特許第6297370号(P6297370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6297370血管アクセス用ガイドワイヤとの使用に適するカテーテル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297370
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】血管アクセス用ガイドワイヤとの使用に適するカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
   A61B18/14
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-51094(P2014-51094)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-180556(P2014-180556A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2017年2月2日
(31)【優先権主張番号】13/840,278
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーネ・ビー・フイマオノ
(72)【発明者】
【氏名】デビー・エスター・グルネワルド
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−514605(JP,A)
【文献】 特表2009−536870(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0082948(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0143293(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12−18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤとの使用に適するアブレーションカテーテルであって、
近位部分、遠位先端部、及び3D形状部を有する細長い管状部材と、
前記3D形状部上に取り付けられる少なくとも1つのリング電極と、を備え、
前記近位部分が前記ガイドワイヤと長手方向に整列し、前記3D形状部が前記ガイドワイヤの周囲に延び
前記管状部材の前記近位部分が少なくとも第1外側バンドを有し、前記遠位先端部が少なくとも第2外側バンドを有し、各バンドトンネルが、その内部に前記ガイドワイヤを通過させて収容するように構成される、アブレーションカテーテル。
【請求項2】
前記3D形状部が前記ガイドワイヤに巻きついている、請求項1に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項3】
前記3D形状螺旋構造を備える、請求項1に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項4】
ガイドワイヤとの使用に適するアブレーションカテーテルであって、
内部を延在する少なくとも第1ルーメンを有する細長い管状部材であって、3D形状部を有する細長い管状部材と、
前記3D形状部上に取り付けられる少なくとも1つのリング電極であって、アブレーションに適している少なくとも1つのリング電極と、
前記第1ルーメンの少なくとも遠位部分を通って延在する形状記憶を有する細長い支持部材であって、前記3D形状部を支持する予形成された3D形状を有する細長い支持部材と、
前記3D形状部の近位の少なくとも第1外側バンド、及び前記3D形状部の遠位の第2外側バンドであって、内部を前記ガイドワイヤが通過できるように構成される第1及び第2外側バンドと、を備える、アブレーションカテーテル。
【請求項5】
前記カテーテルが、内部を前記ガイドワイヤが通過できるように構成される遠位先端バンドを備える、請求項4に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項6】
前記3D形状が螺旋構造を備える、請求項4に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項7】
