【実施例】
【0039】
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
(a)極限粘度
前記と同様の方法で測定した。
(b)ポリエステル樹脂の組成
得られたポリエステル樹脂を、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比が1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA−400型NMR装置にて1H−NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピークの積分強度から、共重合成分の種類と含有量を求めた。
(c)重量平均分子量と数平均分子量の比
得られたポリエステル樹脂を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件でポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を測定し、重量平均分子量/数平均分子量を算出した。
送液装置:ウォーターズ社製IsocraticHPLCPump1515
検出器:ウォーターズ社製RefractiveIndexDetector2414
カラム:Mixed−D
溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム=5/95(質量比)
流速:1ml/分
測定温度:40℃
(d)カルボキシル末端基濃度
得られたポリエステル樹脂0.1gをベンジルアルコール10mlに溶解し、この溶液にクロロホルム10mlを加えた後、1/10規定の水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定して求めた。
(e)環状3量体含有量
得られたポリエステル樹脂100mgをヘキサフルオロイソプロパノールとクロロホルムとの容量比が1/20の混合溶媒に溶解させ、アセトニトリルを加え、抽出したのち、液体クロマトグラフィーを用いて以下の条件にて測定し、環状3量体の量を算出した。
カラム:Waters マイクロボンダスフィア
充填剤:Si-C18 5μ 100A
検出器: Waters 2996型 PDA検出器(光源波長 254nm)
測定時流速:1ml/分
移動相溶媒:アセトニトリル/水=7/3及びアセトニトリル
【0040】
(f)ダイレクトブロー成形性
得られた成形品(サンプル数100本)の胴部の厚さを測定し、最厚部と最薄部の厚さの差が0.30mmまでのものを合格とし、合格のサンプル数を示した。合格のサンプル数が90本以上であるものを○、90本未満であるものを×とした。
(g)ダイレクトブロー成形リサイクル性
得られた成形品を粉砕機で粉砕した粉砕品50質量部、各例にて得られたポリエステル樹脂50質量部をブレンドし、除湿乾燥機に投入し乾燥した後、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、成形品を得た。得られた成形品(サンプル数100本)につき、(f)と同様にして成形性を評価した。
(h)ダイレクトブロー成形ヘーズ
得られた成形品及び(g)で得られた成形品のそれぞれにおいて、サイズ:厚さ2mm×長さ5cm×幅5cmの試験片(100個)を切り出して試験片の濁度を日本電色工業社製の濁度計MODEL 1001DPで測定し(空気:ヘーズ0%)、n数100の平均値とした。この値が小さいほど透明性が良好であり、5%以下であれば透明性に優れていると判定した。
(i)延伸ブロー成形性
得られた成形品(サンプル数100本)の胴部の厚さを測定し、最厚部と最薄部の厚さの差が30μmまでのものを合格とし、合格のサンプル数を示した。合格のサンプル数が90本以上であるものを○、90本未満であるものを×とした。
(j)延伸ブロー成形リサイクル性
得られた成形品を粉砕機で粉砕した粉砕品50質量部、各例にて得られたポリエステル樹脂50質量部をブレンドし、除湿乾燥機に投入し乾燥した後、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、成形品を得た。得られた成形品(サンプル数100本)につき、(i)と同様にして成形性を評価した。
(k)延伸ブロー成形ヘーズ
得られた成形品及び(j)で得られた成形品のそれぞれにおいて、サイズ:厚さ300μm×長さ5cm×幅5cmの試験片(100個)を切り出して試験片の濁度を日本電色工業社製の濁度計MODEL 1001DPで測定し(空気:ヘーズ0%)、n数100の平均値とした。この値が小さいほど透明性が良好であり、3%以下であれば透明性に優れていると判定した。
【0041】
実施例1
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃、圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%の反応生成物(数平均重合度:5)を得た。
TPAとEGの反応生成物55.5質量部を重合反応器に仕込み、続いて、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体(BAEO)3.2質量部、重合触媒として二酸化ゲルマニウム0.008質量部、酢酸コバルト0.004質量部、ヒンダードフェノール系抗酸化剤(ADEKA社製:アデカスタブAO-60)0.12質量部を、それぞれ加え、反応器を減圧にして60分後に最終圧力0.9hPa、温度280℃で4時間、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。このプレポリマーの極限粘度は、0.66であった。
続いて、該プレポリマーを結晶化装置に連続的に供給し150℃で結晶化をさせた後、乾燥機に供給し160℃で8時間乾燥後、予備加熱機に送り190℃まで加熱した後、固相重合機へ供給し、窒素ガス下にて固相重合反応を190℃で50時間行った。
得られたポリエステル樹脂をチップ化し、乾燥させた後、ダイレクトブロー成形機(タハラ社製)を用い、押出温度260℃で樹脂を押出して円筒形パリソンを形成し、パリソンが軟化状態にあるうちに金型で挟み、底部形成を行い、これをブローしてボトルを成形した。このとき、パリソン径3cmで長さが25cmとなったところで底部形成を行い、ブロー成形して500ccの中空容器(ダイレクトブロー成形品)を得た。
また、このポリエステル樹脂を用い、乾燥させた後、シリンダー各部およびノズル温度を260℃、スクリュー回転数100rpm、射出時間10秒、冷却時間10秒、金型温度15℃に設定した射出成型機(日精エーエスビー社製、ASB−50TH型)を用いてプリフォームを成形した。次いで、このプリフォームを100℃雰囲気下、ブロー圧力2MPaで延伸ブロー成形し、胴部の平均肉厚300μm、内径3.5cm、高さ15cmの円筒状のボトル(内容積150ccの中空容器;延伸ブロー成形品)を得た。
【0042】
実施例2、8、比較例1、5〜6
