特許第6297284号(P6297284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミサワホーム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6297284-ユニット式建物の床構造 図000002
  • 特許6297284-ユニット式建物の床構造 図000003
  • 特許6297284-ユニット式建物の床構造 図000004
  • 特許6297284-ユニット式建物の床構造 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297284
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】ユニット式建物の床構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
   E04B1/348 L
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-185122(P2013-185122)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-52221(P2015-52221A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】堀内 淳
【審査官】 金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−287254(JP,A)
【文献】 特開2003−253763(JP,A)
【文献】 特開平11−050581(JP,A)
【文献】 特開平10−082126(JP,A)
【文献】 特開2000−136580(JP,A)
【文献】 特開2000−073547(JP,A)
【文献】 米国特許第05735639(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向に平行な板状の本体部と、前記本体部の上端から水平方向に延在する上面部と、前記本体部の下端から水平方向に延在する下面部とを備えて断面コ字状に形成されている鉄骨梁と、
前記鉄骨梁の延在方向に対して直交する方向に延在し、前記鉄骨梁に固定される木製の根太材と、
前記根太材の上面に取り付けられて床面を形成する面材とを備え、
前記根太材の上面は、前記鉄骨梁の上面よりも上方に張り出していて、
前記鉄骨梁と前記根太材との間には、上面が前記根太材の上面と面一であり、なおかつ前記鉄骨梁と平行に延在する木製の際根太材が介在していて、
前記際根太材に対して前記面材が固定されているユニット式建物の床構造であって、
前記面材と前記鉄骨梁との間には、前記際根太材に当接する断熱材が介在して、
所定の間隔を空けて前記本体部同士が対向するように配置された一対の前記鉄骨梁の前記本体部間には、前記断熱材に当接する断熱材が介在して、
前記面材の下方における前記鉄骨梁及び前記根太材のなす空間には、前記鉄骨梁の前記上面部及び前記下面部の間に配置され、先端部が前記鉄骨梁の前記本体部に当接する鉄骨当接部と、前記鉄骨当接部から外側に連続して形成され、その上面が前記面材に当接する面材当接部とが備えられている断熱材が設けられていることを特徴とするユニット式建物の床構造。
【請求項2】
請求項1記載のユニット式建物の床構造において、
前記面材と前記鉄骨梁との間に介在する前記断熱材はボード系断熱材であることを特徴とするユニット式建物の床構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載のユニット式建物の床構造において、
前記床面は複数の前記面材を並設することによって形成されており、
複数の前記面材のうち前記際根太材の上方において互いに隣接する前記面材同士の境界が前記際根太材上に沿って配置されていることを特徴とするユニット式建物の床構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のユニット式建物の床構造において、
前記根太材は、
前記鉄骨梁の前記上面部及び下面部の間に配置され、前記本体部に固定される固定部と、
前記固定部から外側に連続して形成され、その上面で前記面材を支持する支持部とを備えていることを特徴とするユニット式建物の床構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のユニット式建物の床構造において、
