(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297252
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】トルクコンバータのロックアップ装置
(51)【国際特許分類】
F16H 45/02 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
F16H45/02 Y
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-201297(P2012-201297)
(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公開番号】特開2014-55642(P2014-55642A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2014年11月7日
【審判番号】不服2017-1397(P2017-1397/J1)
【審判請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 広幸
(72)【発明者】
【氏名】河原 裕樹
【合議体】
【審判長】
平田 信勝
【審判官】
内田 博之
【審判官】
小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−169442(JP,A)
【文献】
特開2004−124984(JP,A)
【文献】
特開2009−250288(JP,A)
【文献】
特開2002−89658(JP,A)
【文献】
特開2002−161967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン側の部材に連結されるフロントカバーとトルクコンバータのタービンとの間に配置され、前記フロントカバーからのトルクを前記タービンに機械的に伝達するためのロックアップ装置であって、
軸方向に移動自在なピストンを有し、前記フロントカバーからのトルクを伝達又は遮断するクラッチ部と、
前記クラッチ部からトルクが入力される1枚の第1プレートと、
前記第1プレートと相対回転自在に配置され、前記タービンに連結された1枚の第2プレートと、
前記第1プレートと前記第2プレートとを回転方向に弾性的に連結する複数の弾性部材と、
前記第1プレートと前記第2プレートとの軸方向間に前記両プレートと相対回転自在に配置され、前記複数の弾性部材のうちの少なくとも2つの弾性部材を直列に作用させるための中間部材と、
前記第1プレート及び前記第2プレートの軸方向の相対移動を規制するための規制機構と、
を備え、
前記規制機構は、
前記第1及び第2プレートの一方に形成された複数のスリットと、
前記第1及び第2プレートの他方に軸方向に延びて形成され、それぞれ前記複数のスリットを貫通する複数の突起と、
前記複数の突起の前記スリットを貫通した部分に装着され、前記スリットが形成されたプレートの側面に当接可能な規制部材と、
を有する、
トルクコンバータのロックアップ装置。
【請求項2】
前記スリットは周方向に延びる円弧状に形成されており、
前記突起は、前記スリット内に円周方向に隙間をあけて挿入されている、
請求項1に記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
【請求項3】
前記規制部材はスナップリングであり、
前記スリットが形成されたプレートの側面には、軸方向に突出し、前記スナップリングの円周方向の両端に当接して前記スナップリングの回転を禁止する1対のストッパが形成されている、
請求項1又は2に記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
【請求項4】
前記第1プレートは、それぞれ軸方向一方側に突出して形成され前記複数の弾性部材を収納する複数の第1収納部を有し、前記第1収納部の回転方向の端面は前記弾性部材の回転方向の端面に当接可能であり、
前記第2プレートは、それぞれ軸方向他方側に突出して形成され前記複数の弾性部材を前記第1収納部とともに収納する複数の第2収納部を有し、前記第2収納部の回転方向の端面は前記弾性部材の回転方向の端面に当接可能である、
請求項1から3のいずれかに記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
【請求項5】
エンジン側の部材に連結されるフロントカバーとトルクコンバータのタービンとの間に配置され、前記フロントカバーからのトルクを前記タービンに機械的に伝達するためのロックアップ装置であって、
