するまで水分に暴露する工程と、その後、周囲条件
で硬化可能な水性保護コーティング組成物を、前記硬化エラストマー表面の少なくとも一部の上に塗布する工程であって、前記保護コーティング組成物が、前記保護コーティング組成物が塗布された表面を濡らし、本質的に無欠陥のフィルムを生成する、工程と、その後、前記保護コーティング組成物を硬化できるようにする工程と、を含む、方法。
【請求項10】
2つのユニットの間の空間を封止する方法であって、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物を前記空間の中又は上に塗布する工程と、前記組成物を硬化させる又は硬化できるようにする工程と、を含む、方法。
【請求項11】
前記希釈剤を含まないノンサグ組成物として更に定義される請求項1に記載の組成物であって、前記炭酸カルシウムが未処理であり、平均−10℃の温度での6カ月の低温貯蔵後の、ASTM D412に従って測定した破断点伸びが、2000%より大きい、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵安定性を有し、極性溶媒の非存在下で良好な凍結/融解特性を有し、か
つ硬化して低モジュラスシリコーンエラストマーとなる室温加硫性(RTV)シリコーン
組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第3817909号は、(A)25℃で3E−5〜0.05m/s(30〜
50,000cst)の粘度を有する水酸基末端ポリジオルガノシロキサン:100重量
部、(B)非酸性、非補強充填剤:0〜150重量部、(C)一般式:
【化1】
のアセトアミドシラン類:2〜20重量部、ここで式中、Rはメチル基、ビニル基、又
はフェニル基であり、R’はメチル、エチル、又はフェニル基である、及び(D)1分子
当たり1〜100個のケイ素原子と1分子当たり3〜10個のアミノキシ基とを有し、前
記アミノキシ基は、一般式−OXを有するアミノキシシリコン化合物:0.25〜7重量
部、ここで式中、Xは一価アミン基又は複素環式アミンのいずれかである。を含む、硬化
して低モジュラスシリコーンエラストマーとなるシリコーン組成物について記述している
【0003】
アミドシラン類(C)は上述した一般式に基づいて特許請求の範囲に記載されている一
方、発明の詳細な説明には考えられるアセトアミドシラン類(C)の拡張リストが記載さ
れているが、実施例で用いられているのは、ジメチルジ(N−メチルアセトアミド)シラ
ン、メチルビニルジ(N−メチルアセトアミド)シランのみであった。
【0004】
米国特許第3996184号がその後に提出されており、米国特許第3817909号
の実施例に示されている組成物は安定しており、記載通りに有用であるが、特にそれらの
凍結/融解特性及び流動特性に関して多くの否定的な問題が認められることを示した。米
国特許第3996184号によると、この問題は、米国特許第3817909号に記載さ
れている組成物は「室温未満(例えば5℃など)に冷却されると結晶を形成することが見
出された」ことによるものであった。米国特許第3996184号の著者は、この結晶は
、「組成物中の微量の水分及びケイ素結合ヒドロキシル基との反応によって形成される遊
離アミドであるように思われると提案した。結晶の形成と組成物の流動性との間に関連性
があることも確認されている。結晶が存在する場合、その組成物は低温でひどく流動する
ことになり、未硬化のシーラント組成物及び最終的には得られたエラストマーの審美的外
観が悪くなる」。
【0005】
米国特許第3996184号に提供されている、特定された結晶化/流動性問題を回避
するための解決策は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、及び
N−n−ブチルアセトアミドから選択される少量の極性溶媒(DMFが好ましい)を該組
成物に導入することであった。この解決策は、結晶化/流動性の問題を克服した組成物を
もたらしたが、その一方で、そのような溶媒の導入は、毒性揮発性有機物質含量(VOC
)を高めることになり、また、得られた硬化エラストマーから溶媒が浸出し、シーラント
が塗布された表面に損傷を与える可能性がある又は隣接する表面上の塗料を溶解する可能
性があるという潜在的な問題をもたらす結果となったという点で、更なる問題をもたらし
た。我々が今日住んでいるよりはるかに環境を意識した世界にあっては、これら溶媒の1
つ以上を含有するこうした組成物は、よりはるかに厳重な規制を満たす必要があり、また
、世界各国の国家環境基準を満たすために、表示義務の対象となる。
【0006】
米国特許第5017628号は、ヒドロキシル末端ブロックポリジオルガノシロキサン
