(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点が添付の図面と併用された以下の詳細な説明から明らかとなる。
【0014】
本明細書に開示されるのは、フッ素化アルファ−ベータ不飽和エステル(例えば、ハロゲン化(メタ)アクリル酸ベースの構造)、非環式ビニルエーテル、および環式ビニルエーテルの重合生成物をベースにした新規のコポリマーである。本明細書において使用される場合、「環式」とはビニルエーテル部分が環系内に組み込まれており、かつ2つの結合によってエンドもしくはエキソ部分として環に連結されていることを意味し、並びに「非環式」とは、ビニルエーテル部分が単結合だけによって環系に連結された置換基として存在することを意味する。さらに、「フッ素化」とは1以上のフッ素原子を含むことを意味し、並びにこの記載の範囲内に、有機基中の利用可能な水素原子の75%超、具体的には80%超、より具体的には90%超がフッ素原子で置換された場合である「過フッ素化」を広く含む。これら3種類のモノマーを含むコポリマーは、ラジカル重合方法によって製造され、これは例えば、環式ビニルエーテルおよび非環式ビニルエーテルとハロゲン化(メタ)アクリル酸構造との交互配列を有するランダム化サブユニットなどの、少なくとも部分的な交互構造をこのコポリマーに提供しうる。本明細書において使用される場合、「(メタ)アクリル」および「(メタ)アクリラート」は、アクリルおよびメタクリルの双方、並びにアクリラートおよびメタクリラートをそれぞれ意味する。テトラポリマー、ペンタポリマーおよびより高次のモノマー含有ポリマーを提供するために、これら3種類のモノマーと共に追加のモノマーが含まれることができる。さらに、ビニルエーテル成分の組成変化がポリマー構造−特性関係に影響を及ぼさない場合には、非環式および環式ビニルエーテルの割合を変えることによってポリマーの分子量も調節されうる。
【0015】
上述のように、コポリマーはアルファ−ベータ不飽和エステルの重合生成物を含む。このアルファ−ベータ不飽和エステルは好ましくは式(I)を有する溶解速度制御モノマーである:
【0017】
式(I)中、R
aはH、F、C
1−10アルキル、またはC
1−10フルオロアルキルであり、ただし、このモノマーの少なくとも1つの例についてはR
aはC
1−10フルオロアルキルである。好ましくは、R
aはC
1−4フルオロアルキル基である。典型的な基R
aには、CF
3、C
2F
5、C
3F
7、C
4F
9およびこれらの異性体が挙げられる。基R
aが異なっているが、ただし、少なくとも1つの基R
aがフッ素化されている式(I)の様々なモノマーの組み合わせが使用されうる。例えば、R
aがCF
3と、H、CH
3またはこれらの基の組み合わせとである式(I)のモノマーの組み合わせが使用されうる。
【0018】
また、式(I)においては、XはOまたはNRであり、ここでRはH、C
1−10アルキル、またはC
6−10アリールである。典型的なこの基Rには、メチル、エチル、n−もしくはイソプロピル、ブチル、フェニルなどが挙げられる。好ましくは、XはOである。
【0019】
式(I)におけるZ
1はC
1−20アルキル、C
1−20アルキレン、C
3−20シクロアルキル、C
3−20シクロアルキレン、C
6−20アリール、C
6−20アリーレン、C
7−20アラルキル、またはC
7−20アラルキレン基であり、ここでZ
1は場合によっては芳香族または非芳香族ヒドロキシル、スルホナート、スルホン酸、スルホンアミド、スルホンイミド、カルボン酸エステル、カルボナート、アミドまたは前述のものの少なくとも1つを含む組み合わせをさらに含む。本明細書において使用される場合、エステルを含むことは上述の基の中に、ペンダント単位として、その基を別の基礎構造に連結するための連結基として、またはラクトンとしてその基の構造中に組み込まれて、エステル基を有することを意味する。エステル基のカルボニル炭素がその基の炭素計数に含まれることが認識されるであろう。本明細書において使用される場合、「シクロアルキレン」は単環式(例えば、シクロペンチレン、シクロヘキシレンなど)、多環式(例えば、シクロペンチレン−シクロヘキシレン、ビス−シクロヘキシレン、トリス−シクロヘキシレンなど)、および縮合多環式(例えば、ノルボルニレン、アダマンチレンなど)を含む。基Z
1がアルキレン、シクロアルキレン、アリーレンまたはアラルキレンである場合には、その基には、例えば、モノもしくはジヘキサフルオロアルコール置換シクロヘキシレン、モノもしくはジヘキサフルオロアルコール置換ヒドロキシシクロヘキシル、ヘキサフルオロアルコール置換ノルボルニルをはじめとするシクロヘキシレンベースの基;ヒドロキシフェニル、ヒドロキシナフチル、モノもしくはジヘキサフルオロアルコール置換フェニレン、並びにモノもしくはジヘキサフルオロアルコール置換ヒドロキシフェニルが挙げられる。基Z
1がアルキル、シクロヘキシル、アリールもしくはアラルキルである場合には、その基には、これに限定されないが、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、メチルシクロペンチル、エチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、ヒドロキシアダマンチル、メチルアダマンチル、エチルアダマンチル、イソプロピルフェニル、イソプロピルナフチルなどが挙げられる。Z
1に含まれる置換基には、例えば、F、−OH、−C
6R
5OH、−C(CF
3)
2−OH、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−SO
2−O−、−SO
2−O−、および−NR−SO
2−が挙げられ、ここで各RはHであるか、またはフッ素化されているか、またはフッ素化されておらず、並びにC
1−10アルキル、C
3−10シクロアルキル、C
6−10アリール、またはC
7−10アラルキルである。
【0020】
