(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297146
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】クロック同期ノイズを避けるための可変周波数クロック回路を有するプロセス変数伝送器
(51)【国際特許分類】
G01D 3/028 20060101AFI20180312BHJP
G08C 19/02 20060101ALI20180312BHJP
H03M 1/08 20060101ALI20180312BHJP
G05B 19/042 20060101ALN20180312BHJP
【FI】
G01D3/028 Z
G08C19/02 A
H03M1/08 A
!G05B19/042
【請求項の数】26
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-523751(P2016-523751)
(86)(22)【出願日】2014年5月29日
(65)【公表番号】特表2016-531283(P2016-531283A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】US2014039913
(87)【国際公開番号】WO2014209535
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2016年4月27日
(31)【優先権主張番号】13/930,165
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】フラナガン,ピーター,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】タイソン,デイヴィッド,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,ジョン,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】カラリョフ,ユージーン
【審査官】
榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−523758(JP,A)
【文献】
特表2008−501108(JP,A)
【文献】
特開平08−088608(JP,A)
【文献】
特表2001−506778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 3/00 − 036
G08C 13/00 − 25/04
H03M 1/08
H03M 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のサンプリング周波数におけるサンプリングクロック信号を受け取り、前記第1のサンプリング周波数において、アナログのセンサ信号であって検知されたプロセス変数を示しているものをサンプリングし、当該サンプリングされたアナログのセンサ信号をデジタル信号へと変換する測定回路と、
前記デジタル信号を受け取り、前記検知されたプロセス変数を表す出力を与えるプロセッサと、を備え、さらに、
前記サンプリングクロック信号を受け取り、前記第1のサンプリング周波数において干渉信号をサンプリングし、当該干渉信号が干渉閾値の条件を満たす場合にトリガ信号を発生する高調波エネルギー検出器と、
前記トリガ信号を受け取り、当該トリガ信号に応答して、前記サンプリングクロック信号の周波数を前記第1のサンプリング周波数とは異なる代替サンプリング周波数へと変更する可変周波数クロック回路と、を備えることを特徴とするプロセス変数伝送器。
【請求項2】
前記可変周波数クロック回路が、前記サンプリングクロック信号の周波数を、前記代替サンプリング周波数であって前記第1のサンプリング周波数から閾値の周波数間隔だけ離れたものへと変更するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のプロセス変数伝送器。
【請求項3】
前記閾値の周波数間隔が前記第1のサンプリング周波数に対応する測定対象の狭帯域の幅(a narrow band of sensitivity)を超えていることを特徴とする請求項2に記載のプロセス変数伝送器。
【請求項4】
前記高調波エネルギー検出器が、前記サンプリングされた干渉信号が前記干渉閾値の条件を満たすか否かを、前記第1のサンプリング周波数から又は当該第1のサンプリング周波数の高調波周波数から、閾値範囲内にある周波数において判断するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のプロセス変数伝送器。
【請求項5】
前記高調波エネルギー検出器がさらに、
