特許第6297174号(P6297174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297174
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】レーザ加工機およびレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/04 20140101AFI20180312BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20180312BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20180312BHJP
   B23K 26/70 20140101ALI20180312BHJP
【FI】
   B23K26/04
   B23K26/03
   B23K26/08 Z
   B23K26/70
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-571651(P2016-571651)
(86)(22)【出願日】2015年1月30日
(86)【国際出願番号】JP2015052765
(87)【国際公開番号】WO2016121122
(87)【国際公開日】20160804
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】外山 博
(72)【発明者】
【氏名】別府 宗明
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−132646(JP,A)
【文献】 特開2008−264789(JP,A)
【文献】 特開2008−110348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/04
B23K 26/03
B23K 26/08
B23K 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルに載置されたワークとレーザ光を照射する光学ヘッドとを相対移動させ、ワークにレーザ光を照射してワークを加工するレーザ加工機において、
前記光学ヘッドに固定された光学センサと、
前記光学ヘッドに固定されたプローブと、
前記プローブで位置を測定する第1の測定基準と、前記光学センサで位置を測定する第2の測定基準と、前記レーザ光で加工痕を形成する加工部とを有し、前記第1と第2の測定基準は、同心に形成されている、または、両者のずれ量が予め求められているキャリブレーションユニットと、
を備えることを特徴としたレーザ加工機。
【請求項2】
前記キャリブレーションユニットが、
前記光学ヘッドが接触可能に設けられたタッチスイッチと、
前記第1の測定基準を提供する円筒状の本体部、および前記円筒状の本体部の内側に半径方向に広がり、前記第2の測定基準を提供するフランジ部を有したキャリブレーションリング集成体とを具備し、
前記加工部が前記本体部に着脱可能に挿入されるプレートを具備する請求項1に記載のレーザ加工機。
【請求項3】
前記フランジ部は、前記キャリブレーションリング集成体の円筒状の本体部に対して同心の円形の内周を有した環状に形成される請求項2に記載のレーザ加工機。
【請求項4】
前記第1の測定基準として、前記本体部の外周面に3つの測定点が選択され、
前記第2の測定基準として、前記フランジ部の内周に3つの測定点が選択される請求項3に記載のレーザ加工機。
【請求項5】
テーブルに載置されたワークとレーザ光を照射する光学ヘッドとを相対移動させ、ワークにレーザ光を照射してワークを加工するレーザ加工方法において、
前記テーブル側に固定され、同心に形成されている、または、ずれ量が予め求められている第1と第2の測定基準および加工部を有したキャリブレーションユニットを準備し、
前記レーザ光で前記キャリブレーションユニットの加工部に加工痕を加工し、
前記光学ヘッドに固定された光学センサで前記加工部の加工痕の位置および前記キャリブレーションユニットの第2の測定基準の位置を測定し、
前記光学ヘッドに固定されたプローブで前記キャリブレーションユニットの第1の測定基準の位置を測定し、
前記光学センサで測定した加工痕の位置および第2の測定基準の位置と、前記プローブで測定した第1の測定基準の位置とから、前記レーザ光の加工位置と前記プローブの測定位置とのずれ量を演算し、
前記演算したレーザ光の加工位置と前記プローブの測定位置とのずれ量、および前記プローブで測定した前記ワークの位置から前記ワークと前記レーザ光の加工位置との相対位置を求め、
