特許第6297161号(P6297161)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6297161同位体比の測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297161
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】同位体比の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20180312BHJP
   G01N 21/39 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   G01N21/3504
   G01N21/39
【請求項の数】22
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2016-552694(P2016-552694)
(86)(22)【出願日】2014年11月10日
(65)【公表番号】特表2016-535859(P2016-535859A)
(43)【公表日】2016年11月17日
(86)【国際出願番号】EP2014074188
(87)【国際公開番号】WO2015067806
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2016年5月10日
(31)【優先権主張番号】1319875.9
(32)【優先日】2013年11月11日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508306565
【氏名又は名称】サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェルター ハンス−ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】クラクト オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ラドケ ジェンス
(72)【発明者】
【氏名】ストラッサー ベンノ
(72)【発明者】
【氏名】シュワイター ジョハンネス
(72)【発明者】
【氏名】ウェイプルホスト エリック
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−105714(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0216660(US,A1)
【文献】 特開平03−206943(JP,A)
【文献】 特開平10−339669(JP,A)
【文献】 米国特許第05964712(US,A)
【文献】 国際公開第97/014029(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00797765(EP,A1)
【文献】 TUZSON B ET AL,High precisoin and continuous field measurements,Applied Physics B,2008年 6月27日,Vol.92, No.3,p.451-458,ISSN: 1432-0649
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
A61B 5/06− 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同位体比分光器内で連続試料の同位体比を測定する方法であって、
a)前記分光器内で、ある測定期間
【数1】
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にわたって少なくとも1つの試料同位体比を測定することと、
b)前記測定期間
【数2】
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の少なくとも一部にわたって試料濃度
【数3】
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を測定することと、
c)前記測定された試料濃度と、
【数4】
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前記測定期間
【数5】
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の間に測定された前記試料の基準のための、前記分光器の基準ガス濃度
【数6】
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整合させることと、
d)前記分光器内で、前記整合された基準ガス濃度
【数7】
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における前記基準ガスの同位体比を測定することと、
e)対応する基準ガス濃度
【数8】
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における前記基準ガスの前記測定された同位体比を使用して、試料濃度
【数9】
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を有する前記試料の前記測定期間
【数10】
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の間に測定された前記少なくとも1つの同位体比を較正することと、
f)複数の較正された同位体比及び複数の試料ガス濃度測定値を決定することであって、前記複数の較正された同位体比及び前記複数の試料ガス濃度測定値の各々が、それぞれの異なる時間に対するものである、決定することと、を含む、前記方法。
【請求項2】
ある特定の測定期間
【数11】
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の間、そのある特定の測定期間
【数12】
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の間の前記基準ガスの前記濃度が、そのある特定の測定期間
【数13】
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の間の前記測定された試料濃度に整合されるように、n=n+1、n+2…に対してステップ(a)〜(e)を反復的に繰り返すことをさらに含み、
前記複数の較正された同位体比及び前記複数の試料ガス濃度測定値を決定する前記ステップf)が、各測定期間
【数14】
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に対する前記少なくとも1つの較正された同位体比及び前記測定された試料濃度を、前記それぞれの測定期間
【数15】
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からの時間と関連付けることを含む、請求項1に記載の前記方法。
【請求項3】
前記ある特定の測定期間
【数16】
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に後続するある測定期間
【数17】
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の持続時間が、前記ある特定の測定期間
【数18】
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の間の試料濃度
【数19】
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の変化率に基づいて設定される、請求項2に記載の前記方法。
【請求項4】
前記分光器内で前記測定期間
【数20】
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にわたって少なくとも1つの試料同位体比を測定する前記ステップd)が、前記分光器内で前記測定期間
【数21】
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にわたって複数の試料同位体比を測定することを含み、前記複数の較正された同位体比及び前記複数の試料ガス濃度測定値を決定する前記ステップf)が、前記測定期間
【数22】
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にわたって測定される前記複数の試料同位体比の各々を、前記測定期間
【数23】
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からのそれぞれの時間と関連付けることを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の前記方法。
【請求項5】
前記分光器内で前記基準ガス濃度
【数24】
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における前記基準ガスの前記同位体比を測定する前記ステップc)が、前記測定期間
【数25】
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に後続する基準期間
【数26】
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の間に起こる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の前記方法。
【請求項6】
ステップa)の前に、
前記測定期間
【数27】
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の前のある期間に関連して使用するための、先行する基準ガス濃度
【数28】
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を選択することをさらに含み、
前記測定期間
【数29】
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の間に測定された前記試料の基準のための、前記分光器の基準ガス濃度
【数30】
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、前記測定された試料濃度
【数31】
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と整合させる前記ステップc)が、前記選択された先行する基準ガス濃度
【数32】
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に基づく、請求項1〜5のいずれか一項に記載の前記方法。
【請求項7】
前記選択された先行する基準ガス濃度
【数33】
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における前記基準ガスの濃度を測定することと、
前記選択された先行する基準ガス濃度
【数34】
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と、前記先行する基準ガス濃度の前記測定値との比に基づいて、補正因子を算出することと、をさらに含み、
