(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
[最下階用排水管継手]
以下、本発明の実施の形態に係る最下階用排水管継手を、図面に基づき詳しく説明する。なお、最下階用排水管継手の構造(たとえば接続される他の配管の呼び径および他の配管との接続構造等)には様々なものがあり、本発明は特定の構造に限定されるものではなく、後述する構造上の特徴を備えた最下階用排水管継手であればよい。
【0016】
図1に本発明の実施の形態に係る最下階用排水管継手100の側面図および断面図を、
図2に最下階用排水管継手100の上面図をそれぞれ示す。
この最下階用排水管継手100は、最下階の床スラブを貫通して配置する最下階用の排水管継手である。この最下階用排水管継手100は、排水立て管と接続される上部管接続部110と、他の配管と接続される下部管接続部190と、2本の横枝管とそれぞれ接続される横枝管接続部120および横枝管接続部130と、横枝管接続部120および横枝管接続部130が管内に開口する集水室150とを含む。
【0017】
特徴的であるのは、横枝管接続部120および横枝管接続部130よりも下方の内周面に、環状の突起で形成された整流リング170を配置させている点である。この整流リング170の詳細については後述する。
この最下階用排水管継手100を立てた使用状態にしたとき、上部管接続部110は最下階用排水管継手100本体の上部に位置付けられて排水流の流入口とされ、下部管接続部190は最下階用排水管継手100本体の下部に位置付けられて排水流の流出口とされ、横枝管接続部120および横枝管接続部130は上下の上部管接続部110と下部管接続部190との間に位置付けられて横向きとなり、排水流の流入口とされる。なお、横枝管接続部120および横枝管接続部130は、横向きに限らず、斜め上方、あるいはオフセットを介した横向きであっても良い。本実施の形態において、上部管接続部110に接続される上部管は排水立て管に相当するものとされ、下部管接続部190に接続される下部管は脚部ベンド管に相当するものとされる。また、この脚部ベンド管には横主管が接続される。なお、下部管接続部190と脚部ベンド管との間に他の配管(直管)を設けるようにしても構わない。
【0018】
また、横枝管接続部120および横枝管接続部130に接続される横枝管は、建物の最下階(建物の1階に限定されるというものではなく、排水立て管として立て込まれる範囲で最も下位となる階層)で配管されたものである。なお、本実施の形態に係る最下階用排水管継手100においては、横枝管接続部120および横枝管接続部130として二方(2つ)のものを示しているが、これは特に限定されるものではなく、一方(1つ)や三方(3つ)、四方(4つ)としてもよい。
図1および
図2において、横枝管接続部120および横枝管接続部130は受口部122および受口部132をそれぞれ備え、受口部112および受口部132には、公知のゴム輪式受口と同様にゴム輪124およびゴム輪134がそれぞれ嵌装されている。横枝管の最下階用排水管継手100側の端部がゴム輪124またはゴム輪134内に圧入されて、最下階用排水管継手100と横枝管とが水密にワンタッチで連結されるようになっている。
【0019】
最下階用排水管継手100においては、横枝管接続部120が設けられる部分に対応さ
せて集水室150が形成されており、この集水室150の内部は上部管接続部110、下部管接続部190、横枝管接続部120のいずれの呼び径よりも広く形成されている。
このような集水室150が設けられているため、上部管接続部110と横枝管接続部120との間には内部広さを拡大させている拡径部140が形成され、また横枝管接続部120と下部管接続部190との間には内部広さを縮小させている縮径部180が形成されて、これら拡径部140から縮径部180との間がズン胴状に太く形成されていることになる。
【0020】
この最下階用排水管継手100は最下階用とされているため、集水室150が最下階の床スラブ上へ顔を出すような状態(横枝管接続部120に接続する横枝管を床スラブ上で這わせられる状態)にし、下部管接続部190を床スラブに設けられた設置用孔へ差し入れて設置される。この集水室150の内部は単なる空洞として形成されており、上部管(排水立て管)を流下する排水流に旋回を付与させるための旋回羽根や、排水流を管壁に沿わせるための偏流板などは必要とされない。むしろ、この最下階用排水管継手100の下流側に接続される下部管(脚部ベンド)で排水流に乱流が起こることによる洗濯泡の発生や過剰正圧を防止するためには、これら旋回羽根、偏流板などは無いほうがよい。従って、本実施の形態に係る最下階用排水管継手100においても設けられていないものとした。
