特許第6297374号(P6297374)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297374
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】制震装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/00 20060101AFI20180312BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20180312BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20180312BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   F16F7/00 F
   F16F15/04 A
   E04H9/02 321B
   F16F15/02 S
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-62086(P2014-62086)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-183802(P2015-183802A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】安達 大悟
(72)【発明者】
【氏名】横山 重和
(72)【発明者】
【氏名】西崎 誠
(72)【発明者】
【氏名】高橋 是友
(72)【発明者】
【氏名】小西 健夫
(72)【発明者】
【氏名】杉田 朋哉
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−213531(JP,A)
【文献】 特開2013−234455(JP,A)
【文献】 特開2012−225411(JP,A)
【文献】 特開2001−032883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00−15/36
F16F 7/00
E04H 9/00− 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物のフレーム内でフレーム面と平行となる3枚以上の鋼板と、各前記鋼板間に接着される粘弾性体と、を備え、各前記鋼板を、前記フレームを形成する一方の横架材側と他方の横架材側とに交互に連結してなる制震装置であって、
前記鋼板と前記横架材側との上下の連結部分の少なくとも一方に、前記横架材側と前記鋼板とを連結する連結部材が設けられて、前記連結部材に、最外に位置する前記鋼板の外側に位置して当該鋼板の外側への移動を規制する外側変形防止板と、前記鋼板の間に位置してその外側の前記鋼板の内側への移動を規制する内側変形防止板とがそれぞれ設けられていることを特徴とする制震装置。
【請求項2】
前記連結部材は、前記横架材側と一体に設けられることを特徴とする請求項に記載の制震装置。
【請求項3】
前記連結部材は、前記内側変形防止板と兼用されることを特徴とする請求項1又は2に記載の制震装置。
【請求項4】
前記外側変形防止板は、水平方向へ断続的に複数設けられることを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の制震装置。
【請求項5】
前記外側変形防止板は、前記連結部材と別体であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の制震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨構造等の建物のフレーム内に設けられる壁型の制震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物のフレーム内に設けられる制震装置としては、特許文献1に開示のように、上側の横架材に対して固定される第1制振板と、下側の横架材に対して固定されて第1制振板の厚み方向両側に位置する一対の第2制振板と、これら制振板の間に介在される粘弾性体とからなる壁型のものが知られている。特にここでは、フレーム面外への変形(座屈)を防止するために、第2制振板の両側に設けた一対のアングル部材を、制振板を貫通するボルトで連結して、第2制振板を両側から拘束するようにしている。また、特許文献2には、粘弾性体を挟む各プレートにおける横架材への固定側の端部に、端部が相手側のプレートの厚み方向の外側に位置して当該プレートの厚み方向の外側への移動を規制する座屈防止板をそれぞれ設けた制震装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−270208号公報
【特許文献2】特開2013−234455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の制震装置においては、第1制振板におけるボルトの貫通部分を横長の長孔とする必要があるが、粘弾性体のエリアで可動範囲が大きくなるとボルトとの干渉を避けるために長孔を長くする必要が生じ、長孔で削られる粘弾性体の面積を確保するために製品サイズの大型化を余儀なくされる。