前記基準ガス濃度
【数35】
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整合させる前記ステップc)が、前記算出された補正因子を、前記測定期間
【数36】
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の前記少なくとも一部にわたって測定された前記試料濃度
【数37】
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に適用することを含む、請求項6に記載の前記方法。
【請求項8】
前記選択された先行する基準ガス濃度
【数38】
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における前記基準ガスの濃度を測定する前記ステップが、前記測定期間
【数39】
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の前の先行する基準期間
【数40】
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の間に起こる、請求項7に記載の前記方法。
【請求項9】
先行する基準ガス濃度
【数41】
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を選択する前記ステップが、前記測定期間に対して予測される試料濃度に基づく、請求項6〜8のいずれか一項に記載の前記方法。
【請求項10】
前記測定期間
【数42】
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の少なくとも一部にわたって前記試料濃度
【数43】
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を測定する前記ステップb)が、前記測定期間
【数44】
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の前記少なくとも一部にわたって平均試料濃度を決定することを含み、前記試料の前記同位体比を較正する前記ステップe)が、前記決定された平均試料濃度における前記基準ガスの前記測定された同位体比を使用する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の前記方法。
【請求項11】
前記測定期間
【数45】
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の前記少なくとも一部が、前記測定期間
【数46】
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の全体である、請求項10に記載の前記方法。
【請求項12】
前記測定期間
【数47】
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の前記少なくとも一部が、前記測定期間
【数48】
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の最後の部分のみである、請求項10に記載の前記方法。
【請求項13】
前記測定期間
【数49】
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の前の先行する基準期間
【数50】
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の間に、前記分光器内で、先行する基準ガス濃度
【数51】
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における前記基準ガスの前記同位体比を測定することをさらに含み、
前記測定期間
【数52】
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の間に測定された前記試料の前記少なくとも1つの同位体比を較正する前記ステップe)が、前記先行する基準ガス濃度
【数53】
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における前記基準ガスの前記測定された同位体比と、前記測定基準ガス濃度
【数54】
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における前記基準ガスの前記測定された同位体比とを使用する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の前記方法。
【請求項14】
前記分光器内で前記測定期間
【数55】
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にわたって少なくとも1つの試料同位体比を測定する前記ステップd)が、前記分光器内で前記測定期間
【数56】
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にわたって複数の試料同位体比を測定することを含み、
前記測定期間
【数57】
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の間に測定された前記試料の前記少なくとも1つの同位体比を較正する前記ステップe)が、前記複数の試料同位体比の各々に関して、
前記それぞれの試料同位体比に関するそれぞれの試料特性を特定することと、
前記特定されたそれぞれの試料特性に関する前記基準ガスのそれぞれの同位体比を決定することと、
前記基準ガスの前記決定されたそれぞれの同位体比を使用して、前記それぞれの試料同位体比を較正することと、を含む、請求項13に記載の前記方法。
【請求項15】
前記それぞれの試料同位体比に関する前記それぞれの試料特性が、前記それぞれの試料同位体比に関するそれぞれの試料濃度を含む、請求項14に記載の前記方法。
【請求項16】
前記特定されたそれぞれの試料特性に関する前記基準ガスのそれぞれの同位体比を決定する前記ステップが、前記先行する基準ガス濃度
【数58】
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における前記基準ガスの前記測定された同位体比と、前記測定基準ガス濃度
【数59】
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における前記基準ガスの前記測定された同位体比との間を補間することを含む、請求項15に記載の前記方法。
【請求項17】
前記それぞれの試料同位体比に関する前記それぞれの試料特性が、前記それぞれの試料同位体比に関するそれぞれの試料測定時間を含む、請求項14〜16のいずれか一項に記載の前記方法。
【請求項18】
前記特定されたそれぞれの試料特性に関する前記基準ガスのそれぞれの同位体比を決定する前記ステップが、前記先行する基準期間
【数60】
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における前記基準ガスの前記測定された同位体比と、前記測定基準期間
【数61】
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における前記基準ガスの前記測定された同位体比との間を補間することを含む、請求項17に記載の前記方法。
【請求項19】
前記連続試料が、周囲空気、開放空気源、プラントチャンバ、及びガス監視入力のうちの1つ以上から誘導される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の前記方法。
【請求項20】
プロセッサによって操作されると請求項1〜19のいずれか一項に記載の前記方法を実施するように構成される、コンピュータプログラム。
【請求項21】
以下のステップに従って動作するように前記同位体比分光器を制御するように構成される、連続試料同位体比分光器のための制御器であって、
前記ステップは、
a)前記分光器内で、ある測定期間
【数62】
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にわたって少なくとも1つの試料同位体比を測定することと、
b)前記測定期間
【数63】
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の少なくとも一部にわたって試料濃度
【数64】
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を測定することと、
c)前記測定された試料濃度と、
【数65】
[この文献は図面を表示できません]
前記測定期間
【数66】
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の間に測定された前記試料の基準のための、前記分光器の基準ガス濃度
【数67】
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を整合させることと、
d)前記分光器内で、前記整合された基準ガス濃度
【数68】
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における前記基準ガスの同位体比を測定することと、
e)対応する基準ガス濃度
【数69】
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における前記基準ガスの前記測定された同位体比を使用して、試料濃度
【数70】
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を有する前記試料の前記測定期間
【数71】
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の間に測定された前記少なくとも1つの同位体比を較正することと、
f)複数の較正された同位体比及び複数の試料ガス濃度測定値を決定することであって、前記複数の較正された同位体比及び前記複数の試料ガス濃度測定値の各々が、それぞれの異なる時間に対するものである、決定することと、を含む、制御器
【請求項22】
連続試料を受け入れるように構成され、かつ請求項21に記載の前記制御器を備える、同位体比分光器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同位体比分析器内で同位体比を測定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
同位体比分析は、固体、液体、または気体状であり得る試料中の同位体の相対的存在量(同位体比)を、広範な元素に関して、測定するために使用される。例えばこれは、空気中などのCOからの同位体比13C/12C及び/または18O/16Oの測定に使用される。同位体比分析は、最も一般的には質量分析法(MS)によって行われるが、光学分光法によって行われる場合もある。
【0003】