前記サンプリングされた干渉信号が閾値条件を満たすエネルギーレベルを、前記第1のサンプリング周波数の高調波周波数であって測定対象の狭帯域(a narrow band of sensitivity)内にある周波数において有する場合に、前記トリガ信号を発生するコンパレータを備えることを特徴とする請求項4に記載のプロセス変数伝送器。
【請求項6】
前記可変周波数クロック回路が、前記トリガ信号に応答して、前記サンプリングクロックの周波数を複数の代替サンプリング周波数のうちの1つに変更するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のプロセス変数伝送器。
【請求項7】
前記可変周波数クロック回路が、
電圧入力信号を受け取り、当該電圧入力信号の関数として発振器出力信号を与える電圧制御発振器であって、当該発振器出力信号から前記サンプリングクロック信号が生成されるという関係がある電圧制御発振器と、
一連のスイッチを有する抵抗器網であって、当該一連のスイッチが前記電圧入力信号の値を制御するように構成されている抵抗器網と、
前記トリガ信号を受け取り、前記一連のスイッチを制御して前記電圧入力信号を変化させる論理回路と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のプロセス変数伝送器。
【請求項8】
前記プロセッサからの前記出力を受け取り、ループを制御して前記検知されたプロセス変数を示す情報を与えるようにする入力/出力(I/O)回路をさらに備える請求項1に記載のプロセス変数伝送器。
【請求項9】
前記ループが4−20mAプロセス制御ループを備えることを特徴とする請求項8に記載のプロセス変数伝送器。
【請求項10】
前記第1のサンプリング周波数においてサンプリングされる前記干渉信号は、前記アナログのセンサ信号であって検知されたプロセス変数を示しているものとは別のものとして、干渉を含んで得られるものであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のプロセス変数伝送器。
【請求項11】
前記第1のサンプリング周波数においてサンプリングされる前記干渉信号は、前記プロセス変数伝送器のハウジングから得られるものであることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のプロセス変数伝送器。
【請求項12】
プロセス変数伝送器を制御する方法であって、
検知されたプロセス変数を示しているアナログのセンサ信号を第1のセンササンプリング周波数においてサンプリングすることと、
前記サンプリングされたセンサ信号をデジタル値へと変換することと、
プロセス制御ループに前記デジタル値を示す出力を与えることと、を備え、さらに、
前記第1のセンササンプリング周波数において干渉信号をサンプリングすることと、
前記サンプリングされた干渉信号が干渉閾値の条件を満たすことを判断することに応答して、前記第1のセンササンプリング周波数を、代替センササンプリング周波数であって前記第1のセンササンプリング周波数から異なるものへと変更することと、を備えることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記第1のセンササンプリング周波数から前記代替センササンプリング周波数へと変更することが、
前記サンプリングされた干渉信号が干渉閾値の値を、前記第1のセンササンプリング周波数から又は当該第1のセンササンプリング周波数の高調波周波数から、閾値範囲内にある周波数において、超えているか否かを判断することを備えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記閾値範囲が、前記第1のセンササンプリング周波数に対応する測定対象の帯域(a band of sensitivity)にあることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のセンササンプリング周波数を変更することが、
前記第1のセンササンプリング周波数を、前記代替センササンプリング周波数であって、前記第1のセンササンプリング周波数から少なくとも最小距離だけ離れており、且つ、前記閾値範囲を超えているものへと変更することを備えることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記最小距離が前記閾値範囲にマージンを加えたものとして構成されていることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のセンササンプリング周波数を変更することが、
前記第1のセンササンプリング周波数を、複数の代替センササンプリング周波数のうちの一つへと変更することを備えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記出力をプロセス制御ループへと与えることが、
