特許第6297351号(P6297351)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6297351ポリエステル樹脂及びそれからなるブロー成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297351
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂及びそれからなるブロー成形品
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/183 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
   C08G63/183
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-27645(P2014-27645)
(22)【出願日】2014年2月17日
(65)【公開番号】特開2015-151487(P2015-151487A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000228073
【氏名又は名称】日本エステル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】天満 悠太
(72)【発明者】
【氏名】日高 康樹
(72)【発明者】
【氏名】谷奥 千晶
【審査官】 水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−265559(JP,A)
【文献】 特開2006−176783(JP,A)
【文献】 特開2004−277472(JP,A)
【文献】 特開平06−099476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00−64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを構成する酸成分の70モル%以上がテレフタル酸であり、グリコール成分の60〜98モル%がエチレングリコールであり、2〜20モル%がビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体であるポリエステル樹脂であって、極限粘度が0.7〜1.4であり、重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)が1.9〜2.5であり、かつカルボキシル末端基濃度が20当量/t以下であることを特徴とするポリエステル樹脂。
【請求項2】
環状3量体の含有量が0.6質量%以下である、請求項1記載のポリエステル樹脂。
【請求項3】
請求項1又は2記載のポリエステル樹脂からなるブロー成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性に優れたブロー成形品を生産性よく得ることができるポリエステル樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、機械的特性、化学的安定性、透明性等に優れ、かつ、安価であり、各種のシート、フィルム、容器等として幅広く用いられており、特に昨今では、炭酸飲料、果汁飲料、液体調味料、食用油、酒、ワイン用等の中空容器(ボトル)用途の伸びが著しい。しかも、塩化ビニル樹脂製中空成形品におけるような残留モノマーや有害添加剤の心配が少なく、衛生性及び安全性が高い点から、従来の塩化ビニル樹脂などからなるボトルからの置き換えも進んでいる。
【0003】
一般に、プラスチック製のボトルなどを製造するにあたっては、成形の容易性、高生産性、成形機械や金型などの設備費が比較的安くてすむなどの点から、溶融可塑化した樹脂をダイオリフィスを通して押出して円筒状のパリソンを形成し、これを金型に挟んで内部に空気を吹き込むいわゆるダイレクトブロー成形法が採用されている。そして、このダイレクトブロー成形による場合は、成形を円滑に行うために、溶融状態で押出されたパリソンが吹き込み成形時にドローダウンするのを回避する必要があり、そのため、使用樹脂に高い溶融粘度が要求される。したがって、高い溶融粘度を有する樹脂として、塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂などがダイレクトブロー成形においては広く用いられている。
【0004】
ダイレクトブロー成形品においても塩化ビニル樹脂からポリエステル樹脂への置き換えが検討されているが、ポリエステル樹脂は、一般にダイレクトブロー成形に適する高い溶融粘度を有していない。このため、押出されたパリソンが吹き込み成形時にドローダウンし、吹き込み成形が行えないという問題があり、また、ブロー時に結晶化が起こりやすいため、成形が可能であっても白化が生じ、透明性が不十分になるという問題があった。
【0005】
透明性を向上させるために、ポリエチレンテレフタレートに他のモノマー成分を共重合したポリエステル樹脂が提案されている。これにより結晶化は抑制できるが、それだけでは溶融粘度を上昇させることができない。そこで、3官能以上の多価カルボン酸/多価アルコールによる架橋の手段により高粘度化させ、ドローダウンの問題を解決する方法が提案されてきた(例えば特許文献1参照)。しかしながら、このような架橋の手段により高粘度化させると、成形性は向上するものの、多価カルボン酸や多価アルコールの量が多い場合は、ゲル化しやすく、熱安定性に劣り、得られる成形品は色調や透明性に劣るという問題があった。
【0006】
