(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297178
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】蛍光体、該蛍光体を含む発光デバイス及び該蛍光体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 11/66 20060101AFI20180312BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20180312BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
C09K11/66
H01L33/50
C09K11/08 B
【請求項の数】16
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-573742(P2016-573742)
(86)(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公表番号】特表2017-519871(P2017-519871A)
(43)【公表日】2017年7月20日
(86)【国際出願番号】CN2014080056
(87)【国際公開番号】WO2015192312
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2017年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジョンシー リウ
(72)【発明者】
【氏名】ティエンヨン リウ
(72)【発明者】
【氏名】シーピン ジン
【審査官】
古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−202044(JP,A)
【文献】
再公表特許第2011/115032(JP,A1)
【文献】
特開2013−127055(JP,A)
【文献】
特開2010−196075(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/050051(WO,A1)
【文献】
特表2012−503037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/66
C09K 11/08
H01L 33/50
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料Ca(Al12−x−y−zMgxGey)O19:(zMn4+)(式中、0<x、y、z<1)を含む、蛍光体。
【請求項2】
材料Ca(Al12−x−y−zMgxGey)O19:(zMn4+)(式中、0<x、y、z<1)からなる、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
0<y<0.016である、請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項4】
0.005≦y≦0.010である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項5】
0<x≦0.10である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項6】
0.02<x≦0.08である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項7】
0<z≦0.050である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項8】
x=0.04、y=0.008及びz=0.025である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項9】
蛍光体材料が単一の相にある、請求項1から8までのいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項10】
− 光を発生するための活性領域(4)を含む発光半導体層列(2)及び
− 請求項1から9までのいずれか1項に記載の蛍光体を含有するルミネセンス変換素子(3)
を含む、発光デバイス(1)。
【請求項11】
ルミネセンス変換素子(3)が発光半導体層列(2)によって生じた光のビーム経路に少なくとも1つの層又は小板として配置される、請求項10に記載の発光デバイス。
【請求項12】
ルミネセンス変換素子(3)がY3Al5O12:Ceを更に含む、請求項10又は11に記載の発光デバイス。
【請求項13】