(A)、非酸性、非強化処理充填剤(B)、ジアセトアミド機能シラン(C)、アミノシ
ロキサン架橋剤(D)、及び非反応性シリコーン液体希釈剤(E)から本質的になり、水
分に暴露されると硬化する、アスファルト高速道路接続部シーラントとして使用するため
のセルフレベリング性シリコーン組成物について記述している。ジアセトアミド機能シラ
ン(C)は、一般式:
【化2】
ここで式中、Rはビニル基であり、R’はメチル基、エチル基、又はフェニル基である
。のものである。米国特許第5017628号はまた、ジアセトアミド機能シラン(C)
及び前記アミノキシシリコン化合物は「ポリマー100重量部当たり少なくとも5重量部
の合わせた重量を与えるのに十分な量で存在し、前記アミノキシシリコン化合物は、ジア
セトアミド機能シラン(C)の重量以下の量で存在し、前記組成物は、表面に塗布した場
合に自己レベリングであり、50%相対湿度を有する空気雰囲気に暴露し25℃で14日
間硬化した場合、少なくとも1200%の伸び率と、50及び100%の両方の伸び率に
おいて0.17MPa(25ポンド/平方インチ(psi))未満のモジュラスとを有す
るシリコーンエラストマーとなることを要件とした。しかしながら、米国特許第5017
628号は、上記の結晶化問題に関して言及しておらず、しかし米国特許第399618
4号で論じられている溶媒の任意の使用を推奨している。更に、米国特許第501762
8号の実施例では、使用したアセトアミド機能シランはメチルビニルジ(N−メチルアセ
トアミド)シランのみであり、用いた温度は常に室温であり、また、実施例4及び7は共
にN,N−ジメチルホルムアミドの添加を必要とする。したがって、米国特許第3817
909号の実施例3以外の先行技術の実施例で使用されたアセトアミド機能シランは、メ
チルビニルジ(N−メチルアセトアミド)シランのみであり、米国特許第3817909
号の実施例3は、その代りに、ジメチルジ(N−メチルアセトアミド)シランを使用した
。このように、N−メチルアセトアミド以外のN−アルキルアセトアミド基はどの実施例
でも使用されず、米国特許第3996184号及び米国特許第5017628号は共に、
DMFなどの溶媒の必要性を支持している。
【0007】
米国特許第3996184号に記載されているような凍結融解問題を回避するために用
いられる予め教示された必須極性溶媒は、選択したアセトアミド機能シランがメチルビニ
ルジ(N−エチルアセトアミド)シランである場合には必要でなく、それによって、アセ
トアミド機能シランの凍結/融解によって生じる問題、あるいは、DMFなどの極性溶を
アセトアミド機能シランと組み合わせて使用することに関連する問題が回避され、このこ
とは、かかる溶媒を予め組み込む場合と比べ、ユーザーにとって大きな利益であるここと
が現在では分かっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によると、水分の非存在下で5℃以下、あるいは0℃以下の温度において貯蔵安
定性を有するが、水分に暴露されると室温でシリコーンエラストマーへと硬化可能なシリ
コーンエラストマー組成物であって、該組成物は、次の成分:
(i)25℃で5〜100Pa.sの粘度を有し、その有機基がメチル基、エチル基、
ビニル基、フェニル基、及び3,3,3−トリフルオロプロピル基からなる群から選択さ
れる、ヒドロキシル末端ブロックポリジオルガノシロキサン(ただし、前記有機基の50
%以下はフェニル基又は3,3,3−トリフルオロプロピル基であり、前記有機基の10
%以下はアルケニル基である):100重量部、
(ii)疎水性となるように任意に処理される、1種以上の充填剤、
(iii)メチルビニルジ(N−エチルアセトアミド)シラン:2.5〜10重量部、
(iv)1分子当たり1〜100個のケイ素原子、及び1分子当たり3〜10個のアミ
ノキシ基を有し、前記アミノキシ基は一般式:−OXを有する、アミノキシシリコン化合
物:1〜6重量部、ここで式中、
・Xは、−NR及び複素環式アミンからなる群から選択される一価アミン基であり
、Rは、一価炭化水素基である。
・前記−OX基は、SiO結合によりケイ素原子と結合し、アミノキシシリコン化合
物中のケイ素原子の残りの原子価は、ケイ素−酸素−ケイ素結合により1分子当たり2個
以上のケイ素原子を有するアミノキシシリコン化合物のケイ素原子と結合する二価酸素原
子、並びにケイ素―炭素結合によりケイ素原子に結合した一価炭化水素基及びハロゲン化
一価炭化水素基で満たされており、ケイ素原子当たり平均で少なくとも1個の一価炭化水
素基又はハロゲン化一価炭素水素基が存在する。を無水条件下で混合することによって調
製される混合物から本質的になり、
