特許第6297148号(P6297148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6297148新規抗ウイルス用組成物及びこれを用いた植物ウイルスの防除方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297148
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】新規抗ウイルス用組成物及びこれを用いた植物ウイルスの防除方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/90 20060101AFI20180312BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20180312BHJP
   A01N 63/04 20060101ALI20180312BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20180312BHJP
   A01N 25/12 20060101ALI20180312BHJP
   A01N 25/14 20060101ALI20180312BHJP
   C05G 3/02 20060101ALI20180312BHJP
   C12N 7/04 20060101ALN20180312BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20180312BHJP
【FI】
   A01N43/90 101
   A01P1/00ZNA
   A01N63/04 A
   A01N25/02
   A01N25/12
   A01N25/14
   C05G3/02
   !C12N7/04
   !C12N15/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-525004(P2016-525004)
(86)(22)【出願日】2015年12月4日
(65)【公表番号】特表2017-507896(P2017-507896A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】KR2015013238
(87)【国際公開番号】WO2016089166
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2016年4月18日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0172861
(32)【優先日】2014年12月4日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516116541
【氏名又は名称】ソウル ウィメンズ ユニバーシティ インダストリー−ユニバーシティ コーオペレーション ファウンデーション
(73)【特許権者】
【識別番号】510273880
【氏名又は名称】コリア ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】イ ドン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェ ジン
(72)【発明者】
【氏名】リュ キ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ボム ソク
(72)【発明者】
【氏名】リュ スン モク
【審査官】 杉江 渉
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2006−0015600(KR,A)
【文献】 特許第4883500(JP,B2)
【文献】 特公昭46−032799(JP,B1)
【文献】 特開昭62−181280(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101787031(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101429203(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/00 − 65/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるトリコデルミン(Trichodermin)または
下記化学式2で表されるトリコデルミノール(Trichoderminol)を有効成分として含む、植物ウイルス防除用組成物。
【化1】

【化2】
【請求項2】
前記トリコデルミンまたはトリコデルミノールは、トリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutescens)菌株から分離したことを特徴とする請求項1に記載の植物ウイルス防除用組成物。
【請求項3】
