特許第6297136号(P6297136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6297136スクリーン印刷装置、及び、スクリーン印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297136
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】スクリーン印刷装置、及び、スクリーン印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/36 20060101AFI20180312BHJP
   B41F 15/08 20060101ALI20180312BHJP
   B41F 15/26 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   B41F15/36 A
   B41F15/08 303E
   B41F15/26 A
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-506051(P2016-506051)
(86)(22)【出願日】2014年3月7日
(86)【国際出願番号】JP2014055959
(87)【国際公開番号】WO2015132952
(87)【国際公開日】20150911
【審査請求日】2016年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 猛志
(72)【発明者】
【氏名】吉川 英樹
(72)【発明者】
【氏名】若林 利昌
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−266629(JP,A)
【文献】 特開2013−116584(JP,A)
【文献】 特開2004−322427(JP,A)
【文献】 特開平05−092544(JP,A)
【文献】 特開2000−313100(JP,A)
【文献】 特開平10−284829(JP,A)
【文献】 特開平07−156363(JP,A)
【文献】 国際公開第1986/002596(WO,A1)
【文献】 特開2007−030356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/08
B41F 15/26
B41F 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にパターンを印刷し、前記基板をマスク本体から版離れさせるスクリーン印刷装置であって、
前記マスク本体を保持する金属で形成されたフレームと、
前記マスク本体と前記フレームとの間に介在される弾性部材と、
を有し、前記マスク本体が前記フレームの内側に前記弾性部材を介して支持されているマスクと、
前記基板を保持する保持部と、
前記保持部に保持されている前記基板と前記マスク本体とが重なっている状態で前記マスク本体を吸着する吸着部と、
前記基板にパターンが印刷された後に、前記吸着部が前記マスク本体を吸着している状態で前記保持部及び前記吸着部を前記フレームから前記基板の板面に垂直な方向に相対的に離間させる離間部と、
前記マスク本体を前記基板から版離れさせるタイミングを調整するための目標圧力の設定を受け付ける圧力設定部と、
を備え、
前記吸着部は、
前記基板と前記マスク本体とが重なっている状態で前記マスク本体に接する面に孔が形成されている当接部材と、
前記孔内の空気を吸引する吸引装置と、
前記吸引装置によって吸引される空気の圧力を前記圧力設定部によって設定された目標圧力に調整するレギュレータと、
を含み、
前記吸着部は、前記基板にパターンを印刷する前に前記吸着部に前記マスク本体を吸着させ
前記離間部は、前記吸着部が前記マスク本体を吸着している状態で前記保持部及び前記当接部材を前記フレームから離間させる、スクリーン印刷装置。
【請求項2】
基板にパターンを印刷し、前記基板をマスク本体から版離れさせるスクリーン印刷方法であって、
前記マスク本体を保持する金属で形成されたフレームと前記マスク本体との間に弾性部材が介在されており、
保持部に前記基板を保持させる保持工程と、
前記保持部に保持されている前記基板と前記マスク本体とが重なっている状態で吸着部に前記マスク本体を吸着させる吸着工程と、
