(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297251
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】地盤材製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/12 20060101AFI20180312BHJP
C04B 14/04 20060101ALI20180312BHJP
C04B 14/10 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
C04B28/12
C04B14/04 Z
C04B14/10 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-170118(P2012-170118)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-28718(P2014-28718A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年6月24日
【審判番号】不服2016-14072(P2016-14072/J1)
【審判請求日】2016年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】305016933
【氏名又は名称】大坪石材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512200398
【氏名又は名称】才田砕石工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(72)【発明者】
【氏名】大坪 敬幸
(72)【発明者】
【氏名】原野 繁実
(72)【発明者】
【氏名】末次 大輔
【合議体】
【審判長】
新居田 知生
【審判官】
瀧口 博史
【審判官】
宮澤 尚之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−92565(JP,A)
【文献】
特開2001−122647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00 - 32/02
C04B 40/00 - 40/06
C04B 103/00 - 111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砕石微粉末を含む含水率30〜40重量%の脱水ケーキに対して、重量比で5乾燥重量%の生石灰を添加して混合機で混合した後、
前記混合機による撹拌混合工程において生成された混合物をソイルカッタへ送り込んで1次切削混合処理を行い、
前記ソイルカッタにおける1次切削混合処理を終えた混合物を3軸ロータリハンマへ送り込んで2次衝撃混合処理による細粒化を行い、
前記3軸ロータリハンマにおける細粒化が終わった混合物をアフタカッタへ送り込んで3次衝撃混合処理による細粒化混合を行うことにより、
粒径2mm〜10mmの細粒化混合物を含み、含水率20〜23重量%であって固化していない状態の地盤材とすることを特徴とする地盤材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砕石や採砂を製造する際に発生する脱水ケーキを原料として製造され、盛土材や法面材などの構築に使用可能な地盤
材製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
砕石や砕砂を湿式工程で製造する際に副産物として生成する砕石微粉末を含む脱水ケーキを土木材料として利用する技術については、従来、様々な技術が提案されているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1記載の「砕石砕粉を活用する炭酸化カルシウム成形体及びその製法」あるいは特許文献2記載の「スラッジを含む固形成形体及び固形成形体の製造方法」などがある。
【0003】
特許文献1には、消石灰と砕石砕粉との混合物に対し、消石灰と、砕石砕粉と、天然有機酸の保形材と、水とをそれぞれ所定量混練して形成した混練混合物を型枠に充填して加圧成形した後、脱型し、さらに養生することによって炭酸化カルシウム成形体を製造する技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、砕石場等で排出されるスラッジに、カルシウム化合物及びポゾラン物質を適切な割合で混合して、加圧成形した後、養生することによって固形成形体を製造する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−64902号公報
