特許第6297171号(P6297171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6297171コンタクト要素およびコンタクト要素とケーブルのアセンブリを製造する方法
<>
  • 特許6297171-コンタクト要素およびコンタクト要素とケーブルのアセンブリを製造する方法 図000002
  • 特許6297171-コンタクト要素およびコンタクト要素とケーブルのアセンブリを製造する方法 図000003
  • 特許6297171-コンタクト要素およびコンタクト要素とケーブルのアセンブリを製造する方法 図000004
  • 特許6297171-コンタクト要素およびコンタクト要素とケーブルのアセンブリを製造する方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297171
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】コンタクト要素およびコンタクト要素とケーブルのアセンブリを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20180312BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20180312BHJP
   H01R 13/10 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   H01R13/42 H
   H01R13/52 301E
   H01R13/10 A
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-567246(P2016-567246)
(86)(22)【出願日】2015年3月13日
(65)【公表番号】特表2017-519332(P2017-519332A)
(43)【公表日】2017年7月13日
(86)【国際出願番号】EP2015055270
(87)【国際公開番号】WO2015169487
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2016年11月9日
(31)【優先権主張番号】102014208772.4
(32)【優先日】2014年5月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ ヴィットマン
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/054783(WO,A1)
【文献】 特開2011−165324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/42
H01R 13/10
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸線(150)に沿って延在するコンタクト本体(200)と、
前記長手軸線(150)に沿って延在する、前記コンタクト本体(200)に接続されたケーブル保持体(400)であって、前記ケーブル保持体(400)は、該ケーブル保持体(400)にケーブル(500)を固定するための少なくとも1つの保持部分(410)を有する、ケーブル保持体(400)と、
保護要素(300)と、
を有するコンタクト要素であって、
前記保護要素は、前記長手軸線(150)に沿って第1位置(P1)から第2位置(P2)へと移動可能であり、
前記保護要素(300)は、前記第2位置(P2)では前記ケーブル保持体(400)を覆っており
前記コンタクト本体(200)は、係止要素(270)を有し、
前記係止要素(270)は、外側に向かってばね弾性を有することができ、コンタクトハウジング内に係止させるために適しており、
前記保護要素(300)が前記第1位置(P1)にある場合には、前記係止要素(270)は、前記保護要素(300)によって覆われており、且つ、前記係止要素(270)に、前記長手軸線を横切る方向で前記コンタクト本体(200)に向かって予荷重が加えられており、
前記保護要素(300)が前記第2位置(P2)にある場合には、前記係止要素(270)は、前記保護要素(300)から露出されており、且つ、前記コンタクト本体(200)から外側に向かって突出している、
ことを特徴とするコンタクト要素。
【請求項2】
前記保護要素(300)は、少なくとも前記第1位置(P1)では、前記コンタクト本体(200)に支持されている、
請求項1記載のコンタクト要素。
【請求項3】
前記保護要素(300)は、前記第2位置(P2)では、少なくとも前記コンタクト本体(200)と前記保持部分(410)との間の領域において前記ケーブル保持体(400)を覆っている、
請求項1又は2記載のコンタクト要素。
【請求項4】
前記保護要素(300)は、前記第2位置(P2)では、少なくとも前記コンタクト本体(200)と前記保持部分(410)との間の領域において前記ケーブル保持体(400)を完全に覆っている、
請求項3記載のコンタクト要素。
【請求項5】
前記コンタクト本体(200)は、前記ケーブル保持体(400)に面した端部に少なくとも1つのロック要素(230)を有し、
前記保護要素(300)は、前記ロック要素(230)に対応する相手側ロック要素(330)を有し、
前記ロック要素(230)は、前記保護要素(300)が前記第2位置(P2)にある場合に、前記保護要素(300)が前記長手軸線(150)の方向で前記コンタクト本体(200)に固定されているように、前記相手側ロック要素(330)と機械的に協働する、
請求項1から4のいずれか1項記載のコンタクト要素。
【請求項6】
前記ロック要素(230)は、前記保護要素(300)が前記第2位置(P2)にある場合に、前記保護要素(300)が前記長手軸線(150)の方向で前記コンタクト本体(200)に固定されているように、前記相手側ロック要素(330)と機械的に形状係合的に協働する、