前記植物ウイルスは、タバコモザイクウイルス(TMV)、ドウガラシモットルウイルス(PepMoV)、キュウリモザイクウイルス(CMV)、ドウガラシマイルドモットルウイルス(PMMoV)、ズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV)、スイカモザイクウイルス(WMV)、スイカモザイクウイルス2(WMV2)、ジャガイモウイルスY(PVY)、カブモザイクウイルス(TuMV)、メロンえそ斑点ウイルス(MNSV)、キュウリ緑斑モザイクウイルス(CGMMV)、ズッキーニ緑斑モザイクウイルス(ZGMMV)、ジャガイモ葉巻ウイルス(PLRV)、ユリモットルウイルス(LMoV)、ユリ無病徴ウイルス(LSV)、オドントグロッサムリングスポットウイルス(ORSV)、シンビジウムモザイクウイルス(CyMV)、ソラマメウィルトウイルス(BBWV)、トマト輪点ウイルス(TomRSV)、タバコ輪点ウイルス(TRSV)、トマト黄化えそウイルス(TSWV)、イチゴウイルス(SMoV)、及びサボテンXウイルス(CVX)からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の植物ウイルス防除用組成物。
【請求項4】
前記組成物は、液剤、粒剤、粉剤、油剤、オイル剤、水和剤及び塗布剤からなる群より選択されるいずれか一つの形態に剤形化されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の植物ウイルス防除用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物を植物体または土壌に処理するステップを含む植物ウイルスの防除方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物を含む植物ウイルス防除活性を有する農薬組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物を含む植物ウイルス防除活性を有する肥料添加用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutescens)菌株から分離したトリコデルミンまたはトリコデルミノールを有効成分として含む抗ウイルス用組成物、植物ウイルス防除用組成物、及び当該組成物を用いた植物ウイルスの防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスは、宿主細胞を感染させて増殖する生命体であって、宿主とは別にその存在を考えられない生命体である。ウイルスには、宿主に応じて動物ウイルス、植物ウイルス、細菌ウイルス、かびウイルス等様々なものが存在する。
【0003】
この中、植物ウイルスは、植物細胞を感染させるウイルスを総称する。植物ウイルスは、完全な生命体単位の菌類とは違って非細胞で構成されており、酵素がないため、自ら物質代謝ができない等非生物的特徴を有する。
【0004】
特に、植物ウイルスは、宿主細胞(host cell)を利用して複製するので、様々な植物個体に被害を与え、宿主個体と細胞過程(cellular process)を共有するので、植物ウイルスの機能のみを阻害することは困難である(Yanmei Li et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.104:8083−8088、2007)。このため、植物ウイルスは1890年代にその存在が初めて明らかになったにもかかわらず、今までも発病した植物を圃場から除去したり、媒介虫を防除する等の物理的または間接的な防除方法を用いたりするだけで、植物ウイルス病に対する抗ウイルス剤の開発は微々たるものである。
【0005】
近年には、タバコモザイクウイルス(tobacco mosaic virus、TMV)に対する抗ウイルス活性を有した植物由来の代謝物質に関する研究が行われており、現在までニガキ(Picrasma quassioides)由来アルカロイド(alkaloid)系列、鴉胆子(Brucea javanica)由来クァシノイド(quassinoid)系列、ゴールデンシャワーツリー(Cassia fistula)由来フラボノイド(flavonoid)系列、 鉄刀木(Cassia siamea)由来クロモン(chromone)系列等の活性が報告された(Jia Chen et al.、J.Agric、Food Chem.57:6590−9595、2009;Xiao−Hui Yan et al.、J. Agric、Food Chem.58:1572−1577、2010;Wei Zhao et al.、Phytochem.Lett.179−182、2013;Qiu−Fen Hu etal.、J.Nat.Prod.75:1909−1914、2012)。
【0006】
しかし、上記物質は、部分病斑(local lesion)のみを見せるタバコモザイクウイルスを対象にして抗ウイルス活性を確認したことに過ぎず、その適用には限界があった。
【0007】
