特許第6297253号(P6297253)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297253
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】白板紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/72 20060101AFI20180312BHJP
   D21H 11/14 20060101ALI20180312BHJP
   D21H 21/22 20060101ALI20180312BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   D21H19/72
   D21H11/14
   D21H21/22
   D21H27/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-224997(P2012-224997)
(22)【出願日】2012年10月10日
(65)【公開番号】特開2014-77211(P2014-77211A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2014年11月5日
【審判番号】不服2016-15212(P2016-15212/J1)
【審判請求日】2016年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越紀州製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】田村 篤
(72)【発明者】
【氏名】矢田 明宏
(72)【発明者】
【氏名】石塚 豊
(72)【発明者】
【氏名】峯島 克史
【合議体】
【審判長】 井上 茂夫
【審判官】 谿花 正由輝
【審判官】 蓮井 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−206987(JP,A)
【文献】 特開平06−041896(JP,A)
【文献】 特開平10−292280(JP,A)
【文献】 特開2011−132621(JP,A)
【文献】 特開2005−048293(JP,A)
【文献】 特開2010−077555(JP,A)
【文献】 特開2011−137261(JP,A)
【文献】 特開2008−156773(JP,A)
【文献】 特開2005−023438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 11/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙パルプの配合割合が60質量%以上である3層抄き以上の多層抄きである基紙の少なくとも一方の面に顔料及び接着剤を主体とした塗工層を設けた白板紙において、
前記基紙の層のうち、一方の表面に配置した層を表面層、他方の表面に配置した層を裏面層、前記表面層と前記裏面層との中間に配置した層を中間層とそれぞれ表記したとき、
(1)前記表面層及び前記裏面層の古紙パルプの配合割合が0質量%であり、
(2)前記中間層の古紙パルプの配合割合が90質量%以上であり、
(3)塗工前の基紙がロジン系サイズ剤を含み、該ロジン系サイズ剤の添加率が前記基紙全体のパルプ繊維に対して0.2〜0.8質量%であり、
(4)前記白板紙の密度が0.77〜0.87g/cmであり、
(5)前記白板紙の離解フリーネスが、450〜600mlであることを特徴とする白板紙。
【請求項2】
前記中間層のロジン系サイズ剤の含有量は、前記表面層及び前記裏面層のロジン系サイズ剤の含有量よりも多く、かつ、前記中間層のパルプに対して0.4〜1.2質量%であることを特徴とする請求項1に記載の白板紙。
【請求項3】
前記古紙パルプが未叩解の古紙パルプであるか、又は未叩解の古紙パルプの離解フリーネスを基準として離解フリーネスの差異値がCSF100ml以内の叩解した古紙パルプであることを特徴とする請求項1又は2に記載の白板紙。
【請求項4】
前記基紙が、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物、高級アルコールのプロピレンオキサイド付加物若しくは高級アルコールのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物、多価アルコール型非イオン型界面活性剤、高級脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、多価アルコールと脂肪酸とのエステル化合物、多価アルコールと脂肪酸とのエステル化合物のエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミド、脂肪酸アミドのヒドロキシエチル誘導体又は脂肪酸ポリアミドアミンの中から選ばれた成分を含まないことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の白板紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密度が低く、印刷作業性が良く、箱などに加工した場合の強度に優れ、また退色性が良い白板紙に関する。
