(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297249
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】排泄物処理材及びそれを用いた動物用トイレ
(51)【国際特許分類】
A01K 1/015 20060101AFI20180312BHJP
A01K 1/01 20060101ALI20180312BHJP
A01K 23/00 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
A01K1/015 B
A01K1/01 Z
A01K23/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-156348(P2012-156348)
(22)【出願日】2012年7月12日
(65)【公開番号】特開2014-18083(P2014-18083A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年1月20日
【審判番号】不服2016-14283(P2016-14283/J1)
【審判請求日】2016年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148977
【氏名又は名称】株式会社大貴
(74)【代理人】
【識別番号】100148518
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100179327
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 憲正
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博
(72)【発明者】
【氏名】畑中 忍
(72)【発明者】
【氏名】吉永 隼士
【合議体】
【審判長】
小野 忠悦
【審判官】
前川 慎喜
【審判官】
井上 博之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−253156(JP,A)
【文献】
特開2010−252783(JP,A)
【文献】
特開平9−308403(JP,A)
【文献】
特開2002−218854(JP,A)
【文献】
特開2005−138106(JP,A)
【文献】
特開昭63−230060(JP,A)
【文献】
特開平5−260873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/015
A01K 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿を吸収する排泄物処理材を製造する方法であって、
インスタントコーヒーを粉砕して得られた、インスタントコーヒーの粉砕物と水溶性又は水解性の材料とを含む混合物を押出成形することにより、前記粉砕物及び前記材料を含有するとともに前記尿を吸収した時に崩壊する前記排泄物処理材を形成する工程を含むことを特徴とする排泄物処理材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記粉砕物の粒度は、1mm未満である排泄物処理材の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記排泄物処理材における前記粉砕物の含有率は、90重量%以上である排泄物処理材の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記排泄物処理材における前記材料の含有率は、10重量%以下である排泄物処理材の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記材料は、澱粉類、CMC、PVA又は吸水性ポリマーである排泄物処理材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄物処理材及びそれを用いた動物用トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の動物用トイレとしては、例えば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載の動物用トイレにおいては、トイレ本体が簀子により上下に区画されており、上層部分に排泄物処理材が敷設されるとともに、下層部分にトレーが設けられている。上層部分に敷設された排泄物処理材は、吸水した時に崩壊するように構成されている。この動物用トイレにおいては、動物が排尿した際、排泄物処理材が尿を吸収して崩壊する。崩壊した排泄物処理材は、簀子を通過してトレー内に落下する。
