【実施例1】
【0030】
図2は、本発明の実施例1の鉄道施設の高さ調整装置を取り付けたプラットホームを正面方向から概略的に示す説明図であり、
図3は、
図2の一部拡大図である。
図4は、
図2に示すプラットホームを側面方向から概略的に示す説明図であり、
図5は、
図4の一部拡大図である。実施例1における鉄道施設は、旅客の乗降や貨物の荷役が行われるプラットホームである。なお、各図において
図1に示す部材等と同一の部材等には同一の符号を付している。
【0031】
本発明の実施例1の鉄道施設の高さ調整装置は、
図2から
図5に示すように、地盤7に立設された支柱2に支持される横架材としての既存横桁3を備えるプラットホーム(鉄道施設)において、既存横桁3(横架材)に取り付けられ、上下方向に連通する第1ボルト挿通孔14が設けられた受け金具10と、受け金具10の上方に配置されて床版20を支持し、上下方向に連通する第2ボルト挿通孔15が設けられた床版支持部材としての新設縦桁9と、第1ボルト挿通孔14と第2ボルト挿通孔15とに挿通され、上下方向に配置される調整用ボルトとしての全ねじボルト11と、全ねじボルト11(調整用ボルト)に装着され、受け金具10に対して全ねじボルト11(調整用ボルト)を所望の高さ位置で締結する上下一対の第1調整用ナット12と、全ねじボルト11(調整用ボルト)に装着され、新設縦桁9(床版支持部材)を全ねじボルト11(調整用ボルト)の所望の高さ位置で締結する上下一対の第2調整用ナット13とを有する。
【0032】
本実施例においては、鉄道施設がプラットホームであり、既存横桁3が一定の間隔で複数並置された鋼製の桁材であり、新設縦桁9は、床版20が載置される上側フランジ部9aと第2ボルト挿入孔15が設けられた下側フランジ部9bとを備える形鋼であり、平面視で既存横桁3と交差する方向に一定の間隔で複数並置されている。既存横桁3のそれぞれには、平面視で新設縦桁9と交差する位置のそれぞれに、受け金具10が取り付けられており、それぞれの受け金具10に挿入された全ねじボルト11により、新設縦桁9のそれぞれが支承されている。そして、それぞれの全ねじボルト11に装着された第1調整用ナット12又は第2調整用ナット13を回転させることにより、新設縦桁9の高さ位置を、全ねじボルト11により支承される位置ごとに調整することができる。
【0033】
既存横桁3は、地盤7に立設された支柱2により支持されるレール材からなる鋼製の横架材であり、ウェブ部3cが上下方向を向くように「工」字状に配置されている。
図4に示すように、既存横桁3は、軌条8の延伸方向に一定の間隔を空けて(例えば、軌条8の延伸方向に約3mおきに)複数並置されている。プラットホームを上空から鳥瞰して見たとき、即ち、平面視で、既存横桁3と新設縦桁9とが交差する位置(支承位置)には受け金具10が取り付けられ、この受け金具10に立設された全ねじボルト11により新設縦桁9が支承されている。既存横桁3に受け金具10を取り付けるために、これらの支承位置には、水平方向(ウェブ部3cの幅方向)に連通する第1固定用孔16が穿設されている。
【0034】
床版支持部材としての新設縦桁9は、横架材としての既存横桁3の上方に配置されて床版20を支持するH形鋼からなる部材であり、上側フランジ部9aと下側フランジ部9bとウェブ部9cとを備え、ウェブ部9cが上下方向を向くように「工」字状に配置されている。下側フランジ部9bには、上下方向に連通する第2ボルト挿通孔15が穿設されている。第2ボルト挿通孔15は、調整用ボルトに対して新設縦桁9を締結するために穿設されており、受け金具10に穿設される第1ボルト挿通孔14の位置及び個数に対応して、下側フランジ部9bには、一定の間隔おきに、計4箇所の第2ボルト挿通孔15が穿設されている(
図3、
図5参照)。なお、本実施例においては、H形鋼からなる桁材を床版支持部材として用いているが、これに限られるものではなく、各種床版を支持するのに好適な形状及び材質の部材であれば足り、例えば、プレート状の鋼板を用いることもできる。
【0035】
受け金具10は、上下方向に連通する第1ボルト挿通孔14が穿設された横板部10aと、水平方向(左右方向)に連通する第2固定用孔17が穿設された縦板部10bとを備えている。