【背景技術】
【0002】
白板紙は、印刷されパッケージ用として使用される。したがって、白板紙は、印刷適性だけでなく、製函性又は箱としての使用された場合の強度も重要な課題となる。ここで、白板紙は坪量150g/m以上の厚紙であり、一般的には3層〜9層の多層構造からなる。白板紙は、例えば、白層、白下層、中層と呼ばれる各層が合わされることによって製造される。白板紙は、具体的には、最表層は白層と呼ばれる白色度の高いさらしパルプを使用した層、ついで白層に接する内側層は白下層と呼ばれる比較的白色度の高い古紙を使用した層、更に内側の層は中層と呼ばれる古紙パルプを使用した層で構成されている。
【0003】
白板紙は、印刷作業時においては、持ち運びなどの観点から高い剛度が求められ、箱などに加工された場合には積まれたときの上からの圧縮強度が求められている。さらには、環境対応、省資源などの観点から紙の軽量化又は古紙パルプの高配合が要望されている。
【0004】
白板紙は、剛度を高くすること、リングクラッシュなどの圧縮強度を高くすることが求められる。また、白板紙自体の軽量化を実現するためには、同坪量で紙厚を高くする、すなわち嵩を出す技術が必要となる。
【0005】
嵩を出す方法として、機械パルプを使用する方法又は嵩高剤と呼ばれる高級アルコール系界面活性剤を使用する方法(例えば、特許文献1又は2を参照。)、高級アルコール系界面活性剤又は脂肪酸アミド系資材を使用する方法(例えば、特許文献3を参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−200806号公報
【特許文献2】特開2005−200807号公報
【特許文献3】WO2003/056101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1又は2に記載された方法は高級アルコール系界面活性剤を使用しているが、サイズ剤を添加しても無サイズとなってしまうものであり、サイズプレスを有する抄紙機ではサイズ液の吸液量が膨大となり実質生産することができない。また、特許文献1又は2では、機械パルプを使用する方法も提案しているが機械パルプには化学パルプと異なりリグニンと呼ばれる樹脂が多く残っているため退色が大きく保存に適さない。特許文献3に記載された方法は特許文献1又は2に記載されている高級アルコール系界面活性剤の他に脂肪酸アミド系資材を使用する方法も記載しているが、この方法ではサイズ性を発現することはできるものの、カチオン性が強く抄紙工程内の電荷のバランスが大きく崩れ、カチオン性物質が、抄紙系で使用するカチオン系紙力剤などと共にパルプ繊維に定着しなくなる。その結果、白水に嵩高剤をはじめとするカチオン性物質が蓄積され工程汚れとなり、紙面に欠点として現れ生産することができない。また、高級アルコール系界面活性剤又は脂肪酸アミド系資材は、低密度化剤(又は嵩高剤)という名称で販売されているが、非常に高価であり、古紙を使用する安価な白板紙に使用することは実質不可能である。
【0008】
本発明の目的は、前述した問題点を解消し、密度が低く、剛度が高く、リングクラッシュなどの機械的強度に優れ、退色性の良い白板紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、白板紙について鋭意検討を重ねた結果、次の構成によって、課題を達成できることを見出した。すなわち、本発明に係る白板紙は、古紙パルプの配合割合が60質量%以上である3層抄き以上の多層抄きである基紙の少なくとも一方の面に顔料及び接着剤を主体とした塗工層を設けた白板紙において、前記基紙の層のうち、一方の表面に配置した層を表面層、他方の表面に配置した層を裏面層、前記表面層と前記裏面層との中間に配置した層を中間層とそれぞれ表記したとき、(1)前記表面層及び前記裏面層の古紙パルプの配合割合が0質量%であり、(2)前記中間層の古紙パルプの配合割合が90質量%以上であり、(3)塗工前の基紙がロジン系サイズ剤を含み、該ロジン系サイズ剤の添加率が前記基紙全体のパルプ繊維に対して0.2〜0.8質量%であり、(4)前記白板紙の密度が0.77〜0.87g/cmであり、(5)前記白板紙の離解フリーネスが、450〜600mlであることを特徴とする。白板紙の離解フリーネスをこの範囲とすることで、密度を所望する範囲にコントロールすることができる。
【0010】
本発明に係る白板紙では、前記中間層のロジンサイズ剤の含有量は、前記表面層及び前記裏面層のロジンサイズ剤の含有量よりも多く、かつ、前記中間層のパルプに対して0.4〜1.2質量%であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る白板紙では、前記古紙パルプが未叩解の古紙パルプであるか、又は未叩解の古紙パルプの離解フリーネスを基準として離解フリーネスの差異値がCSF100ml以内の叩解した古紙パルプであることが好ましい。この範囲とすることで、密度を所望する範囲にコントロールすることができる。