Al(OH)3、CaCO3、Mg(OH)2・4MgCO3・6H2O、MnO2及びGeO2を原料として準備し、原料を少なくとも1500℃の温度で一緒に加熱する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項14】
温度が少なくとも1550℃である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
温度が少なくとも1600℃である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
原料を加熱前に混合粉末として準備する、請求項13から15までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
蛍光体、該蛍光体を含む発光デバイス及び該蛍光体の製造方法が記載されている。
【0002】
従来の白熱灯や放電光源と比較して、発光ダイオード(LED)は、省エネルギー、長寿命及び色調整の利点をもたらしており、これによりLEDの使用はより環境に配慮した技術に向かう傾向の一部として継続的に拡大している。多くのLED用途では、白色光を発生させるために、蛍光体が使用されており、紫外線を青色光、即ち、紫外、近紫外及び青色波長領域の少なくとも1つのスペクトル成分を有する光に変換する。従ってLED用途のための新しい蛍光体の設計と開発は非常に興味深い。
【0003】
従来のランプで通常使用されている蛍光体と比較して、LED蛍光体は、青色〜紫外線スペクトル領域で励起可能であり且つLED光源の高効率化に対処するために高い量子効率を示すべきである。温度上昇と共に輝度が大幅に低下せず且つ白色光の色座標が大きく変化しないように、温度急冷は避けるべきである。更に、LED蛍光体の安定性はLED照明システムの長寿命に対応しなければならず、このことは、例えば、老化作用による輝度低下が従来のランプ蛍光体に比べて遙かに小さくなければならないことを意味する。また、LED蛍光体は、湿度や他の環境に悪影響を及ぼす可能性のある物質に敏感であるべきではない。
【0004】
少なくとも1つの実施態様の課題は、発光ダイオードに関連して使用でき且つ赤色光を発する蛍光体を提供することである。更なる実施態様の課題は、蛍光体を含有する発光デバイス及び該発光体の製造方法を提供することである。
【0005】
これらの課題は、独立請求項の主題によって達成される。従属請求項(参照により明示的に本明細書に組み込まれる)は、有利な構成及び発展形に関する。
【0006】
少なくとも1つの実施態様によれば、例えば、発光ダイオードに関連して使用することができる蛍光体は、材料Ca(AlMgGe)
12O
19:Mn
4+を含む。従って、蛍光体は、Mn
4+で活性化された材料系であるCaAl
12O
19に基づいており、この材料は、結晶格子にMg及びGeを添加することによって変性される。特に、蛍光体は、Ca(Al
12−x−y−zMg
xGe
y)O
19:(zMn
4+)を含み、ここでx、y、zはMg、Ge及びMnの各モル分率を表し、0<x、y、z<1である。更に、蛍光体はCa(Al
12−x−y−zMg
xGe
y)O
19:(zMn
4+)からなり得る。
【0007】
これ以降では、例えば、本明細書に記載された蛍光体における原子の割合の数値などのパラメータの定量的な仕様は、与えられた数値の30%以下又は20%以下又は10%以下の偏差を含み得る。
【0008】
少なくとも1つの更なる実施態様によれば、本明細書に記載されたMn
4+で活性化されたCaAl
12O
19系の変性蛍光体が適しており、紫外〜青色の波長範囲の光、即ち、上記のように、紫外、近紫外及び青色の波長領域の少なくとも1つにおいてスペクトル成分を有する光を吸収し、且つ少なくとも約600nm〜700nmの波長範囲にスペクトル成分を有する赤色光を放出できるように具体化されている。このような吸収及び放出挙動は、紫外〜青色発光半導体層列を用いるLED用途に関して非常に有利であり得る。特に、吸収は、例えば460nm付近で起こり得る。更に、蛍光体の励起時に、650nm〜660nm、特に656nm付近の波長範囲にピーク波長を有する蛍光体によって光が放出され得る。
【0009】
本発明に記載された蛍光体の酸化物系のホスト材料は、例えばフッ化物系の材料と比較して、高い安定性を有し、通常の環境条件ではほとんど劣化せず、環境中に有毒物質を放出しない。下記のように、製造プロセスは、特殊な工具、高圧及び特別な雰囲気を必要とせず、安価な原料を使用することができるので本明細書に記載された蛍光体を低コストで製造することができる。本明細書に記載された蛍光体は、Mn
4+中心が線状発光とも呼ばれる狭帯域発光をもたらすので、窒化物及び酸窒化物に基づく赤色蛍光体と比べて、より良好な単色性をもたらし得る。
【0010】
少なくとも1つの更なる実施態様によれば、酸化状態2+を有するMg原子並びに酸化状態4+を有するGe原子は、結晶格子中のAl原子を酸化状態3+に置き換える。例えばMg原子に関して、本発明者らは、Mg
