(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、プリンタ1の構造を概略的に示す縦断右側面図である。プリンタ1の正面は、
図1中の左側である。プリンタ1は、筐体2内に、保持部3、ダンパ4、および印刷部5を備え、筐体2の前面に排紙口6を備えている。
【0009】
筐体2は、箱形で上面開口の本体21と、開口を開閉する蓋22とを有する。
【0010】
保持部3は、支軸31を備え、台紙なしラベルロールを、支軸31で回転自在に保持する。台紙なしラベルロールは、帯状の用紙の裏面に粘着層(不図示)が設けられたラベルLが台紙なしで巻かれたロール紙Rである。
【0011】
ダンパ4は、ロール紙Rから引き出されたラベルLが印刷部5に至るまでの間に設けられ、押さえローラ41と付勢支持部42とを有する。押さえローラ41は、ラベルLの表面、つまり粘着層が設けられていない方の面に接する。付勢支持部42は、押さえローラ41を、ラベルLの厚さ方向に移動可能に支持し、かつ、ラベルLの表面を押さえつける方向に付勢する。
【0012】
印刷部5は、サーマルヘッド51とプラテンローラ52とを備えている。プラテンローラ52は、ラベルLの裏面に接して回転し、ラベルLを搬送する。サーマルヘッド51は、ラベルLの表面に印刷を施す。
【0013】
排紙口6は、筐体2前面の本体21と蓋22との間に設けられて、印刷後のラベルLを排紙する。
【0014】
ここで、プリンタ1は、筐体2内に、さらに、剥離補助部(剥離補助ユニット)7を備えている。剥離補助部7と保持部3とは、給紙装置10を構成する。
図2は、給紙装置10の構造を示す斜視図である。
図3は、給紙装置10にロール紙Rを取り付けた状態を示す斜視図である。
【0015】
保持部3の支軸31は、片持ち梁状であって、筐体2に対して固定的に設けられた側壁32から、略水平に突出している。支軸31は、ロール紙Rの巻き中心を含む円筒状の空間に差し込まれることにより、ロール紙Rを軸支する。
【0016】
ところで、ロール紙Rは、例えば紙製の円筒状の芯(不図示)にラベルLを巻きつけたものある。上述した支軸31が差し込まれる円筒状の空間は、つまり、この例で言う芯の内側の空間である。
【0017】
剥離補助部7は、ローラ71およびローラ支持部72を備えている。ローラ71は、保持部3よりも用紙搬送方向下流側に位置し、ロール紙Rから引き出されたラベルLの粘着層に接する。また、ローラ71は、ローラ支持部72によって回転自在に支持されている。
【0018】
ローラ支持部72は、非用紙搬送時と用紙搬送時とで、ローラ71の位置を変える。非用紙搬送時は、用紙が搬送されていないとき、つまり、プラテンローラ52が回転していないときである。このとき、ラベルLは、ロール紙Rから引き出されない。一方、用紙搬送時は、用紙が搬送されているとき、つまり、プラテンローラ52が回転しているときである。このとき、ラベルLは、プラテンローラ52の回転により引っ張られてロール紙Rから引き出される。またこのとき、ラベルLに張力が加わっている。
【0019】
ローラ支持部72は、非用紙搬送時には、ローラ71を、ロール紙Rの回転軸に対して斜めに支える。ここで、該『斜め』は、ローラ71の両端の高さを違えた『斜め』である。また、ローラ支持部72は、用紙搬送時には、ロール紙Rから引き出されたラベルLの張力を、ローラ71を介して受けて、ローラ71の両端の高さを揃えて支える。
【0020】
本実施形態において、ローラ71は、非用紙搬送時および用紙搬送時に、それぞれ略一定の所定位置をとる。以下、非用紙搬送時のローラ71の位置を傾斜位置、用紙搬送時のローラ71の位置を給紙位置と称する。ローラ支持部72は、ローラ71を、傾斜位置と給紙位置との間で移動自在に支持する。なお、ローラ71は、非給紙位置でも、ラベルの幅方向に沿っている。また、ローラ71は、給紙位置では、ロール紙Rの回転軸に略平行である。
【0021】
また、ローラ支持部72は、ローラ71の一方の端部の高さを略一定に保ち、且つ、他方の端部を所定の高さ範囲で移動自在に支持する。ローラ支持部72は、軸73、一対の側壁74,75、底板76、回動部77、およびスライド部78を備えている。
【0022】
ローラ71は円筒状であって、内側の空間に、軸73が貫通している。軸73の一方の端部は、回動部77に回動自在に支持されて高さを一定に保たれ、他方の端部は、スライド部78に所定の高さ範囲で移動自在に支持されている。