また、ダイレクトブロー成形では押出機よりダイスを介して押出した円筒状のパリソンを、垂直に二分割された割金型により型締めして挟み込み、この割金型のキャビティーの底辺に配設した刃部であるピンチオフ部で溶融樹脂の下部を切断すると共に熱溶着シールし、上部ではパリソンカッターで筒状の溶融樹脂の上部を切断することで有底筒体のパリソンを形成し、次いで割金型の頂部より挿入のエアノズルによってブローエアをパリソンに吹き込みブロー成形を行うため、切断された樹脂の端材が発生する。この端材については乾燥、結晶化を行った後、再生材として原料樹脂チップにドライブレンドし再びダイレクトブロー成形に使用するリサイクルを行いコストダウンを図っている。しかしながら、端材は成形時の熱履歴によって極限粘度が低下しているため、端材を多量にドライブレンドしてリサイクルすると成形時にドローダウンが生じ、成形出来ないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3173753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決し、ブロー成形時にドローダウンや結晶化による白化の問題が生じることなく、熱安定性にも優れており、透明性に優れたブロー成形品を生産性よく得ることができるポリエステル樹脂を提供しようとするものであり、また、一旦ブロー成形において端材となったものを、再度ブロー成形に用いても良好に成形が可能となる、リサイクル性にも優れたポリエステル樹脂を提供しようとするものである。さらに、本発明のポリエステル樹脂からなるブロー成形品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(3)を要旨とするものである。
(1)ポリエステルを構成する酸成分の70モル%以上がテレフタル酸であり、グリコール成分の60〜98モル%がエチレングリコールであり、2〜20モル%がビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体であるポリエステル樹脂であって、極限粘度が0.7〜1.4であり、重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)が1.9〜2.5であり、かつカルボキシル末端基濃度が20当量/t以下であることを特徴とするポリエステル樹脂。
(2)環状3量体の含有量が0.6質量%以下である、(1)記載のポリエステル樹脂。
(3)(1)又は(2)記載のポリエステル樹脂からなるブロー成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリエステル樹脂は、特定の組成からなるポリエステルを用い、特定の極限粘度、重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)、カルボキシル末端基濃度を満足するものであるため、熱安定性に優れており、ブロー成形時にドローダウンや結晶化による白化の問題が生じることなく、透明性に優れたブロー成形品を生産性よく得ることができる。また、本発明のポリエステル樹脂は、一旦ブロー成形において端材となったものを、再度ブロー成形に用いても透明性に優れたブロー成形品を生産性よく得ることができ、リサイクル性にも優れている。
そして、本発明のブロー成形品は、本発明のポリエステル樹脂から得られるものであるため、透明性に優れており、種々の用途に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂はブロー成形用に好適なものであり、中でも、溶融可塑化した樹脂をダイオリフィスを通して押出して円筒状のパリソンを形成し、これを金型に挟んで内部に空気を吹き込むダイレクトブロー成形法、もしくは射出成形でパリソンを形成し、これを延伸ブロー成形する延伸ブロー成形法に好適なものである。
【0012】
本発明におけるポリエステル樹脂は、酸成分の70モル%以上がテレフタル酸であり、中でも85モル%以上がテレフタル酸であることが好ましい。テレフタル酸の割合が70モル%未満であると、得られるポリエステル樹脂の結晶性や耐熱性が劣るものとなる。
ポリエステル樹脂中に含まれるテレフタル酸以外の酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸等が挙げられ、これらを2種類以上併用してもよく、これらの酸のエステル形成性誘導体を使用してもよい。
【0013】
一方、グリコール成分は、グリコール成分の60〜98モル%がエチレングリコールであり、2〜20モル%がビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体である。つまり、エチレングリコールを主成分とし、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体を共重合成分とするものである。
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の含有量(共重合量)は、全グリコール成分の2〜20モル%であり、中でも3〜15モル%であることが好ましく、さらには3〜12モル%であることが好ましい。ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体を適量共重合することにより、ポリエステル樹脂の結晶化速度をブロー成形に適したものに調整することができ、ブロー成形時の結晶化を防ぐことができる。
【0014】
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の含有量が2モル%よりも少ない場合は、樹脂組成物の結晶化速度が速いものとなるため、得られるブロー成形品は結晶化して白化する。一方、20モル%を超えると、非晶性のものとなり、高温での乾燥や固相重合が困難となる。あるいは、高温乾燥時や固相重合工程においてブロッキングが起こりやすくなるため好ましくない。