好ましくは、式(I)の溶解速度制御モノマーは塩基可溶性モノマー、または脱保護後に塩基可溶性である酸脱保護性モノマーである。塩基可溶性基を有するモノマーには、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロピル基(場合によっては、本明細書においては、ヘキサフルオロアルコール基、および略してHFAと称される)、芳香族ヒドロキシル基、カルボン酸、スルホン酸、およびフルオロアルキルスルホンアミドを、塩基可溶性官能基として有するものが挙げられると理解されるであろう。同様に、酸脱保護性モノマーは酸の存在下で開裂されるあらゆる基を含むものである。好ましくは、そのような酸脱保護性基は上述のもののような塩基可溶性基を保護する。このような基には、これに限定されないが、第三級アルキルエステル、例えば、t−ブチルエステル、メチルシクロペンチル、エチルシクロペンチル、および2−メチル−2−アダマンチル;第三級ベンジルエステル、例えば、2−フェニル−2−プロピル;並びに第三級アルコキシカルボニル基、例えば、tert−ブチルオキシカルボニル基(略してt−BOC基)が挙げられる。
【0021】
式(I)の有用なこのようなモノマーには、塩基可溶性モノマーとして、式(I−a)の塩基可溶性環式脂肪族モノマーおよび式(I−b)の塩基可溶性芳香族モノマーが挙げられる。有用な酸脱保護性モノマーには、式(I−c)のものおよびカルボン酸エステルのような酸開裂性基を有する式(I−b)のものが挙げられる。上述のモノマーの少なくとも1種を含む組み合わせが使用されうることが理解されるであろう。
【0023】
式(I−a)、(I−b)および(I−c)のそれぞれにおいて、R
aはH、F、C
1−10アルキル、またはC
1−10フルオロアルキルであり、ただしモノマー(I−a)、(I−b)または(I−c)の少なくとも1種についてR
aはC
1−10フルオロアルキルである。
【0024】
式(I−a)においては、A
1は線状もしくは分岐のC
1−20アルキレン、C
3−20シクロアルキレン、C
5−20ポリシクロアルキレン、または縮合C
6−20ポリシクロアルキレンである。A
1は場合によっては、F、−C(=O)−O−、または前述のものの少なくとも1つを含む組み合わせを含む。また、式(I−a)においては、xは1〜3の整数であり、およびyは0または1である。
【0025】
式(I−b)においては、ArはC
6−20アリーレン、またはC
7−20アラルキレンである。Arは場合によってはF、−C(=O)−O−、または前述のものの少なくとも1つを含む組み合わせを含む。また、式(I−b)においては、xは0〜3の整数であり、yは0または1であり、およびx+y>0である。
【0026】
式(I−c)においては、各R
dは独立してC
1−20アルキル、C
3−20シクロアルキル、C
6−20アリール、またはC
7−20アラルキルであり、並びに各R
dは単一の炭素原子に共通して結合されるだけであるか、または少なくとも1つのR
dは隣のR
dにさらに結合されて環式構造を形成する。
【0027】
式(I−a)および(I−b)の塩基可溶性モノマーには、式(I−a−1)および(I−b−1)のものがそれぞれ挙げられる:
【化4】
式中、各R
aは独立してC
1−10フルオロアルキルである。式(I−a−1)においては、xは1〜3の整数であり、およびyは0または1である。式(I−b−1)においては、xは0〜3の整数であり、yは0または1であり、およびx+y>0である。
【0028】
典型的な塩基可溶性モノマーには
【化5】
または前述のものの少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられ、式中、R
aはC
1−6フルオロアルキルであり、またはモノマーの組み合わせが使用される場合には、R
aはH、F、CN、C
1−6アルキルまたはC
1−6フルオロアルキルであり、ただし、少なくとも1種のモノマーについてはR
aはC
1−6フルオロアルキルである。
【0029】
典型的な酸脱保護性モノマーには下記モノマー
【化6】
または前述のものの少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられ、式中、R
aはC
1−6フルオロアルキルであり、またはモノマーの組み合わせが使用される場合には、R
aはH、F、CN、C
1−6アルキルまたはC
1−6フルオロアルキルであり、ただし、少なくとも1種のモノマーについてはR
aはC
1−6フルオロアルキルである。
【0030】
コポリマーは、式(II)の非環式ビニルエーテルをさらに含む:
【化7】
【0031】
式(II)においては、各R
bは独立してH、またはC
1−20アルキル、C
3−20シクロアルキル、C
6−20アリール、もしくはC
7−20アラルキルであり、ここでR
bは場合によってはF、−C(=O)−O−、または前述のものの少なくとも1つを含む組み合わせを含む。典型的な基R
bには、H、CH
3、C
2H
5、C
3H
7、CH
2OH、CH
2CH
2OH、CH
2CH(OH)CH
3、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル、ノルボルニル、フェニル、ベンジルなどが挙げられる。好ましくは、R
bはHである。
【0032】
また、式(II)においては、R
cはC
1−20アルキル、C
3−20シクロアルキル、C
6−20アリール、またはC
7−20アラルキルであり、ここでR
cは場合によっては、F、−O−、−S−、NR−、−C(=O)−O−、または−OHを含み、ここでRはH、C
1−10アルキル、C
3−10シクロアルキル、C
6−10アリール、またはC
6−10アラルキルである。エステル部分は非環式エステルまたは環式(ラクトン)部分でありうることに留意されたい。典型的な基R
cには、これに限定されないが、CH
3、C
2H
5、C
3H
7、CH
2OH、CH
2CH
2OH、CH
2CH(OH)CH
3、CF
3、CH
2CF
3、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル、ノルボルニル、エトキシナフチル、エトキシアントラセニル、エトキシブチロラクトン、ベンゾチオフェン、フェニル、ベンジルなどが挙げられる。好ましくは、R
cはCH
3、C
2H
5、C
3H
7、シクロヘキシル、アダマンチル、エトキシナフチル、エトキシアントラセニル、エトキシブチロラクトン、ベンゾチオフェン、またはベンジルである。
【0033】
典型的な非環式ビニルエーテルには以下のもの:
【化8】
【化9】
または前述のものの少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられる。
【0034】
