(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297305
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】給水配管システム
(51)【国際特許分類】
E03C 1/02 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
E03C1/02
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-234546(P2013-234546)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2015-94139(P2015-94139A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】沼 政弘
【審査官】
油原 博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−316513(JP,A)
【文献】
特開2002−266392(JP,A)
【文献】
特開2008−088780(JP,A)
【文献】
特開平10−318440(JP,A)
【文献】
特開2003−027536(JP,A)
【文献】
特開2001−146773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00−1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の上方躯体と下方躯体の間に形成された免震スリットと、給水メイン管と、給水メイン管から分岐し、前記免震スリットを鉛直方向に横断する給水枝管とを備え、当該給水枝管を固定装置により固定して前記建物に設置する給水配管システムにおいて、
前記固定装置は、地震により前記免震スリットに変位が生じたとき、固定状態を解除自在に構成されている給水配管システムであって、
前記固定装置は、前記給水メイン管または前記給水枝管に着脱自在に取り付けられたリング状部材と前記下方躯体に固定される固定部材とからなり、
前記リング状部材と前記固定部材の水平部材のそれぞれの自由端に設けられた孔にピンを挿入することにより前記建物に固定されるものであり、
前記ピンは、前記上方躯体またはそれに固定されたものと糸状体により緊張した状態で結ばれていて、地震により前記免震スリットに変位が生じたとき、緊張した糸状体が前記ピンを引き抜くことによって、前記固定装置の固定状態を解除することを特徴とする給水配管システム。
【請求項2】
前記固定装置は、一端が前記下方躯体に固定された固定部と、他端が前記給水メイン管または前記給水枝管に押付けることで取り付け可能な半円以上の円弧形状の取付部とで構成され、
地震により前記免震スリットに変位が生じたとき、前記円弧形状の取付部から前記給水メイン管または前記給水枝管が外れることを特徴とする請求項1に記載された給水配管システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震構造物における給水配管において、特殊な免震継手を使用することなく、給水メイン管から分岐する枝的な給水配管が、免震スリットを横断して、地震発生時に変位により給水配管が破断することを防止する給水システムである。
【背景技術】
【0002】
従来の免震層を横断する給水配管は、免震層に特殊な免震継手を給水メイン管に適用していた。この場合は、主に建物の下部(ピット部)に免震層が設けられている場合に適用されていて、建物の中間層に免震層が設けられている場合には、給水メイン管から分岐した給水枝管が存在しているため、給水メイン管のみだけでなく給水枝管にも免震継手を使用する必要が生じる。
【0003】
また、給水枝管に公知の給水用のフレキシブルパイプを使用して、地震時の変位を吸収することも考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003ー27536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特殊な免震継手は、高額であるばかりか、地震時に変位を吸収する固定部材を設置固定する作業があるため、施工作業に長時間を要し、このために免震構造物全体が高コストとなるとともに、工期の長期化を招く原因の一つになっている。
【0006】
また、給水枝管に前記フレキシブルパイプを使用して、地震時の変位を吸収しようとする場合、その変位に対応したフレキシブルパイプの長さが必要になり、そのフレキシブルパイプの固定を行うことが難点である。
【0007】
さらに、地震動の変位により、そのフレキシブルパイプが反復して、往復運動を行うことにより、フレキシブルパイプの可撓部分に摩耗が生じて、いずれは欠損して漏水する可能性がある。
【0008】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであって、免震層を横断する給水枝管は、特殊な免震継手を適用しないこと、および地震時の変位に対応するために、フレキシブルパイプを使用しないで、配管を固定する金具が地震力により固定がはずれることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、建物の上方躯体と下方躯体の間に形成された免震スリットと、
給水メイン管と給水メイン管から分岐し、
前記免震スリットを鉛直方向に横断する給水枝管を備え、当該給水枝管を固定装置により固定して前記建物に設置する給水配管システムにおいて、 前記固定装置は、地震により前記免震スリットに変位が生じたとき、固定状態を解除自在に構成されている給水配管システムとした。
