特許第6297276号(P6297276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297276
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20180312BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   F01N3/08 B
   B60K13/04 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-158121(P2013-158121)
(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公開番号】特開2015-28318(P2015-28318A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年5月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋平
【審査官】 石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−246825(JP,A)
【文献】 特開2008−248696(JP,A)
【文献】 特開2010−260425(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/155506(WO,A1)
【文献】 特開2005−307968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体還元剤が貯留される液体還元剤用タンクと、
前記液体還元剤用タンクを内部に収容するタンク収納容器と、
前記液体還元剤用タンクの上部に設けられるフィラーブラケットと、
前記フィラーブラケットに取り付けられるフィラー本体と、
前記フィラー本体の外側突出部に着脱可能に装着されるフィラーキャップと、
前記フィラー本体の内側突出部に取り付けられるフィラーチューブと、
を有し、
前記タンク収納容器に、前記液体還元剤の体積変化に伴う前記液体還元剤用タンクの変形を許容する変形許要部を設け
前記液体還元剤用タンクは箱状の形状部分を有し、
前記タンク収納容器は前記液体還元剤用タンクの四隅位置を保持する支持部材を有し、
前記変形許要部は隣接する前記支持部材の間に設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記変形許要部において前記タンク収納容器は露出されていることを特徴とする請求項に記載の建設機械。
【請求項3】
前記タンク収納容器に隣接する前記支持部材の間を連結する連結部材を設けると共に、該連結部材を前記支持部材の前記液体還元剤用タンクと対峙する面の反対面に配設したことを特徴とする請求項1又は2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記液体還元剤用タンクにレベルゲージが設けられ、
前記レベルゲージは、前記フィラー本体と同一方向を向いていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体還元剤が貯留されるタンクが配置された建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼルエンジンを搭載した油圧ショベル等の建設機械では、高次の排ガス規制に対応すべく、ディーゼルエンジンの排気系に排ガス処理装置が設置され、ディーゼルエンジンからの排ガスは、排気管の下流側に設けたNOx還元触媒を通って大気中に放出される。
【0003】
従来、この種の種排ガス処理装置としては、尿素水溶液(液体還元剤)を用いた尿素選択還元型のNOx処理装置が多く採択され、尿素水溶液は一般に樹脂製の液体還元剤用タンクに貯留されている。また、液体還元剤用タンクは液体還元剤供給パイプにより排気管に接続され、液体還元剤供給ポンプにより液体還元剤用タンク内の尿素水溶液を排気管に供給できるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−20936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液体還元剤用タンクを上部旋回体に設置する場合、液体還元剤用タンクを振動から適切に保護する必要がある。特に建設機械は、過酷な環境下での作業が多いので、液体還元剤用タンクを上部旋回体に例えばボルト等で直接固定した場合、液体還元剤用タンクの固定部に破損が生じるおそれがある。
【0006】
また、液体還元剤用タンク内の液体還元剤(例えば尿素水溶液)は、低温環境下で凍結して膨張するが、係る膨張時に伴って液体還元剤用タンクが変形すると、液体還元剤用タンクの破損や周辺部品との干渉が生じるおそれもある。
【0007】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、液体還元剤用タンク及びその周辺部品の損傷を防止することができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によると、