コポリマーは式(III)の環式ビニルエーテルをさらに含む:
【化10】
式(III)においては、LはC
1−20アルキレン、C
3−20シクロアルキレン、C
6−20アリーレン、またはC
7−20アラルキレンである。Lは場合によってはF、−OH、または前述のものの少なくとも1つを含む組み合わせを含む。
【0035】
好ましくは、この環式ビニルエーテルモノマーは式(III−a)を有する:
【化11】
式中、各R
eは独立してC
1−20アルキル、C
3−20シクロアルキル、C
6−20アリール、またはC
7−20アラルキル、および各R
eは結合されていないか、または少なくとも1つのR
eが隣のR
eに結合されて環式構造を形成している。また、式(III−a)においては、mは0〜2n+2の整数であり、およびnは0〜10の整数である。
【0036】
典型的な環式ビニルエーテルモノマーには以下のもの:
【化12】
または前述のものの少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられる。
【0037】
コポリマーは既知のラジカル重合方法によって製造されうる。よって、コポリマーを製造する一般的な方法は、式(I)、(II)および(III)のモノマーを重合開始剤と反応させることを含む。これらモノマーは互いにおよび開始剤と一緒にされそして加熱されうるか、または重合系に別々に供給されうるか、もしくは一緒にされそして溶媒に供給されうる。開始剤は一度に添加されうるかまたは同時に供給されうる。重合は溶液重合として、または乳化重合のような水性系重合として行われうる。
【0038】
好ましくは、重合は溶液中で行われ、そしてコポリマーは沈殿、溶媒回収を伴う噴霧乾燥などによって重合系から分離される。重合反応ついての制限なしに、これらモノマーおよび開始剤と適合性のあらゆる溶媒が使用されることができる。有用な開始剤には、ラジカル開始剤、例えば、ペルオキシ開始剤、ジアゾ開始剤などが挙げられる。典型的な開始剤には、t−ブチルヒドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオクトアート、アゾ開始剤、例えば、デュポンから入手可能なVAZO52、VAZO64、VAZO67、VAZO88、並びに和光純薬工業株式会社から入手可能なWako V−601、V−65、並びに類似の開始剤が挙げられる。
【0039】
本明細書に開示されるコポリマーは75,000g/mol未満、好ましくは1,000〜50,000g/mol、好ましくは1,200〜25,000g/mol、好ましくは1,500〜15,000g/mol、並びにより好ましくは2,000〜10,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する。コポリマーは、75,000g/mol未満、好ましくは1,000〜50,000g/mol、好ましくは1,200〜25,000g/mol、好ましくは1,500〜15,000g/mol、並びにより好ましくは2,000〜10,000g/molの数平均分子量(Mn)も有する。さらに、コポリマーは3以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下、およびさらにより好ましくは1.8以下の多分散度(PDI;Mw/Mn)を有する。
【0040】
得られるポリマーの分子量を調節し、よって組成のわずかな変化だけで、得られるポリマーの溶解速度を調節するために、全モノマーの20モル%までの量の環式ビニルエーテルの部分を非環式ビニルエーテルで置換えることが使用されうることがさらに見いだされた。さらに、フッ素化モノマー(例えば、トリフルオロメタクリラート)がコポリマーの極端紫外線(EUV)波長に対する増強された吸光度、およびそれ故の感度を提供することが見いだされた。好ましくは、コポリマーは40nmの膜厚さで80%以下、具体的には75%以下、および好ましくは70%以下のEUV放射線の透過率パーセントを有する。また、好ましくは、コポリマーは40nmの膜厚さで50%を超える、好ましくは55%を超える、および好ましくは60%を超えるEUV放射線の透過率パーセントを有する。
【0041】
コポリマーはフォトレジストを製造するために使用される。フォトレジストは光酸発生性モノマーの代わりにまたはこれに加えて、非モノマー型PAG化合物;場合によっては追加のポリマー;添加剤、例えば、光分解性塩基、および界面活性剤を含むことができる。他の添加剤、例えば、溶解速度抑制剤、増感剤、追加のPAGなどが含まれてもよい。フォトレジスト組成物は分配およびコーティングのための溶媒に溶解される。
【0042】
フォトレジストは光分解性塩基を含みうる。塩基材料、好ましくは光分解性カチオンのカルボン酸塩の包含は、この酸分解性基からの酸の中和のためのメカニズムを提供し、そしてこの光発生酸の拡散を制限して、それによりフォトレジストにおける向上したコントラストを提供する。
【0043】
光分解性塩基には、弱酸(pKa>2)、例えば、C
1−20カルボン酸のアニオンと対になった光分解性カチオン、および好ましくはPAGを調製するために有用でもあるものが挙げられる。典型的なこのようなカルボン酸には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、コハク酸、シクロヘキシルカルボン酸、安息香酸、サリチル酸および他のこのようなカルボン酸が挙げられる。光分解性塩基には、以下の構造のカチオン/アニオン対が挙げられ、カチオンがトリフェニルスルホニウムまたは以下:
【化13】
(式中、Rは独立してH、C
1−20アルキル、C
6−20アリールまたはC
6−20アルキルアリールである)のいずれかであり、アニオンが
【化14】
(式中、Rは独立してH、C
1−20アルキル、C
1−20アルコキシ、C
6−20アリールまたはC
6−20アルキルアリールである)である。他の光分解性塩基には、非イオン性光分解性発色団、例えば、2−ニトロベンジル基およびベンゾイン基をベースにしたものが挙げられる。典型的な光塩基発生剤はオルト−ニトロベンジルカルバマートである。
【0044】
代替的にまたは追加的に、他の添加剤が、光分解性でない塩基、例えば、ヒドロキシド、カルボキシラート、アミン、イミンおよびアミドをベースにしたものなどであるクエンチャー(quencher)を含みうる。好ましくは、このようなクエンチャーには、C