【0012】
本発明に係る白板紙では、前記基紙が、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物、高級アルコールのプロピレンオキサイド付加物若しくは高級アルコールのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物、多価アルコール型非イオン型界面活性剤、高級脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、多価アルコールと脂肪酸とのエステル化合物、多価アルコールと脂肪酸とのエステル化合物のエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミド、脂肪酸アミドのヒドロキシエチル誘導体又は脂肪酸ポリアミドアミンの中から選ばれた成分を含まないことが好ましい。これらの成分を使用しないことで、工程汚れなどの支障がなく白板紙を生産することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、密度が低く、剛度が高く、リングクラッシュなどの機械的強度に優れ、退色性の良い白板紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0015】
本実施形態に係る白板紙は、古紙パルプの配合割合が60質量%以上である3層抄き以上の多層抄きである基紙の少なくとも一方の面に顔料及び接着剤を主体とした塗工層を設けた白板紙において、基紙の層のうち、一方の表面に配置した層を表面層、他方の表面に配置した層を裏面層、表面層と裏面層との中間に配置した層を中間層とそれぞれ表記したとき、(1)表面層及び裏面層の古紙パルプの配合割合が20質量%以下であり、(2)中間層の古紙パルプの配合割合が90質量%以上であり、(3)塗工前の基紙がロジン系サイズ剤を含み、ロジン系サイズ剤の添加率が基紙全体のパルプ繊維に対して0.2〜1.0質量%であり、(4)白板紙の密度が0.77〜0.87g/cmであり、(5)前記白板紙の離解フリーネスが、450〜600mlである。本明細書において、表面層及び裏面層を、白層ということもある。中間層のうち、表面層又は裏面層に接する中間層を、白下層ということもある。また、中間層のうち、表面層又は裏面層に接しない中間層を、中層ということもある。
【0016】
基紙に用いる各層のパルプの離解フリーネスは、いずれも350ml以上600ml以下であることが好ましい。より好ましくは400ml以上570ml以下である。350ml未満では、基紙が緻密となり密度が高くなり嵩が出ない場合がある。また、600mlを超えると繊維間結合が弱くなり、紙力の低下が生じ印刷に耐えうることができず支障をきたす場合がある。本発明における各層のパルプの離解フリーネスは、基紙を各層に分離しTappi離解機(JIS P 8220:1998「パルプ−離解方法」に準拠)を用いて固形分濃度1質量%とし、25分間離解調製したスラリーをカナダ標準形ろ水度試験機(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」に準拠)で測定することによって得られる。
【0017】
白板紙の離解フリーネスは、350〜600mlであることが好ましい。より好ましくは、400〜550mlである。350ml未満では、基紙が緻密となり密度が高くなり嵩が出ない場合がある。600mlを超えると繊維間結合が弱くなり、紙力の低下が生じ印刷に耐えうることができず支障をきたす場合がある。本発明における白板紙の離解フリーネスは、各層のパルプの離解フリーネスの測定において、各層に分離せず、塗工層を含めた、白板紙全体で測定した値をいう。
【0018】
本実施形態に係る白板紙では、古紙パルプが未叩解の古紙パルプであるか、又は未叩解の古紙パルプの離解フリーネスを基準として離解フリーネスの差異値がCSF100ml以内の叩解した古紙パルプであることが好ましい。未叩解の古紙パルプの離解フリーネスを基準として離解フリーネスの差異値とは、未叩解のフリーネスと叩解によるフリーネスとの差異値(以下、「フリーネス差異値」と略す。)である。フリーネス差異値は、より好ましくは80ml以内である。古紙パルプは、少なくとも一回以上離解、叩解及び乾燥を経ているためフレッシュパルプよりも短繊維化・角質化が進んでいる。このため過度な叩解を施した古紙パルプは、急激に基紙を緻密にすると推測される。このため古紙パルプのフリーネス差異値がCSF100mlを超えると、基紙が緻密となり密度が高くなり嵩が出ない場合がある。
【0019】
基紙に用いる古紙パルプは、大きく上質系、中質系に分けられるが、退色を避けるために上質系古紙パルプを使用することが好ましい。上質系古紙パルプとしては、上白・罫白・カード・模造・色上・ケント・白アート・ミルクカートンなどの古紙から調製されたパルプが挙げられる。本実施形態で使用する古紙として、離解又は除塵処理だけでなく、好ましくは、脱墨、漂白、インク分散又は洗浄などの各工程を経た後の古紙パルプを使用する。特に多層抄きの場合、抄き合わせ後にプレスパートで加圧脱水するときに、微細なインクは別の層へ移動することがある。したがって、古紙処理工程には微細インクを除去できる洗浄装置を設置し、当該装置による洗浄工程を経ることがより好ましい。