請求項5記載のコンタクト要素。
【請求項7】
前記保護要素(300)は、外被形状に構成されており、突き合わせ接続部(350)を有し、前記第1位置(P1)において前記突き合わせ接続部(350)が開いている場合には、前記コンタクト本体(200)を取り囲んでおり、前記第2位置(P2)において前記突き合わせ接続部(350)が閉じられている場合には、前記ケーブル保持体(400)を半径方向で見て全周にわたって取り囲んでいる、
請求項1から6のいずれか1項記載のコンタクト要素。
【請求項8】
前記保護要素(300)が前記第2位置に(P2)にある場合には、前記保護要素(300)の保護要素外側周壁(314)は、コンタクト本体外側周壁(214)に同一平面を成して続いている、
請求項1から7のいずれか1項記載のコンタクト要素。
【請求項9】
ケーブル(500)を用意するステップと、
コンタクト要素(100)を用意するステップであって、前記コンタクト要素(100)は、長手軸線(150)に沿って延在するコンタクト本体(200)を有し、前記コンタクト要素(100)は、前記長手軸線(150)に沿って延在する、前記コンタクト本体(200)に接続されたケーブル保持体(400)を有し、前記ケーブル保持体(400)は、該ケーブル保持体(400)に前記ケーブル(500)を固定するための少なくとも1つの保持部分(410)を有し、前記コンタクト要素(100)は、保護要素(300)を有前記コンタクト本体(200)は、係止要素(270)を有し、前記係止要素(270)は、外側に向かってばね弾性を有することができ、コンタクトハウジング内に係止させるために適しており、前記保護要素(300)が前記第1位置(P1)にある場合には、前記係止要素(270)は、前記保護要素(300)によって覆われており、且つ、前記係止要素(270)に、前記長手軸線を横切る方向で前記コンタクト本体(200)に向かって予荷重が加えられており、前記保護要素(300)が前記第2位置(P2)にある場合には、前記係止要素(270)は、前記保護要素(300)から露出されており、且つ、前記コンタクト本体(200)から外側に向かって突出している、
ステップと、
前記ケーブル(500)を、前記ケーブル保持体(400)の前記保持部分(410)に固定するステップと、
を有する、コンタクト要素とケーブルのアセンブリを製造する方法であって、
前記ケーブル(500)を固定する前記ステップの後に、前記保護要素(300)を前記長手軸線(150)に沿って第1位置(P1)から第2位置(P2)に移動させ、
これによって前記保護要素(300)は、前記第2位置(P2)において前記ケーブル保持体(400)を覆う、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記ケーブル(500)を前記ケーブル保持体(400)の前記保持部分(410)に固定するステップでは、前記ケーブル(500)の絶縁除去された部分(502)のリッツ線(520)を前記ケーブル保持体(400)の前記保持部分(410)に固定し、
前記保護要素(300)は、前記第2位置(P2)において前記ケーブル(500)の前記絶縁除去された部分(502)の前記リッツ線(520)を覆う、
請求項記載の方法。
【請求項11】
前記保護要素(300)は、前記第1位置(P1)では前記コンタクト本体(200)を取り囲み、
前記保護要素(300)は、前記コンタクト本体(200)のコンタクト本体外側周壁(214)を介して滑るように前記第2位置(P2)へと移動可能である、
請求項又は10記載の方法。
【請求項12】
前記保護要素(300)は、前記第1位置(P1)では前記コンタクト本体(200)を外被形状の形態で取り囲む、
請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
プラグコネクタハウジング又はコンタクトハウジングにコンタクト要素が差し込まれる、多極式のプラグコネクタの場合には、ケーブルに沿った媒体の侵入に対してプラグコネクタを密封するために、シールリップを有するマットシールを使用することが多い。マットシールは、1つのコンタクト要素につき、それぞれ1つの開口部を含む。コンタクト要素は、一般的にコンタクト本体と、保持部分を備えるケーブル保持体とを有する。保持部分には、例えばリッツ線クリンプ領域と、場合によってはさらに絶縁体クリンプ領域も設けられており、これらの領域において、コンタクト要素にケーブルが固定される。
【0002】
このようなコンタクト要素は、例えば独国特許出願公開第102011078093号明細書に記載されている。
【0003】
本発明の開示
本発明は、コンタクト要素をプラグコネクタに装着させる際にはまず、マットシールにコンタクト要素のコンタクト本体が貫通挿入され、その後、リッツ線クリンプ領域と、場合によっては絶縁体クリンプ領域とが貫通挿入され、やがて最後には、ケーブル絶縁体がシーリングの開口部の幾何形状部によって取り囲まれてシール作用が形成される、という認識に基づいている。この場合には、シール作用を悪化させないために、貫通挿入時にコンタクト要素によってマットシールのシールリップを損傷しないことが重要である。
【0004】
このような損傷を回避するためには、コンタクト本体をできるだけ滑らかで、充分に丸み付けられた外側輪郭を有するように構成することが有利である。しかしながら、保持領域、例えばクリンプ領域の形状は、固定プロセス、例えばクリンププロセスの要求によって著しく制限されていることが多く、マットシールのシールリップの損傷が確実に回避されるようにその形状を最適化することは、わずかにしか実現することができない。
【0005】