【0015】
エチレングリコールは、全グリコール成分の60〜98モル%であり、中でも70〜90モル%であることが好ましい。エチレングリコールの含有量が60モル%未満であると、得られるポリエステル樹脂の結晶性や耐熱性が劣るものとなる。一方、98モル%を超えると、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の割合が少なくなり、結晶化速度を調整することが困難となり、ブロー成形時の結晶化による白化を防ぐ効果に乏しいものとなる。
なお、エチレングリコールとビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の合計量は、全グリコール成分の70モル%以上であることが好ましく、中でも80モル%以上であることが好ましい。
【0016】
また、エチレングリコール及びビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体以外のジオール成分としては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサメチレンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物等を用いることができる。
【0017】
本発明のポリエステル樹脂は、極限粘度(IV)が、0.7〜1.4であることが必要であり、中でもダイレクトブロー成形用途に用いる際には、0.9〜1.4であることが好ましい。なお、極限粘度(IV)は、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定するものである。
【0018】
極限粘度が0.7未満の場合は、樹脂の粘度が低いため、ブロー成形時にパリソンのドローダウンが大きくなり、成形自体が困難なものとなる。中でもダイレクトブロー成形時にはパリソンのドローダウンが顕著となり、成形が困難となる。一方、極限粘度が1.4を超える場合は、成形温度を上げる必要があり、得られる成形品の色調や透明性が悪くなる。また、成形温度を高くすることによって、樹脂の熱分解が促進されるため、パリソンのドローダウンが大きくなり、成形が困難になったり、得られる成形品は厚みムラが生じたものとなる。さらに、端材を再生材として再びブロー成形に供すると、ブロー成形時に樹脂の熱分解が生じやすく、安定的な生産が困難となり、得られる成形品は厚みムラが生じたものとなる。
【0019】
そして、本発明のポリエステル樹脂において、重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)が1.9〜2.5であることと、カルボキシル末端基濃度が20当量/t以下であることの両者を満足することが特に重要である。重量平均分子量と数平均分子量の比が上記範囲内であると、ブロー成形に適した粘性を有するものとなる。ただし、成形前には重量平均分子量と数平均分子量の比が上記範囲内であったとしても、ブロー成形時の熱処理により樹脂の熱分解が生じた場合、成形時にドローダウンが生じ、成形が困難となったり、成形品が得られたとしても厚みムラの生じたものとなる。そこで、このような成形時の熱処理による樹脂の熱分解が生じないようにするために、カルボキシル末端基濃度を20当量/t以下とすることが必要となる。
【0020】
まず、本発明のポリエステル樹脂は、重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)が1.9〜2.5であることが必要であり、中でも2.0〜2.4であることが好ましい。
重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)が1.9未満の場合、樹脂中の分子鎖の絡み合いや、架橋密度が不足するため、ブロー成形に適した粘性を有するものとすることができない。このため、ブロー成形時にパリソンのドローダウンが大きくなり、成形が困難になったり、得られる成形品は厚みムラが生じたものとなる。
【0021】
一方、重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)が2.5を超える場合は、粘性が高くなっているため、成形温度を上げる必要があり、得られる成形品の色調や透明性が悪くなる。また、成形温度を高くすることによって、樹脂の熱分解が促進されるため、パリソンのドローダウンが大きくなり、成形が困難になったり、得られる成形品は厚みムラが生じたものとなる。さらに、端材を再生材として再びブロー成形に供すると、ブロー成形時に樹脂の熱分解が生じやすく、安定的な生産が困難となり、得られる成形品は厚みムラが生じたものとなる。
【0022】
なお、重量平均分子量と数平均分子量の比を上記範囲のものとする手段は限定されるものではないが、後述するヒンダードフェノール系抗酸化剤をポリエステル樹脂の重合反応時に添加する方法や、後述するヒンダードフェノール系抗酸化剤をポリエステル樹脂に溶融混練により添加する等が挙げられる。
【0023】
さらに、本発明のポリエステル樹脂はカルボキシル末端基濃度が20当量/t以下であることが必要であり、中でも18当量/t以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂のカルボキシル末端基濃度を20当量/t以下とすることによって、ブロー成形時に樹脂の熱分解が生じることがなく、安定した成形が可能となる。また、リサイクル性にも優れたものとなる。
【0024】
カルボキシル末端基濃度が20当量/tを超える場合は、たとえ、樹脂の極限粘度や重量平均分子量と数平均分子量の比が上記したような範囲のものであったとしても、ブロー成形時の熱処理によって樹脂の熱分解が生じ、このため、パリソンのドローダウンが大きくなり、成形が困難になったり、得られる成形品は厚みムラが生じたものとなる。