図6は、受け金具の一例を示す斜視図である。受け金具10は鋼製の部材であり、横板部10aと、横板部10aの裏面に直角に固定された一対の縦板部10bとを備えており、下駄状の構成を有している。なお、横板部10aと縦板部10bとは、直角三角形状の補強板22により連結され、剛性が確保されている。各縦板部10bは既存横桁3の上側フランジ部3aに嵌め込むことが可能な間隔(即ち、上側フランジ部3aの幅寸法よりも僅かに大きい間隔)にて相互に対向して配置されており、各縦板部10bの間に既存横桁3の上側フランジ部3aが嵌め込まれるようになっている。なお、受け金具10が取り付けられる横架材は、本実施例においてはレール材であるが、
図6に示すような構成の受け金具10によれば、H形鋼やI形鋼にも取り付けることが可能である。
【0036】
受け金具10は、既存横桁3と新設縦桁9とを連結する全ねじボルト11を立設するための部材であり、既存横桁3の所定の支承位置に取り付けられる(
図2、
図4参照)。受け金具10は、
図2から
図5に示すとおり、第1固定用孔16と第2固定用孔17とに挿通される固定用ボルト23と、これに螺合する固定用ナット24とにより、縦板部10bの間に既存横桁3を嵌め込んだ状態で、既存横桁3に対してボルト留めにより強固に取り付けられる。なお、図示する場合には、既存横桁3同士の連結部分に受け金具10が取り付けられているが、受け金具10の取り付け箇所(支承位置)が桁材の連結部分に限られないことは言うまでもない。
【0037】
なお、受け金具10は、固定用ボルト23により既存横桁3に取り付けられることから、固定用ボルト23を回転軸として、既存横桁3に対して任意の角度で取り付けることも可能である。これにより、沈下等の影響で既存横桁3(横架材)が傾いている場合でも、全ねじボルト11(調整用ボルト)を上下方向に配置するために好適な角度で受け金具10を取り付けることができる。
【0038】
既存横桁3に取り付けられた受け金具10は、横板部10aの両隅部が既存横桁3の上側フランジ部3aよりも外側に突出するように構成されている(
図5参照)。この外側に突出した横板部10aの各隅部に第1ボルト挿通孔14が穿設されており、第1ボルト挿通孔14に対して全ねじボルト11を上下方向から挿通して配置することができるようになっている(
図8参照)。
【0039】
受け金具10に穿設された計4箇所の第1ボルト挿通孔14のそれぞれには、計4本の全ねじボルト11が挿通され、上下方向に配置されている。全ねじボルト11を用いることにより、ボルト全長にわたって高さ調整に利用できるので調整レンジを広く確保することができ、上下どちらからでもナットや座金を取り付けることができ作業性が向上する。全ねじボルト11は上下方向に配置されるが、可及的に垂直となるように配置されるのが好ましい。すなわち、本発明にいう上下方向は厳密に垂直である場合に限定されない。なお、調整用ボルトとしては調整域の広い全ねじボルトが好適であるが、半ねじボルトのように雄ねじが棒材の一部に形成されたものや、頭付きボルトの利用を妨げるものではない。
【0040】
第1調整用ナット12は、全ねじボルト11に螺合して、受け金具10に対して全ねじボルト11を所望の高さ位置で締結するための上下一対の部品である。すなわち、全ねじボルト11は、上下一対の第1調整用ナット12a、12bに挟み込まれるようにして、受け金具10に対して締結されている。この第1調整用ナット12を回転操作することにより、受け金具10に対して、全ねじボルト11を上下方向に連続的に移動させることができ、かつ、所望の位置にて保持することができる。
【0041】
第2調整用ナット13は、全ねじボルト11に螺合して、新設縦桁9(床版支持部材)を全ねじボルト11の所望の高さ位置で締結するための上下一対の部品である。すなわち、新設桁材9は、上下一対の第2調整用ナット13に挟み込まれるようにして、全ねじボルト11に対して締結されている。本実施例においては、第2ボルト挿通孔15には全ねじボルト11の上端側が挿通されるとともに、下側フランジ部9bを挟み込むようにして上下一対の第2調整用ナット13が装着されることにより、既存横桁3の上方に配置された新設縦桁9が全ねじボルト11を介して支承されている(
図2、
図4参照)。この第2調整用ナット13を回転操作することにより、全ねじボルト11に対して、新設桁材9を上下方向に連続的に移動させることができ、かつ、所望の位置にて保持することができる。