【0021】
図1および
図2において、上部管接続部110は受口部112を備え、受口部112には、公知のゴム輪式受口と同様にゴム輪114が嵌装されていて、上部管の下端がゴム輪114内に圧入されて、最下階用排水管継手100と上部管とが水密にワンタッチで連結されるようになっている。このように、上部管接続部110にはその内方に上部管が差し込まれることになるので、この上部管接続部110の内径は上部管を嵌合する分だけ径大に形成されているが、上部管が差し込まれることで、この上部管接続部110において排水流の流れに有効活用される内径は上部管(排水立て管)と同等となる。すなわち、これら上部管接続部110と上部管とは互いの呼び径が同じとなっている。
【0022】
また、
図1および
図2において、下部管接続部190はストレートの差し口としてあるため、この下部管接続部190自体が下部管(脚部ベンド管)の上端部に設けられた受口部に差し込まれることになる。従って、下部管の受口部における内径は下部管接続部190を嵌合する分だけ径大に形成されているが、下部管接続部190が差し込まれることで、この下部管において排水流の流れに有効活用される内径は下部管接続部190と同等となる。すなわち、これら下部管接続部190と下部管とは互いの呼び径が同じとなっている。
【0023】
そして、本実施の形態に係る最下階用排水管継手100本体においては、上部管接続部110の呼び径よりも下部管接続部190の呼び径の方が径大に形成されている。その径大化の程度は、おおよそ呼び径としての規格で1サイズから2サイズ分に相当するものとされている。
上記したように、上部管接続部110と上部管(排水立て管)との呼び径が同じであり、下部管接続部190と下部管(脚部ベンド管)との呼び径が同じであることから、上部管の呼び径に比べて下部管の呼び径の方が大きいことは明らかである。そして、この下部管(脚部ベンド管)においては、それより下流側で呼び径が一定とされるか、または、少なくとも小さくされることなく横主管へと引き継がれている。また、この横主管においてもこの呼び径が維持されるか、または、少なくとも小さくされることがないように配管されている。さらには、このように径大化された呼び径は、脚部ベンド管から横主管へわたる領域において、さらには横主管から排水マスに至るまでの下流側で小さくされることがない構成となっている。すなわち、脚部ベンド管の入口接合部と出口接合部の呼び径は同じとされている。
【0024】
このような構成であるため、上部管(排水立て管)を流下し、下部管(脚部ベンド管)を経て横主管へ流れる排水流の流れは呼び径の径大化を受けて円滑化される。同様に、横枝管から最下階用排水管継手100の横枝管接続部120を経て合流する排水流についても円滑に合流される。また、最下階用排水管継手100の最下階用排水管継手100本体
内では実質的に管内容量が増大しているので、最下階用排水管継手100内、下部管(脚部ベンド管)内、横主管内のいずれでも過剰正圧の発生は防止され、また当然に上部管(排水立て管)内での過剰正圧の発生も防止されるものとなる。
【0025】
本実施の形態においては、上記したように下部管接続部190の呼び径は上部管接続部110の呼び径より大であって集水室150の内径は下部管接続部190の呼び径および上部管接続部110の呼び径のいずれよりも大であることを特徴とする最下階用排水管継手100の
図1に示す位置に、
図3に示す整流リング170が設けられている。この整流リング170の詳細について以下に説明する。なお、
図3に示す整流リング170の斜視図は、整流リング170の構造を理解するための概念図であって、実際にはこの整流リング170は最下階用排水管継手100と一体的に製造されるので、整流リング170単体で取り出せるものではない。また、
図4に、最下階用排水管継手100およびこれに接続される配管を示す図であって、この最下階用排水管継手100の排水性能を説明するための図を示す。
【0026】
図1および
図4に示すように、この整流リング170は、横枝管接続部120および横枝管接続部130よりも下方の内周面に設けられているが、好ましくは、集水室150の内周面に配置されることが好ましい。そして、
図1、
図3および