特許文献2の制震装置においては、座屈防止板の採用によって長孔を設ける必要がなくなるが、専ら外側(フレームの厚み方向中心から離れる側)への変形を防止できるにとどまり、内側(フレームの厚み方向中心に近づく側)への変形防止には至らない。
【0005】
そこで、本発明は、製品サイズが大型化することなく、フレーム面と直交する外側と内側との双方向での鋼板の移動を好適に防止でき、座屈防止機能に優れた制震装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、建物のフレーム内でフレーム面と平行となる3枚以上の鋼板と、各鋼板間に接着される粘弾性体と、を備え、各鋼板を、フレームを形成する一方の横架材側と他方の横架材側とに交互に連結してなる制震装置であって、鋼板と横架材側との上下の連結部分の少なくとも一方に、横架材側と鋼板とを連結する連結部材が設けられて、連結部材に、最外に位置する鋼板の外側に位置して当該鋼板の外側への移動を規制する外側変形防止板と、鋼板の間に位置してその外側の鋼板の内側への移動を規制する内側変形防止板とがそれぞれ設けられていることを特徴とするものである。
なお、本発明でいう「外側」とは、フレーム面との直交方向でフレーム中心から離れる側を指し、「内側」とは、フレーム面との直交方向でフレーム中心に近づく側を指す。
請求項に記載の発明は、請求項の構成において、連結部材は、横架材側と一体に設けられることを特徴とするものである。
請求項に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、連結部材は、内側変形防止板と兼用されることを特徴とするものである。
請求項に記載の発明は、請求項1乃至の何れかの構成において、外側変形防止板は、水平方向へ断続的に複数設けられることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかの構成において、外側変形防止板は、連結部材と別体であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、フレーム面と直交する外側と内側との双方向での最外の鋼板の移動を好適に防止可能となり、優れた座屈防止機能を発揮できる。また、内側変形防止板と外側変形防止板との何れも粘弾性体に干渉せず、ダンパー部分に組み込まれないため、製品サイズが大型化することもない。
特に、連結部材に内側変形防止板と外側変形防止板とをそれぞれ設けたことで、連結部材の取付と同時に内側変形防止板と外側変形防止板とによる移動規制がなされ、施工が容易となる。
請求項に記載の発明によれば、請求項の効果に加えて、連結部材を横架材側と一体に設けたことで、連結部材自体の取付作業が不要となり、施工手順が削減できる。
請求項に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加えて、連結部材を内側変形防止板と兼用したことで、部品点数が少なくなってコスト削減に繋がり、重量アップも抑えられる。
請求項に記載の発明によれば、請求項1乃至の何れかの効果に加えて、外側変形防止板を水平方向へ断続的に複数設けたことで、最小限の構成で外側変形防止が可能となり、ここでも重量アップを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】形態1の制震装置の説明図である。
図2】形態1の制震装置の拡大図で、(A)が側面、(B)が正面をそれぞれ示す。
図3】形態1の連結部材の説明図で、(A)が側面、(B)が正面をそれぞれ示す。
図4】形態2の制震装置の拡大図で、(A)が側面、(B)が正面をそれぞれ示す。
図5】形態2の連結部材の説明図で、(A)が側面、(B)が正面をそれぞれ示す。
図6】形態3の制震装置の拡大図で、(A)が側面、(B)が正面をそれぞれ示す。
図7】形態3の連結部材の説明図で、(A)が連結部材の側面及び正面、(B)が外側変形防止板の側面及び正面をそれぞれ示す。
図8】形態4の制震装置の拡大図で、(A)が側面、(B)が正面をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[形態1]
図1は、制震装置の一例を示す説明図、図2はその拡大図で、制震装置10は、鉄骨構造の左右の柱(図示略)の間に架設される梁等の上下の横架材1A,1Bの間、すなわちフレーム内に配置される。ここでは上側の横架材1Aの下面に、正面視縦長長方形の上取付板2が固定され、上取付板2の下端に、水平方向の横板部3aとその中央に位置する鉛直方向の縦板部3bとからなるT字状の上受け板3が固定されている。一方、下側の横架材1Bの上面には、正面視縦長長方形の下取付板4が固定され、下取付板4の上端に、水平方向の横板部5aとその中央に位置する鉛直方向の縦板部5bとからなる逆T字状の下受け板5が固定されている。この上下受け板3,5の間に制震装置10が設けられている。