2+がCa
2+部位よりもAl
3+部位を置き換える時に特に有利であることを見出した。これは、Mn
4+が結晶の歪みを引き起こし得るAl
3+部位をも置き換えるという事実に起因し得る。このような歪みは、Mn
4+をMg
2+と組み合わせて使用することで同様に低減できる。なぜなら、Mg
2+のために結晶場がMn
4+ドーパントに更に適したものにされ、変換性能を高めることができるからである。本発明者らはまた、Mg原子を挿入するだけでなく、Ge原子をも結晶格子内に追加挿入することによって更なる改善が可能であることを見出した。なぜなら、Ge
4+を結晶格子内に挿入することにより、結晶場が更に変性してMn
4+ドーパントに更に一層適したものになり、このことが変換性能を更に向上させるからである。CaAl
12O
19結晶格子を変性するためにMgに関連してGeが特に有利であることが見出された。従って、Geを更に含む本明細書に記載された蛍光体は、未変性CaAl
12O
19:Mn
4+蛍光体及びCa(AlMg)
12O
19:Mn
4+蛍光体に比べて、より高い効率、従ってより良い変換性能をもたらす。
【0011】
少なくとも1つの更なる実施態様によれば、Ca(Al
12−x−y−zMg
xGe
y)O
19:(zMn
4+)を含む蛍光体の製造方法では、原料が提供される。特に、本方法は、好ましくは純粋な相としても示される単一固相において、固溶体としての蛍光体の製造に適している。更には、製造条件、例えば、原料、それらの相対濃度及び加工条件を、上記のように、Mg原子とGe原子を結晶格子中のAl原子と交換するように選択することができる。以下では、その目標を達成するための例示的な方法を説明する。
【0012】
上記及び下記の特徴及び実施態様は、それぞれ、蛍光体及び該蛍光体の製造方法の両方に関する。
【0013】
少なくとも1つの更なる実施態様によれば、原料として、Al(OH)
3、CaCO
3、Mg(OH)
2・4MgCO
3・6H
2O、MnO
2及びGeO
2が提供される。好ましくは、原料は高純度で提供される。更なる方法工程では、原料は、製造されるべき蛍光体の化学量論的組成に応じて計量され且つ適量で提供され得る。
【0014】
少なくとも1つの更なる実施態様によれば、原料は粉砕され、混合粉末が形成される。例えば、原料を、瑪瑙るつぼなどのるつぼで粉砕することができる。よく混合された粉末を提供するために、粉砕は一定時間、例えば少なくとも30分間行うことができる。
【0015】
少なくとも1つの更なる実施態様によれば、原料は、好ましくは混合粉末として、一緒に加熱される。加熱の手順は焼成とも呼ばれ得る。加熱工程では、原料、特に、例えばA1
2O
3るつぼなどの耐熱るつぼに入れることができる原料の混合粉末を炉内で加熱することができる。
【0016】
少なくとも1つの更なる実施態様によれば、好ましくは混合粉末としての原料は、少なくとも1500℃の温度、好ましくは少なくとも1550℃の温度、より好ましくは少なくとも1600℃の温度まで一緒に加熱される。目標温度に達すると、これを一定時間、例えば少なくとも4時間維持することができる。この間、原料は固溶体を形成し、これは好ましくは純粋な相を有する。本明細書に記載された蛍光体材料である加熱工程で得られた生成物は、製造された蛍光体の粉末を得るために、再び粉砕され得る。
【0017】
少なくとも1つの更なる実施態様によれば、Mgのモル分率xは、0.01以上、又は0.02以上、又は0.03以上である。更に、Mgのモル分率xは、0.10以下、又は0.8以下、又は0.6以下、又は0.5以下であり得る。特に好ましい実施態様では、xは0.04に等しい。
【0018】
少なくとも1つの更なる実施態様によれば、Geのモル分率yは、0.001以上、又は0.002以上、又は0.005以上、又は0.007以上である。更に、Geのモル分率yは、0.016未満、又は0.015以下、又は0.012以下、又は0.010以下、又は0.009以下であり得る。特に好ましい実施態様では、yは0.008に等しい。
【0019】
少なくとも1つの更なる実施態様によれば、Mnのモル分率zは、0.010以上、又は0.015以上、又は0.020以上である。更に、Mnのモル分率zは、0.050以下、又は0.040以下、又は0.035以下、又は0.030以下であり得る。特に好ましい実施態様では、zは0.025に等しい。
【0020】
少なくとも1つの更なる実施態様によれば、発光デバイスは、発光半導体層列と、材料Ca(Al
12−x−y−zMg
xGe
y)O
19:(zMn
4+)を有する本明細書に記載された蛍光体を含むルミネセンス変換素子と、を含む。発光半導体層列は、光を発生させるための活性領域を有し、例えばエピタキシャル成長した半導体層列を有する発光半導体チップとして具体化され得る。このように、発光デバイスは、本明細書に記載された蛍光体を有する発光ダイオードとして具体化され得る。