前記基板にパターンが印刷された後に、前記吸着部が前記マスク本体を吸着している状態で前記保持部及び前記吸着部を前記フレームから前記基板の板面に垂直な方向に相対的に離間させる離間工程と、
前記マスク本体を前記基板から版離れさせるタイミングを調整するための目標圧力の設定を受け付ける圧力設定部と、
を含み、
前記吸着部は、
前記基板と前記マスク本体とが重なっている状態で前記マスク本体に接する面に孔が形成されている当接部材と、
前記孔内の空気を吸引する吸引装置と、
前記吸引装置によって吸引される空気の圧力を前記圧力設定部によって設定された目標圧力に調整するレギュレータと、
を含み、
前記吸着工程において、前記基板にパターンを印刷する前に前記吸着部に前記マスク本体を吸着させ
前記離間工程において、前記吸着部が前記マスク本体を吸着している状態で前記保持部及び前記当接部材を前記フレームから離間させる、スクリーン印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
マスクを用いて基板にパターンを印刷するスクリーン印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷するパターンが形成されているマスク本体を用いて基板などの印刷対象物にパターンを印刷するスクリーン印刷において、印刷後に印刷対象物をマスク本体から版離れさせるとき、良好な印刷結果を得るために、可塑性を有するマスク本体を撓ませ、マスク本体が印刷対象物の方向に撓んだ状態を維持したまま、印刷対象物とマスク本体とを剥離する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−263748号公報
【発明の開示】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
しかしながら、上述した従来の技術では、押圧部材をマスク本体の中央に当接させて印刷対象物の方向に撓んだ状態を維持したままマスク本体を印刷対象物から剥離するため、マスク本体の印刷対象物からの抜け方が一様でなくなるという問題がある。
本明細書では、基板をマスク本体から良好に版離れさせることができる技術を開示する。
【0005】
(課題を解決するための手段)
本明細書によって開示されるスクリーン印刷装置は、基板にパターンを印刷し、前記基板をマスク本体から版離れさせるスクリーン印刷装置であって、前記マスク本体を保持するフレームと、前記マスク本体と前記フレームとの間に介在される弾性部材と、を有するマスクと、前記基板を保持する保持部と、前記保持部に保持されている前記基板と前記マスク本体とが重なっている状態で前記マスク本体を吸着する吸着部と、前記基板にパターンが印刷された後に、前記吸着部が前記マスク本体を吸着している状態で前記保持部及び前記吸着部を前記フレームから前記基板の板面に垂直な方向に相対的に離間させる離間部と、を備える。
【0006】
上記スクリーン印刷装置によると、吸着部に吸着されているマスク本体は弾性部材からフレーム側に引っ張る力を受けながらフレームから離間することになる。このため吸着が解除されたとき、マスク本体は弾性部材によってフレーム側に引っ張られ、基板とマスク本体とが高速に版離れする。基板とマスク本体とが高速に版離れすると、印刷に用いられるペーストがマスク本体側に残り難くなる。従って、マスク本体の基板からの抜け方が一様となり、基板をマスク本体から良好に版離れさせることができる。
【0007】
また、前記吸着部は、前記基板と前記マスク本体とが重なっている状態で前記マスク本体に接する面に孔が形成されている当接部材と、前記孔内の空気を吸引する吸引装置と、を含み、前記離間部は、前記吸着部が前記マスク本体を吸着している状態で前記保持部及び前記当接部材を前記フレームから離間させてもよい。
【0008】
上記スクリーン印刷装置によると、例えば吸盤を用いて吸着する場合に比べ、吸着する力の大きさや吸着を解除するタイミングなどの制御が容易になる。
【0009】
また、前記吸着部は、前記離間部によって離間が開始された後、予め設定されているタイミングで前記吸引装置に吸引を停止させる主制御部を含んでもよい。
【0010】
上記スクリーン印刷装置によると、複数の基板に印刷する場合に、基板間でタイミングがばらつかないようにすることができる。
【0011】
また、前記吸引装置による吸引を停止させるタイミングを設定するタイミング設定部をさらに備え、前記主制御部は、前記タイミング設定部によって設定されたタイミングで前記吸引装置による吸引を停止させてもよい。