1−30有機アミン、イミンもしくはアミドが挙げられ、または強塩基(例えば、ヒドロキシドまたはアルコキシド)もしくは弱塩基(例えば、カルボキシラート)のC
1−30第四級アンモニウム塩であり得る。典型的なクエンチャーには、アミン、例えば、トレーガー(Troger’s)塩基、ヒンダードアミン、例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU)もしくはジアザビシクロノネン(DBM)、またはイオン性クエンチャー、例えば、第四級アルキルアンモニウム塩、例えば、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、もしくはテトラブチルアンモニウムラクタートが挙げられる。
【0045】
界面活性剤には、フッ素化および非フッ素化界面活性剤が挙げられ、好ましくは非イオン性である。典型的なフッ素化非イオン性界面活性剤には、ペルフルオロC
4界面活性剤、例えば、FC−4430およびFC−4432界面活性剤(3Mコーポレーションから入手可能);並びに、フルオロジオール、例えば、ポリフォックス(POLYFOX)PF−636、PF−6320、PF−656およびPF−6520フルオロ界面活性剤(Omnovaから)が挙げられる。
【0046】
フォトレジストは、フォトレジストに使用される成分を溶解し、分配しおよびコーティングするのに概して適する溶媒をさらに含む。典型的な溶媒には、アニソール、アルコール、例えば、乳酸エチル、1−メトキシ−2−プロパノール、および1−エトキシ−2プロパノール、エステル、例えば、酢酸n−ブチル、酢酸1−メトキシ−2−プロピル、メトキシエトキシプロピオナート、エトキシエトキシプロピオナート、ケトン、例えば、シクロヘキサノンおよび2−ヘプタノン、並びに上記溶媒の少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられる。
【0047】
本明細書に開示されるフォトレジスト組成物は、固形分の全重量を基準にして50〜99重量%、具体的には55〜95重量%、より具体的には60〜90重量%、およびさらにより具体的には65〜90重量%の量でコポリマーを含むことができる。フォトレジストにおける成分のこの文脈において使用される「コポリマー」は、本明細書に開示されるコポリマーのみ、またはこのコポリマーとフォトレジストにおいて有用な別のポリマーとの組み合わせを意味しうることが理解されるであろう。光分解性塩基は、固形分の全重量を基準にして0.01〜5重量%、具体的には0.1〜4重量%、さらにより具体的には0.2〜3重量%の量でフォトレジスト中に存在しうる。界面活性剤は、固形分の全重量を基準にして0.01〜5重量%、具体的には0.1〜4重量%、およびさらにより具体的には0.2〜3重量%の量で含まれることができる。クエンチャーは、固形分の全重量を基準にして、例えば、0.03〜5重量%の比較的少量で含まれることができる。他の添加剤は、固形分の全重量を基準にして30重量%以下、具体的には20%以下、もしくはより具体的には10%以下の量で含まれうる。フォトレジスト組成物の全固形分量は固形分および溶媒の合計重量を基準にして0.5〜50重量%、具体的には1〜45重量%、より具体的には2〜40重量%、およびさらにより具体的には5〜35重量%でありうる。固形分は、溶媒を除く、コポリマー、光分解性塩基、クエンチャー、界面活性剤、添加されるPAG、および任意成分の添加剤を含むと理解される。
【0048】
コーティングされた基体はポリマー結合PAGを含むフォトレジストから形成されうる。このコーティングされた基体は(a)基体表面上のパターン形成される1以上の層を有する基体、および(b)パターン形成される1以上の層上の、ポリマー結合PAGを含むフォトレジスト組成物の層を含む。
【0049】
基体は任意の寸法および形状であることができ、好ましくはフォトリソグラフィに有用なもの、例えば、ケイ素、二酸化ケイ素、シリコンオンインシュレータ(silicon−on−insulator;SOI)、ストレインドシリコン(strained silicon)、ガリウムヒ素、コーティングされた基体、例えば、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化チタン、窒化タンタルでコーティングされた基体、超薄型ゲート(ultrathin gate)酸化物、例えば、酸化ハフニウム、金属もしくは金属コーティングされた基体、例えば、チタン、タンタル、銅、アルミニウム、タングステン、これらの合金およびこれらの組み合わせでコーティングされた基体である。好ましくは、本明細書においては、基体の表面はパターン形成される限界寸法層、例えば、1以上のゲートレベル層もしくは半導体製造のための基体上の他の限界寸法層を含む。このような基体には、例えば、直径が20cm、30cmもしくはより大きい寸法、またはウェハ製造に有用な他の寸法を有する円形ウェハとして形成されるケイ素、SOI、ストレインドシリコンおよび他のこのような基体材料が好ましくは挙げられうる。
【0050】
さらに、電子デバイスを形成する方法は(a)フォトレジスト組成物の層を基体の表面上に適用し、(b)フォトレジスト組成物層を活性化放射線にパターン様に露光し、および(c)露光されたフォトレジスト組成物層を現像してレジストレリーフ像を提供することを含む。
【0051】
適用はスピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディングなどをはじめとするあらゆる好適な方法によって達成されうる。フォトレジストの層の適用は好ましくは、回転するウェハ上にフォトレジストが分配されるコーティングトラックを使用して、溶媒中のフォトレジストをスピンコーティングすることにより達成される。分配中に、ウェハは4,000rpm以下、好ましくは約500〜3,000rpm、およびより好ましくは1,000〜2,500rpmの速度で回転させられうる。コーティングされたウェハは回転させられて溶媒を除去し、そしてホットプレート上でベークされて、残留する溶媒を除去し、そして膜から自由体積を除いて膜を均一な高密度にする。
【0052】