【0020】
中質系古紙パルプの代表として、新聞、雑誌、切付、中質反古、茶模造、段ボール、台紙・地券、ボール紙などから調製されるパルプが挙げられる。
【0021】
基紙に用いるパルプとしては、古紙パルプの他に、バージンパルプとして広葉樹漂白サルファイトパルプ(LBSP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、機械パルプ(GP、TMP、BCTMP)などを有利に用いてもよい。また、必要に応じて、木材パルプ以外に、非木材パルプ、合成パルプ、合成繊維などを適宜用いてもよい。なお、機械パルプは退色性の面から白層に配合せず、白下層若しくは中層に配合することが好ましい。脱墨パルプ(DIP)については上質系古紙であれば白層に配合してもよいが、中質系古紙の場合は白層に配合せず、白下層若しくは中層に配合することが好ましい。
【0022】
表面層及び裏面層の古紙パルプの配合割合が20質量%以下である。より好ましくは10質量%以下である。更に好ましくは0質量%である。20質量%を超えると退色が悪化する。
【0023】
本明細書において、古紙パルプの配合割合は、数1によって算出する。
(数1)古紙パルプの配合割合(質量%)=古紙パルプの配合量÷(バージンパルプの配合量+古紙パルプの配合量)×100
【0024】
中間層、すなわち基紙表側の最表層(表面層)及び裏側の最表層(裏面層)を除いた層の古紙パルプの配合割合は90質量%以上である。より好ましくは95質量%以上であり、更に好ましくは100質量%である。90質量%未満では、白層に配合する古紙の配合量を多くしなければ、基紙全体の古紙パルプの配合割合を60質量%以上にすることができず、結果として退色が悪化する。退色性を維持しながら白板紙全体の古紙配合率を高める場合には、中間層に古紙を多く配合し、表面層及び裏面層には古紙配合を最小限とすることが好ましい。また、中間層のうち白下層には、中層よりも白色度の高い古紙パルプを配合することが好ましい。本明細書において、中間層の古紙パルプの配合割合は、中間層全体に対する古紙パルプの配合割合をいい、中間層を1層で形成した場合には、該層に対する古紙パルプの配合割合をいい、中間層を2層以上で形成した場合には、全中間層の全体に対する古紙パルプの配合割合をいう。
【0025】
本実施形態に係る白板紙では、填料を配合してもよい。使用する填料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、焼成クレー、二酸化チタン、水酸化アルミニウムである。填料は、白色度及び不透明度に優れるため、白下層又は中層に低白色度のDIPを使用する場合などは、白層に使用することが好ましい。
【0026】
基紙中の填料含有量は、最表層である白層に使用する場合は、パルプの乾燥質量100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。より好ましくは2〜8質量部である。さらに好ましくは、3〜7質量部である。1質量部未満では、白色度向上、不透明度向上などの効果が得られない場合がある。10質量部を超えると、基紙自体の強度が不足し印刷・加工に耐えられず実質使用することができない場合がある。
【0027】
白板紙全体の灰分は、基紙にDIPを配合している場合、残留する灰分の影響のため高くなる。白板紙全体の灰分は好ましくは3〜25質量部である。より好ましくは、5〜21質量部であり、更に好ましくは9〜17質量部である。3質量部未満とするにはDIP中の灰分を無くする必要があるため非常にコストがかかり実質不可能である。25質量部を超えるとパルプ分が少なくなり軽量化することができない。また、剛度及びリングクラッシュが所望する範囲にならない場合がある。ここで、白板紙全体の灰分は、基紙の灰分と塗工層の灰分との和である。
【0028】
本実施形態に係る白板紙では、パルプ及び填料以外に、ロジン系サイズ剤を0.2〜1.0質量%使用する。より好ましくは0.3〜0.8質量%である。ロジン系サイズ剤の添加率が0.2質量%未満では、所望する密度とならない場合がある。また、ロジン系サイズ剤の添加率が1.0質量%を超えると、抄紙工程の泡立ち又は定着しきれないサイズ剤が循環するなど、工程汚れによりつながりやすく、実質生産できない場合がある。ここで、ロジン系サイズ剤の添加率は、基紙全体のパルプ繊維に対するロジン系サイズ剤の添加率を指す。ロジン系サイズ剤は、内添サイズ剤であり、各層のパルプに配合する。ロジン系サイズ剤の添加率は、各層で均一にするか、又は各層で異なる添加率としてもよい。異なる添加率とする形態は、例えば、サイズ発現性の良い白層には少なく、またサイズ発現性の悪い中層、特にDIPを高配合している層には多くロジン系サイズ剤を添加する形態である。