【0023】
側壁74,75は、底板76によって連結され、略鉛直に立てられている。一方の側壁74は、側壁32と一体に設けられている。回動部77は、側壁74に設けられている。つまり、支軸31は、ローラ71の高さが一定に保たれる端部と同じ側から突出している。スライド部78は、他方の側壁75に設けられている。
【0024】
図4および
図5は、回動部77の構造を示す斜視図であって、
図4は、回動部77を
図2と同じ側から見た拡大図、
図5は、
図4で示す側の裏側から回動部77を見た拡大図である。
【0025】
回動部77は、角孔81、回動軸82、一対の把持部83,84、および一対の横溝85,86を備えている。
【0026】
角孔81は、側壁74に形成されている。角孔81内に、軸73の一方の端部が位置する。軸73のこの端部を、回動軸82が貫通する。回動軸82は、軸73の長手方向に直交する。この回動軸82の両端を、把持部83,84が回動自在に把持している。一対の把持部83,84は、角孔81の両側部に位置し、回動軸82の端部を囲む半円形状をなし、ローラ71がある側に突出して設けられている。
【0027】
横溝85,86は、角孔81の両側部から外側へと伸びた形状に形成されている。これらの横溝85,86は、回動軸82を把持部83,84内へ、側壁74の
図5で示す側の面から嵌め込むための受口である。
【0028】
図6および
図7は、スライド部78の構造を示す斜視図であって、
図6は、スライド部78を拡大して示した図、
図7は、
図6で示すスライド部78のA−A断面図である。
【0029】
スライド部78は、角孔91、縦溝92、および付勢部材93を備えている。
【0030】
角孔91および縦溝92は、側壁75に形成され、互いに連通している。縦溝92の幅は、角孔91の幅よりも小さい。縦溝92は、角孔91の下辺中央部を下へ引き下げたような形状であって、角孔91から縦溝92への切り替わり箇所は滑らかな曲面91aとされている。角孔91から縦溝92内を、軸73の他方の端部が、上下にスライドする。
【0031】
付勢部材93は、ローラ71を、用紙搬送時の位置(給紙位置)から非用紙搬送時の位置(傾斜位置)へ移動する方向に向かって、付勢する。本実施形態の付勢部材93は、弦巻の引っ張りばねの一方の端部が側壁75の取付穴75aに、他方の端部が軸73の取付穴73aに固定されることにより、実現されている。
【0032】
縦溝92には、受け部94が形成されている(
図7参照)。受け部94は、縦溝92の最下部からやや高くした受け面94aを有し、該受け面94aによって、給紙位置での軸73の周面を受ける。受け部94は、給紙位置におけるローラ71の下がりすぎを防ぐ。
【0033】
このような構成のプリンタ1の印刷中および非印刷中の動作について、
図8および
図9を用いて説明する。
図8は、ローラ71およびローラ支持部72の(a)用紙搬送時および(b)非用紙搬送時の状態を示す模式図である。
図9は、ロール紙Rに対するラベルLの剥離際の(a)用紙搬送時および(b)非用紙搬送時の状態を示す模式図である。
図8および
図9のいずれも、用紙搬送方向下流側から上流側を見た図である。
【0034】
印刷部5は、プラテンローラ52によりラベルLを搬送しながら、サーマルヘッド51によりラベルLに印刷を施す。このため、印刷中は、ラベルLに、プラテンローラ52で引っ張られることによる張力が生じる。この張力が生じたラベルLから、
図8(a)に矢印で示すように、ローラ71は下向きの力を受ける。この力は、付勢部材93による付勢力よりも大きい。したがって、印刷開始時、ローラ71は、付勢部材93による付勢に抗して、回動部77において回動するとともに、スライド部78において下方向へ移動する。このとき、スライド部78側の軸73は受け部94で支えられ、所定位置より下がることはない。そして、印刷中、ローラ71はラベルLから下向きの力を受け続けるので、ローラ71の位置は保たれる。
【0035】
印刷中のロール紙RおよびラベルLの剥離際は、
図9(a)に示す状態になる。つまり、ラベルLがロール紙Rの表面から剥がれるときは、全幅にわたって略同時に剥がれる。
【0036】
印刷部5が印刷を行っていないとき(非印刷中)、つまり、ラベルLが搬送されていないときは、ラベルLがプラテンローラ52で引っ張られないので、ラベルLに上述の張力は生じていない。このため、