【0042】
受け金具10と第1調整用ナット12との間には、テーパ座金18が嵌め込まれている(
図3、
図8参照)。テーパ座金は、傾斜している既存横桁3に対して、全ねじボルト11を垂直方向に配置したり、新設縦桁9を水平に支承したりするために、受け金具10と第1調整用ナット12との間、又は、床板支持部材(新設縦桁9)と第2調整用ナット13との間、の少なくともいずれか一方に、必要に応じて任意的に嵌め込まれる。傾斜方向に沿ってテーパ座金18のテーパ面を配置することにより、ホーム面6の水平方向ないし長手方向のいずれの傾きにも対応できる。傾いた既存横桁3に対して全ねじボルト11を垂直に配置することにより、新設縦桁9を水平に配置することができ、また、各調整用ナット13,14を回転操作し易くなり、床版等の荷重に対する耐力が向上する。
【0043】
以上の構成を有する鉄道施設の高さ調整装置においては、簡易かつ正確に、新設縦桁9(床版支持部材)の高さ位置を調整することができ、新設縦桁9により支持される床版20を所定の高さ位置にて水平に設置することができる。すなわち、床版支持部材の高さ位置を調整することにより、床版の高さ位置を調整し、これにより、床面の高さ位置を調整することができる。新設縦桁9の高さを調整する際には、第1調整用ナット12又は第2調整用ナット13のいずれか一方のみ又は双方を回転させることを選択できるため、作業性が良く、簡易に高さ調整をすることができる。調整用ナット12、13の回転量により連続的に上下方向の移動量を調整できるため、正確な微調整が可能である。床版支持部材としての新設縦桁9の高さ位置を調整する際には、第1調整用ナット12のみを回転操作するようにしても良く、第2調整用ナット13のみを回転操作するようにしても良く、双方を回転操作しても良い。高さ調整し易い調整用ナット12,13を選択して回転操作することができるので、作業性が良く、簡易に高さ調整をすることができる。
【0044】
前述のとおり、テーパ座金18を用いることにより、ホーム面21の傾斜を修正することもできるが、受け金具10に複数立設された全ねじボルト11のそれぞれに装着されたナット12、13を独立して回転調整して各全ねじボルト11に対する位置を個々に調整することにより、ホーム面21の傾斜を修正することも可能である。さらに、受け金具10は一定の間隔おきに複数設けられていることから、それぞれの受け金具10に立設された全ねじボルト11に装着される調整用ナット12、13を個々に回転調整することにより、ホーム面21全体の傾斜やゆがみを修正することも可能である。
【0045】
前述したボルト11、23やナット12、13、24、テーパ座金18のそれぞれは、従来一般に使用される既製品を用いることができる。駒材を用いた従来例によると、駒材を多数個作製する必要があるが、本発明によれば、従来一般に使用される既製品を用いて実現することができるので、コスト面でも優れている。
【0046】
また、駒材を用いた従来例によると、駒材を製作するに先立って床面の移動量を支承位置ごとに正確に計測しておく必要があるが、本発明によれば、このような計測作業が不要であり、計測作業に並行して高さ調整作業を行うことができ、簡易である。本発明によれば、調整後の長期間の使用により、床版が再び傾いてしまった場合でも、その都度、簡易に高さ調整作業を行うことができる。本発明によれば、調整用ボルトにより床版や床版支持部材を支承することになるが、横架材の上には任意の数の支承位置を設定することができ、多数の支承位置にて荷重を分散して支持するので、ボルトを用いた支承方法でも強度上問題はない。
【0047】
プラットホーム1を構築する際には、構築当初から、
図2ないし
図5に示す構成を有するプラットホームとするようにしても良いが、本発明によれば、以下に述べるとおり、
図1に示すような構築後の既存のプラットホームに対して、床版の高さ調整機能を付加することもできる。
【0048】
図7は、本発明の実施例1の鉄道施設の高さ調整装置を取り付ける途中経過を示す正面図であり、特に、床版を取り外して、横架材に受け金具を取り付けた段階を示す工程説明図である。
図8は、各部材の組立順序を示す説明図である。なお、各図において
図2から
図5に示す部材等と同一の部材等には同一の符号を付している。
【0049】