白層のロジン系サイズ剤の添加率は、0.05〜0.50質量%であることが好ましく、0.10〜0.45質量%であることがより好ましい。白下層のロジン系サイズ剤の添加率は、0.10〜0.60質量%であることが好ましく、0.20〜0.50質量%であることがより好ましい。中層のロジン系サイズ剤の添加率は、0.20〜1.50質量%が好ましく、0.40〜1.20質量%であることがより好ましい。ロジン系サイズ剤は、例えば、ロジンサイズ剤、強化ロジンサイズ剤、ロジンエマルジョンサイズ剤である。このうち、エマルジョンの微粒子の形で繊維間に入り込むロジンエマルジョンサイズ剤が特に好ましい。また、エマルジョンサイズ剤には、使用pH領域によって酸性用、弱酸性用又は中性用があるが推奨のpH使用領域で使用することが好ましい。例えば、DIPを高配合する中層は残留灰分の中に炭酸カルシウムが含まれ、原料pHが中性領域となるため中性用ロジンエマルジョンサイズ剤を使用することが好ましい。
【0029】
本実施形態に係る白板紙では、パルプ、填料及びロジン系サイズ剤以外に、例えば、硫酸バンド、カチオン澱粉若しくはポリアクリルアミド系などの内添紙力増強剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤又はピッチコントロール剤などの各種助剤を、各製品に合わせて好適に配合してもよい。
【0030】
本実施形態に係る白板紙では、基紙が、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物、高級アルコールのプロピレンオキサイド付加物若しくは高級アルコールのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物、多価アルコール型非イオン型界面活性剤、高級脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、多価アルコールと脂肪酸とのエステル化合物、多価アルコールと脂肪酸とのエステル化合物のエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミド、脂肪酸アミドのヒドロキシエチル誘導体又は脂肪酸ポリアミドアミンの中から選ばれた成分を含まないことが好ましい。これらの成分は、一般に嵩高剤と呼ばれるが、本実施形態に係る白板紙は、嵩高剤を使用せずとも、低密度の白板紙を得ることができる。また、これらの成分を使用しないことで、工程汚れなどの支障がなく白板紙を生産することができる。
【0031】
本実施形態に係る白板紙では、基紙の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、長網多層抄紙機、円網多層抄紙機、長網円網コンビ多層抄紙機など3層以上の多層抄きができる抄紙機である各種装置で製造できる。
【0032】
本実施形態に係る白板紙では、基紙の表面に表面サイズ液を塗布してもよい。表面サイズ液としては、例えば、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどの公知の水溶性高分子が挙げられるが、特に限定されるものではない。塗布方法は、サイズプレスのようなポンドを設けるタイプ、ゲートロールサイズプレス若しくはシムサイザーのようなフィルムメタリングタイプ、ロッドコーター又はエアーナイフコーターなどの公知の塗布機を用いることができるが、特に限定されるものではない。
【0033】
本実施形態に係る白板紙において、基紙の表面又は基紙に必要に応じて表面サイズ処理を施した表面に、塗工層を設ける。塗工層は、基紙の表面層又は裏面層のいずれか一方の表面だけに設けるか、又は表面層及び裏面層の両方の表面に設けてもよい。塗工層に用いる顔料は、カオリンクレー、重質炭酸カルシウム(粉砕炭酸カルシウム)などの精製した天然鉱物顔料、軽質炭酸カルシウム、有機顔料であることが好ましい。これらは単独で使用するか、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。そのほかの資材としては、特に限定されるものではなく、例えば、タルク、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、焼成カオリンの少なくとも1種を混合してもかまわない。また、塗工層を表面層及び裏面層の両方の表面に設ける場合は、表面層の表面に設ける塗工層と裏面層の表面に設ける塗工層とは、同一の組成とするか、又は異なる組成としてもよい。
【0034】