【0012】
弾性部材の張力はマスクによって異なっている場合もある。上記スクリーン印刷装置によると、吸着を解除するタイミングを設定できるので、マスクに応じて適切なタイミングを設定することができる。
【0013】
また、前記吸引装置は前記孔内に空気を送り出すことも可能に構成されており、前記主制御部は、前記タイミング設定部によって設定されたタイミングで前記吸引装置に空気を送り出させてもよい。
【0014】
上記スクリーン印刷装置によると、孔内に空気を送り出すことによって孔内が正圧になるので、よりスムーズに版離れさせることができる。
【0015】
また、目標圧力を設定する圧力設定部をさらに備え、前記吸着部は、前記吸引装置によって吸引される空気の圧力を前記圧力設定部によって設定された目標圧力に調整するレギュレータを含んでもよい。
【0016】
上記スクリーン印刷装置によると、版離れするタイミングを設定することができる。
【0017】
また、本明細書によって開示されるスクリーン印刷方法は、基板にパターンを印刷し、前記基板をマスク本体から版離れさせるスクリーン印刷方法であって、前記マスク本体を保持するフレームと前記マスク本体との間に弾性部材が介在されており、保持部に前記基板を保持させる保持工程と、前記保持部に保持されている前記基板と前記マスク本体とが重なっている状態で吸着部に前記マスク本体を吸着させる吸着工程と、前記基板にパターンが印刷された後に、前記吸着部が前記マスク本体を吸着している状態で前記保持部及び前記吸着部を前記フレームから前記基板の板面に垂直な方向に相対的に離間させる離間工程と、を含む。
【0018】
上記スクリーン印刷方法によると、基板をマスク本体から良好に版離れさせることができる。
【0019】
(発明の効果)
上記のスクリーン印刷装置によると、基板をマスク本体から良好に版離れさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態1に係るスクリーン印刷装置の全体構成を簡略化して示す模式図。
図2】印刷ステージ部、及び、基板固定部の斜視図。
図3】スクリーン印刷装置の電気的構成を簡略化して示すブロック図。
図4】マスクの模式図。
図5】印刷制御処理のフローチャート。
図6A】印刷の流れを時系列で示す模式図。
図6B】印刷の流れを時系列で示す模式図。
図6C】印刷の流れを時系列で示す模式図。
図6D】印刷の流れを時系列で示す模式図。
図6E】印刷の流れを時系列で示す模式図。
図6F】印刷の流れを時系列で示す模式図。
図6G】印刷の流れを時系列で示す模式図。
図6H】印刷の流れを時系列で示す模式図。
図7A】比較例を示す模式図。
図7B】実施形態1に係るスクリーン印刷装置を用いて版離れを行った結果を示す模式図。
図8】実施形態2に係るマスク本体を引っ張り上げる力とマスク本体を吸着する力とを示す模式図。
図9】実施形態2に係るスクリーン印刷装置の電気的構成を簡略化して示すブロック図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図7によって説明する。
(1)スクリーン印刷装置の全体構成
先ず、図1を参照して、実施形態1に係るスクリーン印刷装置1の全体構成について概略的に説明する。スクリーン印刷装置1は、マスク本体51と、マスク本体51を保持するフレーム52と、マスク本体51とフレーム52との間に介在する弾性部材53とを有するマスク50を用いて基板2にパターンを印刷し、その後に基板2をマスク本体51から版離れさせる装置である。
【0022】
スクリーン印刷装置1はフレーム固定部10、印刷部20、印刷ステージ部30、及び、基板固定部40を備えている。ここで、スクリーン印刷装置1はこの他にも図3に示す主制御部60、エジェクタ61、設定部62などを備えているが、図1ではそれらを省略して示している。
【0023】
フレーム固定部10は印刷時にフレーム52が動いてしまわないように固定する機構である。
印刷部20はマスク50を用いて基板2にパターンを印刷する機構である。印刷部20はスキージ21、マスク本体51の板面に平行な方向にスキージ21を移動させるスキージ駆動部22(図3参照)などを備えている。
【0024】
次に、図2を参照して、印刷ステージ部30、及び、基板固定部40について説明する。