軸方向に移動自在なピストンを有し、前記フロントカバーからのトルクを伝達又は遮断するクラッチ部と、
前記クラッチ部からトルクが入力される1枚の第1プレートと、
前記第1プレートと相対回転自在に配置され、前記タービンに連結された1枚の第2プレートと、
前記第1プレートと前記第2プレートとを回転方向に弾性的に連結する複数の弾性部材と、
前記ピストンに固定された入力プレートと、
前記複数の弾性部材の外周側に配置され、前記入力プレートと前記第1プレートの外周部とを回転方向に弾性的に連結する複数の外周側弾性部材と、
前記第1プレート及び前記第2プレートの軸方向の相対移動を規制するための規制機構
と、
を備え、
前記規制機構は、
前記第1及び第2プレートの一方に形成された複数のスリットと、
前記第1及び第2プレートの他方に軸方向に延びて形成され、それぞれ前記複数のスリ
ットを貫通する複数の突起と、
前記複数の突起の前記スリットを貫通した部分に装着され、前記スリットが形成された
プレートの側面に当接可能な規制部材と、
を有する、
トルクコンバータのロックアップ装置。
【請求項6】
前記入力プレート及び前記第1プレートと相対回転自在に配置され、前記複数の外周側弾性部材の外周部及び軸方向一方側を支持するとともに、前記複数の外周側弾性部材のうちの少なくとも2つの外周側弾性部材を直列に作用させるためのサポート部材をさらに備えた、請求項5に記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロックアップ装置、特に、エンジン側の部材に連結されるフロントカバーとトルクコンバータのタービンとの間に配置され、フロントカバーからのトルクをタービンに機械的に伝達するためトルクコンバータのロックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1又は特許文献2に示されるように、トルクコンバータには、トルクをフロントカバーからタービンに直接伝達するためのロックアップ装置が設けられている場合が多い。これらの特許文献に示されたロックアップ装置は、フロントカバーに摩擦連結可能なピストンと、ピストンに固定されるリティニングプレートと、半径方向の外周側及び内周側に設けられた複数のトーションスプリングと、複数のトーションスプリングを介して伝達されたトルクをタービンに伝達するためのドリブンプレートと、を備えている。
【0003】
このようなロックアップ装置において、振動吸収性能を向上させるためには、トーションスプリングの低剛性化及び広捩じり角度化を実現することが必要である。
【0004】
そこで特許文献3に示されるように、1対のトーションスプリングを中間プレートによって直列に作用させるようにした構成が提供されている。具体的には、特許文献3のロックアップ装置は、1枚のドライブプレートと、2枚のドリブンプレートと、1枚の中間プレートと、を有している。ドライブプレートは外周部がピストンに連結されている。2枚のドライブプレートは、互いに連結されて、タービンハブに固定されている。また、中間プレートは、2枚のドリブンプレートの間に配置され、ドライブプレート及びドライブプレートに対して相対回転自在である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−122640号公報
【特許文献2】特開2009−250288号公報
【特許文献3】特開2006−118534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3示されるような従来のロックアップ装置は、1枚のドライブプレートと、2枚のドリブンプレートと、1枚の中間プレートと、を有している。すなわち、従来のロックアップ装置において広捩じり角度化を実現するためには、最低4枚のプレート部材が必要となる。このため、従来装置においては、部品点数が多くなり、コストアップを招き、しかも軸方向のスペースの短縮化の妨げになっている。
【0007】
そこで、本願発明者は、トーションスプリングの入力側及び出力側のプレートをそれぞれ1枚で構成したロックアップ装置を開発し、すでに出願している(特願2011−199009)。
【0008】
このような構成のロックアップ装置では、それぞれ1枚の入力側及び出力側のプレートを、軸方向に位置決めし、かつ相対回転自在とするために、特殊なリベットを用いる必要がある。
【0009】
しかし、このような特殊なリベットを用いた場合、リベットの占有スペースが大きくなり、トーションスプリングのためのスペースが制限されるという問題がある。
【0010】
