(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ウェハの裏面側から複数の第2のトレンチをエッチングし、前記第2のトレンチは各々、前記トランスデューサメンブレンのうちのそれぞれの1つとアライメントされ、
前記第2のトレンチの各々を裏当て材で充填し、且つ
前記裏面側から前記ウェハを薄化する、
ことを更に有する請求項1に記載の方法。
前記圧電材料は、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(二フッ化ビニリデン−三フッ化エチレン)(P(VDF−TrFE)、又はポリ(二フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン)(P(VDF−TFE))を含む、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の原理の理解を促進させる目的で、以下、図面に例示される実施形態を参照するとともに、特定の言葉を用いてそれを説明することとする。とはいうものの、理解されることには、開示の範囲に対する限定は意図されていない。本開示が関係する当業者に普通に浮かぶような、記載される装置、システム及び方法への如何なる改変及び更なる変更、並びに本開示の原理の如何なる更なる応用も、十分に企図されて本開示の範囲内に含まれる。例えば、本開示は、心臓血管の撮像に関して記述される超音波撮像システムを提供しているが、理解されるように、それらの記述は、この用途に限定されることを意図したものではない。一部の実施形態において、超音波撮像システムは血管内撮像システムを含んでいる。この撮像システムは、小さい空洞内での撮像を必要とする如何なる用途にも等しく十分に適したものである。特に、完全に企図されることには、1つの実施形態に関して記述される特徴、コンポーネント及び/又はステップが、本開示の他の実施形態に関して記述される特徴、コンポーネント及び/又はステップと組み合わされ得る。しかしながら、簡潔さのため、それらの組み合わせの数多の繰り返しを別途に記述することはしない。
【0012】
固体式及び回転式という2種類のIVUSカテーテルが、今日一般的に使用されている。例示的な固体式IVUSカテーテルは、当該カテーテルの外周にわたって分布されて電子回路に接続された複数(典型的に、64個)のトランスデューサのアレイを使用する。該回路は、超音波信号を送って反射された超音波信号を受けるトランスデューサを、アレイから選択する。一連の送信−受信トランスデューサ対を通じてステップを踏むことにより、固体式カテーテルは、可動部分なしで、機械的に走査されるトランスデューサ素子の効果を合成することができる。回転する機械要素が存在しないので、最小限の血管外傷のリスクで、血液及び血管組織と直に接触させてトランスデューサアレイを配置することができるとともに、単純な電気ケーブル及び標準的な脱着可能な電気コネクタを用いて、固体式スキャナを直接的に撮像システムに配線することができる。
【0013】
例示的な回転式IVUSカテーテルは、関心血管に挿入されるシースの内側でスピンする柔軟性のあるドライブシャフトの先端に置かれた単一の超音波トランスデューサを含む。このトランスデューサは典型的に、超音波信号がカテーテルの軸に対して概して垂直に伝播するような向きにされる。典型的な回転式IVUSカテーテルでは、流体で充たされた(例えば、生理食塩水で充たされた)シースが、超音波信号がトランスデューサから組織内に自由に伝播して戻ってくることを可能にしながら、スピンするトランスデューサ及びフレキシブルドライブシャフトから血管組織を保護する。ドライブシャフトが回転(例えば、毎秒30回転)しているときに、トランスデューサが、周期的に高電圧パルスで励起されて、短い超音波バーストを放射する。超音波信号は、トランスデューサから、流体充填シース及びシース壁を貫いて、ドライブシャフトの回転軸に対して概して垂直な方向に放射される。次いで、同じトランスデューサが、様々な組織構造から反射されて戻って来る超音波信号をリッスンし、そして、撮像システムが、トランスデューサの単一回転の間に行われるこれら超音波パルス/エコー収集シーケンスの数百ものシーケンスから、血管断面の2次元画像を組み立てる。
【0014】