前記鉄骨梁の上面に対してサッシが取り付けられていることを特徴とするユニット式建物の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット式建物の床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の建物ユニットで構成されるユニット住宅では、例えば床梁として鉄骨梁が用いられたものが知られている。このような床梁に対しては直接床材などの面材が取り付けられている場合がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−100686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鉄骨梁に対して面材が直接取り付けられていると、鉄骨梁が熱橋として作用しやすくなり、建物の熱損失が高まるおそれがあった。また、鉄骨梁の表面が木材と比しても滑らかであるために、面材を鉄骨梁に取り付ける際に滑って、施工性が低下してしまう場合もあった。
このため、本発明の課題は、鉄骨梁から面材に対する熱の影響を抑制しつつ、面材の施工性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、例えば図1及び図2に示すように、
垂直方向に平行な板状の本体部21と、前記本体部21の上端から水平方向に延在する上面部22と、前記本体部21の下端から水平方向に延在する下面部23とを備えて断面コ字状に形成されている鉄骨梁2と、
前記鉄骨梁2の延在方向に対して直交する方向に延在し、前記鉄骨梁2に固定される木製の根太材3と、
前記根太材3の上面に取り付けられて床面を形成する面材4とを備えるユニット式建物の床構造1であって、
前記根太材3の上面は、前記鉄骨梁2の上面よりも上方に張り出していて
前記鉄骨梁2と前記根太材3との間には、上面が前記根太材3の上面と面一であり、なおかつ前記鉄骨梁2と平行に延在する木製の際根太材5が介在していて、
前記際根太材5に対して前記面材4が固定されているユニット式建物の床構造であって、
前記面材4と前記鉄骨梁2との間には、前記際根太材5に当接する断熱材6が介在して、
所定の間隔を空けて前記本体部21・21同士が対向するように配置された一対の前記鉄骨梁2・2の前記本体部21・21間には、前記断熱材6に当接する断熱材24が介在して、
前記面材4の下方における前記鉄骨梁2及び前記根太材3のなす空間には、前記鉄骨梁2の前記上面部22及び前記下面部23の間に配置され、先端部が前記鉄骨梁2の前記本体部21に当接する鉄骨当接部71と、前記鉄骨当接部71から外側に連続して形成され、その上面が前記面材4に当接する面材当接部72とが備えられている断熱材7が設けられていることを特徴としている。
【0006】
請求項1記載の発明によれば、根太材3の上面が、鉄骨梁2の上面よりも上方に張り出しているので、根太材3の上面で支持した面材4と、鉄骨梁2との間に隙間を形成することができる。この隙間によって鉄骨梁2から面材4に対する熱の影響を抑制することができる。
また、鉄骨梁2よりも表面が滑りにくい木製の根太材3に面材4が接することなるために、面材4を根太材3に取り付ける際に面材4が滑ってしまうことも防止できる。これにより、面材4の取り付け時における施工性の低下も抑制することが可能である。
さらに、鉄骨梁2と根太材3との間に、上面が根太材3の上面と面一であり、なおかつ鉄骨梁2と平行に延在する木製の際根太材5が介在していて、この際根太材5に対して面材4が固定されているので、例えば木ネジなどの固定具によって面材4を際根太材5に容易に固定することが可能である。
また、面材4と鉄骨梁2との間に際根太材5に当接する断熱材6が介在しているので、鉄骨梁2から面材4に対する熱の影響を、その間の断熱材6がより確実に遮断することが可能となる。
そして、一対の断面コ字状に形成された鉄骨梁2・2の本体部21・21間に、面材4と鉄骨梁2との間に介在されて際根太材5に当接する断熱材6に当接する断熱材24が介在しているので、鉄骨梁2から面材4に対する熱の影響を、その間に介在した断熱材24により確実に遮断することが可能となる。
さらに、面材4の下方における鉄骨梁2及び根太材3のなす空間にも、鉄骨梁2の上面部22及び下面部23の間に配置され、先端部が鉄骨梁2の本体部21に当接する鉄骨当接部71と、その鉄骨当接部71から外側に連続して形成され、その上面が面材4に当接する面材当接部72とが備えられた断熱材7が設けられているので、鉄骨梁2から面材4に対する熱の影響を、鉄骨梁2及び根太材3のなす空間に設けた断熱材7により確実に遮断することが可能となる。
【0007】
請求項2記載の発明は、例えば図1及び図2に示すように、請求項1記載のユニット式建物の床構造1において、
前記面材4と前記鉄骨梁2との間に介在する前記断熱材はボード系断熱材6であることを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、面材4と鉄骨梁2との間に介在するボード系断熱材6により、鉄骨梁2から面材4に対する熱の影響をより確実に遮断することが可能となる。
【0009】
請求項3記載の発明は、例えば図1に示すように、請求項1又は2記載のユニット式建物の床構造1において、