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、及びN−n−ブチルアセ
トアミドから選択される極性溶媒を含有せず、即ちゼロ(0)部含有し、また5℃以下の
温度で貯蔵される場合に目に見えて部分的に結晶化しないことを特徴とする、シリコーン
エラストマー組成物が提供される。
【0009】
更なる実施形態では、水分の非存在下で5℃以下、あるいは0℃以下の温度において貯
蔵安定性を有するが、水分に暴露されると室温でシリコーンエラストマーへと硬化可能な
シリコーンエラストマー組成物における、メチルビニルジ(N−エチルアセトアミド)シ
ラン(iii)の使用であって、該組成物は、次の成分:
(i)25℃で5〜100Pa.sの粘度を有し、その有機基がメチル基、エチル基、
ビニル基、フェニル基、及び3,3,3−トリフルオロプロピル基からなる群から選択さ
れる、ヒドロキシル末端ブロックポリジオルガノシロキサン(ただし、前記有機基の50
%以下はフェニル基又は3,3,3−トリフルオロプロピル基であり、前記有機基の10
%以下はアルケニル基である):100重量部、
(ii)疎水性となるように任意に処理される、1種以上の充填剤、
(iii)前記メチルビニルジ(N−エチルアセトアミド)シラン:2.5〜10重量
部、
(iv)1分子当たり1〜100個のケイ素原子、及び1分子当たり3〜10個のアミ
ノキシ基を有し、前記アミノキシ基は一般式:−OXを有する、アミノキシシリコン化合
物:1〜6重量部、ここで式中、
・Xは、−NR及び複素環式アミンからなる群から選択される一価アミン基であり
、Rは、一価炭化水素基である。
・前記−OX基は、SiO結合によりケイ素原子と結合し、アミノキシシリコン化合
物中のケイ素原子の残りの原子価は、ケイ素−酸素−ケイ素結合により1分子当たり2個
以上のケイ素原子を有するアミノキシシリコン化合物のケイ素原子と結合する二価酸素原
子、並びにケイ素−炭素結合によりケイ素原子に結合した一価炭化水素基及びハロゲン化
一価炭化水素基で満たされており、ケイ素原子当たり平均で少なくとも1個の一価炭化水
素基又はハロゲン化一価炭素水素基が存在する。を無水条件下で混合することによって調
製される混合物から本質的になり、
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、及びN−n−ブチルアセ
トアミドから選択される極性溶媒を含有せず、即ちゼロ(0)部含有し、また5℃以下の
温度で貯蔵される場合に目に見えて部分的に結晶化しないことを特徴とする使用、が提供
される。
【0010】
ヒドロキシル末端ブロックポリジオルガノシロキサン(i)は、25℃において約5〜
100Pa.sの粘度を有し得る。これらポリジオルガノシロキサンは、平均粘度が上に
定義した制限の範囲内に入る限りは、様々な粘度の単分散系、多分散系、又は混合物であ
り得る。ヒドロキシル末端ブロックポリジオルガノシロキサンは、メチル基、エチル基、
ビニル基、フェニル基、及び3.3.3−トリフルオロプロピル基から選択される有機基
を有する。ポリジオルガノシロキサンの有機基は、該ポリジオルガノシロキサン中の基の
総数を基準として、フェニル基又は3,3,3−トリフルオロプロピル基を50%以下、
またビニル基を10%以下含有する。他の一価の炭化水素基及びハロゲン化された一価炭
化水素基がポリジオルガノシロキサン中に少量存在することができる。ヒドロキシル末端
ブロックポリジオルガノシロキサンのジオルガノシロキサン単位は、例えば、ジメチルシ
ロキサン単位、ジエチルシロキサン単位、エチルメチルシロキサン単位、ジフェニルシロ
キサン単位、メチルフェニルシロキサン単位、メチルビニルシロキサン単位、及び3,3
,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサン単位、あるいはこれらの単位の2つ以上の
混合物であり得る。最も好ましくは、ヒドロキシル末端ブロックポリジオルガノシロキサ
ンは、25℃で約5〜100Pa.sの粘度を有するポリジメチルシロキサンである。
【0011】
本明細書で用いるポリジオルガノシロキサンという用語は、少量の他のシロキサン単位
、例えば、モノオルガノシロキサン単位のようなものを排除しない。ヒドロキシル末端ブ
ロックポリジオルガノシロキサンは当該技術分野において既知であり、公知の工業的方法
によって製造することができる。好ましいヒドロキシル末端ブロックポリジオルガノシロ
キサンは、ヒドロキシル末端ブロックポリジメチルシロキサンである。
【0012】
別途記載のない限り、本明細書における全ての粘度の測定は、ASTM D4287
Cone and Plate Methodに従って25℃で行われる。
【0013】
本明細書に記載される組成物は、ヒドロキシル末端ブロックポリジオルガノシロキサン