印刷ステージ部30はマスク本体51に対して基板2を位置決めする機構である。印刷ステージ部30は昇降テーブル30A、図示しない基台に対して昇降テーブル30Aを前後方向(X軸方向)、左右方向(Y軸方向)、及び、上下方向(Z軸方向)に移動させるとともに、図示しない基台に対して昇降テーブル30AをZ軸に平行な鉛直線周りに回動させるステージ駆動部30B(図3参照)などを備えている。
【0025】
上述した印刷ステージ部30、及び、後述する主制御部60は離間部90を構成している。また、上下方向は基板の板面に垂直な方向の一例である。
【0026】
基板固定部40は印刷ステージ部30に設けられている。従って印刷ステージ部30が上昇すれば基板固定部40も上昇し、印刷ステージ部30が下降すれば基板固定部40も下降する。基板固定部40はコンベア部41、クランプ部42、基板昇降部43、上昇規制部44などを備えて構成されている。
【0027】
コンベア部41は基板2をX軸方向に搬送する機構である。コンベア部41はX軸方向に平行に延びる二つのベルトユニット41A及び41B、ベルトユニット41A及び41Bを駆動するベルト駆動部41C(図3参照)などを備えている。ベルトユニット41A及び41Bは複数のプーリ、それら複数のプーリに駆け回されているベルトなどを備えている。
【0028】
クランプ部42は基板2を保持する機構である。クランプ部42は基板2をY軸方向から挟んで固定する一対のクランプ42A及び42B、クランプ42A及び42BをY軸方向に移動させるクランプ駆動部42C(図3参照)などを備えている。クランプ42A及び42Bの上面には複数の孔42Dが設けられている。孔42Dはクランプ42A及び42BをZ軸方向に貫通しており、下端側が図示しないパイプを介して後述するエジェクタ61(図3参照)に接続されている。
【0029】
上述したクランプ部42、及び、後述する主制御部60は保持部70を構成している。また、クランプ42A、クランプ42B、後述する主制御部60、及び、エジェクタ61は吸着部80を構成している。また、上述したクランプ42A及び42Bは当接部材の一例である。つまり、本実施形態ではクランプ42A及び42Bは保持部と吸着部とを兼ねている。また、クランプ42A及び42Bの上面は、基板とマスク本体とが重なっている状態でマスク本体に接する面の一例である。
【0030】
基板昇降部43はコンベア部41によって搬送されてきた基板2を持ち上げる機構である。基板昇降部43は載置テーブル43A、載置テーブル43Aを昇降テーブル30Aに対してZ軸方向に昇降させる載置テーブル駆動部43B(図3参照)などを備えている。図2では省略しているが、載置テーブル43Aの上面には基板2を下から支持するための複数のバックアップピン43C(図1参照)が設けられている。
【0031】
上昇規制部44は載置テーブル43Aによって基板2が持ち上げられたときに基板2の上面とクランプ42A及び42Bの上面とが面一になる高さで基板2の上昇を規制する機構である。上昇規制部44はクランプ42A及び42Bに対応して設けられている一対の規制板44A及び44B、これらの規制板44A及び44Bを、基板2の上昇を規制しない位置(図6Aに示す位置)と基板2の上昇を規制する位置(図6Bに示す位置)とに変位させる規制板駆動部44C(図3参照)などを有している。
【0032】
(2)スクリーン印刷装置の電気的構成
次に、図3を参照して、スクリーン印刷装置1の電気的構成について説明する。スクリーン印刷装置1は主制御部60を備えている。主制御部60には前述した各種の駆動部の他、エジェクタ61、設定部62などが電気的に接続されている。
【0033】
主制御部60はCPU60A、ROM60B、RAM60Cなどを備えている。CPU60AはROM60Bに記憶されている制御プログラムを実行することによってスクリーン印刷装置1の各部を制御する。ROM60Bは主制御部60によって実行される制御プログラムや各種のデータなどを記憶している。RAM60Cは主制御部60が各種の処理を実行するための主記憶装置として用いられる。
【0034】
エジェクタ61は空気を吸引する装置である。前述したようにエジェクタ61はパイプを介して孔42Dに接続されており、エジェクタ61が空気を吸引することによって孔42Dの内部が負圧になる。また、エジェクタ61は空気を送り出して孔42Dの内部を正圧にすることも可能に構成されている。エジェクタ61は吸引装置の一例である。
【0035】
設定部62は液晶ディスプレイなどの表示装置や各種の操作ボタンを備えている。作業者は設定部62を操作することによって後述する「吸着を解除するタイミング」などの各種の設定を行うことができる。設定部62はタイミング設定部の一例である。