図4に示すように、この整流リング170は、集水室150内周面全周に設けられる円環状突起部170Aを備える。整流リング170において、円環状突起部170Aの上面は、管軸中心に接近する方向へ向けて下方に傾斜した第1の傾斜面170Bを備え、その上端はエッジ部170Cを形成している。また、整流リング170において、円環状突起部170Aの下面は、管軸中心から離隔する方へ向けて下方に傾斜した第2の傾斜面170D(第1の傾斜面170Bと逆テーパ)を備えている。なお、製造上の制約により、エッジ部170Cが管軸方向に若干の幅を備えたものであっても構わない。さらに、第2の傾斜面170Dは垂直であっても構わないし、第2の傾斜面170Dを備えないものであっても構わない。
【0027】
さらに、この整流リング170の円環状突起部170Aの内縁の径D(3)(整流リング170の最小内径)は、上部管接続部110の呼び径D(1)よりも大きく、かつ、下部管接続部190の呼び径D(4)よりも小さい(すなわちD(1)<D(3)<D(4))。上述したように下部管接続部190の呼び径D(4)は上部管接続部110の呼び径D(1)より大であり(すなわちD(1)<D(4))、集水室150の内径D(2)は下部管接続部190の呼び径D(4)および上部管接続部110の呼び径D(1)のいずれよりも大きい(すなわちD(1)<D(4)<D(2))ことを考慮すると、D(1)<D(3)<D(4)<D(2)となる。
【0028】
この整流リング170を備えない最下階用排水管継手は、下部管接続部190の呼び径D(4)が上部管接続部110の呼び径D(1)よりも大きく設定されており、かつ、集水室150の内径D(2)がD(4)およびD(1)よりも大きく最下階用排水管継手100本体内では実質的に管内容量が増大していることにより排水性能を確保している。しかしながら、このような最下階用排水管継手では(たとえば超高層建物に使用される場合など)排水量が大きい場合には排水の流下速度が増大しその流れに引き込まれて排水立て管内に負圧が発生する可能性がある。このように大きな排水量に対してこの負圧をこの整流リング170により抑えながらも、排水性能を維持させる。
【0029】
図4に示すように、上部管および横枝管から集水室150へ集められ、集水室150から流下する排水は、整流リング170の円環状突起部170Aにより形成された第1の傾斜面170Bに当接して一旦減速されて、引き込まれによる負圧の発生を抑えることができる。さらに、集水室150から流下する排水は第1の傾斜面170Bに沿って流下して、流れの外縁を下部管接続部190の内壁に沿わさないようにして上部管と同じような流れになるとともに、流れの中心部分の空気を含む排水の流れを維持することにより所望の排水性能を維持できる。この場合において、流れの中心部分の空気を含む排水の流れは、その幅自体が整流リング170により狭められるため、流れの中心部分の空気が圧縮され負圧の発生を抑制することができる。
【0030】
さらに、整流リング170を備えない最下階用排水管継手を比較例とした、本実施の形
態に係る最下階用排水管継手100の排水試験結果を
図5に示す。この
図5は、空気調和・衛生工学会規格である「集合住宅の排水立て管システムの排水能力試験法」(SHASE−S218−2008)に基づいて、立て管負荷水量7.0L/秒(超高層建物に対応する大流量)で行った管内圧力分布を示す。
【0031】
本実施の形態に係る最下階用排水管継手100も比較例に係る最下階用排水管継手も、管内圧力の変動許容値±400Paを満足しているものの、比較例に係る最下階用排水管継手では、下層階において正圧側の管内圧力は抑制されているものの負圧側の管内圧力は抑制されず(その絶対値が大きく)大きな負圧が発生してしまい、正圧が抑制されているのに対して負圧が抑制されておらずバランスが悪い。一方、本実施の形態に係る最下階用排水管継手100では、下層階において正圧側の管内圧力は抑制されている状態を維持しつつ負圧側の管内圧力は抑制されて(その絶対値が小さく)大きな負圧が発生しなくなり、正圧も負圧も抑制されておりバランスが良い点で特に好ましい。この排水試験結果から、比較例に係る最下階用排水管継手に比較して本実施の形態に係る最下階用排水管継手100の方が排水性能の好ましいことが明らかである。このように最下階用排水管継手100方が排水性能の好ましい理由は、
図4を参照して説明したことであると考えられる。
[変形例]
次に、上記した整流リング170の変形例を備えた最下階用排水管継手について説明する。
【0032】
図6に、変形例に係る最下階用排水管継手102、最下階用排水管継手104および最下階用排水管継手106を示す。いずれも横枝管接続部120および横枝管接続部130よりも下方の内周面の位置に整流リングが設けられているが、