そこで、本発明者らは、植物ウイルスに対する抗ウイルス活性に優れた新規物質を発掘するために研究を重ねた結果、トリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutescens)菌株からトリコデセン系列の化合物であるトリコデルミンまたはトリコデルミノールを分離及び同定し、上記化合物が、代表的な植物ウイルスであるタバコモザイクウイルスだけではなく、宿主全体(systemic host)に病徴(disease symptom)を示すドウガラシモットルウイルスに対して優れた抗ウイルス活性を示すことが確認され、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、新規抗ウイルス用組成物及び植物ウイルス防除用組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、上記組成物を用いた植物ウイルスの防除方法を提供することにある。
【0010】
本発明のまた他の目的は、上記組成物を含む植物ウイルス防除活性を有する農薬組成物及び肥料添加用組成物を提供することにある。
【0011】
本発明のまた他の目的や利点は、以下の発明の詳細な説明、請求範囲及び図面により、より明確になるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、トリコデルミンまたはトリコデルミノールを有効成分として含む抗ウイルス用組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、トリコデルミンまたはトリコデルミノールを有効成分として含む植物ウイルス防除用組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、上記組成物を植物体または土壌に処理するステップを含む、植物ウイルスの防除方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、上記組成物を含む植物ウイルス防除活性を有する農薬組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、上記組成物を含む植物ウイルス防除活性を有する肥料添加用組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、トリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutescens)菌株の菌体、培養液、またはこれらの混合物を含む植物ウイルス防除用組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、トリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutescens)菌株の菌体、培養液、またはこれらの混合物を含む植物ウイルス防除用組成物を植物体または土壌に処理するステップを含む、植物ウイルスの防除方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、トリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutescens)菌株の菌体、培養液、またはこれらの混合物からトリコデルミンまたはトリコデルミノールを抽出するステップを含むトリコデルミンまたはトリコデルミノールを生産する方法を提供する。
【0020】
また、本発明は、トリコデルミンまたはトリコデルミノールを生産するトリコデルマ・アルボルテセンス・KUC2115菌株(Trichoderma albolutescens KUC21115、寄託番号 KACC93215P)を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るトリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutescens)菌株から分離したトリコテセン系列の化合物であるトリコデルミンまたはトリコデルミノールは、様々な植物ウイルスに対する抗ウイルス活性を有しており、植物ウイルス防除に有用に使用できる。また、本発明は、天然物を基盤にしたものであるので、有効成分の大量生産が容易であり、植物体に被害を与えない安全な物質を用いた環境親和的な防除剤の開発及び高付加価値の農作物生産等、農業分野で多様に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】トリコデルマ・アルボルテセンス(T.albolutescens)菌株から分離したトリコデルミン及びトリコデルミノールのNMRスペクトルの分析結果を示す図である。
図2】タバコからトリコデルミンのドウガラシモットルウイルスに対する抗ウイルス活性を確認した結果を示す図である(A:Visible及びUV写真撮影の結果、B:RT−PCR及びウエスタンブロットの結果、a:50μM、b:10μM、c:5μM、d:1μM、+:control、−:non−treatment,M:marker)。
