(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297364
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】コンクリート舗装の養生用散水装置
(51)【国際特許分類】
E01C 7/10 20060101AFI20180312BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
E01C7/10
E04G21/02 104
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-40233(P2014-40233)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-165073(P2015-165073A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2017年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100167025
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100078330
【弁理士】
【氏名又は名称】笹島 富二雄
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 雅嘉
(72)【発明者】
【氏名】大西 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昌義
【審査官】
西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−255251(JP,A)
【文献】
特開2009−144321(JP,A)
【文献】
特開2011−153497(JP,A)
【文献】
特開2013−195186(JP,A)
【文献】
特開2009−222509(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0126433(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 7/10
E04G 21/02
E21D 11/10
G01N 27/22
G01N 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗設したコンクリート版の含水量情報を検出するセンサと、
前記コンクリート版に散水を行う散水装置と、
前記センサが検出した前記含水量情報に基づいて前記散水装置を作動させる制御装置と、
を有し、
前記センサは、前記含水量情報として前記コンクリート版の静電容量を検出するコンクリート舗装の養生用散水装置。
【請求項2】
前記センサは、コンクリート版の表面に接触する一対の電極板と、前記一対の電極板を所定間隔離間した状態で連結する絶縁板と、前記一対の電極板の間に所定電圧を印加する電源と、を有し、前記一対の電極板の間の静電容量を検出する請求項1に記載のコンクリート舗装の養生用散水装置。
【請求項3】
前記散水装置は、前記制御装置から無線通信された作動信号を受信して作動する請求項1又は2に記載のコンクリート舗装の養生用散水装置。
【請求項4】
前記散水装置は、水を圧送するポンプと、前記ポンプに接続されるとともに複数の散水用孔が形成されて前記ポンプにより圧送された水を前記散水用孔を介して散水する散水用ホースと、を有し、
前記散水用孔の直径は、0.1mm〜2mmである請求項1〜3のいずれか1つに記載のコンクリート舗装の養生用散水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養生用散水装置に関し、特に、舗設したコンクリート版の含水量情報に基づいて散水を行う養生用散水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの湿潤養生技術として、例えば、特許文献1に記載の湿潤養生技術が知られている。特許文献1に記載の湿潤養生技術は、コンクリートの表面の乾燥状態(湿潤状態)を検出して、コンクリート表面が乾燥していると判定した際にコンクリートに散水を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−153497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術は、コンクリートの表面の乾燥状態を非接触式の赤外線センサを用いて検出している。