図6(A)に示す最下階用排水管継手102は縮径部180に整流リング172が、
図6(B)に示す最下階用排水管継手104は下部管接続部190に整流リング174が設けられている。また、
図6(C)に示す最下階用排水管継手106は縮径部180に整流リング176が設けられ、その整流リング176は、第1の傾斜面170Bおよび第2の傾斜面170Dを備えず、水平な面で構成されている。なお、いずれか一方は傾斜面を備えるものであっても構わない。
【0033】
次に、
図7に、整流リングの変形例を示す。
図7(A)に示す整流リング170(整流リング172、整流リング174および整流リング176も同じ)は、環状突起部が最下階用排水管継手の内周面の全周に設けられ、
図7(B)に示す整流リング272および
図7(C)に示す整流リング274は、環状突起部が最下階用排水管継手の内周面の全周に設けられるのではなく内円周長さの50%以上に形成される。環状突起部が内円周長さの50%以上に形成されることにより、上記した作用効果が発現する。さらに、整流リング272および整流リング274においては、最下階用排水管継手の内径の形状に対して対称的かつ断続的に配置された複数の突起で形成される。また、整流リング274は整流リング272が備える円環部272Rを備えない。上記したようにこれらの整流リングは、内周面の全周に設けられるものであっても、内周面の全周に設けられないものであっても、最下階用排水管継手の内径の形状に対して対称的である必要がある。このように整流リングを形成すると、最下階用排水管継手の設置方向が自由になり、他の配管の設置方向を優先させた排水配管構造を実現することができる。
【0034】
このような変形例に係る最下階用排水管継手102、最下階用排水管継手104および最下階用排水管継手106であっても、このような変形例に係る整流リング272または整流リング274を備えた最下階用排水管継手であっても、上記した最下階用排水管継手100と同じ作用効果を奏する。
[排水配管構造]
次に、このような最下階用排水管継手100を用いた排水配管構造について説明する。まず、
図8を参照して第1の排水配管構造について説明し、次に、
図9〜
図14を参照して第2の排水配管構造について説明する。
・第1の排水配管構造
図8に、最下階用排水管継手100に接続される下部管として脚部ベンド管200を採
用した場合であって、建物の最下階(ここでは2階)の床下に脚部ベンド管200が設けられた排水配管構造を示す。
【0035】
図8に示すように、この排水配管構造は、2階床スラブ(最下階スラブ)510と1階天井面570との間の空間に脚部ベンド管200が配置され、この脚部ベンド管200のベンド上部管接続部にて本実施の形態に係る最下階用排水管継手100が横主管接続部にて横主管560が脚部ベンド管200にそれぞれ接続されて、最下階用排水管継手100において立て管および横枝管から集水室150へ流入して、下部管接続部190を垂直方向に流下してきた排水が、水平方向にその流れの方向が脚部ベンド管200により変更される。最下階用排水管継手100は吊り金具520および吊りボルト530により、脚部ベンド管200は山型鋼550、Uボルト540および吊りボルト530により、2階床スラブ510から吊り下げられている。
【0036】
この最下階用排水管継手100は、上方の排水立て管と接続するための上部管接続部110(この呼び径はたとえば100mm(4インチ)とする)と、脚部ベンド管200と接続するための下部管接続部190(この呼び径はたとえば125mm(5インチ)とする)と、上部管接続部110と下部管接続部190との間であって横方向からの排水を管内に排水するための横枝管接続部120および横枝管接続部130を備える集水室150とを含む。さらに、この最下階用排水管継手100は、このように下部管接続部190の呼び径125mm(5インチ)は上部管接続部110の呼び径100mm(4インチ)より大であり、集水室150の内径は下部管接続部190の呼び径および上部管接続部110の呼び径のいずれよりも大(たとえば140mmとする)であり、整流リング170の最小内径は110mmであることを特徴とする。さらに、この最下階用排水管継手100は、下部管接続部190が直管状のストレートであって、任意の長さに切断して脚部ベンド管200に接続することが可能であることを特徴とする。また、脚部ベンド管のベンド上部管接続部は、最下階用排水管継手100の下部管接続部190と接続される。
【0037】