【0025】
また、得られる成形品もカルボキシル末端基濃度が増加したものとなっているため、成形時に発生する端材もカルボキシル末端基濃度が高いものとなっている。このため、端材を再生材として再びブロー成形に供すると、ブロー成形時に樹脂の熱分解が生じ、安定的な生産が困難となり、得られる成形品は厚みムラが生じたものとなる。
【0026】
さらに、本発明のポリエステル樹脂は、環状3量体の含有量が0.6質量%以下であることが好ましく、中でも0.5質量%以下であることが好ましい。環状3量体の含有量が0.6質量%以下であるポリエステル樹脂を成形に供することで、金型等の汚染の改善が認められる。環状3量体の含有量が、0.6質量%を超えると成形時に金型やノズルなどの装置類に付着し、汚染する。これらの汚染は、成形品の表面荒れや白化などの原因となるため、金型やノズルを頻繁に清掃する必要がある。
なお、ポリエステル樹脂のカルボキシル末端基濃度を20当量/t以下としたり、環状3量体の含有量を0.6質量%以下とするには、ポリエステル樹脂を得るための溶融重合反応後に、特定の条件で固相重合反応を行うことにより可能となる。
【0027】
そして、本発明のポリエステル樹脂中には酸化防止剤が添加されていることが好ましい。中でもヒンダードフェノール系抗酸化剤が、ポリエステル樹脂中の0.01〜0.5質量%となるように添加されていることが好ましい。ヒンダードフェノール系抗酸化剤を適量添加することにより、フタル酸成分の熱分解を抑制する効果を有するものとなる。また、ヒンダードフェノール系抗酸化剤は分子中に2個以上のヒンダードフェノール基が含まれていることが好ましい。これらの酸化防止剤は重合反応工程中に添加することで、該化合物の一部がポリエステル樹脂中に共重合され、ポリエステルの分子鎖中に組み込まれることで、分子鎖の絡み合いや、架橋構造が生じ、ポリエステル樹脂の粘性が高いものとなる。その結果、重量平均分子量と数平均分子量の比を上記範囲とすることが可能となる。
【0028】
ヒンダードフェノール系抗酸化剤が0.01質量%未満では上記のような効果を奏することが困難となる。一方、0.5質量%を超えると、粘性が高くなり、重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)が2.5を超える場合が多く、得られる成形品の色調や透明性が悪くなりやすい。また、リサイクル性も低下する。
【0029】
また、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1’−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が用いられるが、効果とコストの点で、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンが好ましい。
【0030】
また、本発明のポリエステル樹脂中には、上記のような酸化防止剤の他、着色防止剤として、例えば、亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート等のリン化合物を用いることができ、これらのリン化合物は単独で使用しても2種以上使用しても良い。また、ポリエステル樹脂の熱分解による着色を抑制するために酢酸コバルト等のコバルト化合物、酢酸マンガン等のマンガン化合物、アントラキノン系染料化合物、銅フタロシアニン系化合物等の添加剤が含有されていてもよい。
【0031】
本発明のポリエステル樹脂は、他の熱可塑性樹脂や他の共重合成分を含有するポリエステル樹脂とともに混合(ブレンド)して用いることもできる。そして、このように混合した樹脂(あるいは樹脂組成物)を用いて得られる成形体は、耐衝撃性を向上させることができる場合がある。
【0032】
次に、本発明のポリエステル樹脂の製造方法について説明する。本発明におけるポリエステル樹脂は、エステル化反応、溶融重合反応及び固相重合反応工程を経て得られるものであることが好ましい。エステル化反応と溶融重合反応のみでは、目標の極限粘度のポリエステル樹脂を得ることが困難となる。得られたとしても、溶融重合反応の反応時間が長くなり、得られるポリエステル樹脂は色調が悪いものとなる。そして、固相重合反応における工程や条件を特定のものにすることによって、本発明のポリエステル樹脂を得ることができる。
【0033】
具体的には、例えば、次のような方法で製造することができる。
酸成分としてテレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体、グリコール成分としてエチレングリコールを所定の割合でエステル化反応器に仕込み、加圧下、160〜280℃の温度でエステル化反応を行う。この後、反応生成物を重合反応器に移し、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、重縮合触媒、必要に応じて酸化防止剤や着色防止剤等の添加剤を添加し、通常1hPa以下の減圧下で240〜290℃、好ましくは250〜280℃の温度で溶融重合反応を行う。ここで得られる共重合ポリエステル(プレポリマー)の極限粘度は、0.5〜0.8の範囲であることが好ましい。
【0034】
重縮合触媒としては、一般的にPETに用いられる公知の化合物、例えば、ゲルマニウム、アンチモン、チタンおよびコバルト化合物などの1種以上を用いることができるが、好ましくはゲルマニウムまたはアンチモンの化合物を使用する。さらに、得られるポリエステル樹脂の透明性を非常に重視する場合においては、ゲルマニウム化合物を使用することが好ましい。ゲルマニウムまたはアンチモンの化合物としては、それらの酸化物、無機酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、硫化物などが例示される。これらの重縮合触媒は、生成するポリエステル樹脂の酸成分1モルに対し5×10−5モル〜3.0×10−4モルの範囲内、中でも6×10−5モル〜2.0×10−4モルの範囲内となるような量で用いることが好ましい。