本発明の課題は、それぞれ1枚の入力側及び出力側プレートを用いたロックアップ装置において、簡単な構成でかつ省スペースで、両プレートを軸方向に位置決めできるとともに、相対回転自在に連結できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1側面に係るトルクコンバータのロックアップ装置は、エンジン側の部材に連結されるフロントカバーとトルクコンバータのタービンとの間に配置され、フロントカバーからのトルクをタービンに機械的に伝達するための装置である。この装置は、クラッチ部と、1枚の第1プレートと、1枚の第2プレートと、複数の弾性部材と、規制機構と、を備えている。クラッチ部は、軸方向に移動自在なピストンを有し、フロントカバーからのトルクを伝達又は遮断する。第1プレートはクラッチ部からトルクが入力される。第2プレートは、第1プレートと相対回転自在に配置され、タービンに連結されている。複数の弾性部材は第1プレートと第2プレートとを回転方向に弾性的に連結する。規制機構は第1プレート及び第2プレートの軸方向の相対移動を規制する。また、規制機構は、複数のスリットと、複数の突起と、規制部材と、を有している。スリットは、第1及び第2プレートの一方に形成されている。突起は、第1及び第2プレートの他方に軸方向に延びて形成され、それぞれ複数のスリットを貫通する。規制部材は、複数の突起のスリットを貫通した部分に装着され、スリットが形成されたプレートの側面に当接可能である。
【0012】
この装置では、フロントカバーから入力されたトルクはピストンを有するクラッチ部を介して第1プレートに入力され、第1プレートから複数の弾性部材及び第2プレートに伝達され、さらに第2プレートからタービンに出力される。そして、第1及び第2プレートは、一方のプレートに形成されたスリットに他方のプレートに形成された突起を貫通させて係合し、さらに突起に規制部材を装着することによって、両プレートの軸方向の位置決めがなされる。
【0013】
ここでは、それぞれ1枚のプレートによって入力側及び出力側のプレートが構成されたロックアップ装置において、両プレートに形成されたスリット及び突起と、突起に装着される規制部材とによって両プレートを軸方向に位置決めすることができる。したがって、両プレートの軸方向の位置決めを、簡単かつコンパクトな構成で実現できる。
【0014】
本発明の第2側面に係るトルクコンバータのロックアップ装置は、第1側面の装置において、スリットは周方向に延びる円弧状に形成されており、突起はスリット内に円周方向に隙間をあけて挿入されている。
【0015】
ここでは、スリット内の突起との間の隙間に相当する角度分だけ、第1プレートと第2プレートとは相対回転が可能になる。言い換えれば、スリットと突起とによって、両プレートの相対回転可能な角度範囲を規制するストッパ機構を構成することができる。
【0016】
本発明の第3側面に係るトルクコンバータのロックアップ装置は、第1又は第2側面の装置において、規制部材はスナップリングである。また、スリットが形成されたプレートの側面には、軸方向に突出し、スナップリングの円周方向の両端に当接してスナップリングの回転を禁止する1対のストッパが形成されている。
【0017】
ここでは、スナップリングの回転を規制することができ、スナップリングの回転による各部の摩耗をなくすことができる。
【0018】
本発明の第4側面に係るトルクコンバータのロックアップ装置は、第1から第3側面のいずれかの装置において、第1プレートと第2プレートとの軸方向間に両プレートと相対回転自在に配置され、複数の弾性部材のうちの少なくとも2つの弾性部材を直列に作用させるための中間部材をさらに備えている。
【0019】
ここでは、捩じり角度をより広くすることができる。
【0020】
本発明の第5側面に係るトルクコンバータのロックアップ装置は、第1から第4側面のいずれかの装置において、第1プレートは、それぞれ軸方向一方側に突出して形成され直列に作用する複数の弾性部材を収納する複数の第1収納部を有し、第1収納部の回転方向の端面は弾性部材の回転方向の端面に当接可能である。また、第2プレートは、それぞれ軸方向他方側に突出して形成され直列に作用する複数の弾性部材を第1収納部とともに収納する複数の第2収納部を有し、第2収納部の回転方向の端面は弾性部材の回転方向の端面に当接可能である。
【0021】
ここでは、複数の弾性部材は、第1プレートの第1収納部及び第2プレートの第2収納部に収納されている。そして、各収納部の回転方向の端面が弾性部材の端面に当接し、各プレートと弾性部材との間でトルクが伝達される。
【0022】