このような最下階用排水管継手100に接続される脚部ベンド管200の上部管接続部の呼び径は125A(125mm、5インチ)であって、横主管560に接続される横主管接続部の呼び径は150A(150mm、6インチ)であって、この場合、R(1)=187mm、A(2)=279mm、H(2)=315mm、L(2)=515mmとなる。
・第2の排水配管構造
図9〜
図14を参照して、最下階用排水管継手100に接続される下部管として脚部ベンド管1100を採用した場合であって、建物の最下階(ここでは2階)の床下に脚部ベンド管1100が設けられた排水配管構造を示す。まず、この脚部ベンド管1100について説明する。なお、脚部ベンド管1100は脚部ベンド管200に対して高さ方向寸法が抑制されている点が異なる。
【0038】
図9にこの脚部ベンド管1100の側面図を、
図10に脚部ベンド管1100の上面図を、
図11に
図10の11−11断面図を、それぞれ示す。これらの図に示すように、この脚部ベンド管1100は、たとえば鋳鉄製であって、最下階の床スラブを貫通した排水立て管と接続されるベンド上部管接続部1110と、横主管と接続される横主管接続部1120と、ベンド上部管接続部1110の管軸方向と横主管接続部1120の管軸方向とが直交するように方向転換してベンド上部管接続部1110および横主管接続部1120を連結するベンド部(曲管部)1130とを備える。
【0039】
特徴的であるのは、この脚部ベンド管1100のベンド部1130において、ベンド上部管接続部1110との接続部における管軸中心と横主管接続部1120との接続部における管軸中心とを結んだ中心軸線が90度未満の円弧形状を形成している点である。なお、ベンド部1130と横主管接続部1120との接続部において、ベンド部1130の中心軸線方向と横主管接続部の管軸方向とが平行となる。
【0040】
この脚部ベンド管1100のベンド上部管接続部1110のベンド受口部1112には、公知のゴム輪式受口と同様にゴム輪1114が嵌装されていて、最下階用排水管継手100の下部管接続部190の下端がゴム輪1114内に圧入されて、脚部ベンド管110
0と最下階用排水管継手100とが水密にワンタッチで連結されるようになっている。このとき、最下階用排水管継手100の管軸が垂直方向になるように設置されて、脚部ベンド管1100と垂直方向に設置される最下階用排水管継手100とが、ベンド上部管接続部1110の管軸と最下階用排水管継手100の管軸とが一致するように、連結される。なお、最下階用排水管継手100の下部管接続部190の呼び径の一例として125mm(5インチ)が挙げられる。
【0041】
横主管接続部1120は、その開口端に横主管接続用のフランジ1122を備え、フランジ穴1124にボルト等の締結材が挿入されて、脚部ベンド管1100と横主管とが連結されるようになっている。このとき、横主管の管軸が略水平方向になるように設置されて、脚部ベンド管1100と略水平方向に設置される横主管とが、横主管接続部1120の管軸と横主管の管軸とが一致するように、連結される。なお、横主管の呼び径の一例として150mm(6インチ)が挙げられる。
【0042】
この脚部ベンド管1100においては、高さを抑えながら排水性能を維持するために、ベンド部1130を従来の90度円弧とせずに90度円弧の上部を削除した形状とすることで、上部の排水立て管から流入する排水に対して横主管側への流れを促す傾斜を確保し、排水性能を維持したことを特徴とする。以下において、このような作用効果を発現する脚部ベンド管1100の構造について詳しく説明する。
【0043】
図11に示すように、この脚部ベンド管1100のベンド部1130においては、中心軸線がR中心とする円弧形状に形成されている。この中心軸線は、ベンド部1130のベンド上部管接続部1110側の管軸中心(ベンド開始面の管軸中心)とR中心とを結んだ直線L(1)と、ベンド部1130の横主管接続部1120側の管軸中心(ベンド終了面の管軸中心)とR中心とを結んだ直線L(2)とで形成される、中心角αで曲率半径R(1)の円弧形状で形成されている。なお、R中心は、横主管接続部1120側またはベンド上部管接続部1110側へ多少ずれていても構わない。
【0044】
このベンド部1130の中心軸線が形成する円弧形状の中心角αは45度以上65度以下の範囲であることが好ましく、さらに58度以上62度以下の範囲であることが特に好ましい。このように、中心軸線が90度未満の円弧形状を形成していることにより、脚部ベンド管1100の高さ方向の寸法を抑制することができる。
次に、
図12および
