【実施例1】
【0015】
実施例1に係る弁装置を有する分岐管につき、
図1から
図10を参照して説明する。
図1に示すように、本実施例の流体管1,1’及び弁装置を有する分岐管2の筐体3は、例えば、地中に埋設される上水道用のダクタイル鋳鉄製であり、断面視略円形状に形成され、内周面がモルタル層で被覆されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいは石綿、コンクリート製、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等であってもよい。更に尚、流体管の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、本実施例の上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0016】
流体管1は、地中に略水平方向に埋設され流体管路を構成し、流体管1の途中には、対向するように設けられた2つの受口部4,4’に弁装置を有する分岐管2が接続されている。弁装置を有する分岐管2は、流体管1,1’,…の流体管路網中に予め適宜所定の間隔で複数個組み込まれて、例えば、後述する
図8に示すように、2つの弁装置を有する分岐管2,42の間に接続された流体管1’,…や流体管に付属される流体機器の交換や修理のための作業を不断流状態で実施する際に用いられる。
【0017】
図1に示すように、弁装置を有する分岐管2は、受口部4,4’に接続され流体管路をなす筐体3と、筐体3の内部に備えられた弁体5(
図3参照)と、弁体5を作業者が回動操作するための操作軸6とを主として構成される。
【0018】
筐体3は、
図1及び
図2に示すように、受口部4,4’に連通する本管部7,7’と、本管部7,7’の間に設けられ本管部7,7’の管径より大径の有底筒形に形成された弁室部8と、弁室部8を密封状に閉塞する弁蓋部9と、弁室部8に連通し本管部7,7’から分岐する分岐部10とからなる。
【0019】
本管部7,7’の各端部には、受口部4,4’に挿入可能な挿口形状の接続部11,11’が形成されている。一方で、受口部4,4’の端部には、先端が鋭利な爪部12,12’が受口部4,4’の内周面に突出するように設けられるとともに、爪部12,12’の外周側にボルト13,13’が設けられている。また、受口部4,4’の内周面には、周方向に環溝部14,14’が形成され、この環溝部14,14’に環状のゴムリング15,15’が嵌め込まれている。ボルト13,13’が受口部4,4’の内径方向に螺入されることで、爪部12,12’が押圧されて本管部7,7’の外周壁に食い込まれるとともに、受口部4,4’と本管部7,7’とがゴムリング15,15’を介して密接し、受口部4,4’と本管部7,7’とが密封状に固定されている。
【0020】
尚、接続部11,11’は、一方若しくは両方が受口形状に形成されてもよいし、端部にフランジが形成されてもよく、或いは、端面が切断面に形成された切管の端部として形成されてもよく、流体管網に接続可能なように流体管側の接続態様に合わせて適宜設定することができる。更に尚、接続部11,11’は、例えば、図示しない離脱防止用の押輪及びシール部材等を用いて、ボルト・ナットで締結することで受口部4,4’に密封状に接続されてもよい。
【0021】
次に、
図3に示すように、弁室部8の上部には、筐体3の内部に弁体5を配置するための開口部16が形成されている。また、開口部16を囲う弁室部8の上端面には、周方向に所定間隔で離間されて雌ネジ部17が形成されている。そして、弁室部8の上部に、略円盤状の弁蓋部9が、パッキン部材が介在されて配置され、弁蓋部9の外縁部に周方向に設けられた複数のボルト18が雌ネジ部17に締結されることで、弁室部8に弁蓋部9が固定され、開口部16が密封状に閉塞されている。尚、弁室部8と弁蓋部9との固定形態は雌ネジ部17とボルト18とによるものに限らず、例えば、開口部16周辺の筐体3の外周面に溝を形成するとともに、この溝に係止される爪部を蓋部に形成することで、弁室部8に弁蓋部9が固定されるようにしてもよい。
【0022】