本発明の第6側面に係るトルクコンバータのロックアップ装置は、第1から第5側面のいずれかの装置において、ピストンに固定された入力プレートと、外周側弾性部材と、をさらに備えている。複数の外周側弾性部材は、複数の弾性部材の外周側に配置され、入力プレートと第1プレーの外周部とを回転方向に弾性的に連結する。
【0023】
ここでは、内周側及び外周側に複数の弾性部材が設けられているので、捩じり特性の多段化が容易になる。
【0024】
本発明の第7側面に係るトルクコンバータのロックアップ装置は、第6側面の装置において、入力プレート及び第1プレートと相対回転自在に配置され、複数の外周側弾性部材の外周部及び軸方向一方側を支持するとともに、複数の外周側弾性部材のうちの少なくとも2つの外周側弾性部材を直列に作用させるためのサポート部材をさらに備えている。
【0025】
ここでは、サポート部材によって、少なくとも2つの外周側弾性部材を直列に作用させることができ、広捩じり角度化が可能になる。また、このサポート部材によって、外周側弾性部材の移動を規制することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明では、入力側及び出力側部材のそれぞれが1枚のプレートで構成されたロックアップ装置において、両プレートに形成されたスリット及び突起によって両プレートの軸方向の位置決めのための機構を構成しているので、構成が簡単かつコンパクトになる。このため、弾性部材のためのスペースをより広く確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態によるロックアップ装置の断面構成図。
【
図4A】内周側ダンパー機構のサブアセンブリを示す断面構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に本発明の一実施形態によるトルクコンバータのロックアップ装置1を示している。ここでは、トルクコンバータの構成については、フロントカバー2とタービンの一部であるタービンハブ3のみを示し、他の構成は省略している。なお、
図1の左側にはエンジンが配置され、
図1の右側にはトルクコンバータ及びトランスミッションが配置されている。
図1に示すO−Oがトルクコンバータ及びロックアップ装置1の回転軸である。
【0029】
[フロントカバー2及びタービンハブ3]
フロントカバー2は、図示しないフレキシブルプレート等の部材を介してトルクが入力される部材である。フロントカバー2は、円板部2aと、円板部2aの外周縁からトランスミッション側に向かって延びる筒状部2bとを有している。円板部2aのトランスミッション側の側面において、外周部には摩擦面2cが形成されている。円板部2aのエンジン側の側面外周部には、複数のナット5が溶接により固定されている。このナット5に螺合するボルト(図示せず)により、図示しないフレキシブルプレート等の部材が装着される。また、筒状部2bのトランスミッション側の端部には、トルクコンバータを構成するインペラーのインペラーシェル6が溶接により固定されている。
【0030】
タービンハブ3はタービンの内周部に設けられている。タービンハブ3は、軸方向に延びる筒状部3aと、筒状部3aから外周に向かって延びるフランジ部3bとを有している。タービンハブ3のフランジ部3bにはタービンシェルの内周部が複数のリベット7によって固定されている。また、タービンハブ3の筒状部3aの内周部には、トランスミッションの入力シャフトが係合するスプライン孔3cが形成されている。
【0031】
[ロックアップ装置1]
ロックアップ装置1は、タービンとフロントカバー2との間の空間に配置されており、必要に応じて両者を機械的に連結するための機構である。
【0032】
ロックアップ装置1は、主に、ピストン10と、リティニングプレート(入力プレート)11と、6個の外周側トーションスプリング12と、サポート部材13と、を有している。さらにロックアップ装置1は、1枚のクラッチプレート(第1プレート)15と、1枚のサイドプレート(出力プレート)16と、6個の内周側トーションスプリング17と、中間プレート18と、を有している。
【0033】
ここでは、リティニングプレート11、外周側トーションスプリング12、サポート部材13、及びクラッチプレート15の外周部によって、外周側のダンパー機構が構成されている。また、クラッチプレート15、サイドプレート16、内周側トーションスプリング17、及び中間プレート18によって、内周側のダンパー機構が構成されている。
【0034】
<ピストン10>
ピストン10は、