前記出力を4−20mAプロセス制御ループへと与えることを備えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のセンササンプリング周波数においてサンプリングされる前記干渉信号は、前記検知されたプロセス変数を示しているアナログのセンサ信号とは別のものとして、干渉を含んで得られるものであることを特徴とする請求項12ないし18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記第1のセンササンプリング周波数においてサンプリングされる前記干渉信号は、前記プロセス変数伝送器のハウジングから得られるものであることを特徴とする請求項12ないし19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
サンプリングクロック信号を受け取り、第1のサンプリングクロック周波数においてアナログセンサ信号をサンプリングするサンプリング部と、
前記サンプリング部に接続されており、前記サンプリングされたアナログセンサ信号をデジタル値へと変換するアナログ・デジタルコンバータと、
前記デジタル値を示す出力信号を与えるプロセッサと、
干渉信号における干渉が前記出力信号において狭帯域誤差を発生させているか否かを検出し、当該発生させていることを検出した場合の応答として、干渉検出出力信号を与える干渉検出器と、
前記干渉検出出力信号を受け取り、前記第1のサンプリングクロック周波数を代替サンプリングクロック周波数へと変更する可変周波数クロック回路と、を備えることを特徴とするプロセス変数伝送器。
【請求項22】
前記可変周波数クロック回路が、前記第1のサンプリングクロック周波数を、複数の異なる代替サンプリングクロック周波数のうちの一つへと変更することを特徴とする請求項21に記載のプロセス変数伝送器。
【請求項23】
前記干渉検出器が干渉サンプリング部を備え、
前記干渉検出器が、当該干渉サンプリング部によって前記干渉信号をサンプリングすることで、前記干渉が前記狭帯域誤差を、前記サンプリング部が前記アナログセンサ信号をサンプリングする際の周波数と同じ周波数において発生させているか否かを検出することを特徴とする請求項21に記載のプロセス変数伝送器。
【請求項24】
前記干渉サンプリング部が、前記サンプリングクロック信号を用いて前記干渉信号をサンプリングすることを特徴とする請求項23に記載のプロセス変数伝送器。
【請求項25】
前記干渉信号は、前記アナログセンサ信号とは別のものとして、干渉を含んで得られるものであることを特徴とする請求項21ないし24のいずれかに記載のプロセス変数伝送器。
【請求項26】
前記干渉信号は、前記プロセス変数伝送器のハウジングから得られるものであることを特徴とする請求項21ないし25のいずれかに記載のプロセス変数伝送器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス制御・監視システムで用いられるプロセス変数伝送器に関する。より詳細には本発明は、クロック同期ノイズを避けるためにクロック周波数を変化させることに関する。
【背景技術】
【0002】
プロセス変数伝送器はプロセス制御・監視システムにおいてプロセスのパラメータを測定するのに用いられている。よくあるマイクロプロセッサベースの伝送器は、センサと、当該センサからの出力をデジタル形式に変換するアナログ・デジタル変換器と、当該デジタル出力を補償するマイクロプロセッサと、当該補償された出力を伝送する出力回路と、を含んで構成されている。現在のところ、当該伝送は通常、4−20mA制御ループといったようなプロセス制御ループを用いて、あるいは無線によって、行われている。
【0003】
こうしたシステムにより測定されるパラメータの一例として圧力があり、当該圧力は静電容量方式の差圧センサの容量を測定することによって検知される。もちろん、当該種類の圧力センサは例示に過ぎず、その他の種類のものを用いてもよい。同様に、圧力は一例としてのプロセス変数に過ぎず、その他の多種多様なプロセス制御パラメータを測定するようにしてもよい。その他のパラメータの例として、pH、温度、水位(レベル)などがある。従って、目下の説明は圧力センサに関して行うこととするが、当該説明は全く同様に容易に、その他の種類のセンサに関しても成立するものであることが理解されるはずである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】"Spread-Spectrum Clocking" http://www.ni.com/tutorial/4154/en/ 2009年11月2日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プロセス変数伝送器はしばしば、様々な種類のノイズを受けることがあり、これによって測定回路の精度に影響が出てしまうことがある。アナログ・デジタル(A/D)コンバータにおける大きなノイズ源として、同期ノイズがある。同期ノイズは、繰り返し実施される変換過程としての、A/D変換の過程の時間間隔と相対的に同じ時間間隔で発生するノイズである。こうした種類の外乱の例としてマイクロプロセッサの発生するバスノイズがある。A/Dコンバータがプロセッサバスと同期する場合、こうした種類のノイズによってA/Dコンバータの出力にオフセット誤差が発生することがある。