この場合には望ましくないことに、コンタクト要素をマットシールに貫通挿入する際に、コンタクト要素の鋭利な領域によって、又は、コンタクト本体とリッツ線クリンプ領域との間に発生する著しいリッツ線の撚り乱れ(英語:bushing)によって、シールリップの損傷が引き起こされることがある。リッツ線端部がリッツ線クリンプ領域によって完全に取り囲まれるように、コンタクト本体とリッツ線クリンプ領域との間におけるリッツ線の余長を短縮することは、望ましくない。なぜならリッツ線の余長は、リッツ線が半径方向で見て全周にわたって包囲されるように正しく固定されているかどうかを監視するために利用されるからである。
【0006】
従って、コンタクト要素をマットシールに貫通挿入する際におけるシールリップの損傷を、簡単に低コストに確実に回避するコンタクト要素を提供するという需要が存在しうる。
【0007】
本発明の利点
この需要は、各独立請求項に記載された本発明の対象によって満たすことができる。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0008】
以下、本発明の複数の実施形態に基づく装置、及び装置を製造する方法の特徴、細部、及び可能な利点について詳細に説明する。
【0009】
本発明の1つの態様によれば、コンタクト要素をマットシールに貫通挿入する際におけるマットシールの損傷を、確実に阻止することができるようにしたコンタクト要素が提案される。
【0010】
このことは、コンタクト要素が、長手軸線に沿って延在するコンタクト本体と、前記長手軸線に沿って延在する、前記コンタクト本体に接続されたケーブル保持体とを有し、前記ケーブル保持体は、該ケーブル保持体にケーブルを固定するための少なくとも1つの保持部分を有する、ことによって実現される。前記コンタクト要素はさらに、保護要素を有する。本発明によれば、前記保護要素は、前記長手軸線に沿って第1位置から第2位置へと移動可能であり、前記保護要素は、前記第2位置では前記ケーブル保持体を覆っている。
【0011】
従来技術に比べて、上記のコンタクト要素が有する利点は、保護要素が第1位置にある場合に、保持部分、例えばリッツ線クリンプ部分と、場合によってはコンタクト要素のケーブル保持体の絶縁体クリンプ部分とが、自由にアクセス可能になっており、これによってケーブルを、簡単且つ確実にコンタクト要素に固定すること可能であるということにある。保護要素を第2位置へとスライドさせることによってケーブル保持体が覆われる。これによって有利には、例えばリッツ線の余長が存在しうるまさにその領域、又は、例えば折り曲げられたクリンプタブによって鋭利な箇所が形成されうるまさにその領域が、覆われることとなる。従って、保護要素が第2位置にある状態でコンタクト要素がマットシールに貫通挿入される場合には、有利にはこのコンタクト要素の、好ましくは滑らかで一体的な外側周壁だけが露出されていることとなる。リッツ線の余長及び鋭利な縁部は覆い隠されているので、マットシールのシールリップが損傷される可能性はもはやない。
【0012】
第1位置は、コンタクト要素をマットシールに貫通挿入する方向に見て、第2位置よりも前に配置することができる。換言すれば、第1位置は、コンタクト要素がマットシールに差し込まれる際にはまずこの第1位置がマットシールに到達し、その後に初めて第2位置がマットシールに到達するように配置されている。
【0013】
提案するコンタクト要素において有利にはさらに、保護要素を長手軸線に沿って動かすことにより、さらなる圧着工程や熱工程を含まず、さらにはケーブル装着工程後に追加で取り付ける又は組み立てるべき構成要素も含まない簡単な取り付けステップで、保護機能を実現することができる。それどころか、コンタクト要素がまだケーブルに接続されていない状態において、すなわちコンタクト要素が製造された直後において、既にこのコンタクト要素に保護要素を設けておくことができ、そうすると、例えばケーブルが固定された後にこの保護要素を第2位置へとスライドさせるだけでよくなる。これによって有利には、迅速な取り付けステップが実現される。さらには、保護要素が第2位置に移動したかどうか、ひいてはコンタクト要素がマットシールに損傷なく貫通挿入できる状態になったかどうかを、例えばケーブルを取り付けた後に手動で又は自動的に確認することが可能である。この場合には保護要素の位置をチェックするだけでよく、例えば個々のリッツ線が飛び出しているかどうか−このことは、保護要素が第2位置にある場合には自動的にもはや不可能となっている−をチェックする必要はない。
【0014】
さらに有利には、提案するコンタクト要素によれば、ケーブルを固定させるための新しい技術は必要なく、すなわち公知の技術を使用することが可能である。
【0015】
さらに有利には、提案するコンタクト要素によれば、リッツ線の過剰な余長を検出すべく行われる面倒な品質コントロールを省略することができる。従って、ケーブルの装着を、例えばケーブル製造業者のようなサプライヤーに任せることが可能となり、しかも、このサプライヤーの元で面倒なプロセス把握又は面倒な品質コントロールを実施する必要はない。
【0016】
コンタクト要素は、例えば打ち抜き曲げ部材として製造することができる。好ましくは、コンタクト要素は、例えば電流を良好に伝導する金属領域を有する。
【0017】
保護要素は、好ましくは金属から形成されており、このようにすると、第2位置において、コンタクト要素を介して伝送される電気信号に対する電磁的な遮蔽作用ももたらされる。しかしながら保護要素を、例えばプラスチック又はガラスのような別の任意の材料から形成すること、又は、複合材料から形成することも可能である。
【0018】
前記保護要素は、少なくとも第1位置では、前記コンタクト本体に支持されている。これによって有利には、コンタクト要素の製造後に保護要素が存在することを簡単にチェックすることができる。コンタクト本体はさらに、搬送時、取り付け時、及び、保護要素を第2位置へとスライドさせる際に、保護要素のための頑強な支えを提供する。これによってさらに有利には、保護要素が第1位置にある場合に、ケーブル保持体と保持部分とが自由にアクセス可能であること、及び、保護要素によってケーブルの固定が阻害されないことを保証することもできる。
【0019】