【0010】
制震装置10は、正面視が横長長方形で上受け板3の縦板部3bと同じ厚さとなり、フレームの厚み方向の中心に位置する中鋼板11と、その中鋼板11の厚み方向の前後に位置する同形状の一対の外鋼板12,12とを、互い違いで上下にずらした状態で重ね合わせて、両鋼板11,12の重合部分にそれぞれ正面視が横長長方形の粘弾性体13,13(図1,2の網掛け部分)を接着した積層構造となっている。ここでは中鋼板11の上部を連結部材14,14を介して上受け板3に連結し、外鋼板12,12の下部を下受け板5に連結している。
【0011】
連結部材14,14は、図3にも示すように、上側で上受け板3の縦板部3bを挟み、下側で中鋼板11の上部を挟んでフレームの厚み方向の前後に配置される正面視横長長方形の板体で、縦板部3bと中鋼板11とは、それぞれ左右方向に並べた4つのボルト15及びナット16によって連結されている。14a,14a・・はボルト15の貫通孔である。
また、各連結部材14の下端は、外鋼板12の上端を超えて下方へ突出し、取付状態で中鋼板11と外鋼板12との間に差し込まれる内側変形防止部17となっている。すなわち、連結部材14が内側変形防止板を兼用するものである。
【0012】
そして、各連結部材14の外面で下側のボルト15,15の間には、3つの外側変形防止板18,18・・が固着されている。この外側変形防止板18は、上端が各連結部材14の外面に連結され、上側が連結部材14の外側へ膨出した後、連結部材14と平行に下降する帯状で、下端を外鋼板12の外側に近接させている。ここでは中央側の2つのボルト15,15の間隔が広いことから、中央の外側変形防止板18を左右よりも幅広としている。
【0013】
ここで、各連結部材14は、粘弾性体13よりも厚みが小さくなっており、内側変形防止部17が中鋼板11と外鋼板12との間へ差し込まれた状態で、外鋼板12との間に隙間を生じさせている。また、外側変形防止板18の下端と外鋼板12との間にも隙間が生じるようになっている。これらの隙間は、フレームの厚み方向の内外双方への外鋼板12の移動を有効に防止するために、粘弾性体13の厚みの半分以下で設定されている。従って、例えば粘弾性体13の厚みが9mmであれば、内側変形防止部17と外鋼板12との隙間は3mm程度で設定され、外側変形防止板18と外鋼板12との隙間は1〜4mmで設定される。
一方、下側の連結部分において、外鋼板12,12の下部は、下受け板5の縦板部5bを挟んで、左右方向に並べた4つのボルト19及びナット20によって固定されている。この縦板部5bは、中鋼板11と2層の粘弾性体13,13とを合わせた厚みとなっている。この固定状態で、中鋼板11の下端は縦板部5bには接触しない。
【0014】
以上の如く構成された制震装置10においては、地震等によってフレームが水平方向に変位すると、上下の横架材1A,1Bが相反方向で水平に変位し、上取付板2を介して横架材1Aに連結される中鋼板11と、下取付板4を介して横架材1Bに連結される外鋼板12,12とを同様に相反方向で水平に変位させる。これにより、粘弾性体13,13がせん断変形して減衰作用を生じさせる。
【0015】
このとき、連結部材14,14の内側変形防止部17は、内鋼板11と外鋼板12,12との間に位置しているため、フレームの厚み方向の変位によって外鋼板12,12が内側(中鋼板11側)へ移動しようとしても、内側変形防止部17によって規制されることになる。また、外側変形防止板18の下端が外鋼板12の外側に位置しているため、フレームの厚み方向の変位によって外鋼板12,12が面外(外側)へ移動しようとしても、外側変形防止板18,18によって規制されることになる。
【0016】
このように、上記形態1の制震装置10によれば、中鋼板11と横架材1A側との連結部分に、最外に位置する外鋼板12,12の外側に位置して当該鋼板12,12の外側への移動を規制する外側変形防止板18と、鋼板11,12の間に位置して外鋼板12の内側への移動を規制する内側変形防止部17とをそれぞれ設けたことで、フレーム面と直交する外側と内側との双方向での外鋼板12の移動を好適に防止可能となり、優れた座屈防止機能を発揮できる。また、内側変形防止部17と外側変形防止板18との何れも粘弾性体13に干渉せず、ダンパー部分に組み込まれないため、製品サイズが大型化することもない。
【0017】
特にここでは、横架材1A側と中鋼板11とを連結する連結部材14に内側変形防止部17と外側変形防止板18とをそれぞれ設けているので、連結部材14の取付と同時に内側変形防止部17と外側変形防止板18とによる移動規制がなされ、施工が容易となる。
また、連結部材14は、内側変形防止部17を備えて内側変形防止板と兼用されているので、部品点数が少なくなってコスト削減に繋がり、重量アップも抑えられる。
さらに、外側変形防止板18は、水平方向へ断続的に複数設けられることで、最小限の構成で移動規制が可能となり、ここでも重量アップを抑えることができる。
【0018】
なお、上記形態1において、内側変形防止部は櫛歯状として外側変形防止板と同様に水平方向へ断続的に形成することもできる。