次いで、スキャナーまたはステッパのような露光ツールを用いてパターン様露光が行われ、露光ツールにおいてはパターンマスクを通して膜が照射され、それによりパターン様に露光される。この方法は好ましくは、極端紫外線(EUV)もしくはeビーム放射線をはじめとする高解像が可能な波長で活性化放射線を発生させる改良型の露光ツールを使用する。活性化放射線を使用する露光は露光領域でPAGを分解して、酸および分解副生成物を発生させ、次いでその酸はポリマーの化学変化をもたらす(酸感受性基をデブロッキング(deblocking)して塩基可溶性基を生じさせるか、あるいは露光領域において架橋反応を触媒する)ことが認識される。この露光ツールの解像度は30nm未満であり得る。
【0053】
次いで、露光された層を、その膜の露光部分を選択的に除去できる(この場合、フォトレジストはポジティブトーンである)、またはその膜の未露光部分を選択的に除去できる(この場合、フォトレジストは露光領域で架橋可能となり、すなわちネガティブトーンである)好適な現像剤で処理することにより、露光されたフォトレジスト層の現像が達成される。好ましくは、フォトレジストは、酸感受性(脱保護可能な)基を有するポリマーをベースにしたポジティブトーンであり、そして現像剤は好ましくは金属イオンを含まない、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド溶液、例えば、水性の0.26Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。パターンは現像によって形成される。
【0054】
1以上のこのパターン形成プロセスに使用される場合には、フォトレジストは電子および光電子デバイス、例えば、メモリデバイス、プロセッサチップ(CPU)、グラフィックチップおよび他のこのようなデバイスを製造するために使用されることができる。
【0055】
本発明は以下の実施例によってさらに説明される。ここで使用される全ての化合物および試薬は、手順が以下に提示されている以外のものは市販されている。
【実施例】
【0056】
構造的な特徴付けはVNMRS 500NMRスペクトロメータ(プロトンについて500MHzで操作する)、または400−MR NMRスペクトロメータ(プロトンについて400MHzで操作する)(それぞれ、Varianから)での核磁気共鳴(NMR)スペクトル分析によって行われた。ポリマー組成はNOE抑制技術(すなわち、Cr(アセチルアセトナート)
3および>2秒のパルスディレイ)を使用する125MHzまたは100MHzでの定量的
13C NMRによって決定された。分子量(Mw)および多分散度(PD)は、2mg/mlのサンプル濃度、およびテトラヒドロフランで流量1ml/分で溶離させた、ポリスチレン標準物質を使用して較正されたユニバーサルキャリブレーション曲線を用いる、架橋スチレン−ジビニルベンゼンカラムを使用するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって決定された。
【0057】
ガラス転移温度は10℃/分の勾配速度(第2の加熱)で操作する熱量計を用いて示差走査熱量測定によって決定された。他に特定されない限りは、ここで使用される全てのモノマー、溶媒、および試薬は市販されている。
【0058】
水接触角はクルース(Kruss)水接触角ゴニオメータを用いて測定された。
【0059】
EUV透過率計算は、ローレンスバークレイナショナルラボラトリー(Lawrence Berkeley National Laboratory)におけるX線光学センター(CXRO)のウェブサイト(http://henkle.lbl/gov/optical_constants/filter2.html)において利用可能な計算機を用いて行われた。化学式は以下の方程式(I)(式中、n
pはポリマー中の元素の原子カウントであり、n
iはi番目のモノマーの原子カウントであり、並びにX
iはポリマー中のi番目のモノマーのモル分率である)を用いて計算された。
n
p=100Σ
iX
in
i 方程式(I)
【0060】
ポリマー化学式は仮定の密度1.2g/mLおよび膜厚さ0.040ミクロンと共にウェブサイトに入力された。この計算は13〜14nm波長光の範囲で10ステップで行われた。ここで論じられるEUV透過率値については、13.4nm波長の透過率についての結果が使用される。
【0061】
コポリマー例を製造するために使用されたフッ素化モノマーは、tert−ブチルトリフルオロメタクリラート(TBTFMA)および3,5−ジヘキサフルオロアルコールトリフルオロメタクリラート(di−HFATFMA)を含む。
【化15】
【0062】
また、非環式ビニル
エーテルであるエチルビニルエーテル(EVE)、アントラセン−9−カルボン酸エチレングリコールビニルエーテル(AcVE)、アダマンチルカルボン酸エチレングリコールビニルエーテル(AdVE)およびエチレングリコールビニルエーテル(EGVE)と共に使用された環式ビニルエーテルは2,3−ジヒドロフラン(DHF)である。
【化16】
【0063】
比較例1〜5および実施例1〜5のポリマーが以下のように製造されそして評価された。全モノマーの50モル%の最初の環式ビニルエーテル(ジヒドロフラン)添加でバッチ重合が行われた。残りの50モル%のモノマーはTBTFMAとdi−HFATFMAとの間で分けられた。
【0064】
ポリ(TBTFMA−co−DHF)(比較例1)が以下のように製造された。100mLの容器中の10.0gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)中で、TBTFMA(10.0g、51.0mmol)およびDHF(3.57g、51.0mmol)の溶液が調製され、並びに3.5gのPGMEA中でWako V−601開始剤(2.35g、10.2mmol)の溶液が調製された。このモノマー溶液は60℃に加熱され、その後、開始剤溶液の添加が行われた。4時間後、この反応混合物は室温まで冷却され、そして200mLの80/20(v/v)メタノール/水混合物中で沈殿させられ、白色粉体を形成した。この粉体は濾別され、そして20gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させられて、透明溶液を形成した。このポリマーは200mLの90/10(v/v)メタノール/水混合物中で再沈殿させられて、白色粉体を形成した。このポリマーは濾別によって集められ、そして得られた白色粉体は18時間にわたって60℃の真空オーブンにおいて乾燥させられた。このポリマーの生産量は8.08g(59.5%収率)であった。GPC分析は6378のMw、1.38のPDIを示した。Tg=96℃。