【特許文献1】特開2008−253156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる構成の動物用トイレによれば、使用済みの排泄物処理材、すなわち尿を吸収した排泄物処理材が簀子の上に残留するのを防ぎ、それにより、悪臭がトイレの外部に放出されるのをある程度抑制することができる。しかしながら、トレー内に落下した使用済みの排泄物処理材からも悪臭が放たれるため、従来の動物用トイレは、防臭効果が不充分であるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、防臭効果の優れた排泄物処理材及び動物用トイレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による排泄物処理材は、尿を吸収する排泄物処理材であって、コーヒー豆又はインスタントコーヒーの粉砕物を含有し、上記尿を吸収した時に崩壊することを特徴とする。
【0006】
また、本発明による動物用トイレは、上記排泄物処理材が複数敷設される仕切板と、上記仕切板の下部に設けられた容器と、を備え、上記仕切板は、上記尿を吸収して崩壊した上記排泄物処理材を通過させ、上記容器内に落下させる孔部を有することを特徴とする。
【0007】
この動物用トイレにおいては、尿を吸収して崩壊する排泄物処理材が仕切板上に敷設されるともに、仕切板には、崩壊した排泄物処理材を通過させて容器内に落下させる孔部が設けられている。このため、使用時、尿を吸収した排泄物処理材は、崩壊して、仕切板の孔部を通過する。孔部を通過した排泄物処理材は、容器内に落下する。さらに、排泄物処理材は、コーヒー豆又はインスタントコーヒーの粉砕物を含有している。このため、コーヒー豆又はインスタントコーヒーの強力な消臭・脱臭効果により、容器内に落下した使用済みの排泄物処理材からの悪臭の放出を効果的に抑制することができる。したがって、優れた防臭効果が得られる。
【0008】
上記粉砕物の粒度は、1mm未満であることが好ましい。この場合、尿の吸収時に崩壊し易い排泄物処理材を実現することができる。
【0009】
上記排泄物処理材における上記粉砕物の含有率は、90重量%以上であることが好ましい。この場合、コーヒー豆又はインスタントコーヒーの含有率が高くなるため、特に優れた防臭効果を得ることができる。
【0010】
上記排泄物処理材は、上記粉砕物と共に、水溶性又は水解性の材料を含有していてもよい。この場合、使用時に排泄物処理材が崩壊するのを妨げることなく、排泄物処理材に様々な機能をもたせることができる。
【0011】
上記排泄物処理材における上記材料の含有率は、10重量%以下であることが好ましい。この場合、コーヒー豆又はインスタントコーヒーの含有率を高くすることが可能なため、特に優れた防臭効果を得ることができる。
【0012】
上記材料は、澱粉類、CMC、PVA又は吸水性ポリマーであってもよい。これらの材料は、充分な水溶性又は水解性を有するので、使用時に排泄物処理材が崩壊するのを妨げないという点で好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、防臭効果の優れた排泄物処理材及び動物用トイレが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による排泄物処理材及び動物用トイレの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図1の動物用トイレにおける仕切板の平面図である。
【
図3】
図1の排泄物処理材及び動物用トイレの作用効果を説明するための断面図である。
【
図4】本発明による動物用トイレにおける仕切板の変形例を示す平面図である。
【
図5】
図4の仕切板のV−V断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明による排泄物処理材及び動物用トイレの実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明による排泄物処理材及び動物用トイレの一実施形態を示す断面図である。動物用トイレ1は、猫や犬等の動物が排泄時に用いるトイレであって、仕切板10、及び容器20を備えている。
【0017】
仕切板10上には、動物の尿を吸収する排泄物処理材30が複数敷設される。同図においては、多数の排泄物処理材30が仕切板10上に敷設された状態を示している。排泄物処理材30は、コーヒー豆(抽出前のもの)の粉砕物、又はインスタントコーヒーの粉砕物を含有する粒状物である。インスタントコーヒーとしては、賞味期限切れのものを用いることが好ましい。粉砕物の粒度は、1mm未満であることが好ましい。この排泄物処理材30は、尿を吸収した時に崩壊するように構成されている。
【0018】
本実施形態において排泄物処理材30は、上記粉砕物と共に、水溶性又は水解性の材料をも含有している。かかる材料としては、例えば、澱粉類、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PVA(ポリビニルアルコール)又は吸水性ポリマーを用いることができる。澱粉類としては、例えば、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉若しくはデキストリン、又はこれらをα化したものが挙げられる。排泄物処理材30における上記粉砕物の含有率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。また、排泄物処理材30における上記材料の含有率は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0019】