【0006】
様々な種類のプロセス伝送器は、電磁両立性(EMC)試験手順を受ける。当該試験手順においては、伝導高周波(RF)イミュニティ試験で発生させた外乱に対する感受性(susceptibility)が検査される。同期ノイズは、プロセス伝送器がこうした種類の外乱に感受性があることの一つのメカニズムとなっている。
【0007】
こうした種類のEMC試験手順では、コモンモードの電圧ノイズが伝送器のモジュールハウジングに関連したループ配線に加えられる。当該電圧は、ハウジングとセンサとの間にある寄生容量の結果として、測定回路に現れる。A/Dコンバータがセンサ信号をサンプリングする際には、当該寄生容量を通じて結合したノイズもサンプリングしてしまうため、サンプリング周波数における、あるいはその高調波周波数付近におけるノイズがベースバンドに現れ、測定誤差として現れてしまう。こうした種類のノイズのある入力に対するプロセス変数伝送器のシステム応答は、2つの異なるカテゴリとして現れる。第1は広帯域誤差であり、第2は狭帯域誤差である。狭帯域誤差は、次のような場合に発生する。すなわち、センササンプリング周波数又は高調波周波数に一致したものとして、あるいはこれら周波数の近辺周波数におけるものとして、センサのサンプリング回路に対して干渉が入ってくる場合である。この結果として、ベースバンドの非常に低い周波数域(直流に近いあるいは直流)に折り返し誤差が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
プロセス変数伝送器において、センサのサンプリング周波数に一致するクロック信号を用いて、センサ信号をサンプリングする。干渉もまた、センサのサンプリング周波数においてサンプリングする。当該センサのサンプリング周波数における、あるいは当該センサのサンプリング周波数の高調波周波数における干渉が、閾値レベルを超えるか否かの比較判定を行う。超えるとの判定であるならば、クロック信号を変更して、センサのサンプリング周波数が干渉の周波数から離れたものとなるように調整する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】産業プロセス制御システムを示す簡略化されたブロック図である。
【
図2】
図1の伝送器をより詳細に示すブロック図である。
【
図3】
図1,2に示した高調波エネルギー検出器と可変周波数クロック回路との全体的な動作の一実施形態に係るフローチャートである。
【
図4】一実施形態に係る可変周波数クロック回路を示すブロック図である。
【
図5】
図1の伝送器を示すブロック図であって、A/Dコンバータをより詳細に示した図である。
【
図6】試験結果の例示としての2つの周波数掃引の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、産業プロセス制御システム5の簡略化されたブロック図である。
図1にて、プロセス配管7はプロセス流体を輸送している。プロセス変数伝送器10は、プロセス配管7に接続されている。伝送器10はプロセス変数センサ18を備え、一実施形態において、プロセス変数センサ18は圧力センサとして構成される。しかし、当該圧力センサとして構成されることは一例に過ぎない。伝送器10は、例えばプロセス制御室6といったような遠隔地(リモートロケーション)へと、情報を伝送する。当該伝送は2線式制御ループ11といったようなプロセス制御ループによって行うことができる。当該プロセス制御ループは任意の所望の形式に即したものとすることができる。当該形式の例として例えば、4−20mAプロセス制御ループや、デジタル信号を伝送するプロセス制御ループや、無線のプロセス制御ループが挙げられる。
図1に示す例では、制御室6にある電源6Aによってプロセス制御ループ11は電力供給される。当該電力によって、プロセス変数伝送器10に電力供給がなされる。検出抵抗6Bを用いてループ11を流れる電流を検出することができるが、この他の機構によって電流検出してもよい。
【0011】
図2は、