(i)100重量部当たり、1種以上の(任意に非酸性の)充填剤(ii):25〜20
0重量部を含有する。組成物は典型的には、上述のように、1種以上の超微粒子状補強充
填剤、例えば、籾殻灰及びある程度の炭酸カルシウムなどの高表面積ヒュームドシリカ及
び沈降シリカなど、又は追加の非補強充填剤、例えば、破砕石英、珪藻土、硫酸バリウム
、酸化鉄、二酸化チタン、及びカーボンブラック、タルク、ウォラストナイトなどを含有
する。単独で、又は上記の充填剤に加えて使用することができる他の充填剤としては、ア
ルミナイト、硫酸カルシウム(無水石膏)、石膏、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、
カオリンなどの粘土、酸化アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム(水滑石)、黒鉛
、炭酸銅、例えばマラカイト、炭酸ニッケル、例えばザラカイト(zarachite)、炭酸バ
リウム、例えば毒重石、及び/又は炭酸ストロンチウム、例えばストロンチアナイトが挙
げられる。
【0014】
酸化アルミニウム、かんらん石グループ;柘榴石グループ;アルミノシリケート;リン
グケイ酸塩;鎖ケイ酸塩;及び層状ケイ酸塩からなる群からのケイ酸塩。かんらん石グル
ープは、ケイ酸塩鉱物、例えば、限定されないが、フォルステライト及びMgSiO
などを含む。柘榴石グループは、粉砕したケイ酸塩鉱物、例えば、限定されないが、パイ
ロープ;MgAlSi12;灰ばんザクロ石;及びCaAlSi12
どを含む。アルミノシリケートは、粉砕したケイ酸塩鉱物、例えば、限定されないが、シ
リマナイト;AlSiO;ムライト;3Al.2SiO;キアナイト:及び
AlSiOなどを含む。
【0015】
リングケイ酸塩グループは、ケイ酸塩鉱物、例えば、限定されないが、コージライト及
びAl(Mg,Fe)[SiAlO18]などを含む。鎖ケイ酸塩グループは、粉
砕したケイ酸塩鉱物、例えば、それらに限定されないが、珪灰石及びCa[SiO]な
どを含む。
【0016】
層状ケイ酸塩グループは、ケイ酸塩鉱物、例えば、限定されないが、雲母;KAl
[SiAl20](OH);葉蝋石;Al[Si20](OH);タ
ルク;Mg[Si20](OH);蛇紋石、例えば、アスベスト;カオリナイト
;Al[Si10](OH);及びバーミキュライトなどを含む。
【0017】
更に、充填剤の表面処理は、例えば、ステアリン酸エステル、ステアリン酸、ステアリ
ン酸の塩、ステアリン酸カルシウム、及びカルボキシレートポリブタジエンなどの脂肪酸
又は脂肪酸エステルなどを用いて行うことができる。ケイ素含有物質ベースの処理剤とし
ては、オルガノシラン、オルガノシロキサン、又はオルガノシラザンヘキサアルキルジシ
ラザン若しくは短鎖シロキサンジオールを挙げることができ、それによって充填剤が疎水
性になり、したがって容易に取扱うことができるようになり、他のシーラント成分との均
質混合物が得られる。充填剤を表面処理することで、粉砕ケイ酸塩鉱物をシリコーンポリ
マーで容易に湿らせやすくなる。これらの表面修飾された充填剤は凝集することがなく、
シリコーンポリマーに均一に組み込むことができる。これにより未硬化の組成物の室温機
械的性質が改善される。更に、この表面処理された充填剤は、未処理材又は原材料よりも
低い伝導性を与える。
【0018】
自己レベリングシーラント配合物の場合、本明細書の組成物は、好ましくは、任意に1
〜8μmの平均粒径を有する、非酸性、非補強充填剤(ii)である。前記自己レベリン
グシーラント配合物に関し、好ましい充填剤は、例えば、炭酸カルシウム、酸化第二鉄、
珪藻土、アルミナ、アルミナ水和物、二酸化チタン、有機充填剤、シリコーン樹脂などの
樹脂、破砕石英、硫酸カルシウムなどから選択され得る。
【0019】
使用される場合のこのような充填剤の割合は、エラストマー形成性組成物及び硬化エラ
ストマーにおいて所望される特性に依存し得る。通常、組成物の充填剤含量は、希釈剤部
分を除いたポリマー100重量部当たり約5〜約800重量部、好ましくは25〜400
重量部の範囲内である。本明細書に記載される自己レベリングシーラント配合物は、例え
ば、好ましい非酸性、非補強充填剤:25〜125重量部を含有してもよい。
【0020】
この充填剤は、処理剤で充填剤をコーティングするか、又は充填剤を処理剤と反応させ
ることによって、処理剤で処理される。処理済みの充填剤が商業的に入手可能であり、例
えば、Imerys(Roswell,GA)からも販売されるGAMA−SPERSE
(登録商標)C−11として、及びCyprus Industrial Minera
ls Company(Englewood,Colorado)より入手されるコタマ