仕切板10には、孔部12が形成されている。孔部12は、使用済みの排泄物処理材30、すなわち尿を吸収して崩壊した排泄物処理材30を通過させ、容器20内に落下させる。すなわち、孔部12は、使用前の排泄物処理材30を通過させず、かつ使用済みの排泄物処理材30を通過させるような大きさ・形状に形成されている。仕切板10の上面(排泄物処理材30が載置される面)は、使用済みの排泄物処理材30を孔部12に導くように、孔部12に向かって下方に傾斜している。
【0020】
図2は、仕切板10の平面図である。同図に示すように、本実施形態において孔部12は、平面視で矩形状をしており、仕切板10の中央部に1つだけ設けられている。同図のIA−IA断面、又はIB−IB断面が、
図1に示した仕切板10の断面に相当する。
【0021】
図1に戻って、仕切板10の孔部12の下部には、容器20が設置されている。容器20は、孔部12から落下した使用済みの排泄物処理材30を収容する。この容器20は、動物用トイレ1から着脱可能に設けられている。
【0022】
図3を参照しつつ、排泄物処理材30及び動物用トイレ1の作用効果を説明する。動物用トイレ1においては、尿を吸収して崩壊する排泄物処理材30が仕切板10上に敷設されるともに、仕切板10には、崩壊した排泄物処理材30を通過させて容器20内に落下させる孔部12が設けられている。このため、使用時、尿を吸収した排泄物処理材30は、
図3に示すように、崩壊して、仕切板10の孔部12を通過する。孔部12を通過した排泄物処理材30は、容器20内に落下する。さらに、排泄物処理材30は、コーヒー豆又はインスタントコーヒーの粉砕物を含有している。このため、コーヒー豆又はインスタントコーヒーの強力な消臭・脱臭効果により、容器20内に落下した使用済みの排泄物処理材30からの悪臭(尿の臭い)の放出を効果的に抑制することができる。したがって、防臭効果の優れた排泄物処理材30及び動物用トイレ1が実現されている。
【0023】
また、本実施形態の仕切板10には、孔部12が1つしか存在しない。しかも、その孔部12は、使用前の排泄物処理材30を通過させない程度の大きさである。それゆえ、容器20に落下した使用済みの排泄物処理材30において悪臭を完全に消臭・脱臭し切れなかったとしても、残った悪臭が孔部12を通じて動物用トイレ1の外部に放出されにくい構造となっている。
【0024】
排泄物処理材30に含有される上記粉砕物の粒度を1mm未満とした場合、尿の吸収時に崩壊し易い排泄物処理材30を実現することができる。
【0025】
排泄物処理材30における上記粉砕物の含有率を90重量%以上とした場合、コーヒー豆又はインスタントコーヒーの含有率が高くなるため、特に優れた防臭効果を得ることができる。
【0026】
本実施形態において排泄物処理材30は、上記粉砕物と共に、水溶性又は水解性の材料を含有している。このため、使用時に排泄物処理材30が崩壊するのを妨げることなく、排泄物処理材30に様々な機能をもたせることができる。
【0027】
排泄物処理材30における上記材料の含有率を10重量%以下とした場合、コーヒー豆又はインスタントコーヒーの含有率を高くすることが可能なため、特に優れた防臭効果を得ることができる。
【0028】
上記材料として、澱粉類、CMC、PVA又は吸水性ポリマーを用いた場合、これらの材料は、充分な水溶性又は水解性を有するので、使用時に排泄物処理材が崩壊するのを妨げないという点で好ましい。
【0029】
排泄物処理材30は、例えば、次の方法により製造することができる。すなわち、この製造方法は、成形工程、分粒工程、及び乾燥工程を含んでいる。
【0030】
成形工程においては、コーヒー豆又はインスタントコーヒーを破砕機で所定の大きさに粉砕し、当該粉砕物と、水溶性又は水解性の材料とを所定の割合でミキサーに投入して混ぜ合わせる。そして、加水した後、当該混合物をエクストルーダその他の押出成形機によって押出成形することにより、排泄物処理材を形成する。
【0031】
分粒工程においては、所定の寸法の篩目を有する篩に、前工程で製造された排泄物処理材を通過させることにより、所定の規格を満たす排泄物処理材のみを抽出する。
【0032】
乾燥工程においては、前工程で抽出された排泄物処理材を乾燥機で乾燥させる。排泄物処理材30の含水率が高過ぎると、その保存時にカビ等が生じる原因となる。排泄物処理材30を乾燥させ、その含水率を適宜調整することにより、カビ等の発生を防ぐことができる。
【0033】
本発明による排泄物処理材及び動物用トイレは、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、平面視で矩形の孔部12を示した。しかし、孔部12は、平面視で円形であってもよい。また、上記実施形態においては、仕切板10に孔部12が1つだけ設けられた例を示した。しかし、
図4及び
図5に示すように、仕切板10には複数の孔部12が設けられていてもよい。なお、
図5は、
図4の仕切板10のV−V断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 動物用トイレ
10 仕切板
12 孔部
20 容器
30 排泄物処理材