(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ケーシングに設けたシリンダ内で噛み合い回転することにより,吸入側より吸入した被圧縮気体を吐出側に向かって圧縮しながら押し出すオス,メス一対のスクリュロータと,前記各スクリュロータの両端にそれぞれ設けられたロータ軸をそれぞれ支承する軸受部を備えたスクリュ圧縮機において,
前記軸受部のうち,前記オス及び/又はメスロータの吐出側に設けたロータ軸を支承する軸受部が,ラジアル荷重とアキシアル荷重の双方を受けることができるように構成されていると共に,吸入側に設けたロータ軸を支承する軸受部が,シリンダ側から円筒ころ軸受を受け入れ可能にケーシングに形成された軸受穴と,前記軸受穴内に挿入されたロータ軸と,前記軸受穴に内嵌されると共に,前記ロータ軸に外嵌される前記円筒ころ軸受を備え,
前記円筒ころ軸受の内輪及び外輪のいずれか一方を両つばが形成された両つば輪と成すと共に,他方を片つばのみが形成された片つば輪とし,
前記外輪を内嵌する前記軸受穴の内周面より中心に向かって突設した係止部と,前記内輪を外嵌する前記ロータ軸の外周面より外側に向かって突設した係止部に,前記片つば輪のつば形成側の端面と,該片つば輪のつば形成側とは反対側の前記両つば輪の端面を係止すると共に,前記シリンダとは反対側の前記内輪の端面を係止することなく開放したことを特徴とするスクリュ圧縮機の軸受部構造。
前記軸受穴の開口縁を,前記円筒ころ軸受に設けた転動体のシリンダ側の端面から,前記外輪のシリンダ側の端面間の間隔内に配置したことを特徴とする請求項2又は3記載のスクリュ圧縮機の軸受部構造。
【背景技術】
【0002】
シリンダ内でオス・メス一対のスクリュロータが噛み合い回転することにより被圧縮気体を圧縮するスクリュ圧縮機では,オスロータ及びメスロータのそれぞれの両端に設けられた吸入側及び吐出側のロータ軸を,ケーシングに形成した軸受穴内に収容した軸受で支承することで回転可能としている。
【0003】
ここで,オス・メス両スクリュロータの回転時,軸受にはラジアル方向の荷重がかかるだけでなく,アキシアル方向の荷重が加わることから,いずれの荷重についても対処できるようにするために,オス・メス両スクリュロータに設けた吐出側ロータ軸を支承する軸受を,ラジアル荷重の負荷能力が大きい円筒ころ軸受と,アキシアル荷重とラジアル荷重の双方を受けることができるアンギュラ玉軸受の組合せにより構成したものや(特許文献1参照),2つのアンギュラ玉軸受を逆向きに組み合わせた組合せアンギュラ玉軸受により構成することが提案されている(特許文献2)。
【0004】
一方,吸入側のロータ軸を支承する軸受としては,オス及びメスロータのいずれのロータ軸共に,円筒コロ軸受によって支承することが一般に行われている。
【0005】
一例として,前掲の特許文献1に記載されているスクリュ圧縮機の吸入側ロータ軸の軸受では,
図7に示すようにケーシングの外側からシリンダ側に向かって前記軸受を受け入れ可能に形成された軸受穴143に収容された円筒ころ軸受141の外輪141cを,軸受穴143の内壁に形成した係止部144と,この軸受穴143を塞ぐ端部カバー148に設けた円筒状スリーブ149の先端間で挟持して固定すると共に,ロータ軸185に外嵌した円筒ころ軸受141の内輪141aを前記外輪141c内に配置している(特許文献1の
図1)。
【0006】
また,特許文献2に記載のスクリュ圧縮機にあっては,
図8に示すように原動機からの動力の入力が行われる駆動側ロータ(オスロータ181)の吸入側ロータ軸183については前述した特許文献1と同様,軸受穴内に形成された係止部と端部カバーより突出した円筒状スリーブの先端との間で,軸受穴内に挿入された円筒ころ軸受の外輪を挟持・固定すると共に,前記ロータ軸183に外嵌した内輪を,前記外輪内に配置する構造としている。
【0007】
一方,従動側ロータ(メスロータ182)の吸入側ロータ軸185の軸受部については,
図8に示すように,軸受穴143をメスロータ182側に向かって開口する構造とし,円筒ころ軸受141の外輪141cを,軸受穴143に形成した係止部144とスナップリング144’間で挟持すると共に,前記ロータ軸185に外嵌した内輪141aを外輪141c内に配置した構成としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上で説明した特許文献1,2のスクリュ圧縮機において,吸入側ロータ軸183,185の軸受部に使用されている円筒ころ軸受141は,いずれも,幅方向の両端内周縁につばが形成されている両つば形の外輪141cと,つばを備えていないつば無しの内輪141aを備えた構造のものが使用されている。
【0010】
しかし,上記構成の円筒ころ軸受141は,つばの無い内輪141aは外輪141cに対し容易に挿入及び抜き取りが可能であることから,組立や分解が容易であるという利点はあるものの,外輪141cを単に軸受穴143に挿入し,内輪141aをロータ軸185に嵌入しただけでは,使用時に内輪141a及びころ141bが外輪141cより脱落して分解してしまうおそれがある。
【0011】
そのため,外輪141cがロータ軸185の軸線方向に移動しないように,外輪141cをその両端側より挟持して軸受穴143内に固定する必要があるだけではなく,内輪141aについてもロータ軸185の軸線方向に移動しないようその両端側より固定する必要がある。
【0012】
ここで,特許文献1に記載の軸受部の構成では,外輪141cは軸受穴143に形成した係止部144と円筒状スリーブ149の先端間で挟持・固定されていると共に,内輪141aのシリンダ側への移動はロータ軸185に形成した係止部145によって規制されているが,内輪141aのロータ軸185の軸端方向への移動を規制する手段が示されていない。