前記求めた前記ワークと前記レーザ光の加工位置との相対位置に基づいて、前記テーブルと前記光学ヘッドとを相対移動させワークを加工することを特徴としたレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ加工機およびレーザ加工方法に関し、特にワークの寸法や位置を測定するタッチプローブを備えたレーザ加工機において、タッチプローブの位置をキャリブレーションするようにしたレーザ加工機およびレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、レーザ加工機にタッチプローブや静電容量センサを取り付け、ワークをレーザ加工機に取り付けた状態でワークの寸法や形状を測定するようにしたレーザ加工機が開発されている。例えば、特許文献1には、レーザ加工ヘッドの先端に静電容量センサを設け、この静電容量センサによりレーザ加工ヘッドの先端とワークとの間隙を制御するようにしたレーザ加工機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−220685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、タッチプローブや静電容量センサを備えたレーザ加工機では、タッチプローブや静電容量センサと、レーザ光を照射するレーザ加工ヘッドまたは光学ヘッドとの位置関係は、設計値として予め既知であると言えるが、タッチプローブや静電容量センサのレーザ加工ヘッドまたは光学ヘッドへの取り付けには、取り付け誤差を不可避的に含んでいる。特許文献1のレーザ加工機においても、レーザ加工ヘッドから照射されるレーザ光の光軸やレーザ加工ヘッドの先端のZ軸上の位置に対する静電容量センサの位置を測定していないので、静電容量センサによって測定したワークの寸法、形状には静電容量センサのレーザ加工ヘッドへの取り付け誤差に基づく誤差が含まれている。そうした誤差を含んだ測定結果は、加工精度を低下させる原因となっている。
【0005】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、レーザ光の光軸に対するタッチプローブの位置を測定し、高精度に加工できるようにしたレーザ加工機およびレーザ加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、テーブルに載置されたワークとレーザ光を照射する光学ヘッドとを相対移動させ、ワークにレーザ光を照射してワークを加工するレーザ加工機において、前記光学ヘッドに固定された光学センサと、前記光学ヘッドに固定されたプローブと、前記プローブで位置を測定する第1の測定基準と、前記光学センサで位置を測定する第2の測定基準と、前記レーザ光で加工痕を形成する加工部とを有し、前記第1と第2の測定基準は、同心に形成されている、または、両者のずれ量が予め求められているキャリブレーションユニットとを備えるレーザ加工機が提供される。
【0007】
更に、本発明によれば、テーブルに載置されたワークとレーザ光を照射する光学ヘッドとを相対移動させ、ワークにレーザ光を照射してワークを加工するレーザ加工方法において、前記テーブル側に固定され、同心に形成されている、または、ずれ量が予め求められている第1と第2の測定基準および加工部を有したキャリブレーションユニットを準備し、前記レーザ光で前記キャリブレーションユニットの加工部に加工痕を加工し、前記光学ヘッドに固定された光学センサで前記加工部の加工痕の位置および前記キャリブレーションユニットの第2の測定基準の位置を測定し、前記光学ヘッドに固定されたプローブで前記キャリブレーションユニットの第1の測定基準の位置を測定し、前記光学センサで測定した加工痕の位置および第2の測定基準の位置と、前記プローブで測定した第1の測定基準の位置とから、前記レーザ光の加工位置と前記プローブの測定位置とのずれ量を演算し、前記演算したレーザ光の加工位置と前記プローブの測定位置とのずれ量、および前記プローブで測定した前記ワークの位置から前記ワークと前記レーザ光の加工位置との相対位置を求め、前記求めた前記ワークと前記レーザ光の加工位置との相対位置に基づいて、前記テーブルと前記光学ヘッドとを相対移動させワークを加工するようにしたレーザ加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、測定基準の位置を光学センサとプローブとで測定すると共に、加工部にレーザ光で加工痕を形成して光学センサで加工痕の位置を測定することによって、レーザ光の加工位置とプローブの測定位置とのずれ量を演算し、演算したレーザ光の加工位置とプローブの測定位置とのずれ量、およびプローブで測定したワークの位置からワークとレーザ光の加工位置との相対位置を求め、求めたワークとレーザ光の加工位置との相対位置に基づいて、テーブルと光学ヘッドとを相対移動させ加工を行うことによって、精密にレーザ加工を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】光学ヘッドに取り付けたタッチプローブを備えたレーザ加工機の一例を示す略示断面図である。