また、弁蓋部9の中央には、
図3に示すように、弁蓋部9の上方から下方に貫通する蓋貫通孔19が設けられている。この蓋貫通孔19には、本発明に係る回動軸をなす操作軸6が挿入されている。そして、操作軸6の弁蓋部9よりも上面側には、筐体3内部の弁体5の回動位置の方向を常に向くように、弁蓋部9の外径方向に延びる延設片20(
図1参照)が操作軸6に相対回転不能に設けられ、更に操作軸6の上端部には、操作軸6を回動操作するための操作棒(図示略)に嵌合するための規定形状を有したキャップ21が被せられている。
【0023】
尚、延設片20は、例えば、接着剤や溶接等によって操作軸6に相対回転不能に固定するようにしてもよいし、操作軸6の一部に方形の方形部を形成するとともに延設片20において操作軸6が挿入される挿入孔を平面視で略方形に形成して、方形部と挿入孔とを角部同士で係合させることで、延設片20と操作軸6とが同期して回転するようにしてもよい。更に尚、延設片20は、操作軸6を挟んで反対側方向にも延設されていてもよく、このようにすることで、操作軸6が回動軸回りのいずれかの方向、すなわち右回り(時計回り)か左回り(反時計回り)のいずれの方向に回動操作されても、延設片20が後述する規制ピン22(
図2参照)に当接されて、操作軸6の回動を規制することができる。
【0024】
また、延設片20は、延設部分を回動方向に薄く形成するとともに弾性体から形成するようにしてもよい。これにより、延設片20の延設部分が規制ピン22に当接すると、操作軸6が所定の回動角度まで回動されたことが、規制ピン22と延設片20との当接により作業者に報知される一方で、作業者は、引き続き規制ピン22に延設片20を当接させ、弾性体からなる延設部分を変形させて、規制ピン22を超えて延設片20を回動させることができるので、操作軸6を所定の回動角度範囲からその範囲外に容易に回動させることができるようになり、弁体5の開放作業の作業性を向上させることができる。
【0025】
また、弁蓋部9の上面には、
図1に示すように、平面視で操作軸6と延設片20の先端部との間に、蓋貫通孔19よりも小径の4つの小径孔23a〜23dが、分岐部10側に所定間隔離間されて円弧状に並んで設けられている。この小径孔23a〜23dの所定の1つには、
図2に示すように、棒状の所定長さの規制ピン22が、弁蓋部9の上面に突出するとともに脱着自在に挿入される。
【0026】
この規制ピン22の所定長さは、規制ピン22が延設片20の側面に当接可能なように設定され、小径孔23の間隔離間は、弁体5を後述する弁座39(
図5参照)から離す弁開放時の初期ストローク範囲内において、操作軸6が作業者により所定角度に回動操作されたときに、規制ピン22と延設片20とが当接するように設定される。これにより、作業者により操作軸6が所定角度に回動操作されると、延設片20が規制ピン22に当接して、所定角度を超えるような延設片20の移動が規制されるので、操作軸6を所定角度よりも大きな角度に回動操作不能になり、弁体5の誤動作が防止される。そして、規制ピン22が脱着自在であるので、作業者により規制ピン22が取り外されることで、規制を解除して所定角度より大きな角度に操作軸6を操作することもできるようになる。
【0027】
また、分岐部10は、
図1及び
図2に示すように、本管部7,7’の管軸に対して略垂直方向に筐体3の外周より突出して形成されており、分岐部10の先端部には、分岐部10の管径よりも大径のフランジ状の分岐接続部24が形成されている。尚、分岐接続部24は、受口形状に形成されてもよいし、挿口形状に形成されてもよく、或いは、端面が切断面に形成された切管の端部として形成されてもよく、例えば、後述するバイパス経路をなす延設配管40(
図8参照)に合わせて接続可能なように適宜接続態様を設定することができる。
【0028】
次に、弁体5は、
図3に示すように、側面視で略コ字状をなしており、外面がゴム等の弾性部材25で覆われている。本実施例1においては、弁体5を弾性部材25で覆うことで後述するシール部33を弁体5に構成するようにしているので、弁装置の製造を簡便にすることができる。
【0029】