【0013】
また,特許文献2においても,外輪141cは軸受穴143に形成した係止部144とスナップリング144’間で挟持・固定されていると共に,内輪141aのシリンダ側への移動はロータ軸185に形成した係止部145によって規制されているが,内輪141aのロータ軸185の軸端方向への移動を規制する手段が明確には示されておらず,いずれの軸受部の構造においても,内輪141aがロータ軸185の軸端方向に移動すれば,円筒ころ軸受141が分解してしまうことになる。
【0014】
そのため,特許文献1,2には,内輪141aがロータ軸185の軸端方向へ移動することを規制する手段は明確には示されていないが,この種のスクリュ圧縮機の吸入側の軸受部では,
図7,
図8中の拡大図に示すように,ロータ軸185に対してもスナップリング145’を取り付けて,内輪141aが吸入側ロータ軸185の軸端方向へ移動しないように固定する構成が一般的に採用されている。
【0015】
このように,上記従来の軸受部の構造では,両つばの外輪141cと,つば無しの内輪141aの双方を,幅方向の両端より挟持して固定することが必要となる。
【0016】
そのため,軸受穴143の内周面及びロータ軸185の外周面には,内,外輪の一方の端面を係止するための係止部144,145となる段差を形成するために,異径部分を設けることが必要となるだけでなく,スナップリング144’,145’を取り付けるために嵌合溝188,188’を形成する必要があり,また,外輪141cの固定を端部カバー148に設けた円筒状スリーブ149によって行う場合には,端部カバー148に円筒状スリーブ149を設ける必要がある等,軸受穴143やロータ軸185の形状,端部カバー148の形状が複雑となり,製造,加工に手間がかかるため生産性が低下する。
【0017】
また,スナップリングなどの固定具の取り付けにより軸受を固定するため,固定具の破損や組付不良等により内輪141aがロータ軸185の軸端側に移動すれば,円筒ころ軸受は軸受穴143内で分解し,軸受穴143の内周面とロータ軸185の外周面との間にころ141bを噛み込む等して,ケーシングやロータ軸が破損するおそれもある。
【0018】
また,前述の方法で軸受を所定の位置に固定するためには,円筒ころ軸受141の外輪141cを軸受穴143内に挿入し,内輪141aを吸入側ロータ軸185に外嵌するだけではなく,さらに,スナップリング等の固定具を取り付ける作業が必要で,軸受部を構成する部品点数が増加することで組立の際の工数が増えて作業性も低下する。
【0019】
更に,スナップリング等の固定具を取り付けるためには,嵌合溝の形成幅と,必要な余裕分,ロータ軸の長さを長く取り,また,軸受穴の深さを深くする必要があり,これにより製品の小型化も阻害される。
【0020】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたもので,吸入側ロータ軸を支承する円筒ころ軸受の内外輪の固定を可及的に少数の部品により確実に行うことができ,スナップリング等の固定具を取付けるための嵌合溝の形成等の加工工数や,組立工数を可及的に減らして,低コスト且つ低労力で製造及び組立を行うことができると共に,吸入側ロータ軸の長さやケーシングに形成する軸受穴の深さを減らして装置全体の小型化に寄与し得る,スクリュ圧縮機の軸受部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0022】
上記目的を達成するために,本発明のスクリュ圧縮機1の軸受部構造は,
ケーシング70に設けたシリンダ71内で噛み合い回転することにより,吸入側より吸入した被圧縮気体を吐出側に向かって圧縮しながら押し出すオス,メス一対のスクリュロータ81,82と,前記各スクリュロータ81,82の両端にそれぞれ設けられたロータ軸83〜86をそれぞれ支承する軸受部20,30,40,50を備えたスクリュ圧縮機1において,
前記軸受部20,30,40,50のうち,前記オス及び/又はメスロータの
吐出側に設けたロータ軸84,86を支承する軸受部30,50が,ラジアル荷重とアキシアル荷重の双方を受けることができるように構成されていると共に,吸入側に設けたロータ軸83,85を支承する軸受部20,40が,
シリンダ71側から円筒ころ軸受21,41を受け入れ可能にケーシング70に形成された軸受穴23,43と,前記軸受穴23,43内に挿入されたロータ軸83,85と,前記軸受穴23,43に内嵌されると共に,前記ロータ軸83,85に外嵌される
前記円筒ころ軸受21,41を備え,
前記円筒ころ軸受21,41の内輪211,411及び外輪212,412のいずれか一方〔
図2,
図4,
図5,
図6(A)では外輪212,412;
図3,
図6(B),
図6(C)では内輪411〕を両つば27a,27b;47a,47bが形成された両つば輪と成すと共に,他方〔
図2,
図4,
図5,
図6(A)では内輪211,411;
図3,
図6(B),
図6(C)では外輪412〕を片つば26,46のみが形成された片つば輪とし,
前記軸受穴の内周面より中心に向かって突設した係止部24,44,44’と,前記ロータ軸83,85の外周面より外側に向かって突設した係止部25,45,45’に,前記片つば輪のつば26,46形成側の端面と,該片つば輪のつば形成側とは反対側の前記両つば輪の端面(つば27a,47a形成側の端面)を係止
すると共に,前記シリンダとは反対側の前記内輪の端面を係止することなく開放したことを特徴とする(請求項1)。
【0023】
上記構成の軸受部構造において