図3】タバコからトリコデルミノールのドウガラシモットルウイルスに対する抗ウイルス活性を確認した結果を示す図である(A:Visible及びUV写真撮影の結果、B:RT−PCR及びウエスタンブロットの結果、a:2000μM、b:1000μM、c:500μM、d:100μM、+:control、−:non−treatment、M:marker)。
図4】ドウガラシからトリコデルミンのドウガラシモットルウイルスに対する抗ウイルス活性を確認した結果を示す図である(A:Visible及びUV写真撮影の結果、B:RT−PCR及びウエスタンブロットの結果、a:2000μM、b:1000μM、c:500μM、d:100μM、+:control、−:nontreatment,M:marker)。
図5】タバコからトリコデルミンのタバコモザイクウイルスに対する抗ウイルス活性を確認した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、多様な変換を加えることができ、様々な実施例を有することができるため、特定の実施例を図面に例示し、詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変換、均等物ないし代替物を含むものとして理解されるべきである。本発明を説明するに当たって、係わる公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨をかえって不明にすると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0025】
本発明は、下記化学式1で表されるトリコデルミン(Trichodermin)または下記化学式2で表されるトリコデルミノール(Trichoderminol)を有効成分として含む抗ウイルス用組成物を提供する。
【化1】
【化2】
【0026】
また本発明は、上記化学式1で表されるトリコデルミン(Trichodermin)または上記化学式2で表されるトリコデルミノール(Trichoderminol)を有効成分として含む植物ウイルス防除用組成物を提供する。
【0027】
本発明のトリコデルミンまたはトリコデルミノールは、トリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutescens)菌株から分離することができ、好ましくは、寄託番号大韓民国KACC93215Pのトリコデルマ・アルボルテセンス菌株から分離することができる。また、上記トリコデルミンまたはトリコデルミノールは、当業界に公知の方法を用いて合成することができ、これに限定されるものではない。
【0028】
本発明の植物ウイルスは、タバコモザイクウイルス(TMV)、ドウガラシモットルウイルス(PepMoV)、キュウリモザイクウイルス(CMV)、ドウガラシマイルドモットルウイルス(PMMoV)、ズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV)、スイカモザイクウイルス(WMV)、スイカモザイクウイルス2(WMV2)、ジャガイモウイルスY(PVY)、カブモザイクウイルス(TuMV)、メロンえそ斑点ウイルス(MNSV)、キュウリ緑斑モザイクウイルス(CGMMV)、ズッキーニ緑斑モザイクウイルス(ZGMMV)、ジャガイモ葉巻ウイルス(PLRV)、ユリモットルウイルス(LMoV)、ユリ無病徴ウイルス(LSV)、オドントグロッサムリングスポットウイルス(ORSV)、シンビジウムモザイクウイルス(CyMV)、ソラマメウィルトウイルス(BBWV)、トマト輪点ウイルス(TomRSV)、タバコ輪点ウイルス(TRSV)、トマト黄化えそウイルス(TSWV)、イチゴウイルス(SMoV)、またはサボテンXウイルス(CVX)を含み、好ましくは、タバコモザイクウイルス(TMV)またはドウガラシモットルウイルス(PepMoV)であってもよいが、これに限定されない。
【0029】
本発明に係るトリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutescens)菌株から分離したトリコテセン系列の化合物であるトリコデルミンまたはトリコデルミノールは、様々な植物ウイルスに対する抗ウイルス活性を有しており、植物ウイルスにより発生する植物ウイルス病の予防または治療のための防除用組成物として有用に使用できる。
【0030】
また本発明は、トリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutescens)菌株の菌体、培養液、またはこれらの混合物を含む植物ウイルス防除用組成物を提供する。
【0031】
本発明に係るトリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutescens)菌株の菌体、培養液、またはこれらの混合物は、様々な植物ウイルスに対する抗ウイルス活性を有しており、植物ウイルスにより発生する植物ウイルス病の予防または治療のための防除用組成物として有用に使用できる。
【0032】
本発明の植物ウイルス防除用組成物は、有効成分であるトリコデルミンまたはトリコデルミノール以外に、当業界に公知の抗ウイルス活性を有する物質を1種以上さらに含むことができる。
【0033】