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量や、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が表1の値となるように組成を変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。そして得られたプレポリマーを用い、実施例1と同様にして固相重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
さらに、得られたポリエステル樹脂を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品、及び延伸ブロー成形品を得た。なお、比較例6においては、ダイレクトブロー成形機及び延伸ブロー成形機における押出温度を290℃として行った。
【0043】
実施例3
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量が表1の値となるように変更した以外は、実施例1と同様にしてエステル化反応、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。そして得られたプレポリマーを用い、乾燥機の乾燥条件を130℃、10時間、予備加熱機による加熱温度を180℃とした以外は実施例1と同様にして固相重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
さらに、得られたポリエステル樹脂を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品及び延伸ブロー成形品を得た。
【0044】
実施例4
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量が表1の値となるように変更した以外は、実施例1と同様にしてエステル化反応、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。そして得られたプレポリマーを用い、乾燥機の乾燥条件を120℃、18時間、予備加熱機による加熱温度を175℃とした以外は実施例1と同様にして固相重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
さらに、得られたポリエステル樹脂を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品及び延伸ブロー成形品を得た。
【0045】
実施例5
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量が表1の値となるように変更した以外は、実施例1と同様にしてエステル化反応、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。そして得られたプレポリマーを用い、乾燥機の乾燥条件を110℃、24時間、予備加熱機による加熱温度を170℃とした以外は実施例1と同様にして固相重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
さらに、得られたポリエステル樹脂を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品及び延伸ブロー成形品を得た。
【0046】
実施例6
実施例1と同様にしてエステル化反応、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。そして得られたプレポリマーを用い、固相重合反応時間を40時間とした以外は実施例1と同様にして固相重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
さらに、得られたポリエステル樹脂を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品及び延伸ブロー成形品を得た。
【0047】
実施例7
ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が表1の値となるように組成を変更した以外は、実施例1と同様にしてエステル化反応、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。そして得られたプレポリマーを用い、固相重合反応時間を60時間とした以外は実施例1と同様にして固相重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
さらに、得られたポリエステル樹脂を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品及び延伸ブロー成形品を得た。
【0048】
実施例9
実施例1と同様にしてエステル化反応、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。そして得られたプレポリマーを用い、固相重合反応時間を15時間とした以外は実施例1と同様にして固相重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
さらに、得られたポリエステル樹脂を、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形及び延伸ブロー成形に供した。
【0049】
比較例2
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が表1の値となるように組成を変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。得られたプレポリマーを実施例1と同様、結晶化装置に連続的に供給したが、固着したため結晶化を行うことができなかった。
そこで固相重合を行うことなく、エステル化反応、溶融重合反応を行って得た共重合ポリエステルのプレポリマーをポリエステル樹脂とし、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形及び延伸ブロー成形に供した。
【0050】
比較例3
実施例1で得られた共重合ポリエステルのプレポリマーをポリエステル樹脂とした(固相重合反応を行わなかった)。
そして、得られたポリエステル樹脂を、実施例1と同様にダイレクトブロー成形及び延伸ブロー成形に供した。
【0051】
比較例4
実施例1と同様にしてエステル化反応、溶融重合反応を行い、得られた共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。そして得られたプレポリマーを用い、固相重合反応時間を80時間とした以外は実施例1と同様にして固相重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
さらに、得られたポリエステル樹脂を用い、ダイレクトブロー成形機、及び延伸ブロー成形における押出温度を290℃とした以外は、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品及び延伸ブロー成形品を得た。