図2】本発明の好ましい実施形態によるキャリブレーションリング集成体の斜視図である。
図3図2のキャリブレーションリング集成体をキャリブレーションカメラで撮像した画像であり、キャリブレーションカメラによる測定を説明する図である。
図4図2のキャリブレーションリング集成体の平面図であり、タッチプローブによる測定を説明する図である。
図5】本発明を適用するレーザ加工機の一例を示す斜視図である。
図6】本発明をウオータージェットレーザ加工機に適用した図1と同様の光学ヘッドの略示断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
本発明を適用するレーザ加工機の一例を示す図5を参照すると、レーザ加工機100は、ワークを取り付けるためのテーブル108と、X軸、Y軸、Z軸の直交3軸方向の送り装置(図示せず)によって該テーブル108に対して相対的に直線移動可能に設けられた光学ヘッド10を具備しており、該光学ヘッド10およびテーブル108は直方体状のカバー102によって包囲されている。カバー102は、左右方向(X軸方向)にスライド可能な安全扉106を有しており、該安全扉106を開くことによって、オペレーターは開口部104を通じて光学ヘッド10およびテーブル108へアクセス可能となる。テーブル108には、また、キャリブレーションユニット50が配設されている。
【0011】
また、カバー102の正面側壁には、レーザ加工機100のための操作盤110が取り付けられている。操作盤110は、レーザ加工機100の状態や動作を示すパラメータや、オペレーターに対する操作方法を教示するアイコン等を表示するディスプレイ112および各種操作ボタン114を有している。ディスプレイ112は、オペレーターが指でアイコンにタッチするとによってレーザ加工機100に対して様々な操作を行うことを可能とするタッチパネルとすることができる。また、操作盤110は制御装置を内蔵し、オペレーターの入力や、制御装置内に記憶されたプログラムに従ってレーザ加工機100を制御する。
【0012】
図1に一例として示す光学ヘッド10はレーザ照射ヘッド16を具備しており、該レーザ照射ヘッド16は、ハウジング12内に配設されレーザ発振器14からのレーザ光を光ファイバのような導光部材14aを介して受け取り、コリメーションレンズ18へ向けてレーザ光を照射する。光学ヘッド10のハウジング12の下端部には、下方へ向けて先細りに形成された円すい形の突出部12aが設けられており、該突出部12aの下端の頂点には、オリフィス12bが形成されている。
【0013】
レーザ照射ヘッド16からのレーザ光は、コリメーションレンズ18で平行光線となって、第1のミラー20によって第2のミラー22に向けて反射され、該第2のミラー22によってフォーカスレンズ24へ向けて反射される。フォーカスレンズ24で絞られたレーザ光は、ハウジング12のオリフィス12bを通してハウジング12の外部に照射される。このとき、光学ヘッド10が照射するレーザ光の光軸はZ軸に略平行となっている。
【0014】
光学ヘッド10は、また、図6に示すような、液体をノズルから噴射して形成される柱状の液体噴流にレーザ光を通してワークを加工するウオータージェットレーザ加工機であってもよい。なお、以下では、図6の光学ヘッド10において、図1の光学ヘッド10と同様の構成要素には同じ参照番号を付して、その詳細な説明は冗長を避けるために省略し、相違する部分のみ説明する。
【0015】
図6に示すウオータージェットレーザ加工機の光学ヘッド10は、図1の光学ヘッド10に加えて、ハウジング12の外部に液体、例えば水を噴射するためのノズルヘッド34を具備している。ノズルヘッド34は、水供給源30から管路32を介して水の供給を受ける中空状の部材である。ノズルヘッド34のテーブル108に対面する底壁にウォータジェットを噴出するノズル34bが設けられ、該底壁の反対側のフォーカスレンズ24に対面する上面にガラス等の透明な部材より成る窓34aが設けられている。ノズル34bは光学ヘッド10のハウジング12の底面に形成されているオリフィス12aを通じてハウジング12の外部に連通している。