【0010】
さらに、請求項
1に記載の発明は、前記固定装置は、前記給水メイン管または前記給水枝管に着脱自在に取り付けられたリング状部材と前記下方躯体に固定され
る固定部材とからなり、
前記リング状部材と前記固定部材の水平部材のそれぞれの自由端に設けられた孔にピンを挿入することにより前記建物に固定されるものであり、
前記ピンは、前記上方躯体またはそれに固定されたものと糸状体により緊張した状態で結ばれていて、地震により前記免震スリットに変位が生じたとき、緊張した糸状体が前記ピンを引き抜くことによって、前記固定装置の固定状態を解除することを特徴とする給水配管システムとした。
【0011】
請求項
2に記載の発明は、前記固定装置は、一端が前記下方躯体に固定された固定部と、他端が前記給水メイン管
または前記給水枝管に押付けることで取り付け可能な半円以上の円弧形状の取付部とで構成され、地震により前記免震スリットに変位が生じたとき、前記円弧形状の取付部から前記給水メイン管または前記給水枝管が外れることを特徴とする請求項1に記載された給水配管システムとした。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明は、地震により免震スリットに大きな変位が生じたとき、給水枝管の固定状態が外れて解除になり自由になることによって、給水枝管の破断を防止することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、地震により免震スリットに大きな変位が生じたとき、緊張した糸状体がピンを引き抜くことによって、確実に固定装置の固定状態を解除することができ、給水枝管の破断を防止することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、地震により免震スリットに大きな変位が生じたとき、確実に円弧形状の取付部から前記給水メイン管または前記給水枝管が外れることにより、破断を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る給水枝管の簡易免震施工の実施例1の斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る給水枝管の簡易免震施工の実施例2の斜視図である。
【
図4】
図3の円弧状の取付部Bの平面詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る免震構造物における給水配管構造について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
この第1実施の形態に係る免震構造物における給水配管構造1は、
図1に示すように、建物の下方躯体と上方躯体の間に形成された免震スリット17
の間に設けられている給水メイン管2と前記給水メイン管2から分岐して免震スリット17
を縦方向に貫いている給水枝管3
が固定装置4により固定して前記建物に設置されている。
【0018】
給水枝管3の先は、エルボ8を接続して縦方向から横方向にして、給水栓(蛇口)5を接続することにより、前記給水栓5を開閉することで、水を吐出することができる。
【0019】
図2に示すように前記固定装置4は、前記給水メイン管2または前記給水枝管3に着脱自在に取り付けられたリング状部材9と前記下方躯体に固定され固定部材10とからなり、前記リング状部材9と前記固定部材10の水平部材のそれぞれの自由な箇所に設けられた孔12にピン11を挿入することにより、前記建物に固定されている。
【0020】
前記ピン11は、前記上方躯体またはそれに固定されたものと糸状体6により緊張した状態で結ばれている。
【0021】
地震により建物の下方躯体と上方躯体の間に形成された免震スリット17に大きな変位が生じたとき、緊張した糸状体6が前記ピン11を引く抜くことによって、前記リング状部材9と前記固定部材10の固定が外れることにより、解除され、前記給水枝管3は前記上方躯体に追従して地震による変位を水平移動することになる。
前記孔12は、下部から上部に沿って若干広がるようなテーパー13を付けることで、地震による変位によって、前記ピン11がスムーズに引き抜けるようになる。
【0022】
地震による反復振動による建物の下方躯体と上方躯体の間に形成された免震
スリット17においても反復振動に応じて変位し、その変位に追従することにより前記給水枝管3は、反復振動することになり、地震の震動の終焉により、前記給水枝管3も変位を終える。
【0023】
第2実施の形態に係る免震構造物における給水配管構造1は、
図3に示すように、
図1と共通する番号は、そのままの番号を記載している。
【0024】
図4に示すように、前記固定装置4は、一端が前記下方躯体に固定部15がアンカー16等で固定されている。他端は、前記給水メイン管2または前記給水枝管3押付けることで取り付け可能な半円以上の円弧形状14の取付部15で前記給水枝管3を固定する。
【0025】
地震により建物の下方躯体と上方躯体の間に形成された免震スリット17に大きな変位が生じたとき、前記給水枝管3と前記固定装置4との間に大きな応力が生じて、前記給水枝管4が破断される応力が生じる前に、前記円弧形状14の取付部15から前記給水枝管3が外れることにより、前記給水枝管3は、破断を免れる。
【符号の説明】
【0026】
1 給水配管構造
2 給水メイン管
3 給水枝管
4 固定装置
5 給水栓(蛇口)
6 糸状体
7 躯体壁
8 エルボ
9 リング状部材
10 固定部材
11 ピン
12 孔
13 テーパー
14 半円以上の円弧形状
15 取付部
16 アンカー
17 免震スリット