前記螺旋構造が、ニュートラルな状態において軸方向に伸び、かつ径方向に収縮し、張力がかけられると軸方向に短縮し、かつ径方向に広がるように構成される、請求項6に記載のアブレーションカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者体内の血管又は管状領域アクセス用ガイドワイヤとの使用に適するカテーテルに関する。詳細には、カテーテルは、血管又は管状領域に入る前に真っ直ぐに伸ばすことができる3D形状を有する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル法は、診断的処置及び治療的処置において使用される。例えば、心カテーテルは、高齢者の間で特に一般的かつ危険な病気としていまだに存在している、心房粗動及び心房細動などの心不整脈を含む様々な心疾患の治療のため、心臓におけるマッピング及びアブレーションに使用される。心不整脈の診断及び治療には、心臓組織、特に心内膜及び心臓容積の電気的特性をマッピングすること、並びにエネルギーの適用によって心臓組織を選択的にアブレーションすることが含まれる。そのようなアブレーションにより、望ましくない電気信号が心臓のある部分から別の部分へと伝播するのを止めるか又は修正することができる。このアブレーションプロセスは、非伝導性の損傷部位を形成することによって望ましくない電気経路を破壊するものである。損傷部位を形成するための様々なエネルギー供給の様式がこれまでに開示されており、心組織壁に沿って伝導遮断部分を形成するためのマイクロ波、レーザー、及びより一般的には高周波エネルギーの使用が挙げられる。マッピングに続いてアブレーションを行う2段階の手術においては、通常、1以上の電気センサー(又は電極)を収容したカテーテルを心臓の内部に前進させ、多数の点におけるデータを取得することによって心臓内の各点における電気活動が感知及び測定される。次いでこれらのデータが利用されて、アブレーションが実施される心内膜の標的領域が選択される。
【0003】
別のカテーテル法は、腎除神経術(RDN)である。これは、高血圧症の治療を目的とした高周波アブレーションを用いる、侵襲性が最小限の血管内カテーテルをベースとした処置である。交感神経系は、血圧に影響して制御する、特定のホルモンの放出を刺激する。高血圧症では、これらのホルモンが低用量で持続的に放出されることから、血圧が上昇する恐れがある。高血圧は、食餌療法、運動及び薬剤によって制御できる。しかしながら、抵抗性高血圧症(一般に、異なる種類の降圧薬を3種同時使用した場合でも、目標を上回って維持される血圧と定義される)は、手術を含むより積極的な治療を必要とする。抵抗性高血圧症は、プライマリケア医及び専門医の両者が直面している一般的な臨床的問題である。高齢及び肥満は、制御不良の高血圧症に対する最大の危険因子の2つであるため、集団がより高齢に、より肥満になると、抵抗性高血圧症の発生率が上がる可能性があるだろう。
【0004】
腎神経の切断が血圧を改善することが証明されている。しかしながら、この処置は手術、及びそれに付随するリスクを全て伴い、多くの場合、胸部から下の全体的な交感神経の除神経につながる。カテーテル系システムによって、腎神経のみを除神経、つまり麻痺させられることは、非常に重要な進歩である。小カテーテルを大腿動脈内に置き、腎動脈を通って神経へのアクセスを設ける。神経は、腎動脈周囲の外膜、つまり外層中に埋め込まれている。エネルギー源を腎動脈内に通し、カテーテルを通して低エネルギー送達つまり高周波アブレーションを行うことによって、その長さに沿って選択された位置で、出入りする腎交感神経が障害を受ける、すなわち「除神経される」。これによって、腎交感神経による求心性及び遠心性活動が減少し、血圧を下げることができる。
【0005】