本発明の実施例1の鉄道施設の高さ調整方法は、地盤7に立設された支柱2により支持された横架材としての既存横桁3と、既存横桁3を介して支持される床版5とを備えるプラットホーム1において、先ず、既存縦桁4から床版5を取り外す第1工程を実行する(
図7参照)。床版5は、後述の工程の支障となる範囲で取り外す。
【0050】
上下方向に連通する第1ボルト挿通孔14が設けられた受け金具10を既存横桁3(横架材)に取り付ける第2工程を実行する(
図8参照)。受け金具10が取り付けられる位置(支承位置)は、既存横桁3と新設縦桁9とが平面視で交差する位置であり、本実施例においては、新設縦桁9が2本配置されていることに対応して、既存横桁3には2個の受け金具10が取り付けられている。
【0051】
この第2工程は、例えば、既存横桁3の前記支承位置に水平方向(左右方向)に連通する第1固定用孔16を穿設する第1ステップと、既存横桁3の前記支承位置に第1ボルト挿入孔14が上下方向に開口するように受け金具10を嵌め込む第2ステップと、第1固定用孔16と受け金具10に穿設された第2固定用孔17とに固定用ボルト23を挿入する第3ステップと、固定用ボルト23に固定用ナット24を装着して締め付ける第4ステップとを含むものであっても良い。なお、既存縦桁4は、後述の工程の支障とならなければ、既存横桁3上に残置したままでも良い(
図7参照)。
【0052】
次に、調整用ボルトに螺合する上下一対の第1調整用ナット12を用いて、第1ボルト挿通孔14に挿通された全ねじボルト11(調整用ボルト)の下端側を受け金具10に締結するとともに、全ねじボルト11(調整用ボルト)を上下方向に立設する第3工程を実行する。本工程においては、各調整用ナット12、13による調整レンジを確保するために、適宜の長さの全ねじボルトが選択され、受け金具10の下方に一部が突出するように上下方向に立設される。なお、全ねじボルト11は、厳密に垂直に立設させなくても良いが、可及的に垂直となるように配置されるのが好ましい。全ねじボルト11が可及的に垂直に配置されるように、この第3工程において、任意的に、全ねじボルト11にテーパ座金を嵌め込んだ後、第1調整用ナット12を締結するようにしても良い。
【0053】
その後、全ねじボルト11(調整用ボルト)に螺合する上下一対の第2調整用ナット13を用いて、全ねじボルト11(調整用ボルト)の上端側に挿通される第2ボルト挿通孔15が設けられた新設縦桁9(床版支持部材)を、全ねじボルト11(調整用ボルト)に締結する第4工程を実行する。なお、全ねじボルト11が可及的に垂直に配置されるように、この第4工程において、任意的に、全ねじボルト11にテーパ座金を嵌め込んだ後、第2調整用ナット13を締結するようにしても良い。
【0054】
以上の工程を実行した後、第1調整用ナット12又は第2調整用ナット13を回転させて、新設縦桁9(床版支持部材)の高さ位置を調整する第5工程を実行する。新設縦桁9のそれぞれが所定の高さ位置にて水平に配置されるように高さ調整しておくことにより、新設縦桁9上に載置されホーム面21を形成する床版20を所定の高さ位置にて水平に設置することができる。なお、各調整用ナット12、13を回転操作する際には、例えば、既存横桁3上にジャッキを配置し、ジャッキにより新設縦桁9を下方から押圧ないし支持した状態とするようにしても良い。
【0055】
最後に、新設縦桁9の上に床版20を載置する第6工程を実行する。なお、新たな床版20を載置しているが、単なる例示に過ぎず、旧床版5を再利用しても良い。
【0056】
以上の工程によれば、高さ調整機能をもたない既存のプラットホームに対して、床版の高さ調整機能を付加して、ホーム面の高さや水平度を調整することができる。支柱2や既存横桁3の移設といった大工事が不要であり、床版5を支持していた既存縦桁4を残置したままでも適用することができ(
図2参照)、簡易に高さ調整することができる。
【0057】
前述の実施例1においては、鉄道施設がプラットホームであるが、鉄道施設が車両洗浄台である場合にも同様の構成を適用することができる。すなわち、
地盤に立設された支柱により支持される横架材を備え、鉄道施設の床面を形成する床版の高さを調整する鉄道施設の高さ調整装置において、
前記横架材に取り付けられ、上下方向に連通する第1ボルト挿通孔が設けられた受け金具と、