前記床面は複数の前記面材4を並設することによって形成されており、
複数の前記面材4のうち前記際根太材の上方において互いに隣接する前記面材同士の境界が前記際根太材5上に沿って配置されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、際根太材5の上方において互いに隣接する面材4同士の境界が際根太材5上に沿って配置されているので、隣接する面材4を一つの際根太材5に位置合わせすることができ、これらの面材4を際根太材5に確実に固定することができる。
【0011】
請求項4記載の発明は、例えば図1に示すように、請求項1〜3のいずれか一項に記載のユニット式建物の床構造1において、
前記根太材3は、
前記鉄骨梁2の前記上面部22及び前記下面部23の間に配置され、前記本体部21に固定される固定部31と、
前記固定部31から外側に連続して形成され、その上面で前記面材4を支持する支持部32とを備えていることを特徴としている。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、鉄骨梁2の上面部22及び下面部23の間に配置される固定部31で、鉄骨梁2の本体部21に根太材3を固定して、その固定部31から外側に連続して形成される支持部32の上面で面材4を支持することができる。
【0013】
請求項5記載の発明は、例えば図3に示すように、請求項1〜4のいずれか一項に記載のユニット式建物の床構造1において、
前記鉄骨梁2の上面に対してサッシ10が取り付けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、床梁である鉄骨梁2の上面に対してサッシ10が取り付けられているので、際根太材5に面材4を固定して嵩上げしたことにより、面材4とサッシ10の下枠11との段差を従来よりも小さくすることができ、バリアフリーに対応させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、鉄骨梁から面材に対する熱の影響を抑制することができ、なおかつ面材の施工性を高めることができる。
さらに、例えば木ネジなどの固定具によって面材を際根太材に容易に固定することが可能である。
また、鉄骨梁から面材に対する熱の影響を、その間に介在した断熱材がより確実に遮断することが可能となる。
さらに、鉄骨梁から面材に対する熱の影響を、一対の鉄骨梁の本体部間に介在した断熱材がより確実に遮断することが可能となる。
そして、鉄骨梁から面材に対する熱の影響を、鉄骨梁及び根太材のなす空間に設けた断熱材がより確実に遮断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るユニット式建物の床構造の概略構成を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係るユニット式建物の床構造の概略構成を示す正面図である。
図3図1に示す床構造に対してサッシを設置した状態を示す説明図である。
図4】従来の床構造に対してサッシを設置した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本実施形態に係るユニット式建物の床構造の概略構成を示す斜視図である。図2は本実施形態に係るユニット式建物の床構造の概略構成を示す正面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、ユニット式建物の床構造1には、床梁である鉄骨梁2と、鉄骨梁2の延在方向に対して直交する方向に延在し、鉄骨梁2に固定される木製の板材からなる複数の根太材3と、根太材3の上面に取り付けられる床面材としての複数の面材4とが備えられている。
【0019】
鉄骨梁2は、垂直方向に平行な板状の本体部21と、本体部21の上端から水平方向に延在する上面部22と、本体部21の下端から水平方向に延在する下面部23とを備えて断面コ字状に形成されている。
鉄骨梁2は、左右に所定の間隔を空けて一対設けられている。具体的には、一対の鉄骨梁2の本体部21同士が対向するように配置されている。一対の鉄骨梁2の本体部21同士の間には断熱材24が介在している。断熱材24の上端面及び下端面はそれぞれ鉄骨梁2の上面部22及び下面部23に略面一となっている。
【0020】
根太材3は、鉄骨梁2の上面部22及び下面部23の間に配置され、本体部21に固定される固定部31と、固定部31から外側に連続して形成され、その上面で面材4を支持する支持部32とを備えている。
【0021】
固定部31は、鉄骨梁2の本体部21に対し、ブラケット311及びボルト312によって固定されている。ブラケット311は、板状であってその上下が固定部31を挟むように折り曲げられている。また、ブラケット311は、溶接によって鉄骨梁2の上面部22及び下面部23に固定されている。そして、ブラケット311と固定部31とは、ボルト312によって締結されている。なお、ブラケット311の形状はあくまで一例であり、固定部31を鉄骨梁2に固定できるのであればその形状は限定されないことはもちろんである。