【特許文献2】特開2009−221032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の「砕石砕粉を活用する炭酸化カルシウム成形体及びその製法」及び特許文献2記載の「スラッジを含む固形成形体及び固形成形体の製造方法」は、砕石場等で副産物として生成する砕石微粉末を利用して一定形状の成形体を製造することができる点において優れているが、これらの成形体は盛土材や法面材等としては不向きである。即ち、特許文献1,2に記載されている技術では、盛土工事や法面工事等に適した地盤材を形成することができない。
【0007】
また、特許文献1記載の「砕石砕粉を活用する炭酸化カルシウム成形体及びその製法」は、消石灰を混合するので、脱水ケーキを早急に運搬及び締固めができる状態にすることができない。
【0008】
さらに、特許文献2記載の「スラッジを含む固形成形体及び固形成形体の製造方法」は、スラッジを原料として一定形状の固形成形体を製造する方式であるため、締固めが必要な盛土工事や法面工事の資材として使用することが困難である。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、砕石場等で生成される砕石微粉末を含む脱水ケーキを用いて運搬性、施工性が良好で、硬化後の強度が大であり、また、環境への配慮の面においても優れた地盤材及びそれを容易に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明
に係る地盤材製造方法によって製造された地盤材は、砕石微粉末を含む脱水ケーキと生石灰との混合物であって、粒径が2mm〜10mm
の細粒化混合物を含み、含水率が20〜23重量%であり、固化していない状態にあることを特徴とする。ここで、砕石微粉末を含む脱水ケーキとは、砕砂や砕石を製造する際に発生する細粒分を水洗いしたときに生成する洗浄水をフィルタープレスで脱水処理して分離された含水比30〜40重量%程度の泥土状物質をいう。
【0011】
高含水比の泥土状である、砕石微粉末を含む脱水ケーキ(以下、「脱水ケーキ」と略記する。)に生石灰を添加・混合すると、生石灰の消化吸水反応により速やかに含水比が低下し、運搬並びに締固めが可能な状態となるので、運搬性及び施工性の良好な地盤材を得ることができる。また、この地盤材を単体で使用する場合には、締固めによる密度の増大並びに生石灰と水分との反応により、地盤材として十分な強度を発揮する。また、採石場等で生成される副産物を使用するので、環境への配慮の面においても優れている。
【0012】
脱水ケーキに対する生石灰の添加量は限定しないので、脱水ケーキの含水比に応じて増減することができるが、例えば、含水比が33〜35重量%程度の脱水ケーキの場合は、生石灰の添加量は乾燥重量比5%程度が好適である。なお、砕石微粉末が乾燥状態である場合は、同重量の生石灰及び同重量の水分を添加して混合することにより、前記地盤材と同等の地盤材を得ることができる。
【0013】
また、砕石微粉末の岩石成分については特に限定しないので、安山岩、結晶片岩、輝緑岩などの砕石微粉末を含むものを使用することが可能であり、これらの岩石に含まれている石英、長石あるいはカオリナイトなどが長期的に生石灰と反応して、地盤材の硬化に寄与しているのではないかと推測される。
【0014】
ここで、前述した、砕石微粉末を含む脱水ケーキと生石灰との混合物に、礫質土、砂質土、粘性土のうちの少なくとも一つを含む副資材を混合させて地盤材を形成することもできる。
【0015】
このような構成とすれば、前記副資材に含まれる礫質土、砂質土あるいは粘性土の一部をなすシリカ(二酸化ケイ素)成分とアルカリ性の生石灰とが反応して固化作用が生じるので、地盤材の強度を向上させることができる。
【0016】
また、前記副資材として、ズリを用いることが望ましい。ここで、ズリとは、砕石原料である岩石を採掘する際に掘り出される表土や土砂をいう。
【0017】
前記副資材としてズリを用いれば、砕石場における砕石製造工程において副産物として生成されるズリを有効利用することができ、産業廃棄物の低減に寄与することができる。
【0018】
次に、本発明の地盤材製造方法は、砕石微粉末を含む
含水率30〜40重量%の脱水ケーキに
対して、重量比で5乾燥重量%の生石灰を添加して混合した後
、
前記混合機による撹拌混合工程において生成された混合物をソイルカッタへ送り込んで1次切削混合処理を行い、
前記ソイルカッタにおける1次切削混合処理を終えた混合物を3軸ロータリハンマへ送り込んで2次衝撃混合処理による細粒化を行い、
前記3軸ロータリハンマにおける細粒化が終わった混合物をアフタカッタへ送り込んで3次衝撃混合処理による細粒化混合を行うことにより
、
粒径2mm〜10mm
の細粒化混合物を含み、含水率20〜23重量%であって固化していない状態の地盤材とすることを特徴とする。
【0019】
また、
前記地盤材製造方法
においては、