本発明の植物ウイルス防除用組成物は、農薬分野に公知の様々な形態に剤形化することができ、剤形化のためには農薬分野で通常的に使用される剤形化方法のいずれでも使用できる。
【0034】
上記組成物は、例えば、液剤、粒剤、粉剤、油剤、オイル剤、水和剤または塗布剤の形態に剤形化でき、これに限定されるものではない。
【0035】
本発明の植物ウイルス防除用組成物は剤形化のために多様な成分を含むことができ、例えば、液体担体、固体担体、界面活性剤または補助剤等を含むことができる。
【0036】
上記液体担体としては、水(water)、植物油(vegetable oil)、エタノール(ethanol)等が使用でき、上記植物油には大豆油、菜種油、椰子油、パーム核油、米糠油、トウモロコシ油、パーム油、オリーブ油等が含まれるが、これに限定されない。
【0037】
上記固体担体としては、鉱物粉末、ゼラチン、アルギン酸等を用いることができるが、これに限定されない。
【0038】
上記鉱物粉末としては、陽イオン粘土(cation clay)、ベントナイト(bentonite)、カオリン(kaolin)、タルク(Talc)、珪藻土(diatomaceous earth)等が使用できるが、これに限定されない。
【0039】
上記界面活性剤としては、エチレンオキサイド(Ethyleneoxide)系、ジエタノールアミン(Diethanolamine)系、ソルビトル(Sorbitol)系、グリセリン(Glycerine)系等が使用できるが、これに限定されない。
【0040】
上記補助剤としては、増量剤、不凍液、溶剤、増粘剤、展着剤等が使用できるが、これに限定されない。
【0041】
本発明の植物ウイルス防除用組成物に含まれるトリコデルミンまたはトリコデルミノールの濃度は、植物体の生育程度、耕作地の環境、植物ウイルス病の発病程度等を考慮して当業者が適宜調整することができ、これに限定されるものではない。
【0042】
また本発明は、上記組成物を植物体または土壌に処理するステップを含む、植物ウイルスの防除方法を提供する。
【0043】
また本発明は、トリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutescens)菌株の菌体、培養液、またはこれらの混合物を含む植物ウイルス防除用組成物を植物体または土壌に処理するステップを含む、植物ウイルスの防除方法を提供する。
【0044】
上記処理方法には、茎葉処理、土壌処理、浸漬処理、枝切断または農機具の消毒に適用する処理方法等が含まれ得るが、これに限定されない。
【0045】
また本発明は、上記組成物を含む植物ウイルス防除活性を有する農薬組成物を提供する。
【0046】
また本発明は、上記組成物を含む植物ウイルス防除活性を有する肥料添加用組成物を提供する。
【0047】
本発明に係るトリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutescens)菌株から分離したトリコテセン系列の化合物であるトリコデルミンまたはトリコデルミノールは、様々な植物ウイルスに対する抗ウイルス活性を有しており、植物ウイルスにより発生する疾病の予防、治療または改善のための農薬、肥料等に添加することができる。
【0048】
本発明の農薬組成物または肥料添加用組成物には、有効成分であるトリコデルミンまたはトリコデルミノール以外に当業界に公知の一般の成分、例えば、溶媒、担体、乳化剤、分散剤、補助剤等が含まれ得るが、これに限定されない。
【0049】
また本発明は、トリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutescens)菌株の菌体、培養液、またはこれらの混合物からトリコデルミンまたはトリコデルミノールを抽出するステップを含むトリコデルミンまたはトリコデルミノールを生産する方法を提供する。
【0050】
本発明のトリコデルミンまたはトリコデルミノールを抽出する方法としては、当業界に公知の様々な抽出方法を用いることができ、特に制限されない。詳細な抽出方法の例示は、下記の実施例に記載されている。
【0051】
また本発明は、トリコデルミンまたはトリコデルミノールを生産するトリコデルマ・アルボルテセンス・KUC2115菌株(Trichoderma albolutescens KUC21115、大韓民国寄託番号 KACC93215P)を提供する。
【0052】
以下に、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明する。
【0053】
但し、下記実施例は、本発明をより容易に理解するためのものであって、本発明の内容が実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
(実施例1)トリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutescens)菌株の培養及びこれの抽出物からの化合物の分離
<実施例1−1.T.albolutescens菌株の培養及び抽出>
