(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、第二種の吸収ヒートポンプは、熱の有効利用を図る機械であるため、寒い時期に運転する場合が少なくない。この機械の運転には冷却水が必要で、環境温度が低下すると冷却水温度も低下し、冷却水温度が低下すると再生器で濃縮される溶液濃度が濃くなる特性がある。溶液の濃縮が進行して溶液が結晶すると溶液が流れず運転ができなくなる。そこで、従来の吸収ヒートポンプは、溶液濃度・温度が結晶し始める状態に接近した段階で、溶液の結晶化を避けるために運転を停止する機能を備えていた。このように冷却水温度が低下したときは、運転を停止せざるを得なかった。また、起動時に冷却水温度が必要温度より低い場合には、吸収ヒートポンプの起動ができなかった。
【0005】
上述の課題に鑑み、供給される冷却水温度が低い場合でも運転が可能な吸収ヒートポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る吸収ヒートポンプ1は、例えば
図1に示すように、 冷媒の蒸気である冷媒蒸気Veを溶液Saに吸収させて希溶液Swにする際に生じる吸収熱で被加熱媒体Wqを加熱する吸収器10と; 希溶液Swを熱源媒体hで加熱して、希溶液Swから冷媒蒸気Veを発生させて希溶液Swより濃度の高い濃溶液Saとする再生器30と; 再生器30において発生した冷媒蒸気Vgから冷却水Cwで熱を奪い冷媒蒸気Vgを凝縮する凝縮器40と; 凝縮器40に供給される冷却水Cwに冷媒蒸気Vgから奪う熱以外の熱を与えて、冷却水Cwを昇温する冷却水昇温器51と; 冷却水昇温器51での昇温量を調節して、濃溶液Saの濃度が所定の濃度を越えないように維持する制御装置90とを備える。
以下、冷却水昇温器による冷却水の加熱は、凝縮器で冷媒により加熱される前に加熱するという意味で、予熱ともいう。
【0007】
このように構成すると、凝縮器に供給される冷却水に冷媒蒸気から奪う熱以外の熱を与えて、冷却水を昇温する冷却水昇温器と、冷却水昇温器での昇温量を調節して、濃溶液の濃度が所定の濃度を越えないように維持する制御装置とを備えるので、例えば冬季に冷却水温度が低下しても、運転を停止することのない吸収ヒートポンプを提供することができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1に示すように、上記本発明の第1の態様に係る吸収ヒートポンプ1において、 冷却水昇温器は、冷却水Cwを加熱媒体で加熱する冷却水熱交換器51である。
冷却水昇温器として、冷却水熱交換器51を使う場合は、昇温量は加熱による温度上昇幅として把握できる。
【0009】
加熱媒体としては、熱源媒体hを用いる必要はないが、熱源媒体hとすれば、別の加熱媒体を導くことなく、冷却水を加熱することができる。
このように構成すると、冷却水温度が低下したとき、冷却水の凝縮器への供給流量を絞ることなく、あるいは供給流量の絞りと併用して、あるいは供給流量を絞る場合でも絞り切れなくなった後で、さらに冷却水温度が低下した際に、運転を継続することのできる吸収ヒートポンプを提供することができる。また吸収ヒートポンプを起動しようとする際には、冷却水の供給量を絞っても冷却水温度は上昇しない。冷却水熱交換器を備えるときは、冷却水の入り口温度が低い場合でも、起動することができる。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の第3の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1に示すように、上記本発明の第2の態様に係る吸収ヒートポンプ1において、 冷媒の液である冷媒液Vfを熱源媒体hで加熱して、吸収器10で吸収させる冷媒蒸気Veを発生する蒸発器20を備え; 蒸発器20で冷媒液Vfを加熱することにより温度が低下した熱源媒体h、又は再生器30で希溶液Swを加熱して温度が低下した熱源媒体hを加熱媒体として冷却水熱交換器51に導く熱源流路23を備える。
熱源流路23は、熱源媒体hを蒸発器20と再生器30とに並列に流して、そのいずれか一方から導くものであってもよく、これらを直列に接続した上で、その後に続けて接続するものであってもよい。
【0011】
このように構成すると、蒸発器または再生器のいずれか一方、又は両方で利用した後の熱源媒体を利用することができ、熱を無駄にすることがない。凝縮器の凝縮温度は蒸発器の蒸発温度、あるいは再生器30の再生温度よりもはるかに低いので、このような利用が可能である。
【0012】
本発明の第4の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1の態様に係る吸収ヒートポンプ1において、 凝縮器40に供給される冷却水Cwの流量を調節する流量調節装置49を備え; 制御装置90は、冷却水昇温器51での昇温量の調節と併せて、流量調節装置49により冷却水Cwの流量を調節して、濃溶液Saの濃度が所定の濃度を越えないように維持する。
典型的には、冷却水Cwの入り口流量を調節して、冷却水出口温度T2を所定の温度以上に維持することにより、濃溶液Saの濃度が所定の濃度を越えないように維持する。
【0013】
このように構成すると、流量調節装置を備えるので、冷却水Cwの流量を調節して、濃溶液の濃度が所定の濃度を越えないように維持することができる。
【0014】