【0016】
第1と第2のミラー20、22は平面状の反射面を有しており、該反射面の方向(反射面に垂直な方向)を調節し、光学ヘッド10から照射されるレーザ光の方向を調節可能となっている。また、第1と第2のミラー20、22、特にフォーカスレンズ24へ向けレーザ光を反射する第2のミラー22は、レーザ発振器14から照射されるレーザ光の波長に適合し、該レーザ光を反射し、かつ、該レーザ光の波長以外の波長の光を透過する誘電体多層膜を含んでいる。より詳細には、ガラス板にこうした誘電体多層膜を蒸着して形成されている。第2のミラー22を誘電体多層膜から形成することによって、オリフィス12bから照射されるレーザ光とオリフィス12bとの位置関係をアライメント調整カメラ26によって監視することが可能となっている。
【0017】
光学ヘッド10のハウジング12の下端部には、テーブル108に取り付けられたワーク(図示せず)の寸法や形状を測定するための接触子40aを有したタッチプローブ40と、光学センサとしてのキャリブレーションカメラ42とが取り付けられている。タッチプローブ40の接触子40aはZ軸方向に垂下されている。キャリブレーションカメラ42は、その光軸がZ軸方向に一致するように配向されている。
【0018】
キャリブレーションユニット50は、テーブル108上において、レーザ加工機100のX軸、Y軸、Z軸の直交3軸の送り装置によって、光学ヘッド10とテーブル108とを相対移動させることによって、光学ヘッド10に対面可能な位置に配置されている。キャリブレーションユニット50は、テーブル108に固定されるベース52、ベース52の上面に固定されるタッチスイッチ54およびキャリブレーションリング集成体60を具備している。タッチスイッチ54は、上端部に静電容量スイッチや無接点マイクロスイッチのような反応部54aを備えている。また、タッチスイッチ54の反応部54aは、キャリブレーションリング集成体60の加工部としてスロット62aに挿入されたプレート68の上面と同じ高さに配置されている。
【0019】
図2を参照すると、キャリブレーションリング集成体60は円筒状の本体部62と、該本体部62の内面から半径方向内側に広がる環状のフランジ部64と、本体部62の直径方向に延びる加工部としてのプレート68とを具備している。本体部62は精密に加工された円筒外周面を有している。フランジ部64の内周64aは、精密に円形に加工されている。また、キャリブレーションリング集成体60の円筒状の本体部62と、フランジ部64の内周64aは精密に同心となるように形成されている。
【0020】
本体部62の直径を挟んで両側部に一対のスロット62aが形成されており、該スロット62aに直方体状のプレート68が加工部として着脱可能に挿入されるようになっている。スロット62aは、該スロット62aに挿入されるプレート68の上面がフランジ部64の下面に密着できるように配置されている。プレート68は、上面が光学ヘッド10から照射されるレーザ光を反射する反射面となるように表面が仕上げられた例えばステンレス鋼のような金属部材より成る。
【0021】
以下、本実施形態の作用を説明する。
先ず、オペレーターが操作盤110のキャリブレーションスタートボタンを押下すると、光学ヘッド10がレーザ加工機100のX軸、Y軸、Z軸の送り装置によってキャリブレーション位置へ向けて移動を開始する。キャリブレーション位置では、光学ヘッド10は、キャリブレーションユニット50のタッチスイッチ54の上方に配置される。次いで、光学ヘッド10のハウジング12の突出部12aの先端(下端)がタッチスイッチ54の反応部54aに接触するまでZ軸沿いに下動する。突出部12aの先端がタッチスイッチ54の反応部54aに接触すると、光学ヘッド10の下動動作が停止され、そのときのZ軸座標がレーザ加工機100の制御装置(図示せず)に記憶される。
【0022】
次いで、タッチプローブ40の接触子40aがキャリブレーションユニット50のタッチスイッチ54の上方に配置される。次いで、接触子40aをタッチスイッチ54に接触するまでZ軸方向に下動する。接触子40aの先端がタッチスイッチ54の反応部54aに接触すると、光学ヘッド10の下動動作が停止され、そのときのZ座標がレーザ加工機100の制御装置に記憶される。また、レーザ光の焦点位置は、予め光学ヘッド10のハウジング12の突出部12aの先端を基準に調整されており、突出部12aの先端からのレーザ光の焦点位置までのZ軸方向の距離は既知である。こうして求められた突出部12aの先端がタッチスイッチ54に接触したときのZ座標と、接触子40aの先端がタッチスイッチ54に接触したときのZ座標、および突出部12aの先端からレーザ光の焦点位置までのZ軸方向の距離に基づいて、レーザ光の焦点位置と接触子40aとのZ軸方向のずれ量が演算により求められる。