また、弁体5は、弁蓋部9から弁室部8内に突出された操作軸6の末端部に支持されて弁室部8の内周壁方向に略水平に延びる上側支持部26と、上側支持部26の基端部から下方向に延設され筐体3内の管路を閉塞する弁部27と、弁部の下端から操作軸6の方向に略水平に延び棒状の支持軸28により筐体3の下部に回動可能に支持された下側支持部29とからなる。
【0030】
図4に示すように、弁体5の上側及び下側支持部26,29は、共に平面視で略扇形をなしており、先端部に、略円盤形をなし中央部に上下方向に貫通する貫通孔30,30’が形成された軸支持部31,31’が設けられている。
【0031】
また、軸支持部31,31’の側周面には、内径方向に穿設され貫通孔30,30’に連通する小径の挿入孔(図示略)が設けられている。この貫通孔30,30’には、
図3に示すように、操作軸6または支持軸28が挿入されるとともに、軸支持部31,31’の側周面から挿入孔に棒状の係止ピン32、32’が挿入されており、係止ピン32、32’が操作軸6または支持軸28の先端部の係止孔(図示略)に係止されることで、上側及び下側支持部29が操作軸6及び支持軸28に相対回転不能に固定されている。これにより、作業者により操作軸6が回転操作されることで、弁体5が弁室部8内を回動されるようになっている。
【0032】
また、弁部27は、
図4に示すように、平面視で略4分の1の円弧状をなしており、外側周面の外縁部には、弾性部材25が外径方向に隆起されて外縁部に沿って所定幅で延びる略方形枠状のシール部33が形成されている。このシール部33の外周面であり弁体5の外径方向を向くシール面34は、作業者により操作軸6が所定角度に回動操作されると、後述する筐体3の弁座面35(
図5参照)に圧接されるようになっている。また、シール部33が所定幅を有していることで、操作軸6が所定角度に回動操作された際に、後述する溝部36(
図5参照)を開放することができるようになっている。
【0033】
次に、筐体3の弁室部8の内部には、
図5に示すように、本管部7,7’が弁室部8に連通されることで弁室部8に開口する本管口部37,37’が形成されるとともに、分岐部10が弁室部8に連通されることで弁室部8に開口する分岐口部38が形成されている。そして、本管口部37,37’及び分岐口部38の周囲の弁室部8の内周壁面には、弁室部8の中心方向に隆起され本管口部37,37’及び分岐口部38を囲うように略方形枠状の弁座39が形成されている。
【0034】
弁座39において弁室部8の中心方向を向く弁座面35は、作業者により操作軸6が所定角度に回動操作されると、弁体5のシール面34に圧接されるようになっている。そして、操作軸6が所定角度に回動操作されて、シール面34と弁座面35とが圧接されることで、本管口部37,37’または分岐口部38が弁体5の弁部27によって密封状に閉塞されるようになっている。この弁座39を備えた弁室部8、シール部33を備えた弁体5、操作軸6、支持軸28、及び弁蓋部9によって本実施例の弁装置が構成される。
【0035】
また、
図5(a)及び
図6(b)に示すように、分岐口部38を囲う弁座39の外方側の縁部には、弁座39の本管部7側の側周面と弁座面35の一部とに連通する溝状の溝部36が形成されている。また、この溝部36は、
図5(b)に示すように、側面視で左右方向に所定幅を有する略長方形に形成されている。更に、溝部36は、分岐部10の管軸を通る水平面Xと交差するように形成されている。
【0036】
これにより、
図6(b)及び(c)に示すように、弁体5を弁座39から離す弁開放時の初期ストローク範囲内において、弁体5が所定角度の範囲内に回動された際に、溝部36と弁体5のシール面34とにより本発明に係る流通路Sが形成されるようになっている。また、シール面34を弁体5側に形成し、溝部36を弁座39側に形成するようにすることで、弁装置の製造を容易にすることができる。
【0037】
また、溝部36は、
図6(b)に示すように、弁体5が所定角度に回動されたときに、流通路Sの分岐部10側の出口開口部Qが所定の面積を有するように形成されている。これにより、弁体5が所定角度に回動されたときに、出口開口部Qを介して本管部7,7’から分岐部10に流通される流体の流量を所定の流量にすることができる。また、出口開口部Qを介して分岐部10に流通される流体の流量は、弁座39側の溝部36のみの形状、例えば、出口開口部Qの面積の大きさによって容易に調整することができる。