図2に示すように、環状の円板部10aと、筒状部10bと、を有している。筒状部10bは、円板部10aの内周端部からトランスミッション側に突出して形成されており、タービンハブ3の筒状部3aの外周面に軸方向及び回転方向に摺動自在に支持されている。また、ピストン10の円板部10aの外周部には、環状の摩擦部材20が固定されている。
【0035】
<外周側ダンパー機構>
リティニングプレート11はピストン10のトランスミッション側に配置されている。リティニングプレート11は、
図1、
図3A及び
図3Bに示すように、環状の円板部11aと、3個の係合部11bと、スプリング支持部11cと、を有している。環状の円板部11aは、内周部がリベット21(
図1参照)によってピストン10に固定されている。係合部11bは、円板部11aの外周端部において、さらに外周側に突出して形成され、外周端部はトランスミッション側に折り曲げて形成されている。スプリング支持部11cは、3つの係合部11bの円周方向間において、トランスミッション側に折り曲げて形成されている。
【0036】
外周側トーションスプリング12はリティニングプレート11のスプリング支持部11cの外周側に配置されている。そして、2個1組の外周側トーションスプリング12がリティニングプレート11の2つの係合部11bの間に配置されている。
【0037】
また、サポート部材13は、
図1に示すように、ピストン10と外周側トーションスプリング12との軸方向間に配置されており、リティニングプレート11及びクラッチプレート15に対して相対回転自在である。サポート部材13は、外周側トーションスプリング12のピストン10側の側部と外周部とを支持しており、2個1組の外周側トーションスプリング12の間に係合する係合部13a(
図1参照)を有している。このようなサポート部材13によって、2個1組みの外周側トーションスプリング12は直列に作用することになる。
【0038】
<内周側ダンパー機構>
内周側ダンパー機構のサブアセンブリを
図4A及び
図4Bに示している。なお、
図4Bでは、内周側トーションスプリング17は図示を省略している。
【0039】
クラッチプレート15は、
図4A、
図4B及び
図5に示すように、環状の円板部15aと、3個の係合部15bと、3個の第1スプリング収納部15cと、を有している。なお、
図5はクラッチプレート15の正面部分図である。
【0040】
係合部15bは、円板部15aの外周部に、さらに外周側に突出して形成されており、円周方向に等角度間隔で配置されている。各係合部15bは、断面コ字状であり、2個1組の外周側トーションスプリング12の端面に当接している。
【0041】
第1スプリング収納部15cは、内周側トーションスプリング17を収納し、保持する部分であり、各第1スプリング収納部15cには2個1組の内周側トーションスプリング17が収納されている。また、第1スプリング収納部15cの円周方向の両端は、内部に収納された内周側トーションスプリング17の端面に当接可能である。
【0042】
なお、円板部15aにおいて、
図5から明らかなように、第1収納部15cの外周側には、周方向に延びる所定長さの円弧状の3このスリット15dが形成されている。また、円板部15aにおいて、1つの係合部15bの内周側には、スリット15dとほぼ同じ径方向位置に2つの回り止め用の1対の突起15eが形成されている。
【0043】
サイドプレート16はクラッチプレート15に対向してピストン10側に配置されている。サイドプレート16は、円板部16aと、3個の係合部16bと、3個の第2スプリング収納部16cと、を有している。
【0044】
円板部16aの内周部は、
図1に示すように、リベット7によってタービンシェルとともにタービンハブ3のフランジ部3bに固定されている。
【0045】
係合部16bは円板部16aの外周部にトランスミッション側に突出して形成されている。各係合部16bは、クラッチプレート15のスリット15dに挿入され、トランスミッション側に貫通している。
図4Bに示すように、係合部16bの円周方向の長さはスリット15dの円周方向の長さより短く、係合部16bとスリット16dとの間には隙間が確保されている。係合部16bすなわちサイドプレート16は、この隙間の範囲で、クラッチプレート15に対して回転方向に移動自在である。
【0046】
また、サイドプレート16の係合部16bの内周面には、円周方向に延びる溝16dが形成されている。そして、3つの係合部16bに形成された溝16dにスナップリング22が装着されている。このスナップリング22は、クラッチプレート15のサイドプレート16とは逆側の側面に当接可能であり、これにより、クラッチプレート15及びサイドプレート16が互いに軸方向に離れないようになっている。
