(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297359
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】林業機械
(51)【国際特許分類】
A01G 23/08 20060101AFI20180312BHJP
E02F 3/36 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
A01G23/08 501G
E02F3/36 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-37471(P2014-37471)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-159771(P2015-159771A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高山 瞬
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−052509(JP,A)
【文献】
特開2013−240959(JP,A)
【文献】
実開昭63−003403(JP,U)
【文献】
特開2013−176315(JP,A)
【文献】
特開2011−130713(JP,A)
【文献】
特開2012−019702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 23/00 − 23/14
E02F 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と鎖鋸部とを含むチェーンソーが積載される工具台を備えた林業機械であって、
下部走行体と、
該下部走行体に搭載される上部旋回体と、
該上部旋回体に設けられるキャビンと、
前記上部旋回体に取り付けられるブームと、
該ブームの先端に取り付けられるアームと、
該アームの先端に取り付けられるハーベスタ装置と、を備え、
前記工具台は、
前記チェーンソーを支える支持部と、
該支持部に立設され、前記チェーンソーの脱落を防止する脱落防止部と、を有し、
前記工具台は、前記上部旋回体の前方に取り付けられ、
前記脱落防止部は、前記チェーンソーの前記鎖鋸部を通す鎖鋸通し部を形成し、
前記工具台に積載された前記チェーンソーは、前記鎖鋸部を前記鎖鋸通し部から外方に突出させる、林業機械。
【請求項2】
前記工具台は、前記キャビン前方の下方に取り付けられ、
前記工具台の前記キャビンの幅方向の寸法は、前記チェーンソーの全長よりも短い、請求項1に記載の林業機械。
【請求項3】
前記工具台の前記キャビンの幅方向の寸法は、少なくとも、前記チェーンソーの前記本体部の幅よりも長い、請求項1又は2に記載の林業機械。
【請求項4】
前記工具台の前記脱落防止部は、前記チェーンソーの前記本体部の高さより低い、請求項1乃至3の何れか一項に記載の林業機械。
【請求項5】
前記鎖鋸通し部は、少なくとも、前記脱落防止部の前記ハーベスタ装置の位置と対向する側に形成されている、請求項1乃至4何れか一項に記載の林業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハーベスタ装置を備える林業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ショベル等の可動式のアームの先端に原木の伐倒、枝打ち、玉切り等の造材作業を行うことが可能なハーベスタ装置を備えた林業機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような林業機械によれば、ハーベスタ装置によって木材の伐採、枝打ち及び玉切りなどの造材作業を効率的に行うことができる。ところで、原木の造材作業は、一般的に、上記林業機械をトレーラーに積載して作業現場まで輸送することによって行われる。この場合において、林業機械は、アームを手前側(ブーム側)に折畳みつつブームを前側に伏せた状態の輸送時姿勢をとりながら、トレーラーに積載される。
【0003】
また、造材作業を行うに当たっては、作業者は、携帯型のチェーンソーを携行する。なお、林業機械で作業現場を移動している場合においても、チェーンソーを携行するのは、作業者にとって負担が大きいため、近年においては、このようなチェーンソーを収納することができる工具台がキャビンの前方に突出して設けられた林業機械も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/047450号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、チェーンソーはエンジン等の駆動部分である本体部と鎖鋸部とから構成されており大型の工具である。そのため、工具台は、このチェーンソーを収納することができる大きさのものを用意する必要がある。
【0006】
しかしながら、上記工具台付きの林業機械の構成では、上記輸送時姿勢を取ったときに工具台に林業機械のアタッチメントであるハーベスタ装置が干渉する虞がある。
【0007】
上述の点に鑑み、作業者の負担を軽減するとともに、工具台に干渉することなく輸送時姿勢を保持することが可能な林業機械を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一局面によれば、本体部と鎖鋸部とを含むチェーンソーが積載される工具台を備えた林業機械であって、下部走行体と、該下部走行体に搭載される上部旋回体と、該上部旋回体に設けられるキャビンと、前記上部旋回体に取り付けられるブームと、該ブームの先端に取り付けられるアームと、該アームの先端に取り付けられるハーベスタ装置と、を備え、前記工具台は、前記チェーンソーを支える支持部と、該支持部に立設され、前記チェーンソーの脱落を防止する脱落防止部と、を有し、