図1は、本開示の様々な態様に従ったIVUS撮像システム100の模式図である。IVUS撮像システム100は、患者インタフェースモジュール(PIM)104を介してIVUS制御システム106に結合されたIVUSカテーテル102を含んでいる。制御システム106は、例えばIVUSシステム100によって生成される画像などのIVUS画像を表示するモニタ108に結合されている。
【0015】
一部の実施形態において、IVUSカテーテル102は、Volcano社から入手可能なRevolution(登録商標)回転式IVUS撮像カテーテル、及び/又は米国特許第5,243,988号及び米国特許第5,546,948号(これら双方の全体をここに援用する)に開示されている回転式IVUSカテーテルと同様とし得るものである回転式IVUSカテーテルである。カテーテル102は、血管(図示せず)の内腔への挿入用に形状を決められて構成された、細長くてフレキシブルなカテーテルシース110(近位端部分114及び遠位端部分116を有する)を含んでいる。カテーテル102の縦軸LAが、近位端部分114と遠位端部分116との間に延在している。カテーテル102はフレキシブルであり、それ故に、使用中に血管の湾曲に適応することができる。これに関し、
図1に示した湾曲した構成は、例示目的でのものであり、他の実施形態においてカテーテル102が湾曲し得る様子をいかようにも限定しない。一般に、カテーテル102は、使用時に如何なる所望の直線状又は弓形の形状をも呈するように構成され得る。
【0016】
回転する撮像コア112が、シース110内を延在している。撮像コア112は、シース110の近位端部分114の中に配置された近位端部分118と、シース110の遠位端部分116の中に配置された遠位端部分120とを有している。シース110の遠位端部分116及び撮像コア112の遠位端部分120は、IVUS撮像システム100の稼働中に関心血管に挿入される。カテーテル102(例えば、具体的には関心血管である患者に挿入されることができる部分)の使用可能な長さは、如何なる好適長さともすることができ、用途に応じて様々であり得る。シース110の近位端部分114及び撮像コア112の近位端部分118は、インタフェースモジュール104に接続される。近位端部分114、118は、患者インタフェースモジュール104に取り外し可能に接続されるカテーテルハブ124と合致される。カテーテルハブ124は、カテーテル102と患者インタフェースモジュール104との間の電気的及び機械的な結合を提供する回転インタフェースを支援及び支持する。
【0017】
撮像コア112の遠位端部分120は、トランスデューサアセンブリ122を含んでいる。撮像コア112は、血管の画像を取得するために(モータ又はその他の回転装置の何れかの使用により)回転されるように構成される。トランスデューサアセンブリ122は、血管、特に、血管内の狭窄を可視化するのに好適な如何なるタイプのものともし得る。図示した実施形態において、トランスデューサアセンブリ122は、圧電マイクロマシン超音波トランスデューサ(PMUT)と、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)などの付随回路とを含む。IVUSカテーテルで使用される例示的なPMUTは、米国特許第6,641,540号(その全体をここに援用する)に開示されているものなどのポリマー圧電膜(メンブレン)を含み得る。PMUTトランスデューサは、半径方向において最適な分解能のための帯域幅の100%超と、最適な方位角方向及び仰角方向の分解能のための球状フォーカスされるアパチャとを提供することができる。トランスデューサアセンブリ122はまた、PMUTトランスデューサ及び付随回路をその中に持つ筐体を含むことができ、該筐体は、PMUTによって生成される超音波信号がそれを通って進行し得る開口を有する。他の例では、トランスデューサアセンブリ122は、容量性(capacitive)マイクロマシン超音波トランスデューサ(CMUT)を含む。
【0018】
図2は、ウェハ150の一部の簡略化した図形的な上面図である。ウェハ150は、例えばシリコン基板といった基板の上に形成された複数の圧電マイクロマシン超音波トランスデューサ200を収容している。トランスデューサ200は、複数の横方向の行に配列されている。各トランスデューサ200が、それぞれのトレンチ300によって部分的に囲まれ又は取り囲まれている。PMUT200は、2013年12月13日に出願された“Layout and Method of Singulating Miniature Ultrasonic Transducers”なるタイトルの米国特許出願第13/105,902号(その全体をここに援用する)にもっと詳細に記載されている。本開示の様々な態様によれば、ウェハスケールプロセスにて、ウェハ150の前面(フロント表面)上に保護膜又は保護層がコーティングされ得る。このウェハレベルコーティングプロセスを、以下、