心アブレーション及び腎アブレーションのどちらの場合も、血管又は管状領域内の閉じた内側周囲、つまり狭い帯域に沿ったアブレーションによって、血管又は管状領域の狭化、縮化、剛化を含む狭窄につながる場合がある。そのため、螺旋パターンなどの開放パターンを描く伝導遮断部分を形成するために、様々な3D設計を有するカテーテルが利用されており、血管内に閉じた環を形成することなく、径方向の伝導経路を遮断できる。しかしながら、このような3D設計は、3D形状を維持するための支持ワイヤと、患者の体内に入って進むカテーテルを真っ直ぐにするための収縮機構、つまりガイドワイヤ専用ルーメンとを典型的に必要とし、好ましくないことには、これらは全てカテーテルの外径を増す。外径が増すと、カテーテルの使用が極めて制限される場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、3D形状を有するカテーテルの、又はカテーテルの少なくとも一部の外径を増加させずに、ガイドワイヤと共に使用できる折り畳み式3D形状を有するカテーテルに対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ガイドワイヤとの使用に適するアブレーションカテーテルを目的とする。カテーテルは、腎動脈を含む血管又は管状領域をアブレーションするための、リング電極が取り付けられた3D形状部を有する。3D形状部、例えば螺旋部分は、血管に沿って異なる奥行きで複数の径方向位置において、血管の内周表面にリング電極が接触できるようにし、閉じた伝導ループ(これがある場合は血管狭窄のリスクが増す)を形成することなく、伝導遮断部分を形成する。
【0008】
ガイドワイヤとの使用に適する本発明のカテーテルは、近位部分、遠位先端部分、及び近位部分と遠位先端部分との間にリング電極が取り付けられた3D形状部を有し、ガイドワイヤの周囲に延びる3D形状部以外は、近位部分及び遠位先端部分がそれぞれガイドワイヤと長手方向に整列する、細長い管状部材を備える。3D形状部は形状記憶を有し、外力をかけると折り畳まり、つまり変形し、外力が除かれると所定の形状を再び取るようにできる。形状記憶によって、比較的容易に周囲組織を損傷させながら、患者の体内及び血管構造内を3D形状部が進むことが可能になる。また、ガイドワイヤが、カテーテルの少なくとも3D形状部を通って延在しないため、ガイドワイヤの収容のためにカテーテルの部位の寸法及び外径を大きくする必要がない。
【0009】
詳細な実施形態では、3D形状は螺旋型であり、この螺旋はガイドワイヤに巻きつくように構成される。ニュートラルな状態では、螺旋の半径が広がり、軸方向長さが収縮している。外力、例えば螺旋を縦に伸ばす張力がかけられると、螺旋型は、半径が収縮して軸方向長さが伸びた変形状態に移行し、患者の体内に進めるのに外傷性がより少ない輪郭を有する3D形状部のカテーテルをもたらす。有利には、本発明のカテーテルは、ガイドワイヤによる干渉、又はガイドワイヤへの干渉がなく、3D形状部のニュートラルな状態と変形状態との間の移行を可能にする。
【0010】
より詳細な実施形態では、管状部材は、近位部分及び遠位先端部分を通ってガイドワイヤを収容するように構成される少なくとも1つのルーメンを有する。少なくとも1つのルーメンは、管状部材の近位部分に第1ポート、及び遠位先端部分に第2ポートを有し、ポートのうち一方は、ガイドワイヤが少なくとも1つのルーメンから管状部材の外側に出ることができるように構成され、ポートのうちもう一方は、ガイドワイヤが管状部材の外側から少なくとも1つのルーメン内に入ることができるように構成される。
【0011】
別のより詳細な実施形態では、管状部材の近位部分は、第1外側トンネルをもたらす少なくとも第1バンドを有し、遠位先端部分は、第2外側トンネルをもたらす少なくとも第2バンドを有し、各外側トンネルは、その内部にガイドワイヤを通過させて収容するように構成される。
【0012】
カテーテルは、更なるルーメン、例えば、管状部材の3D形状部を支持するために3D形状に予形成された細長い支持部材用の1つのルーメン、及び、電極リード線又は管状部材を通って延在する任意の他の構成部品用の別のルーメンを有してよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明のこれらの及び他の特徴及び利点は、添付図面と合わせて考慮するとき、以下の詳細な説明を参照することにより、より十分に理解されるであろう。
図1】本発明の実施形態によるカテーテルの頂面図。
図2図1のカテーテルの管状部材の3D形状部の頂面図。
図2A】線A−Aに沿って取った、図2の管状部材の端部断面図。
図3図1のカテーテルの遠位区間の側面断面図。
図3A】直線A−Aに沿って取った、図3の遠位区間の端部断面図。
図4】腎動脈内に位置付けされた本発明のカテーテルの概略図。
図5A】血管又は管状領域内の展開前の本発明のカテーテルの側面断面図。