【0065】
ポリ(TBTFMA−co−di−HFATFMA−co−DHF)(比較例2〜5)は、TBTFMA/di−HFATFMA/DHF 40/10/50の目標モル組成を有する代表的な例(比較例2)についての以下の一般的な方法によって調製された。
【0066】
100mLの容器中の10.0gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)中で、TBTFMA(6.96g、35.5mmol)、di−HFATFMA(5.00g、9.01mmol)およびDHF(3.11g、44.4mmol)の溶液が調製され、並びに5gのPGMEA中でWako V−601開始剤(2.04g、8.84mmol)の溶液が調製された。このモノマー溶液が60℃に加熱された後で、開始剤溶液が添加された。4時間後、この反応混合物は室温まで冷却され、そして200mLの80/20(v/v)メタノール/水混合物中で沈殿させられ、粘着性の白色固体を形成した。この沈殿固体はデカントされ、そしてこの固体が20gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させられた。得られた透明溶液が200mLの80/20(v/v)メタノール/水混合物中で沈殿させられて白色固体を得て、この白色固体は濾別によって集められた。このポリマーは18時間にわたって60℃の真空オーブンにおいて乾燥させられた。この乾燥ポリマーの生産量は9.06g(60.1%収率)であった。GPC分析は5989のMw、1.40のPDIを示した。Tg=119℃。
【0067】
他の組成物(比較例3〜5)は同じ方法であるが、表1にまとめられるモノマー比率で調製された。
【0068】
ポリ(TBTFMA−co−AdVE)(比較例6および7)は以下のように製造された。代表的な例(比較例6)はTBTFMA/AdEVE 50/50の目標モル組成で23%開始剤添加でおよび9%固形分で提供される。10mLの乾燥トルエン中で、TBTFMA(0.50g、2.5mmol)、AdVE(0.64g、2.5mmol)の溶液が調製され、並びに1.0mLのトルエン中でWako V−601(0.60mg、2.5mmol)の溶液が調製された。このモノマー溶液が65℃に加熱された後で、開始剤溶液が添加された。18時間にわたって加熱した後で、この反応溶液は室温まで冷却され、そして粗反応生成物がGPCによって分析されて、19,000のMwで1.61のPDIを得た。比較例7は同様の方法で、31モル%の開始剤添加および58%固形分での、より濃厚な条件下で調製された。
【0069】
ポリ(TBTFMA−co−DHF−co−EVE)(実施例6〜9)は以下の手順によって調製された。代表的な例はTBTFMA/DHP/EVE 47.9/46.1/6.0の目標モル組成で提供される(実施例7)。他の組成物(実施例5〜9)は同じ方法であるが、表2にまとめられるモノマー比率で調製された。
【0070】
0.4gのPGMEA中で、TBTFMA(0.369g、1.88mmol)、DHF(0.127g、1.81mmol)、およびEVE(16.8mg、0.223mmol)の溶液が調製され、並びに0.1gのPGMEA中でWako V−601開始剤(85.3mg、0.370mmol)の溶液が調製された。このモノマー溶液が60℃に加熱された後で、開始剤溶液が添加され、そして加熱が4時間にわたって維持された。次いで、この反応物は室温まで冷却され、そして粗反応生成物がGPCによって分析されて、6426のMwで1.61のPDIを得た。
【0071】
ポリ(TBTFMA−co−di−HFATFMA−co−DHF−co−AcVE)(30/20/40/10)が以下の手順によって調製された(実施例1)。TBTFMA(2.62g、13.3mmol)、di−HFATFMA(4.89g、8.82mmol)、DHF(1.25g、17.9mmol)、AcVE(1.29g、4.41mmol)、および8gのPGMEAの溶液が調製された。別途、2gのPGMEA中でWako V−601開始剤(1.13g、4.90mmol)の溶液が調製された。このモノマー溶液が60℃に加熱され、次いでこのモノマー溶液に開始剤溶液が添加された。4時間後、この反応混合物は室温まで冷却された。次いで、それは、200mLの80/20(v/v)メタノール/水混合物中で沈殿させられ、粘着性の白色固体を生じた。この固体は10mLのTHFに溶解させられ、そして二回目のメタノール/水混合物中で沈殿させられた。得られた白色固体は濾別によって集められ、そして18時間にわたって60℃の真空オーブンにおいて乾燥させられた。この乾燥ポリマーの生産量は4.70g(47%)であって、このポリマーのGPC分析によって10231のMw、1.56のPDIを認めた。
【0072】
ポリ(TBTFMA−co−di−HFATFMA−co−DHF−co−AdVE)(30/20/40/10)の製造物が以下の手順によって調製された(実施例2)。TBTFMA(1.33g、6.80mmol)、di−HFATFMA(2.53g、4.56mmol)、DHF(0.637g、9.09mmol)、AdVE(0.584g、2.33mmol)、および4gのPGMEAからなる溶液が調製された。別途、1gのPGMEA中でV−601開始剤(0.516g、2.24mmol)の溶液が調製された。このモノマー溶液が60℃に加熱され、次いで開始剤溶液が添加された。4時間後、この反応混合物は室温まで冷却された。次いで、それは、100mLの80/20(v/v)メタノール/水混合物中で沈殿させられ、粘着性の白色固体を生じた。この固体は6mLのTHFに溶解させられ、そして二回目のメタノール/水混合物中で沈殿させられた。得られた白色固体は濾別によって集められ、そして18時間にわたって60℃の真空オーブンにおいて乾燥させられた。この乾燥ポリマーの生産量は4.0g(80%収率)であって、このポリマーのGPC分析によって12510のMw、1.59のPDIを認めた。
【0073】