,外輪212,412を前記両つば輪と成すと共に,内輪211,411を前記片つば輪と成す円筒ころ軸受21,41を,前記内輪211,411のつば形成側がシリンダ71側となるように前記軸受穴23,43に挿入すると共に,該円筒ころ軸受21,41の内輪211,411にロータ軸83,85を挿入し,ロータ軸83,85に形成された前記係止部25,45に前記内輪211,411のつば26,46形成側の端面を係止すると共に,前記内輪211,411のつば26,46形成側の端面とは反対側の前記外輪212,412の端面(つば27a,47a形成側の端面)を,前記軸受穴23,43に形成した前記係止部24,44に係止するものとしても良い(請求項2:
図2,4)。
【0024】
また
,内輪411を前記両つば輪と成すと共に,外輪412を前記片つば輪と成す円筒ころ軸受41を,前記外輪412のつば非形成側がシリンダ71側となるように前記軸受穴43に挿入すると共に,該円筒ころ軸受41の内輪411にロータ軸85を挿入し,前記軸受穴43内に形成された前記係止部44で前記外輪412のつば46形成側の端面を係止すると共に,前記外輪412のつば46形成側の端面とは反対側の前記内輪411の端面(つば47a形成側の端面)を,前記ロータ軸85に形成した前記係止部45に係止させるものとしても良い(請求項3:
図3)。
【0025】
上記構成の軸受部構造において,前記軸受穴23,43の開口縁23a,43aを,前記円筒ころ軸受21,41に設けた転動体(ころ213,413)のシリンダ71側の端面から,前記外輪212,412のシリンダ71側の端面との間の間隔W2内に配置することが好ましい(請求項4:
図2〜4)。
【0026】
更に,上記構成の軸受部構造を,従動側ロータ(メスロータ82)のロータ軸85を支承する軸受部40の構成として採用する場合,
前記ロータ軸85の軸端85aを,前記円筒ころ軸受41に設けた転動体413のシリンダ71側とは反対側の端面から,前記内輪411のシリンダ71側とは反対側の端面との間の間隔W1内に配置することが好ましい(請求項5:
図2,3)。
【0027】
また,上記構成の軸受部構造を,軸受穴23を貫通してケーシング70外に突出する駆動側ロータ(オスロータ81)のロータ軸83を収容する軸受部20に対し適用する場合,前記ロータ軸83に設けた前記係止部25と,該ロータ軸83に嵌合した駆動ギヤ87に設けたボス87aの端面との間で前記円筒ころ軸受21の内輪211を挟持するものとしても良い(請求項6:
図4)。
【0028】
更に,前記軸受穴43を,ケーシング70の外側からシリンダ71側に向かって前記円筒ころ軸受41を受け入れ可能に形成した構成では,
外輪412を前記両つば輪と成すと共に,内輪411を前記片つば輪と成す円筒ころ軸受41を,前記内輪411のつば非形成側がシリンダ71側となるように前記軸受穴43に挿入すると共に,該円筒ころ軸受41の内輪411にロータ軸85を挿入して内輪411のつば46形成側の端面よりロータ軸85を突出させ,突出部分のロータ軸85に固定具(スナップリング45’)を取り付けて前記内輪411のつば46形成側の端面を係止する係止部45’を形成すると共に,前記内輪411のつば46形成側の端面とは反対側の前記外輪412の端面(つば47a形成側の端面)を,前記軸受穴43に形成した係止部44に係止するものとしても良い(請求項7:
図5)。
【0029】
同様に,軸受穴43をケーシング70の外側からシリンダ71側に向かって前記円筒ころ軸受41を受け入れ可能に形成した構成として,
外輪412を前記両つば輪と成すと共に,内輪411を前記片つば輪と成す円筒ころ軸受41を,前記内輪411のつば46形成側がシリンダ71側となるように,前記外輪412の幅以上の深さを有する前記軸受穴43に挿入すると共に,該円筒ころ軸受41の内輪411にロータ軸85を挿入して内輪411のつば46形成側の端面をロータ軸85に形成した係止部45に係止させ,前記外輪412のシリンダ71とは反対側の端面(つば47a形成側の端面)を,前記軸受穴43の内周面に取り付けた固定具(スナップリング44’)によって形成した係止部44’に係止する構成としても良い〔請求項8:
図6(A)〕。
【0030】
更に,前記軸受穴43をケーシング70の外側からシリンダ71側に向かって前記円筒ころ軸受41を受け入れ可能に形成した場合の別の構成としては,
内輪411を前記両つば輪と成すと共に,外輪412を前記片つば輪と成す円筒ころ軸受41を,前記外輪412のつば46形成側がシリンダ71側となるように前記軸受穴43に挿入して,前記外輪412のつば46形成側の端面を前記軸受穴43に形成した係止部44に係止すると共に,該円筒ころ軸受41の内輪411にロータ軸85を挿入して内輪411のシリンダ71側とは反対側の端面(つば47a形成側の端面)よりロータ軸85を突出させ,突出部分のロータ軸85に固定具(スナップリング45’)を取り付けて前記外輪412のつば46形成側の端面とは反対側の内輪411の端面(つば47a形成側の端面)を係止する係止部45’を形成するものとしても良い〔請求項9:
図6(B)〕。
【0031】
また,前記軸受穴43を,ケーシング70の外側からシリンダ71側に向かって前記円筒ころ軸受41を受け入れ可能とした際の更に別の構成としては,
内輪411を前記両つば輪と成すと共に,外輪412を前記片つば輪と成す円筒ころ軸受41を,前記外輪412のつば非形成側がシリンダ71側となるように,前記外輪412の幅に対し深く形成された前記軸受穴43に挿入すると共に,該円筒ころ軸受41の内輪411にロータ軸85を挿入して内輪411のシリンダ71側の端面(つば47a形成側の端面)をロータ軸85に形成した係止部45に係止すると共に,前記外輪412のつば46形成側の端面を,前記軸受穴43の内周面に取り付けた固定具(スナップリング44’)によって形成した係止部44’に係止することもできる〔請求項10:
図6(C)〕。
【発明の効果】
【0032】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の軸受部構造を備えたスクリュ圧縮機では,以下の効果を得ることができた。
【0033】
図7,8を参照して説明した従来のスクリュ圧縮機で採用されていた吸入側の軸受部構造では,内輪の幅方向の両側に係止部を設けると共に,外輪の幅方向の両側に係止部を設けることにより,内輪及び外輪共に挟持して固定する必要があったのに対し,本発明の軸受部構造では,内輪及び外輪共に片側にのみ係止部を設けることで,ロータ軸の軸線方向のいずれに対する移動も規制することができた。
【0034】
その結果,ロータ軸や軸受穴を単純な構造とすることができ,加工工数を減らすことができる結果,スクリュ圧縮機の生産性を向上させることができた。
【0035】
特に,ロータ軸や軸受穴に対する係止部の形成を,異径部を設ける等してロータ軸の外周面や軸受穴の内周面に直接形成する場合,スナップリング等の固定具を取り付ける作業が不要となることで,組み立て工数が減少して,組み立てが容易となると共に,固定具の破損や組み付け不良に伴う不具合の発生等についても防止することができ,また,スナップリング等の固定具を取り付けるために必要にスペース分,ロータ軸を短く,軸受穴を浅く形成することができ,装置全体の小型化にも寄与することができた。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に,添付図面を参照しながら本発明の軸受部構造を備えたスクリュ圧縮機について説明する。
【0038】
〔スクリュ圧縮機の全体構造〕
本発明の軸受部構造が適用されるスクリュ圧縮機1は,ケーシング70に設けたシリンダ71内に,オス,メス一対のスクリュロータ81,82を噛み合い状態で回転可能に収容して構成されており,このスクリュロータ81,82をシリンダ71内で噛み合い状態で回転させることにより,スクリュロータ81,82の歯溝とシリンダ71の内壁とによって画成された圧縮作用空間に対して被圧縮気体の導入と閉じ込みを行うと共に,この圧縮作用空間がスクリュロータ81,82の回転に伴い容積減少する結果,閉じ込まれた被圧縮気体が圧縮されて吐出されるようになっている。
【0039】
オス,メス一対のスクリュロータ81,82に形成された歯溝と前記シリンダ71の内周面とによって画成される前述の圧縮作用空間に対し被圧縮気体の導入を可能とするために,前記ケーシング70には吸気口(図示せず)およびこの吸気口に連続する吸入流路72が設けられていると共に,この吸入流路72をオス,メスロータ81,82の吸入側の端面に向かって開口することにより,前述した圧縮作用空間に対する被圧縮気体の導入が可能となっている。
【0040】
なお,本発明に関する説明において,この吸入通路72と連通したロータ81,82の端面側を,「吸入側」,この吸入側とは反対側を「吐出側」とする。
【0041】
前述したオス,メス一対のスクリュロータ81,82には,各スクリュロータ81,82の両端より突設されたロータ軸83〜86が設けられていると共に,このロータ軸83〜86を,前述のケーシング70内に形成した軸受部20,30,40,50でそれぞれ回転可能に支承することで,スクリュロータ81,82の円滑な回転を可能としている。
【0042】
図示の例では,オスロータ81を駆動側のロータ,メスロータ82をオスロータ81の回転に伴って従動回転する従動側のロータとし,オスロータ81の吸入側端面より突出する吸入側ロータ軸83を,図示せざるエンジンやモータ等の駆動源からの回転駆動力の入力が行われる駆動軸とし,この駆動軸であるロータ軸83を,ケーシング70を貫通して外部に突設した構成としているが,駆動側ロータと従動側のロータはこれとは逆に形成しても良く,この場合には,メスロータの吸入側端面に設けた吸入側ロータ軸を,ケーシングを貫通して突設して,前述した駆動軸とする。
【0043】
また,図示の例では,オスロータ81とメスロータ82とが接触状態で噛み合い回転して圧縮作用空間内に冷却,潤滑及び密封のための導入された冷却油と共に被圧縮気体を圧縮する油冷式スクリュ圧縮機として構成した例を示しているが,本発明の軸受部構造が適用されるスクリュ圧縮機1としては,このような冷却油を導入することなく,両スクリュロータ81,82の回転をタイミングギヤによって規制して,オス,メスのスクリュロータ81,82が微小な間隔を保った非接触の状態で噛み合い回転する,オイルフリースクリュ圧縮機に対し適用することもでき,適用するスクリュ圧縮機の型式は特に限定されない。
【0044】
オスロータ81とメスロータ82に設けたロータ軸83〜86を支承する軸受部20,30,40,50のうち,吐出側に設けた軸受部30,50の構造については,既知のスクリュ圧縮機で採用されている軸受部の構造を採用することができ,図示の例では,特許文献1,2として説明した軸受部と同様,ラジアル荷重とアキシアル荷重の双方を受けることができるよう,二種類の軸受を組合せたものを使用している。
【0045】
より詳細には,
図1に示す例では,ラジアル荷重に対する負荷能力の高い円筒ころ軸受31,51とアキシアル荷重を受けることができるアンギュラ玉軸受32,52とを組み合わせて軸受穴33,53内に収容して吐出側の軸受を構成しているが,吐出側の軸受部30,50の構成は,ラジアル荷重とアキシアル荷重の双方を受けることができるものであれば,既知の他の構成を採用するものであっても良く,例えば,特許文献2として紹介したように,2つのアンギュラ玉軸受を逆向きに組み合わせて使用するものとしても良い。