【0021】
例えば、発光半導体層列は、InGaAlNに基づいて具体化され得る。InGaAlN系半導体層列及びInGaAlN系発光半導体チップは、特に、異なる個別層から構成されており、III−V族化合物半導体材料系In
xAl
yGa
1−x−yN(ここで、0≦x≦1、0≦y≦1及びx+y≦1)からの材料を含む少なくとも1つの個別層を有する半導体層列を含む。InGaAlNをベースとする少なくとも1つの活性領域を有する半導体層列を有する発光チップは、例えば、好ましくは紫外〜緑色の波長範囲の電磁放射を放射し得る。
【0022】
少なくとも1つの更なる実施態様によれば、ルミネセンス変換素子は、少なくとも1つの層又は小板として形成されていてよく、これらは蛍光体を含む又は蛍光体からなり且つ発光半導体層列によって生じた光のビーム経路に配置される。例えば、蛍光体は、マトリックス材料中に粉末として配置することができ、その際、マトリックス材料はプラスチック材料又はセラミック材料であり得る。あるいは、蛍光体自体が、固体又は粉末状層として又は小板として形成され得る。
【0023】
少なくとも1つの更なる実施態様によれば、ルミネセンス変換素子は、好ましくは紫外〜青色スペクトル領域の光を緑色〜黄色スペクトル領域の光に変換する追加の蛍光体を更に含む。例えば、追加の蛍光体はY
3Al
5O
12:Ce(YAG:Ce)を含み得る。YAG:Ceは、LED用途の技術要求の大部分を満たすことができるので、追加の蛍光体として非常に有利であり得る。しかしながら、YAG:Ceは、紫外〜青色発光半導体層列に関連して、高い演色評価数(CRI)を有する暖色系の白色光を発生させるために使用することができない。従って、暖色系の白色光を発生させるために、本発明に記載された蛍光体の形の赤色発光蛍光体をYAG:Ceと組み合わせて使用することができる。
【0024】
材料Ca(Al
12−x−y−zMg
xGe
y)O
19:(zMn
4+)を有する本明細書に記載された蛍光体とは対照的に、当該技術分野で知られた他の赤色発光蛍光体は、本明細書に記載された蛍光体と比較して幾つかの欠点がある:青色光によって励起することができ、更にLED用途の通常の作業条件下で高い性能を示し得る窒化物及び酸窒化物系赤色蛍光体は、合成プロセスが複雑であり且つ高温及び高圧を必要とするという欠点がある。更に、このような蛍光体はかなり高価である。シリケート系赤色蛍光体は、通常、600nmを下回る波長で、従って人間の目があまり敏感ではないスペクトル領域で発光する。また、例えば460nm付近の青色スペクトル領域に励起波長を有するこのような蛍光体を生成することは困難であり得る。Mn
4+ドープフッ化物蛍光体は、通常、あまり安定ではなく且つ環境に有害である。
【0025】
更なる特徴、利点及び便宜性は、図と関連した例示的な実施態様の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、1つの実施態様による蛍光体の製造方法の方法工程の概略図を示す。
【
図2】
図2は、更なる実施態様による蛍光体試料の実験結果を示す。
【
図3】
図3は、更なる実施態様による蛍光体試料の実験結果を示す。
【
図4】
図4は、更なる実施態様による蛍光体試料の実験結果を示す。
【
図5】
図5は、他の実施態様による蛍光体を用いた発光デバイスの模式図を示す。
【0027】
同一の、同じタイプの及び/又は同じ動作をする構成要素には、図において同じ参照符号を付す。
【0028】
図1では、Ca(Al
12−x−y−zMg
xGe
y)O
19:(zMn
4+)(ここで0<x、y、z<1)を含む蛍光体の製造方法の実施態様を示す。
【0029】
第1の方法工程11では、高純度のAl(OH)
3、CaCO
3、Mg(OH)
2・4MgCO
3・6H
2O、MnO
2及びGeO
2が原料として提供される。原料は、仕上げ蛍光体におけるそれらの個々の分率に応じてそれぞれの量が計量され、提供される。
【0030】
更なる方法工程12では、原料は、例えば瑪瑙るつぼなどのるつぼで粉砕することにより粉末に形成される。よく混合された原料の粉末を提供するために、粉砕は例えば30分超行われ得る。
【0031】
その後、原料の混合粉末は、例えばA1
2O
3るつぼなどの耐熱るつぼ内に移され、炉に入れられ、これにより更なる方法工程13で、原料は1500℃以上、好ましくは1550℃以上、特に好ましくは1600℃以上の目標温度に加熱される。加熱温度が目標温度に達したら、温度が一定に維持され、混合粉末が、十分に長い時間、例えば約4時間焼成され、その間に、最終生成物として蛍光体が形成される。
【0032】
更なる方法工程14(省略してもよい)では、生成物が粉砕されて蛍光体粉末を形成することができる。
【0033】
記載された方法によって製造された蛍光体は、材料Ca(Al