イト(Kotamite)として公知であるステアリン酸カルシウムで処理された炭酸カルシウム
充填剤である。処理済み充填剤は未硬化組成物に高い流動性を、及び硬化組成物に低いモ
ジュラスを与えるので、充填剤を処理することが必要である。
【0021】
成分(iii)は、メチルビニルジ−(N−エチルアセトアミド)シランである。
【化3】
【0022】
メチルビニルジ−(N−エチルアセトアミド)シランは、ヒドロキシル末端ブロックポ
リジオルガノシロキサン(i)と反応してより長いポリマーをもたらすという点で、本明
細書では鎖延長剤として使用される。ポリマー鎖の延長は、鎖長が延長したポリマーを提
供し、それにより得られた硬化エラストマーのモジュラスが低くなる。メチルビニルジ−
(N−エチルアセトアミド)シラン(iii)の量は、ポリジオルガノシロキサンポリマ
ー100重量部当たり2.5〜10重量部であり得る。最も好ましい組成物は、ポリジオ
ルガノシロキサンポリマー(i)100重量部当たり4〜8重量部を有する。メチルビニ
ルジ−(N−エチルアセトアミド)シランの量が2.5部未満の場合、得られた組成物は
硬化して有意に高いモジュラスを有するシリコーンエラストマーとなり、その結果、該エ
ラストマーはもはや低モジュラスシリコーンエラストマーに分類されないことになる。組
成物は、全反応成分を1つのパッケージに入れて包装されることができ、無水条件下で長
期間、例えば3か月以上貯蔵されることができる。10重量部を超えると、硬化が遅くな
り、かつあまり望ましくない物理的性質が観察されるので、10重量部を超えることによ
る利点は感じられない。
【0023】
アミノキシシリコン化合物(iv)は、1分子当たり1〜100個のケイ素原子を有す
るケイ素化合物であり得、1分子当り2〜20個、あるいは3〜10個のアミノキシ基が
存在する。アミノキシケイ素化合物は、シラン及びシロキサンを含む。ケイ素−酸素結合
によりケイ素原子に結合したアミノキシ基は、一般式:−OXで表わすことができ、ここ
で式中、Xは、基−NRの一価アミン基及び複素環式アミンであり、Rは、一価の炭化
水素基を表す。
【0024】
−NR基は、N,N−ジエチルアミノ、N,N−エチルメチルアミノ、N,N−ジメ
チルアミノ、N,N−ジイソプロピルアミノ、N,N,−ジプロピルアミノ、N,N,−
ジブチルアミノ、N,N,−ジペンチルアミノ、N,N,−ジヘキシルアミノ、N,N,
−ジブチルアミノ、N,N−メチルプロピルアミノ、N,N,−ジフェニルアミノ、及び
N,N,−メチルフェニルアミノで表すことができる。複素環式アミンは、エチレンイミ
ノ、ピロリジノ、ピペリジノ、及びモルホリノであり得る。更なるアミノキシシリコン化
合物は、アミノキシシリコン化合物を示すために参照により本明細書に組み込まれる米国
特許第3996184号に記述されている。
【0025】
1個のケイ素原子を有するアミノキシシリコン化合物は、1分子当たり3個のアミノキ
シ基と、1個の一価炭化水素基又はハロゲン化された一価炭化水素基を有するシランであ
る。これらのアミノキシシランは、一般式:
R”Si(OX)
を有し、ここで式中、R”は、一価炭化水素基又はハロゲン化された一価炭化水素基で
あり得る。R”の例は、したがって、メチル、エチル、フェニル、ビニル、ヘキシル、オ
クタデシル、シクロヘキシル、ブチル、ヘプチル、オクチル、ベンジル、フェニルエチル
、ナフチル、プロピル、イソプロピル、クロロフェニル、3,3,3−トリフルオロプロ
ピル、β−(ペルフルオロペンチル)エチル、ヨードナフチル、ブロモヘプチル等であり
得る。
【0026】
1分子当たりのケイ素原子が1個よりも多いアミノキシシリコン化合物は、線状ポリシ
ロキサン及び環式ポリシロキサンであってもよく、例えば、シロキサンのホモポリマー、
若しくはコポリマー、又は混合物のうちのいずれか、並びにシロキサンとシランとの混合
物であり得る。シロキサンのケイ素原子は、上記のR”で定義される一価の基に結合して
いるアミノキシ基に結合していないケイ素原子の残りの原子価に、ケイ素−酸素−ケイ素
結合によって共に結合している。好ましいアミノキシシリコン化合物は、以下の実施例に
記載されるように、平均して2個のトリメチルシロキサン単位、2〜20個のメチル(N
,N−ジアルキルアミノキシ)シロキサン単位、及び2〜20個のジアルキルシロキサン
単位を有するか、あるいは、平均して2個のトリメチルシロキサン単位、5個のメチル(
N,N−ジエチルアミノキシ)シロキサン単位、及び3個のジメチルシロキサン単位を1
分子当たりに有するコポリマーである。
【0027】
アミノキシシリコン化合物(iv)の量は、ヒドロキシル末端ブロックポリジオルガノ
シロキサン100重量部当たり0.5〜10重量部、あるいは、ヒドロキシル末端ブロッ