しかし、コンクリートの乾燥状態は、表面と内部とで異なる場合がある。このため、上記従来の技術は、コンクリートの乾燥状態を精度良く把握しているとは言えず、適切な散水が行われずにクラックの発生等によるコンクリートの品質低下を招くおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、コンクリートの乾燥状態を精度良く把握して、コンクリートの品質低下を防止できるコンクリート舗装の養生用散水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による、コンクリート舗装の養生用散水装置は、舗設したコンクリート版の含水量情報を検出するセンサと、前記コンクリート版に散水を行う散水装置と、前記センサが検出した前記含水量情報に基づいて前記散水装置を作動させる制御装置と、を備えるものである。
ここで、前記センサは、前記含水量情報として前記コンクリート版の静電容量を検出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コンクリート版の含水量情報を検出し、検出した含水量情報に基づいて散水装置を作動させるので、コンクリート版の乾燥状態を把握した上で適切な散水を行え、コンクリート版の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態によるコンクリート舗装の養生用散水装置を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態による、コンクリート版に載置されたセンサ及び制御装置の概略構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態において、センサが検出した含水量情報に対応してコンクリート版の乾燥状態を表示可能な表示装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるコンクリート舗装の養生用散水装置を示している。養生用散水装置は、舗設したコンクリート版1の養生のためにコンクリート版1に散水を行うものであり、コンクリート版1に載置されたセンサ2と、コンクリート版1に散水を行う散水装置3と、散水装置3を作動させる制御装置4と、を有する。
【0010】
コンクリート版1は、例えば、空港の駐機場、滑走路及び誘導路、湾港や工場などの機械ヤード、一般の道路などに適用されるコンクリート舗装に用いられるものである。このコンクリート版1は、コンクリート舗装を行う路盤上に、コンクリートを敷き均し、締固め、形成を行うことなどにより舗設される。その後の養生工程において、コンクリート版1がセンサ2を載置可能な程度に硬化した後に、コンクリート版1の上にセンサ2が載置され、さらにその上から養生シート9(
図1には図示されていない)でコンクリート版1の表面が覆われる。そして、コンクリート版1の近傍に散水装置3が載置され、散水装置3がコンクリート版1の表面を覆った養生シート9の上から散水して、コンクリート版1の養生が行われる。
【0011】
センサ2は、コンクリート版1の含水量情報を検出する。含水量情報は、コンクリート版1の含水量(含水比、含水率を含む)又はこれに相関する値であり、コンクリート版1の乾燥状態(湿潤状態)を示している。本実施形態において、センサ2は、含水量情報として静電容量を検出する。コンクリート版1の含水量によって、コンクリート版1の静電容量は変化する、即ち、コンクリート版1の含水量とコンクリート版1の静電容量とは相関している。このため、本発明に係るコンクリート舗装の養生用散水装置では、センサ2でコンクリート版1の静電容量を検出することにより、コンクリート版1の含水量、即ちコンクリート版1の表面だけでなくコンクリート版1の内部を含めた全体の乾燥状態を把握することが可能である。ここで、本実施形態において、センサ2は、静電容量を検出しているが、コンクリート版1の含水量に応じて変化する他の電気特性(例えば電気抵抗)を検出してもよい。また、電気特性以外の他の検出可能な含水量情報を検出してもよい。
【0012】
散水装置3は、発電機5と、散水用の水を収容するタンク6と、発電機5と電気的に接続され、タンク6に収容された散水用の水を圧送するポンプ7と、ポンプ7と接続されて、散水用の水を散水する散水用ホース8と、を有する。
【0013】
発電機5は、制御装置4と無線通信可能に接続されており、これにより、制御装置4と散水装置3との無線接続が実現される。また、発電機5は、無線信号を受信可能なアンテナ51を有する。
【0014】