光学分光法では、同位体比は、一般的に、典型的には赤外領域内の、異なる各同位体種(同位体分子種(isotopologue))につき1本の線、例えば1216に対する1本の吸収線、及び1316に対する別の線といった、2本の別々のスペクトル吸収線を測定することによって、分光器の測定セル内で決定される。COの簡便な吸収線は、4.3218μmにおける、または約4.3218μmの線である。1つの同位体当たりより多くの線(例えば二重線または三重線)が利用可能な場合、例えばCO以外のガスに関する、または興味深い場合がある他のスペクトル範囲における、1本より多くの線からの情報を測定及び使用することが可能である。スペクトル吸収線の強度の比は、同位体種の各々の存在量の比(及びそれ故に同位体比、例えば13C/12C)の尺度である。したがって分光器の出力は、異なる同位体の線の比である(例えば、R13C=c13c/c12c)。結果は、同位体比の報告のための確立されたデルタ表記法(例えば、δ13C[‰])を使用して、国際標準と比較照合される。
【0004】
同位体比質量分析法及びガス吸気システムの一般評論は、Brenna et al,Mass Spectrometry Reviews,1997,16,227−258に見出すことができる。
【0005】
同位体比分光法では、試料は、実用標準、つまり、既知の同位体比の1つ以上の基準ガスと対比して測定されるべきである。典型的には、試料及び実用標準の濃度は、周囲測定における1分当たり10百万分率(ppm)から、プラントチャンバ実験の場合の最大40pp/分まで異なる。
【0006】
測定される同位体比は、分析物の濃度に依存することが観察されている。したがって、例えばCO濃度に依存する、較正係数(直線性較正または濃度依存性とも呼ばれる)が、各同位体比に使用される。各々が一定(既知)濃度における1つ以上の基準ガス(つまり、1つの基準ガスまたは複数の基準ガスのいずれか)を用いることが知られている。各基準ガスの濃度は、試料の既知濃度範囲に基づいて選択され、通常はガスタンク内の基準ガス混合物の形態で提供される。直線性較正係数を算出するため、異なる濃度で同じ同位体比を有するガス(例えばCO)を分光器で測定するか、既知の同位体比及び濃度を有する少なくとも複数の基準ガスが提供される。
【0007】
ガス同位体質量分析法において同じ強度(濃度)の試料及び基準を提供するために、従来の解決策は、調節可能な蛇腹及び切替弁の使用である(例えば、Halsted R.E.& Nier A.O.,1950,Gas flow through the mass spectrometer viscous leak.,Rev.Sci.Instrum.,21:1019−1021、またはHabfast K.(1997)Advanced isotope ratio mass spectrometry I:Magnetic isotope ratio mass spectrometers、及びIn:Modern isotope ratio mass spectrometry,I.T.Platzner(ed.),John Wiley & Sons,Chichester,UK:11−82を参照されたい)。この方法では、別個の試料をリザーバに充填した後にそれらが測定される。測定の始めに、調節可能リザーバの一方または両方の容積を(そしてそれによってその中の圧力を)変更することによって、両方のリザーバからの強度が整合される。
【0008】
濃度依存性及びデルタスケール縮約を考慮に入れるために同位体比測定値を較正するための別のシステムは、B.Tuzson et al,“High precision and continuous field measurements of δ13C and δ18O in carbon dioxide with a cryogen−free QCLAS”,Appl.Phys.B(2008),Volume 92,pp 451−458に記載されている。しかしながら、Tuzsonらにおいて記載されるシステムの欠点は、それが既知の同位体比の基準ガスの著しい数の別々の希釈供給流を用いることである。そのような基準ガス/空気混合物は、例えば野外で作業する際に、一般に利用可能ではない。さらに、Tuzsonらにおいて記載されるシステムは、試料希釈を用いない。
【0009】
米国特許第7,810,376号は、ガス流量を一定に調節するように流量制御器内の感知器の濃度情報をフィードバックすることによって、キャリア内で希釈された分析物の分圧を一定に保つための開口部を記載する。試料濃度のいかなる変化も、測定される試料の試料濃度が一定に保たれるように試料を希釈することによって除去される。したがって、濃度情報は失われる。実用標準濃度も、流量制御器によって一定に保たれる。
【0010】
国際公開第2007/112876号は、弁を調節するために感知器の信号を使用することによる、流量制御装置及び開口割溝の手段によって、試料ガス濃度を一定に保つユニットを記載する。一般に、試料は反応器内で燃やされて個別に測定され、同位体比分析が行われる前にガスクロマトグラフィーによって分析される。この場合、キャリアガス(ヘリウムなど)の流量は、試料及び/または基準ガスの濃度を一定に保つように制御される。これは、各ガスクロマトグラフピークに対する単一の同位体比の決定を可能にする。試料濃度情報は関連性がない。
【0011】
スペクトル強度の比からδ値を算出するのに必要とされる較正を行うための改善された配置は、我々の同時係属中の英国特許出願第1306806.9号、同第1306807.7号、及び同第1306808.5号に記載されており、それらの全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
較正は同位体比分析の濃度依存性を5〜10倍改善するが、較正の正確性のさらなる改善が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第7,810,376号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/112876号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、同位体比分光器内の連続試料の同位体比、特に較正された同位体比を測定するための改善された方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
同位体比と濃度との間の相関は、不安定である(つまり、経時的に、そして温度の変化とともに変動する)ことが観察されている。本発明は、試料及び基準ガス濃度が試料分析の過程でより厳密に互いに従うように、経時的な連続試料濃度の変化を監視し、繰り返される間隔で基準ガス濃度を調節することによって、システムパラメータのふらつきに対処することを目的とする。それによって、複数の試料δ値及び濃度値を得ることができる。この過程は、好ましくは反復的である。
【0016】
同一処理の原理に従うため、未知の試料ガスの濃度は、既知の基準(実用標準)の濃度と整合するべきである。実験では、試料濃度は、周囲測定の場合の10ppm/分からプラントチャンバ実験の場合の最大40ppm/分までの範囲内で変動し、したがって、実用標準が試料濃度に従うことが望ましい。2つの基準間の機器のふらつき及び濃度変化の作用が線形またはほぼ線形であると予想される限り、これらを補うために2つの基準間の線形近似が使用される。濃度情報は望ましくは維持され、したがって試料の希釈は選択肢とならない場合がある。
【0017】
第1の態様では、同位体比分光器内で連続試料の同位体比を測定する方法であって、a)分光器内で、ある測定期間
【数1】
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にわたって少なくとも1つの試料同位体比を測定することと、b)測定期間
【数2】
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の少なくとも一部にわたって試料濃度
【数3】
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を測定することと、c)測定期間
【数4】
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の間に測定された試料濃度
【数5】
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に基づいて、測定期間
【数6】
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の間に測定された試料の基準のための、分光器の基準ガス濃度
【数7】
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を選択することと、d)分光器内で、選択された基準ガス濃度
【数8】
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における基準ガスの同位体比を測定することと、e)対応する基準ガス濃度
【数9】
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における基準ガスの測定された同位体比を使用して、試料濃度
【数10】
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を有する試料の測定期間
【数11】
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の間に測定された少なくとも1つの同位体比を較正することと、を含む、方法が提供される。試料濃度
【数12】
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の測定は、時間基準平均などの時間基準統計を使用し得る。この技術を種々の異なる方法で実施して、上記の利点のいくつかまたはすべてを達成することができる。
【0018】
典型的には、上で言及された既知の配置では、離散試料が測定される。これらは、遠隔部から得られたガスの体積であってよく、かつ/または、反応器から生成された、もしくはガスクロマトグラフカラムから溶出したガス試料であってよい。採取されたガス試料は、全分析時間の間、分析器に実質的に同じ試料濃度を提示するように、体積単位で保管され、複数期間にわたって分析器に放出され得る。反応事象から、またはガスクロマトグラフカラムから放出されるガスは、変動する濃度を経時的に分析器に提示する。しかしながら、これらのすべての場合で、単一の同位体比が試料の特徴である。これと対照的に、本発明は、試料中に存在するガスの同位体比が経時的に変動し、かつガス濃度が経時的に変動する、連続試料に関する。この変動が分析の対象である。この場合試料は、数時間、数日間、またはさらには数週間にわたって測定され得、複数の同位体比及び濃度測定が行われる。同位体比測定は、数週間の期間にわたって数分毎に行われ得、したがって何千もの測定が行われ得る。
【0019】
好ましくは、本方法は、f)複数の較正された同位体比及び複数の試料ガス濃度測定値を決定することであって、複数の較正された同位体比及び複数の試料ガス濃度測定値の各々が、それぞれの異なる時間に対するものである、決定すること、をさらに含む。これは、複数の較正された試料同位体比測定値が、複数の試料濃度測定値と一緒に、経時的に得られることを意味する。有利なことに、これにより、試料同位体比測定値及び濃度測定値の両方の変動が時間と対比して測定されることが可能になり、これは、以下に記載されるように、多くの異なる用途、特に試料濃度の大規模な長期の変動が可能であり得る用途に、特に有用となり得る。基準濃度を試料と整合させること(及び試料を希釈しないこと)によって、試料濃度情報が保持され、測定され得、これは、その変動が目的となる場合に特に望ましい場合がある。さらに、連続試料の監視は、時間基準分析の使用を可能にする。