クポリジオルガノシロキサン100重量部当たり1〜6重量部であり得る。アミノキシシ
リコン化合物の量が10部を超えると、得られた硬化生成物は、高モジュラスのシリコー
ンエラストマーである。アミノキシシリコン化合物の好ましい量は、2〜5部である。
【0028】
他の従来の添加剤は、それらが組成物の残りの成分に適合する限りにおいて使用するこ
とができ、例えば、顔料、接着促進剤、希釈剤、押出助剤、触媒、染料、抗酸化剤、熱安
定性添加剤等が挙げられる。
【0029】
例えば、希釈剤を自己レベリング組成物中で使用してもよい。希釈剤は、存在する場合
、全組成物の1〜20重量%の、25℃で1〜100Pa.s、あるいは25℃で12〜
100Pa.sの粘度を有する非反応性シリコーン流体からなる希釈剤、あるいは、25
℃で約12〜25Pa.sの粘度を有するトリメチルシリル末端ブロックポリジメチルシ
ロキサンからなる希釈剤を含み得る。非反応性シリコーン流体は、R”SiO単位を有
するホモポリマーであり得、その場合、R”は、メチル、エチル、プロピル、ビニル、又
は3,3,3,−トリフルオロプロピルであり、R”は各単位毎に同じであっても異なっ
ていてもよい。このシリコーン希釈剤の末端ブロック単位はR”SiOであり得、その
場合、R”は上述の通りである。この希釈剤は、この希釈剤が無い場合に得られるよりも
低いモジュラス及び高い伸び率を与えるために用いられる。希釈剤の粘度が低すぎると、
この組成物は適当に硬化しない、即ち、不粘着時間が長すぎるようになる。希釈剤がより
高い粘度、例えば、12Pa・s以上を有すると、より低い粘度の物質よりもより短い不
粘着時間を与えると思われる。必要な希釈剤の量は、より低い粘度の物質よりもより高い
粘度の物質の方が少ない。
【0030】
本明細書に記載される組成物中で用いられる成分の量は、組成物が50%相対湿度の空
気に暴露されて25℃で14日にわたって硬化されるとき、ASTM D412に従って
試験した場合、少なくとも1200%の伸び率と、50%及び100%の伸び率において
172.4kPa(25psi)未満のモジュラスとを有する硬化シリコーンエラストマ
ーが得られるように選択される。硬化したシーラントがこれら要件を満たさない場合、ア
スファルト舗装道路でシーラントとして使用されるときに適切に機能しない。つまり、シ
ーラントはアスファルトの粘着性を損ない、それにより、例えば寒さでアスファルトが収
縮した場合にみられるような引張力に接続部がさらされた場合に封止部を破壊してしまう
【0031】
この組成物は、好ましくは、ヒドロキシル末端ブロックポリジオルガノシロキサンと充
填剤とを混合し、充填剤がよく分散した均質混合物を作製することにより製造される。好
適な混合物は、工業用ミキサーを用いて通常1時間で得られる。好ましくは、得られた混
合物を脱気し、次いで、メチルビニルジ−(N−エチルアセトアミド)シラン(iii)
とアミノキシシリコン化合物(iv)との混合物を加え、ポリマー及び充填剤混合物と混
合する。混合は、本質的に無水条件下で行われる。次いで、得られた組成物を、本質的に
無水条件下で貯蔵用の容器に入れる。1つのパッケージの組成物を製造すると、それは安
定である。つまり、本質的に水分を含まない条件を保つ場合には硬化しないが、室温で水
分に暴露すると硬化して低モジュラスシリコーンエラストマーとなる。希釈剤又は他の添
加剤は、任意の方法で、及び調製のどの時点で組成物に混合されてもよいが、ポリマー及
び充填剤を混合し、より良好な充填剤の分散が生じた後に加えることが好ましい。本発明
の組成物は、1つのパッケージの組成物として設計されているが、所望により、成分を2
つ以上のパッケージに包装してもよい。
【0032】
本明細書の組成物は、ノンサグ配合物中又は自己レベリング配合物中のいずれかに提供
され得るシーラント物質を提供する。自己レベリング配合物とは、貯蔵容器から水平接合
部に排出されると「自己レベリング」することを意味する、即ち、シーラントは、シーラ
ントと接合スペースの両側との間の密接な接触をもたらすのに十分な重力下で流れる。こ
れにより、接合面に対するシーラントの最大の接着を生じさせることができる。自己レベ
リングはまた、水平接合部及び垂直接合部の両方で使用するように設計されたシーラント
が必要とするように、シーラントを接合部の中に入れた後に道具を使用してシーラントを
細工する必要性を排除する。ノンサグ組成物は、後者とは異なり、典型的には重力下で目
に見えるほど流れず、典型的には、封止することが意図される位置/接合部の中に道具を
使用して入れる必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書に開示される組成物は、組成物の硬化を助けるために触媒を必要としないが、