前記工具台は、前記上部旋回体の前方に取り付けられ、前記脱落防止部は、前記チェーンソーの前記鎖鋸部を通す鎖鋸通し部を形成し、前記工具台に積載された前記チェーンソーは、前記鎖鋸部を前記鎖鋸通し部から外方に突出させる、林業機械が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、林業機械の移動中に作業者がチェーンソーを携行する必要がないため作業者の負担を軽減するとともに、ハーベスタ装置が工具台に干渉することなく輸送時姿勢を保持することが可能な林業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る林業機械を示す側面図である。
【
図2】
図1の林業機械の輸送時姿勢を示す図である。
【
図3】
図1の工具台の取り付け位置近傍の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら実施例について詳細に説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
図1は、一実施形態に係る林業機械を示す側面図である。本実施形態に係る林業機械の構成について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1に示す林業機械の下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはハーベスタリンク6が取り付けられている。ブーム4、アーム5及びハーベスタリンク6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びハーベスタリンクシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。ハーベスタリンク6の先端には、ハーベスタ装置100が取り付けられている。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。キャビン10には運転席が設けられており、作業者は運転席に着座しながら林業機械を操作する。キャビン10の前方には、ガード(不図示)が窓部を覆うように取り付けられている。ガードは開閉可能であり、原木や枝等の落下物から作業者を保護するために、造材作業中、ガードは閉じられる。ワイパー(不図示)は、前方の窓部に取り付けられている。ワイパーは、該窓部の外面上で往復運動することによって、窓部の外面に付着する雨滴や汚れを拭い取る。
【0014】
なお、キャビン10の前方には、作業者が、作業現場で使用する工具を積載する工具台160が取り付けられている。詳細は後述する。
【0015】
本実施形態に係る工具台160の構成について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図2は、
図1の林業機械の輸送時姿勢を示す図である。また、
図3は、
図1の工具台160の取り付け位置近傍の斜視図である。また、
図4は、
図3の工具台160のA部拡大斜視図である。
【0017】
本実施形態において、工具台160は、原木の伐倒、枝打ち、玉切り等の造材作業を行うことができるハーベスタ仕様の林業機械に配設される。
【0018】
一般的に、作業者は、森林や山道等における原木の伐倒等の造材作業を行うに当たって、林業機械を作業現場に輸送するとともに、携帯式のチェーンソーを携行する。
【0019】
林業機械は、トレーラーによって山林等の作業現場まで輸送される。この輸送を行うに際しては、
図2に示すように、トレーラーに積載することができるように、アーム5を手前側に折畳みブーム4を前側に伏せた状態、いわゆる輸送時姿勢に林業機械を保持させる。
【0020】
林業機械には、上述したように、アタッチメントとしてハーベスタ装置100が、ハーベスタリンク6を介してアーム5に取り付けられている。なお、一般的に、運転席に着座した作業者からみて右側にブーム4が配置されており、作業者はブーム4の先端に取り付けられたアーム5、ハーベスタリンク6、ハーベスタ装置100を視認しながら林業機械を運転することが多い。
【0021】
工具台160は、林業機械を作業現場に輸送した後、林業機械で作業現場を移動するときに、携帯用の工具を積載するために用いられる。ところで、林業機械が輸送時姿勢をとったとき、工具台160にハーベスタ装置100が干渉するという問題が生じ得る。しかしながら、工具台160を輸送時姿勢における林業機械のハーベスタ装置100部分と干渉しないように小型化すると、工具を積載することができない。本実施形態に係る工具台160は、上記不都合を是正するためになされたものである。
【0022】
工具台160は、作業者が、原木等の伐倒作業を行うに当たって携帯する工具、特に、チェーンソー120等の重量のある工具を積載するための工具台である。以下、本実施形態では、該工具台160に、携帯型のチェーンソー120が積載されるものとする。
【0023】
工具台160は、チェーンソー120を支える支持部160aと、該チェーンソー120の脱落を防止する手すり状の脱落防止部160b乃至160eが設けられ上面が開口している。この工具台160は、キャビン10の前方に突出して配設される。より詳細には、下部走行体1上を旋回する上部旋回体3の旋回に支障を生じさせないように、支持部160aは下部走行体1よりも上方の位置に配置されるようにする。そして、輸送時姿勢にしてアーム5を手前側に折畳みブーム4を前側に伏せたときに(
図2参照)、工具台160がハーベスタ装置100と干渉しない位置に脱落防止部160bが配置されるように工具台160を配設し、上部旋回体3の旋回フレーム3aにボルト等で固定する。なお、旋回フレーム3aではなくキャビン10の前方に取り付けられるガード(不図示)の下部にボルト等で固定してもよい。また、ガード(不図示)と構造上一体に構成されるようにしてもよい。
【0024】
本実施形態に係る林業機械において、下部走行体1は、クローラ式であり、旋回機構2を有する(
図2参照)。そして、輸送時姿勢のとき、ハーベスタ装置100は、下部走行体1の左右のクローラの間に収まるように配設される。したがって、工具台160の脱落防止部160bを、ハーベスタ装置100と干渉しない位置に配置するのが好ましい。
【0025】
また、林業機械が旋回したときに、生い茂っている木々に衝突しない位置に、脱落防止部160c、160dが配置されるように、工具台160を配設するのが好ましい。そして、林業機械の全幅から工具台160が突出しないようにする(