図3−10を参照して説明する。
【0019】
より詳細には、
図3−10は、ウェハ150の一部の図形的で断片的な側断面図である。
図3−10は各々、本開示の様々な態様に従った製造の異なる一段階に対応している。
図3−10は、本開示の発明概念をより十分に理解できるように、明瞭さのために簡略化されている。また、同じ製造プロセスが超音波トランスデューサ200の全てに対して実行されるので、以下の説明は、単純さ及び明瞭さの目的で、トランスデューサ200のうちのほんの数個(例えば、
図3−9に示される3つのトランスデューサ200)に注目することとする。
【0020】
PMUT200は、
図1のIVUS撮像システム100に(例えば、IVUSカテーテル102に含まれたトランスデューサアセンブリ122に)含められ得る。トランスデューサ200は、血管内撮像によく適するよう、小さいサイズを有し、且つ高い分解能を提供する。一部の実施形態において、PMUT200は、およそ500ミクロンのサイズを有し、約20MHzと80MHzとの間の周波数域で動作することができ、そして、10mmに至る侵入深さを提供しながら50ミクロンよりも良好な分解能を提供し得る。また、トランスデューサ200の圧電膜は好ましくは、フォーカスされるアパチャを作り出すために、実質的に球状の窪みを形成するように撓まされる。超音波ビームが名目上、球状の撓みの曲率中心に集束され、焦点ゾーン内の超音波ビーム幅が最小化され、故に、高分解能の超音波像が提供される。以下、超音波トランスデューサ200及びその製造の様々な態様を更に詳細に説明する。
【0021】
図示した実施形態において、超音波トランスデューサ200は圧電マイクロマシン超音波トランスデューサ(PMUT)である。他の実施形態において、トランスデューサ200は、他のタイプのトランスデューサを含んでいてもよい。更なる機構が超音波トランスデューサ200に追加されることができ、後述される機構の一部は、超音波トランスデューサ200の更なる実施形態では、置換あるいは排除されることができる。
【0022】
図3に示すように、トランスデューサ200は基板210を含んでいる。基板210は、表面212と、表面212とは反対側の表面214とを有している。表面212は、前面(フロント表面)又は前面側としても参照することがあり、表面214は、裏面又は裏面側としても参照することがある。図示した実施形態において、基板210はシリコン基板である。基板210は、他の実施形態において、PMUTトランスデューサ200の設計要求に応じて、他の好適材料からなってもよい。
【0023】
基板210の初期厚さ220は、表面212と表面214との間で測定される。一部の実施形態において、初期厚さ220は、約200ミクロン(μm)から約600μmまでの範囲内である。
【0024】
基板210の表面212を覆って誘電体層230が形成される。誘電体層230は、例えば熱酸化、化学気相成長(CVD)、物理気相成長(PVD)、原子層成長(ALD)、又はこれらの組み合わせなどの、技術的に知られた好適手法によって形成され得る。誘電体層230は、例えば二酸化シリコン、窒化シリコン、又は酸窒化シリコンといった、酸化物材料及び/又は窒化物材料を含み得る。誘電体層230は、上に形成されるべき層のための支持表面を提供する。誘電体層230はまた、僅かに導電性であり得る(シリコンの場合)下に位置する基板からの電気絶縁を提供する。
【0025】
誘電体層230を覆って導電層240が形成される。導電層240は、例えば蒸着、スパッタリング、電気めっきなどの好適な堆積プロセスによって形成され得る。図示した実施形態において、導電層240は、1つ以上の金属コンポーネントのスタックからなる。例えば、その金属スタックは、チタン、タングステン、クロム、金、及び/又はアルミニウムのコンポーネントを含み得る。導電層240は、例えば、フォトリソグラフィと、導電層240の不所望部分を除去するために使用されるリフトオフ又はエッチング、などの技術を用いてパターニングされる。単純さのため、