図5B】展開後の図5Aのカテーテルの側面断面図。
図5C】線C−Cに沿って取った、図5Bのカテーテルの端部断面図。
図5D】線D−Dに沿って取った、図5Bのカテーテルの端部断面図。
図5E】線E−Eに沿って取った、図5Bのカテーテルの端部断面図。
図5F】線F−Fに沿って取った、図5Bのカテーテルの端部断面図。
図5G】線G−Gに沿って取った、図5Bのカテーテルの端部断面図。
図6】本発明の別の実施形態によるカテーテルの管状部材の3D形状部の頂面図。
図6A】線A−Aに沿って取った、図6の3D形状部の端部断面図。
図6B図6のカテーテルの遠位先端部の側面図。
図7】本発明の別の実施形態による、灌流機能付きリング電極を有する遠位先端部分の側面断面図。
図7A】線A−Aに沿って取った、図7の遠位先端部分の端部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照すると、本明細書に示されて説明される本発明は、細長いカテーテル本体12と、リング電極21を有する3D構造、例えば3D部分17(例えば、示される実施形態では螺旋構造)を含む遠位先端部分15と、制御ハンドル16とを有するカテーテル10に関する。本発明の特徴によると、3D部分17は、血管又は管状領域の内側表面をアブレーションし、閉じたループラインでの遮断(これがある場合は血管又は管状領域の狭窄を引き起こす場合がある)を形成することなく、径方向伝導ラインを遮断するのに適している。
【0015】
図2及び2Aを参照すると、カテーテル本体12及び3D部分17は、少なくとも2つのルーメンを有し、そのうち1つがガイドワイヤ23専用であるマルチルーメンチューブ20(好ましくは少なくとも部分17について編組されていない)によってもたらされる細長い管状構成を備える。示される実施形態では、3つのルーメン24、25及び26があり、ルーメン25がガイドワイヤ23専用である。カテーテル本体12は、可撓性すなわち折り曲げ可能であるが、その長さに沿っては実質的に非圧縮性である。カテーテル本体は、任意の適切な構造とすることができ、任意の適切な材料で作製することができる。現時点で好ましい構成では、チューブ20はポリウレタン又はPEBAX製であり、制御ハンドル16を回転させると、それに伴ってカテーテル本体12が回転するように、ステンレス鋼などの埋め込まれた編組メッシュを備えてカテーテル本体のねじり剛性を増加させてよい。
【0016】
カテーテル本体の外径はそれほど重要ではないが、好ましくは約8フレンチ以下、より好ましくは5フレンチである。ガイドワイヤ23と、例えば、リング電極21用のリード線40と、遠位区間15の部分17の螺旋構造などの3D構造をもたらすための形状記憶を有する細長い支持部材27とを含む、対応する構成部品をルーメンが収容できるのであれば、各ルーメンの寸法はそれほど重要ではない。好ましい形状記憶材料はニチノールであり、ニチノールは、優れた耐久性、強度、耐食性、電気抵抗、及び温度安定性を有している。支持部材27として使用するニチノールワイヤは、好ましくは正方形の断面(例えば、約0.022cm×0.022cm[0.009インチ×0.009インチ])を有するが、断面は、円形又は方形(例えば、約0.015cm〜0.030cm[0.006インチ〜0.012インチ]の幅又は直径を有する)であってもよい。一実施形態では、ニチノールワイヤは、直径約10mmの螺旋形状に予形成される。
【0017】
リング電極21は、遠位区間15の3D部分17において、チューブ20の外側表面上に取り付けられる。リード線40は、制御ハンドル16から、ルーメン26によってカテーテル本体12及び螺旋状近位部分を通って延在する。リード線40をリング電極21に取り付ける1つの方法には、まず、チューブ20の側壁に側壁を貫通する小さい穴30(図2参照)を作ることが含まれる。このような穴は、例えば、レーザードリル加工、つまりチューブ20を通して針を刺し、永続的な穴が形成されるように充分に針を加熱することによって形成することができる。次に、リード線40をマイクロフックなどによって穴を通じて引き込む。次いでリード線40の末端部からコーティングを全て剥ぎ取り、リング電極21の下面に溶接した後、穴を覆う定位置へとリング電極をスライドさせ、ポリウレタン接着剤等によって定着させる。あるいは、各リング電極21は、リード線40をチューブ20の外側表面の周りに何度も巻き、外側に面した表面上のリード線自体の非導電性コーティングを剥離することによって形成されてもよい。そのような場合、リード線40はリング電極として機能する。複数のリング電極とは、約5〜12個、より好ましくは約8〜10個の範囲である。