図13を参照して、この脚部ベンド管1100を用いた排水配管構造の排水性能に影響を及ぼす、脚部ベンド管1100の構造上の特徴について説明する。
【0045】
図12(A)は本実施の形態に係る脚部ベンド管1100の概略図であって、
図12(B)は脚部ベンド管1100の上部管接続部を上方に配置したベンド部が90度円弧の脚部ベンド管200の概略図であって、
図12(C)は脚部ベンド管1100よりも大きな曲率(小さい曲率半径)で90度円弧のベンド部を備える脚部ベンド管300の概略図である。
図12(A)に示す脚部ベンド管1100および
図12(C)に示す脚部ベンド管300は高さ方向の寸法が抑制されているが、
図12(B)に示す脚部ベンド管200は高さ方向の寸法が抑制されていない通常のベンド管である。脚部ベンド管の高さ方向の寸法を抑制しようとした場合に、従来においては、
図12(B)に示す脚部ベンド管200を
図12(C)に示す脚部ベンド管300へ変更することになる(さらに特許文献1では羽根状リブを設けている)。脚部ベンド管200に対して脚部ベンド管300は、高さ方向の寸法を抑えることができても、ベンド部で急激に流れの方向が変化するために流れに乱れが生じて所望の排水性能を実現することが困難である。これについて、
図13を参照して説明する。
【0046】
図13(A)は
図12(A)と
図12(B)とを重ね合わせた図であって、
図13(B)は
図12(A)と
図12(C)とを重ね合わせた図であって、
図13(A)および
図13(B)にも脚部ベンド管内における(最も横主管側の)排水を白抜き矢印で示している。
図13(A)に示すように、本実施の形態に係る脚部ベンド管1100においては、最も横主管側から流下した排水はベンド部1130の内周面に角度β(1)で衝突して方向が変換されて横主管へ向かう流れとなる。この角度β(1)は、脚部ベンド管200にお
ける排水がベンド部の内周面に衝突して横主管へ向かう流れとなる場合の角度β(2)と略同じである。
【0047】
一方、
図13(B)に示すように、本実施の形態に係る脚部ベンド管1100における角度β(1)に対して、脚部ベンド管300における排水がベンド部の内周面に衝突して横主管へ向かう流れとなる場合の角度β(3)は小さい。すなわち、脚部ベンド管300においては、最も横主管側から流下した排水は内周面により垂直に近い角度β(3)で衝突して流れの方向が横主管へ向かう流れとなる。脚部ベンド管300のようにベンド部の曲率を大きく(曲率半径を小さく)すれば高さ方向の寸法を抑えることができても、ベンド部で急激に流れの方向が変化するために流れに乱れや滞留が生じて所望の排水性能を実現することが困難である。
【0048】
図14に、最下階用排水管継手100に接続される下部管として上記の脚部ベンド管1100を採用した場合であって、建物の最下階(ここでは2階)の床下に脚部ベンド管1100が設けられた排水配管構造を示す。
最下階用排水管継手100に接続される脚部ベンド管1100の呼び径は脚部ベンド管200と同じであって、脚部ベンド管1100の上部管接続部の呼び径は125A(125mm、5インチ)であって、横主管560(横主管接続部の呼び径は150A(150mm、6インチ)であって、この場合、R(1)=187mm、A(1)=180mm、H(1)=200mm、L(1)=400mmとなる。
【0049】
一方、
図8に示すように、同じ位置に同じように配置された、脚部ベンド管200を採用した排水配管構造では、立て管500の呼び径は100A(100mm、4インチ)であって、横主管560の呼び径は150A(150mm、6インチ)であって、R(1)=187mm、A(2)=279mm、H(2)=315mm、L(2)=515mmとなる。
図14に示す脚部ベンド管1100を採用した排水配管構造が、
図8に示す脚部ベンド管200を採用した排水配管構造に比べて、1階天井高さを115mmを上昇させることができる。
[実施の形態に係る最下階用排水管継手および排水配管構造の作用効果]
以上のようにして、本実施の形態に係る最下階用排水管継手およびそれを用いた排水配管構造によると、最下階用排水管継手に設けられた整流リングにより、超高層建物等に用いられる等により大きな排水量に対して従来発生していた下層階の負圧の発生を抑えながらも、排水性能を維持することができる。また、高さ方向寸法を抑制した脚部ベンド管との組合せにより、高さ方向の寸法を抑制しつつ超高層建物であっても排水性能を維持した最下層の排水配管構造を実現することができる。
【0050】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。