図3は、パターニングされた後の導電層240のみを示している。
【0026】
誘電体層230及び導電層240を覆って圧電膜250が形成される。様々な実施形態において、圧電膜250は、例えばポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)若しくはその共重合体、三フッ化エチレンを有するP(VDF−TrFE)、又は四フッ化エチレンを有するP(VDF−TFE)などの、圧電材料を含み得る。他の例では、例えばP(VDF−CTFE)又はP(VDF−CFE)などのポリマーが使用されてもよい。図示した実施形態において、圧電膜250に使用される圧電材料はP(VDF−TrFE)を含む。
【0027】
圧電膜250は、例えば
図3に示した形状といった、所望の形状を達成するようにパターニングされる。このパターニングプロセスで、圧電膜250の不所望の部分が除去される。結果として、誘電体層230及び導電層240の部分ぶぶんが露出される。本実施形態において、圧電膜250は、頂部電極用の堆積物が形成されることを可能にする面取り部を形成するようにエッチングされている。面取り部は、
図3の断面図に示される台形側壁として現れ得る。また、理解されるように、圧電膜250が導電層240にいっそう張り付きやすいように、一部の実施形態において、圧電膜250と導電層240との間に密着促進層(ここでは図示せず)が形成されてもよい。
【0028】
技術的に知られた好適な堆積プロセスを用いて、圧電膜250を覆って導電層270(すなわち、頂部電極)が形成される。図示した実施形態において、導電層270は、1つ以上の金属コンポーネントのスタックからなる。例えば、その金属スタックは、チタン、タングステン、クロム、金、及び/又はアルミニウムのコンポーネントを含み得る。導電層270は、例えば、フォトリソグラフィと、導電層240の不所望部分を除去するために使用されるリフトオフ又はエッチング、などの技術を用いてパターニングされる。単純さのため、
図3は、パターニングされた後の導電層270のみを示している。導電層240及び270並びに圧電層250は集合的に、トランスデューサ膜(メンブレン)を構成し得る。他の例では、トランスデューサメンブレンはまた、導電層240及び270並びに圧電層250の直下に置かれた誘電体層の部分をも含み得る。
【0029】
その後、ボンドパッド280−281(導電コンタクト又はパッドメタルとしても参照する)が形成される。ボンドパッド280は、導電層240上に形成されて、それに電気的に結合され、ボンドパッド281は、導電層270上に形成されて、それに電気的に結合される。ボンドパッド280−281は、導電層240及び270を覆って金属の層を堆積し、その後、この金属の層をリソグラフィプロセスでパターニングすることによって形成され得る。その結果、ボンドパッド280−281が形成される。ボンドパッド280−281は、トランスデューサ200の電極としての役割を果たし得る。これらの電極(すなわち、ボンドパッド280−281)を介して、トランスデューサ200と例えば電子回路などの外部装置(ここでは図示せず)との間の電気接続が構築され得る。該電子回路は、特には超音波域の音波である音波を生成するようにトランスデューサメンブレンを励起することができる。
【0030】
次いで
図4を参照するに、ウェハ150の裏面側214が材料285で覆われる。材料285は、後のプロセスで容易に除去されることが可能なテープ又はその他の種類の犠牲材料を含み得る。その後、ウェハ150の全体を覆って保護層290がコンフォーマル(共形)にコーティングされる。
図4ではウェハ150の一部のみが示されているので、保護層290は、ウェハの前面側212を覆って及び裏面側214を覆ってコーティングされるように示されている(すなわち、ウェハ150とその上にコーティングされた保護層290との外側縁はここでは示されていない)が、理解されるように、保護層290のコーティングはウェハレベルで行われる。
【0031】
保護層290は2つの目的を果たす。第1に、これは、例えば血液又は生理食塩水などの流体に対する電気絶縁を提供する。第2に、これは、トランスデューサ200のメンブレンと、典型的には生理食塩水又は血液である周囲媒体との間の音響インピーダンス整合を提供する。故に、ここでの保護層290は、電気絶縁性であり且つトランスデューサメンブレンの音響インピーダンスと周囲媒体(生理食塩水)の音響インピーダンスとの中間の音響インピーダンスを示す材料を含む。一部の実施形態において、保護層290は、化学気相成長されたポリ(p−キシリレン)ポリマー(以下、その商品名で、パリレンと称する)を含む。