12−x−y−zMg
xGe
y)O
19:(zMn
4+)(ここで0<x、y、z<1)を含み、好ましくは該材料からなる。提供された原料の相対量に応じて、パラメータx、y及びzは、好ましくは以下の範囲にある:
− 0<x≦0.10又は0.01≦x≦0.08又は0.02≦x≦0.06又は0.03≦x≦0.05又はx=0.04;
− 0<y<0.016又は0.001≦y≦0.015又は0.002≦y≦0.012又は0.004≦y≦0.012又は0.005≦y≦0.010又は0.007≦y≦0.009又はy=0.008、
− 0<z≦0.050又は0.010≦z≦0.040又は0.015≦z≦0.035又は0.020≦z≦0.030又はz=0.025。
【0034】
図2〜4は、材料Ca(Al
12−x−y−zMg
xGe
y)O
19:(zMn
4+)を含み且つ上記の方法によって製造された蛍光体試料の実験測定値を示しており、その際、様々な製造パラメータを変えた。
【0035】
図2では、材料Ca(Al
11.927Mg
0.04Ge
0.008)O
19:(0.025Mn
4+)(即ち、パラメータx=0.04、y=0.008及びz=0.025)を有する蛍光体の様々な試料のX線回折(XRD)測定21、22及び23が示されており、その際、様々な試料を異なる焼成温度で製造した。比較のため、CaAl
12O
19(38−04790)のJCPDS(粉末回折標準合同委員会)規格も示し、参照番号24を付した。測定21、22及び23は、それぞれ1500℃、1550℃及び1600℃の温度で4時間焼成した粉末試料に属す。
【0036】
1500℃の目標温度で焼成した蛍光体試料の測定21では、A1
2O
3の回折ピーク(アスタリスク(
*)を付す)が確認でき、このことはA1
2O
3によって形成された第2相の存在を示唆している。1550℃の目標温度で焼成した蛍光体試料の測定22では、A1
2O
3の第2相のピークは既に小さく、1600℃の目標温度で焼成した蛍光体試料の測定23では、第2相の検出が見出されず、このことは蛍光体が単一の相、即ち、純粋な相で生成されたことを示す。
【0037】
図3は、材料Ca(Al
11.927Mg
0.04Ge
0.008)O
19:0.025Mn
4+を有する幾つかの蛍光体試料のそれぞれの発光強度I(任意の単位)の測定31、32、33を示し、その際、様々な試料を再び異なる焼成温度で製造した。
図2に示される測定結果について説明したように、測定31、32、33は、それぞれ、1500℃、1550℃及び1600℃の温度で4時間焼成した粉末試料に属した。励起波長は460nmであった。
【0038】
最高の発光強度は1600℃の温度で焼成した試料で達した。従って、測定33に属する試料のより高い相純度は、より高い性能をもたらす。
【0039】
純度が増すにつれて蛍光体の変換性能が向上するので、試験される蛍光体試料を製造するために
図4に示す測定については1600℃の焼成温度及び4時間の加熱時間を選択した。
【0040】
図3は、横軸に示した異なるGe濃度xを有する複数の蛍光体試料の発光強度I(任意単位)の測定結果を示す。特に、蛍光体試料は、材料Ca(Al
12−x−y−zMg
xGe
y)O
19:zMn
4+(ここでx=0.04及びz=0.025であるのに対してGe濃度yは0.005、0.008、0.010及び0.015であるように選択した)を用いて製造した。比較のため、Geを含まない蛍光体試料、即ち、y=0の蛍光体についても調べた。0.005のGe濃度では、蛍光体の発光強度が約25%増加することが分かった。更に、x=0.008の場合、y=0.005であれば、蛍光体の相対発光強度は2.2倍を超えて劇的に増加する。他方では、約0.016のGe濃度を有する蛍光体試料の発光強度は、Geを含まない試料の発光強度とほぼ同じであるのに対して、0.010のGe濃度の場合、相対発光強度は、0.005のGe濃度の場合と同じである。最良の試料の量子効率は46%の高さであると測定された。この値は、例えば、類似の条件下で測定した、Mn
4+でドープした材料3.5MgO・0.5MgF2・GeO
2を有する市販のフッ化物系蛍光体の約45%という量子効率よりも高いので、本明細書に記載された蛍光体を使用して市販の蛍光体を置き換えることができる。更には、本明細書に記載された蛍光体は、市販の蛍光体よりも遙かに低コストである。
【0041】
図2〜4に示す測定は、特に、本明細書に記載された蛍光体の結晶格子内にGe原子を導入し、適切な製造条件を選択することによって、蛍光体の性能が、当該技術分野で知られた蛍光体と比較して有意に向上し得ることを明確に示す。更に、結晶格子中にGeを導入しても、固相は未変性CaAl
12O
19:Mn