【0047】
なお、スナップリング22の円周方向の両端面は、
図4Bに示すように、クラッチプレート15の突起15eに当接している。これにより、スナップリング22の回転が防止されている。
【0048】
第2スプリング収納部16cは、第1スプリング収納部15cと対向する位置に形成されており、第1スプリング収納部15cとともに内周側トーションスプリング17を収納し、保持する部分である。前述のように、第1スプリング収納部15cと第2スプリング収納部16cとの間に、2個1組の内周側トーションスプリング17が収納され、保持されている。また、第2スプリング収納部16cの円周方向の両端は、内部に収納された内周側トーションスプリング17の端面に当接可能である。
【0049】
中間プレート18は、クラッチプレート15とサイドプレート16との軸方向間に、両プレート15,16と相対回転自在に配置されている。中間プレート18は、
図6に示すように、環状に形成されており、内周部には内周側に突出する3つの係合部18aが形成されている。各係合部18aは、第1スプリング収納部15c及び第2スプリング収納部16cの円周方向の中間部に位置するように配置されている。すなわち、各係合部18aは2個1組の内周側トーションスプリング17の2つの内周側トーションスプリング17の間に配置されている。
【0050】
このような中間プレート18によって、2個1組の内周側トーションスプリング17を直列に作用させることができる。
【0051】
[動作]
車両の速度が所定の速度以上になると、ピストン10がフロントカバー2側に移動させられ、摩擦部材20がフロントカバー2の摩擦面に押し付けられる。摩擦部材20がフロントカバー2に押し付けられることによって、フロントカバー2のトルクは、ピストン10からリティニングプレート11を介して外周側トーションスプリング12に伝達される。外周側トーションスプリング12に伝達されたトルクは、さらにクラッチプレート15の係合部15b及び第1スプリング収納部15cを介して内周側トーションスプリング17に伝達される。この内周側トーションスプリング17に伝達されたトルクは、第2スプリング収納部16cを介してタービンハブ3に伝達される。すなわち、フロントカバー2が機械的にタービンハブ3に連結され、フロントカバー2のトルクがタービンハブ3を介してトランスミッションの入力シャフトに直接出力される。
【0052】
以上のような動力伝達の際に、外周側トーションスプリング12はサポート部材13によって、また内周側トーションスプリング17は中間プレート18によって、それぞれ2つのトーションスプリングが直列に作用する。このため、低剛性、広捩じり角度化を実現することができる。
【0053】
[特徴]
(1)クラッチプレート15のスリット15d及びサイドプレート16の突起16bによって、簡単な構成でストッパ機構を実現することができる。また、このストッパ機構に設けられたスナップリング22によって2枚のプレート15,16の軸方向の位置決めをすることができ、構成が簡単になる。
【0054】
(2)内周側のダンパー機構が、それぞれ1枚のクラッチプレート15及びサイドプレート16と、トーションスプリング17と、中間プレート18と、によって構成されている。このため、ロックアップ装置のダンパー機構を、3枚のプレートによって低剛性及び広捩じり角度化することができ、従来装置に比較して、部品年数が削減され、また軸方向長さを短縮することができる。
【0055】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0056】
特に、クラッチプレート及びサイドプレートの具体的な形状は前記実施形態に限定されるものではなく、種々の形状が可能である。
【0057】
また、前記実施形態では、ピストンのフロントカバー側の面に摩擦部材を設けたが、複数の摩擦部材からなるクラッチ部を設け、このクラッチ部を介してフロントカバーからトーションスプリングにトルクを伝達する装置にも、同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0058】
1,1’ ロックアップ装置
2 フロントカバー
3 タービンハブ
10,30 ピストン
11 リティニングプレート(入力プレート)
12 外周側トーションスプリング
13 サポート部材
15,31クラッチプレート(第1プレート)
16,32 サイドプレート(出力プレート)
16b 係合部
17 内周側トーションスプリング
18,34 中間プレート
22 スナップリング
33 トーションスプリング