【0032】
コンフォーマルコーティングが意味することは、保護層290が、それが到達し得る全ての表面上に同等又は均一な厚さでコーティングされるということである。換言すれば、保護層290は、ウェハ150の前面側212及び裏面側214の上に配された様々なコンポーネントの断面プロファイル又は輪郭に従うことになる。裏面側214は平坦(且つ材料285は平坦)であるので、裏面側214で材料285上に形成された保護層290の部分もまた平坦であり、すなわち、平坦な表面を有する。しかしながら、ウェハ150の前面側212に形成されたPMUTトランスデューサ200は基板210の前面と共平面ではないので、保護層290は、例えばボンドパッド280−281、導電層240及び270、並びに圧電膜250といった、PMUTトランスデューサ200のコンポーネントの起伏に従う。理解されるように、ここでの図面においては、単純さの理由で、保護層290のコンフォーマルコーティング性が正確には図示されていないことがある。
【0033】
保護層290は、全体を通して均一である厚さ295を有する。一部の実施形態において、保護層290は、例えばおよそ2ミクロンから5ミクロンなど、電気絶縁を提供するのにちょうど十分なだけの厚さ295を有する。他の実施形態において、保護層290は、電気絶縁と音響マッチングとの双方を提供するように選定された厚さ295を有し、その場合、厚さ295は、トランスデューサ中心周波数での音響波長のおよそ1/4(例えば40MHzの中心周波数を持つトランスデューサに対しておよそ13ミクロンなど)とし得る。
【0034】
次いで
図5を参照するに、ウェハ150の裏面側214の材料285(
図4にて見て取れる)が、その上に形成された保護層290とともに除去されている。基板210内に複数のトレンチ300をエッチングするよう、第1のエッチングプロセスが前面212から行われる。トレンチ300は、例えばディープ(深堀)反応性イオンエッチング(DRIE)プロセスなどのドライエッチングプロセスによって形成され得る。トレンチ300の各々が、例えば
図2の上面図に示したように、複数のトランスデューサのうちのそれぞれの1つを部分的に囲み又は取り囲む。
図5の断面図には、トレンチ300A−300Bのみが示されている。理解されるように、トレンチ300A及び300Bは、
図5の断面図では2つのトレンチとして見えているとしても、実際には、複数のトランスデューサ200のうちの1つを囲む単一の連続したトレンチの部分同士である。本実施形態において、トレンチ300は、約80μmから約100μmまでの範囲内にあるトレンチ深さ310を有する。当然ながら、深さ310は、他の実施形態では異なる値を有し得る。
【0035】
理解されるように、トレンチ300がエッチングされる前に、エッチングされるべきでない保護層290の部分を覆うように、前面側212にフォトマスクが設けられ得る。このフォトマスクは、隣接するPMUTトランスデューサ200の間に配置された開口を含んでおり、トレンチ300がエッチングされるのはそれらの開口を通してである。単純さの理由で、ここではフォトマスクは図示されていない。
【0036】
次いで
図6を参照するに、別のエッチングプロセスが実行され、ボンドパッド280−281の上に位置する保護層290の部分を除去することによって、ボンドパッド280−281が露出される。保護層290のこれらの部分の除去は、ボンドパッド280−281の各々の上にリセス(凹部)又は開口305を形成する。この場合も、このエッチングプロセスが実行される前に、先ず、別のフォトマスクがウェハの前面側212に設けられる。このフォトマスクは、ボンドパッド280−281と上下でアライメントされた開口を含む。このフォトマスクは、その下に置かれた保護層290がエッチングされることを防止しながら、このフォトマスクの開口によって露出された保護層の部分がエッチングプロセスによって除去されることを可能にする。このエッチングプロセスが完了した後、ボンドパッド280−281が露出され、ワイヤボンディングの準備が整う。
【0037】
理解されるように、