【0038】
この出口開口部Qの所定の面積は、本管部7,7’の流体の流量や圧力、及び後述するように分岐部10に接続される延設配管40(
図8参照)の配管長さや配管径などに応じて設定される。これにより、本管部7,7’から分岐部10に流通される流体の流量を、本管部7,7’を流れる流体の流量に対して微小な流量にすることができるとともに、延設配管40に対しても微小な流量にすることができる。
【0039】
また、溝部36、36’は、分岐部10の管軸を挟んで左右対称に、分岐口部38を囲う弁座39に形成されている。これにより、弁体5を弁座39から離す弁開放時の初期ストローク範囲内において、弁体5が回動軸となる操作軸6回りのいずれの方向に回動操作された場合でも、溝部36、36’のいずれかが開放されて流通路Sをなして、本管部7,7’から分岐部10に流体を流通することができるようになっている。
【0040】
尚、溝部36、36’は、弁体5が所定角度に回動されたときの出口開口部Qの面積が所定の面積となるように形成されていればよく、水平面Xより上方側や下方側に形成されていてもよいし、上下方向に長く延設されていてもよい。また、溝部は、
図7に示すように複数個に分割して溝部41を形成するようにしてもよい。
【0041】
次いで、本実施例1の弁装置を有する分岐管2の使用方法について
図1、及び
図8から
図10を用いて説明する。弁装置を有する分岐管2の使用方法では、まず、
図1に示すように、前述の筐体3に弁体5が挿入され、筐体3が弁蓋部9で密封状に閉塞されて、筐体3の外周面に操作軸6が突出された本実施例の弁装置を有する分岐管2が、流体管網の流体管1’,…に接続されて流体管路が構成されている。また、
図8に示すように、弁装置を有する分岐管2よりも流体管1’,…を介して下流側には更に別の弁装置を有する分岐管42が接続されている。
図8に示すように、流体管路の分岐前において、各弁装置を有する分岐管2,42の分岐部10,43は、弁体5,44により閉塞されており、本管部7,7’、45,45’の左側から右側に流体が流通されている。
【0042】
次に、
図8及び
図9(a)に示すように、分岐部10,43のフランジ状の分岐接続部24,46に、バイパス経路をなす延設配管40を図示しないパッキン部材を介在させて接続する。そして、分岐接続部24,46及び延設配管40のフランジ同士を図示しないボルト・ナットで締結することで、弁装置を有する分岐管2,42に延設配管40を密封状に固定する。
【0043】
また、上流側の弁装置を有する分岐管2において、作業者が弁蓋部9の上面における最も左側の小径孔23a(
図1参照)に規制ピン22を挿入する一方で、下流側の弁装置を有する分岐管42において、図示しない最も右側の小径孔に規制ピンを挿入する。
【0044】
次いで、
図9(b)に示すように、上流側の弁装置を有する分岐管2において、延設片20の側面が規制ピン22に当接するように、作業者が操作軸6を左回り(反時計回り)に回動操作して溝部36を開放して流通路Sを開放し、本管部7,7’の流体を分岐部10を介して延設配管40に充填する。尚、本発明で流体の充填とは、管内を流体で完全に満たして更に管内圧力が高まるまで流体を導入することを意味せず、空の管内に流体を導入し始めてから管内を流体で満たし終えるまでの流体の導入を意味する。
【0045】
このとき、
図9(b)に示すように、弁体5の回動方向Rの前方側の溝部36が開放されて、本管部7から分岐部10に流体が所定の微小流量で流通する一方で、弁体5の移動方向Rの後方側の溝部36’は分岐部10に連通することがないようになっている。これにより、弁体5の回動方向の前方から流体が流れて、この流体の流れによって弁体5の移動に対抗する方向に弁体5に抵抗力が作用するので、作業者の意図しない速さで溝部36が開放されてしまうことが防止される。
【0046】
