【実施例】
【0054】
(実施例1)トリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutesce
ns)菌株の培養及びこれの抽出物からの化合物の分離
<実施例1−1.T.albolutescens菌株の培養及び抽出>
トリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutesce
ns)菌株は、大韓民国五台山国立公園の土壌から、高麗大学校生命科学大学のキムジェジン教授により採集及び同定された(大韓民国農村進興庁国立農業科学院農業遺伝資源情報センター、寄託番号:KACC93215P)。
【0055】
上記のT.albolutescens菌株をポテトデキストロース寒天培地(potato dextrose agar、PDA)で、28℃の温度及び暗条件で10日間培養した。培養されたT.albolutescens菌株を2Lのメタノール(methanol:MeOH)で3回抽出及び濾過した後、真空減圧濃縮器を用いて溶媒を除去した。濃縮されたT.albolutescensメタノール抽出物を蒸溜水で懸濁させた後、エチルアセテート(ethylacetate:EtOAc)で溶媒分画し、分離されたエチルアセテート層を再び濾過した後、濃縮して最終のT.albolutescensエチルアセテート抽出物0.8gが得られた。
【0056】
<実施例1−2.化合物の分離>
実施例1−1で得られたT.albolutescensエチルアセテート抽出物0.8gを逆相シリカゲル(ODS−A、12nm、S−75μm)カラムクロマトグラフィー(3×58cm)にメタノール−蒸溜水(MeOH:H
2O、5:5、8:2、10:0)の溶媒組成により6つの分画物(分画1〜6)に分離した。
【0057】
上記6つの分画物中、分画2(100mg)を順相シリカゲル(silicagel60、230−400Mesh)カラムクロマトグラフィー(1×28cm)にクロロホルム−メタノール(CHCl
3:MeOH、9.8:0.2、9.5:0.5、9:1、7:3)の溶媒組成により、再び3つの詳細分画物(分画2−1〜分画2−3)に分けた。この中、分画2−1(30mg)を順相シリカゲル(silicagel60、230−400Mesh)カラムクロマトグラフィー(1×38cm)にヘキサン−エチルアセテート(hexane:EtOAc、8:2、7:3、5:5)溶媒組成により化合物2(10mg)を単離した。
【0058】
また、分画3(300mg)を順相シリカゲル(silicagel60、230−400Mesh)カラムクロマトグラフィー(1×12cm)にヘキサン−エチルアセテート(hexane:EtOAc、8:2、6:4、5:5)溶媒組成により化合物1(200mg)を単離した。
【0059】
(実施例2)T.albolutescens菌株から分離した化合物の構造分析
上記実施例1で得られた化合物1及び2の構造を分析するために、次の装備を用いて実験を行った。
【0060】
旋光係(polarimeter)としてJASCO・P−2000を使用し、IRスペクトルとしてVarian640−IRを使用した。
1H、
13C、及び2DNMRスペクトルとしてはVarian500MHzNMRを使用し、内部標準物質としては、TMSが含まれたCDCl
3を使用し、化学的移動は、δ値で表現した。高分解能電子噴霧イオン化(high−resolution electrospray ionization:HRESI)質量スペクトルは、WatersQ−TOF質量分析機を使用して測定した。
【0061】
以上の実験により化合物1をトリコデルミン(化学式1)と、化合物2をトリコデルミノール(化学式2)と同定した。
【0062】
具体的な実験結果及び化合物の構造を下記に示す。
【0063】
トリコデルミン(Trichodermin):無色、無臭のオイル形態を有する。旋光度を測定した結果、[α]
26D−85.2(c1.5、CHCl
3)の数値を得た。IRスペクトルを測定した結果、 V
max値が、2963、1730、1436、1373、1240、1078、1029、990cm
−1で観察された。
1H及び
13CのNMRスペクトルの分析結果(500MHz、CDCl
3)を
図1に示した。陽性高分解能ESIMSで293.1762[M+H]
+ (C
17H
25O
4、293.1753で計算)値を確認し、陰性ESIMSでは、該当するイオンが現われなかった。
【化3】
【0064】
トリコデルミノール(Trihocderminol):無色、無臭のオイル形態を有する。旋光度を測定した結果、[α]
26D−5.7(c0.8、CHCl
3)の数値を得た。IRスペクトルを測定した結果、V
max値が、3444、2928、1725、1433、1375、1245、1074、1030、963cm
−1で観察された。
1H及び
13CのNMRスペクトルの分析結果(500MHz、CDCl
3)を
図1に示した。陽性ESIMSで309.1[M+H]
+、617.3[2M+H]
+、925.5[3M+H]
+値が現れ、高分解能ESIMSで309.1694[M+H]
+(C
17H
25O
5、309.1702で計算)が確認され、陰性ESIMSでは、353.1[M+HCOO]
−が確認された。
【化4】