図4−6は、リセス305が形成される前にトレンチ300が形成されることを示しているが、この具体的な順序は重要でない。換言すれば、他の実施形態において、トレンチ300が形成される前にリセス305が形成されてもよい。
【0038】
ここでは開口(例えば、トレンチ300及びリセス305)を導入するのにエッチングが用いられるので、ここでの保護層290の側縁(例えば、トレンチ300又はリセス308の側壁)は、その開口を形成するのに用いられる特定のエッチングプロセスの特徴を呈することになる。それらの特徴は、採用され得る様々なエッチング方法で異なるものであり、ここでの開口が例えば機械的なソーイングプロセスによって形成されるとした場合とも異なる。
【0039】
次いで
図7を参照するに、基板210内に裏面側214から複数の開口350が形成される。各開口350が、複数のトランスデューサ200のうちの1つのメンブレンの下に(すなわち、上下でアライメントされて)形成される。開口350はまた、井戸(ウェル)、空所(ボイド)、又は凹部(リセス)としても参照され得る。開口350は、図示した実施形態において、誘電体層230に至るまで形成されている。換言すれば、誘電体層230の一部が開口350によって裏面側214に露出される。しかしながら、理解されるように、他の実施形態において、開口350は上方に誘電体層230を貫き進んで、導電層240(すなわち、底部電極)で停止してもよい。一部の実施形態において、開口350は、例えばディープ反応性イオンエッチング(DRIE)プロセスといった、エッチングプロセスによって形成される。各開口350が1つのトランスデューサ200のアパチャに対応する。
【0040】
理解されるように、本実施形態は、裏面側214から開口350を形成する前に前面側212からトレンチ300を形成することを含んでいるが、他の実施形態において、これらのプロセスは逆にされてもよい。換言すれば、他の実施形態において、トレンチ300よりも前に開口350が形成されてもよい。
【0041】
次いで
図8を参照するに、開口350が裏当て材370で充填される。固体の裏当てを形成するように裏当て材370が硬化される前に、裏当て材が液体のままである間に、フォーカスされるトランスデューサアパチャを作り出すために、球状のお椀形状の湾曲を形成するよう、メンブレンが撓まされ得る。単純さのため、撓みプロセスは
図8に描写されていない。裏当て材370が硬化されると、開口350を充填した裏当て材370がメンブレン撓みを保持し、この裏当て材370はまた、圧電膜250の背後から裏当て材370内に現れる音波を弱めるように作用する。より詳細には、裏当て材370は、誘電体層230の底面(すなわち、裏面側表面)(又は、誘電体層230が開口350内で除去されている実施形態では導電層240の裏面)と物理的に接触する。故に、裏当て材370の1つの機能は、トランスデューサメンブレン360を、その形状(例えば、弓形の形状)が維持されるように適所に係止する助けとなることである。裏当て材370はまた、トランスデューサメンブレン360によって生成されて裏当て材370内に伝播する音波を吸収することが可能な音響減衰材料を含む。このような音波(又は音響エネルギー)は、例えば超音波トランスデューサ200が
図1のトランスデューサアセンブリ122に含められるときに、トランスデューサアセンブリの境界面及び構造から反射される波を含む。
【0042】
開口350の上に配置された層(すなわち、トランスデューサメンブレン)はまた、凹面を形成するように撓まされる。別の言い方をすれば、開口350によって露出された誘電体層230の部分、及び誘電体層230の該部分の上に配置されたトランスデューサメンブレンの部分は、裏面側214に向かって湾曲される。故に、弓形形状のトランスデューサメンブレン360が形成される。単純さのため、弓形形状のトランスデューサメンブレンは
図5の全てのトランスデューサ200については図示されていないが、理解されるように、各トランスデューサ200が、
図9に示すトランスデューサ200のような(又は、それと同様な)形状にされ得る。トランスデューサメンブレンの形を整えることの更なる詳細は、2012年12月21日に出願された“Method and Apparatus For Shaping Transducer Membrane”なるタイトルの米国仮特許出願第61/745,344号(代理人整理番号44744.1094)に開示されており、その全体をここに援用する。