また、外側変形防止板は、数の増減は勿論、水平方向に繋がる一枚板で形成することもできる。
さらに、連結部材の下端を断続的に切り起こし形成して、内側を内側変形防止部、外側を外側変形防止部として使用することも可能である。
【0019】
次に、本発明の他の形態を説明する。但し、形態1と同じ構成部には同じ符号を付して重複する説明は省略する。
[形態2]
図4に示す制震装置10Aにおいては、上受け板3の縦板部が省略されて、図5に示すように、横板部3aの下面に連結部材14,14が、中鋼板11の厚みと同じ間隔をおいて直接連結されている。従って、ここでの連結部材14は形態1のものよりも上端が長くなっている。他は形態1と同じである。
【0020】
よって、地震等によってフレームが水平方向に変位し、制震装置10Aによる震動エネルギーの減衰の際、フレームの厚み方向の変位によって外鋼板12,12が内側へ移動しようとしても、内側変形防止部17によって規制されることになる。また、外側変形防止板18の下端が外鋼板12の外側に位置しているため、フレームの厚み方向の変位によって外鋼板12,12が外側へ移動しようとしても、外側変形防止板18,18によって規制されることになる。
【0021】
このように、上記形態2の制震装置10Aによれば、中鋼板11と横架材1A側との連結部分に、最外に位置する外鋼板12,12の外側に位置して当該鋼板12,12の外側への移動を規制する外側変形防止板18と、鋼板11,12の間に位置して外鋼板12の内側への移動を規制する内側変形防止部17とをそれぞれ設けたことで、フレーム面と直交する外側と内側との双方向での外鋼板12の移動を好適に防止可能となり、優れた座屈防止機能を発揮できる。また、連結部材14の内側変形防止部17と外側変形防止板18との何れも粘弾性体13に干渉せず、ダンパー部分に組み込まれないため、製品サイズが大型化することもない。
【0022】
特にここでは、連結部材14,14を横架材1A側の上受け板3と一体に設けているので、連結部材14自体の取付作業が不要となり、施工手順が削減できる。また、連結部材14に内側変形防止部17と外側変形防止板18とをそれぞれ設けているので、鋼板11,12の取付と同時に内側変形防止部17と外側変形防止板18とによる移動規制がなされ、施工が容易となる。
さらに、連結部材14は、内側変形防止部17を備えて内側変形防止板と兼用されているので、部品点数が少なくなってコスト削減に繋がり、重量アップも抑えられる。
そして、外側変形防止板18は、水平方向へ断続的に複数設けられることで、最小限の構成で移動規制が可能となり、ここでも重量アップを抑えることができる。
【0023】
なお、上記形態2においても、内側変形防止部は櫛歯状として外側変形防止板と同様に水平方向へ断続的に形成することもできる。
また、外側変形防止板は、数の増減は勿論、水平方向に繋がる一枚板で形成することもできる。
さらに、連結部材の下端を断続的に切り起こし形成して、内側を内側変形防止部、外側を外側変形防止部として使用することも可能である。
【0024】
[形態3]
図6に示す制震装置10Bにおいては、図7(A)にも示すように上受け板3の横板部3aに連結部材14,14が直接連結されるのは形態2と同じであるが、ここでは外側変形防止板21,21が連結部材14,14と別体となって、図7(B)にも示すように、連結部材14の外側に重なる重合部21aと、重合部21aの下端から外側へ膨出してから下降する垂下部21bとを折曲形成した横長長方形の一枚板となっている。21c,21c・・は重合部21aに設けたボルト15の貫通孔で、各重合部21aが上側のボルト15及びナット16によって各連結部材14と連結されることで、各垂下部21bの下端が外鋼板12,12の外側に近接するものである。
【0025】
よって、地震等によってフレームが水平方向に変位し、制震装置10Bによる震動エネルギーの減衰の際、フレームの厚み方向の変位によって外鋼板12,12が内側へ移動しようとしても、内側変形防止部17によって規制されることになる。また、外側変形防止板21の垂下部21bが外鋼板12の外側に位置しているため、フレームの厚み方向の変位によって外鋼板12,12が外側へ移動しようとしても、外側変形防止板21,21によって規制されることになる。
【0026】
このように、上記形態3の制震装置10Bによれば、中鋼板11と横架材1A側との連結部分に、最外に位置する外鋼板12,12の外側に位置して当該鋼板12,12の外側への移動を規制する外側変形防止板21と、鋼板11,12の間に位置して外鋼板12の内側への移動を規制する内側変形防止部17とをそれぞれ設けたことで、フレーム面と直交する外側と内側との双方向での外鋼板12の移動を好適に防止可能となり、優れた座屈防止機能を発揮できる。また、連結部材14の内側変形防止部17と外側変形防止板21との何れも粘弾性体13に干渉せず、ダンパー部分に組み込まれないため、製品サイズが大型化することもない。
【0027】
特にここでは、連結部材14,14を横架材1A側の上受け板3と一体に設けているので、連結部材14自体の取付作業が不要となり、施工手順が削減できる。