前記受け金具の上方に配置されて前記床版を支持し、上下方向に連通する第2ボルト挿通孔が設けられた床版支持部材と、
前記第1ボルト挿通孔と前記第2ボルト挿通孔とに挿通され、上下方向に配置される調整用ボルトと、
前記調整用ボルトに装着され、前記受け金具に対して前記調整用ボルトを所望の高さ位置で締結する上下一対の第1調整用ナットと、
前記調整用ボルトに装着され、前記床版支持部材を前記調整用ボルトの所望の高さ位置で締結する上下一対の第2調整用ナットとを有し、
前記鉄道施設が車両洗浄台であり、
前記横架材が一定の間隔で複数並置された鋼製の桁材であり、
前記床版支持部材は、前記床版が載置されるプレート状の鋼板であり、平面状に連続して複数並置されており、
前記横架材のそれぞれには、一定の間隔で前記受け金具が取り付けられており、
それぞれの前記受け金具に挿通された前記調整用ボルトにより、前記床版支持部材のそれぞれが支承されており、
それぞれの前記調整用ボルトに装着された前記第1調整用ナット又は前記第2調整用ナットを回転させることにより、前記床版支持部材の高さ位置を、前記調整用ボルトにより支承される位置ごとに調整することも可能である。
【実施例2】
【0058】
図9は、本発明の実施例2の鉄道施設の高さ調整装置を取り付けた車両洗浄台を正面方向から概略的に示す説明図であり、
図10は、
図9の一部拡大図である。
図11は、
図9に示す車両洗浄台を一部省略して示す側面図であり、
図12は、
図11の一部拡大図である。なお、各図において
図1に示す部材等と同一の部材等には同一の符号を付している。
【0059】
車両洗浄台30は、床版支持部材としての床版支持用プレート31の上にグレーチングよりなる床版32を載置することにより、所定の高さ位置に作業面を形成するように構成したものである。旅客の乗降や貨物の荷役が行われるプラットホームに比して、簡易な床版32が載置されている。
図9ないし
図12に示す車両洗浄台30は本発明を適用することが可能な鉄道施設の一例に過ぎず、本発明は、同様の構成を有するプラットホームその他の鉄道施設にも適用することができる。
【0060】
本発明の実施例2の鉄道施設の高さ調整装置は、地盤7に立設された支柱2により支持されフランジ部4bを有する横架材としての既存縦桁4備え、鉄道施設の作業面33(床面)を形成する床版32の高さを調整する鉄道施設の高さ調整装置において、フランジ部4bの底面に当接する本体部38aと、フランジ部4bの外方に突出して配置され上下方向に連通する第3ボルト挿通孔39が設けられた拡幅部38bとを備える下面側プレート38と、フランジ部4bの上面に当接する当て部35aと、フランジ部4bの外方に突出して配置され上下方向に連通する第4ボルト挿通孔40が設けられた連結部35bとを備え、下面側プレート38とにより上下一組のボルト立設用プレート34を構成する上面側プレート35と、上下方向に連通する第5ボルト挿通孔41が設けられ、既存縦桁4(横架材)の上方に配置されて床版32を支持する床版支持部材としての床板支持用プレート31と、第3ボルト挿通孔39と第4ボルト挿通孔40と第5ボルト挿通孔41のそれぞれに挿通され、上下方向に配置される調整用ボルトとしての全ねじボルト42と、ボルト立設用プレート34を上下から挟み込むようにして全ねじボルト42(調整用ボルト)に装着され、ボルト立設用プレート34を既存縦桁4(横架材)に対して取り付けるとともに、ボルト立設用プレート34に対して全ねじボルト42(調整用ボルト)を所望の高さ位置に締結する上下一対の第3調整用ナット43と、全ねじボルト42(調整用ボルト)に装着され、床板支持用プレート31(床版支持部材)を全ねじボルト42(調整用ボルト)の所望の高さ位置に締結する第4調整用ナット44とを有する。前述の実施例1とは異なり、受け金具10に変えて、既存縦桁4に取り付けられるボルト立設用プレート34を用いて全ねじボルト42を立設する構成となっている。
【0061】
実施例2においては、既存縦桁4が一定の間隔で複数並置された形鋼であり、ボルト立設用プレート34が既存縦桁4のそれぞれに一定の間隔で取り付けられている。また、床板支持用プレート31は、床版32が載置されるプレート状の鋼板であり、平面状に一定の間隔で連続して複数並置されており、それぞれのボルト立設用プレート34に挿通された全ねじボルト42により、床板支持用プレート31のそれぞれが支承されている。そして、それぞれの全ねじボルト42に装着された第3調整用ナット43又は第4調整用ナット44を回転させることにより、床版支持部材(床板支持用プレート31)の高さ位置を、全ねじボルト42により支承される位置ごとに調整することができる。以下、各部材について詳述する。