【0018】
支持部材27は、制御ハンドル16から遠位区間15まで延在する。しかしながら、支持部材27が、カテーテル本体12全体の別の場所に近位端を有してもよいと理解される。一実施形態では、近位端は、カテーテル本体12の3D部分17より約25mm近位に位置する。
【0019】
支持部材27は、3D部分17にわたる部分を含む、チューブ20に付与される3D構造に予備成形される。支持部材は形状記憶を有し、外力がかからないときは3D構造(又は任意の他の予形成形状)を弾性的に保持し、外力がかけられると別の、つまり変形した形状を取り、外力が除かれると予形成形状に戻るようにする。示される実施形態では、支持部材27は、部分17に3D構造が付与された螺旋状遠位部分を有する。支持部材27の形状記憶のため、螺旋部分17は、外力(例えば、張力及び/又は圧縮力)がかけられると細長く真っ直ぐになり、外力が除かれると初期形状に回復する。図3及び3Aに示されるように、支持部材27の遠位端は、エポキシなどの接着剤、封止剤、つまり糊である栓36によって、ルーメン24内のチューブ20の遠位端に埋め込まれ、固定される。
【0020】
ガイドワイヤ23専用ルーメン23は、チューブ20の長さ全体に延在する。しかしながら、カテーテルがガイドワイヤ23と共に使用されるとき、ルーメン23は、カテーテル本体12内及びチューブ20の遠位端又はその付近において、ガイドワイヤ23のみによって占められる。図2及び3に示されるように、近位出口38及び遠位入口39は、螺旋部分17のすぐ近位及びすぐ遠位の、チューブ20内のルーメン23の側壁に、それを貫通して形成される。このように、ガイドワイヤ23は、カテーテル本体12全体のルーメン23内に収容され、出口38においてルーメン23及びカテーテルを出て螺旋部分17を迂回し、入口39においてルーメン23に再度入ることができる。
【0021】
図3及び3Aに更に示されるように、遠位区間15のほぼ真っ直ぐな遠位部分19は、その近位端が、螺旋部分17のマルチルーメンチューブ20の遠位端に取り付けられる、シングルルーメンのチューブ32である短い部分を含む。チューブ32の中央ルーメン34は、遠位先端部においてガイドワイヤ23がカテーテルを出るための軸部遠位先端出口52以外は、エポキシなどの封止剤、つまり糊であるドーム型栓50によって、遠位端がほとんど封止される。支持部材27の遠位端がドーム型栓50内に延在し、その内部で固定されてよいことが理解される。また、遠位先端部分がほぼ真っ直ぐな遠位部分19を有する必要はなく、ドーム型栓50が螺旋部分17の遠位端に位置してよいことも理解される。
【0022】
図4は、患者体内の血管又は管状領域、すなわち大動脈58と、腎臓60に伸びる腎動脈54を示す。大動脈58を介してアクセスされる、腎動脈54は、カテーテルアブレーションによる腎除神経の標的部位である。患者の体及び血管構造へのカテーテル挿入に先立ち、図1に示されるように、制御ハンドル16の遠位からカテーテル本体12内へ、ガイドワイヤ23をカテーテル10内に挿入し、カテーテルがガイドワイヤを進めて動かすことができ、患者の血管構造内を通過するカテーテルに先行するガイドワイヤによって誘導され得るようにする。図2Aに示されるように、ガイドワイヤは、カテーテル本体12全体を通過するルーメン23を通って進む。ガイドワイヤは、3D部分17の近位の近位ポート38から出て、螺旋部分の遠位の遠位ポート39からカテーテルに再び入ることによって螺旋部分17を迂回する。ガイドワイヤは螺旋部分17の外側にあるため、螺旋部分17は制約を受けずに外力が及ばず、支持部材27によって付与された3D構造を取ることを妨げない。
【0023】