【0046】
〔吸入側軸受部の構成(全実施例共通の構成)〕
以上のように構成されたスクリュ圧縮機1において,本発明の軸受部の構造は,ロータ軸83〜86を支承する軸受部20,30,40,50のうち,スクリュロータ81,82の吸入側端面より突設された吸入側のロータ軸83,85を支承する軸受部20,40に対し適用される。
【0047】
この軸受部構造は,駆動側ロータ(オスロータ81)の吸入側ロータ軸(駆動軸)83の軸受部20,従動側ロータ(メスロータ82)の吸入側ロータ軸85の軸受部40のいずれかにおいて採用するものとしても良く,又は双方の構造として採用するものとしても良い。
【0048】
本発明の吸入側の軸受部20,40も,ケーシング70に形成された軸受穴23,43と,前記軸受穴23,43内に挿入されたロータ軸83,85と,前記軸受穴23,43に内嵌されると共に,前記ロータ軸83,85に外嵌される円筒ころ軸受21,41を備えるものである点では,従来技術として説明したスクリュ圧縮機の吸入側軸受部と同様の構成である。
【0049】
しかし,本発明の軸受部20,40では,円筒ころ軸受21,41として,内輪211,411及び外輪212,412のいずれか一方〔
図2,
図4,
図5,
図6(A)に示す例では外輪212,412;
図3,
図6(B),(C)に示す例では内輪411〕を両つばが形成された両つば輪と成すと共に,他方〔
図2,
図4,
図5,
図6(A)に示す例では内輪211,411;
図3,
図6(B),(C)に示す例では外輪412〕を片つばのみが形成された片つば輪とし,前述した軸受穴23,43の内周面より中心に向かって突設した係止部24,44,44’と,前記ロータ軸83,85の外周面より外側に向かって突設した係止部25,45,45’に,前記片つば輪のつば26,46が形成された側の端面と,該片つば輪のつば26,46が形成された側とは反対側の前記両つば輪の端面(つば27a,47a形成側の端面)を係止することで,内輪211,411及び外輪212,412の双方をロータ軸83,85の軸線方向へ移動できないようにすることで,円筒ころ軸受21,41が使用中,内輪211,411,転動体(ころ)213,423及び外輪212,412に分解することを防止している。
【0050】
〔実施例1〕
図2に,本発明の軸受部構造を,従動側ロータ(メスロータ82)の吸入側ロータ軸85の軸受部40の構造に採用した例を示す。
【0051】
図2に示す軸受部40では,シリンダ71側から円筒ころ軸受41を受け入れることができるようケーシング70に形成した軸受穴43がシリンダ71に向かって開口しており,この軸受穴43内に前述した両つば輪と片つば輪を備えた円筒ころ軸受41とロータ軸85とを挿入することにより軸受部40が形成されている。
【0052】
図2に示す実施例で使用している円筒ころ軸受41は,外輪412を幅方向の両端縁より内周方向に突出するつば47a,47bが形成された両つば輪と成すと共に,内輪411を幅方向の一端縁より外周方向に突出するつば46が形成された片つば輪としており,内輪411のつば46形成側の端面がシリンダ71側に向くよう,前述の軸受穴43に円筒ころ軸受41が挿入されていると共に,この円筒ころ軸受41の内輪411にロータ軸85が挿入されている。
【0053】
そして,ロータ軸85に設けた内輪411を外嵌する小径部と,前記小径部のシリンダ71側に設けた大径部との段差によって形成された係止部45に内輪411のつば46形成側の端面を係止すると共に,内輪411のつば46形成側の端面とは反対側の前記外輪412の端面(つば47a形成側の端面)を,前記軸受穴43に設けた外輪412を内嵌する大径部と,前記大径部のシリンダ71側に対して反対側に設けた細径部との段差によって形成された係止部44に係止し,2つの係止部44,45によって,内輪411と外輪412をいずれも一方側の端面側のみを係止することで,内輪411及び外輪412の双方が,ロータ軸85のいずれの軸線方向,すなわちシリンダ71側及びロータ軸85の軸端方向へも移動できないように構成している。
【0054】
ここで,ロータ軸85に設けた係止部45から,ロータ軸85の軸端85a迄の長さは,円筒ころ軸受41に設けたころ413の転動面の幅よりも長く形成し,好ましくは,ロータ軸85の軸端85aが,円筒ころ軸受41に設けたころ413のシリンダ71側とは反対側の端面と前記内輪411のシリンダ71側とは反対側の端面間の間隔W1内に位置するよう,より好ましくは,内輪411のシリンダ側とは反対側の端面と同一位置となるよう,その長さを設定する。
【0055】
また,前述した軸受穴43の係止部44から,軸受穴43の開口縁43a迄の長さも,ころ413の転動面の幅よりも長く形成し,好ましくは,軸受穴43の開孔縁43aが,円筒ころ軸受41に設けたころ413のシリンダ71側の端面から,前記外輪412のシリンダ71側の端面間の間隔W2内に配置されるよう,より好ましくは,外輪412のシリンダ71側の端面と同一位置となるように,軸受穴43の深さを設定する。
【0056】
なお,図示の例では軸受穴43の内周面に,内輪411の外径よりも大きな内径の細径部を,軸受穴43に内嵌する外輪412に対応して設定した軸受穴43の深さよりも深く設けることにより前述の係止部44を形成し,この細径部を,軸受穴の奥部において塞ぐことにより,軸受穴43をケーシング70の外に対し閉ざされた空間として形成しているが,この構成に代え,前述の細径部をさらに延長してケーシング70を貫通する貫通穴として形成しても良い。
【0057】
以上のように構成された,
図2に記載の軸受部40にあっては,円筒ころ軸受41の外輪412は,軸受穴43に設けた係止部44によって一方の端面が係止され,シリンダ71から遠ざかる方向への移動は規制されている。