本実施形態に係る白板紙において、塗工層に用いるバインダーとしては、スチレン‐ブタジエン系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル若しくはエチレン‐酢酸ビニルなどの各種共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ユリア若しくはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン若しくはポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物などが挙げられる。さらには、天然植物から精製した澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、燐酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉又はそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの天然多糖類又はそのオリゴマー又はその変性体である。また、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲンなどの天然タンパク質又はその変性体、ポリ乳酸、ペプチドなどの合成高分子又はオリゴマーが挙げられる。これらは単独で使用するか、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本実施形態に係る白板紙において、塗工層形成用の塗料には、必要に応じて、分散剤、消泡剤、耐水化剤、着色染料、着色顔料、増粘剤などの通常使用されている各種助剤、又はこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いてもよい。
【0036】
本実施形態に係る白板紙において、塗工層形成用の塗料を塗工する方法は特に限定されるものではなく、液だまりを有するサイズプレス、メタリングサイズプレス、ゲートロール若しくはシムサイザーなどの各種フィルムトランスファーコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ブレードコーター、ダイレクトファウンテンコーター、スプレーコーター、カーテンコーターなどの各方式を適宜使用する。
【0037】
本実施形態に係る白板紙において、塗工層の片面当たり乾燥塗工量は7〜30g/mであることが好ましい。より好ましくは、12〜26g/mである。また、所望する塗工量に到達しない場合は2回以上塗工を繰り返してもよい。7g/m未満では所望する印刷光沢度に到達しない場合がある。30g/mを超えると塗工層強度が低下し、打ち抜き時又は製函時に紙粉又は粉落ちが発生し重大な障害となる場合がある。塗工層は、1層で形成するか、又は2層以上で形成してもよい。2層以上で形成する場合は、基紙の表面又は基紙に必要に応じて表面サイズ処理を施した表面に設ける下塗り層と、下塗り層の表面に設ける1層以上の上塗り層とを設ける。下塗り層及び上塗り層は、同一の組成とするか、又は異なる組成としてもよい。塗工層を2層以上とする場合には、塗工層全層を合計した塗工量が、前記した範囲内となるように形成することが好ましい。
【0038】
白板紙の坪量は、150g/m以上の厚紙であることが好ましく、200g/m以上であることがより好ましい。白板紙の坪量の上限値は、900g/mであることが好ましく、600g/mであることがより好ましい。白板紙の坪量が900g/mを超えると、箱に加工する時に、罫線が入りづらく折り曲げたときに割れが生じ実質使用することができない。ここで、白板紙の坪量は、基紙の1mあたりの質量及び塗工層の1mあたりの質量の和である。また、基紙の坪量は、130g/m以上であることが好ましく、180g/m以上であることがより好ましい。130g/m未満では、箱としての機能を発揮するためには強度が不足する場合がある。また、多層抄きとした場合1層当たりの坪量が低すぎて、実質生産することができない。基紙の坪量の上限値は、870g/mであることが好ましく、570g/mであることがより好ましい。また、基紙を130g/m以上で単層抄きとした場合、剛度又は強度が低くなり実質箱としての機能をなさない。
【0039】
本実施形態に係る白板紙で得られる紙ウェブを基紙として所望する品質要求によりキャスト処理を行ってもよい。
【0040】
本実施形態に係る白板紙では、白板紙の密度が0.77〜0.87g/cmである。より好ましくは0.80〜0.85g/cmである。0.77g/cm未満ではリングクラッシュをはじめとする箱とした場合の強度や持ち運びなどの印刷作業性はよいが、紙層強度が弱くなり印刷時に膨れと呼ばれる紙層内剥離が発生する。0.87g/cmを超えると箱とした場合の強度や持ち運びなどの印刷作業性が劣る。
【実施例】
【0041】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0042】
実施例又は比較例の白板紙について次の評価を行った。評価結果を表1に示す。また、評価方法については次に示す。
【0043】
<密度>
JIS P 8118:1998「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準じて算出した。
【0044】
<箱加工後の強度>
JIS P 8126:1994「紙及び板紙−圧縮強さ試験方法−リングクラッシュ法」に準じて算出した値を基に下記評価を行った。尚、測定方向は紙の抄紙流れ方向に対し垂直方向(CD方向)とした。
◎:比圧縮強さは157kN/m以上であり、箱としての使用可能である(実用レベル)。