【0062】
既存縦桁4は、全ねじボルト42が立設されるボルト立設用プレート34が取り付けられる横架材の一例である。実施例2においては、支柱2の上端に固定された既存横桁3の上部に固設された既存縦桁4を横架材として利用しており、レール材よりなる既存縦桁4のフランジ部4bにボルト立設用プレート34が取り付けられている。なお、ボルト立設用プレート34が取り付けられる横架材としては、既存横桁3その他の構造部材を用いることが可能である。すなわち、ボルト立設用プレート34が取り付けられる横架材は、支柱2に直接固定されたものに限られず、他の桁材等を介して支柱2に支持されるものであっても良い
【0063】
ボルト立設用プレート34は、上面側プレート35と下面側プレート38とにより構成される上下一組の部材であり、横架材としての既存縦桁4のフランジ部4bを挟み込むようにして取り付けられ、調整用ボルトとしての全ねじボルト42を上下方向に立設するために用いられる部材である。本実施例においては、ウェブ部4cを挟んで左右両側に張り出すフランジ部4bのそれぞれに取り付けられている。
【0064】
下面側プレート38は平板状の鋼板であり、フランジ部4bの底面に当接する本体部38aと、フランジ部4bの外方に突出して配置され上下方向に連通する拡幅部38bとを備えており、拡幅部38bには第3ボルト挿通孔39が設けられている。本実施例においては、拡幅部38bは本体部38aの両側に設けられており、それぞれの拡幅部38bには第3ボルト挿通孔39が穿設されている。すなわち、下面側プレート38はフランジ部4bよりも幅寸法の大きな鋼板であり、当該鋼板の四隅近傍のそれぞれに上下方向に連通する第3ボルト挿通孔39が設けられており、第3ボルト挿通孔39のそれぞれがフランジ部4bの外方に配置されるように、フランジ部4bの底面側に取り付けられている。
【0065】
上面側プレート35は、フランジ部4bの上面に当接する当て部35aと、フランジ部4bの外方に突出して配置される連結部35bとを備えており、連結部35bには第4ボルト挿通孔40が設けられている。本実施例においては、上面側プレート35は、ウェブ部4cの左方に配置される左上面側プレート36と、ウェブ部4cの右方に配置される右上面側プレート37とにより構成されており、左右それぞれの連結部35bに第4ボルト挿通孔40が設けられている。第3ボルト挿入孔39と第4ボルト挿入孔40のそれぞれは、
図10に示すように上下に重ね合わせた状態において、上下方向に連通する位置に穿設されている。
【0066】
床版支持用プレート31は、既存縦桁4の上方に配置されて床版32を支持する床版支持部材の一例であり、上下方向に連通する第5ボルト挿通孔41が設けられている。第5ボルト挿通孔41には、全ねじボルト42が挿通される。本実施例においては、床版支持用プレート31上には、グレーチングよりなる床版32が載置されている。床版32の表面が洗浄作業等を行うための作業面33となる。なお、床版支持部材として、板状の床版支持用プレート31を用いる点は単なる一例に過ぎず、桁材を用いても良い。
【0067】
第3調整用ナット43は、ボルト立設用プレート34を構成する上面側プレート35と下面側プレート38とを上下から挟み込むようにして全ねじボルト42に装着され、ボルト立設用プレート34を既存縦桁4に対して取り付けるとともに、全ねじボルト42をボルト立設用プレート34に立設し、ボルト立設用プレート34に対して全ねじボルト42を所望の高さ位置に締結するための上下一対の部品である。第3ボルト挿通孔39及び第4ボルト挿通孔40のそれぞれには全ねじボルト42の下端部側が挿通されており、それぞれの全ねじボルト42には第3調整用ナット43が装着されており、一組のボルト立設用プレート34に対して、計4本の全ねじボルト42が上下方向に配置されるように立設されている。
【0068】