適切な場合には、好適な触媒を使用してもよい。しかしながら、室温加硫性シリコーンエ
ラストマー組成物で用いられる従来の硬化触媒の多くは、組成物の硬化に支障を来す。
【0034】
本明細書に記載される自己レベリング組成物は、アスファルト舗装道路の封止における
機能に必要な特性の独特な組み合わせを有するシーラントとして有用である。アスファル
ト舗装物質は、適切な材料厚さ(例えば、20.32cm)に堆積させることによりアス
ファルト高速道路を形成するために用いられ、劣化コンクリート高速道路の修復用には、
例えば10.16cmの層を上重ねすることによって用いられる。アスファルトの上層は
、コンクリート内に存在する接続部において下層のコンクリートの動きが原因でアスファ
ルト上層に亀裂が生じる反射亀裂として公知の現象を受ける。この反射亀裂は、亀裂への
水の浸入を防ぐため封止する必要があり、この亀裂は、水が凍結及び膨張した場合に、ア
スファルト舗装道路を更に破壊することになる。
【0035】
あらゆる理由、例えば、熱膨張及び収縮のために動く亀裂に対する有効な封止を形成す
るため、シール材料を亀裂の側壁の界面に結合させなければならず、このシール材料は、
亀裂が圧縮及び膨張するときに結合力を失ってはならない。アスファルト舗装道路の場合
、シーラントは、アスファルト自体が破壊するのに十分な張力を、界面においてアスファ
ルトに加えてはならない。つまり、結合ラインにおいて加わる応力がアスファルトの降伏
強さより十分低くなるように、シーラントのモジュラスは十分に低くければならない。
【0036】
望ましことが見出された高速道路シーラントの更なる特徴は、亀裂に塗布した際に流出
するシーラントの能力である。シーラントが重力下で十分な流動性を有する場合、シーラ
ントは、不規則に亀裂した壁の側面と密接な接触を形成し、シーラントを機械的に圧迫し
て亀裂した側壁と接触させるために、シーラントを亀裂内に押出した後でそのシーラント
を道具を使用して細工する必要なく良好な結合を形成する。この特性を自己レベリングと
呼ぶ。
【0037】
硬化した物質のモジュラスは、アスファルトが粘着性を損なうのに十分な力をアスファ
ルトに加えないだけ十分に低く設計される。硬化した物質は、張力下に置かれたとき、張
力により生ずる応力のレベルが時間と共に低下し、伸びが高度の場合でさえも接続部が高
応力レベルにならないような物質である。
【0038】
以下の実施例は説明の目的のみで示されており、添付の「特許請求の範囲」に的確に明
記されている本明細書の開示を限定すると解釈されるべきではない。部は重量部である。
別途記載のない限り、粘度測定は25℃で行われ、ASTM D4287 Cone a
nd Plate Methodに従って測定された。1ポンド/平方インチ(psi)
は6.895kPaである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
関連図面が提供されており、次の通り示している。
図1a】冬のミシガン州の暖房のない倉庫の中で、典型的には0〜−10℃の温度で6か月にわたって低温貯蔵した後の結晶化効果によりきめの粗い外観を示す自己レベリング比較例1である。
図1b】冬のミシガン州の暖房のない倉庫の中で、典型的には0〜−10℃の温度で6か月にわたって低温貯蔵した後の、滑らかな外観を示す自己レベリング実施例1(未硬化)である。
図2a】−30℃で8日にわたって低温貯蔵した後の結晶化効果によりきめの粗い外観を示す比較例4の硬化試料である。
図2b】−30℃で8日にわたって低温貯蔵した後の滑らかな外観を示す実施例3及び比較例3(DMFを含む)の硬化試料である。
図2c】−30℃で8日にわたって低温貯蔵した後の滑らかな外観を示す実施例3及び比較例3(DMFを含む)の硬化試料である。
【0040】
【表1】
【0041】
別途記載のない限り、全ての配合量は重量部であり、全ての粘度は25℃で測定された
。シロキサンポリマーは、50 000mPa.sの粘度(ASTM D4287 Co
ne and Plate Methodに従って測定)を有するジメチルヒドロキシ末
端ジメチルシロキサンである。NMAは、メチルビニルビス(N−メチルアセトアミド)
シランである。NEAは、メチルビニルビス(N−エチルアセトアミド)シランである。
DMFはジメチルホルムアミドである。粉砕炭酸カルシウムは、製品名Atomite(
登録商標)でImerys(Roswell,GA)によって市販され、作成時のデータ
シートによると、含まれる粉砕炭酸カルシウムは、中央粒径3.0μm、比表面積2.8
g、及びモース硬度3を有した。処理済み粉砕炭酸カルシウムは、同様にImery
s(Roswell,GA)によって販売されるGAMA−SPERSE(登録商標)C
−11であった。