【0020】
これは、測定された(つまり測定期間
【数13】
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の少なくとも一部の間に測定された)試料濃度
【数14】
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に基づいて、測定期間
【数15】
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の間に測定された試料の基準のための、分光器の基準ガス濃度
【数16】
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を選択するステップc)を実施することによって、達成され得る。これにより、基準ガス濃度と、測定期間
【数17】
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にわたって動的に変動する試料ガス濃度とを整合させることができる。したがって、分光器内で基準ガス濃度
【数18】
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における基準ガスの同位体比を測定するステップd)は、測定された試料濃度
【数19】
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と整合された基準ガス濃度
【数20】
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を用いて実施される。結果として、基準ガスの測定された同位体比を使用して、試料の少なくとも1つの同位体比を較正するステップe)は、より正確な較正をもたらし、より広範囲の試料濃度の変動に対応することができる。
【0021】
上記のように、試料濃度は動的に変化する。これは、試料について測定された同位体比の較正に関連性がないと以前に見なされた連続試料に関する重要な検討事項となり得る。試料濃度は、測定期間
【数21】
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の過程で著しく変動する。さらに、第1の測定期間
【数22】
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の間の試料濃度は、その後の第2の測定期間
【数23】
[この文献は図面を表示できません]
の間の試料濃度と異なる場合がある。これらの理由(及び以下に記載される他の理由)のため、本プロセスは、好ましくは反復的に繰り返される。例えば、本方法は、ある特定の測定期間
【数24】
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の間、そのある特定の測定期間
【数25】
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の間の基準ガスの選択された濃度が、そのある特定の測定期間
【数26】
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の間の測定された試料濃度に基づくように、n=n+1、n+2…に対してステップ(a)〜(e)を反復的に繰り返すことをさらに含み得る。そのある特定の測定期間の間の基準ガスの選択された濃度は、先行する測定期間
【数27】
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の間の測定された試料濃度に基づく場合もあり、これは以下にさらに記載される。
【0022】
有利なことに、複数の較正された同位体比及び複数の試料ガス濃度測定値を決定するステップf)は、各測定期間
【数28】
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に対する少なくとも1つの較正された同位体比及び測定された試料濃度を、それぞれの測定期間
【数29】
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からの時間と関連付けることを含む。したがって、各測定期間
【数30】
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は、試料同位体比及び濃度の変動が経時的に分析され得るように、1つ以上の較正された試料同位体比測定値、及び1つ以上の試料濃度測定値をもたらす。さらに、または代替として、分光器内で測定期間
【数31】
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にわたって少なくとも1つの試料同位体比を測定するステップd)は、分光器内で測定期間
【数32】
[この文献は図面を表示できません]
にわたって複数の試料同位体比を測定することを含む。次に、複数の較正された同位体比及び複数の試料ガス濃度測定値を決定するステップf)は、測定期間
【数33】
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にわたって測定された複数の試料同位体比の各々を、測定期間
【数34】
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からのそれぞれの時間と関連付けることを含み得る。この方法では、単一の測定期間
【数35】
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にわたって測定された複数の同位体比測定値が較正及び時間参照され得、それらの変動は、同じ期間にわたる対応する試料濃度の変動と一緒に分析され得る。実施形態では、測定期間
【数36】
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の少なくとも一部にわたって試料濃度
【数37】
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を測定するステップb)は、各試料濃度測定値が測定期間
【数38】
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のそれぞれの(異なる)部分にわたるものである、複数の試料濃度を測定することを含み得る。
【0023】
n≧1に対する各測定期間
【数39】
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の持続時間は、同じであってよい。代替として、その持続時間は、nとともに異なる測定期間
【数40】
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間で変動してもよい。例えば、ある特定の測定期間
【数41】
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に後続するある測定期間
【数42】
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の持続時間は、ある特定の測定期間
【数43】
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の間の試料濃度
【数44】
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(または試料濃度
【数45】
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の統計値)の変化率に基づいて設定され得る。具体的には、後続の測定期間
【数46】
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の持続時間(またはある特定の測定期間
【数47】
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の持続時間と比べた該持続時間の増加)は、ある特定の測定期間
【数48】
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の間の試料濃度
【数49】
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の(統計値の)変化率に対して反比例関係を有し得る。この方法では、後続の測定期間
【数50】
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の持続時間は、試料濃度(の統計値)が急速に変化している場合は短くなる(すなわち短縮される)が、試料濃度(の統計値)が遅い速度で変化している場合は長くなる(すなわち延長される)ことができる。いくつかの実施形態では、測定期間
【数51】
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の持続時間は、およそ1分間であり得る。
【0024】
好ましい実施形態では、分光器内で基準ガス濃度
【数52】
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における基準ガスの同位体比を測定するステップd)は、測定期間
【数53】
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の間に起こらない。好ましくは、これは測定期間
【数54】
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に後続する基準期間
【数55】
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の間に起こる。これにより、測定期間
【数56】
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の間に測定された試料濃度情報が、基準ガスの同位体比の測定時に使用され得る。基準期間
【数57】
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の持続時間は、典型的には測定期間
【数58】
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の持続時間より短く、通常は大幅に短い(10%、20%、30%、40%、または50%以下)。
【0025】
選択される基準ガス濃度
【数59】
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は、測定される基準ガス濃度と必ずしも同じとは限らない。実際に、その差は有意である場合がある。選択される基準ガス濃度
【数60】
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は、通常は名目値である。したがって、補正因子(例えば、Xcor)は、基準ガス濃度の以前の測定値、及びその測定値と測定前に選択された名目上の基準ガス濃度との間の比較に基づいて決定され得る。この補正因子は次に、(例えば、
【数61】
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をすることによって)次の基準期間
【数62】
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の基準ガス濃度