図1に示す産業プロセス制御システム5の一部分を示すブロック図であり、ここでは伝送器10の詳細が示されている。一例として、伝送器10は測定回路22、プロセッサ32、高調波エネルギー検出器34及び可変周波数クロック回路52を含む。測定回路22はさらに、一例として、サンプリング部24、アナログ・デジタル(A/D)コンバータ26及び調整部28(例えば、ローパスフィルタ)を含む。高調波エネルギー検出器34はさらに、サンプリング部36、調整部38及びコンパレータ40を含む。
【0012】
図2にて、センサ18は一例においてプロセス変数センサであり、センシングされる対象であるプロセスから入力14を受け取る。入力14は一例において(
図1に示されている)配管7を流れるプロセス流体であり、センサ18は一例において圧力センサである。しかし、センサ18は他の種類のセンサであってもよく、例えばpHや、流量や、温度その他を検知するものであってよい。これらセンサ種類のいずれの実施形態においても、センサ18は一例として、検知されたパラメータを表しているアナログ出力信号20を、伝送器10の測定回路22へと出力する。
【0013】
一実施形態において、信号20はさらにサンプリング部24へと送られる。サンプリング部24は一例において、クロック信号30で与えられるサンプリング周波数にてセンサ信号20をサンプリングする。サンプリングされたアナログ信号20はA/Dコンバータ26に送られてデジタル出力へと変換され、当該デジタル出力は調整部28へと送られ、最終的にはプロセッサ32へと送られる。調整部28から出力されるデジタル出力は一例において、センサ18により出力されたアナログ信号20のデジタル表現である。プロセッサ32は連想メモリ及びクロック回路を有し、当該デジタル表現を補償してプロセス制御ループにおいて検知されたパラメータに関する情報を出力することができる。ここで、次のことに注意されたい。すなわち、プロセッサ32は入力/出力(I/O)回路を含んでいてもよく、あるいはI/O回路が個別に設けられていてもよく、当該I/O回路がループ11にデジタル形式又はアナログ形式により、例えばループ11を流れる電流を制御することによって又はアナログ電圧出力によって、情報を伝送するようにしてもよい。
【0014】
背景技術の箇所において説明したように、伝送器10のハウジングから伝送器10の回路へと混入した干渉によって狭帯域誤差が発生することがある。特に、当該干渉は、(その周波数においてセンサ信号20がサンプリングされるところの)クロック信号30の周波数の近く又は当該クロック周波数の高調波の近くにおいて、発生するものである。このことから、
図2に示す一実施形態においては、伝送器10は高調波エネルギー検出器34も含むような構成となっている。
【0015】
高調波エネルギー検出器34はさらに、サンプリング部36、調整部38及びコンパレータ40を含む。サンプリング部36は、(ブロック42として示されている)機器ハウジングからの干渉信号46を受信するように接続されており、センサ信号20が測定回路22によってサンプリングされる際の周波数と同一の周波数において、当該干渉信号46をサンプリングする。また、図示されているように、サンプリング部36は、サンプリング部24へと入力されているのと同一のクロック信号30を受け取る。当該サンプリングされた干渉信号46は、サンプリング部36から調整部38へと渡される。調整部38は、一例において増幅及びフィルタリングすることで、あるいはその他の手法によって、干渉信号46を調整したうえでコンパレータ40へと出力する。一実施形態では、センサ信号のサンプリング周波数の高調波周波数と同一又はこれに近い周波数における干渉に対して、結果として現れるエイリアス周波数は、5Hz未満となる。この場合、調整部38はローパスフィルタとして構成することで、5Hz未満の周波数の干渉のみを通過させることができる。ただしこれは例示に過ぎず、任意のその他の種類のフィルタや調整回路として構成されてもよい。調整部38は、干渉が大きな狭帯域誤差を引き起こさないような周波数及び振幅のものである場合には、低い電圧を出力する。また、調整部38は、干渉が大きな狭帯域誤差を引き起こすような周波数及び振幅のものである場合には、高い電圧を出力する。
【0016】