図8(b)に示すように、非印刷中、ローラ71は、スライド部78において、付勢部材93から受ける上向きの力によって引き上げられ、傾斜位置に至る。このとき、ラベルLのローラ71に接している部分も、ローラ71とともに引き上げられて、ロール紙Rの表面に対して傾斜した状態となる。
【0037】
非印刷中のロール紙RおよびラベルLの剥離際は、
図9(b)に示す状態になる。つまり、ラベルLは、ロール紙Rの表面に対して、幅方向の一方を残して他方を剥がした斜めの状態に剥がされる。
【0038】
これにより、非用紙搬送時、つまり、印刷部5が印刷を終えてラベルLの搬送を停止すると、スライド部78では、ローラ71を介してラベルLから受ける下向きの力よりも、付勢部材93から受ける上向きの力が勝り、その結果、ローラ71が傾斜位置へ移動して、ラベルLがロール紙Rから斜めに剥がされる。
【0039】
上述の非用紙搬送状態から、印刷部5が印刷を開始すると、ラベルLの搬送開始によって、ふたたびラベルLに張力が生じる。すると、ローラ71が下向きの力を受け、給紙位置へ移動する。そして、ラベルLがさらに搬送されることにより、ロール紙Rが回転し始め、ラベルLの粘着層がロール紙Rの表面から剥がされてゆく。
【0040】
このとき、非用紙搬送時に、ラベルLは、ロール紙Rから斜めに一部剥がされた状態となっていたので、従来の斜めに剥がされていない場合に比して、剥離開始時の抵抗が小さくなり、剥がしやすくなる。
【0041】
このように、本実施形態によれば、ラベルLの剥がし始めに要する力を少なくすることができる。従来、ラベルLの剥がし始めは、搬送継続中よりも大きい力を要する。このため、ラベルLの剥がし始めからロール紙Rが回転しだして次々剥離するようになるまでの短い時間に、搬送に要する力が大きく変化し、印字精度の低下要因となっていた。しかしながら、本実施形態によれば、用紙搬送に要する力の変化を抑えることができ、これにより、印刷開始時の印刷精度を向上させることができる。
【0042】
なお、上記実施形態では、付勢部材93を引っ張りばねにより実現したが、実施にあたっては、付勢部材93は他のものであってもよい。例えば、弦巻の圧縮ばねを付勢部材として縦溝92の底と軸73との間に配してもよいし、また、トーションばねを付勢部材として回動軸82周りに設けてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、給紙位置において、ローラ71がロール紙Rの回転軸に略平行であるとして説明したが、実施にあたって、たとえ用紙搬送中にローラ71がロール紙Rの回転軸に完全に平行とならなくても、構わない。なぜなら、付勢部材93を設けたことにより、余計な力を逃がす効果が得られるため、仮にローラ71がロール紙Rの回転軸に完全に平行とならず斜めになっていたとしても、その状態において、ラベルLに余計な力がかかっていないということになるので、印刷への悪影響はないと言えるからである。
【0044】
さらに、上記実施形態では、ローラ71の一端を回動自在、他端を上下移動自在とすることにより、傾斜位置と給紙位置との間で移動自在としたが、実施にあたっては、他の構造によって、ローラ71を傾斜位置と給紙位置との間で移動自在としてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、ローラ71は、傾斜位置と給紙位置との間を移動するが、実施にあたっては、必ずしも、非用紙搬送時のローラ71の位置や用紙搬送時のローラ71の位置がそれぞれ一定でなくてもよく、少なくとも、非用紙搬送時にはローラ71が両端の高さを違えた斜めになり、用紙搬送時にはローラ71の両端の高さが概ね揃えばよい。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1…プリンタ、
2…筐体、21…本体、22…蓋、
3…保持部、31…支軸、32…側壁、
4…ダンパ、41…押さえローラ、42…付勢支持部、
5…印刷部、51…サーマルヘッド、52…プラテンローラ、
6…排紙口、
7…剥離補助部、71…ローラ、72…ローラ支持部、
73…軸、74…側壁、75…側壁、76…底板、77…回動部、78…スライド部、
81…角孔、82…回動軸、83…把持部、85…横溝、
91…角孔、92…縦溝、93…付勢部材、94…受け部、
10…給紙装置。