【0042】
希釈剤は、25℃で12500mPa.sの粘度を有する非反応性トリメチルシリル末
端ジメチルシロキサン流体であった。使用したアミノキシシリコン化合物は次の一般式を
有したが、ポリマーの主鎖上の基はブロック状であっても、ランダムに分布してもよいこ
とに留意されたい。
【化4】
【0043】
組成物を硬化させた後、それらの物理的性質について試験した。結果は下の表1b及び
表1cに示されている。以下の試験方法を用いて結果を得た。
ジュロ硬度(ポイント)をASTM C661に従って測定した。引張強さ、伸び率、
50%伸び率でのモジュラス(モジュラス50)、100%伸び率でのモジュラス(モジ
ュラス100)、及び150%伸び率でのモジュラス(モジュラス150)を、全てAS
TM D412に従って測定した。流動性をASTM D2202に従って測定した(0
.25cm(0.1インチ)の単位まで)。初期分離試験(実施例2で用いる)は、未硬
化試料の表面にたまっている透明な液体を観察することができるか否かを特定するための
目視試験である。
【0044】
表1b及び1cの分析は、2つの自己レベリング組成物の物理的性質は、低温貯蔵の前
後で同様であるが、本発明による実施例の外観は、生成物のきめを粗くする部分的に結晶
化された物質がないことによって、著しく優れている。図1aは、冬のミシガン州の暖房
のない倉庫の中で(典型的には0〜−10℃の温度で)6か月にわたって低温貯蔵した後
の結晶化効果によりきめの粗い外観を示す自己レベリング比較例1示す。図1bは、冬の
ミシガン州の暖房のない倉庫の中で(典型的には0〜−10℃の温度で)6か月にわたっ
て低温貯蔵した後の滑らかな外観を示す自己レベリング実施例1(未硬化)を示す。
【0045】
しかしながら、ノンサグ試料の場合には、本発明による組成物で回避されたのは結晶化
だけでなく、平均約−10℃の温度にて長期間貯蔵した後の伸び率の有意差が明らかであ
る。したがって、DMFなどの追加の溶媒を必要とせずに回避されたのは結晶化の問題だ
けでなく、本発明による実施例は追加の著しく優れた物理的性質も有する。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【実施例】
【0048】
(実施例2)
更なるノンサグ試料を調整し、以下の実施例2で試験した。組成物の配合量は表2aに
示されており、物理的性質の結果は表2b及び2cに示されている。実施例1と同じ成分
を使用した。上に定義したのと同じ試験方法を用いた。
【0049】
【表4】
【0050】
【表5】
【0051】
この実施例では、試料は物理的性質試験の前に室温にて7日にわたって硬化された。新
鮮試料はそれぞれ、室温硬化後に合理的に等しい物理的性質を有すると思われ、これは恐
らく予想通りであることに留意すべきである。
【0052】
【表6】
【0053】
【表7】
【0054】
RTは室温を意味する。上の実施例では、試料は低温貯蔵の前に室温で7日にわたって
硬化された。低温貯蔵は8日間だけであった。ノンサグ生成物では、ASTM−D220
2に従って0.5cm(0.2インチ)未満の流動性が望ましい。本発明の実施例では、
比較例3及び実施例3は共に等しく低い流動性の値を有するが、実施例3は環境に優しく
ない溶媒を含まないという追加の利点を有する。低い流動性の値はDMF溶媒を含有する
比較例3にも見られ、比較例3及び実施例3は、部分結晶化により外観のきめが粗い比較
例4と異なり、共に滑らかな低温時の外観を有することに気が付くであろう。図2aは、
−30℃で8日にわたって低温貯蔵した後の結晶化効果によりきめの粗い外観を示す比較
例4(DMFは存在せず)の硬化試料を示す。図2b及び図2cは、−30℃で8日にわ
たって低温貯蔵した後の滑らかな外観を示す、本発明による実施例3及び比較例3(DM
Fを含む)の硬化試料を示す。
【0055】
比較例3及び4と異なり、本発明による実施例3では分離は見られない。このことは、
本発明による組成物は該組成物中の充填剤のより良好でより長期持続的な分散を維持する
という点で、本発明による組成物の更なる利点を示している。短期間の低温貯蔵では、実
施例1の長期保存の後に見られた伸び率に見られる有意差は観察されないことに気が付く
であろう。
【0056】
【表8】
【0057】
表2eでは、比較例3及び4並びに実施例3の更なる試料を同様のやり方で硬化させた
後、−30℃の温度にて92日の長期間にわたって低温貯蔵した。ここでも同様に、実施
例3は、滑らかな外観を提供し、目に見える初期分離がなく、かつ依然として良好な流動
性の値を有したことにより、全体として最高の結果を得た。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c