【0023】
次いで、光学ヘッド10をキャリブレーションリング集成体60のプレート68の上方へ移動させる。次いで、光学ヘッド10からレーザ光が照射される。照射されたレーザ光はアライメント調整カメラ26で撮像され、オリフィス12bと共にレーザスポットとして操作盤110のディスプレイ112に表示される。オペレーターは、ディスプレイ112に表示されたレーザスポットをオリフィス12bの画像に一致させるように、第1と第2のミラー20、22の配向を調節することによって、光学ヘッド10のオリフィス12bに対するレーザ光のアライメントが調整される。
【0024】
次いで、レーザ光を照射しながらテーブル108に対して光学ヘッド10をX軸方向およびY軸方向に送ることによって、加工部としてのプレート68の上面(反射面)に図3、4に示すような直交する2本の直線L1、L2が形成される。このときのレーザ光の出力は、プレート68の上面に直線L1、L2を加工できる程度に上述したレーザ光のアライメント調整のときの出力よりも高くなっている。直線L1、L2の交点Pとレーザ光とが一致する座標として、直線L2を加工するために送り装置でY軸方向に光学ヘッド10を直線送りしたときのX座標と、直線L1を加工するために送り装置でX軸方向に光学ヘッド10を直線送りしたときのY座標が制御装置に記憶される。
【0025】
次いで、キャリブレーションカメラ42によってプレート68の上面が撮像され、その画像がディスプレイ112に表示される。このとき、ディスプレイ112には、キャリブレーションカメラ42の視野の中心にキャリブレーションカメラ42の光軸を示すクロスラインLc1、Lc2(図3参照)が表示される。次いで、光学ヘッド10をテーブル108に対してX軸、Y軸方向に相対的に送り、クロスラインLc1、Lc2の交点Pcが、加工部に形成した加工痕としての直線L1、L2の交点Pに一致するように、光学ヘッド10が送り装置でX軸方向とY軸方向に位置決めされる。そのときのXY座標と、直線L1、L2の交点Pがレーザ光と一致する座標とから、XY平面内でのレーザ光の光軸とキャリブレーションカメラ42の光軸とのずれ量が演算により測定される。
【0026】
次いで、図3に示すように、キャリブレーションカメラ42のための測定基準点として、キャリブレーションリング集成体60のフランジ部64の内周64aに沿って3つの測定点Pc1、Pc2、Pc3が選択される。図3では、3つの測定点Pc1、Pc2、Pc3は、フランジ部64の内周に沿って等間隔に配置されているように図示されているが、本発明はこれに限定されず、3つの測定点Pc1、Pc2、Pc3はフランジ部64の内周に沿って任意の位置に選択することができる。キャリブレーションカメラ42が撮像した画像を表示するディスプレイ112には、既述したように、キャリブレーションカメラ42の光軸を示すクロスラインLc1、Lc2が表示される。該クロスラインLc1、Lc2の交点Pcを順次測定点Pc1、Pc2、Pc3の各々に合わせることによって、該3つの測定点Pc1、Pc2、Pc3の座標(xc1、yc1)、(xc2、yc2)、(xc3、yc3)が順次測定される。図3では、説明の都合上、測定点Pc1、Pc2、Pc3の上にクロスラインLc1、Lc2が、それぞれ重なった状態で図示されているが、実際には、クロスラインLc1、Lc2は1組だけ表示され、送り装置をX軸およびY軸方向に移動させて、測定点Pc1、Pc2、Pc3に順次一致させていく。測定点Pc1、Pc2、Pc3の座標は、光学ヘッド10の機械座標系、例えばX軸およびY軸のデジタルスケールの読みを用いることができる。3つの測定点Pc1、Pc2、Pc3を通過する円の中心の座標(xc、yc)は以下の式にて与えられる。
【数1】
【数2】
【0027】
次いで、図4に示すように、タッチプローブ40のための測定基準点として、キャリブレーションリング集成体60の本体部62の外周面においてZ軸方向に同じ高さにある3つの測定点Pp1、Pp2、Pp3が選択される。図4では、3つの測定点Pp1、Pp2、Pp3は、本体部62の外周面に沿って等間隔に配置されているように図示されているが、本発明はこれに限定されず、3つの測定点Pp1、Pp2、Pp3は、Z軸方向に同じ高さにあれば、本体部62の外周面に沿って任意の位置に選択することができる。
【0028】