図2参照)。
【0026】
このような位置に配置することより、ハーベスタ装置100が工具台160に干渉するのを、より効果的に防止することができる。
【0027】
この工具台160に積載するチェーンソー120は、駆動源であるエンジンを有する本体部120aと鎖鋸部120bとを含んで構成されている。
【0028】
チェーンソー120全体が収納可能な大きさに工具台160を形成した場合、林業機械の全幅から突出しないように工具台160を林業機械に配設すると、輸送時姿勢をとったときにハーベスタ装置100が脱落防止部160b、160cに干渉する。また、林業機械が輸送時姿勢をとったときにハーベスタ装置100が脱落防止部160b、160cに干渉しない位置に工具台160を配設した場合、林業機械の全幅から脱落防止部160dが突出してしまう。これによって、山林等の作業現場で林業機械が旋回した場合に、木々に工具台160が衝突することになり、作業効率が悪化することになる。
【0029】
そのため、本実施形態では、チェーンソー120の重量部分である本体部120aが収納できる大きさに工具台160を形成する。そして、鎖鋸部120bを工具台160の外方に突出させるため、ハーベスタ装置100と対向する側の脱落防止部160bには、チェーンソー120の鎖鋸部120bを通す鎖鋸通し部160fを形成する。
【0030】
本実施形態では、この鎖鋸通し部160fは、チェーンソー120を上方から積載することができるように、鎖鋸部120bの厚さよりも大きなスリット状に形成されている。
【0031】
なお、脱落防止部160b乃至160eは、本体部120aの重量や林業機械移動中の振動等によりチェーンソー120が脱落しない高さに形成される。
【0032】
工具台160は以上のように構成されているため、輸送時姿勢を保持した林業機械のハーベスタ装置100部分が、工具台160に干渉しないようにトレーラーに積載することができ、林業機械の移動中に作業者がチェーンソーを携行する必要がないため、作業者の負担を軽減することができる。
【0033】
また、工具台付きの林業機械が輸送時姿勢を取るときに、ハーベスタ装置100等のアタッチメントが工具台と干渉してしまい、工具台やアタッチメントが破損する虞を効果的に防止することができる。
【0034】
なお、林業機械が輸送時姿勢をとりトレーラーに積載して作業現場まで輸送中の場合には、工具台160にチェーンソー120は積載しない。作業現場で林業機械が移動している場合に、キャビン10前方の工具台160にチェーンソー120を積載する。このため、ハーベスタ装置100が、チェーンソー120の鎖鋸部120bと干渉することはない。
【0035】
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0036】
本実施形態において、工具台160は、手すり状の脱落防止部160b乃至160eを例示して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、脱落防止部160b乃至160eは、支持部160aに所定間隔に格子状やピン状の部材を立設して形成してもよい。この場合は、格子部材やピン部材間の隙間が鎖鋸通し部160fの機能を有する。また、脱落防止部160b乃至160eは、支持部160aに、板状の部材を立設することによって形成してもよい。板状の部材は、透明であっても不透明であってもよいが、透明である方が、作業者の視界を確保できるため好ましい。また、手すり状の脱落防止部160b乃至160eは、メッシュ形状を有する面に形成されていてもよい。上述と同様に、作業者の視界を確保できる。
【0037】
また、本実施形態において、工具台160の支持部160aは、上面視で多角形状に形成されている場合を
例示して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、工具台160の支持部160aが、上面視で半円状に形成されていてもよい。
【0038】
また、本実施形態において、鎖鋸通し部160fは、チェーンソー120の鎖鋸部120bを上方から挿入可能なスリット状に形成された場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、チェーンソー120の鎖鋸部120bを側方から挿入可能な穴が形成されていてもよい。
【0039】
また、本実施形態において、脱落防止部160b乃至160eの高さを、チェーンソー120の本体部120aとほぼ同じくらいの高さに形成した場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、脱落防止部160b乃至160eは、本体部120aの高さの半分くらいの高さであってもよい。チェーンソー120の脱落を防止できる高さであればよい。
【0040】
また、本実施形態において、ハーベスタ装置100と対向する側の脱落防止部160bには、チェーンソー120の鎖鋸部120bを挿入可能な鎖鋸通し部160fが形成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されない。鎖鋸通し部160fの位置や個数に限定はなく、例えば、手すり状の脱落防止部160b乃至160eの各々に複数の鎖鋸通し部160fが形成されていてもよい。
【0041】
また、工具台160のキャビン10の幅方向の寸法は、チェーンソー120の全長よりも短かければよい。ただし、工具台160のキャビン10の幅方向の寸法は、チェーンソー120の本体部120aの幅よりは長くする必要がある。これにより、林業機械の移動中に工具台160からチェーンソー120が脱落するのを確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0042】
1・・・下部走行体 2・・・旋回機構 3・・・上部旋回体 3a・・・旋回フレーム 4・・・ブーム 5・・・アーム 6・・・ハーベスタリンク 7・・・ブームシリンダ 8・・・アームシリンダ 9・・・ハーベスタリンクシリンダ 10・・・キャビン(操縦室) 100・・・ハーベスタ装置 160・・・工具台 160a・・・支持部 160b、160c、160d、160e・・・脱落防止部 160f・・・鎖鋸通し部