前記保護要素は、前記第2位置では、少なくとも前記コンタクト本体と前記保持部分との間の領域において前記ケーブル保持体を覆っており、特に前記ケーブル保持体を完全に覆っている。これによって有利には、固定プロセス後に当該領域に位置する、ケーブルのリッツ線の遠位の端部は、もはやコンタクト要素の外側周壁から長手軸線を横切る方向に突出せず、保護要素によって覆われる。これによって、コンタクト要素をマットシールに貫通挿入する際におけるマットシールの損傷が確実に阻止される。
【0020】
ケーブルの固定は、ケーブルのクリンプ(圧着)とすることができ、この際には、絶縁除去されたケーブルのリッツ線の遠位の端部を、例えばコンタクト本体と保持部分との間に配置することができる。しかしながら、溶接プロセス、特に超音波溶接プロセス又は抵抗溶接プロセスとすることも可能である。ろう接プロセス又は接着プロセスを使用することも可能であり、この場合には、ケーブルの導電性の部分が、保持部分にろう接又は接着される。この場合には、保持部分の領域における鋭利な又は剛性の要素、例えば冷却されたろう部材又はリッツ線の残り部分が、コンタクト要素の長手軸線を横切る方向に外側に向かって、突出することがある。これらの鋭利な又は剛性の要素は、コンタクト要素を長手軸線に沿って狭細の開口部に貫通挿入する際に、この開口部の内側周壁を損傷してしまうおそれがある。保持部分とコンタクト本体との間の領域を、第2位置にある保持要素によって覆うことにより、この危険性は除去されるか、又は少なくとも著しく低減される。これによってさらに有利には、組立作業員にとって、このようなリッツ線の余長又は鋭利な要素によって指、手、又は他の箇所を負傷する危険性が最小化される。
【0021】
換言すれば、プラグコネクタにおいて、留めるべきケーブルのリッツ線が一般的に終端する可能性がある領域、又は、ろう接プロセスの、冷却されたろう部材が存在する可能性がある領域に、第2位置にある保護要素が設けられている。保護要素は、その構造的な構成又は配置に基づいて、リッツ線端部を外側に向かって折れ曲がることから保護するか、又は、保護要素は、外側に向かって折れ曲がったリッツ線端部を第2位置において覆うことによって危険を伴わないものにする。このようにして、リッツ線のこのような端部が、プラグコネクタのコンタクト本体から側方に突出することが阻止される。
【0022】
本発明の1つの発展形態によれば、前記コンタクト本体は、前記ケーブル保持体に面した端部に少なくとも1つのロック要素を有し、前記保護要素は、前記ロック要素に対応する相手側ロック要素を有し、前記ロック要素は、前記保護要素が前記第2位置にある場合に、前記相手側ロック要素と機械的に協働して、特に形状係合的に協働して、前記保護要素が、前記長手軸線の方向に前記コンタクト本体に固定されるようにする。
【0023】
これによって有利には、保護要素は、第1位置にある場合には、軸線方向に又は長手軸線の方向に簡単に移動可能、例えばスライド可能となり、第2位置にある場合には、ロック要素と相手側ロック要素の解除なしに第2位置から軸線方向に移動することは不可能となる。これによって保護要素は、例えばマットシール又は狭細の開口部に貫通挿入されている間に意図せずスライドしてしまうことから保護されている。
【0024】
このようにして、マットシール又は狭細の開口部に貫通挿入されている間に、鋭利な要素、又は、リッツ線の、貫通挿入方向とは反対方向に向いた遠位の端部が、保護要素によるカバーから露出して、例えばマットシール又は開口部の内壁を損傷してしまう可能性が、確実に阻止される。
【0025】
これによって一般的に、保護要素が第2位置を超えて移動し過ぎることを阻止することができる。ロック要素と相手側ロック要素とからなるこのような係止機構はさらに、ロックされた状態において有利には、保護要素とコンタクト本体との実質的に隙間のない当接を保証することができ、これによって保護要素とコンタクト本体との特に滑らかな1つの共通の外側輪郭がもたらされる。
【0026】
ロック要素及び相手側ロック要素は、例えば係止突起及び係止ノッチとすることができるか、若しくは、例えばコンタクト本体又は保護要素におけるキノコ形の凹部、及び、コンタクト本体の周壁又は保護要素の周壁から突出した突出部のような、別の互いに相補的な構造とすることができる。好ましくは、ロック要素及び相手側ロック要素は、ロックされた状態において形状係合的に互いに結合されている。例えばメンテナンス上の理由から保護要素を再び第1位置へと移動させるために、ロック要素と相手側ロック要素とを互いに再び解除可能に構成することができる。
【0027】
1つの実施形態によれば、前記保護要素は、外被形状に構成されており、突き合わせ接続部を有し、前記第1位置において前記突き合わせ接続部が開いている場合には、前記コンタクト本体を取り囲んでおり、前記第2位置において前記突き合わせ接続部が実質的に閉じられている場合には、前記ケーブル保持体を半径方向で見て全周にわたって取り囲んでいる。
【0028】
換言すれば、コンタクト本体は、工場出荷状態においては、スリーブ形状に構成された保護要素又は保護スリーブによって密接に取り囲まれた状態となっているように構成することができる。この場合には、保護要素は、機械的な応力が加わった状態にある。なぜなら、この保護要素は、例えばコンタクト本体の形状に一致する断面を有する形状を開け広げることによって形成されたからである。このことを可能にするために、保護要素は、長手方向に沿ったスリットを有することができ、すなわち突き合わせ接続部を有することができ、これによって、突き合わせ接続部を簡単に開け広げることができる。外被形状又はスリーブ形状に構成されたこのような保護要素は、ケーブルの固定工程、例えばクリンプ工程が完了した後に、後方に向かって、すなわち保護要素の第2位置へと保持領域の方向にスライド又は移動させることができる。保護要素とコンタクト本体とがもはや重なりを有さなくなると直ぐに、突き合わせ接続部が充分に又は完全に閉じ合わされることによって、保護要素は自身の元々の形状に収まる。このようにして、保護要素が第2位置へと移動された状態のコンタクト要素は、鋭利な縁部、突出したワイヤ端部、又は突出したリッツ線端部などを有さない外側輪郭を有する。その結果、マットシールのシールリップ又は他の狭細の開口部の内壁を損傷することなく、コンタクト要素をマットシールのシールリップ又は他の狭細の開口部に貫通挿入することが可能となる。この滑らかな外側輪郭は、コンタクト要素を再び取り外す際にも存在しており、そうして、例えばコンタクト要素をマットシール又は狭細の開口部から引き抜く際にも、シールリップ又は狭細の開口部の内壁が損傷されないようにしている。