また、連結部材14は、内側変形防止部17を備えて内側変形防止板と兼用されているので、部品点数が少なくなってコスト削減に繋がり、重量アップも抑えられる。
【0028】
なお、この形態3では、外側変形防止板21を上側のボルト15及びナット16によって連結部材14に取り付けているが、上下の幅を短くして下側のボルト15及びナット16によって連結部材14に取り付けるようにしてもよい。このようにすれば外側変形防止板21に加わるモーメントが小さくて済み、外側変形防止板21自体の変形や損傷が起きにくくなる。
また、ここでも内側変形防止部は櫛歯状として水平方向へ断続的に形成することもできる。
さらに、外側変形防止板は、一枚板とせず、形態1,2のように複数の小幅の外側変形防止板を水平方向へ断続的に連結部材へ連結することもできる。
【0029】
[形態4]
図8に示す制震装置10Cにおいては、外鋼板12,12の外側にさらに最外鋼板22,22が配置されて5枚の鋼板11,12,22間に4層の粘弾性体13,13・・が積層される構造となっている。最外鋼板22,22は、上端を外鋼板12,12よりも上方へ突出させて、外鋼板12,12よりも上方位置でボルト15及びナット16によって中鋼板11及び連結部材14,14と連結されているが、連結部材14と最外鋼板22との間には、各ボルト15が貫通するリング状のスペーサ23が介在されて、連結部材14と最外鋼板22との間隔が保持されている。このボルト15、ナット16及びスペーサ23を用いた連結によって最外鋼板22の内外への移動は規制される。中鋼板11と外鋼板12との間に連結部材14の内側変形防止部17が差し込まれるのは他の形態と同じである。
【0030】
一方、ここでは外鋼板12,12の外側に、上端が外鋼板12と最外鋼板22との間に差し込まれる正面視横長長方形の内側変形防止板24,24が、ボルト19及びナット20によって外鋼板12と共に下受け板5に連結されている。また、内側変形防止板24,24の外側には、下端縁が内側変形防止板24の外面に固着されて外側へ膨出した後、上向きに突出して上端縁を最外鋼板22の外側に位置させる外側変形防止板25,25が設けられている。
【0031】
よって、地震等によってフレームが水平方向に変位し、制震装置10Cによる震動エネルギーの減衰の際、制震装置10Cの上側においては、連結部材14,14の内側変形防止部17が内鋼板11と外鋼板12,12との間に位置しているため、外鋼板12,12の内側への移動は規制される。また、最外鋼板22は、ボルト15,ナット16及びスペーサ23によって連結部材14に連結されているため、内外への移動は規制される。
一方、制震装置10Cの下側において、外鋼板12と最外鋼板22との間には、内側変形防止板24が位置しているため、最外鋼板22の内側への移動は規制される。また、最外鋼板22の外側には、外側変形防止板25が位置しているため、最外鋼板22の外側への移動は規制されることになる。
【0032】
このように、上記形態4の制震装置10Cによれば、外鋼板12と横架材1B側との連結部分に、最外鋼板22,22の外側に位置して当該鋼板22,22の外側への移動を規制する外側変形防止板25と、鋼板12,22の間に位置して最外鋼板22の内側への移動を規制する内側変形防止部24とをそれぞれ設けたことで、フレーム面と直交する外側と内側との双方向での最外鋼板22の移動を好適に防止可能となり、優れた座屈防止機能を発揮できる。また、連結部材14の内側変形防止部17と内側変形防止板24及び外側変形防止板25との何れも粘弾性体13に干渉せず、ダンパー部分に組み込まれないため、製品サイズが大型化することもない。
【0033】
なお、上記形態4においても、内側変形防止板の上端を櫛歯状としたり、外側変形防止板を複数水平方向へ断続的に設けたり、一枚板を切り起こして内側を内側変形防止部、外側を外側変形防止部としたりする設計変更が可能である。
【0034】
そして、上記形態1〜4に共通して、各形態では上側又は下側の連結部分にのみ外側変形防止板と内側変形防止板とを設けているが、上下の連結部分にそれぞれ外側変形防止板と内側変形防止板とを設けることもできる。
また、鋼板の数は上記形態に限らず、3枚以上であれば偶数枚であっても本発明は適用可能である。よって、内側変形防止板を複数設けて、最外の鋼板の移動規制に加えてその内側の鋼板の移動規制も行うようにしてもよい。
その他、フレームの構造も、上下受け板をなくして上下取付板に制震装置を直接又は連結部材を介して間接的に設置する構造とする等、適宜設計変更可能である。
【符号の説明】
【0035】
1A,1B・・横架材、2・・上取付板、3・・上受け板、4・・下取付板、5・・下受け板、10,10A,10B,10C・・制震装置、11・・中鋼板、12・・外鋼板、13・・粘弾性体、14・・連結部材、17・・内側変形防止部、18,21,25・・外側変形防止板、22・・最外鋼板、23・・スペーサ、24・・内側変形防止板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8