第4調整用ナット44は、全ねじボルト42に装着され、床版支持用プレート31を全ねじボルト42の所望の高さ位置に保持するための部品である。本実施例においては、全ねじボルト42の上端側に第4調整用ナット44が装着されており、この全ねじボルト42に第5ボルト挿通孔41が挿通されて、床版支持用プレート31が第4調整用ナット44により所望の高さ位置で保持されているが、一実施例に過ぎない。上下一対の第4調整用ナットを用いて締結することにより、床版支持用プレート31を全ねじボルト42の所望の高さ位置に保持するようにしても良い。
【0069】
ボルト立設用プレート34と第3調整用ナット43との間、又は、床版支持用プレート31と第4調整用ナット44との間の少なくともいずれか一方には、テーパ座金を嵌め込むようにしても良い。実施例2においては、床版支持用プレート31と第4調整用ナット44との間に、テーパ座金45が嵌め込まれている(
図12参照)。テーパ座金を用いることにより、床版支持部材を水平に配置することができる。これにより、傾斜した床面を水平に修正することができる。なお、ボルト立設用プレート34と第3調整用ナット43との間にテーパ座金を嵌め込んで、全ねじボルト42を可及的に垂直に配置すれば、各調整用ナットを回転操作し易くなり、荷重に対する耐力が向上する。
【0070】
実施例2による場合においても、実施例1と同様、簡易かつ正確に、床版支持用プレート31(床版支持部材)の高さ位置を調整することができ、床版支持部材により支持される床版を所定の高さ位置にて水平に設置することができる。床版支持部材の高さを調整する際には、第3調整用ナット43又は第4調整用ナット44のいずれか一方のみ又は双方を回転させることを選択できるため、作業性が良く、簡易に高さ調整をすることができる。ボルト立設用プレート34は一定の間隔おきに複数設けられていることから、それぞれのボルト立設用プレート34に立設された全ねじボルト42に装着される第3調整用ナット43又は第4調整用ナット44を個々に回転調整することにより、作業面33全体の傾斜やゆがみを修正することができる。一方、前述した実施例1とは異なり、既存横桁3に第1固定用孔16を穿設するといった手間が生じない。すなわち、横架材の形状や穿設加工の難易に応じて、適宜の形態を選択することができる。
【0071】
桁式の下部構造を備える車両洗浄台30を構築する際には、構築当初から、
図9ないし
図12に示す構成を有する洗浄台とするようにしても良いが、本発明によれば、以下に述べるとおり、構築後の車両洗浄台に対して、床版の高さ調整機能を付加することもできる。
【0072】
すなわち、本発明の実施例2の鉄道施設の高さ調整方法は、地盤7に立設された支柱2により支持されフランジ部4bを備える横架材としての既存縦桁4と、既存縦桁4を介して支持される床版とを備える鉄道施設の高さ調整方法において、先ず、後述の工程の支障とならないように、床版を取り外す第1工程を実行する。
【0073】
その後、第2工程として、本体部38aと上下方向に連通する第3ボルト挿通孔39が設けられた拡幅部38bとを備える下面側プレート38を、本体部38aがフランジ部4bの下面側に当接し、かつ、拡幅部38bがフランジ部4bの外方に突出するように配置するステップと、当て部35aと上下方向に連通する第4ボルト挿通孔40が穿設された連結部35bとを備える上面側プレート35を、当て部35aがフランジ部4bの上面側に当接し、かつ、連結部35bがフランジ部4bの外方に突出するように配置するステップを実行する。なお、各ステップは順序が逆でも良い。
【0074】
次に、調整用ボルトとしての全ねじボルト42に螺合する上下一対の第3調整用ナット43を用いて、第3ボルト挿通孔39と第4ボルト挿通孔40とに挿通された全ねじボルト42の下端側を、上面側プレート35と下面側プレート38に締結するとともに、全ねじボルト42を上下方向に立設する第3工程を実行する。これにより、上面側プレート35と下面側プレート38とにより構成されるボルト立設用プレート34を既存縦桁4に取り付けるとともに、全ねじボルト42が上下方向に配置されるようにボルト立設用プレート34に対して全ねじボルト42を締結する。なお、この第3工程において、全ねじボルト42が垂直に配置されるように、任意的に、全ねじボルト42にテーパ座金を嵌め込んだ後、第3調整用ナット43を締結するようにしても良い。
【0075】