【0029】
前記保護要素が前記第2位置にある場合には、前記保護要素の保護要素外側周壁は、コンタクト本体外側周壁に同一平面を成して続いている。これによって有利には、保護要素、又は保護要素の、コンタクト本体と保護要素とから形成される部分の、特に滑らかで、バリや隙間のない外側輪郭がもたらされる。これによって、マットシールの損傷の危険性が特に著しく低減される。
【0030】
別の1つの実施形態によれば、前記コンタクト本体は、係止要素を有し、前記係止要素は、外側に向かってばね弾性を有することができ、コンタクトハウジング内に係止させるために適している。これによって有利には、コンタクト要素をプラグコネクタ内に確実に安定的に係止させることができ、これによってプラグコネクタからの意図しない解除が阻止される。また、このような係止によれば有利には、コンタクト要素は、長手軸線に沿ってほんのわずかな遊びしか有さなくなり、これによってコンタクト要素とシールリップとの摩耗が最小化される。
【0031】
係止要素は、例えば、コンタクト要素の差し込み方向とは反対方向に延在する少なくとも1つの係止ランスによって構成することができ、係止ランスの自由端部は、差し込み方向を横切る方向に外側に向かってコンタクト本体から突出している。
【0032】
1つの実施形態によれば、前記保護要素が前記第1位置にある場合には、前記係止要素は、前記保護要素によって覆われており、且つ、前記係止要素は、前記長手軸線を横切る方向で前記コンタクト本体に向かって予荷重が加えられており、前記保護要素が前記第2位置にある場合には、前記係止要素は、前記保護要素から露出されており、且つ、前記コンタクト本体から外側に向かって突出している。
【0033】
換言すると、係止要素、例えば係止ランスは、工場出荷状態では保護要素によってコンタクト本体に押さえ付けておくことができ、保護要素が自身の第2位置へと後方に移動又はスライドされて初めて、スナップ式に解放される。保護要素のスライドバック又は移動は、例えばケーブル製造業者の元で実施することができる。保護要素のスライドバックが実施されていない場合には、コンタクト本体の領域におけるコンタクト要素の外径は、コンタクト本体そのものの外径よりも大きい。なぜなら、コンタクト本体に保護要素が当接しているからである。従って、このコンタクト要素は、外径が比較的大きくなっているので装着させることができないか、又は、それでもなお寸法的状況に基づいて装着が可能である場合には、このコンタクト要素は、プラグコネクタの、該コンタクト要素を取り付けるべきコンタクトハウジング内で係止することができない。なぜなら、係止要素は、保護要素が第1位置にある限りこの保護要素によって取り囲まれているからである。これによって有利には、保護要素の位置の視覚的なチェックの他に、コンタクト要素をプラグコネクタに装着する工程の際に、保護要素が本当に所定の第2位置にあったかどうかを検出することが可能である。コンタクト要素が係止されない場合には、保護要素が第2位置にスライドされていなかったということである。クラッチプラグコネクタに係止させるためのブレードコネクタ、又は、他のクリンプされたコンタクトも、同様に構成することができる。
【0034】
本発明の第2の態様によれば、コンタクト要素とケーブルのアセンブリを製造する方法が提案される。当該方法は、
・ケーブルを用意するステップと、
・コンタクト要素を用意するステップであって、前記コンタクト要素は、長手軸線に沿って延在するコンタクト本体を有し、前記コンタクト要素は、前記長手軸線に沿って延在する、前記コンタクト本体に接続されたケーブル保持体を有し、前記ケーブル保持体は、該ケーブル保持体に前記ケーブルを固定するための少なくとも1つの保持部分を有し、前記コンタクト要素は、保護要素を有する、ステップと、
・前記ケーブル、特に前記ケーブルの絶縁除去された部分のリッツ線を、前記ケーブル保持体の前記保持部分に固定するステップと、
を有する。
この場合、前記ケーブルを固定する前記ステップの後に、前記保護要素を前記長手軸線に沿って第1位置から第2位置に移動させ、これによって前記保護要素は、前記第2位置において前記ケーブル保持体を覆い、特に前記ケーブルの前記絶縁除去された部分の前記リッツ線を覆う。
【0035】
換言すれば、ケーブルを固定した後、例えば外被形状に構成された保護要素、及び/又は、スリーブ形状を有する保護要素を、コンタクト要素の差込方向とは反対方向に後方へとスライドバックさせ、その後、第2位置において、コンタクト本体の後方に場合によって存在する可能性がある鋭利な要素又はリッツ線の鋭利な端部を、スリーブ状に取り囲む又は覆う。保護要素をスライドバックさせるステップは、例えばケーブル製造業者の元で、コンタクト要素にケーブルを固定して電気的に接続させるステップと、コンタクト要素をプラグコネクタ内に装着するステップとの間に実施される。スライドバックさせるステップは、組立作業員によって手動で実施することも、又は自動的に実施することも可能であり、例えば、自動固定機の処理ステーションにおいて、又は、自動固定機とは別個の自動スライドバック機において実施することが可能である。自動固定機は、例えば自動クリンプ機、又はろう接ステーション、又は接着ステーションとすることができる。
【0036】