タッチプローブ40の接触子40aをZ軸方向に一定に維持し、キャリブレーションリング集成体60の本体部62の外周面上の3つの測定点Pp1、Pp2、Pp3に接触子40aを順次接触させる。3つの測定点Pp1、Pp2、Pp3に接触子40aが接触したときのレーザ加工機100のX軸、Y軸のデジタルスケールの読みから、測定点Pp1、Pp2、Pp3の夫々の座標(xp1、yp1)、(xp2、yp2)、(xp3、yp3)が測定される。3つの測定点Pp1、Pp2、Pp3を通過する円の中心の座標(xp、yp)は以下の式にて与えられる。
【数3】
【数4】
【0029】
既述したように、キャリブレーションリング集成体60の円筒状の本体部62と、フランジ部64の内周64aは精密に同心となるように形成されているので、キャリブレーションカメラ42のための測定基準点Pc1、Pc2、Pc3を通る円の中心と、タッチプローブ40の接触子40aための測定基準点Pp1、Pp2、Pp3を通過する円の中心は、キャリブレーションリング集成体60の加工精度内で一致しなければならない。従って、測定基準点Pc1、Pc2、Pc3を通る円の中心座標(xc、yc)と、測定基準点Pp1、Pp2、Pp3を通過する円の中心座標(xp、yp)の偏差から、キャリブレーションカメラ42の光軸とタッチプローブ40の接触子40aとのXY平面内でのずれ量が演算により求められる。
【0030】
既述のように演算により求めたXY平面内でのレーザ光の光軸とキャリブレーションカメラ42の光軸とのずれ量と、XY平面内でのキャリブレーションカメラ42の光軸とタッチプローブ40とのずれ量から、タッチプローブ40によって測定されたワークの位置と、レーザ光の加工位置との相対位置を求めることができる。こうして求められたタッチプローブ40によって測定されたワークの位置と、レーザ光の加工位置との相対位置に基づいて、光学ヘッド10をテーブル108に対して相対移動させて加工を行うことによって、精密にレーザ加工を行うことが可能となる。
【0031】
本発明の実施の形態として、円筒状のキャリブレーションリング集成体60を一例として説明したが、キャリブレーションリング集成体60に代えて、YZ平面に平行な測定基準面と、XZ平面に平行な測定基準面で構成されるL字形または四角形の部材を用いてもよい。この場合、YZ平面に平行な測定基準面にタッチプローブ40の接触子40aを接触させてタッチプローブ40のX位置を求め、キャリブレーションカメラ42のクロスラインをYZ平面に平行な測定基準面に一致させてキャリブレーションカメラ42の光軸のX位置を求め、X軸方向のずれ量を演算することができる。Y軸方向もXZ平面に平行な測定基準面を用いれば同様に演算することができる。ただし、この場合、L字形または四角形をYZ平面に完全に平行な面を設置することは難しく、多少の傾き誤差が含まれる可能性がある。これに対して、円筒状のキャリブレーションリング集成体60は、Z軸周りの傾きの影響を受けないため、より高精度にずれ量を求めることができるという効果がある。
【0032】
また、本発明の実施形態として、キャリブレーションリング集成体60の円筒状の本体部62と、フランジ部64の内周64aとは同心にした例を説明したが、本体部62とフランジ部64の内周64aとが同心位置になくてもよい。その場合は、本体部62とフランジ部64の内周64aのずれ量を予め求めておき、演算する段階で本体部62とフランジ部64の内周64aのずれ量を加算すればよい。ただし、本体部62とフランジ部64の内周64aが同心に形成した方が演算が容易であり、またキャリブレーションリング集成体60を旋盤で製作する際に同心の方が精度よく加工できるとの利点がある。
【0033】
また、本発明の実施形態の光学センサとして、キャリブレーションカメラ42で撮像する例を説明したが、光学センサは、レーザ測長センサであってもよい。レーザ測長センサで計測する場合は、送り装置でX軸方向またはY軸方向に移動しながら走査し、変位の変化を検出する。プレート68上に形成された加工痕の直線L1、L2や、フランジ部64の内周64aの位置は、変位が変化する箇所として検出される。
【符号の説明】
【0034】
10 光学ヘッド
12 ハウジング
14 レーザ発振器
16 レーザ照射ヘッド
18 コリメーションレンズ
20 第1のミラー
22 第2のミラー
24 フォーカスレンズ
26 アライメント調整カメラ
30 水供給源
34 ノズルヘッド
34b ノズル
40 タッチプローブ
42 キャリブレーションカメラ
50 キャリブレーションユニット
54 タッチスイッチ
60 キャリブレーションリング集成体
62 本体部
64 フランジ部
68 プレート
100 レーザ加工機
108 テーブル
110 操作盤
112 ディスプレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6