ポリ(TBTFMA−co−di−HFATFMA−co−DHF−co−AdVE−co−EGVE)(30/20/40/8/2)(実施例3)が以下の手順によって調製された。TBTFMA(1.34g、6.83mmol)、di−HFATFMA(2.53g、4.56mmol)、DHF(0.634g、9.05mmol)、AdVE(0.456g、1.82mmol)、EGVE(39.0mg、0.442mmol)、V−601開始剤(0.547g、2.37mmol)および5gのPGMEAの溶液が20mLのバイアル中で調製された。小さな磁気攪拌棒が入れられ、そのバイアルは60℃の加熱ブロック中に配置され、そして3時間にわたって攪拌された。次いで、この反応物は室温まで冷却され、そして80:20(v/v)メタノールおよび水の混合物中で沈殿させられた。得られた粘着性の白色固体が約50重量%のTHFに溶解させられ、そして二回目の80/20(v/v)メタノール/水中で沈殿させられた。得られた白色固体は60℃の真空オーブンにおいて一晩乾燥させられた。この乾燥ポリマーの生産量は3.00g(60%収率)であって、このポリマーのGPC分析によって13,636のMw、1.62のPDIを認めた。
【0074】
ポリ(TBTFMA−co−di−HFATFMA−co−DHF−co−AdVE−co−EGVE)(30/20/40/5/5)(実施例4)が以下の手順によって調製された。TBTFMA(1.42g、7.21mmol)、di−HFATFMA(2.60g、4.68mmol)、DHF(0.660g、9.41mmol)、AdVE(0.307g、1.23mmol)、EGVE(0.107g、1.21mmol)、および4gのPGMEAの溶液が調製された。別途、V−601開始剤(0.547g、2.37mmol)が1gのPGMEAと混合されて透明溶液を形成した。これら2つの溶液は、小さな磁気攪拌棒を伴った20mLのバイアル中で一緒に混合され、そのバイアルは60℃の加熱ブロック中に3時間にわたって配置された。次いで、この反応物は室温まで冷却され、そして80/20(v/v)メタノールおよび水の混合物中で沈殿させられた。得られた粘着性の白色固体が約50重量%のTHFに溶解させられ、そして再び80/20(v/v)メタノール/水中で沈殿させられた。得られた白色固体は60℃の真空オーブンにおいて一晩乾燥させられた。この乾燥ポリマーの生産量は2.54g(51.0%収率)であって、GPC分析が14,321のMw、1.59のPDIを示した。
【0075】
ポリ(TBTFMA−co−di−HFATFMA−co−DHF−co−EGVE)(30/20/40/10)(実施例5)の製造物が以下の手順によって調製された。TBTFMA(1.43g、7.28mmol)、di−HFATFMA(2.68g、4.84mmol)、DHF(0.688g、9.82mmol)、EGVE(0.219g、2.48mmol)、および4gのPGMEAの溶液が調製された。別途、V−601開始剤(0.547、2.37mmol)が1gのPGMEAと混合され、そしてこの溶液は、小さな磁気攪拌棒を伴った20mLのバイアル中でモノマー溶液に添加された。次いで、この反応バイアルは60℃の加熱ブロック中に配置され、そして3時間にわたって攪拌された。次いで、この反応物は室温まで冷却され、そして80/20(v/v)メタノールおよび水の混合物中で沈殿させられた。得られた粘着性の白色固体が約50重量%のTHFに溶解させられ、そして再び80/20(v/v)メタノール/水中で沈殿させられた。得られた白色固体は60℃の真空オーブンにおいて一晩乾燥させられた。この乾燥ポリマーの生産量は1.05g(21.0%収率)であって、このGPC分析は14,947のMw、1.61のPDIを示した。
【0076】
di−HFATFMAの量が増大する一連のポリマー(他のモノマーに対して0、10、15、20、および30mol%)が以下の表1における比較例1〜5に示される。実施例1〜5はDHFと非環式ビニルエーテル(AcVEまたはAdVE)との双方を含む。以下の表中で使用される「N.D.」は「未測定」を意味することに留意されたい。
【0077】
【表1】
【0078】
上記データにおいて認められるように、比較例1〜5および実施例1〜5のそれぞれは15,000g/mol未満の分子量を示し、並びに比較例2〜4については119〜150℃のガラス転移温度が得られて、このことは、増大する環式ビニルエーテル含有量はガラス転移温度を上昇させると思われる。
【0079】
比較例6および7は環式ビニルエーテルコモノマーを含まずに製造された比較的高い分子量のポリマーを示す。比較例6において製造されたポリマーは20,000g/mol未満のMwを有しているが、低い溶解度のせいでこの結果を得るためには、溶媒での高度の希釈(溶液中9重量%のモノマー)が必要であった。溶液中58重量%のモノマーの濃度は100,000g/molを超えるMwのポリマーを生じさせた。
【0080】
比較例8(表1)は典型的なパラヒドロキシスチレン(p−HS)、スチレン(STY)、tert−ブチルアクリラート(TBA)ターポリマーについて計算されたEUV透過率を示す。この85%の透過率は実施例1〜5からのポリマーのEUV透過率よりもかなり大きく、このことは、一般的な市販の化学増幅型レジスト材料と比べて、この組成物のEUV光子を捕捉する増大した能力を示す。
【0081】
さらに、比較例9はメタクリラートポリマー(A)(2−フェニルプロピルメタクリラート(PPMA)、アルファ(ガンマブチロラクトン)メタクリラート(a−GBLMA)、3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルメタクリラート(di−HFAMA)およびフェニルジベンゾチオフェニウム1,1−ジフルオロ−4−(メタクリロイルオキシ)エタン−1−スルホナート(PDT−2F MA)(モル比34:43:9:6)の%Tを示し、このポリマー(A)は光酸発生剤(B)と92:8重量比でブレンドされる典型的なメタクリラートベースのフォトレジストポリマーの代表例である。
【0082】
【化17】
【0083】
表1に認められるように、メタクリラートポリマーとPAGとの組み合わせは典型的なポリマーよりも高い40nmでの%T(80%)を有しており、このことはポリマー骨格にフッ素基を包含させることによりもたらされる改良された吸光度および感度を示す。
【0084】
非環式ビニルエーテル(NCVE)としてのEVEおよび環式ビニルエーテル(CVE)としてのDHFの様々な比率を用いたTBTFMAの重合も行われて、あるとすれば、低い分子量(MwおよびMn)並びにPDIを維持しつつNCVE添加のどのような効果が容認されるかを決定した。表2は、0〜20mol%の非環式ビニルエーテルを用いて調製された4つのポリマー(実施例6〜9)をまとめる。モノマーフィードにおいて非環式ビニルエーテル(NCVE、すなわちEVE)のモル分率が増大するにつれて、Mwの増大が認められた。