さらに、礫質土、砂質土、粘性土のうちの少なくとも一つを含む副資材を混合させること
もできる。
【0020】
この場合、前記副資材として、ズリを用いることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、採石場等で生成される砕石微粉末を含む脱水ケーキを用いて運搬性、施工性が良好で、硬化後の強度が大であり、また、環境への配慮の面においても優れた地盤
材を容易に製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態である地盤材製造方法を示す概略工程図である。
【
図2】本発明の第2実施形態である地盤材製造方法を示す概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
図1に示す地盤材製造方法100においては、砕石場において湿式砕砂等を製造する際に副産物として発生する脱水ケーキMが原材料となる。本実施形態では、土砂ホッパ101に一時貯留されている含水率30〜40重量%程度の脱水ケーキMが、当該土砂ホッパ101から混合機102へ供給され、ここで生石灰が添加された後、十分に撹拌、混合される。脱水ケーキMと生石灰との混合比率は限定しないが、本実施形態では、脱水ケーキMに対し、重量比で5乾燥重量%程度の生石灰を添加、混合している。
【0025】
混合機102による撹拌混合工程において生成された混合物は、次に、ソイルカッタ103へ送り込まれ、ここで1次切削混合処理が行われる。ソイルカッタ103における1次切削混合処理を終えた混合物は、次に、3軸ロータリハンマ104へ送り込まれ、ここで、2次衝撃混合処理による細粒化が行われる。3軸ロータリハンマにおける細粒化が終わった混合物は、次に、アフタカッタ105へ送り込まれ、ここで、3次衝撃混合処理による細粒化混合が行われる。
【0026】
アフタカッタ105における細粒化混合を終えた混合物は、次に、2次アフタカッタ106へ送り込まれ、ここで、4次衝撃混合処理によって更なる細粒化が行われる。2次アフタカッタ106における細粒化が終わると地盤材P1が完成する。完成した地盤材P1は施工現場へ搬送され、例えば
、道路盛土材、河川築堤盛土材、河川築堤法面材などの様々な用途に使用される。地盤材P1の状態は一律ではないが、本実施形態においては、粒径2mm〜10mm程度、含水率20〜23重量%程度の地盤材P1を形成することができた。
【0027】
地盤材P1は、施工性,運搬性が良好であり、十分な転圧(締固め)が可能であり、短期的、中期的には固化しないので貯蔵が可能である。また、単体及び複合材(土質改良材として)としても使用が可能であり、砕石場等で生成する副産物を使用するのでコストが低く、環境への配慮の面においても優れている。
【0028】
次に、
図2に示す地盤材製造方法200においては、砕石場において湿式砕砂等を製造する際に副産物として発生する脱水ケーキMに安定処理201を施して地盤材P1を形成する。ここでいう安定化処理201は、
図1に示す地盤材製造方法100と同様の処理工程である。
【0029】
図2に示すように、安定化処理201を経て形成された地盤材P1は混合機202へ送り込まれ、ここで、同様に送り込まれたズリ203と撹拌、混合される。ズリ203の種類や性状は限定しないが、本実施形態では、脱水ケーキMが生成された砕石場で副産物として生成された粒径2mm〜40mm程度のズリ203を使用した。
【0030】
混合機202における撹拌、混合が終わると地盤材P2が形成される。完成した地盤材P2は、施工現場に搬送して、例えば
、道路盛土材、河川築堤盛土材、河川築堤法面材などの様々な用途に使用することができる。
【0031】
地盤材P2は、十分な転圧(締固め)が可能であり、ポゾラン固化により高い強度を発揮するほか、少量の生石灰で高い改良効果を得ることができる。また、用途に応じた強度の制御が可能である。さらに、副産物を使用するので、材料コストが低く、採石場等で生成される副産物を余すことなく使用するので環境への配慮の面においても優れている。
【0032】
なお、前述した地盤材製造方法100,200及び地盤材P1,P2などは本発明を例示するものであって、本発明の地盤材及び地盤材製造方法は地盤材製造方法100,200及び地盤材P1,P2に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の地盤
材製造方法は、道路工事や河川工事あるいは都市開発工事などの各種土木建設産業の分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
100,200 地盤材製造方法
101 土砂ホッパ
102,202 混合機
103 ソイルカッタ
104 3軸ロータリハンマ
105 アフタカッタ
106 2次アフタカッタ
201 安定処理
203 ズリ
P1,P2 地盤材
M 脱水ケーキ