【0036】
(3)マスクの構成
次に、図4を参照して、マスク50について説明する。図4では図1に示す上方向からマスク50を見た場合を示している。マスク本体51はアルミニウムや鉄などの金属で形成されている矩形枠状のフレーム52の内側に弾性部材53を介して支持されている。マスク本体51はアルミニウムや鉄などで形成されており、印刷するパターンに対応する開口51Aが形成されている。弾性部材53は板状の樹脂やゴムなどによって形成されている。なお、弾性部材53は例えばばねであってもよい。
【0037】
(4)印刷制御処理
次に、図5、及び、図6A図6Hを参照して、主制御部60によって実行される印刷制御処理について説明する。ここで、図6A図6Hではスクリーン印刷装置1を図1に示す前側から見た場合を示している。つまり、図6A図6Hでは基板2は紙面奥側から紙面手前側に向かって搬送される。
【0038】
S101では、主制御部60はコンベア部41を制御して、図6Aに示すように載置テーブル43Aの上方に基板2を搬送させる。
S102では、主制御部60は規制板駆動部44Cを制御して、図6Bに示すように基板2の上昇を規制する位置に規制板44A及び44Bを変位させる。基板2の上昇を規制する位置では、規制板44A及び44Bは一部がクランプ42A及び42Bの上面に当接した状態で基板2の上方に位置する姿勢となる。
【0039】
そして、主制御部60は載置テーブル駆動部43Bを制御して載置テーブル43Aを上昇させる。載置テーブル43Aが上昇すると基板2がコンベア部41から持ち上げられ、規制板44A及び44Bに当接する。基板2は規制板44A及び44Bに当接することでそれ以上の上昇が規制される。
【0040】
そして、主制御部60はクランプ駆動部42Cを制御して二つのクランプ42A及び42Bをそれぞれ基板2側に移動させる。これにより基板2がクランプ42A及び42Bによって固定される。
【0041】
S103では、主制御部60は規制板駆動部44Cを制御して、図6Cに示すように基板2の上昇を規制しない位置に規制板44A及び44Bを変位させる。
S104では、主制御部60はステージ駆動部30Bを制御して昇降テーブル30Aを上昇させる。基板2を固定しているクランプ42A及び42Bや載置テーブル43Aは昇降テーブル30Aに設けられているので、昇降テーブル30Aを上昇させるとクランプ42A及び42Bや載置テーブル43Aも上昇し、図6Dに示すように基板2とマスク本体51とが重なって密接するとともに、クランプ42A及び42Bとマスク本体51とが密接する。
【0042】
S105では、主制御部60はエジェクタ61を制御して空気を吸引させる。これによりマスク本体51がクランプ42A及び42Bに吸着される。クランプ42A及び42Bによってマスク本体51を吸着すると、印刷時にマスク本体51が基板2に対して位置ずれしてしまうことを抑制できる。
【0043】
S106では、主制御部60はスキージ駆動部22を制御して、図6Eに示すようにスキージ21を移動させる。スキージ21が移動するとマスク本体51上でペースト80が均されるように広がり、マスク本体51に形成されている開口51A(図4参照)に充填される。これにより基板2にパターンが印刷される。
【0044】
S107では、主制御部60はステージ駆動部30Bを制御して昇降テーブル30Aを下降させる。図6F及び図6Gに示すように、昇降テーブル30Aを下降させるとクランプ42A及び42Bも下降する。これによりクランプ42A及び42Bがフレーム52から基板2の板面に垂直な方向に離間する。このとき主制御部60はクランプ42A及び42Bがマスク本体51を吸着している状態で昇降テーブル30Aを下降させる。このためマスク本体51はクランプ42A及び42Bと伴に下降し、マスク本体51を保持している弾性部材53が伸びてマスク本体51を上方に引っ張る力が大きくなる。
【0045】
S108では、主制御部60は昇降テーブル30Aの下降を開始させた後、予め設定されているタイミングでエジェクタ61を制御して空気の吸引を停止させる。これによりクランプ42A及び42Bによるマスク本体51の吸着が解除される。吸着が解除されるとマスク本体51は弾性部材53によって上方に引っ張り上げられ、基板2がマスク本体51から版離れする。上方に引っ張り上げられたマスク本体51は図6Hに示すように元の位置に復帰する。
【0046】