固定部31及び支持部32の下面は同じ高さであるが、支持部32の方が固定部31よりも高く形成されている。これにより、支持部32の上面が鉄骨梁2の上面部22よりも一段高く形成されている。つまり、支持部32の上面は、上面部22の上面よりも上方に張り出しているために、当該支持部32の上面で支持された面材4と、鉄骨梁2の上面部22との間には隙間Sが形成されることになる。
また、固定部31の先端から支持部32までの幅Hは、上面部22よりも長く設定されている。そして、上面部22と支持部32との間、つまり鉄骨梁2と根太材3との間には、鉄骨梁2と平行に延在する木製の際根太材5が介在している。この鉄骨梁2と根太材3との間が際根太材5用のスペースとなる。
際根太材5は、左右の鉄骨梁2のそれぞれに対して設けられている。際根太材5の上面は、根太材3の支持部32の上面と面一となっている。このため、面材4は、支持部32の上面とともに際根太材5の上面によっても支持されることになる。
【0022】
複数の面材4は並設されることによって床面を形成している。複数の面材4のうち、際根太材5の上方において互いに隣接する面材4同士の境界は、際根太材5上に沿って配置されている。各面材4は、図示しない木ネジなどによって際根太材5に留め付けられている。そして、隙間Sには、上面が際根太材5の上面と面一となる断熱材6が設けられている。断熱材6は例えばスチレンボードやウレタンボードなどのボード系断熱材である。これにより、面材4と鉄骨梁2との間に断熱材6が介在することになる。断熱材6は、隙間Sをなす左右の際根太材5に対しても当接している。
また、面材4の下方における鉄骨梁2及び根太材3のなす空間には断熱材7が設けられている。断熱材7には、鉄骨梁2の上面部22及び下面部23の間に配置され、先端部が鉄骨梁2の本体部21に当接する鉄骨当接部71と、鉄骨当接部71から外側に連続して形成され、その上面が面材4に当接する面材当接部72とが備えられている。
【0023】
図3は、ユニット式建物の床構造1に対してサッシ10を設置した状態を示す説明図である。また、図4は、従来の床構造100に対してサッシ10を設置した状態を示す説明図である。なお、図3及び図4における鉄骨梁2は、床構造1,100の最も外側に配置された鉄骨梁2を示している。また、いずれの場合においても面材4の表面には、フローリングなどの内装材41が積層されている。
図3及び図4に示すように鉄骨梁2の上面部22にはサッシ10が取り付けられている。図3に示す床構造1におけるサッシ10の下枠11と内装材41との段差H1と、図4に示す従来の床構造100におけるサッシ10の下枠11と内装材41との段差H2とを比較すると、床構造1の段差H1の方が面材4を嵩上げしているために小さくなる。このため、サッシ10と内装材41とをよりフラットに近づけることができ、バリアフリーに対応させることが可能である。
【0024】
以上のように、本実施形態によれば、根太材3の上面が、鉄骨梁2の上面部22の上面よりも上方に張り出しているので、根太材3の上面で支持した面材4と、鉄骨梁2との間に隙間Sを形成することができる。この隙間Sによって、鉄骨梁2から面材4に対する熱の影響を抑制することができる。
また、鉄骨梁2よりも表面が滑りにくい木製の根太材3に面材4が接することなるために、面材4を根太材3に取り付ける際に面材4が滑ってしまうことも防止できる。これにより、面材4の取り付け時における施工性の低下も抑制することが可能である。
【0025】
また、鉄骨梁2と根太材3との間に、根太材3の上面と面一であり、なおかつ鉄骨梁2と平行に延在する木製の際根太材5が介在していて、この際根太材5に対して面材4が固定されているので、例えば木ネジなどの固定具によって面材4を際根太材5に容易に固定することが可能である。
【0026】
また、際根太材5の上方において互いに隣接する面材4同士の境界が際根太材5上に沿って配置されているので、隣接する面材4を一つの際根太材5に位置合わせすることができ、これらの面材4を際根太材5に確実に固定することができる。
【0027】
面材4と鉄骨梁2との間に断熱材6が介在しているので、鉄骨梁2から面材4に対する熱の影響を断熱材6がより確実に遮断することが可能となる。
【0028】
また、床梁である鉄骨梁2に対してサッシ10が取り付けられているので、床面材である面材4とサッシ10の下枠11との段差を従来よりも小さくすることができ、バリアフリーに対応させることが可能となる。
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 ユニット式建物の床構造
2 鉄骨梁
3 根太材
4 面材
5 際根太材
6 断熱材
7 断熱材
10 サッシ
21 本体部
22 上面部
23 下面部
24 断熱材
H1 段差
S 隙間

図1
図2
図3
図4