トリコデルマ・アルボルテセンス(Trichoderma albolutescens)菌株は、大韓民国五台山国立公園の土壌から、高麗大学校生命科学大学のキムジェジン教授により採集及び同定された(大韓民国農村進興庁国立農業科学院農業遺伝資源情報センター、寄託番号:KACC93215P)。
【0055】
上記のT.albolutescens菌株をポテトデキストロース寒天培地(potato dextrose agar、PDA)で、28℃の温度及び暗条件で10日間培養した。培養されたT.albolutescens菌株を2Lのメタノール(methanol:MeOH)で3回抽出及び濾過した後、真空減圧濃縮器を用いて溶媒を除去した。濃縮されたT.albolutescensメタノール抽出物を蒸溜水で懸濁させた後、エチルアセテート(ethylacetate:EtOAc)で溶媒分画し、分離されたエチルアセテート層を再び濾過した後、濃縮して最終のT.albolutescensエチルアセテート抽出物0.8gが得られた。
【0056】
<実施例1−2.化合物の分離>
実施例1−1で得られたT.albolutescensエチルアセテート抽出物0.8gを逆相シリカゲル(ODS−A、12nm、S−75μm)カラムクロマトグラフィー(3×58cm)にメタノール−蒸溜水(MeOH:HO、5:5、8:2、10:0)の溶媒組成により6つの分画物(分画1〜6)に分離した。
【0057】
上記6つの分画物中、分画2(100mg)を順相シリカゲル(silicagel60、230−400Mesh)カラムクロマトグラフィー(1×28cm)にクロロホルム−メタノール(CHCl:MeOH、9.8:0.2、9.5:0.5、9:1、7:3)の溶媒組成により、再び3つの詳細分画物(分画2−1〜分画2−3)に分けた。この中、分画2−1(30mg)を順相シリカゲル(silicagel60、230−400Mesh)カラムクロマトグラフィー(1×38cm)にヘキサン−エチルアセテート(hexane:EtOAc、8:2、7:3、5:5)溶媒組成により化合物2(10mg)を単離した。
【0058】
また、分画3(300mg)を順相シリカゲル(silicagel60、230−400Mesh)カラムクロマトグラフィー(1×12cm)にヘキサン−エチルアセテート(hexane:EtOAc、8:2、6:4、5:5)溶媒組成により化合物1(200mg)を単離した。
【0059】
(実施例2)T.albolutescens菌株から分離した化合物の構造分析
上記実施例1で得られた化合物1及び2の構造を分析するために、次の装備を用いて実験を行った。
【0060】
旋光係(polarimeter)としてJASCO・P−2000を使用し、IRスペクトルとしてVarian640−IRを使用した。H、13C、及び2DNMRスペクトルとしてはVarian500MHzNMRを使用し、内部標準物質としては、TMSが含まれたCDClを使用し、化学的移動は、δ値で表現した。高分解能電子噴霧イオン化(high−resolution electrospray ionization:HRESI)質量スペクトルは、WatersQ−TOF質量分析機を使用して測定した。
【0061】
以上の実験により化合物1をトリコデルミン(化学式1)と、化合物2をトリコデルミノール(化学式2)と同定した。
【0062】
具体的な実験結果及び化合物の構造を下記に示す。
【0063】
トリコデルミン(Trichodermin):無色、無臭のオイル形態を有する。旋光度を測定した結果、[α]26−85.2(c1.5、CHCl)の数値を得た。IRスペクトルを測定した結果、 Vmax値が、2963、1730、1436、1373、1240、1078、1029、990cm−1で観察された。H及び13CのNMRスペクトルの分析結果(500MHz、CDCl)を図1に示した。陽性高分解能ESIMSで293.1762[M+H] (C1725、293.1753で計算)値を確認し、陰性ESIMSでは、該当するイオンが現われなかった。
【化3】
【0064】
トリコデルミノール(Trihocderminol):無色、無臭のオイル形態を有する。旋光度を測定した結果、[α]26−5.7(c0.8、CHCl)の数値を得た。IRスペクトルを測定した結果、Vmax値が、3444、2928、1725、1433、1375、1245、1074、1030、963cm−1で観察された。H及び13CのNMRスペクトルの分析結果(500MHz、CDCl)を図1に示した。陽性ESIMSで309.1[M+H]、617.3[2M+H]、925.5[3M+H]値が現れ、高分解能ESIMSで309.1694[M+H](C1725、309.1702で計算)が確認され、陰性ESIMSでは、353.1[M+HCOO]が確認された。
【化4】
【0065】
(実施例3)ドウガラシモットルウイルスに対する抗ウイルス活性の検証
<実施例3−1.材料>