【0065】
(実施例3)ドウガラシモットルウイルスに対する抗ウイルス活性の検証
<実施例3−1.材料>
ドウガラシモットルウイルス(pepper mottle virus、PepMoV)に対する抗ウイルス活性を検証するために、実験宿主植物個体としてタバコ(Nicotiana benthamiana)とドウガラシ(Capsicum anuum L.)を用いた。これは、大韓民国ソウル女子大学校の植物ウイルス銀行(plant virus genebank、PVGB)から提供された。また、全身感染宿主(systemic host)内での抗ウイルス活性を確認するために、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein、GFP)でタグされたドウガラシモットルウイルスを用いた(Lee、M. Y et al.、Virus Res.155:487−494、2011)。
【0066】
<実施例3−2.タバコから抗ウイルス活性の検証>
上記実施例2で得られた化合物のドウガラシモットルウイルスに対する抗ウイルス活性を確認するために、下記のような実験を行った。
【0067】
全身感染宿主として使用されたタバコは、播種後に4週間の間に25℃に維持される温室で培養した。接種源(inoculum)としては、ドウガラシモットルウイルスに感染されたタバコの葉から緑色蛍光タンパク質がUV上に均一に広がっている葉を採取して接種バッファー(0.01M phosphate bufferd saline buffer、PBS buffer、pH7.2)で磨砕して汁液を得、これを用いた。各化合物の濃度ごとのサンプルは、10%DMSO(sigma)を含んだPBSバッファーで溶かして準備し(化合物1(トリコデルミン)は、50μM、10μM、5μM、1μMの濃度を用い、化合物2(トリコデルミノール)は、2000μM、1000μM、500μM、100μMの濃度を用いた)、上記化合物を接種源である汁液200μlと混合して室温で30分の間に反応させた後に接種した。接種法としては、4週間の間に培養したタバコ植物の子葉(cotyledon)を含む下葉4個にカーボランダム(carborundum)をふりかけた後に、接種源である汁液と化合物の濃度ごとのサンプルとを混合した混合液を擦って接種(inoculation)し、最小3回繰り返した。対照群(control)としては、DMSOと接種源との混合液を用いた。約2週間の間にUV上で緑色蛍光タンパク質の有無によりドウガラシモットルウイルスの拡散形態を確認した。3、6、9、12dpi(days post−inoculation)に植物体上葉を採取してUV写真を撮影し、上記植物体上葉の葉片から、フェノール/クロロホルム抽出法を用いてRNA及びタンパク質を分離した後、分子的分析(RT−PCR及びウェスタンブロット)を行った。
【0068】
より具体的には、RT−PCRのために下記のような実験を行った。
【0069】
先ず、0.5mMdNTPs、10pMの逆方向プライマー、1X反応緩衝液(reaction buffer)、及び2.5units RevertAid reverse transcriptase(Thermo scientific、USA)の反応混合物に、各RNAサンプルと蒸溜水とを混合して20μlの量にした後、My CyclerTM Thermal Cycler(Bio−Rad、USA)を使用して42℃で60分間反応させてRT反応を行った(cDNA生成)。その後、1X反応緩衝液(reaction buffer)、5units Ex−Taq polymerase(TAKARA、Japan)、10pMの逆方向プライマー、及び10pMの正方向プライマーの反応混合物に、上記RT反応により合成されたcDNA及び蒸溜水を混合して30μlの量にした後、My CyclerTM Thermal Cyclerを使用してPCRを行った。
【0070】
[変性(denaturation)95℃で3分後に、95℃で30秒、58℃で30秒、72℃で60秒を総35回サイクルを行い、PepMoV−CPの正方向プライマー:5’−AGC AGC TCA AGA TCA GAC AC 3’、PepMoV−CPの逆方向プライマー:5’−CAT ATT TCT GAC CCC AAG CAG −3’]。
【0071】
上記過程により生成された反応物をアガロースゲル(agarose gel)を使用した電気泳動(electrophoresis)を行い、臭化エチジウム(ethidium bromide、EtBr)で染色してドウガラシモットルウイルスの外被タンパク質(coat protein、CP)のRNA coding regionを確認した(822bp)。
【0072】
また、ウエスタンブロットのために、下記のような実験を行った。
【0073】
先ず、それぞれの全体タンパク質のサンプルをドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル(sodium dodecyl sulfate(SDS)−polyacrylamide gel)で電気泳動して分離した後、ニトロセルローズ(nitrocellulose、NC)メンブレンに、Mini−Pro−electrophoresis system(Bio−Rad、USA)を用いてエレクトルブロッティング(electro blotting)により転写(transfer)した。