従来技術に比べて、本方法によれば、コンタクト要素とケーブルのアセンブリをプラグコネクタに装着させる後続の工程において、コンタクト要素によって例えば貫通挿入されなければならないマットシールが、突出したリッツ線又は鋭利な要素によってより確実に損傷されなくなる。さらには、保護要素の移動は、圧着装置に比べて特に簡単且つ低コストの装置によって実施することができる。さらには、移動ステップの後に続く品質コントロールを簡単に視覚的に実施することが可能である。すなわち、コンタクト要素を露出させるために保護要素の第2位置への移動をチェックすれば充分である。個々のリッツ線の監視、自由なリッツ線とコンタクト本体の外側輪郭との間隔測定、及び、リッツ線端部の圧着の品質は、必要ない。これによって有利には、コンタクト要素とケーブルのアセンブリの製造を、サプライヤー又はケーブル製造業者の元で問題なく実施することができ、しかも、広範囲の品質保証ステップ又はプロセス知識の伝達を実施する必要はない。
【0037】
本方法の1つの発展形態によれば、前記保護要素は、前記第1位置では前記コンタクト本体を取り囲み、特に外被形状の形態で取り囲み、前記保護要素は、前記コンタクト本体のコンタクト本体外側周壁を介して滑るように前記第2位置へと移動可能である。この発展形態によれば、保護要素を自身の第2位置へと特に簡単にスライドさせることが可能である。この場合、コンタクト本体は、保護要素のために一種のガイドレールのように機能する。コンタクト本体を、好ましくは滑らかな外側周壁上で滑るようにスライドさせることによって、保護要素をわずかな労力で確実に長手軸線の方向に導いて自身の第2位置へと移動させることが可能である。
【0038】
図面
本発明のさらなる特徴及び利点は、当業者には添付図面を参照した例示的な実施形態の以下の記載から読み取ることができる。但し、これらの実施形態は、本発明を限定するために意図されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】保護要素が第1位置にある状態における、本発明の第1実施形態に基づくコンタクト要素の斜視図である。
図2】保護要素が第2位置に移動された状態における、図1のコンタクト要素の斜視図である。
図3a】保護要素が第1位置にある状態における、本発明の第2実施形態に基づくコンタクト要素の断面図である。
図3b】保護要素が第2位置に移動された状態における、図3aのコンタクト要素の断面図である。
【0040】
全ての図面は、本発明の実施例に基づく本発明に係る装置及びその構成部材を、概略的にのみ図示したものである。特に図面では、間隔及び寸法の関係性は縮尺通りに再現されていない。複数の異なる図面において、対応する要素同士には同じ参照符号が付されている。
【0041】
図1及び2には、コンタクト要素100が図示されており、このコンタクト要素100は、例えば薄板金属から打ち抜き・曲げ加工プロセスによって製造される。コンタクト要素100は、長手軸線150に沿って延在するコンタクト本体200を有する。コンタクト本体200は、中空円筒形に構成することができ、例えば、内壁212と外壁214とを備える壁部210を有する中空の円柱の形状に構成することができる。コンタクト本体は、例えば導電性材料から、好ましくは金属からなる。しかしながらこのコンタクト本体200は、長手軸線150を横切る方向の断面において楕円形又は矩形の形状を有していてもよく、又は、一般的に多角形の断面を有していてもよい。
【0042】
コンタクト要素100はさらに、コンタクト本体200に接続されたケーブル保持体400を有し、このケーブル保持体400は、長手軸線150に沿って延在している。ケーブル保持体400は、ネック部分450又はネック領域450を介してコンタクト本体に接続させることができる。
【0043】
ケーブル保持体400及びネック部分450は、好ましくは金属又は導電性材料から形成されている。
【0044】
ケーブル保持体400は、ケーブル500をケーブル保持体400に固定させるための少なくとも1つの保持部分410を有する。ケーブルは、絶縁領域502と絶縁除去領域504とを有する。絶縁領域502では、ケーブルがケーブル絶縁体510を有しており、絶縁除去領域504では、個々のリッツ線520又はワイヤ520の遠位の端部522がケーブル絶縁体510から突出している。
【0045】
ケーブル保持体400は、クリンプ部分402として構成することができ、このクリンプ部分402では、例えば保持部分410は、ケーブル500の絶縁除去されたワイヤ520又はリッツ線520が圧着によって保持部分410に固定されるワイヤクリンプ領域412として構成されている。このためにワイヤクリンプ領域412は、少なくとも1つのワイヤクリンプタブ414を有し、このワイヤクリンプタブ414は、リッツ線クリンプを形成するために使用される。保持部分410はさらに、ケーブルクリンプ部分420を有することができ、このケーブルクリンプ部分420は、ケーブル500のケーブル絶縁体510をコンタクト要素100の保持部分410に固定させるために使用される。このためにケーブルクリンプ部分420には、少なくとも1つのケーブルクリンプタブ422が形成されており、このケーブルクリンプタブ422によってケーブル絶縁体510を保持部分510に押し付けて固定させることができる。このような絶縁体クリンプによって、ワイヤクリンプ領域412におけるリッツ線クリンプの張力緩和が引き起こされる。ここには図示されていない別の実施例では、ケーブル500を例えばろう接又は接着によってコンタクト要素100に電気的及び機械的に固定させてもよい。ケーブルのリッツ線520が保持部分410に固定される際には、リッツ線520の遠位の端部522は、ケーブルクリンプタブ414によっては把持されずに、例えば保持部分410とコンタクト本体200との間のネック部分450に配置されることとなる。リッツ線520のこの遠位の端部522は、長手軸線150を横切る方向に外側に向かって突出することもあり得る。リッツ線の520のこの遠位の端部522は、コンタクト要素100を長手軸線150に沿ってマットシール(図示せず)を通して差し込む際に、マットシールのシールリップを損傷するおそれがある。