ドウガラシモットルウイルス(pepper mottle virus、PepMoV)に対する抗ウイルス活性を検証するために、実験宿主植物個体としてタバコ(Nicotiana benthamiana)とドウガラシ(Capsicum anuum L.)を用いた。これは、大韓民国ソウル女子大学校の植物ウイルス銀行(plant virus genebank、PVGB)から提供された。また、全身感染宿主(systemic host)内での抗ウイルス活性を確認するために、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein、GFP)でタグされたドウガラシモットルウイルスを用いた(Lee、M. Y et al.、Virus Res.155:487−494、2011)。
【0066】
<実施例3−2.タバコから抗ウイルス活性の検証>
上記実施例2で得られた化合物のドウガラシモットルウイルスに対する抗ウイルス活性を確認するために、下記のような実験を行った。
【0067】
全身感染宿主として使用されたタバコは、播種後に4週間の間に25℃に維持される温室で培養した。接種源(inoculum)としては、ドウガラシモットルウイルスに感染されたタバコの葉から緑色蛍光タンパク質がUV上に均一に広がっている葉を採取して接種バッファー(0.01M phosphate bufferd saline buffer、PBS buffer、pH7.2)で磨砕して汁液を得、これを用いた。各化合物の濃度ごとのサンプルは、10%DMSO(sigma)を含んだPBSバッファーで溶かして準備し(化合物1(トリコデルミン)は、50μM、10μM、5μM、1μMの濃度を用い、化合物2(トリコデルミノール)は、2000μM、1000μM、500μM、100μMの濃度を用いた)、上記化合物を接種源である汁液200μlと混合して室温で30分の間に反応させた後に接種した。接種法としては、4週間の間に培養したタバコ植物の子葉(cotyledon)を含む下葉4個にカーボランダム(carborundum)をふりかけた後に、接種源である汁液と化合物の濃度ごとのサンプルとを混合した混合液を擦って接種(inoculation)し、最小3回繰り返した。対照群(control)としては、DMSOと接種源との混合液を用いた。約2週間の間にUV上で緑色蛍光タンパク質の有無によりドウガラシモットルウイルスの拡散形態を確認した。3、6、9、12dpi(days post−inoculation)に植物体上葉を採取してUV写真を撮影し、上記植物体上葉の葉片から、フェノール/クロロホルム抽出法を用いてRNA及びタンパク質を分離した後、分子的分析(RT−PCR及びウェスタンブロット)を行った。
【0068】
より具体的には、RT−PCRのために下記のような実験を行った。
【0069】
先ず、0.5mMdNTPs、10pMの逆方向プライマー、1X反応緩衝液(reaction buffer)、及び2.5units RevertAid reverse transcriptase(Thermo scientific、USA)の反応混合物に、各RNAサンプルと蒸溜水とを混合して20μlの量にした後、My CyclerTM Thermal Cycler(Bio−Rad、USA)を使用して42℃で60分間反応させてRT反応を行った(cDNA生成)。その後、1X反応緩衝液(reaction buffer)、5units Ex−Taq polymerase(TAKARA、Japan)、10pMの逆方向プライマー、及び10pMの正方向プライマーの反応混合物に、上記RT反応により合成されたcDNA及び蒸溜水を混合して30μlの量にした後、My CyclerTM Thermal Cyclerを使用してPCRを行った。
【0070】
[変性(denaturation)95℃で3分後に、95℃で30秒、58℃で30秒、72℃で60秒を総35回サイクルを行い、PepMoV−CPの正方向プライマー:5’−AGC AGC TCA AGA TCA GAC AC 3’、PepMoV−CPの逆方向プライマー:5’−CAT ATT TCT GAC CCC AAG CAG −3’]。
【0071】
上記過程により生成された反応物をアガロースゲル(agarose gel)を使用した電気泳動(electrophoresis)を行い、臭化エチジウム(ethidium bromide、EtBr)で染色してドウガラシモットルウイルスの外被タンパク質(coat protein、CP)のRNA coding regionを確認した(822bp)。
【0072】
また、ウエスタンブロットのために、下記のような実験を行った。
【0073】
先ず、それぞれの全体タンパク質のサンプルをドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル(sodium dodecyl sulfate(SDS)−polyacrylamide gel)で電気泳動して分離した後、ニトロセルローズ(nitrocellulose、NC)メンブレンに、Mini−Pro−electrophoresis system(Bio−Rad、USA)を用いてエレクトルブロッティング(electro blotting)により転写(transfer)した。
【0074】