【0058】
一方,外輪412のシリンダ71側の端面には,スナップリング等の固定具は取り付けられていないが,外輪412がシリンダ71側に移動しようとしても,この動作は,外輪412のシリンダ71とは反対側に設けたつば47aがころ413と係合し,ころ413が内輪411のつば46と係合し,この内輪411は,ロータ軸85に設けた係止部45によってシリンダ71側への移動が規制されていることで,外輪412は,シリンダ71に対し離間する方向,近接する方向のいずれに対しても移動することができない。
【0059】
また,同様に,円筒ころ軸受41の内輪411は,ロータ軸85に設けた係止部45によって係止され,シリンダ71側への移動は規制されているが,内輪411のシリンダ71とは反対側の端面には,スナップリング等の固定具は取り付けられていない。
【0060】
しかし,内輪411がシリンダ71から離間する方向へ移動しようとしても,内輪411のつば46がころ413と係合し,ころ413が外輪412のシリンダ71とは反対側のつば47aと係合すると共に,外輪412は軸受穴43に設けた係止部44によってシリンダ71から離間する方向への移動が規制されていることから,内輪411もシリンダ71に対し離間する方向,近接する方向のいずれに対しても移動することができない。
【0061】
そのため,上記構成の軸受部40では,スナップリング等の固定具を使用して固定をすることなく,外輪412を軸受穴43内に挿入して係止部44に係止し,内輪をロータ軸85に嵌合して係止部45によって係止するだけで,円筒ころ軸受41の取り付けが完了する。
【0062】
なお,スナップリング等の固定具を使用せずに円筒ころ軸受41の内輪411及び外輪412を,ロータ軸85の外周面や軸受穴43の内周面に固定する方法としては,他に,接着剤による固定や,しまりばめ等の方法で固定することも考えられるが,この方法では,円筒ころ軸受41の取り付け作業が煩雑となるだけでなく,一旦取り付けた円筒ころ軸受41の取り外しや交換作業が困難となることから,このような問題が生じない本願の軸受部40の構造は,接着剤による固定や,しまりばめ等の方法での固定と比較した場合であっても有利なものとなる。
【0063】
なお,前述したように,吸入側ロータ軸85の軸端85aを,シリンダ71とは反対側におけるころ413の端面から内輪411の側面までの間W1に位置すると,ロータ軸85の長さを短くでき,また,この範囲であればロータ軸85を短くしても,内輪411が外輪412及びころ413に対して傾いて片当たりを生じることが無く,円筒ころ軸受41の寿命が短くなることもない。
【0064】
また,軸受穴43の開口縁43aの位置を,ころ413のシリンダ71側端面よりもシリンダ71寄りに配置し,好ましくは,ころ413のシリンダ71側端面と,外輪412のシリンダ71側端面との間W2に配置した構成では,軸受穴43の深さを浅くできると共に,この範囲であれば,軸受穴43の深さを浅くしても外輪412が内輪411及びころ413に対して傾いて片当たりを生じることが無く,従って円筒ころ軸受41の寿命が短くなることもない。
【0065】
〔実施例2〕
図2を参照して説明した軸受部40の構成では,外輪412を両つば輪,内輪411を片つば輪とした円筒ころ軸受41を使用した例について説明したが,この構成に代え,
図3に示すように,外輪412を幅方向の一端縁より内周方向に突出するつば46が形成された片つば輪とし,内輪411を幅方向の両端縁より外周方向に突出するつば47a,47bが形成された両つば輪とした円筒ころ軸受41を使用して,吸入側ロータ軸85の軸受部40を構成するものとしても良い。
【0066】
この場合,外輪412のつば非形成側がシリンダ71側に配置されるように円筒ころ軸受41を前記軸受穴43に挿入すると共に,該円筒ころ軸受41の内輪411にロータ軸85を挿入し,前記軸受穴43内に形成された係止部44を前記外輪412のつば46形成側の端面を係止すると共に,前記外輪412のつば46が形成された側の端面とは反対側の前記内輪411の端面(つば47a形成側の端面)を,前記ロータ軸85に形成した係止部45に係止させたもので,その他の構成は実施例1として説明した軸受部40と共通である。
【0067】
このように構成することにより,実施例1と同様に,スナップリング等の固定具を用いることなく,内輪411及び外輪412がロータ軸85の軸線方向に移動することを規制することができる。
【0068】
〔実施例3〕
更に,
図2及び
図3を参照して説明した実施例1,2では,いずれも,従動側ロータ(メスロータ82)の吸入側ロータ軸85の軸受部40に対し,本発明の軸受部構造を適用した例について説明したが,本発明の軸受部構造は,
図4に示すように,駆動側ロータ(オスロータ81)の吸入側ロータ軸(駆動軸)83の軸受部20に対し適用することもできる。
【0069】
なお,
図4に示す軸受部20は,
図2を参照して説明した軸受部40と同様,外輪212を両つば輪,内輪211を片つば輪とした円筒ころ軸受21を使用する例を示しており,基本的な構成は,
図2を参照して説明した軸受部と同様である。
【0070】
なお,
図4に示す例とは逆に,
図3を参照して説明した軸受部40と同様,外輪212を片つば輪,内輪211を両つば輪とした円筒ころ軸受21を使用するものとしても良く,この場合の基本構成は,
図3を参照して説明した軸受部と同様となる。
【0071】