ここで、吸着を解除するタイミングは、昇降テーブル30Aの下降を開始してから予め設定されている時間が経過したタイミングであってもよいし、昇降テーブル30Aが予め設定されている距離だけ下降したタイミングであってもよい。このタイミングは作業者が設定部62を操作して可変に設定することができる。
【0047】
(5)実施形態の効果
以上説明した実施形態1に係るスクリーン印刷装置1によると、基板2に印刷を行った後、クランプ42A及び42Bがマスク本体51を吸着している状態でクランプ42A及び42Bをフレーム52から離間させるので、クランプ42A及び42Bに吸着されているマスク本体51は弾性部材53から上方に引っ張る力を受けながらフレーム52から離間する。このため吸着が解除されたとき、マスク本体51は弾性部材53によって上方に強く引っ張られ、基板2とマスク本体51とが高速に版離れする。基板2とマスク本体51とが高速に版離れすると、印刷に用いられるペースト80がマスク本体51側に残り難くなるので、基板2をマスク本体51から良好に版離れさせることができる。以下、具体的に説明する。
【0048】
図7Aは、クランプ42A及び42Bがマスク本体51を吸着していない状態でクランプ42A及び42Bを下降させて版離れを行った結果を示す比較例である。クランプ42A及び42Bがマスク本体51を吸着していない状態でクランプ42A及び42Bを下降させた場合は、弾性部材53がマスク本体51を上方に引っ張り上げる力が小さいうちに版離れする。弾性部材53がマスク本体51を上方に引っ張り上げる力が小さいと、基板2とマスク本体51とが版離れする速度が遅くなる。版離れする速度が遅いと、図7Aに示すようにペースト80の一部がマスク本体51側に残ってしまう場合がある。
【0049】
また、版離れする速度が遅いと、ペースト80がマスク本体51側に残ってしまった部分と残らなかった部分とが生じたり、あるいは部分によって残る量に差が生じたりすることにより、形成したバンプの厚みにムラが生じる場合がある。従って、マスク本体51の基板2からの抜け方が一様とならず、基板2をマスク本体51から良好に版離れさせることができない。ここでバンプとは、基板2上に残ったペースト80のことをいう。
【0050】
これに対し、図7Bは実施形態1に係るスクリーン印刷装置1を用いて版離れを行った結果を示している。高速で版離れさせると、図7Bに示すようにペースト80がマスク本体51側に残り難くなる。これは、高速で版離れさせるとマスク本体51とペースト80とを切り離す力が大きくなるからであると推測される。ペースト80がマスク本体51側に残り難くなれば、結果としてバンプの厚みにムラが生じてしまうことも抑制できる。従って、マスク本体51の基板2からの抜け方が一様となり、基板2をマスク本体51から良好に版離れさせることができる。
【0051】
更に、スクリーン印刷装置1によると、エジェクタ61によってマスク本体51を吸着するので、例えば吸盤を用いて吸着する場合に比べ、吸着する力の大きさや吸着を解除するタイミングなどの調整が容易になる。
【0052】
更に、スクリーン印刷装置1によると、クランプ42A及び42Bの下降を開始させた後、予め設定されているタイミングで吸着を解除するので、複数の基板2に印刷する場合に、基板2間で吸着を解除するタイミングがばらついてしまわないようにすることができる。
【0053】
更に、スクリーン印刷装置1によると、作業者は設定部62を操作することによって吸着を解除するタイミングを設定することができる。弾性部材53の張力はマスク50によって異なっている場合もあるので、吸着を解除するタイミングを可変に設定できるようにすると、マスク50に応じて適切なタイミングを設定することができる。
【0054】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図8ないし図9によって説明する。
前述した実施形態1ではエジェクタ61による吸引を停止させることによって吸着を解除する場合を例に説明した。これに対し、実施形態2に係るスクリーン印刷装置1は、自然に吸着が解除されるまで昇降テーブル30Aを下降させる。
【0055】
具体的には、図8に示すように、クランプ42A及び42Bがマスク本体51を吸着している状態でクランプ42A及び42Bを下降させると弾性部材53がマスク本体51を引っ張り上げる力Fsが徐々に大きくなり、クランプ42A及び42Bがマスク本体51を吸着する力Fvより大きくなったとき(Fs>Fv)に自然に吸着が解除される。