転写の終わったニトリセルローズメンブレインをTBS−Tバッファー(20mM Tris(pH7.5)、150mM NaCl、0.1% Tween20)で3回洗浄した後、5%のskim milk(Difco、USA)に浸漬させ、25℃で4時間の間ブロッキングした。ドウガラシモットルウイルスの外被タンパク質の発現を確認するために、上記ニトロセルローズメンブレインをドウガラシモットルウイルスに対する抗体(1:1000に希釈、immunoglobulin G(Ig G)fraction、1mg/mL)と、アルカリホスファタ−ゼ(alkalin phosphatase、AP)に結合(conjugated)した2次抗体(1:7500 dilution、Promega、USA)とを用いて順次反応させた後、TBS−T バッファーで3回洗浄し、APsubstrate buffer(0.1 M Tris (pH 9.5)、0.1 mM NaCl、50mN MgCl2)に浸漬させた。最終的に、上記ニトロセルローズメンブレインをwestern blue(Promega、USA)試薬で染色した後、comigrated blue marker proteinと比較してドウガラシモットルウイルスの外被タンパク質の位置を確認した(33kDa)。
【0075】
以上の実験結果を図2及び図3に示した。
【0076】
図2及び図3に示すように、対照群に比べてトリコデルミンまたはトリコデルミノール処理した群のタバコ上葉サンプルからは、緑色蛍光タンパク質が遅く観察され、緑色蛍光タンパク質が見えないタバコ上葉サンプルからはドウガラシモットルウイルスのviral RNA及び外被タンパク質が発現されなかったことが確認された。上記結果から、トリコデルミンまたはトリコデルミノールによりタバコにおけるドウガラシモットルウイルスの拡散速度が抑制されることが確認された。
【0077】
<実施例 3−3.ドウガラシから抗ウイルス活性の検証>
上記実施例2で得られた化合物のドウガラシモットルウイルスに対する抗ウイルス活性を確認するために、下記のような実験を行った。
【0078】
宿主植物としては、茄子科(Solanaceae)植物中、ドウガラシモットルウイルスの主な被害作物であるドウガラシを用い、植物培養法、接種源及び接種方法は、上記実施例3−2と同様に行った。その結果を図4に示した。
【0079】
図4に示すように、対照群に比べてトリコデルミン処理した群のドウガラシ上葉からは緑色蛍光タンパク質が遅く観察され、緑色蛍光タンパク質が見えないドウガラシ上葉サンプルからはドウガラシモットルウイルスのviral RNA及び外被タンパク質が発現されなかったことが確認された。上記結果から、トリコデルミンによりドウガラシにおけるドウガラシモットルウイルスの拡散速度が抑制されることが確認された。
【0080】
(実施例4)タバコモザイクウイルスに対する抗ウイルス活性の検証
上記実施例3によりドウガラシモットルウイルスに対する抗ウイルス活性を確認した 化合物のタバコモザイクウイルス(tobacco mosaic virus、TMV、大韓民国ソウル女子大学校植物ウイルス銀行(plant virus genebank、(PVGB)から提供される)に対する抗ウイルス活性をさらに確認するために半葉法(half leaf method)を行った。半葉法は、局部感染寄主であるタバコ(Nicotiana tabacum cv.Xanthi nc)において、タバコモザイクウイルスの抵抗性遺伝子によりタバコモザイクウイルスに感染した周囲部に壊死病斑(local lesion)を引き起こして黒い斑点を形成する特徴を用いる実験である。より具体的に、本葉7〜8葉期の局部感染寄主の上位3葉と4葉を取って布上に移し、カーボランダムを葉の全体に均一にふりかけ、DMSOに溶かした濃度別の化合物1(トリコデルミン)サンプルとタバコモザイクウイルスの汁液とを混合した後、これをタバコ葉の右側半葉に綿棒を使用して接種した。タバコ葉の左側半葉にはタバコモザイクウイルス汁液のみを同じ方法で接種した(対照群)。その後、タバコ葉の葉柄を綿で取り囲み蒸溜水を供給した後、ペトリ皿(150mm×2cm)に移し、蓋をして23℃インキュベーター(空気非循環方式)で3日間培養した。培養中には、一日に1回、約1mlの蒸溜水を供給してタバコ葉の乾燥を予防した。接種3日後に壊死病斑を計数し、無処理した対照群の半葉の病斑数が100個〜400個の間にある結果のみを反映した。病斑の数を用いた防除率は、算出された公式(防除価(%)=[1−(薬剤処理の半葉病斑数/無処理の半葉病斑数)]X100)を用いて求めた。その結果を、図5に示した。
【0081】
図5に示すように、トリコデルミンは、5ppm以上の濃度にて約97%以上の高いタバコモザイクウイルスに対する抗ウイルス活性を示すことが確認された。
【0082】
以上のように、本発明の一実施例について説明したが、当該技術分野で通常の知識を有した者であれば、特許請求範囲に記載した本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加等により本発明を多様に修正及び変更することができ、これも本発明の権利範囲内に含まれるものと言えよう。
図1
図2
図3
図4
図5