また,実施例1として説明した軸受部40と同様,ロータ軸(駆動軸)83用の軸受部20にあっても,軸受穴23の係止部24から,軸受穴23の開口縁23a迄の長さも,ころ213の転動面の幅よりも長く形成し,好ましくは,軸受穴23の開孔縁23aが,円筒ころ軸受21に設けたころ213のシリンダ71側の端面から,前記外輪212のシリンダ71側の端面間の間隔W2内に配置されるよう,より好ましくは,外輪212のシリンダ71側の端面と同一位置となるように,軸受穴23の深さを設定する。
【0072】
あるいは,軸受穴23を,外輪212を内嵌する大径の貫通孔とし,シリンダ71側の開口縁23aから前述の通り設定する軸受穴23の深さとなる位置に,軸受穴23の内周面に嵌合溝を形成し,この嵌合溝にスナップリング等の固定具を取付けて係止部24を構成してもよい。
【0073】
このようにロータ軸(駆動軸)83側の軸受部20に本発明の軸受部構造を適用した
図4に示す実施例では,ロータ軸(駆動軸)83に取り付ける駆動用ギヤ87に,円筒ころ軸受21の外輪212の内径よりも小径のボス87aを設け,このボス87aのシリンダ71側端面を円筒ころ軸受21の内輪211に突合させて,ロータ軸(駆動軸)83に形成した係止部25とボス87aの端面との間で内輪211を挟持するようにしても良く,このように構成することで,円筒ころ軸受21をより一層強固に固定することができる。
【0074】
なお,実施例1,2(
図2,3)で説明したように,従動側ロータ(メスロータ82)の吸入側ロータ軸85用の軸受部40に設けた軸受穴43に対する軸受の挿入をシリンダ71側から行うように構成するだけでなく,本実施例(実施例3:
図4)で説明したように駆動側ロータ(オスロータ81)の吸入側ロータ軸(駆動軸)83用の軸受部20についても,軸受穴23に対する円筒ころ軸受21の挿入をシリンダ71側から行うように構成することで,吸入側に設けた軸受部20,40の組み立てを,いずれもシリンダ71側からの作業によって行うことができるため,
図7,8を参照して説明した特許文献1及び2に記載の軸受部の構造に比較して組立時における作業性の向上が得られるものとなっている。
【0075】
すなわち,
図7を参照して説明した特許文献1に記載の吸入側の軸受部の構成では,先ず,ケーシングの吸入側に設けた駆動側,従動側軸受部の軸受穴に,ケーシングの外側から円筒ころ軸受の外輪を紙面左側から右側に向かって挿入して軸受穴内に外輪を嵌合する。
【0076】
次いで,ケーシングの外側から軸受穴に端部カバーに形成された円筒状スリーブを挿入し,軸受穴内に挿入した外輪を軸受穴内に固定する。
【0077】
このようにして,ケーシング外側からの作業が終了した後,予め円筒ころ軸受の内輪を取り付けておいたスクリュロータの吸入側ロータ軸を,紙面右側から左側に向かって挿入し,内輪が取り付けられているロータ軸をシリンダ側から軸受穴内に挿入して外輪内に配置することで,軸受部の組立が完了する。
【0078】
また,
図8を参照して説明した特許文献2に記載の吸入側軸受部の構成では,従動側ロータの吸入側ロータ軸用の軸受部はシリンダ側から組み付けを行うように構成されているものの,駆動側ロータの吸入側ロータ軸(駆動軸)用の軸受部はケーシングの外側から組み付けるように構成されているため,先ず,駆動軸の吸入側軸受部用の軸受穴に円筒ころ軸受の外輪をケーシングの外側から挿入して,軸受穴内に外輪を嵌合させ,次いで,ケーシングの外側より駆動軸の軸受部用の軸受穴に端部カバーに設けた円筒状スリーブを挿入して,駆動軸用の軸受穴内に外輪を固定する。
【0079】
その後,従動側ロータの吸入側ロータ軸用の軸受穴内に,シリンダ側から円筒ころ軸受の外輪を挿入し,スナップリングを取り付けて固定する。
【0080】
更に,予め吸入側ロータ軸に内輪を取り付けておいたオスロータ及びメスロータを噛み合わせた状態で,紙面左側からシリンダ内に挿入して,オスロータ及びメスロータの吸入側ロータ軸に取り付けた内輪を,軸受穴内に取り付けた外輪内に配置する。
【0081】
このように,特許文献1,2として紹介した従来のスクリュ圧縮機の軸受部構造では,組立時に,ケーシングの外側からの作業と,シリンダ側(ケーシング内側)からの作業とを順次行う必要があり,作業方向の転換が必要となるために作業性が悪くなる。
【0082】
これに対し,実施例1又は2と,実施例3の構成を組み合わせた本発明の吸入側軸受部20,40の組み立てでは,先ず,吸入側に設けた2つの軸受穴23,43に対し,いずれもシリンダ71側から円筒ころ軸受21,41の外輪212,412を挿入する。
【0083】
次いで,吸入側ロータ軸83,85に予め円筒ころ軸受21,41の内輪211,411を取り付けておいたオスロータ81及びメスロータ82を,噛み合わせた状態でシリンダ71内に
図1中の左側から右に向かって挿入し,オスロータ81とメスロータ82の吸入側ロータ軸83,85に取り付けた内輪211,411を,軸受穴23,43に取り付けてある外輪212,412内に挿入することで,軸受部20,40の組立が完了する。
【0084】
このように,実施例1〜3で説明した本発明の吸入側軸受部20,40の構造では,吸入側軸受部20,40の組立を,シリンダ71側の一方向側からの作業によって行うことができるため,組み立て時の作業性に優れたものとなっている。
【0085】
〔実施例4〕
以上,
図2〜4を参照して説明した吸入側軸受部20,40の構造は,いずれも,軸受穴23,43に対する円筒ころ軸受21,41の挿入を,シリンダ71側より行うことができるように構成したものであるが,
図5に示す例では,この構成に代えて,軸受穴43に対する円筒ころ軸受41の挿入を,ケーシング70の外側から行うことができるようにしたものである。
【0086】