【0085】
また、表2においては、開始剤(Wako V−601)添加量の変化が、4つの重合の実行において開始剤添加量を増大させることとMwを増大させることとの明らかな相関を示さないことが認められうる。しかし、非環式ビニルエーテルの10mol%以上の包含は15,000g/mol未満のポリマーMwを提供し、同時に2未満のPDI(Mw/Mn)を維持する。
【0086】
【表2】
【0087】
AcVEまたはAdVEを含むビニルエーテルモノマーを10mol%有するポリマー(それぞれ、表1における実施例1および2)が表2のデータに基づいて調製されて、リソグラフィ的に有用なポリマーのための15,000未満の分子量(Mw)を有するポリマーを得た。AcVEおよびAdVEはそれぞれ縮合芳香環(AcVE)および脂環式環(AdVE)を含んでいるので、それらはそれぞれ、より疎水性である。これらモノマーは、実施例1および2のポリマーから配合されたフォトレジストについて改良された耐エッチング性および膜コート品質を提供するために含まれる。
【0088】
これらポリマーの溶解速度およびリソグラフィ評価が以下の手順によって行われた。
【0089】
ポジティブトーンフォトレジスト組成物を製造するための一般的手順は以下の通りである。比較例1〜5または実施例1〜5(0.054g)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート中のOmnova(オムノバ)PF656界面活性剤の1重量%溶液(0.011g)、乳酸エチル中の塩基添加剤(TMA−OHBA)の1重量%溶液(0.054)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート中の4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム シクロ(1,3−ペルフルオロプロパンジスルホニル)イミド塩の5重量%溶液(0.161g)、乳酸エチル(1.489)、およびヒドロキシメチルイソブチラート(HBN)(0.731g)の混合物が充分に混合されて、固形分を溶解させそして0.1μmフィルタを通して濾過された。
【0090】
それぞれの比較のおよび典型的なフォトレジストは以下のようにリソグラフィ的に処理された。フォトレジストはTEL ACT−8コーティングトラック(東京エレクトロン株式会社)を使用して、市販の有機下層(AR9、ダウエレクトロニックマテリアルズから入手可能)を有する200mmシリコンウェハ上にスピンコートされ、90℃で60秒間適用後ベークされて、約60nm厚さのフォトレジスト膜を形成した。得られたフォトレジスト層はEUV−ES9000LTJツール(EUV放射線、13.4nm)またはキヤノンES−4 KrFツール(248nm)を用いてE
0アレイを用いてフラッド露光された。EUV波長でのリソグラフィ評価はローレンスバークレイラボラトリーズのeMETツールを用いて、1:1ライン/スペースについて、28nmハーフピッチで得られた。パターン形成されたウェハは70〜90℃の温度で露光後ベークされて、そして像パターンは0.26Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド現像剤水溶液で現像されて、ポジティブトーンフォトレジストパターンを形成した。
【0091】
比較例1〜5、並びに実施例1および2のポリマーから、このようにして配合物が製造され、そして水接触角(スピン品質および0.26Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド現像剤における未露光膜溶解速度(現像剤剥離)について試験された。水接触角、現像剤剥離、および248nmおよびEUV波長でのドースツークリア(dose−to−clear)が以下の表3にまとめられる。
【0092】
【表3】
【0093】
コート品質、および水接触角、および現像剤剥離の結果は、比較例1および
5が非常に劣ったスピンコート品質および/または非常に高い現像剤剥離を、それぞれ有していて、さらに試験されなかった。
【0094】
親水性基がポリマーに組み込まれて接触角を低下させる(および濡れ性を向上させる)場合には、フォトレジスト膜についての水接触角は高く(76°以上)およびスピンコート品質は向上し、および現像剤剥離(オングストローム単位で膜損失により測定)は増大した。親水性基の追加はKrFおよびEUV双方のフォトスピードを増大させる傾向もあった。EUVによって試験されたレジストの全ては、3.5mJ/cm
2未満のE
0値を有する速いフォトスピードを有している。
【0095】
実施例1のポリマーを組み込んだフォトレジストについてのコントラスト曲線(
図1)はこれら材料の速いフォトスピードを示す。実施例1のフォトレジストは、2mJ/cm
2未満で始まる線量で極度に素早い脱保護を示す。実施例1のフォトレジストのトップダウンSEM(
図2)は10.32mJ/cm
2の露光線量でのEUVリソグラフィによって、この代表的な材料においてパターンを像形成する能力を示す。
【0096】
実施例1のポリマーを組み込んだフォトレジストについてのコントラスト曲線(
図3)は、第2の代表的な材料についての速いフォトスピードを示す。実施例2のフォトレジストは、2mJ/cm
2未満で始まる線量で素早い脱保護を示す。
【0097】
本明細書に開示される全ての範囲は終端点を含み、およびその終端点は互いに独立して組み合わせ可能である。「場合による」または「場合によって」はその後に記載される事象または状況が起こってよいしまたは起こらなくてもよいこと、並びにその記載がその事象が起こる例とそれが起こらない例とを含むことを意味する。本明細書において使用される場合、「組み合わせ」とは、ブレンド、混合物、合金、または反応生成物を包含する。全ての参考文献は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0098】
さらに、「第1の」、「第2の」などの用語は、本明細書においては、順序、品質または重要性を何ら示すものではなく、むしろ1つの要素を他のものから区別するために使用されることがさらに留意されるべきである。