【数63】
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を選択するために、測定された試料ガス濃度
【数64】
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に適用され得る。ある意味で、本方法が、後続の第2の測定期間
【数65】
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を参照して使用するために第1の基準ガス濃度とは異なる第2の基準ガス濃度
【数66】
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を分光器に提供するために、測定期間
【数67】
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の間の測定された試料濃度
【数68】
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に基づいて、(第1の測定期間と呼ばれる場合がある)測定期間
【数69】
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の間に測定された試料の基準のための、(第1の基準ガス濃度と呼ばれる場合がある)基準ガス濃度
【数70】
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を調節することをさらに含むことは、理解され得る。
【0026】
この補正は次のように達成され得る。ステップa)を実施する前に、本方法は有利に、測定期間
【数71】
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の前のある期間に関連して使用するための、先行する基準ガス濃度
【数72】
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を選択することをさらに含む。次に、測定期間
【数73】
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の間に測定された試料の基準のための、分光器の基準ガス濃度
【数74】
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を選択するステップc)は、測定期間
【数75】
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の間の選択された試料濃度
【数76】
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に基づき、かつ選択された先行する基準ガス濃度
【数77】
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に基づくことができる。具体的には、本方法は、選択された先行する基準ガス濃度
【数78】
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における基準ガスの濃度を測定することをさらに含み得る。例えば、選択された先行する基準ガス濃度
【数79】
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における基準ガスの濃度を測定するステップは、測定期間
【数80】
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の前の先行する基準期間
【数81】
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の間に起こり得る。さらに、または代替として、本方法は、選択された先行する基準ガス濃度
【数82】
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と、先行する基準ガス濃度の測定値との比に基づいて、補正因子を算出することをさらに含み得る。次に、基準ガス濃度
【数83】
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を選択するステップc)は、算出された補正因子を、測定期間
【数84】
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の少なくとも一部にわたって測定された試料濃度
【数85】
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に適用することを含み得る。好ましい実施形態では、先行する基準ガス濃度
【数86】
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を選択するステップは、(特に、n−1=0となるようにn=1である場合)該測定期間に対して予測される試料濃度に基づく。したがって、先行する基準期間
【数87】
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(選択された先行する基準ガス濃度
【数88】
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における基準ガスの濃度を測定するステップがこの間に実施される)が存在し得る。この先行する基準期間
【数89】
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は、いかなる測定期間
【数90】
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に続かなくてよいが、第1の測定期間
【数91】
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に先行してよい。この先行する基準期間
【数92】
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において試料濃度に関する情報が利用可能でない場合があるため、先行する基準ガス濃度
【数93】
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は、推定、近似、または第1の測定期間
【数94】
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の間の試料濃度
【数95】
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の名目値を使用することによって選択される。
【0027】
測定期間
【数96】
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の少なくとも一部にわたって試料濃度
【数97】
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を測定するステップb)は、異なる方法で達成されてもよい。いくつかの実施形態では、ステップb)は、測定期間
【数98】
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の少なくとも一部にわたる試料濃度の(時間基準の)統計特性、具体的には測定期間
【数99】
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の少なくとも一部にわたる試料濃度の平均を決定することを含む。この平均は、平均値、中央値、または最頻値であり得るが、測定データの他の統計特性が使用されてもよい。次に、試料の同位体比を較正するステップe)は、決定された統計特性の試料濃度または平均試料濃度における基準ガスの測定された同位体比を使用する。
【0028】
さらに、または代替として、測定期間
【数100】
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の少なくとも一部にわたって試料濃度
【数101】
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を測定するステップb)は、異なる時間に起こり得る。例えば、測定期間
【数102】
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の少なくとも一部は、測定期間
【数103】
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の全体でもよい。これは特に、測定された試料濃度
【数104】
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が、測定期間
【数105】
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にわたる試料濃度の平均である場合に使用され得る。他の実施形態では、測定期間
【数106】
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の少なくとも一部は、測定期間
【数107】
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の最後の部分のみである。例えばこれは、測定期間
【数108】
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の一部分のみであり得る。
【0029】
測定期間
【数109】
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の間に測定された試料の少なくとも1つの同位体比を較正するステップe)は、測定基準ガス濃度
【数110】
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における基準ガスの測定された同位体比を使用するが、この較正は他のパラメータを使用してもよい。例えば、較正は、先行する基準期間
【数111】
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の間に測定された先行する基準ガス濃度
【数112】
[この文献は図面を表示できません]
における、基準ガスの測定された同位体比を使用し得る。好ましい実施形態では、本方法は、測定期間
【数113】
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の前の先行する基準期間
【数114】
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の間に、分光器内で、先行する基準ガス濃度
【数115】
[この文献は図面を表示できません]
における基準ガスの同位体比を測定することをさらに含む。次に、測定期間
【数116】
[この文献は図面を表示できません]
の間に測定された試料の少なくとも1つの同位体比を較正するステップe)は、好ましくは、先行する基準ガス濃度
【数117】
[この文献は図面を表示できません]
における基準ガスの測定された同位体比と、測定基準ガス濃度
【数118】
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における基準ガスの測定された同位体比とを使用する。
【0030】