【0056】
ここで、Fsは弾性部材53の材質、大きさ、版離れ時の距離などから決定されるパラメータであって、印刷する基板2や使用するマスク50によって変化するパラメータである。Fvはエジェクタ61が空気を吸引する圧力や孔42Dの開口の大きさなどから決定されるパラメータである。
【0057】
自然に吸着が解除されるまでクランプ42A及び42Bを下降させる場合であっても、クランプ42A及び42Bがマスク本体51を吸着する力Fvを調整すれば、版離れするタイミングを制御することができる。そこで、実施形態2に係るスクリーン印刷装置1は、エジェクタ61が空気を吸引する圧力を調整することにより、クランプ42A及び42Bがマスク本体51を吸着する力Fvを調整する。
【0058】
図9に示すように、実施形態2に係るスクリーン印刷装置1は、実施形態1に係るスクリーン印刷装置1の構成に加えてレギュレータ63を備えている。レギュレータ63は孔42Dとエジェクタ61とを接続するパイプの途中に設けられており、エジェクタ61によって吸引される空気の圧力を目標圧力に調整する。
【0059】
実施形態2に係るスクリーン印刷装置1では、作業者は設定部62を操作して上述した目標圧力を可変に設定することができる。実施形態2に係る設定部62は圧力設定部の一例である。
【0060】
以上説明した実施形態2に係るスクリーン印刷装置1によると、基板2とマスク本体51とを自然に版離れさせる場合に、クランプ42A及び42Bがマスク本体51を吸着する力Fvを調整することによって版離れするタイミングを調整することができる。
【0061】
<他の実施形態>
上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0062】
(1)上記実施形態ではクランプ42A及びクランプ42Bが保持部70と吸着部80とを兼ねている場合を例に説明した。これに対し、クランプ42A及びクランプ42Bが保持部70と吸着部80とを兼ねないようにしてもよい。例えば、規制板44A及び44Bに孔42Dを設け、規制板44A及び44Bがマスク本体51を吸着する構成であってもよい。この場合、規制板44A、規制板44B、主制御部60、及び、エジェクタ61によって吸着部80が構成されることになる。また、この場合、規制板44A及び44Bは当接部材の一例である。
【0063】
(2)上記実施形態1では吸着を解除するときエジェクタ61による空気の吸引を停止させるだけであるが、エジェクタ61から空気を送り込むことによって孔42Dの内部を積極的に正圧にするようにしてもよい。このようにすると負圧による版離れのし難さを速やかに解消することができるので、負圧の影響によって版離れ速度が遅くなってしまうことを抑制できる。
【0064】
(3)上記実施形態では基板固定部40を下降させることによって基板固定部40をフレーム52から相対的に離間させる場合を例に説明した。これに対し、フレーム固定部10を上昇させることによって基板固定部40をフレーム52から相対的に離間させてもよいし、基板固定部40を下降させるとともに、フレーム固定部10を上昇させることによって基板固定部40をフレーム52から相対的に離間させてもよい。
【0065】
(4)上記実施形態ではCPU60Aによって各処理が実行される場合を例に説明した。これに対し、主制御部60はASICを備え、これらの処理の一部をASICによって実行してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1・・・スクリーン印刷装置
2・・・基板
30・・・印刷ステージ部(「離間部」の一例)
40・・・基板固定部
42・・・クランプ部(「保持部」の一例)
42A・・・クランプ(「吸着部」の一部、「当接部材」の一例)
42B・・・クランプ(「吸着部」の一部、「当接部材」の一例)
42C・・・クランプ駆動部(「保持部」の一部)
42D・・・孔
50・・・マスク
51・・・マスク本体
52・・・フレーム
53・・・弾性部材
60・・・主制御部(「保持部」、「吸着部」、「離間部」の一部)
61・・・エジェクタ(「保持部」の一部、「吸引装置」の一例)
62・・・設定部(「タイミング設定部」、「圧力設定部」の一例)
63・・・レギュレータ
70・・・保持部
80・・・吸着部
90・・・離間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7A
図7B
図8
図9