そして、流通路Sにより所定の微小流量の流体が本管部7から分岐部10に流通されて、分岐部10に接続されている延設配管40内に急激な圧力変化が生じることなく流体が充填されるので、延設配管40内に水撃のような衝撃が生じることが防止される。一方で、本管部7では大きな流量の低下や圧力の低下が生じることが防止されて、本管部7の上流側から下流側への流れが維持される。したがって、延設配管40が損傷されたり、延設配管40が分岐部10から外れてしまったり、分岐部10の分岐接続部24が損傷されて流体の漏えいが生じたりすることが防止される。
【0047】
また、弁体5を弁座39から離す弁開放時の初期ストローク範囲の終点において、操作軸6の延設片20が規制ピン22に当接して、操作軸6の回動が規制されるので、例えば、作業者が誤って操作軸6を回動させ過ぎてしまったり、分岐部10への水や空気等の流体の充填中において何らかの原因で操作軸6が回動されてしまったりして、所定の微小流量よりも大きな流量で分岐部10に流体が流れるといった誤作動を防止すことができ、高度な技術を有する熟練の作業者でない場合でもあっても、作業者が操作軸6を操作して弁体5を弁座39から離して分岐部10を開放させる操作の際の初期ストロークにおいて、分岐部10に流通する流体を予め定められた微小流量に留めることができる。また、分岐部10を開放させる操作の際の初期ストロークにおいて、所定の微小流量で延設配管40に流体を充填することができる。
【0048】
また、所定の微小流量で延設配管40に流体を充填し、延設配管40内が流体で満たされた後に、下流側の弁装置を有する分岐管42において、図示しない延設片と規制ピンとが当接するまで操作軸6’を右回り(時計回り)に回動させ、分岐部46の左側の溝部47’を開放させることで、延設配管40を分岐管2、46に接続する際に管内に残留された空気を、弁装置を有する分岐管42を利用して微少な流量で流体管網の下流側に流す。これにより、延設配管40に残留された空気を、図示しない流体管網の下流側の空気弁等から流体管網の外部へ優先して排出することができる。また、弁装置を有する分岐管42を利用して空気を微少な流量で流体管網に流出させることで、空気が流体管網の空気弁から徐々に排出されることができ、弁装置を有する分岐管42の下流側の流体管網に大きな空気溜りが生じてしまうことを防止できる。
【0049】
その後、下流側の弁装置を有する分岐管42において、図示しない規制ピンを取り外すとともに操作軸6’を右回り(時計回り)に回動操作して、分岐部43を開放する一方で本管部45の上流側を弁体44で閉塞する。また、
図9(c)に示すように、上流側の弁装置を有する分岐管2においても、規制ピン22を取り外すとともに操作軸6を左回り(反時計回り)に回動操作して、分岐部10を開放する一方で本管部7,7’の下流側を弁体5で閉塞する。
【0050】
以上により、上流側及び下流側の弁装置を有する分岐管2,42の間の延設配管40に迂回用の流路を形成することができるとともに、補修する流体管1’,…の流れを遮断することができる。そして、流体の流通のない流体管1’,…を補修工事することができるようになる。
【0051】
尚、延設配管40の途中に図示しない空気弁を介在させることで、延設配管40の空気を効率よく外部に排出されるようにしてもよく、これにより、下流側の弁装置を有する分岐管42を利用して、延設配管40の接続時に管内に残留していた空気を流体管網の下流側に流す作業を省略することができる。更に、流体の流通のない流体管1’,…を補修した後には、上流側及び下流側の弁装置を操作して弁体5,44を分岐部10,43を閉塞する方向に回動させることで、流体管1’,…に流路を戻すことができ、分岐部10,43から延設配管40を撤去することができる。
【0052】
更に尚、
図10に示すように、弁装置を有する分岐管2の筐体3において、本管部7,7’の管軸に対して左右対称となるように、本管部7,7’を囲う弁座39の内側にも溝部48,48’を形成しておくことで、流体管1’,…を補修した後に流体管1’,…に流路を戻す際にも、本管部7,7’を開放させる操作の際の初期ストロークにおいて、分岐部10から本管部7,7’に所定の微小流量で流体を流通させることができ、流体管1’,…内に急激な圧力変化を生じさせることなく、流体管1’,…に流体を充填させることができるようになる。