コンパレータ40は、調整部38から入力された電圧を参照電圧と比較する。当該入力電圧が当該参照電圧を超える場合には、コンパレータ40はトリガ信号を生成して可変周波数クロック回路52へと出力する。こうして、たとえ干渉が高調波周波数に非常に近いものである場合であっても、コンパレータ40での当該比較判定をパスさせる(すなわち、コンパレータ40をトリップさせる)だけの充分な振幅を干渉が持ち合わせていない限りは、コンパレータ40はクロック回路52をトリガしない。一実施形態において、干渉が充分な振幅を有しており、且つ、干渉の周波数が高調波周波数から30Hz以内にある場合に、コンパレータ40はトリップされる。干渉が当該条件を満たす場合には、当該干渉は伝送器10の出力において問題を引き起こすものである可能性がある。従って、コンパレータ40が干渉信号に充分なエネルギーを検出し、且つ、当該干渉が高調波周波数のうちの一つに近い周波数で発生している場合(例えば、高調波周波数のうちの一つから30Hz以内のものである場合)、コンパレータ40は可変周波数クロック回路52のラッチ50にトリガ信号48を送信する。ラッチ50がトリガ信号48によって駆動されると、一例では可変周波数クロック回路52はクロック信号30のクロック周波数を変えて、別のサンプリング周波数へと切り替える。当該別のサンプリング周波数は、当初のセンサのサンプリング周波数から少なくとも所与の幅だけは離れたものである。当該切り替え前後の2つの周波数の差は、各サンプリング周波数における測定対象の狭帯域(narrow band of sensitivity;すなわち、測定可能な感度を有することで、測定対象である狭帯域)がオーバーラップしないように選ばれる。例を挙げると、狭帯域の幅が20Hzであるものとして、可変周波数クロック回路52がクロック信号30の周波数を変更する際に、当初のクロック信号30の周波数から50Hz離れた周波数となるように変更する。このように変更すると、20Hzの幅を幾分かのマージンを持って超えることとなる。しかし、これは例示に過ぎない。
【0017】
より詳細な例示が理解に役立つと考えられ、それは次の通りである。ここで、可変周波数クロック回路52は2つの個別のクロック周波数の間のみで周波数スイッチングを行うものとする。第1の周波数が460kHzであるものとすると、一例ではクロック信号30のサンプリング周波数を(例えば20で割ったクロック周波数として)23.0kHzとすることができる。また、第2の周波数が462kHzであるものとすると、一例ではサンプリング周波数を(例えば20で割ったクロック周波数として)23.1kHzとすることができる。ここで、当該2つのサンプリング周波数は100Hzだけ離れているので、可変周波数クロック回路52が出力する当該2つのサンプリング周波数においては、少なくとも互いに50Hzは離れているという基準が満たされていることとなる。
【0018】
図3は、高調波エネルギー検出器34と可変周波数クロック回路52との全体的な動作の一実施形態に係るフローチャートであり、これらの動作として、干渉信号をサンプリングすることで、センサ信号20をサンプリングするのに用いる周波数を変更することを示す図である。最初に、サンプリング部36は干渉信号をセンサのサンプリング周波数(センサ信号20をサンプリングするのに用いるのと同一周波数)においてサンプリングする。これは
図3のブロック60として示されている通りである。
【0019】
次に、コンパレータ40は、干渉信号のうちセンサのサンプリング周波数(又はその複数の高調波周波数)に充分に近い要素の値が閾値レベルを超えるか否かを判定する。これはブロック62として示されている通りである。否定の判定であった場合、当該処理の流れはブロック60へと戻り、ブロック60においてサンプリング部36の次の処理が継続される。すなわち、サンプリング部36がセンサ信号20をサンプリングする際の周波数と同一周波数において、干渉信号46から干渉をサンプリングするという処理である。
【0020】
また一方で、ブロック62において、干渉信号のうちセンサのサンプリング周波数(又は高調波周波数のうちの一つ)と同一の要素(又は当該周波数に近い周波数の要素)の値が閾値レベルを超えるという判断をコンパレータ40が下した場合には、コンパレータ40はトリガ信号48を生成して可変周波数クロック回路52へと出力する。
図2に示す実施形態においては、当該トリガがラッチ50を稼働させ(ラッチさせ)るが、これによって回路52に対してクロック周波数を変更すべきである旨が指示されることとなる。可変周波数クロック回路52は代替のクロック周波数への変更を行うことで、信号30はセンサに対する新規なサンプリング周波数の信号となり、当該信号30は当該新規な周波数において再び、サンプリング部24及びサンプリング部36の両者へと出力されることとなる。従って、サンプリング部36(ここで干渉信号46のサンプリングが行われる)は再び、サンプリング部24(ここでセンサ信号20のサンプリングが行われる)がサンプリングする際の周波数と同一の周波数において、サンプリングを行うこととなる。以上のようにクロック周波数を変更してセンサのサンプリング周波数を調整することは、
図3においてブロック64として示されている。
【0021】
図4は、一実施形態に係る可変周波数クロック回路52をより詳細に示したブロック図である。
図4では一実施形態として、一例では可変周波数クロック回路52が論理処理部66(当該論理処理部66は、ラッチ50と同じであってもよいし、別の論理回路要素であってもよい)、電圧制御発振器68、クロック分周器70、抵抗器R1及びR2並びにスイッチS1を含んでいることが示されている。