標準的なガイドワイヤ法を用いると、つまり図5Aに示されるように、カテーテルが、ガイディングシース57と共に使用され得るガイドワイヤ23に先導されて患者の体及び血管に入って、カテーテルの遠位先端部(ドーム型栓50によって形成される)が血管内を進み、その後ほぼ真っ直ぐな遠位区間19が続く。ほぼ真っ直ぐな遠位部分17によって、患者の体及び血管内へのカテーテルの挿入が促進される。患者の体に入れる前に、3D部分17を、ガイドワイヤに対して近位方向に外部張力をかけることによって、軸方向に伸ばし、かつ径方向に収縮させ、3D部分17が、図5Aに示されるような、外傷性がより少なく/非外傷性がより大きい輪郭を呈するようにする。このように、3D部分17は血管内を進めるのにより操作しやすく、有利には、ガイドワイヤの収容に3D部分の外径を大きくする必要がなく、ガイドワイヤと共にカテーテルが使用可能である。
【0024】
血管54の内腔53内の治療部位において、遠位区間15は、ガイディングシース57の遠位端を遠位に超えて動かすことによって展開される。その後、ガイドワイヤ23を近位方向に引き、遠位端22が、遠位先端部ポート52内に戻り、ほぼ真っ直ぐな部分19の中央ルーメン34を通過するようにする。続いて、遠位端を遠位ポート39から出し、近位ポート38、及びルーメン25内に戻す。ガイドワイヤ23によるガイド及び制約がない場合、3D部分17は、展開されると3D形状を再度取り、例えば、径方向に広がり、かつ軸方向に収縮して図5Bに示されるような螺旋構造に戻り、リング電極21が血管54の内周表面に接触する。図5C〜5Gに示されるように、螺旋構造によって、各リング電極21が、血管に沿って異なる奥行きで様々な径方向位置(例えば、図5Cの360度、図5Dの270度、図Eの135度、図5Fの90度、及び図5Gの15度)に接触することが可能になり、閉じた円周方向ループ(これがある場合は血管の狭窄を引き起こし得る)を形成することなく、生じる損傷部位63が、血管周囲の神経を終端させ、かつ/又は遮断を形成するようにする。有利には、形状記憶支持部27は、3D部分17が予形成形状を有し、外力がかけられると変形し、外力が除かれると予形成形状を再び取ることを可能にする。示される実施形態のように、3D構造が螺旋構造であるとき、ガイドワイヤが螺旋構造の1つのループ(又は複数のループ)56(図2A及び4Aに示されるような)を通って延在するように、螺旋構造はガイドワイヤ23に巻きつくことができることが理解される。
【0025】
図7及び7Aは、複数の流体ポート70を有する少なくとも1つの灌流機能付きリング電極21’を備える遠位先端部分15を示す。灌流機能付きリング電極21’は、隆起した特徴部を有し、リング電極21’とチューブ20の外側表面との間に、環状間隙72が形成されるようにする。灌流液は、制御ハンドル16から灌流チューブ(図示せず)によって近位端において送り込まれ得る、ルーメン28を介してリング電極21’に送られる。この液は、ルーメン28から、ルーメンと灌流機能付きリング電極21’との間に形成される流路74を介して、環状間隙に送られる。その後、液は、リング電極に形成された流体ポート70を介してリング電極21の外側を通過する。
【0026】
本発明の代替の実施形態では、図6及び6Aに示されるように、カテーテル10’は、チューブ20の外側表面に取り付けられる複数のバンド、つまりリング61を備え、これはそれぞれ、外側トンネル62をもたらして、カテーテルとガイドワイヤ23とを結合する。カテーテル10’は、3D部分17の近位の少なくとも近位バンド、つまりバンド61Pと、3D部分17の遠位の少なくとも遠位バンド61Dと、を備え、外側トンネル62P及び62Dをもたらす。また、カテーテル10’は、カテーテルの遠位先端部のドーム型栓50において、又はその付近に遠位端バンド61T(図6B)を備え、外側トンネル62Tをももたらしてよい。示される実施形態では、各バンド61は、チューブ20及び32の外部周径より大きい周径を有し、余剰の周径をはさんで(及び接着されて)リングをチューブ20及び32上に固定し、ガイドワイヤ23が挿入される側部ループ、つまりトンネルを形成する。カテーテル本体12から3D部分17に伸びるチューブ20は、支持部材27用ルーメン24と、リード線40用ルーメン26と、を備える。しかしながら、ガイドワイヤ23はカテーテル20の外側に延在するため、ガイドワイヤ23用ルーメンはない。
【0027】