○:比圧縮強さは133kN/m以上157kN/m未満であり、箱としての使用可能である(実用レベル)。
△:比圧縮強さは109kN/m以上133kN/m未満であるが、箱としての使用可能である(実用下限)。
×:比圧縮強さが109kN/m未満であり、箱としての使用不可である(実用不可)。
【0045】
<印刷作業性>
JIS P 8125:1994「紙及び板紙−こわさ試験方法−テーバーこわさ試験機法」に準じて算出した値を基に下記評価を行った。尚、測定方向は紙の抄紙流れ方向に対し垂直方向(CD方向)とした。
◎:こわさは13mN・m以上であり、持ち運びに支障なし(実用レベル)。
○:こわさは10mN・m以上13mN・m未満であり、持ち運びに支障なし(実用レベル)。
△:こわさは8.5mN・m以上10mN・m未満であり、持ち運びやすさの下限(実用下限)。
×:こわさが8.5mN・m未満であり、持ち運ぶことが出来ない(実用不可)。
【0046】
<退色性>
白板紙を105℃、1時間の熱風乾燥機によって処理し、退色の度合いを視感評価した。退色性の評価は、次に示す要領によって記述することにした。
◎…ほとんど黄ばみは無い(実用レベル)。
○…僅かに黄ばむ(実用レベル)。
△…多少黄ばみあり(実用下限レベル)。
×…黄ばみが著しい(実用に適さない)。
【0047】
(実施例1)
<基紙の作製>
白層(表面層及び裏面層)としてそれぞれ広葉樹パルプ(L−BKP)全パルプ中90%と針葉樹パルプ(N−BKP)全パルプ中10%とからなるCSF450mlに調整したパルプを用い、白下層(表面層に接する中間層及び裏面層に接する中間層)としてそれぞれCSF450mlの新聞脱墨漂白古紙を未叩解のまま用い、中層(表面層又は裏面層に接しない中間層)として2層を設け、それぞれCSF450mlの脱墨した雑誌古紙パルプを未叩解のまま用いて短網組み合わせ型抄紙機によって6層抄きで全坪量380g/mの基紙を抄速200m/minで抄紙した。表側白層(表面層)の坪量は30g/m、表側の白下層(中間層)の坪量は60g/m、中層(中間層)の坪量はそれぞれ100g/mを2層、裏側の白下層(中間層)の坪量は60g/m、裏側白層(表面層)の坪量は30g/mであった。白層のパルプには、パルプ量に対してタルク(日本タルク株式会社製、NTL)を5%混合したものを用い、6層全層に紙力増強剤としてポリアクリルアマイド(荒川化学工業株式会社製 ポリストロン619)を各層のパルプ量に対して0.2%、凝集助剤として硫酸バンドを白層のパルプ量に対して0.5%、白下層及び中層のパルプに対して2.0%、サイズ剤として中性用ロジンエマルジョンサイズ剤(ハリマ化成株式会社製 ニューサイズ738)を白層のパルプ量に対して0.3%、白下層及び中層のパルプに対して0.7%、歩留り向上剤(栗田工業株式会社製 HH220)を6層全層に各層のパルプ量に対して300ppm添加した。基紙全体のパルプ繊維に対する全ロジンサイズ剤の添加率は0.62%となった。表面層及び裏面層の古紙パルプの配合割合はそれぞれ0%、中間層の古紙パルプの配合割合は100%であった。また、基紙全体の古紙パルプの配合割合は、84.2%であった。
【0048】
<サイズプレス>
基紙に酸化澱粉(日本食品化工株式会社製 MS3800)の7%糊液をポンド式サイズプレスによって片面当たり固形分2g/mとして両面に塗布、乾燥した。
【0049】
<表面層への塗工層の形成>
基紙の表面層に、下塗り層用塗料として、顔料としてカオリン(ケイミン社製 ハイドラスパース)を全顔料中20部及び湿式重質炭酸カルシウム(株式会社イメリスミネラメズジャパン製 カービタル60)を全顔料中80部と、接着剤として全顔料100部に対してSBR(スチレン‐ブタジエンゴム)系ラテックス(旭化成ケミカル社製、B−1541)を15部及び全顔料100部に対してリン酸エステル化澱粉を3部とからなる塗料を用い、この下塗り層用塗料をロッドコーターにて固形分10g/mとなるように塗布、乾燥して下塗り層を設けた。次いで上塗り層用塗料として、顔料としてカオリン(カダム社製 アマゾンSB)を全顔料中30部、湿式重質炭酸カルシウム(株式会社イメリスミネラメズジャパン製 カービタル90)を全顔料中60部及び酸化チタン(デュポン社製 RPS−Vantage)全顔料中10部と、接着剤として全顔料100部に対してSBR系ラテックス(旭化成ケミカル社製 B−1541)を15部とからなる塗料を用い、この上塗り層用塗料をロッドコーターにて固形分10g/mとなるように塗布、乾燥して上塗り層を形成した。
【0050】
<裏面層への塗工層の形成>
基紙の裏面層に、上塗り層用塗料をロッドコーターにて固形分10g/mとなるように塗布、乾燥して塗工層を形成した。
【0051】
<平滑加工処理>
線圧50kg/cmにてキャレンダー処理を行い、その後80kg/cm、140℃にて表面をラスタープレスにて処理し白板紙を得た。白板紙の離解フリーネスは450mlとなった。
【0052】
(実施例2)