図4に示す実施形態では、可変周波数クロック回路52は2つの異なるクロック周波数の間だけで周波数スイッチングを行う。しかしながら、次の点も理解されるはずである。すなわち、様々な異なる3つ以上(among:3つ以上の間で)のクロック周波数の間で選択可能なように、回路52を構成することも当該示す構成と同様に容易に可能であるという点である。
【0022】
上述のいずれの構成にせよ、論理処理部66は高調波エネルギー検出器34からトリガ信号48を受け取る。当該受け取りがあることは、次のことを意味している。すなわち、信号46に反映されている干渉がセンサのサンプリング周波数又は高調波周波数のうちの1つに充分に近いものであり、且つ、閾値レベルを超えるものであり、従って、当該干渉は伝送器10の出力に対して問題を起こすものであると考えられる、ということを意味している。従って、論理処理部66は、スイッチS1に対して、スイッチS1の状態を変更させるための信号を出力する。当該時点でスイッチS1が開(オープン)状態であれば、スイッチS1は閉じられることとなる。また、当該時点でスイッチS1が閉(クローズ)状態であれば、スイッチS1は開かれることとなる。こうして、抵抗器R1及びR2によって構成される抵抗回路網の構成が変更されることとなり、電圧制御発振器68へと入力される電圧レベルが変更されることとなる。従って、電圧制御発振器68の出力信号74の周波数も変化することとなる。つまり、スイッチS1が閉じられている場合には、抵抗器R2はバイパスされることとなり、電圧制御発振器68は第1の周波数で出力信号74を出力することとなる。一方、スイッチS2が開いている場合には、抵抗器R2は抵抗回路網を構成する一部となり、電圧制御発振器68は第2の周波数で出力信号74を出力することとなる。ここで、第2の周波数は第1の周波数よりも少なくとも閾値分の間隔だけ離れたものである。一実施形態では、当該閾値分の間隔を約50Hzとすることができるが、他の値を用いてもよい。
【0023】
図4に示す実施形態において、可変周波数クロック回路52はさらに分周器70を含んでいてもよい。当該分周器70は、電圧制御発振器68からの出力信号を除算することで、クロック信号30としてサンプリング部24及び26(
図2に示す)へと出力する。一実施形態では、分周器70は電圧制御発振器68からの出力信号74の周波数を20で割る。なお、分周器70は当該20以外のその他の任意の値で当該出力信号74の周波数を割るようにしてもよいし、また、分周器70は省略されていてもよい。
【0024】
以上より、次のことも理解される。すなわち、以上の説明では可変周波数クロック回路52がクロック30に関して、選択可能な2つの異なる周波数のものを出力していたが、当該回路52は同様にして容易に、3つの又はこれより多い異なる周波数を出力するようなものとしても設計可能である。つまり、
図4に示す抵抗回路網に単に抵抗器及びスイッチを追加することにより、及び、論理処理部66から複数個の出力を得るようにすることにより、又は、複数のロジック回路要素を設けておくことにより(及び例えば、高調波エネルギー検出器34において複数のコンパレータを設けておくことにより)、電圧制御発振器68を3つあるいはそれ以上の個別の周波数から選択可能なものとして構成することも可能である。これにより、複数の周波数で構成された干渉信号に起因する誤差を防ぐことを可能とするオプションが提供される。
【0025】
図5は、
図2で示したのと類似の伝送器10のブロック図であり、同様の項目には同様の番号が付与されている。ただし、
図5では一実施形態として、A/Dコンバータ26が差動増幅器80及びシグマデルタ変換器82を有する構成が示されている。シグマデルタ変換器82は例として示しているものであり、その他の変換機構を用いるようにしてもよい。
【0026】
図5ではまた、センサ18が一例において2つの導線84及び86を有し、当該導線84及び86がそれぞれ入力端子88及び90へと接続可能であることが示されている。一実施形態では、端子88及び90の間の電圧はセンサ18によって検知された温度を示すものである。また、次のことも注意されたい。すなわち、センサ18は一例では追加の端子へと接続される追加の導線を有することで4端子センサであってもよい、ということである。あるいは、これら端子(88及び90)に追加の複数のセンサが接続されており、マルチプレクサを用いて測定用の入力信号を選択するようにすることも可能である。しかしながら、当該図示している例に即して、以降の説明においては、センサ18が2つの導線を有し、それぞれ端子88及び90に接続されている場合を例として用いる。
【0027】