ガイディングシース57と共に使用され得るガイドワイヤに先導されて、カテーテル10’が患者の体及び血管に入るとき、ガイドワイヤに対して近位方向に外部張力をかけることによって、3D部分17を同様に軸方向に伸ばし、かつ径方向に収縮させ、3D部分17が、外傷性がより少なく/非外傷性がより大きい輪郭を呈するようにする。3D部分17が治療部位に到達すると、シース57の遠位端の先へと部分17を動かし、遠位先端部が遠位端トンネル、遠位トンネル、次に近位トンネルから出るまで、ガイドワイヤをカテーテル10に対して近位方向に引き、ここで3D部分17を軸方向に縮めて径方向に広げ、元の3D構造に戻す。カテーテル10と同様に、カテーテル10’のリング電極21は、血管54の内側表面55に接触する。螺旋構造によって、リング電極21が、血管に沿って異なる奥行きで複数の径方向位置に接触することが可能になり、閉じたループ(これがある場合は血管の狭窄を引き起こし得る)を形成することなく、生じる損傷部位が、血管周囲の遮断を形成するようにする。
【0028】
リング電極21は、生体適合性合金を含む、生体適合性金属製である。適当な生体適合性合金としては、ステンレス鋼合金、貴金属合金、及び/又はこれらの組み合わせから選択される合金が挙げられる。別の実施形態では、先端部電極は、約80重量%のパラジウム及び約20重量%のプラチナからなる合金で形成されるシェルである。別の実施形態では、シェルは、約90重量%の白金及び約10重量%のイリジウムからなる合金で形成される。リングは、単極又は双極であり得る。示される実施形態では、5組の双極リング電極を形成する10個のリング電極がある。各リング電極は、対応するリード線に接続される。先端部電極は、各リード線によって、アブレーションエネルギー源及び/又は適切なマッピング若しくはモニタリングシステムに電気的に接続される。
【0029】
上記の説明文は、現時点における本発明の好ましい実施形態に基づいて示したものである。本発明が関連する技術分野の当業者であれば、本発明の原理、趣旨及び範囲を大きく逸脱することなく、本願に述べた構造の改変及び変更を実施することが可能であることは認識されるところであろう。この点において、図面は必ずしも縮尺通りではない。したがって、上記の説明文は、本願に述べられ、添付図面に示される厳密な構造のみに関係したものとして読み取るべきではなく、むしろ、以下の最も完全で公正な範囲を有するとされる「特許請求の範囲」と符合し、かつそれらを補助するものとして読み取るべきである。
【0030】
〔実施の態様〕
(1) ガイドワイヤとの使用に適するアブレーションカテーテルであって、
近位部分、遠位先端部、及び3D形状部を有する細長い管状部材と、
前記3D形状部上に取り付けられる少なくとも1つのリング電極と、を備え、
前記近位部分が前記ガイドワイヤと長手方向に整列し、前記3D形状部が前記ガイドワイヤの周囲に延びる、アブレーションカテーテル。
(2) 前記3D形状部が前記ガイドワイヤに巻きついている、実施態様1に記載のアブレーションカテーテル。
(3) 前記3D部分が螺旋構造を備える、実施態様1に記載のアブレーションカテーテル。
(4) 前記管状部材が、前記近位部分を通って前記ガイドワイヤを収容するように構成される1つのルーメンを有する、実施態様1に記載のアブレーションカテーテル。
(5) 前記少なくとも1つのルーメンが、前記管状部材の前記近位部分に第1ポート、及び前記遠位先端部に第2ポートを有し、前記ポートのうち一方は、前記ガイドワイヤが前記少なくとも1つのルーメンから前記管状部材の外側に出ることができるように構成され、前記ポートのうちもう一方は、前記ガイドワイヤが前記管状部材の外側から前記少なくとも1つのルーメン内に入ることができるように構成される、実施態様4に記載のアブレーションカテーテル。
【0031】
(6) 前記管状部材の前記近位部分が少なくとも第1外側バンドを有し、前記遠位先端部が少なくとも第2外側バンドを有し、各バンドトンネルが、その内部に前記ガイドワイヤを通過させて収容するように構成される、実施態様1に記載のアブレーションカテーテル。
(7) ガイドワイヤとの使用に適するアブレーションカテーテルであって、
内部を延在する少なくとも第1ルーメンを有する細長い管状部材であって、3D形状部を有する細長い管状部材と、
前記管状部材の前記3D形状部を支持するため、前記第1ルーメンの少なくとも遠位部分を通って延在する形状記憶を有する細長い支持部材と、
前記管状部材の前記3D形状部上に取り付けられる少なくとも1つのリング電極であって、アブレーションに適している少なくとも1つのリング電極と、を備え、