【0035】
また、前記着色防止剤としては、亜リン酸、リン酸、トリメチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン化合物が例示される。また、酢酸コバルト等のコバルト化合物、酢酸マンガン等のマンガン化合物、アントラキノン系染料化合物、銅フタロシアニン系化合物を使用してもよい。
【0036】
続いて、上記した溶融重合反応により得られたプレポリマーをダイス状、円柱状などの任意の形状のチップとし、該ポリエステルチップを結晶化装置に連続的に供給し150〜180℃の温度で結晶化をさせた後、乾燥機に供給し180℃以下の温度で4〜10時間の範囲で乾燥後、予備加熱機に送り2〜5時間の範囲で下記固相重合温度まで加熱した後、固相重合機へ連続的に供給し固相重合反応を行うことにより、目標の極限粘度のポリエステル樹脂を得る。固相重合は、窒素ガスなどの不活性ガス下で行うのが好ましい。固相重合は通常170〜230℃の範囲内の温度で行うのが好ましく、180〜220℃の範囲内の温度行うのがより好ましい。また、重合時間は20時間〜60時間の範囲で、固相重合機内にて反応させることにより行う。
【0037】
なお、本発明のポリエステル樹脂は、上記したように、ブロー成形に適したものであるが、射出成形や延伸法を採用しても、色調、透明性に優れた成形品(射出成形体、シート、フィルム等)を得ることができる。
【0038】
次に、本発明のブロー成形品は、本発明のポリエステル樹脂からなるものである。本発明のブロー成形品は、汎用のダイレクトブロー成形機や延伸ブロー成形機を用いて製造することが可能であり、成形機のシリンダー各部及びノズルの温度は、230〜280℃の範囲とするのが好ましい。
【実施例】
【0039】
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
(a)極限粘度
前記と同様の方法で測定した。
(b)ポリエステル樹脂の組成
得られたポリエステル樹脂を、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比が1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA−400型NMR装置にて1H−NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピークの積分強度から、共重合成分の種類と含有量を求めた。
(c)重量平均分子量と数平均分子量の比
得られたポリエステル樹脂を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件でポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を測定し、重量平均分子量/数平均分子量を算出した。
送液装置:ウォーターズ社製IsocraticHPLCPump1515
検出器:ウォーターズ社製RefractiveIndexDetector2414
カラム:Mixed−D
溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム=5/95(質量比)
流速:1ml/分
測定温度:40℃
(d)カルボキシル末端基濃度
得られたポリエステル樹脂0.1gをベンジルアルコール10mlに溶解し、この溶液にクロロホルム10mlを加えた後、1/10規定の水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定して求めた。
(e)環状3量体含有量
得られたポリエステル樹脂100mgをヘキサフルオロイソプロパノールとクロロホルムとの容量比が1/20の混合溶媒に溶解させ、アセトニトリルを加え、抽出したのち、液体クロマトグラフィーを用いて以下の条件にて測定し、環状3量体の量を算出した。
カラム:Waters マイクロボンダスフィア
充填剤:Si-C18 5μ 100A
検出器: Waters 2996型 PDA検出器(光源波長 254nm)
測定時流速:1ml/分
移動相溶媒:アセトニトリル/水=7/3及びアセトニトリル
【0040】
(f)ダイレクトブロー成形性
得られた成形品(サンプル数100本)の胴部の厚さを測定し、最厚部と最薄部の厚さの差が0.30mmまでのものを合格とし、合格のサンプル数を示した。合格のサンプル数が90本以上であるものを○、90本未満であるものを×とした。
(g)ダイレクトブロー成形リサイクル性
得られた成形品を粉砕機で粉砕した粉砕品50質量部、各例にて得られたポリエステル樹脂50質量部をブレンドし、除湿乾燥機に投入し乾燥した後、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、成形品を得た。得られた成形品(サンプル数100本)につき、(f)と同様にして成形性を評価した。
(h)ダイレクトブロー成形ヘーズ
得られた成形品及び(g)で得られた成形品のそれぞれにおいて、サイズ:厚さ2mm×長さ5cm×幅5cmの試験片(100個)を切り出して試験片の濁度を日本電色工業社製の濁度計MODEL 1001DPで測定し(空気:ヘーズ0%)、n数100の平均値とした。この値が小さいほど透明性が良好であり、5%以下であれば透明性に優れていると判定した。
(i)延伸ブロー成形性
得られた成形品(サンプル数100本)の胴部の厚さを測定し、最厚部と最薄部の厚さの差が30μmまでのものを合格とし、合格のサンプル数を示した。合格のサンプル数が90本以上であるものを○、90本未満であるものを×とした。