図5ではさらに、一例においてプロセッサ32がセンサ信号の表現に相当する信号をI/O回路92へと出力することが示されている。I/O回路92は、ループ11上においてデジタル形式により、又は、ループ11を流れる電流を制御することによるアナログ形式により、情報の伝送を行う。こうして、(センサ18が検知することによって)検知されたパラメータに関する情報は、伝送器10によりプロセス制御ループ11上に伝送されることとなる。
【0028】
以上より、次のことがわかる。すなわち、可変周波数クロック回路52は、システムにおけるサンプリング周波数を、外部からシステムに加わる干渉によっても出力に大きな誤差が発生しないような周波数に設定することができる。ここで、閉ループのフィードバックシステムがシステムのサンプリング周波数を制御するのに用いられている。また、高調波エネルギー検出器34は、システムにおけるサンプリング周波数におけるのと同一のクロックを用いて、干渉信号をサンプリングする。そして、高調波エネルギー検出器34は、次の場合にトリガ信号を可変周波数クロック回路52へと送信する。すなわち、干渉における高調波エネルギーの値が、測定値に大きな誤差を発生させうるような値に到達した場合である。可変周波数クロック回路52は当該トリガ信号を受け取ると、出力周波数を次のような新しい周波数へと変更する。すなわち、変更前の周波数から充分に間隔が離れており、干渉によってももはや、高調波エネルギー検出器(34)がトリガ信号48を発生させることがないような、新しい周波数である。一実施形態では、可変周波数クロック回路52は、2つの互いに離れた周波数の間で切り替えるようにすることができる。一方、当該切り替える周波数の数は2つよりも多数へと拡張することもでき、これによって、好ましくない干渉を防ぐことのできる可能性をより高くすることができる。
【0029】
図6は、次の試験結果を示すものである。すなわち、ベースライン(基準)のシステム(システムのクロックとして単一のサンプリング周波数のみが使われている)と、修正されたシステムとして、高調波エネルギー検出器34がセンササンプリング周波数において好ましくない干渉を検出した場合に、可変周波数クロック回路52を用いてセンサのサンプリング周波数を変更するシステムと、の試験結果を示すものである。
図6では、誤差が周波数の非常に狭い帯域で発生していることが示されている。EMC試験を実際する場合、周波数は広範囲にわたって掃引される。当該掃引の際には、誤差の大きな狭帯域においても非常に短い時間しか費やされない。しかしながら、フィールドアプリケーション(フィールド用途)においては、干渉が周波数の狭帯域において常に存在していることがある。このため、誤差を時間に対してプロットしたものは、非常にゆっくりと変化するオフセット誤差に見えてしまうことがあり、全く狭帯域の誤差には見えないことがある。
【0030】
図6では2つのプロット100及び102が示されている。プロット100はベースラインシステムのものであり、プロット102は可変周波数クロックのシステムのものである。当該図示する一実施形態では、センサのサンプリング周波数は23.5kHzである。干渉周波数は200秒の時間窓(タイムウィンドウ)を用いて23.44kHzから23.71kHzまで掃引される。プロット100においては2つの線104及び106が示されているが、これらの線は±1パーセント範囲での誤差のある周波数帯を示すものとなっている。最も高いアナログ誤差は約23.49kHzの周波数において発生しているが、当該周波数は基本サンプリング周波数である23.5kHzに近いものである。このような場合、誤差は非常に大きく、4−20mAプロセス伝送器の出力を飽和させてしまうこととなる。
【0031】
プロット102の周波数範囲の掃引を行う前の段階では、センサのサンプリング周波数は23.5kHzとなっていた。ここで、高調波エネルギー検出器34がサンプリング周波数(又は高調波周波数)においてエネルギーを検出すると、可変周波数クロック回路52はサンプリング周波数を23.7kHzへと変更し、結果として当該被検体(device under test)に関して、アナログ誤差の大きさは±1パーセント範囲以内に収まることとなる。50パーセントを超える範囲で測定値が得られてしまったベースラインのシステムに比べて、クロック周波数可変である当該被検体は1パーセント未満の範囲となる。この結果は、狭帯域におけるEMCの伝導高周波の機器感度(device sensitivity)において比率50:1を超える誤差低減の効果があることを意味している。
【0032】
本発明は好ましい実施形態に関して説明してきたが、本発明の考え方及び範囲から逸脱することなく、形式及び詳細に変更を加えうることは当業者であれば理解できるはずである。
【符号の説明】
【0033】
10…プロセス変数伝送器、22…測定回路、34…高調波エネルギー検出器、52…可変周波数クロック回路、32…プロセッサ