樹脂により形成され、液体還元剤が貯留される液体還元剤用タンクと、
前記液体還元剤用タンクを内部に収容するタンク収納容器と
前記液体還元剤用タンクの上部に設けられるフィラーブラケットと、
前記フィラーブラケットに取り付けられるフィラー本体と、
前記フィラー本体の外側突出部に着脱可能に装着されるフィラーキャップと、
前記フィラー本体の内側突出部に取り付けられるフィラーチューブと、
を有し、
前記タンク収納容器の前記液体還元剤の膨張時に前記液体還元剤用タンクが変形する部位に、前記液体還元剤用タンクの変形を許容する変形許要部を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明のある態様によると、低温環境下で液体還元剤が凍結して膨張しても液体還元剤用タンク及びその周辺部品の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ある実施形態である建設機械の一例として油圧ショベルを示す側面図である。
図2図2は、建設機械の上部旋回体を概略的に示す平面図である。
図3図3は、建設機械の液体還元剤用タンクの配設位置近傍を拡大して示す斜視図である。
図4図4は、液体還元剤用タンクを左前方から見た斜視図である。
図5図5は、液体還元剤用タンクを右前方から見た分解斜視図である。
図6図6は、液体還元剤用タンクを下方から見た斜視図である。
図7図7は液体還元剤用タンクの膨張を説明するためのイメージ図であり、(A)は膨張前の状態を示す図であり、(B)は膨張後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。
【0012】
なお、添付の全図面の中の記載で、同一又は対応する部材又は部品には、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
また、図面は、特に指定しない限り、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的としない。従って、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定することができる。
【0014】
また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0015】
図1は、本発明のある実施形態である建設機械を示している。本実施形態では、建設機械の一例として油圧ショベルを例に挙げて説明する。しかしながら、本発明は液体還元剤用タンクを有するものであれば、他の建設機械についても適用が可能なものである。
【0016】
建設機械は、下部走行体1の上部に上部旋回体2が旋回可能に装架され、上部旋回体2の前方一側部にキャブ3が設けられている。また、上部旋回体2の前方中央部にブーム4が俯仰可能に枢着され、このブーム4の先端部にはアーム5が上下回動可能に連結されている。更に、アーム5の先端部には、バケット6が上下回動可能に取り付けられている。
【0017】
図2は、上部旋回体の後部を概略的に示す平面図である。
【0018】
図2に示すように、上部旋回体2の後部にはエンジンルーム7が形成され、このエンジンルーム7内にはディーゼルエンジン8が設置されている。また、ディーゼルエンジン8の右方側(図中矢印Y1方向側)には冷却ファン8bが設けられると共に、この冷却ファン8bの右方(図中矢印Y1方向側)にはラジエータ等を含む熱交換機ユニット13が設置されている。
【0019】
更に、ディーゼルエンジン8には排気管8aが接続され、この排気管8aの下流側には、高次の排ガス規制に対応すべく、エンジン排ガス中の窒素酸化物(以下、NOxという。)を浄化する排ガス処理装置9が設置されている。
【0020】
排ガス処理装置9としては、液体還元剤として尿素水を用いた尿素選択還元型のNOx処理装置が採択されている。この排ガス処理装置9は、排気管8aに備えられた還元触媒(図示せず)の上流側に尿素水を噴射して排ガス中のNOxを還元し、この還元反応を還元触媒により促進してNOxを無害化する構成とされている。
【0021】
従って、この種の排ガス処理装置9を備えた建設機械には、尿素水(液体還元剤)を蓄えるための液体還元剤用タンク10(以下、尿素水タンクという)が備えられる。
【0022】
図3は、尿素水タンク10の設置位置近傍を部分的に拡大して示す斜視図である。
【0023】
図3に示すように、上部旋回体2の旋回フレーム14の前部には左右一対のブーム取り付け用の支持ブラケット17L,17Rが立設されている。ブームフートピン18は、この支持ブラケット17L,17Rに形成された穴172L,172Rに抜き差しされる。また、支持ブラケット17Lの外側の側部には尿素水タンク10が配置される。なお、尿素水タンク10に近接して燃料タンク及びサンプタンクを配置してもよい。
【0024】
尿素水タンク10は樹脂製の容器であり、内部に尿素水が貯留される。この尿素水タンク10は、尿素水供給パイプ及びインジェクタ(図示せず)等を介して排気管8aに接続されている。よって、尿素水タンク10内の尿素水は、尿素水供給パイプを介しインジェクタから排気管8aに噴射される。
【0025】
図4図6は、尿素水タンク10の具体的な構成例を示す図である。
【0026】