いくつかの実施形態は、分光器内で測定期間
【数119】
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にわたって単一の試料同位体比のみを測定し得るが、他の実施形態は、分光器内で測定期間
【数120】
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にわたって複数の試料同位体比を測定し得る。換言すれば、分光器内で測定期間
【数121】
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にわたって少なくとも1つの試料同位体比を測定するステップd)は、分光器内で測定期間
【数122】
[この文献は図面を表示できません]
にわたって複数の試料同位体比を測定することを含み得る。これは、上記のように、先行する基準ガス濃度
【数123】
[この文献は図面を表示できません]
における基準ガスの測定された同位体比の使用とあわせて較正において有利に使用されるが、それは必ずしも常に当てはまるとは限らない。いずれにせよ、測定期間
【数124】
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の間に測定された試料の少なくとも1つの同位体比を較正するステップe)は、複数の試料同位体比の各々に関して、それぞれの試料同位体比に関するそれぞれの試料特性を特定することと、特定されたそれぞれの試料特性に関する基準ガスのそれぞれの同位体比を決定することと、基準ガスの決定されたそれぞれの同位体比を使用して、それぞれの試料同位体比を較正することと、を含み得る。それぞれの試料同位体比に関するそれぞれの試料特性は、それぞれの試料同位体比に関するそれぞれの試料濃度、及びそれぞれの試料同位体比に関するそれぞれの試料測定時間の一方または両方を含み得る。特定の最小レベルの正確性で分析され得る試料濃度の変動の範囲を増加させるように、基準ガスの2つの同位体比測定値間の補間が使用され得る。
【0031】
それぞれの試料同位体比に関するそれぞれの試料特性を特定するステップは、それぞれの試料同位体比に関するそれぞれの試料濃度を測定することを含み得る。先行する基準ガス濃度
【数125】
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における基準ガスの測定された同位体比が較正に使用される場合、特定されたそれぞれの試料濃度に関する基準ガスのそれぞれの同位体比を決定するステップは、先行する基準ガス濃度
【数126】
[この文献は図面を表示できません]
における基準ガスの測定された同位体比と、測定基準ガス濃度
【数127】
[この文献は図面を表示できません]
における基準ガスの測定された同位体比との間を補間することを、有益に含む。これは、線形補間であっても非線形補間であってもよい。
【0032】
さらに、または代替として、それぞれの試料同位体比に関するそれぞれの試料特性を特定するステップは、それぞれの試料同位体比に関するそれぞれの試料測定時間を測定することを含み得る。先行する基準期間
【数128】
[この文献は図面を表示できません]
における基準ガスの測定された同位体比が較正に使用される場合、特定されたそれぞれの試料濃度に関する基準ガスのそれぞれの同位体比を決定するステップは、先行する基準期間
【数129】
[この文献は図面を表示できません]
における基準ガスの測定された同位体比と、測定基準期間
【数130】
[この文献は図面を表示できません]
における基準ガスの測定された同位体比との間を補間することを、有益に含む。
【0033】
好ましい実施形態では、連続試料は、周囲空気、開放空気源、プラントチャンバ、及びガス監視入力のうちの1つ以上から誘導される。これらの場合の多くでは、試料濃度の大規模な長期的変動が可能であり得る。例えば、試料測定期間はおよそ1分間であり得るが、試料は、1週間または複数週間にわたって連続的に受け入れられてよい。試料は、好ましくはCOを含む。基準ガスは、試料ガスに対して少なくとも1つの同一種を有利に含む。
【0034】
別の態様では、本発明は、プロセッサによって操作されると本明細書に記載される方法を実施するように構成される、コンピュータプログラムを提供する。
【0035】
さらなる態様では、本明細書に記載される方法に従って動作するように同位体比分光器を制御するように構成される、連続試料同位体比分光器のための制御器が提供される。任意に、連続試料を受け入れるように構成され、かつそのような制御器を備える、同位体比分光器が提供される。
【0036】
本発明の種々の好ましい特徴は、添付の特許請求の範囲から、そして以下のいくつかの好ましい実施形態の具体的な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明は複数の方法で実践され得、以降、単なる例として、そして添付の図面を参照して、いくつかの実施形態が説明される。
【0038】
図1】既存の設計に従うガス吸気システムに連結された同位体比光学分光器の配置図を示す。
図2】既存の設計に従うガス吸気及び参照システムの配置図を示す。
図3図2に示されるシステムの参照部の配置図を示す。
図4A】本発明を具体化する、基準ガス及び試料ガスの同位体比ならびに濃度を測定するためのプロセスの流れ図を示す。
図4B】試料ガス同位体比を較正するための、図4Aに示されるプロセスの任意の部分の流れ図を示す。
図5】それぞれの同位体比が測定される時を示す、時間と対比した基準ガス及び試料ガスの各々の例示的ガス濃度のプロットを示す。
図6A】時間と対比した試料ガスの例示的ガス濃度のプロットを示す。
図6B図6Aの基準ガス濃度に関する、機器の生値、本発明の第1の実施形態を使用して較正された値、及び本発明の第2の実施形態を使用して較正された値を示す、試料ガスの実施例の同位体比デルタのプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1を参照すると、本発明を具体化する方法の実施のために特に好ましい1つの配置を表す、マルチポート吸気システム120に連結された同位体比光学分光器100が概略的に示されている。以下に記載される同位体比分光器は光学分光器であるが、同位体比質量分析器が等しく用いられ得ることが理解されるであろう。図1に示される配置は、我々の英国同時係属出願第1306806.9号、同第1306807.7号、及び同第1306808.5号でより詳細に図示及び説明されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
この光学分光器は、レーザー分光器である。測定される試料(または基準)ガスは、マルチポート吸気システム120から、レーザー分光器内のマルチパス測定セル112を通って、膜ポンプなどの真空ポンプ114によって、セルをポンピングする分光器から排気口115内に輸送される。測定セルは、約5.4mの全光路長を有する。入来ガスは、測定セル112内に直接かつ完全に移動する。セル上流のフィルタ(図示せず)が、セル内への粒子の移動を防止する。本実施形態における測定セルへの吸気流量は、固定流量制限部111によって制限され、吸気ポート101、104において大気圧、そして吸気ポート102、103において0.5bar(ゲージ圧)になるよう、セルへの80ml/分のガス流速を可能にするように設定される。しかしながら、測定セルを通る実際の流量は、送達されるガスの圧力に依存する。測定セル112内の圧力は、例えば本実施形態では、セル112に接続された圧力計113から生成される信号のポンプ114へのフィードバックにより、ポンプ速度を制御することによって、一定に保たれる。他の実施形態では、セル112とポンプ114との間に調節可能弁を有すること、及び、例えば圧力計113からのフィードバックを使用して、ポンプ114の代わりに弁を制御することも可能である。この方法では、セル内の圧力は、概して20〜200mbar(絶対圧)、または好ましくは40〜200mbar(絶対圧)、またはより好ましくは40〜150mbar(絶対圧)の範囲内に望ましく維持される。測定セル内の圧力は、典型的に、約100mbar(絶対圧)(または20〜150mbar(絶対圧)、またはさらには〜200mbar(絶対圧)の範囲内)で一定に保たれる。セルの動作測定範囲は、空気中またはN中で200〜4,000、好ましくは200〜3,500ppmのCOであり、検出の最高性能は、200〜1,500ppm、特に300〜1,500ppmのCOである。
【0041】
測定セルへのガス吸気ライン上で、マルチポート弁(例示目的のために別個の弁107〜110として概略的に示される)が、4つの異なるガス吸気ポート101〜104間の切り替えを可能にする。これらのポートのうちの1つ、101は、以下により詳細に記載されるように、ガス吸気口及び参照システムに接続される(図2参照)。残りのポート102〜104は、任意に、例えば、追加の試料ガス(例えばポート104における周囲空気)及び/または追加の濃度較正のための較正ガスのために使用され得る(102、103)。後者は、既知濃度を有する1つまたは2つの基準を必要とする。ポート101に接続された吸気口及び参照システムは、典型的に、同位体比測定の濃度依存性の較正のため、及び同位体比測定の同位体比依存性のために使用され、これが、本発明を具体化し、かつ以下に説明される方法を形成する。
【0042】
直線性較正及びデルタスケール縮約のため、(異なる既知の同位体比を有する)2つの異なる源からのCOを使用する、基準COとキャリアガスとの混合物が必要とされる。図2の配置は、CO非含有空気(ゼロ空気とも呼ばれる)または他のCO非含有ガスと純COとを混合することによって、これらの異なる濃度のガスを分光器に供給する簡便な方法を提供する、ガス吸気口を示す。希釈は、空気中(またはN中)で必要とされる200〜4,000(好ましくは200〜3,500)ppmのCOをもたらすように行われる。さらに有利なことに、CO非含有空気は、CO吸収体を使用して野外で生成されるか、またはガスタンクで送達されるかのいずれでもよい。
【0043】
図2のガス吸気システムは、ガス流量のより良好な安定性をもたらし、流量制御器によって可能性のある同位体分別を回避する。CO非含有空気(ゼロ空気)の流量は、流量制御手段(例えば流量制御器または比例弁)によって制御され、代わりにCO流量は一定に保たれる。より高いダイナミックレンジ及び流量の整合のため、希釈は2つのステップで実施されてもよい。
【0044】
図2を参照すると、本発明を具体化する方法を実施するのに好適なガス吸気口及び参照システムが示されている。まず、図1に示される分光器と本システムがどのように接続するかに留意されたい。図2に示されるシステムの出口ライン16は、図1に示されるガス吸気システムのポート101と接続する。したがって、図2に示されるシステムから出るガスは、同位体比測定のために図1に示される分光器に進入する。本システムは、試料ガス及び基準ガスを光学レーザー分光器に送達することができるように構成される。
【0045】
2つの純CO基準ガス(基準1及び基準2)の供給流が提供される(41、42)。各CO供給流の同位体比(13C/12C及び/または18O/16O)は既知である。COの各供給流の流量は、定圧弁であるそれぞれの弁44、45、及びそれぞれの流量制限部1、2によって、供給ライン上で制御される。基準ガスライン上の2つの弁V1及びV2 3、4は、2つの基準ガス間の切り替え、ならびに基準ガスを保存するためにそれら両方をシステムの残部から遮断することを可能にする。CO非含有空気であるキャリアガスの供給流も提供され(40)、その流量は、定圧弁であるそれぞれの弁43によって制御される。簡潔にするために、図3は、吸気システム単独の参照部の略系統図を示す。