前記3D形状部の近位の、前記管状部材の第1部分が、前記管状部材と長手方向に整列して延在し、前記管状部材の前記3D形状部が前記ガイドワイヤに巻きついている、アブレーションカテーテル。
(8) 前記3D形状部の近位及び遠位の、前記細長い管状部材中の第2ルーメンが、前記ガイドワイヤを収容するように構成される、実施態様7に記載のアブレーションカテーテル。
(9) 前記ガイドワイヤが前記3D形状部の外側にある、実施態様7に記載のアブレーションカテーテル。
(10) 前記第2ルーメンが、前記3D形状部の近位の第1ポート、及び前記3D形状部の遠位の第2ポートを有し、前記ポートのうち一方は、前記ガイドワイヤが前記第2ルーメンから前記管状部材の外側に出ることができるように構成され、前記ポートのうちもう一方は、前記ガイドワイヤが前記管状部材の外側から前記第2ルーメン内に入ることができるように構成される、実施態様7に記載のアブレーションカテーテル。
【0032】
(11) ガイドワイヤとの使用に適するアブレーションカテーテルであって、
内部を延在する少なくとも第1及び第2ルーメンを有する細長い管状部材であって、3D形状部を有する細長い管状部材と、
前記3D形状部上に取り付けられる少なくとも1つのリング電極であって、アブレーションに適している少なくとも1つのリング電極と、
前記第1ルーメンの少なくとも遠位部分を通って延在する形状記憶を有する細長い支持部材であって、前記3D形状部を支持する予形成された3D形状を有する細長い支持部材と、を備え、
前記第2ルーメンが、前記3D形状の近位の近位ポート、及び前記3D形状の遠位の遠位ポートを有し、一方のポートは、前記ガイドワイヤが前記第2ルーメンの内側から前記管状部材の外側に通過できるように構成され、もう一方のポートは、前記ガイドワイヤが前記管状部材の外側から前記第2ルーメンの内側に通過できるように構成される、アブレーションカテーテル。
(12) 前記カテーテルが、前記ガイドワイヤが通過できるように構成される軸方向通路を有する遠位先端部を備える、実施態様11に記載のアブレーションカテーテル。
(13) 前記3D形状が螺旋構造を備える、実施態様1に記載のアブレーションカテーテル。
(14) 前記螺旋構造が、ニュートラルな状態において軸方向に伸び、かつ径方向に収縮し、張力がかけられると軸方向に短縮し、かつ径方向に広がるように構成される、実施態様13に記載のアブレーションカテーテル。
(15) 前記螺旋構造が、血管に沿って異なる奥行きで前記血管の内側表面上の複数の径方向位置に接触するように構成される、実施態様13に記載のアブレーションカテーテル。
【0033】
(16) 前記カテーテルが前記少なくとも1つのリング電極用の少なくとも1つのリード線を備え、前記管状部材が第3ルーメンを備え、前記少なくとも1つのリード線が前記第3ルーメンを通って延在する、実施態様11に記載のアブレーションカテーテル。
(17) ガイドワイヤとの使用に適するアブレーションカテーテルであって、
内部を延在する少なくとも第1ルーメンを有する細長い管状部材であって、3D形状部を有する細長い管状部材と、
前記3D形状部上に取り付けられる少なくとも1つのリング電極であって、アブレーションに適している少なくとも1つのリング電極と、
前記第1ルーメンの少なくとも遠位部分を通って延在する形状記憶を有する細長い支持部材であって、前記3D形状部を支持する予形成された3D形状を有する細長い支持部材と、
前記3D形状部の近位の少なくとも近位バンド、及び前記3D形状部の遠位の遠位バンドであって、前記ガイドワイヤが通過できるように構成される第1及び第2バンドと、を備える、アブレーションカテーテル。
(18) 前記カテーテルが、前記ガイドワイヤが通過できるように構成される遠位先端バンドを備える、実施態様17に記載のアブレーションカテーテル。
(19) 前記3D形状が螺旋構造を備える、実施態様17に記載のアブレーションカテーテル。
(20) 前記螺旋構造が、ニュートラルな状態において軸方向に伸び、かつ径方向に収縮し、張力がかけられると軸方向に短縮し、かつ径方向に広がるように構成される、実施態様19に記載のアブレーションカテーテル。
図1
図2
図2A
図3
図3A
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6
図6A
図6B
図7
図7A