図4は液体還元剤用タンク10を左前方から見た斜視図であり、図5はフィラー30を取り外した状態の液体還元剤用タンク10を右前方から見た分解斜視図であり、図6は液体還元剤用タンク10を下方から見た斜視図である。
【0027】
なお以下の説明において、必要に応じて、液体還元剤用タンク10の尿素水の補給作業時において作業者側に近い手前側(図中矢印X2方向側)を前方といい、奥側(図中矢印X1方向側)を後方ということがある。また、前後方向に直交する図中矢印Y1で示す方向を右方といい、図中矢印Y2で示す方向を左方ということがある。
【0028】
尿素水タンク10は樹脂製であり、横断面が略矩形状で全体として略箱形状のタンク本体10aを有している。このタンク本体10aの前方上部には、傾斜面10bが形成されている。この傾斜面10bは、上方に向かうにつれて後方側に倒れるよう傾斜している。
【0029】
また傾斜面10bには、給液口10dが設けられている(図5参照)。この給液口10dには後述するフィラー30が着脱可能に取り付けられる。尿素水は、補給時においてこのフィラー30を介して給液口10dからタンク本体10a内に補給される。
【0030】
また、傾斜面10bにはレベルゲージ28が設けられている。このレベルゲージ28は、タンク本体10a内の尿素水のレベル(液面高さ)が表示される。よって尿素水の補給処理時において、作業者がレベルゲージ28を見ながら尿素水の補給を行うことにより、尿素水の溢れ出しを防止できる。
【0031】
更に、この傾斜面10bの右方の側部には、凹部10cが形成されている。この凹部10cは、尿素水タンク10をタンク補強部材15に対して着脱する際の把持部(持ち手)として機能する。
【0032】
また、尿素水タンク10の底部10gには、ドレインプラグ11が設けられている(図6参照)。このドレインプラグ11は尿素水タンク10内に残留する尿素水を排水する際に取り外されるプラグである。
【0033】
更に、尿素水タンク10にはフィラー30が取り付けられる。フィラー30は、補給時に尿素水を尿素水タンク10の給液口10dに導くものである。このフィラー30は、フィラー本体30a、フィラーチューブ33、及びフィラーキャップ35等を有している。
【0034】
フィラー本体30aは筒状の部材であり、金属或いは他の材料(例えば、樹脂等)により形成されている。このフィラー本体30aは、フィラーブラケット31に溶接或いは接着等により取り付けられる。この際、筒形状のフィラー本体30aは、その略中央位置がフィラーブラケット31に固定される。よって固定状態において、フィラー本体30aの一端部はフィラーブラケット31の外側に突出して内側突出部を形成し、他端部は内側に突出して内側突出部を形成する。
【0035】
フィラー本体30aの外側突出部は、外周にネジが形成されている。フィラーキャップ35は、このフィラー本体30aの外側突出部に着脱可能に装着される。
【0036】
フィラー本体30aの内側突出部には、フィラーチューブ33の一端が取り付けられる。またフィラーチューブ33の他端部は、尿素水タンク10の給液口10dに取り付けられる。
【0037】
上記構成とされたフィラー30は、フィラーブラケット31を用いて尿素水タンク10に取り付けられる。フィラーブラケット31は板状部材であり、金属或いは他の材料(例えば樹脂等)により形成されている。
【0038】
また尿素水タンク10には、上部取り付け部10e及び下部取り付け部10fが形成されている。上部取り付け部10eは、タンク本体10aの上面部に形成されている。また下部取り付け部10fは、傾斜面10bで給液口10dの下部位置に形成されている。
【0039】
上部取り付け部10e及び下部取り付け部10fには、ネジ孔10hが形成されている。この各ネジ孔10hの形成位置は、フィラーブラケット31が尿素水タンク10に装着されたとき、フィラー取り付けボルト32の位置と対応するよう構成されている。
【0040】
フィラー取り付けボルト32を各取り付け部10e,10fのネジ孔10hに螺着することにより、フィラーブラケット31は尿素水タンク10に固定され、これによりフィラー30も尿素水タンク10に取り付けられる。
【0041】
尿素水の補充は、フィラー30が尿素水タンク10に装着された状態で行われる。尿素水を補充するには、フィラーキャップ35をフィラー本体30aから取り外し、フィラー本体30aの外側端部から尿素水を注入する。これにより、尿素水はフィラーチューブ33を介して尿素水タンク10に補充される。
【0042】
上記構成とされた樹脂製の尿素水タンク10は、タンク収納容器12に収納される。このタンク収納容器12は、タンク補強部材15とタンクブラケット26とを有している。以下、タンク収納容器12について説明する。
【0043】
まず、タンク補強部材15について説明する。
【0044】
タンク補強部材15は、図4図6に示されるように、側部補強板15A、上部補強板15B、タンク載置板15C等を有している。このタンク補強部材15を構成する各板15A〜15Cは、例えば鉄等の金属材或いは他の材質(尿素水タンク10の材質よりも強度が高い材料)により形成されている。
【0045】
側部補強板15Aは上下方向(図中、Z1,Z2方向)に延在しており、平面視でL字形状を有している。この側部補強板15Aは尿素水タンク10の四隅と対向する位置に配置され、この尿素水タンク10の四隅位置を保持する。