【0046】
COの分別を回避するため、CO基準供給流のうち選択された1つからの400μl/秒(24ml/分)の一定流量のCOが、キャリアガスライン上の質量流量制御器または比例弁9を使用して、可変流量のCO非含有空気(または他のキャリアガス)(流速3〜100ml/分)に混合される。質量流量制御器または比例弁9は、本実施形態では、コンピュータ制御される(好ましくは、本発明のシステムで示されるほとんどまたはすべての弁がコンピュータ制御される)。つまり、COは可変質量流量制御を受けず、したがって分別を回避し、むしろ動的に流量制御されるのはCO非含有空気である。ガスはまず、第1の混合接合部であるT接合部50で混合する。ガスはさらに、2つのガスの均質混合物を提供する管である混合領域5の内部下流で混合する。CO基準の流量制限部1、2、及び一定入力圧力弁44、45は、混合領域5への一定CO流量を画定する。得られるこの予混合物(pre−mixture)のCO濃度は、4,000ppm〜13,000ppmの範囲内になるよう設計される。混合領域5は、COとゼロ空気とが十分に混合されることを確実にするために必要である。ここでの流速は100ml/分超であり得、混合領域5内のガスの滞留時間は非常に短い場合がある。
【0047】
英国同時係属出願第1306806.9号、同第1306807.7号、及び同第1306808.5号は、構成要素のいくつかの好ましいパラメータ及び直径、ならびに図2及び3の配置における流速を記載する。
【0048】
また図2及び3を参照すると、CO予混合物は、第2のT接合部または流量分割器52において、より多くのCO非含有空気(キャリアガス)と混合される。したがって、これが第2の混合接合部である。基準流量の第2の希釈は、適切な固定比(例えば1:30)に設定される。第2の混合T接合部への流量は、本実施形態では予混合物とCO2非含有空気との間の1:30の比を確実にする、2つの流量制限部7、8によって画定される。つまり、流量制限部7は、予混合物の流量を制限し、流量制限部8は、キャリアガスの流量を制限する。予混合物の流量は流量制御器9によって画定され、レーザー分光器へのガス流量の1/30よりも常に高い。実践されているダウンミキシングのダイナミックレンジの制限のため、この二段階希釈は好ましい。次に、流量制御器9の使用によって濃度依存性の進行性の直線性較正が行われる。
【0049】
制限部7及び8両方の入力圧力は、それぞれ予混合物の出口ライン及びキャリアガスライン上の開口管または毛細管の形態の2つの開口部6、14によって、約大気圧で等しく保たれる。したがって、予混合物の残部は、混合領域の後(その下流)の、混合領域5と流量制限部7との間に位置する開口部6から噴出される。第2の混合分割部に向かうCO2非含有空気の流量は、流量制限部13及びCO非含有空気の供給流43中の定圧によって画定される。制限部13におけるガス流量は、レーザー分光器へのガス流量よりも常に高い。CO非含有空気キャリアガスの差分量は、キャリアガスライン上の開口部14から噴出される。
【0050】
開口部6、14は、T(またはY)ピース接続部60、62上に置かれる。開口部6、14は、基準ガスの汚染を回避するためにガス速度が空気中のCOの拡散速度よりも常に高くなるような寸法である。以上のことから、基準ガス流量が非常に低く、動的に調節すなわち能動的に制御されるべきではないことがわかる(すなわち、(位置3、4における)弁1及び2は典型的にオン/オフ弁である)。したがって、分光器内のCO濃度を変更する際に、弁1及び2を介する基準ガス供給流からの基準ガス流量は変更されない。代わりに、基準ガス流量の第1の希釈は、(コンピュータ制御弁9を使用して)ゼロ空気の流量を制御することによって動的に調節される。
【0051】
参照システムは、所望のガス種(例えばゼロ空気中のCO)の濃度を変更するように異なるガスを互いと混合することによって、供給されるガスの希釈を可能にするように設計される。質量流量制御器(9)を使用してキャリアガスの流量を変動させることによって、CO非含有キャリアガス中のCO基準ガスの濃度が変動し得ることが分かる。参照システムは、100〜4,000ppm、より好ましくは200〜3,500ppmの分光器の測定範囲内の直線性較正のための、任意の濃度のCOを許容する。この方法では、分光器内で複数の異なるCO濃度における同位体比測定を行い、本発明の方法に従って同位体比測定の濃度依存性を決定することができる。
【0052】
出口ライン16は、第2の段階の希釈後の、混合領域から光学レーザー分光器に至る流量を測定する。光学レーザー分光器への出力流量は、分光器自体によって画定され、理想的には80ml/分である。分光器に連結する排気口16における圧力は、およそ大気圧であるように設計される。
【0053】
図2及び3の配置を用いた基準ガスの切り替えも可能であり、さらなる詳細はまた、英国同時係属出願第1306806.9号、第1306807.7号、及び第1306808.5号に見出すことができる。
【0054】
上記の参照システムに加えて、図2に示されるガス吸気システムは、試料ガス(すなわち、未知の同位体比及び/または濃度のガス)を分光器に導入するための試料吸気システムをさらに備える。この詳細は本発明にとって重要ではないが、いずれにしても英国同時係属出願第1306806.9号、第1306807.7号、及び第1306808.5号に見出すことができる。しかしながら、手短に述べると、試料ガス(CO)の供給流が接続されている試料吸気ポート12(図2)から入来するCO試料流と、CO非含有空気の流れとが混合される。本実施形態では、試料流へのCO非含有空気の供給流は、参照システム内で基準ガスの希釈に使用されるものと同じ供給流40である。
【0055】
試料はしばしば微量でしか入手できない。したがって、試料吸気システムは、試料がほとんどまたは全く失われないことを確実にしなければならない。好ましい試料吸気システムは、試料入力ポートからレーザー分光器16への100%の試料の移動を確実にする。試料流量と、この場合はCO非含有空気(ゼロ空気)であるキャリアまたは希釈ガスを有するレーザー分光器への流量との間の、差分体積を満たすことによって、レーザー分光器への一定流量が確保される。試料は浪費されず、レーザー分光器へのガス流中のCOの濃度は一定かつ最適範囲内に保たれる。
【0056】
制御可能な濃度における分光器への試料ガス及び基準ガス(単数または複数)の供給のための好ましい配置を説明したが、ここで、図4の流れ図及び図5の時間と対比したガス濃度のプロットを参照して、本発明を具体化する方法を説明する。
【0057】
図4aを参照すると、基準ガス及び試料ガスの同位体比ならびに濃度を測定するためのプロセスの流れ図が示されている。第1の基準ガス測定ステップ301は、任意である。このステップでは、基準ガス濃度は自由裁量で選択される。例えばそれは、後続のステップで測定される試料について予測される試料濃度に基づいて選択され得る。好ましくは、選択された濃度で名目上供給される基準ガスの分光測定を行うことによって、選択された初期濃度における基準ガスの濃度が測定される。
【0058】
次に、選択された(名目上の)基準ガス濃度と、ちょうど測定された基準ガスの濃度との比に基づいて、補正因子が算出される。この補正因子は、後に使用され得る。この初期基準ガス測定ステップ201は、試料の第1の測定に先行するため、第0番目の期間と見なされ得る。
【0059】
第1の試料測定ステップ210では、分光器を使用して、ある測定期間にわたって、少なくとも1つの試料同位体比が測定される。典型的に、該試料に関して複数の同位体比が測定される。上記に説明したように、試料濃度は、この期間にわたって変動し得る。第1の試料測定ステップ210は、n番目のサイクルの開始を、n=1、2、…、Nとマークする。
【0060】
第2の試料測定ステップ220では、試料の濃度が測定される。第1の試料測定ステップ210及び第2の試料測定ステップ220は同時発生的なステップとして示されるが、これらは通常並行して起こり、これら2つのステップの持続時間は、n番目の測定期間として表され得る。以下に記載されるように、試料濃度測定は、同位体比測定と同時に起こり得る。代替として、試料濃度測定は、試料同位体比が測定されている期間の一部、特にその期間の後半部分の間に起こってもよい。
【0061】
その後、基準ガス濃度選択ステップ330が行われる。測定された試料濃度に基づいて、新たな基準ガス濃度が選択される。さらに、選択される基準ガス濃度は、初期基準ガス測定ステップ201で決定された較正係数に基づいてもよい。この一例を以下に示す。
【0062】
基準ガス同位体比測定ステップ240において、分光器を使用して、選択された濃度における基準ガスの同位体比を測定する。これは、n番目の基準期間(n=1、2、…、N)の間に起こる。この同位体比測定値を使用して、その濃度における試料同位体比測定のための較正係数を特定することができる。較正ステップ250では、対応する選択された基準ガス濃度における基準ガスの測定された同位体比を使用して、試料の少なくとも1つの同位体比が較正される。
【0063】
好ましくは、決定ステップ260が次に起こる。分析されるさらなる試料が存在する場合、経路261が取られ、プロセスが第1の試料同位体比測定に戻り、n=n+1を用いてそこから継続する。しかしながら、繰り返されるプロセスの間、(基準ガス濃度選択ステップ230において)基準ガス濃度の選択に使用される補正因子は、基準ガス測定ステップ250における(つまり、(n−1)番目の基準期間の間の基準ガスの測定値から得られてもよい。任意に、基準ガスの濃度もこのステップの間に測定され、補正因子が決定される。
【0064】
しかしながら、分析されるさらなる試料は存在しないと決定ステップ260が決定する場合(つまりn=N)、プロセスは経路262終了ステップ370に沿って進行し、ここでプロセスが終了する。
【0065】
次に図4bを参照すると、試料ガス同位体比を較正するための、図4aに示されるプロセスの任意の部分の流れ図が示されている。これは、第1の試料測定ステップ210において複数の同位体比測定が行われる場合、較正ステップ250を実施するための任意の技術である。
【0066】
試料濃度特定ステップ251では、第1の試料測定ステップ210で測定された試料の第1の同位体比測定値に対して、試料濃度が特定される。次に、ステップ251で特定された試料濃度に対して、基準ガスの同位体比が決定される。これは、同位体比決定ステップ252で起こる。次に、決定ステップ252で決定された基準ガス同位体比を使用して、試料同位体比測定値が較正される。これは、較正ステップ253で起こる。
【0067】
測定値決定ステップ254では、これが第1の測定ステップ210で測定された試料についての最終的な同位体比測定であるかに関する決定が行われる。そうでない場合、経路255が取られ、プロセスが試料濃度特定ステップ251に戻る。第1の試料測定ステップ210で測定された次の試料同位体比測定値について、ステップ251、252、253、及び254が繰り返される。試料同位体比測定値のすべてが処理されると、決定ステップ254は終了ステップ256に進行し、プロセスは図4aに示される決定ステップ260に戻る。