4+蛍光体と比較して変化せず、このことは本明細書に記載された蛍光体が固溶体であることを示す。本明細書に記載された蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトルを、未変性CaAl
12O
19:Mn
4+蛍光体のそれぞれのスペクトルと比較すると、どちらのスペクトルもGeの結晶格子中への添加のためにピークの相対強度及び位置に関して変化しないので、スペクトルの青色又は赤色のシフトは存在しない。従って、本明細書に記載された蛍光体のスペクトル特性は、開示されたGe濃度とは無関係であり、本明細書に記載された蛍光体は依然として青色光によって励起され、深赤色スペクトル領域で発光することができるが、蛍光体の変換性能はGe濃度に応じて高めることができる。また、製造方法は、高圧も特別な気圧も必要とされないので極めて単純である。
【0042】
図5では、発光デバイス1は、更なる実施態様に従って示されている。発光デバイス1は、発光半導体層列2と、材料Ca(Al
12−x−y−zMg
xGe
y)O
19:(zMn
4+)(ここで0<x、y、z<1)を有する本明細書に記載された蛍光体を含むルミネセンス変換素子3と、を含む。特に、ルミネセンス変換素子3は、前述の図及び実施態様に関連して説明したように蛍光体を含み得る。
【0043】
発光半導体層列2は、光を発生させるための活性領域4を有し、例えば、エピタキシャル成長した半導体層列を有する発光半導体チップとして具体化され得る。特に、発光デバイス1は、本明細書に記載された蛍光体を有する発光ダイオードとして具体化され得る。
【0044】
発光半導体層列2は、III−V族化合物半導体材料系In
xAl
yGa
1−x−yN(ここで0≦x≦1、0≦y≦1且つx+y≦1)に基づき且つ紫外〜緑色光を発するように具体化されている。特に、発光半導体層列2は、例えば約460nmの波長の青色光を発するように具体化され得る。
【0045】
発光半導体層列は、半導体層が堆積された基板5を更に含み得る。基板5は、電気絶縁材料又は半導体材料、例えば上述したような化合物半導体材料系を含み得る。例えば、基板は、サファイア、GaAs、GaP、GaN、InP、SiC、Si及び/又はGeを含み得るか又はこのような材料で構成され得る。
【0046】
半導体層列2は、活性領域4として、従来のpn接合、ダブルヘテロ構造、単一量子井戸構造(SQW構造)又は多重量子井戸構造(MQW構造)を形成する層又は層スタックを有し得る。更に、半導体層列2は更に、非ドープ、nドープ及びpドープの半導体層(これらは層6及び層7により純粋に例示的に示されている)、並びに例えば、電極、パッシベーション層及び光学層を含み得るが、発光半導体層列の一般的な構造は当業者に知られているので、これらは詳細に記載されていない。
【0047】
図5に示す実施態様では、ルミネセンス変換素子3は、層又は小板として形成されており、これらは本明細書に記載された蛍光体を含むか又はそれからなり且つ発光半導体層列2によって生じた光のビーム経路に配置される。特に、層状又は板状のルミネセンス変換素子3は、発光半導体層列2上に直接堆積される。例えば、ルミネセンス変換素子3は、マトリックス材料中に蛍光体を粉末として含有する層又は小板として配置され、その際、マトリックス材料はプラスチック材料又はセラミック材料であり得る。あるいは、蛍光体自体が、例えば、固体又は粉末状の層又は小板であり得る。更に、ルミネセンス変換素子3は、発光半導体層列2を囲む鋳型として形成することができ、この場合、ルミネセンス変換素子3は、好ましくは、蛍光体粉末を含有するプラスチックマトリックス材料を含む。ルミネセンス変換素子3は、発光半導体層列2から離れていてもよい。
【0048】
更に、ルミネセンス変換素子3は、例えば、発光半導体層列2によって生じた光を緑色〜黄色のスペクトル領域の光に変換する、追加の蛍光体を含み得る。特に、追加の蛍光体はY
3Al
5O
12:Ce(YAG:Ce)を含み得る。本明細書に記載された赤色発光蛍光体、緑色〜黄色を発光する追加の蛍光体、例えば、YAG:Ce及び青色発光半導体層列の組み合わせは、暖色系の白色光を生成するのに非常に適切であり得る。追加の蛍光体は、追加のルミネセンス変換素子に含有され得るか又は本明細書に記載された蛍光体と一緒にルミネセンス変換素子3に含有され得る。
【0049】
図に関連して説明した特徴の代わりに又はそれに加えて、図に示した実施態様は、詳細な説明の概要部分に記載した更なる特徴を含み得る。更に、図の特徴と実施態様は、そのような組み合わせが明示的に記載されていなくても、互いに組み合わせることができる。
【0050】
本発明は、例示的な実施態様に基づく説明によって制限されない。むしろ、本発明は、新たな特徴及びこれらの特徴のあらゆる組み合わせを包含し、具体的には、この特徴又はこの組み合わせ自体が特許請求の範囲又は例示的な実施態様に明確に記載されていなくても、特許請求の範囲内の特徴のあらゆる組み合わせを含む。