(j)延伸ブロー成形リサイクル性
得られた成形品を粉砕機で粉砕した粉砕品50質量部、各例にて得られたポリエステル樹脂50質量部をブレンドし、除湿乾燥機に投入し乾燥した後、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、成形品を得た。得られた成形品(サンプル数100本)につき、(i)と同様にして成形性を評価した。
(k)延伸ブロー成形ヘーズ
得られた成形品及び(j)で得られた成形品のそれぞれにおいて、サイズ:厚さ300μm×長さ5cm×幅5cmの試験片(100個)を切り出して試験片の濁度を日本電色工業社製の濁度計MODEL 1001DPで測定し(空気:ヘーズ0%)、n数100の平均値とした。この値が小さいほど透明性が良好であり、3%以下であれば透明性に優れていると判定した。
【0041】
実施例1
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃、圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%の反応生成物(数平均重合度:5)を得た。
TPAとEGの反応生成物55.5質量部を重合反応器に仕込み、続いて、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体(BAEO)3.2質量部、重合触媒として二酸化ゲルマニウム0.008質量部、酢酸コバルト0.004質量部、ヒンダードフェノール系抗酸化剤(ADEKA社製:アデカスタブAO-60)0.12質量部を、それぞれ加え、反応器を減圧にして60分後に最終圧力0.9hPa、温度280℃で4時間、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。このプレポリマーの極限粘度は、0.66であった。
続いて、該プレポリマーを結晶化装置に連続的に供給し150℃で結晶化をさせた後、乾燥機に供給し160℃で8時間乾燥後、予備加熱機に送り190℃まで加熱した後、固相重合機へ供給し、窒素ガス下にて固相重合反応を190℃で50時間行った。
得られたポリエステル樹脂をチップ化し、乾燥させた後、ダイレクトブロー成形機(タハラ社製)を用い、押出温度260℃で樹脂を押出して円筒形パリソンを形成し、パリソンが軟化状態にあるうちに金型で挟み、底部形成を行い、これをブローしてボトルを成形した。このとき、パリソン径3cmで長さが25cmとなったところで底部形成を行い、ブロー成形して500ccの中空容器(ダイレクトブロー成形品)を得た。
また、このポリエステル樹脂を用い、乾燥させた後、シリンダー各部およびノズル温度を260℃、スクリュー回転数100rpm、射出時間10秒、冷却時間10秒、金型温度15℃に設定した射出成型機(日精エーエスビー社製、ASB−50TH型)を用いてプリフォームを成形した。次いで、このプリフォームを100℃雰囲気下、ブロー圧力2MPaで延伸ブロー成形し、胴部の平均肉厚300μm、内径3.5cm、高さ15cmの円筒状のボトル(内容積150ccの中空容器;延伸ブロー成形品)を得た。
【0042】
実施例2、8、比較例1、5〜6
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量や、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が表1の値となるように組成を変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。そして得られたプレポリマーを用い、実施例1と同様にして固相重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
さらに、得られたポリエステル樹脂を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品、及び延伸ブロー成形品を得た。なお、比較例6においては、ダイレクトブロー成形機及び延伸ブロー成形機における押出温度を290℃として行った。
【0043】
実施例3
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量が表1の値となるように変更した以外は、実施例1と同様にしてエステル化反応、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。そして得られたプレポリマーを用い、乾燥機の乾燥条件を130℃、10時間、予備加熱機による加熱温度を180℃とした以外は実施例1と同様にして固相重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
さらに、得られたポリエステル樹脂を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品及び延伸ブロー成形品を得た。
【0044】
実施例4
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量が表1の値となるように変更した以外は、実施例1と同様にしてエステル化反応、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。そして得られたプレポリマーを用い、乾燥機の乾燥条件を120℃、18時間、予備加熱機による加熱温度を175℃とした以外は実施例1と同様にして固相重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
さらに、得られたポリエステル樹脂を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品及び延伸ブロー成形品を得た。
【0045】
実施例5