【0046】
上部補強板15Bは、隣り合う側部補強板15Aの上部を連結する。これにより、側部補強板15Aの上部は、上部補強板15Bにより固定される。この際、上部補強板15Bは、各側部補強板15Aよりも外側に位置するよう固定されている。なおこの理由については、説明の便宜上、後述するものとする。
【0047】
タンク載置板15Cは、尿素水タンク10を載置する基台となるものである。またタンク載置板15Cには、前記した側部補強板15Aの下端部が固定される。
【0048】
このタンク載置板15Cにはプラグ用開口部15Eが形成されている。尿素水タンク10がタンク補強部材15に装着された際、ドレインプラグ11はプラグ用開口部15Eに挿通され、タンク載置板15Cの下面から下方に突出する。
【0049】
タンク載置板15Cの下面には、下部補強板15Dが配設される。この下部補強板15Dは、タンク載置板15Cの長手方向(図4中、矢印Y1,Y2方向)に延在するよう設けられている。この下部補強板15Dは固定ボルト19を用いて旋回フレーム14に固定され、これによりタンク補強部材15は旋回フレーム14に固定される。
【0050】
上記したタンク補強部材15を構成する各板15A〜15Dの接合は、例えば溶接を用いて行うことができる。また、各板15A〜15Dを接合してタンク補強部材15を形成することにより、隣接する側部補強板15Aの間には開口部OPが形成される。
【0051】
具体的には、タンク補強部材15の前方には開口部OP1が形成され、右方には開口部OP2が形成され、左方には開口部OP3が形成される。なお図示されないが、タンク補強部材15の背面にも開口部OP4が形成される。
【0052】
次に、タンクブラケット26について説明する。
【0053】
タンクブラケット26は、タンク補強部材15に装着された尿素水タンク10の上部に取り付けられる。ブラケット26は、タンク補強部材15にボルト27を用いて固定される。
【0054】
具体的には、前方に位置する側部補強板15A及び上部補強板15Bには、ボルト締結ブロック27aが溶接等により構成されている。このボルト締結ブロック27aにはタンク固定ボルト27と螺合するネジ孔が形成されている。また、タンクブラケット26の前方端部にはタンク固定ボルト27を挿通する挿通孔(図に現れず)が形成された鍔状部26dが設けられている。
【0055】
よって、タンク固定ボルト27を鍔状部26dに形成された挿通孔を挿通してボルト締結ブロック27aに締結することにより、タンクブラケット26はタンク補強部材15に固定される。このようにブラケット26がタンク補強部材15に固定された状態で、液体還元剤用タンク10はタンク収納容器12内に収納された状態となる。
【0056】
ブラケット26は、水平方向に延在する上部26aと、尿素水タンク10の傾斜面10bに沿った傾斜面26bを備えている。この傾斜面26bは、液体還元剤用タンク10をタンク収納容器12内に収納した状態で、尿素水タンク10の傾斜面10bを上方から押えることにより保持する。
【0057】
よって、タンク補強部材15と尿素水タンク10は特にボルト等を用いて両者を固定しなくても、液体還元剤用タンク10はタンクブラケット26によりタンク補強部材15内に収容された状態に保持される。これにより液体還元剤用タンク10は、タンク収納容器12(タンク補強部材15,タンクブラケット26)により確実に保持されると共に補強される。
【0058】
ところで、液体還元剤用タンク10を搭載した建設機械は、低温環境下に置かれる場合がある。しかしながら、液体還元剤用タンク10内に貯留される尿素水は、−11℃以下で凍結することが知られている。
【0059】
尿素水が凍結した場合、その体積は液体状態の時よりも増大し、これに伴い尿素水が貯留された液体還元剤用タンク10も外側に向けて膨らむように変形してしまう。
【0060】
前記のように、液体還元剤用タンク10は上方に傾斜面10b、給液口10d、上部取り付け部10e,10f等が形成された構造とされている。このため、液体還元剤用タンク10の上方部分は凹凸が多く、剛性が高い構造となっている。
【0061】
これに対し、液体還元剤用タンク10の下方に位置するタンク本体10aは、横断面が略矩形状で全体として略箱形状とされている。このため、タンク本体10aの四隅位置を除いた部分(側面部分)は凹凸の少ない平板形状となっており、上方に比べて低い剛性となっている。よって、尿素水が凍結した場合、主にタンク本体10aの側面部分が変形することになる。
【0062】
ここで、仮に四側壁に開口を有しないタンク補強部材に液体還元剤用タンク10を収納した場合を想定する。この場合、尿素水が凍結して体積が増大すると、凍結した尿素水の体積変化により、タンク補強部材の四側壁には外側に向けて大きな押圧力が印加され、体還元剤用タンク或いはタンク補強部材に損傷が発生するおそれがある。
【0063】
これに対して本実施形態では、隣接する側部補強板15Aの間に開口部OP(OP1〜OP4)が形成されている。このタンク補強部材15の開口部OP(OP1〜OP4)の形成位置においては、液体還元剤用タンク10は露出しており、よって尿素水が凍結しても液体還元剤用タンク10は変形例可能な構成とされている。即ち、タンク補強部材15に形成された開口部OP(OP1〜OP4)は、尿素水の凍結時に液体還元剤用タンク10の変形を許容する変形許要部として機能する。