その後、全ねじボルト42に螺合する第4調整用ナット44を用いて、全ねじボルト42の上端側に挿通される第5ボルト挿通孔41が設けられた床版支持部材としての床版支持用プレート31を、全ねじボルト42に取り付ける第4工程を実行する。なお、この第4工程において、全ねじボルト42が垂直に配置されるように、任意的に、全ねじボルト42にテーパ座金を嵌め込んだ後、第4調整用ナット44を締結するようにしても良い。
【0076】
以上の工程を実行した後、第3調整用ナット43又は第4調整用ナット44を回転させて床版支持用プレート31の高さ位置を調整する第5工程を実行して、床版支持用プレート31を所定の高さ位置において水平に配置する。
【0077】
最後に、床版支持用プレート31に床版32を載置する第6工程を実行する。以上の工程によれば、高さ調整機能をもたない既存の車両洗浄台に対して、床版の高さ調整機能を付加することができる。支柱2や既存横桁3の移設といった大工事が不要であり、床版5を支持していた既存縦桁4を、床版支持用プレート31を取り付けるための横架材として利用することができ(
図9、
図10参照)、簡易に高さ調整することができる。
【0078】
前述の実施例2においては、鉄道施設が車両洗浄台30であるが、鉄道施設がプラットホームである場合にも同様の構成を適用することができる。すなわち、
地盤に立設された支柱により支持されフランジ部を有する横架材を備え、鉄道施設の床面を形成する床版の高さを調整する鉄道施設の高さ調整装置において、
前記フランジ部の底面に当接する本体部と、前記フランジ部の外方に突出して配置され上下方向に連通する第3ボルト挿通孔が設けられた拡幅部とを備える下面側プレートと、
前記フランジ部の上面に当接する当て部と、前記フランジ部の外方に突出して配置され上下方向に連通する第4ボルト挿通孔が設けられた連結部とを備え、前記下面側プレートとにより上下一組のボルト立設用プレートを構成する上面側プレートと、
上下方向に連通する第5ボルト挿通孔が設けられ、前記横架材の上方に配置されて床版を支持する床版支持部材と、
前記第3ボルト挿通孔と前記第4ボルト挿通孔と前記第5ボルト挿通孔のそれぞれに挿通され、上下方向に配置される調整用ボルトと、
前記ボルト立設用プレートを上下から挟み込むようにして前記調整用ボルトに装着され、前記ボルト立設用プレートを前記横架材に対して取り付けるとともに、前記ボルト立設用プレートに対して前記調整用ボルトを所望の高さ位置に締結する上下一対の第3調整用ナットと、
前記調整用ボルトに装着され、前記床版支持部材を前記調整用ボルトの所望の高さ位置に締結する第4調整用ナットとを有し、
前記鉄道施設がプラットホームであり、
前記横架材が一定の間隔で複数並置された形鋼であり、
前記床版支持部材は、前記床版が載置される鋼製の桁材であり、前記横架材と交差する方向に一定の間隔で複数並置されており、
前記横架材のそれぞれには、平面視で前記床版支持部材と交差する位置のそれぞれに、前記ボルト立設用プレートが取り付けられており、
それぞれの前記ボルト立設用プレートに挿通された前記調整用ボルトにより、前記床版支持部材のそれぞれが支承されており、
それぞれの前記調整用ボルトに装着された前記第3調整用ナット又は前記第4調整用ナットを回転させることにより、前記床版支持部材の高さ位置を、前記調整用ボルトにより支承される位置ごとに調整することも可能である。
【0079】
本発明は、上記実施の形態ないし実施例に限定されず、その発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形実施が可能である。上記実施の形態ないし実施例においては、専ら、桁式のプラットホーム及び車両洗浄台に適用したケースを説明したが、本発明は、地盤に立設された支柱により支持される横架材と、当該横架材を介して支持される床版とを備える鉄道施設一般に用いることができる。本発明の適用場面は、支柱が地盤沈下等して沈下ないし傾斜する場合に限らず、例えば、ホーム位置を定める際の基準となる軌条の位置が変動したり、新造車両が投入されて車両のドアとプラットホームの高さにズレが生じたりした場合にも適用することができる。
【0080】
本発明を構成する横架材は支柱に直接固定されたものに限られず、他の桁材等を介して支柱に支持されるものであっても良い。同様に、本発明を構成する床版支持部材は床版が直接載置されるものに限られず、他の桁材等を介して床版を支持するものであっても良い。