【0046】
コンタクト要素200をプラグコネクタのコンタクトハウジング内に取り付ける際に、組立作業員がこのようなコンタクト要素100の鋭利な箇所又は突出したリッツ線520で指、手、又は四肢をこのように損傷又は負傷することを回避するために、コンタクト要素100は、保護要素300を有する。保護要素300は、長手軸線150に沿って図1に図示された第1位置(P1)から図2に図示された第2位置(P2)へと移動可能となるように、且つ、第2位置(P2)においてケーブル保持体400を覆うように構成されている。
【0047】
図1では、保護要素300は、自身の第1位置(P1)に位置している。この状態では、ケーブル500が取り付けられる前のコンタクト要素100が用意される。見て取れるように、保護要素300は、周壁310を備える外被形状又はスリーブ形状の形態を有する。周壁310には滑らかな、実質的にバリのない外側周壁314が形成されている。保護要素300は、該保護要素300の内側周壁312によってコンタクト本体200の例えば滑らかな、実質的にバリのない外側周壁214を密接に取り囲むように、且つ、機械的な予荷重が加えられた状態となるように構成されている。このために保護要素300は、長手軸線150に沿って例えば突き合わせ接続部350又はスリット350を有する。この状態では、保護要素300を、比較的小さい労力で長手軸線150に沿って後方へ、すなわち保持部分410の方向へと滑るようにスライドさせることが可能である。それと同時に、保護要素300が第1位置(P1)にある場合には、保持部分410及びケーブルクリンプ部分420は露出していて容易にアクセス可能となっている。換言すれば、保護要素300は、自身の第1位置(P1)では、ケーブル500をケーブル保持体400に固定することを妨げない。すなわち、ケーブル保持体400は自由にアクセス可能である。
【0048】
図2には、完全に取り付けられた状態におけるコンタクト要素100が図示されている。このためにはまず、コンタクト要素100に、例えばクリンプ工程又はろう接工程又は接着工程によってケーブル500が電気的及び機械的に固定された。その後、保護要素300が、一種のガイド要素又はガイドレールとして機能する、コンタクト本体の外側周壁214を介して、自身の第2位置(P2)へと滑るように移動された。例えば、手動でのスライド、又は機械によって行われる。第2位置(P2)では、保護要素300の周壁310がネック部分450を覆っており、図示された実施形態では、保持部分410又はワイヤクリンプ部分412も完全に覆っている。
【0049】
保護要素300が、後方へとスライドされてコンタクト本体200の、保持部分410の方向に向いた端部を超えると直ぐに、保護要素300の機械的な予荷重によって保護要素300の直径が縮小する。これによって、突き合わせ接続部350又はスリット350も閉じ合わされる。保護要素300が第2位置(P2)にある場合には、この保護要素300は、完全にコンタクト本体200の後方に移動されている。この状態では、コンタクト本体200の外側周壁214は、半径方向で見て全周にわたって、保護要素300の外側周壁314に軸線方向に実質的に同一平面を成して続いており、且つ、保護要素300の外側周壁314に実質的に隙間なく続いている。全体として滑らかな、バリのない外側輪郭が形成されており、この外側輪郭によって、このように構成されたコンタクト要素100を貫通挿入する際における、マットシールの密接するシールリップに対する損傷の危険性が最小化されている。従って、保持部分410は原則的に、外側が滑らかなスリーブの内部に隠されている。
【0050】
しかしながら保護要素300が、自身の第2位置(P2)において、少なくともコンタクト要素100のうち、長手軸線150を横切る方向にリッツ線520が突出する可能性のある部分を覆っていれば、保護要素300の機能に関しては充分である。
【0051】
保護要素300が、ネック部分450又は保持部分410の周りを完全には取り囲まずに、例えば半径方向に見て周に沿って90°〜270°の範囲で取り囲んでいるだけでも、保護要素300の機能に関しては充分である。コンタクト本体200の外側周壁214をガイドレールのようなものとして機能させることも、必須ではない。保護要素300を、コンタクト本体200に配置されたガイド要素の上に、例えばレールの上に載置して、このガイド要素に沿って第1位置(P1)から第2位置(P2)へと移動可能にすることも可能である。
【0052】
図1及び2では、コンタクト本体200の、保持部分400の方向に向いた端部に、軸線方向に突出したロック要素230が形成されている。このロック要素230は、図示された実施形態では、キノコ形の係止突起232の形態を有している。この係止突起232は、コンタクト本体200の周壁210の一部を選択的に延長させたものである。保護要素300には、ロック要素230に対して相補的な相手側ロック要素330が形成されている。この相手側ロック要素330は、図示された実施形態では、保護要素300の壁310に形成されたキノコ形の係止切欠部の形態を有している。
【0053】
一般的に、ロック要素230を係止突起232として構成し、相手側ロック要素330を係止ノッチ332として構成することができる。あるいはその逆に、ロック要素230を係止ノッチ332として構成し、相手側ロック要素330を係止突起232として構成することも可能である。
【0054】
保護要素300が第2位置(P2)にある場合には、ロック要素230を、例えば形状係合的に相手側ロック要素330に結合させることができ、このようにしてロック要素230は、保護要素300が、長手軸線150の方向にこれ以上後方又は前方へとスライド又はスライドバックすることを阻止することができる。これにより、コンタクト要素100を長手軸線150に沿って例えばマットシールの狭細の開口部に貫通挿入する際に、保護要素300に対して比較的大きい保持摩擦力又は滑り摩擦力が作用したとしても、保護要素300が第2位置(P2)に留まること、及び、保護要素300によって隠されている鋭利な要素(例えばクリンプタブ414)又はリッツ線520の遠位の端部522が露出されないことが補償されている。