【0068】
図4bに示されるプロセスは、測定されなかった基準ガスの濃度に関する基準ガス同位体比を決定するために補間が実施され得る場合、特に有用であり得る。これは、「ブラケティング」手法を参照して以下に説明される。
【0069】
次に図5を参照すると、それぞれの同位体比が測定される時を示す、時間と対比した基準ガス及び試料ガスの各々の例示的ガス濃度のプロットが示されている。試料濃度の経時的な変化301が、(測定中の典型的な濃度傾向を例示する)主なプロットとして示されている。この期間は、以下に記載されるように、異なる測定のために分光器が使用される、一連の持続時間に分割される。
【0070】
この様態では、試料(例えば、周囲空気)及び基準(または実用標準)ガスが交互に測定される。初期基準期間310では、基準ガスが、(ユーザによって設定され得る)デフォルト濃度340において測定される。第1の測定期間321が続く(典型的には数分間)。この第1の測定期間321の間、試料を測定して少なくとも1つの同位体比を決定する。ここからわかるように、第1の測定期間321の間に試料濃度が変化する(ここでは増加する)。第1の測定期間321の部分331の間、試料を測定して試料の濃度を決定する。これは典型的に、部分331にわたる平均濃度であり、部分331の長さ(または開始及び終了時間)は調節可能である。通常、部分331は、第1の測定期間321の最後にある。
【0071】
これで基準ガスは、第1の測定期間321の部分331の間に測定された濃度で、第1の基準期間311の間に測定される。この基準ガス濃度341が示され、基準ガスの同位体比測定が行われる。
【0072】
次のステップである第2の測定期間322では、試料が再度測定され、この期間中に少なくとも1つの同位体比測定が行われ、第2の測定期間322の部分332の間に濃度測定が行われる。その後、第2の基準期間312が起こり、第2の測定期間322の部分332の間に決定された濃度において基準ガスの同位体比が測定される。この場合もまた、基準ガス濃度342が示される。
【0073】
第2の測定期間322の間に少なくとも1つの同位体比測定(及び好ましくは複数の測定)が行われたが、これらは望ましくは基準ガス同位体比測定値に対して較正される。これは、2つの隣接する基準ガス同位体比測定値341及び342の線形補間352を行うことによって達成され得る。第2の測定期間322の間の(積分時間に基づく)試料測定値の個別の各データ点(同位体比)が、線形補間352から決定された同位体比に対して参照される。各データ点において、試料のいかなる希釈も伴わない整合された濃度における準基準(quasi−reference)が利用可能である。したがって、この参照技術を使用すると試料濃度は失われず、少なくとも1つの試料同位体比測定値のより正確な較正を行うことができる。
【0074】
第3の測定期間323の間にこれが繰り返され、この期間中に少なくとも1つの同位体比測定が行われ、第3の測定期間323の部分333の間に濃度測定が行われる。次に、第3の基準期間313が起こり、第3の測定期間323の部分333の間に決定された濃度において基準ガスの同位体比が測定される(基準ガス濃度343が再度示される)。この場合もまた、第3の測定期間323の間に測定されるデータ点の較正に使用され得る、第2の基準ガス濃度342と第3の基準ガス濃度343との間の線形補間353が示される。
【0075】
最後に、第4の測定期間324が示され、この期間中に少なくとも1つの同位体比測定が行われ、第4の測定期間324の部分334の間に濃度測定が行われる。第4の基準期間314の間、(基準ガス濃度344によって示される)第4の測定期間324の部分334の間に決定された濃度において基準ガスの同位体比が測定される。第3の基準ガス濃度343と第4の基準ガス濃度344との間の別の線形補間354が、第4の測定期間324の間に測定されたデータ点の較正のために使用される。
【0076】
いくつかの用途(異なる濃度レベルにおける複数の入力ポートなど)では、線形補間技術は使用されない場合がある。この場合、各基準期間311、312、313、314の間に測定される基準の濃度は、全試料測定時間にわたる試料濃度の平均と整合する。換言すれば、部分331、332、333、334は、それぞれの測定期間321、322、323、324の本質的に100%となる。試料の同位体比は、決定された濃度で測定されたときの基準の同位体比測定値のみを使用して較正される(事後参照(post−referencing)または非ブラケティング技術として知られる)。それにもかかわらず、基準濃度は測定される試料濃度に整合される。
【0077】
濃度測定値の較正及び内部較正も実施される。流量制御器は、実用標準を接続した後に較正される。広範囲にわたる複数の較正を回避するため、測定中にシステムが自己較正する。
【0078】
上記のように、試料濃度と実用標準濃度とを整合させるために、機器からの濃度の未較正の生値が整合される。したがって、望ましい自己較正の要件は、測定される実用標準の生の濃度が、同じ実用標準の設定値と整合することである。実用標準が測定される度に、感知器の未較正の生値に基づいて補正因子が更新される。次の参照には、最新の更新がなされた因子が適用される。例えば(図5を参照して上記に例示された例を使用して)、基準ガスの濃度も初期基準期間310の間に測定され、これが初めに選択され濃度と比較される。補正因子は、選択された(名目上の)基準濃度と、測定された基準濃度との比に基づいて決定される。次に、この補正因子が、使用される第1の基準濃度の選択においてその後使用される第1の基準期間311。これは、一実施例として以下に例示される。基準強度のための強度と、試料について測定された強度との整合が、代替として有効であり得る。
【0079】
本実施例は、架空の試料濃度を用いるワークフロー、及び上記の手法概要を使用する際の基準濃度の挙動を示す。始めは、本実施例は、実用標準濃度の設定値と、実用標準の測定された濃度との不良な整合を示す。上に提案された自己学習型較正技術の使用により、基準濃度値は、最終的な試料濃度値に近づく。ここからわかるように、補正因子は、各試料及び基準濃度測定値によって反復的に改善される。
【表1】
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【0080】
インデックス1では、デフォルト濃度またはユーザの推定において第1の基準が測定されている。基準ガス濃度の設定値は380ppmであり、本実施例の測定値は392ppmである。したがって、0.969の補正因子が算出される。インデックス2は、480ppmの測定濃度を有する第1の試料測定値を示す。インデックス3では、補正因子480ppm*0.969=465.3ppmを適用することによって、濃度の設定点が最後の試料の濃度に設定されている。補正因子は、各基準測定の際に更新される。基準濃度を算出するため、最後の試料測定からの濃度を、最後の補正因子と一緒に使用する。
【0081】
ここで、1つより多くの試料が測定される第2の実施例を示す。基準ガス濃度は、試料Bに対する基準である。この場合もまた、補正因子は、行われた測定に基づいて反復的に調節される。
【表2】
[この文献は図面を表示できません]
【0082】
ここで図6Aを参照すると、時間と対比した試料ガスの例示的ガス濃度のプロットが示されている。試料ガス濃度は、著しく変動することがわかる。
【0083】
次に図6Bを参照すると、機器の生値610;図6Aに示される試料ガスの濃度と整合された濃度を有する基準ガスに関して測定された同位体比測定値を使用した、第1の較正値620;ならびに、図6Aに示される試料ガスの濃度と整合された濃度を有する基準ガスに関して測定された同位体比測定値、及び上記の線形補間を使用した、第2の較正値630を示す、試料ガスに関する実施例の同位体比デルタ(δ13C)のプロットが示されている。620及び630においてプロットされた同位体比値は、値610と同じスケールで示されているが、互いと明確に区別され得るようにy軸に沿って相殺されている。機器の生値610は、試料ガス濃度の変動に従って変動することがわかる。実際に、これらの測定値の標準偏差は0.48パーミルである。しかしながら、線形補間を用いずに較正された第1のδ13C値620と、線形補間を用いて較正された第2のδ13C値630との両方が、機器の生値よりも著しく少ない変動を示す。さらに、線形補間を用いて較正された第2のδ13C値630は、0.07パーミルの標準偏差を有し、これは、0.13パーミルの標準偏差を有し、かつ試料ガス濃度のそれと整合する時間の小さな変動を示す、線形補間を用いずに較正された第1のδ13C値620よりも、著しく少ない変動である。
【0084】
これらの技術の多くの変形が用いられ得る。任意の実施形態では、部分331、332、333、334は、それぞれの測定期間321、322、323、324の最終的な部分である必要はなく、合計の10%、20%、25%、30%、50%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%であり得る。部分は調節され得、例えば濃度の変化率に依存して、またはユーザの好みに基づいて、測定期間間で変動し得る。また、必要な場合には、測定期間の長さは、濃度の変化率またはユーザの好みに基づいて、(場合により動的に)変更され得る。補間が使用される場合、線形または非線形補間が可能であり得る。種々の補間または曲線整合技術が用いられ得る。
【0085】
CO分析システムの例を用いて(すなわち、試料及び基準ガスの両方としてCOを用いて)本発明を説明してきたが、光学分光法もしくは質量分析法または他の分光法技術のいずれかによる同位体比分析に感受性のある、任意の他のガスが用いられ得ることを理解されたい。それらの場合、基準ガスはCOではなく、分析される特定の試料ガスと同じガスとなる。同様に、説明してきた分光器は光学分光器の好ましい例であるが、質量分析器または他の分光器が等しく用いられ得ることを理解されたい。
【0086】
分析物ガスのいくつかの例、及びそれらの測定可能な同位体比のうちのいくつかのリストを、以下に提示する。
【表3】
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【0087】
キャリアガスは、空気、窒素、ヘリウム、もしくはアルゴン、または前述のもののうち任意の2つ以上の混合物から選択され得る。
図1
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図2
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図3
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図4A
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図4B
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図5
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図6A
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図6B
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