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量が表1の値となるように変更した以外は、実施例1と同様にしてエステル化反応、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。そして得られたプレポリマーを用い、乾燥機の乾燥条件を110℃、24時間、予備加熱機による加熱温度を170℃とした以外は実施例1と同様にして固相重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
さらに、得られたポリエステル樹脂を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品及び延伸ブロー成形品を得た。
【0046】
実施例6
実施例1と同様にしてエステル化反応、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。そして得られたプレポリマーを用い、固相重合反応時間を40時間とした以外は実施例1と同様にして固相重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
さらに、得られたポリエステル樹脂を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品及び延伸ブロー成形品を得た。
【0047】
実施例7
ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が表1の値となるように組成を変更した以外は、実施例1と同様にしてエステル化反応、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。そして得られたプレポリマーを用い、固相重合反応時間を60時間とした以外は実施例1と同様にして固相重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
さらに、得られたポリエステル樹脂を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品及び延伸ブロー成形品を得た。
【0048】
実施例9
実施例1と同様にしてエステル化反応、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。そして得られたプレポリマーを用い、固相重合反応時間を15時間とした以外は実施例1と同様にして固相重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
さらに、得られたポリエステル樹脂を、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形及び延伸ブロー成形に供した。
【0049】
比較例2
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が表1の値となるように組成を変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。得られたプレポリマーを実施例1と同様、結晶化装置に連続的に供給したが、固着したため結晶化を行うことができなかった。
そこで固相重合を行うことなく、エステル化反応、溶融重合反応を行って得た共重合ポリエステルのプレポリマーをポリエステル樹脂とし、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形及び延伸ブロー成形に供した。
【0050】
比較例3
実施例1で得られた共重合ポリエステルのプレポリマーをポリエステル樹脂とした(固相重合反応を行わなかった)。
そして、得られたポリエステル樹脂を、実施例1と同様にダイレクトブロー成形及び延伸ブロー成形に供した。
【0051】
比較例4
実施例1と同様にしてエステル化反応、溶融重合反応を行い、得られた共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。そして得られたプレポリマーを用い、固相重合反応時間を80時間とした以外は実施例1と同様にして固相重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
さらに、得られたポリエステル樹脂を用い、ダイレクトブロー成形機、及び延伸ブロー成形における押出温度を290℃とした以外は、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品及び延伸ブロー成形品を得た。
【0052】
比較例7
溶融重合反応時間を8時間とした以外は、実施例1と同様にしてエステル化反応、溶融重合反応を行い、得られた共重合ポリエステルのプレポリマーをポリエステル樹脂とした(固相重合反応を行わなかった)。
そして、得られたポリエステル樹脂を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品及び延伸ブロー成形品を得た。
を得た。
【0053】
比較例8、9
ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が表1の値となるように変更した以外は比較例7と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形品及び延伸ブロー成形品を得た。
なお、比較例9においては、ダイレクトブロー成形機及び延伸ブロー成形機における押出温度を290℃として行った。
【0054】
【表1】
【0055】