【0053】
更に尚、上述の実施例1では、上流側の弁装置を有する分岐管2において、作業者が操作軸6を回動操作して溝部36を開放して、本管部7,7’の流体を微少流量で延設配管40に充填した後に、下流側の弁装置を有する分岐管42を利用して、延設配管40内に残留された空気を、微少な流量で流体管網の下流側に流すようにしているが、本発明に係る弁装置を有する分岐管の使用方法においては、この手順に限らず、例えば、下流側の弁装置を有する分岐管42において、作業者が分岐部46の左側の溝部47’を開放させることで、下流側の弁装置を有する分岐管42を利用して、延設配管40内に残留された空気が微少な流量で流体管網の下流側に流すようにした状態で、上流側の弁装置を有する分岐管2において、溝部36を開放して本管部7,7’の流体を微少流量で延設配管40に充填するようにしてもよい。これにより、延設配管40に流体を充填しつつ、残留空気を下流側の流体管網の空気弁を介して排出することができ、残留空気の排出作業の作業性を向上することができる。
【0054】
次いで、実施例1に係る弁装置を有する分岐管2の更に別の変形例について、
図11を用いて説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する説明を省略する。本変形例では、上述の実施例1と同様の弁体5が筐体49内に配置されるが、弁座39における溝部50,50’の形成位置が実施例1と異なっている。
【0055】
図11に示すように、筐体49の内周面に形成された分岐口部38の周囲には、分岐口部38を囲うように筐体49の内周方向に隆起する弁座39が形成されている。また、この弁座39の内方側の縁部には、弁座39の内方側、すなわち分岐口部38側の側周面と弁座面35の一部とに連通する溝状の溝部50,50’が形成されている。この溝部50,50’は、分岐部51の管軸を挟んで左右対称に形成されている。また、この溝部50,50’は、
図11(b)に示すように、側面視で左右方向に所定幅を有する略長方形に形成されている。更に、溝部36は、分岐部10の管軸を通る水平面Yと交差するように形成されている。
【0056】
これにより、例えば、作業者が分岐部51を左回しで開放させる操作の際の初期ストロークにおいて、図示しない弁体5の回動方向Rの後方側の溝部50’が開放されて、本管部52,52’から分岐部51に流体が流通する一方で、弁体5の回動方向の前方側の溝部50は分岐部10に連通することがないようになっている。そして、前述の実施例1と同様に弁体5を所定角度に操作した際に、溝部50,50’と弁体5のシール面34とで流通路Sが形成されるので、本管部52,52’から分岐部51に所定の微小流量で流体を充填することができる。
【0057】
尚、前述の実施例1の溝部36,36’と本変形例の溝部50,50’とを合わせて、弁座39に形成するようにしてもよい。これにより、前述の実施例1の弁装置を有する分岐管2の使用方法において、流体の流通のない流体管1’,…を補修した後に流体管1’,…に流路を戻す際に、閉塞されていた本管部を開放するときにも,分岐部から本管部に所定の微小流量で流体を流通させることができるようになる。
【実施例2】
【0058】
次に、実施例2に係る弁装置を有する分岐管53につき、
図12を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する説明を省略する。実施例2の弁装置を有する分岐管53では、上述の実施例1と同様の弁体5が筐体54内に配置されるが、弁座39の形状が実施例1と異なっている。
【0059】
図12に示すように、筐体54の弁室部55の内部には、本管部56,56’が弁室部55に連通されることで弁室部55に開口する本管口部37、37’が形成されるとともに、分岐部57が弁室部55に連通されることで弁室部55に開口する分岐口部38が形成されている。そして、本管口部37、37’及び分岐口部38の周囲の弁室部55の内周壁面には、弁室部55の中心方向に隆起され本管口部37、37’及び分岐口部38を囲うように略環状の弁座58が形成されている。