【0052】
比較例7
溶融重合反応時間を8時間とした以外は、実施例1と同様にしてエステル化反応、溶融重合反応を行い、得られた共重合ポリエステルのプレポリマーをポリエステル樹脂とした(固相重合反応を行わなかった)。
そして、得られたポリエステル樹脂を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品及び延伸ブロー成形品を得た。
を得た。
【0053】
比較例8、9
ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が表1の値となるように変更した以外は比較例7と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品及び延伸ブロー成形品を得た。
なお、比較例9においては、ダイレクトブロー成形機及び延伸ブロー成形機における押出温度を290℃として行った。
【0054】
【表1】
【0055】
表1から明らかなように、実施例1〜8で得られたポリエステル樹脂は、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体成分、極限粘度、重量平均分子量/数平均分子量、カルボキシル末端基量、環状3量体量が本発明で規定する範囲内のものであり、熱安定性に優れていたため、結晶化による白化の問題や、ドローダウンが生じることなく、操業性よくダイレクトブロー成形及び延伸ブロー成形を行うことができた。そして、得られた成形品(容器)は厚みムラがなく、透明性に優れたものであった。さらには、リサイクル性にも優れ、リサイクル品のポリエステル樹脂と混合して用いても、操業性よくダイレクトブロー成形及び延伸ブロー成形を行うことができ、かつ得られた成形品(容器)は厚みムラがなく、透明性に優れたものであった。
なお、実施例9で得られたポリエステル樹脂は、極限粘度が低かったため、ダイレクトブロー成形の際のドローダウンが大きくなり、ダイレクトブロー成形品を得ることができなかった。しかしながら、延伸ブロー成形は実施例1〜8と同様、操業性よく行うことができ、得られた成形品については厚みムラがなく、透明性に優れたものであった。また、リサイクル性にも優れていた。
【0056】
一方、比較例1で得られたポリエステル樹脂はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量が少なかったため、ダイレクトブロー成形及び延伸ブロー成形した際に、成形品が結晶化して白化し、透明性に劣るものとなった。また、ポリエステル樹脂の結晶化速度が速くなりすぎたため、ダイレクトブロー成形性も悪化し、厚みムラの生じた成形品が多くなった。比較例2では、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量が多かったため、固相重合時に融着が起こり、固相重合反応を行うことができなかった。そのため得られたポリエステル樹脂は極限粘度の低いものとなり、ダイレクトブロー成形を行うことができなかった。また、カルボキシル末端基量および環状3量体量が本発明で規定する範囲外となった。延伸ブロー成形については、共重合量が多いことによるポリマーの熱分解が生じ、成形性、特にリサイクル性に劣るものであった。比較例3で得られたポリエステル樹脂は、固相重合反応を行わなかったため、極限粘度の低いものとなり、ダイレクトブロー成形を行うことができなかった。また、カルボキシル末端基量および環状3量体量が本発明で規定する範囲外となったため、ポリマーの熱分解が生じ、成形性、特にリサイクル性に劣るものであった。比較例4で得られたポリエステル樹脂は、極限粘度が高すぎたため、成形温度を上げてダイレクトブロー成形したため、成形時にポリエステル樹脂の熱分解が生じたため、得られた成形品のヘーズが悪く、成形性も悪化し、厚みムラの生じた成形品が多くなった。また、端材を再生材として再び成形に供した際にも、樹脂の熱分解が生じたため、得られた成形品は厚みムラが生じ、リサイクル性も低かった。延伸ブロー成形については、極限粘度が高すぎたため、延伸ブロー成形品を得ることができなかった。
【0057】
比較例5で得られたポリエステル樹脂は、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が少なく、重量平均分子量と数平均分子量の比が1.9未満となったため、ダイレクトブロー成形時のパリソンのドローダウンが大きくなり、成形品は厚みムラの生じたものとなった。また、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が少ないため、ポリエステル樹脂の熱安定性が悪く、ダイレクトブロー成形、延伸ブロー成形共にリサイクル性に劣るものとなった。比較例6で得られたポリエステル樹脂は、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が多く、重量平均分子量と数平均分子量の比が2.5を超えるものとなったため、成形温度を上げて成形したため、成形時にポリエステル樹脂の熱分解が生じたため、得られた成形品のヘーズが悪く、成形性も悪化し、厚みムラの生じた成形品が多くなった。また、端材を再生材として再びダイレクトブロー成形、及び延伸ブロー成形に供した際にも、樹脂の熱分解が生じたため、得られた成形品は厚みムラが生じ、リサイクル性も低かった。比較例7で得られたポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基量が多すぎたため、ポリエステル樹脂の熱安定性が悪く、成形時のパリソンのドローダウンが大きくなり、成形品は厚みムラの生じたものとなった。また、ダイレクトブロー成形、延伸ブロー成形共にリサイクル性にも劣るものとなった。比較例8で得られたポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基量が多く、また、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が少なく、重量平均分子量と数平均分子量の比が1.9未満となったため、成形時のパリソンのドローダウンが大きくなり、成形品は厚みムラの生じたものとなった。また、ポリエステル樹脂の熱安定性が悪く、ダイレクトブロー成形、延伸ブロー成形共にリサイクル性に劣るものとなった。比較例9で得られたポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基量が多く、ヒンダードフェノール系抗酸化剤が多く、重量平均分子量と数平均分子量の比が2.5を超えるものとなったため、成形温度を上げて成形したため、成形時にポリエステル樹脂の熱分解が生じたため、得られた成形品のヘーズが悪く、成形性も悪化し、厚みムラの生じた成形品が多くなった。また、端材を再生材として再びダイレクトブロー成形に供した際にも、樹脂の熱分解が生じたため、得られた成形品は厚みムラが生じ、ダイレクトブロー成形、延伸ブロー成形共にリサイクル性も低かった。