【0074】
転写の終わったニトリセルローズメンブレインをTBS−Tバッファー(20mM Tris(pH7.5)、150mM NaCl、0.1% Tween20)で3回洗浄した後、5%のskim milk(Difco、USA)に浸漬させ、25℃で4時間の間ブロッキングした。ドウガラシモットルウイルスの外被タンパク質の発現を確認するために、上記ニトロセルローズメンブレインをドウガラシモットルウイルスに対する抗体(1:1000に希釈、immunoglobulin G(Ig G)fraction、1mg/mL)と、アルカリホスファタ−ゼ(alkalin phosphatase、AP)に結合(conjugated)した2次抗体(1:7500 dilution、Promega、USA)とを用いて順次反応させた後、TBS−T バッファーで3回洗浄し、APsubstrate buffer(0.1 M Tris (pH 9.5)、0.1 mM NaCl、50mN MgCl2)に浸漬させた。最終的に、上記ニトロセルローズメンブレインをwestern blue(Promega、USA)試薬で染色した後、comigrated blue marker proteinと比較してドウガラシモットルウイルスの外被タンパク質の位置を確認した(33kDa)。
【0075】
以上の実験結果を
図2及び
図3に示した。
【0076】
図2及び
図3に示すように、対照群に比べてトリコデルミンまたはトリコデルミノール処理した群のタバコ上葉サンプルからは、緑色蛍光タンパク質が遅く観察され、緑色蛍光タンパク質が見えないタバコ上葉サンプルからはドウガラシモットルウイルスのviral RNA及び外被タンパク質が発現されなかったことが確認された。上記結果から、トリコデルミンまたはトリコデルミノールによりタバコにおけるドウガラシモットルウイルスの拡散速度が抑制されることが確認された。
【0077】
<実施例 3−3.ドウガラシから抗ウイルス活性の検証>
上記実施例2で得られた化合物のドウガラシモットルウイルスに対する抗ウイルス活性を確認するために、下記のような実験を行った。
【0078】
宿主植物としては、茄子科(Solanaceae)植物中、ドウガラシモットルウイルスの主な被害作物であるドウガラシを用い、植物培養法、接種源及び接種方法は、上記実施例3−2と同様に行った。その結果を
図4に示した。
【0079】
図4に示すように、対照群に比べてトリコデルミン処理した群のドウガラシ上葉からは緑色蛍光タンパク質が遅く観察され、緑色蛍光タンパク質が見えないドウガラシ上葉サンプルからはドウガラシモットルウイルスのviral RNA及び外被タンパク質が発現されなかったことが確認された。上記結果から、トリコデルミンによりドウガラシにおけるドウガラシモットルウイルスの拡散速度が抑制されることが確認された。
【0080】
(実施例4)タバコモザイクウイルスに対する抗ウイルス活性の検証
上記実施例3によりドウガラシモットルウイルスに対する抗ウイルス活性を確認した 化合物のタバコモザイクウイルス(tobacco mosaic virus、TMV、大韓民国ソウル女子大学校植物ウイルス銀行(plant virus genebank、(PVGB)から提供される)に対する抗ウイルス活性をさらに確認するために半葉法(half leaf method)を行った。半葉法は、局部感染寄主であるタバコ(Nicotiana tabacum cv.Xanthi nc)において、タバコモザイクウイルスの抵抗性遺伝子によりタバコモザイクウイルスに感染した周囲部に壊死病斑(local lesion)を引き起こして黒い斑点を形成する特徴を用いる実験である。より具体的に、本葉7〜8葉期の局部感染寄主の上位3葉と4葉を取って布上に移し、カーボランダムを葉の全体に均一にふりかけ、DMSOに溶かした濃度別の化合物1(トリコデルミン)サンプルとタバコモザイクウイルスの汁液とを混合した後、これをタバコ葉の右側半葉に綿棒を使用して接種した。タバコ葉の左側半葉にはタバコモザイクウイルス汁液のみを同じ方法で接種した(対照群)。その後、タバコ葉の葉柄を綿で取り囲み蒸溜水を供給した後、ペトリ皿(150mm×2cm)に移し、蓋をして23℃インキュベーター(空気非循環方式)で3日間培養した。培養中には、一日に1回、約1mlの蒸溜水を供給してタバコ葉の乾燥を予防した。接種3日後に壊死病斑を計数し、無処理した対照群の半葉の病斑数が100個〜400個の間にある結果のみを反映した。病斑の数を用いた防除率は、算出された公式(防除価(%)=[1−(薬剤処理の半葉病斑数/無処理の半葉病斑数)]X100)を用いて求めた。その結果を、
図5に示した。
【0081】
図5に示すように、トリコデルミンは、5ppm以上の濃度にて約97%以上の高いタバコモザイクウイルスに対する抗ウイルス活性を示すことが確認された。
【0082】
以上のように、本発明の一実施例について説明したが、当該技術分野で通常の知識を有した者であれば、特許請求範囲に記載した本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加等により本発明を多様に修正及び変更することができ、これも本発明の権利範囲内に含まれるものと言えよう。