タンク6は、水又は液体を収容できる任意のタンクであってよい。また、コンクリート版1の養生工程における散水量を考慮して適切な容量を有するものが選択される。例えば、タンク6は、養生工程における散水量全てを収容できるものでもよいし、全てを収容可能でなくとも途中で水を補給されて養生工程における散水を十分満足させるものであってもよい。さらに、このタンク6に変えて、水道設備から直接散水用の水が供給されてもよい。
【0015】
ポンプ7は、散水用の水を収容するタンク6内に設置される。このポンプ7による水の圧送は、コンクリート版1に略均一に散水できる適切な圧力で行われる。その圧力は、散水対象となるコンクリート版1の大きさ、もしくは後述の散水用ホース8の種類、規格等により適宜変更できるようにしてもよい。このようなポンプ7に変えて、例えば、水道の蛇口等の給水設備から水を受け入れ、その受け入れた水を適切な圧力に加圧して散水用ホース8に圧送できる装置が用いられてもよい。
【0016】
散水用ホース8は、複数の散水用孔が形成されてポンプ7により圧送された水を散水用孔を介して散水する。この散水用ホース8は、コンクリート版1に略均一に散水できるように、例えば、コンクリート版1に等間隔で設置され、散水用の水を霧状に散水することができる。具体的には、この散水用ホース8は、散水用ホース8内の水圧が略一定となるように一部が閉塞され、長手方向に複数の散水用孔が所定間隔で穿孔されて1以上の穿孔列数が形成され。この散水用孔の直径は、0.1mm〜2mmである。なお、散水用ホース8としては、市販の農業用ホースなどを利用することも可能である。
【0017】
制御装置4は、センサ2と電気的に接続され、センサ2が検出したコンクリート版1の含水量情報、即ち、本実施形態では静電容量に基づいて、散水装置3に散水装置3を作動させる作動信号及び散水装置3を停止させる停止信号を送信する。
【0018】
図2は、本発明の実施形態による、コンクリート版1上に載置されたセンサ2及び制御装置4の概略構成を示す。この図を参照して、さらに具体的にセンサ2及び制御装置4について説明する。コンクリート版1は、センサ2が載置され、さらにその上から養生シート9で覆われる。
【0019】
センサ2は、接触式のセンサであり、舗設したコンクリート版1の表面に接触する一対の電極板21と、その一対の電極板21を所定間隔離間した状態で連結する矩形形状の絶縁体22と、一対の電極板21に所定電圧(例えば、5V)のパルスを
印加する蓄電池23と、を有する。また、電極板21を所定間隔離間することにより、センサ2で検出されるコンクリート版1の静電容量が、極板間距離ではなく、コンクリート版1の含水量により変化するものとなり、コンクリート版1の含水量を静電容量により算出することができる。そして、センサ2は、舗設したコンクリート版1の表面に一対の電極板21が接触し、コンクリート版1の離間した2点間の静電容量を検出する。ここで、蓄電池23が、一対の電極板21の間に所定電圧を
印加する電源の一例として挙げられる。
【0020】
一対の電極板21の下面、即ち、コンクリート版1の表面に接触する下面には、コンクリート版1との接触を確実ならしめるため、例えば、導電スポンジなどの導電性を有する弾性体24がそれぞれ取り付けられる。電極板21への弾性体24の取り付けは、例えば、導電性を有する両面テープ、接着剤などの固定手段を使用することができる。電極板21の下面に弾性体24を取り付けることで、例えば、コンクリート版1の表面に微小な凹凸があっても、弾性体24が弾性変形して密着することから、離間した2点間の静電容量の検出精度を向上させることができる、なお、弾性体24は、耐熱性を有する部材を使用することが望ましく、また、劣化を伴うため、交換可能とすることが望ましい。
【0021】
制御装置4は、例えば、マイクロコンピュータ、電子回路などにより構成され、センサ2の蓄電池23から電力を供給されて作動する。また、制御装置4は、第1の閾値と第2の閾値の設定が可能であり、センサ2により検出された静電容量が第1の閾値以下である場合には作動信号を、静電容量が第2の閾値以上である場合には停止信号を散水装置3に無線送信する。なお、制御装置4は、蓄電池23とは異なる電源により作動してもよい。
【0022】
次に、
図1を再び参照して、上記実施形態によるコンクリート舗装の養生用散水装置の動作について説明する。
まず、コンクリート版1上に載置されたセンサ2は、コンクリート版1の含水量情報としてコンクリート版1の静電容量を検出する。次に、制御装置4は、センサ2が検出した静電容量を読み出して、読み出した値が第1の閾値以下である場合に散水装置3に当該散水装置3を作動させる作動信号を無線送信する。そして、散水装置3は、制御装置4から無線送信された作動信号を受信して作動する。