図5に示す例では,円筒ころ軸受41の外輪412を両つば輪と成すと共に,内輪411を片つば輪とし,この円筒ころ軸受41を,内輪411のつば非形成側がシリンダ71側となるように前記軸受穴43に挿入すると共に,該円筒ころ軸受41の内輪411にロータ軸85を挿入して内輪411のつば46が形成された側の端面よりロータ軸85の軸端85aを突出させ,突出部分のロータ軸85に形成された嵌合溝88に固定具であるスナップリング45’を取り付けて,このスナップリング45’の側面に内輪411のつば46形成側の端面を係止している。
【0087】
従って,この例では,ロータ軸85に取り付けたスナップリング45’が,ロータ軸85の軸線方向に対する内輪411の移動を規制する係止部として機能する。
【0088】
なお,
図5に示す例では,スナップリング45’と共に,ロータ軸85に設けた内輪411を外嵌する小径部と,前記小径部のシリンダ71側に大径部を設け,この小径部と大径部との境界に生じた段差で内輪411のシリンダ71側の端面を係止する係止部45xを形成しているが,
図5に示す軸受部40の構成において,この係止部45xは必ずしも必要ではなく,ロータ軸85を大径部を備えない,一定径で形成された平坦な形状に形成することもできる。
【0089】
このように,
図5を参照して説明した軸受部40の構成では,ロータ軸85に対する嵌合溝88の形成とスナップリング45’の取り付けが必要となるが,
図8を参照して説明した従来の従動側ロータ(メスロータ182)の吸入側ロータ軸185の軸受部とは異なり,軸受穴143側に対しては嵌合溝188’の形成やスナップリング144’の取り付けを行う必要がなく,従来の軸受部に比較して,加工工数や組み付け部品数を減らすことができるものとなっている。
【0090】
特に,
図5に示す構成では,スナップリング45’によって内輪411のつば46形成側の端面を固定すれば,ロータ軸85に小径部と大径部を設けて係止部45xを設ける必要が無いことは前述した通りであり,ロータ軸85の形状を単純化できる点でも加工を容易とすることができる。
【0091】
なお,
図5に示す例では,本発明の軸受部構造を,従動側ロータ(メスロータ82)の吸入側ロータ軸85の軸受部40に適用した場合を例に挙げて説明したが,
図5に示す軸受部40の構造は,駆動側ロータ(オスロータ81)の吸入側ロータ軸83の軸受部20に適用することもできる。
【0092】
この場合,内輪のつば形成側の端面の固定を,
図4を参照して説明したように駆動用ギヤ87のボス87aの端面によって行うものとすれば,ロータ軸に対する嵌合溝の形成や,スナップリングの取り付けについても省略することができ,更なる部品点数の減少と加工工数の減少を実現することができる。
【0093】
さらに,
図5に示した例では,吸入側ロータ軸85の軸端にスナップリング45’取り付けて内輪411のつば46形成側の端面を係止する構成について説明したが,この構成に代え,
図6(A)に示すように,軸受穴43の内周面に嵌合溝88’を形成し,この嵌合溝88’にスナップリング44’を取り付けて固定を行うものとしても良い。
【0094】
この例では,片つば輪である内輪411のつば46形成側の端面を,ロータ軸85に設けた内輪411を外嵌する小径部と,前記小径部のシリンダ71側に設けた大径部との境界部分に形成した段差である係止部45に係止し,外輪412のシリンダ71とは反対側の端面(つば47a形成側の端面)を,スナップリング44’で係止して固定するもので,このスナップリング44’に,外輪412を軸受穴43に係止する係止部としての機能を持たせている。
【0095】
なお,
図6(A)に示した例では,軸受穴43のシリンダ71寄りの位置に形成した小径部の端面によって,外輪412のシリンダ側の端面を係止する係止部44xが形成されているが,この係止部44xは必ずしも設ける必要はなく,従って,スナップリング44’を取り付けるための嵌合溝88’が形成されていれば,軸受穴43は細径部や段差(係止部44x)を備えない,平坦な形状に形成することもできる。
【0096】
また,
図5及び
図6(A)に示した例では,外輪412を両つば輪,内輪411を片つば輪とした円筒ころ軸受41を使用した例について説明したが,これとは逆に,
図6(B),(C)に示すように外輪412を片つば輪,内輪411を両つば輪とした円筒ころ軸受41を使用して,軸受部40を形成するものとしても良い。
【0097】
このうち,
図6(B)に示す例は,ロータ軸85に取り付けた固定具(スナップリング)45’によって,円筒ころ軸受41の内輪411の端面を係止して固定したもので,軸受穴43に円筒ころ軸受41を挿入して片つば輪である外輪412のつば46形成側の端面を軸受穴43に設けた係止部44に係止すると共に,ロータ軸85の軸端側に取り付けた固定具であるスナップリング45’の側面に内輪411の端面を係止して円筒ころ軸受41を固定する。
【0098】
また,
図6(C)に示した例では,軸受穴43の内壁に取り付けた固定具(スナップリング)44’によって,円筒ころ軸受41の外輪412を固定したもので,片つば輪である外輪412のつば非形成側の端部がシリンダ71側を向くよう,円筒ころ軸受41を軸受穴43に挿入すると共に,ロータ軸85に外嵌した両つば輪である内輪411のシリンダ71側の端面をロータ軸85に形成した係止部45に係止すると共に,軸受穴43の内周面に固定具として取り付けたスナップリング44’の側面で外輪412のつば46が形成された側の端面を係止して円筒ころ軸受41を固定している。
【0099】
このように,
図6(A)〜(C)に示す例では,
図5を参照して説明した軸受部40と同様,嵌合溝とスナップリングの取り付けを必要とするものではあるが,ロータ軸85又は軸受穴43の一方のみに対する嵌合溝の形成とスナップリングの取り付けにより円筒ころ軸受41の固定が可能であり,同様に部品点数の減少や加工工数の減少が得られるものとなっている。