【0043】
次いで
図10を参照するに、基板210の厚さを薄くするように、裏面側214から薄化プロセス400が実行される。一部の実施形態において、研削、研磨、若しくはエッチングのプロセス、又はこれらの組み合わせを用いて、基板210(及び、適用可能な場合の実施形態において、裏当て材370)の一部が裏面側214から除去される。薄化プロセス400は、基板210が所望の厚さ410に到達するまで行われる。厚さ410は、トレンチ300の深さ310(
図5に示される)よりも大きくない。一部の実施形態において、薄化プロセス400が行われた後の基板210の厚さ410は、例えば約75μmなど、約80μmより小さい。
【0044】
本開示の様々な態様に従った保護層290のコンフォーマルなウェハレベルコーティングは、利点を提供する。しかしながら、理解されるように、異なる実施形態は異なる利点を提供することがあり、必ずしも全ての利点がここで説明されるわけではなく、また、如何なる特定の利点も全ての実施形態には要求されない。1つの利点は、ウェハレベルコーティングは、実行がより容易であるとともに、より少ない時間を要することである。伝統的なPMUTトランスデューサ製造プロセスにおいては、トランスデューサが個片化されて個々のタッドポールアセンブリが形成された後に、保護コーティング(例えば、パリレンコーティング)が塗布される。これは不便である。というのは、多数のタッドポールアセンブリをパリレン(又は同様の)コーティングチャンバに導入し、そして、取り付けられたクワッドケーブルを、コーティングされることから保護することは、面倒であるとともに時間がかかるためである。比較して、ここで説明されたウェハレベルコーティングは、個片化が行われる前に、ウェハレベルで行われて、1つの単純な工程で何千個ものトランスデューサを同時にコーティングする。
【0045】
別の1つの利点は、ここに記載されたエッチングプロセスは、保護コーティングが剥離する可能性を低減することである。従来のコーティング方法によれば、トランスデューサアセンブリの裏面を含めて、トランスデューサアセンブリの全ての表面に保護材料が塗布される。これは問題を生じさせる。というのは、トランスデューサの裏に進行する音がトランスデューサの裏面側を覆う保護層で跳ね返ることになるからである。この問題を軽減するために、先ず、トランスデューサの裏面側に接着マスキング材が塗布され、そして、前面及び裏面での保護層のコーティング後に、例えばかみそりの刃などの切断装置を用いて接着マスキング材をその上に形成された保護層とともに削ぎ落とすという、特定の取り組みが採用されてきた。これは、つらいプロセスである。さらに、保護層に広く使用される材料(パリレン)は、それ自体に対して優れた密着性を有するが、その他の材料にはそれほどでない。保護層が裏面側にわたって切除されることは、保護層の切断エッジをもたらすが、これは、特に応力がそれに印加される場合に、剥離しがちなものである。例えば、切断プロセスそれ自体が応力をもたらすことがあり、それにより、保護層が削ぎ落とされるプロセスが思わずして開始されてしまい得る。対照的に、ここでの保護層のエッジは、例えば反応性イオンエッチングなどのエッチングプロセスによって画成され得る。このドライエッチングプロセスは、分子スケールで起こり、最小限の応力のみを保護層にもたらし、それにより、保護層が剥離する可能性を低減する。
【0046】
別の1つの利点は、ここでのエッチングプロセスは、保護コーティングが剥離する可能性を低減することである。従来のコーティング方法によれば、トランスデューサアセンブリの裏面を含めて、トランスデューサアセンブリの全ての表面に保護材料が塗布される。これは問題を生じさせる。というのは、トランスデューサの裏に進行する音がトランスデューサの裏面側を覆う保護層で跳ね返ることになるからである。この問題を解決するために、先ず、トランスデューサの裏面側に接着材が形成され、そして、前面及び裏面での保護層のコーティング後に、例えばかみそりの刃などの切断装置を用いて接着マスキング材をその上に形成された保護層とともに削ぎ落とすという、特定の取り組みが採用されてきた。これは、つらいプロセスである。さらに、保護層に広く使用される材料(パリレン)は、それ自体に対しては良好な密着性を有するが、その他の材料にはそれほどでない。保護層が裏面側にわたって切除されることは、保護層の切断エッジをもたらし得るが、これは、特に応力がそれに印加される場合に、剥離しがちなものである。例えば、切断プロセスそれ自体が応力をもたらすことがあり、それにより、保護層が削ぎ落とされるプロセスが思わずして開始されてしまい得る。比較して、ここでの保護層のエッジは、例えば反応性イオンエッチングなどのエッチングプロセスによって画成され得る。このドライエッチングプロセスは、分子スケールで起こり、最小限の応力のみを保護層にもたらし、それにより、保護層が剥離する可能性を低減する。