【0023】
散水装置3の作動は、具体的には、発電機5が制御装置4から作動信号をアンテナ51を介して受信する。発電機5は、制御装置4からの作動信号を受信すると稼働して発電を行い、ポンプ7に電力を供給する。ポンプ7は、発電機5により供給された電力で作動し、タンク6に収容された散水用の水を散水用ホース8に向けて十分な圧力で圧送する。圧送された散水用の水が、散水用ホース8に設けられた散水用の孔からコンクリート版1に略均一に散水される。
【0024】
その後、制御装置4は、センサ2から読み出した静電容量が第2の閾値を超える場合に散水装置3に当該散水装置3を停止させる停止信号を無線送信する。散水装置3は、制御装置4から無線送信された停止信号を受信して作動を停止する。具体的には、発電機5が制御装置4から停止信号をアンテナ51を介して受信する。そして、発電機5は、停止信号を受信すると稼働を停止してポンプ7への電力の供給を停止する。これにより、ポンプ7の散水用ホース8への水の圧送が停止し、コンクリート版1への散水が停止する。このほかに、散水装置3が一定時間散水したときに、発電機5が停止して、コンクリート版1への散水を停止させてもよい。
【0025】
この実施形態においては、制御装置4は、検出された静電容量が第1の閾値以下であるときに散水装置3に作動信号を送信したが、静電容量の変化の量を検出して、その変化の量が一定水準を超えたときに作動信号を送信してもよい。具体的には、制御装置4は、センサ2が最初に検出したコンクリート版1の静電容量を記憶し、その記憶した最初に検出した静電容量と、直近にセンサ2が検出したコンクリート版1の静電容量と、を比較して、直近の静電容量が最初に検出した静電容量に対して所定の割合以下になったときに散水を行うために散水装置3に作動信号を送信することができる。
【0026】
図3は、本発明の実施形態において、センサ2が検出した含水量情報に対応してコンクリート版1の乾燥状態を表示可能な表示装置10を示している。この表示装置10は、上記実施形態の構成に追加されうる。
【0027】
この表示装置10は、シグナルタワー11と、そのシグナルタワー11を支持する三脚12と、を有する。シグナルタワー11は、舗設されたコンクリート版1の含水量情報を、例えば、赤ランプ(乾燥状態)、黄ランプ(低湿潤状態)、青/緑ランプ(湿潤状態)の3段階で表示する。これにより、作業者がコンクリート版1の乾燥状態を視覚的に確認することができる。ここで、シグナルタワー11は、消費電力を低減するために、LED(Light Emitting Diode)を使用したものであってもよい。なお、コンクリート版1の含水量情報は、赤ランプ、黄ランプ、緑/青ランプの3段階に限らず、少なくとも、乾燥状態であるか否かを報知可能な2段階以上で報知すればよい。
【0028】
三脚12には、ソーラーパネル13が取り付けられる。このソーラーパネル13は、太陽からの光エネルギーを受けて発電し、図示しないインバータを介して、発電された電力が蓄電池23に蓄電される。このため、発電機、商用電源などの外部電源がない場所であっても、センサ2,制御装置4及び表示装置10を長時間に亘って作動させることができる。なお、ソーラーパネル13及びインバータが、太陽からの光エネルギーを受けて発電する太陽光発電装置の一例として挙げられる。また、
図3に示されているように、三脚12に、カラビナ等で連結されたチェーンにより、制御装置4及び蓄電池23が内蔵された制御ボックス14が着脱可能に吊り下げられる。このようにすれば、三脚12の下部に重量物が位置し、その重心が低くなるため、例えば、風などの外力が作用しても、表示装置10が倒れ難くすることができる。
【0029】
このように、表示装置10をセンサ2及び制御装置4に接続してコンクリート版1の乾燥状態を作業者が視覚的に確認可能とすることにより、養生用散水装置による散水の他、作業者が当該表示装置10によりコンクリート版1の乾燥状態を確認して散水を行うことができる。このようにして、散水の遅れによるクラックの発生等のコンクリート版1の品質低下をより確実に防止することができる。
【0030】
本実施形態では、散水装置3と制御装置4とは無線通信可能に接続されているが、有線で接続されて、その有線接続により作動信号及び停止信号の送受信を行ってもよい。
【0031】
本明細書において、静電容量は、正確な静電容量だけではなく、センサによって検出された電流値、電圧値、電荷量等により算出された静電容量の近似値、予測値を含む。
【符号の説明】
【0032】
1・・・コンクリート版、2・・・センサ、3・・・散水装置、4・・・制御装置、7・・・ポンプ、8・・・散水用ホース