【0060】
また、
図12(a)に示すように、分岐口部38を囲う弁座58の外方側の縁部には、弁座58の本管部56側の側周面と弁座面59,59’の一部とに連通する溝状の溝部60,60’が形成されている。また、溝部60,60’は、
図12(b)に示すように、側面視で左右方向に所定幅を有する略長方形に形成されている。更に、溝部60,60’は、分岐部57の管軸を通る水平面Yと交差するように形成されている。これにより、弁体5を弁座58から離す弁開放時の初期ストローク範囲内において、弁体5が所定角度の範囲内に回動された際に、溝部60,60’と弁体5のシール面34とで本発明に係る流通路Sが形成されるようになっている。これらの流通路Sは、弁座58側に形成されているので、弁体5側に形成するよりも、水や空気等を分離して排出可能な微少流量用の流路を簡便に形成することができる。
【0061】
これにより、上述の実施例1の
図9(b)と同様に、例えば、作業者が分岐部57を左回転で開放させる操作の際の初期ストロークにおいて、弁体5の回動方向Rの前方側の溝部60が開放されて、本管部56,56’から分岐部57に流体が所定の微小流量で流通する一方で、弁体5の移動方向Rの後方側の溝部60’は分岐部57に連通することがない。また、弁体5の回動方向の前方から流体が流れて、この流体の流れによって弁体5の移動に対抗する方向に弁体5に抵抗力が作用するので、作業者の意図しない速さで溝部60が開放されてしまうことが防止される。
【0062】
また、溝部60,60’とシール面34とで形成される流通路Sにより所定の微小流量の流体が本管部56,56’から分岐部57に流通されるので、分岐部57に接続される延設配管40内に急激な圧力変化が生じることなく、流体が充填されて、延設配管40内に水撃のような衝撃が生じることが防止される。一方で、本管部56,56’では大きな流量の低下や圧力の低下が生じることなく、本管部56,56’の上流側から下流側への流れが維持される。
【0063】
次いで、実施例2に係る弁装置を有する分岐管53の変形例について
図13を用いて説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する説明を省略する。本変形例の弁装置を有する分岐管61では、上述の実施例2と同様の弁体5が筐体62内に配置されるが、弁座58における溝部63の形成位置が異なっている。
【0064】
図13に示すように、筐体62の内周に形成された分岐口部38の周囲には、分岐口部38を囲うように筐体62の内周方向に隆起する略環状の弁座58が形成されている。また、この弁座58の内方側の縁部には、弁座58の内方側、すなわち分岐口部38側の側周面と弁座面59の一部とに連通する溝状の溝部65,65’が形成されている。この溝部65,65’は、分岐部64の管軸を挟んで左右対称に形成されている。また、この溝部65,65’は、
図11(b)に示すように、側面視で左右方向に所定幅を有する略長方形に形成されている。更に、溝部36は、分岐部10の管軸を通る水平面Yと交差するように形成されている。
【0065】
これにより、例えば、作業者が左回しで分岐部64を開放させる操作の際の初期ストロークにおいて、図示しない弁体5の回動方向Rの後方側の溝部65’が開放されて、本管部66,66’から分岐部64に流体が流通する一方で、弁体5の回動方向の前方側の溝部65は分岐部64に連通することがないようになっている。そして、前述の実施例1と同様に弁体5を所定角度に操作した際に、溝部65,65’と弁体5のシール面34とで流通路Sが形成されるので、本管部66,66’から分岐部64に所定の微小流量で流体を充填することができる。
【0066】
尚、前述の実施例2の溝部60,60’と本変形例の溝部66,66’とを合わせて、弁座58に形成するようにしてもよい。これにより、前述の実施例1において、流体の流通のない流体管1’,…を補修した後に流体管1’,…に流路を戻す際に、閉塞されていた本管部66,66’を開放するときにも,分岐部64から本管部66,66’に所定の微小流量で流体を流通させることができる。