ロジンエマルジョンサイズ剤を白層のパルプ量に対して0.1%、白下層及び中層のパルプに対して0.25%に変更した以外は実施例1と同様とした。基紙全体のパルプ繊維に対する全ロジンサイズ剤の添加率は0.21%となった。
【0053】
(実施例3)
ロジンエマルジョンサイズ剤を白層のパルプ量に対して0.1%、白下層及び中層のパルプに対して0.35%に変更した以外は実施例1と同様とした。基紙全体のパルプ繊維に対する全ロジンサイズ剤の添加率は0.31%となった。
【0054】
(実施例4)
ロジンエマルジョンサイズ剤を白層のパルプ量に対して0.3%、白下層及び中層のパルプに対して0.9%に変更した以外は実施例1と同様とした。基紙全体のパルプ繊維に対する全ロジンサイズ剤の添加率は0.81%となった。
【0055】
参考例5)
ロジンエマルジョンサイズ剤を白層のパルプ量に対して0.4%、白下層及び中層のパルプに対して1.1%に変更した以外は実施例1と同様とした。基紙全体のパルプ繊維に対する全ロジンサイズ剤の添加率は0.99%となった。
【0056】
(実施例6)
サイズ剤を弱酸性用ロジンエマルジョンサイズ剤(ハリマ化成株式会社製 ハーサイズNES745)に変更し、かつ、ロジンエマルジョンサイズ剤を白層のパルプ量に対して0.4%、白下層及び中層のパルプに対して1.1%に変更した以外は実施例1と同様とした。基紙全体のパルプ繊維に対する全ロジンサイズ剤の添加率は0.99%となった。
【0057】
参考例7)
白下層及び中層に使用する古紙パルプを叩解しフリーネス450mlから350mlへ調整して使用した以外は実施例1と同様とした。古紙パルプのフリーネスの差異値は100mlであった。白板紙の離解フリーネスは380mlとなった。
【0058】
参考例8)
白層(表面層及び裏面層)に使用するパルプを、広葉樹パルプ70%と、針葉樹パルプ10%と、未叩解の新聞脱墨漂白古紙20%とに変更した以外は実施例1と同様とした。白板紙の離解フリーネスは450mlとなった。
【0059】
(比較例1)
ロジンエマルジョンサイズ剤を未使用とした以外は実施例1と同様とした。基紙全体のパルプ繊維に対する全ロジンサイズ剤の添加率は0%となった。
【0060】
(比較例2)
ロジンエマルジョンサイズ剤を白層のパルプ量に対して0.5%、白下層及び中層のパルプに対して1.3%に変更した以外は実施例1と同様とした。基紙全体のパルプ繊維に対する全ロジンサイズ剤の添加率は1.17%となった。しかし、抄紙機上の汚れが著しく紙を得ることができなかった。
【0061】
(比較例3)
白層の原料、白下層の原料及び中層の原料のそれぞれの完成原料を、白層の原料:白下層の原料:中層の原料=30:60:100で混合し、長網単層抄きによって380g/mとした基紙を使用した以外は実施例1と同様とした。基紙全体のパルプ繊維に対する全ロジンサイズ剤の添加率は0.62%となった。
【0062】
(比較例4)
白層に脱墨したCSF450mlの雑誌古紙パルプを未叩解のまま用い、中層に広葉樹パルプ(L−BKP)90%と針葉樹パルプ(N−BKP)10%とからなるCSF450mlに調整したパルプを使用した以外は実施例1と同様とした。基紙全体のパルプ繊維に対する全ロジンサイズ剤の添加率は0.62%となった。
【0063】
【表1】
【0064】
表1から明らかなように、実施例1〜4、6の白板紙は、いずれも、密度が低いため紙厚さが高くなり、箱にしたときの強度や印刷時などの持ち運びが良好であり、また退色性も優れていた。また、高級アルコール系界面活性剤、脂肪酸アミド系資材などの嵩高剤を使用せずとも、古紙を使用した、低密度の白板紙を製造できることが確認できた。実施例1と参考例7とを比較すると、古紙パルプを未叩解とすることで、箱加工後の強度及び印刷作業性を向上できることが確認できた。
【0065】
比較例1では、ロジン系サイズ剤を使用していないため、密度が高くなり、紙厚さが出なかった。その結果、箱にしたときの強度が低く、印刷時などの持ち運びに支障をきたした。比較例2ではサイズ剤を過剰に添加したため、抄紙工程内が汚れ、白板紙を得ることができなかった。比較例3では基紙を単層抄きとしたため所望する剛度が得られず印刷時などの持ち運びに支障をきたした。また、箱にしたときの強度が低く使用することができなかった。比較例4では、最表層に雑誌古紙を使用したため退色性が悪化し、使用できなかった。
【0066】
表1から明らかなように、古紙パルプの配合割合が60質量%以上である3層抄き以上の多層抄きである基紙の少なくとも一方の面に顔料及び接着剤を主体とした塗工層を設けた白板紙において、基紙の層のうち、一方の表面に配置した層を表面層、他方の表面に配置した層を裏面層、表面層と裏面層との中間に配置した層を中間層とそれぞれ表記したとき、(1)表面層及び裏面層の古紙パルプの配合割合が20質量%以下であり、(2)中間層の古紙パルプの配合割合が90質量%以上であり、(3)塗工前の基紙がロジン系サイズ剤を含み、ロジン系サイズ剤の添加率が基紙全体のパルプ繊維に対して0.2〜1.0質量%であり、(4)白板紙の密度が0.77〜0.87g/cmである白板紙において印刷作業性が良く、箱などに加工した場合の強度に優れた白板紙を得ることができた。