【0055】
ロック要素230及び相手側ロック要素330は、例えば、コンタクト本体200の周壁210の外側面にラジアル方向に設けられた溝と、保護要素300の周壁310の内側面に設けられた、ラジアル方向に包囲するばねとすることも可能である。
【0056】
図3a及び3bには、コンタクト要素100の別の1つの実施形態が図示されている。ここでは、コンタクト本体200に、例えば係止ランスの形態で構成された係止要素270がさらに配置されている。係止要素270は、例えば保持部分410に面した自由端部272を有する。係止要素270は、コンタクト本体から外側に向かって突出するように弾性に予荷重が加えられている。係止要素270は、コンタクト要素100がプラグコネクタハウジングに差し込まれると、プラグコネクタハウジングのアンダーカット部の後方で逆鉤の形態で係止することができる。このようにしてコンタクト要素100を、プラグコネクタハウジング内に軸線方向に、すなわち長手軸線150の方向に、差し込み方向とは反対方向に固定することができる。長手軸線150に沿って見たときに係止要素270がコンタクト本体200と前方及び後方で境を接するように、すなわち換言すると、係止要素270がコンタクト本体200によって取り囲まれるように、コンタクト要素100を構成することも可能である。
【0057】
図示された実施形態では、係止要素270は、第1位置(P1)では、例えば外被形状に構成された保護要素300によって覆われている又は被覆されている。これによって係止要素270は、自身の弾性の予荷重に対抗して、コンタクト本体200の周壁210の方向に押圧される。このことは、外側に向かって突出した係止要素270同士が引っ掛かり合って損傷することなく、又は、外側に向かって突出した係止要素270が輸送時にケーブル500のケーブル絶縁体510を損傷させることなく、このように構成されたコンタクト要素100をこの状態で散荷として搬送することが可能となるという利点も有する。コンタクト本体の表面に例えば金又は銀のような貴金属製のコーティング若しくは腐食保護が設けられる実施例も存在しうる。ここでは、複数のコンタクト要素100を詰めて並べることによってこのコンタクト本体200の表面コーティングが損傷してしまうことは、有利には以下のようにして回避される。すなわち、製造直後の状態において、保護要素が、コンタクト本体200又はコンタクト本体の外側周壁210、若しくは外側周壁210の表面コーティングを、損傷から保護するのである。
【0058】
図3bには、保護要素300が自身の第2位置(P2)に移動されている状態が図示されている。見て取れるように、係止要素270は、自身の機械的な予荷重に従ってコンタクト本体から逆鉤形状に外側に向かって突出している。なぜなら、保護要素300は、図示された位置では、係止要素270の自由端部272をもはや取り囲んでいない、又は覆っていないからである。
【0059】
コンタクト要素100の別の1つの実施形態では、係止要素270の代わりに係止開口部を設けることも可能であり、この係止開口部にプラグコネクタの係止要素が係合する。コンタクト要素とプラグコネクタのこのような組み合わせは、“クリーンボディコンタクト”という用語でも知られている。このような実施形態では、保護要素300は、第1位置(P1)においてはコンタクト要素100の係止開口部を覆っており、これによって、保護要素300が第1位置(P1)にある場合にプラグコネクタをコンタクト要素100に係止させることも不可能となる。
【0060】
保護要素300によって係止要素270が覆われる場合にも、保護要素300によって係止開口部が覆われる場合にも、コンタクト要素100をプラグコネクタハウジング内に装着させる際に、保護要素が第2位置(P2)にスライドされているかどうかを監視する手段が提供される。つまり、第2位置(P2)にスライドされた状態においてのみ、コンタクト要素100をプラグコネクタハウジング内に係止させることができるのである。これによって、マットシールが損傷した可能性があったどうかを識別することが可能である。
【0061】
図3bにおいても良好に見て取れるように、保護要素300は、リッツ線の遠位の端部522を、ワイヤクリンプタブ414の、場合によっては鋭利な可能性がある領域と同じように覆っている。保護要素300はさらに、好ましくはケーブル絶縁体510よりもわずかに大きい外径を有しており、且つ、ケーブルクリンプタブ422はケーブル絶縁体510に食い込むように押し合わされるので、このように構成されたコンタクト要素100は、滑らかな、実質的にバリのない外側輪郭を有することとなり、このような外側輪郭によって、マットシールに貫通挿入する際におけるシールリップの損傷の可能性が最小化される。
【0062】
最後に、“有する”又はこれに類似の表現は、他の要素又はステップが設けられる可能性を排除すべきでないことに留意すべきである。さらには、“1つ(単数形)”が、複数の存在を排除しないことにも注意すべきである。さらに、複数の異なる実施形態に関連して説明した特徴同士を、互いに組み合わせることが可能である。さらに、請求項における参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈すべきではないことを述べておく。
【0063】
このように構成されたコンタクト要素100は、マットシールを備えるソケットコンタクト、特に極数の多いソケットコンタクトの形態のプラグコネクタにおいて使用するために適している。クラッチプラグコネクタに係止させるためのブレードコンタクトも、同様に構成することができる。一般的に、提案する実施形態は、クリンプ又はろう接又は接着されるケーブル又はリッツ線又はワイヤを備える全てのコンタクト要素のために適している。
図1
図2
図3a
図3b