【0047】
保護層290のウェハレベル塗布の別の1つの利点は、それが、下に位置する層のエッジを封入して、後のトランスデューサの製造及び組立の段階中に、それら下に位置する層の剥離を防止する助けとなることである。例えば、導電層240及び270のエッジは、それらが周囲の層に強く接着されていない場合に剥離を被ることがある。同様に、圧電膜250も剥離を被ることがある。剥離は、後のトランスデューサ製造の段階中に、熱処理、メンブレン撓み、又はデバイス取扱いに起因して遭遇する応力によって開始され得る。下に位置する層のエッジを封入する本発明に従った保護層290の存在は、それらの層の剥離を防止することを助けることになる。
【0048】
図11は、小型の超音波トランスデューサを製造する方法500のフローチャートである。方法500は、複数の小型超音波トランスデューサが形成されたウェハを受け取る工程510を含んでいる。小型超音波トランスデューサは各々、圧電材料を含んだトランスデューサメンブレンと、各々がトランスデューサメンブレンに電気的に結合された第1のボンドパッド及び第2のボンドパッドとを含む。一部の実施形態において、圧電材料は、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)ポリマー、P(VDF−TrFE)と呼ばれる三フッ化エチレンとの二フッ化ビニリデンの共重合体、又はP(VDF−TFE)と呼ばれる四フッ化エチレンとの二フッ化ビニリデンの共重合体を含む。
【0049】
方法500は、ウェハの前面側から上記複数の小型超音波トランスデューサを覆って保護層をコンフォーマルに堆積する工程520を含んでいる。一部の実施形態において、保護層はパリレン材料を含む。一部の実施形態において、保護層は化学気相成長プロセスで堆積される。
【0050】
方法500は、第1のエッチングプロセスを実行して、前面側からウェハ内に延在する複数の第1のトレンチを形成する工程530を含んでおり、第1のトレンチは、保護層を貫通して基板内に深くエッチングされ、第1のトレンチは、隣接し合う小型超音波トランスデューサ間に配置される。一部の実施形態において、第1のエッチングプロセスはディープ反応性イオンエッチング(DRIE)プロセスを含む。
【0051】
方法500は、第2のエッチングプロセスを実行して、第1及び第2のボンドパッドの上に置かれた保護層の部分を除去し、それにより第1及び第2のボンドパッドを露出させる工程540を含んでいる。
【0052】
理解されるように、トランスデューサの製造を完了するために、工程510−540の前、間、又は後に更なる製造工程が行われ得る。例えば、方法500は、保護層をコンフォーマルに堆積する工程520の前に、ウェハの裏面側を覆う工程を含み得る。一部の実施形態において、方法500は更に、以下の工程:ウェハの裏面側から複数の第2のトレンチをエッチングする工程であり、第2のトレンチが各々、複数のトランスデューサメンブレンのうちのそれぞれの1つとアライメントされる工程;第2のトレンチの各々を例えばエポキシなどの裏当て材で充填し、エポキシ硬化に先立ってトランスデューサメンブレンを撓ませる工程;及びウェハを裏面側から薄化する工程;を含み得る。その他の製造工程も実行され得るが、単純さの理由で、それらの更なる製造工程をここで説明することはしない。
【0053】
当業者が認識するように、上述の装置、システム、及び方法は、様々に変更されることができる。従って、当業者が理解するように、本開示によって包含される実施形態は、上述の特定の例示実施形態に限定されない。これに関し、例示的な実施形態が図示されて説明されているが、幅広い範囲の変更、変形、及び代用が、以上の開示にて企図される。理解されるように、そのようなバリエーションは、以上のものに対して、本開示の範囲を逸脱することなく為され得るものである。従って、添付の請求項は、本開示と一致するやり方で広く解釈されることが適切である。