【0064】
また、タンク補強部材15の開口部OP(OP1〜OP4)は、タンク本体10aの四隅位置を除く平面部分と対向した構成となっている。前記のように、タンク本体10aの四隅位置を除く平面部分は剛性が低く、尿素水が凍結した場合にタンク本体10aに変形が大きく発生し易い位置である。
【0065】
本実施形態では、タンク補強部材15に形成する開口部OP(OP1〜OP4)の形成位置を、尿素水が凍結した場合にタンク本体10aに変形が発生し易い位置と対向する位置に設定している。よって、尿素水が凍結し液体還元剤用タンク10が変形しても、この変形は開口部OP(OP1〜OP4)内で行われるため、タンク補強部材15が損傷することを防止することができる。
【0066】
更に本実施形態では、隣り合う側部補強板15Aの上部を連結する上部補強板15Bが、各側部補強板15Aよりも外側に位置するよう構成されている。これについて、図7を用いて説明する。
【0067】
図7は、タンク補強部材15の前方に形成された開口部OP1の近傍を模式的に示すイメージ図である。また、図7(A)は尿素水が凍結していない状態を示し、図7(B)は尿素水が凍結した状態を示している。
【0068】
図7(A)に示すように、隣接する側部補強板15Aの間には上部補強板15Bが配設されている。この上部補強板15Bは、側部補強板15Aのタンク本体10a(液体還元剤用タンク10)と対峙する背面BAではなく、この背面BAの反対面である外側面SUに配設されている。
【0069】
本実施形態では、上部補強板15Bが側部補強板15Aの外側面SUに設けられた構成とされている。換言すると、上部補強板15Bは側部補強板15Aに対し、側部補強板15Aの厚寸法(図7に矢印Wで示す寸法)だけ、前方(矢印X2方向)にシフトした構成となっている。
【0070】
図7(B)に示すように、尿素水が凍結して体積が増加すると、これに伴いタンク本体10aも外側に向けて変形(膨張)する。この際、本実施形では上部補強板15Bの背面側に空間部(矢印SPで示す)が形成されるため、この空間部SPにおいても膨張部EXPは膨張する。これにより、タンク本体10aが膨張しても、膨張による力が上部補強板15Bに印加されることを抑制でき、タンク補強部材15が損傷することを防止できる。
【0071】
更に上部補強板15Bは、側部補強板15Aの上方端部(矢印Z1方向の端部)に配設されている。即ち、上部補強板15Bは、液体還元剤用タンク10の上部に近い位置に配設されている。
【0072】
この液体還元剤用タンク10の上方部分は、凹凸が多く剛性が高い構造となっており、素水が凍結してもタンク本体10aの膨張量は小さい。よって、この位置に上部補強板15Bを配設することにより、尿素水が凍結しタンク本体10aの膨張しても、この力が上部補強板15Bに印加されることを抑制でき、タンク補強部材15の損傷を防止できる。
【0073】
また前記のように、タンクブラケット26はタンク補強部材15にタンク固定ボルト27を用いて固定されるが、タンク固定ボルト27が締結されるボルト締結ブロック27aも側部補強板15A及び上部補強板15Bの上方位置に設けられている。即ち、タンク固定ボルト27とボルト締結ブロック27aの締結位置も液体還元剤用タンク10の上部に近い位置に設定されている。
【0074】
よって、タンク本体10aが変形しても、タンク固定ボルト27とボルト締結ブロック27aの締結部分には変形に伴う外力は印加されず、タンクブラケット26とタンク補強部材15とは固定された状態を維持する。よって、タンク固定ボルト27とボルト締結ブロック27aの締結位置を本実施形態のように設定することにより、タンク収納容器12が損傷することを防止することができる。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【0076】
例えば、開口部OPは必ずしもタンク本体10aを露出させる構成とする必要はなく、タンク本体10aの変形を許容する部材等で覆う(塞ぐ)構成とすることも可能である。
【0077】
また、尿素水の凍結時における液体還元剤用タンク10の変形を防止するため、図4図6に示すように、タンク本体10aに剛性を高めるためのリブ10iを設けた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 下部走行体
2 上部旋回体
4 ブーム
7 エンジンルーム
8 ディーゼルエンジン
9 排ガス処理装置
10 尿素水タンク(液体還元剤用タンク)
10a タンク本体
11 ドレインプラグ
12 タンク収納容器
13 熱交換機ユニット
14 旋回フレーム
15 タンク補強部材
15A 側部補強板
15B 上部補強板
15C タンク載置板
15D 下部補強板
17L,17R 支持ブラケット
18 ブームフートピン
20 保護部材
26 タンクブラケット
30 フィラー
31 フィラーブラケット
EXP 膨張部
OP,OP1〜OP4 開口部
SP 空間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7