表1から明らかなように、実施例1〜8で得られたポリエステル樹脂は、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体成分、極限粘度、重量平均分子量/数平均分子量、カルボキシル末端基量、環状3量体量が本発明で規定する範囲内のものであり、熱安定性に優れていたため、結晶化による白化の問題や、ドローダウンが生じることなく、操業性よくダイレクトブロー成形及び延伸ブロー成形を行うことができた。そして、得られた成形品(容器)は厚みムラがなく、透明性に優れたものであった。さらには、リサイクル性にも優れ、リサイクル品のポリエステル樹脂と混合して用いても、操業性よくダイレクトブロー成形及び延伸ブロー成形を行うことができ、かつ得られた成形品(容器)は厚みムラがなく、透明性に優れたものであった。
なお、実施例9で得られたポリエステル樹脂は、極限粘度が低かったため、ダイレクトブロー成形の際のドローダウンが大きくなり、ダイレクトブロー成形品を得ることができなかった。しかしながら、延伸ブロー成形は実施例1〜8と同様、操業性よく行うことができ、得られた成形品については厚みムラがなく、透明性に優れたものであった。また、リサイクル性にも優れていた。
【0056】
一方、比較例1で得られたポリエステル樹脂はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量が少なかったため、ダイレクトブロー成形及び延伸ブロー成形した際に、成形品が結晶化して白化し、透明性に劣るものとなった。また、ポリエステル樹脂の結晶化速度が速くなりすぎたため、ダイレクトブロー成形性も悪化し、厚みムラの生じた成形品が多くなった。比較例2では、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量が多かったため、固相重合時に融着が起こり、固相重合反応を行うことができなかった。そのため得られたポリエステル樹脂は極限粘度の低いものとなり、ダイレクトブロー成形を行うことができなかった。また、カルボキシル末端基量および環状3量体量が本発明で規定する範囲外となった。延伸ブロー成形については、共重合量が多いことによるポリマーの熱分解が生じ、成形性、特にリサイクル性に劣るものであった。比較例3で得られたポリエステル樹脂は、固相重合反応を行わなかったため、極限粘度の低いものとなり、ダイレクトブロー成形を行うことができなかった。また、カルボキシル末端基量および環状3量体量が本発明で規定する範囲外となったため、ポリマーの熱分解が生じ、成形性、特にリサイクル性に劣るものであった。比較例4で得られたポリエステル樹脂は、極限粘度が高すぎたため、成形温度を上げてダイレクトブロー成形したため、成形時にポリエステル樹脂の熱分解が生じたため、得られた成形品のヘーズが悪く、成形性も悪化し、厚みムラの生じた成形品が多くなった。また、端材を再生材として再び成形に供した際にも、樹脂の熱分解が生じたため、得られた成形品は厚みムラが生じ、リサイクル性も低かった。延伸ブロー成形については、極限粘度が高すぎたため、延伸ブロー成形品を得ることができなかった。
【0057】
比較例5で得られたポリエステル樹脂は、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が少なく、重量平均分子量と数平均分子量の比が1.9未満となったため、ダイレクトブロー成形時のパリソンのドローダウンが大きくなり、成形品は厚みムラの生じたものとなった。また、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が少ないため、ポリエステル樹脂の熱安定性が悪く、ダイレクトブロー成形、延伸ブロー成形共にリサイクル性に劣るものとなった。比較例6で得られたポリエステル樹脂は、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が多く、重量平均分子量と数平均分子量の比が2.5を超えるものとなったため、成形温度を上げて成形したため、成形時にポリエステル樹脂の熱分解が生じたため、得られた成形品のヘーズが悪く、成形性も悪化し、厚みムラの生じた成形品が多くなった。また、端材を再生材として再びダイレクトブロー成形、及び延伸ブロー成形に供した際にも、樹脂の熱分解が生じたため、得られた成形品は厚みムラが生じ、リサイクル性も低かった。比較例7で得られたポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基量が多すぎたため、ポリエステル樹脂の熱安定性が悪く、成形時のパリソンのドローダウンが大きくなり、成形品は厚みムラの生じたものとなった。また、ダイレクトブロー成形、延伸ブロー成形共にリサイクル性にも劣るものとなった。比較例8で得られたポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基量が多く、また、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が少なく、重量平均分子量と数平均分子量の比が1.9未満となったため、成形時のパリソンのドローダウンが大きくなり、成形品は厚みムラの生じたものとなった。また、ポリエステル樹脂の熱安定性が悪く、ダイレクトブロー成形、延伸ブロー成形共にリサイクル性に劣るものとなった。比較例9で得られたポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基量が多く、ヒンダードフェノール系抗酸化剤が多く、重量平均分子量と数平均分子量の比が2.5を超えるものとなったため、成形温度を上げて成形したため、成形時にポリエステル樹脂の熱分解が生じたため、得られた成形品のヘーズが悪く、成形性も悪化し、厚みムラの生じた成形品が多くなった。また、端材を再生材として再びダイレクトブロー成形に供した際にも、樹脂の熱分解が生じたため、得られた成形品は厚みムラが生じ、ダイレクトブロー成形、延伸ブロー成形共にリサイクル性も低かった。