本発明の第5の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1に示すように、本発明の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1の態様に係る吸収ヒートポンプ1において、 凝縮器40で利用された冷却水Cwの温度を検出する冷却水出口温度検出器42とを備え; 制御装置90は、冷却水出口温度検出器42で検出した温度を所定の温度以上に維持するように調節することにより、濃溶液Saの濃度が所定の濃度を越えないように維持する。
【0015】
このように構成すると、制御装置は、冷却水出口温度検出器で検出した温度を所定の温度以上に維持するように調節することにより、濃溶液の濃度が所定の濃度を越えないように維持するので、吸収ヒートポンプの起動に対処することもできる。まだ冷媒液が流れていない起動時には、溶液も冷媒液も吸収ヒートポンプ中を循環していないので、凝縮器の凝縮温度を検出しても、その温度は濃溶液の濃度を反映するものではない。冷却水出口温度検出器を備える場合は、吸収ヒートポンプの起動をしようとする起動時も適切に制御可能とすることができる。
【0016】
本発明の第6の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1及び
図3に示すように、本発明の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1の態様に係る吸収ヒートポンプ1において、 冷却水温度検出器41又は42を備え、制御装置90は冷却水温度検出器41又は42が検出した温度が起動時の所定温度以上の場合に起動指令を出すように構成される。
冷却水温度検出器は、冷却水入口温度を検出するものであってもよく、冷却水出口温度を検出するものであってもよい。吸収ヒートポンプが起動していない状態では冷却水入口温度と出口温度は近接している(事実上等しい)からである。
【0017】
このように構成すると、制御装置は冷却水温度検出器が検出した温度が起動時の所定温度以上の場合に起動指令を出すように構成されるので、起動後に溶液濃度が高くなり過ぎることがなく、問題なく起動することができ、また定常運転を継続することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、供給される冷却水温度が低い場合でも運転が可能な吸収ヒートポンプを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0021】
まず
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る吸収ヒートポンプ1を説明する。
図1は、吸収ヒートポンプ1の模式的系統図である。吸収ヒートポンプ1は、吸収ヒートポンプサイクルを行う主要構成機器である吸収器10、蒸発器20、再生器30、及び凝縮器40と、制御装置90とを備える。さらに凝縮器40に供給する冷却水を加熱する冷却水昇温器としての冷却水熱交換器51を備える。第二種吸収ヒートポンプでは、吸収器10で加熱された被加熱媒体から蒸気を取出す場合は、被加熱媒体から気液を分離する気液分離器(不図示)を備える。本実施の形態における吸収ヒートポンプ1は、比較的利用価値の低い低温(例えば80℃〜100℃程度)の排温水を熱源媒体として再生器30及び蒸発器20に供給して、利用価値の高い被加熱媒体蒸気を気液分離器から取り出すことができるものである。
【0022】
なお、以下の説明においては、溶液に関し、ヒートポンプサイクル上における区別を容易にするために、性状やヒートポンプサイクル上の位置に応じて「希溶液Sw」や「濃溶液Sa」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「溶液S」ということとする。また、冷媒に関し、ヒートポンプサイクル上における区別を容易にするために、性状やヒートポンプサイクル上の位置に応じて「蒸発器冷媒蒸気Ve」、「再生器冷媒蒸気Vg」、「冷媒液Vf」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「冷媒V」ということとする。本実施の形態では、溶液S(吸収剤と冷媒Vとの混合物)としてLiBr水溶液が用いられており、冷媒Vとして水(H
2O)が用いられている。
【0023】
吸収器10は、被加熱媒体の流路を構成する吸収器伝熱管と、濃溶液Saを散布する濃溶液散布ノズルとを、吸収器缶胴の内部に有している。濃溶液散布ノズルは、散布した濃溶液Saが吸収器伝熱管に降りかかるように吸収器伝熱管の上方に配設されている。吸収器10は、濃溶液散布ノズルから濃溶液Saが散布され、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に吸収熱を発生させる。この吸収熱を、吸収器伝熱管を流れる被加熱媒体が受熱して、被加熱媒体が加熱されるように構成されている。吸収器10の下部には、散布された濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収して濃度が低下した希溶液Swが貯留される貯留部が形成されている。
【0024】
蒸発器20は、冷媒液Vfを加熱する熱源媒体としての熱源温水hの流路を構成する蒸発器伝熱管を、蒸発器缶胴の内部に有している。蒸発器20は、蒸発器伝熱管周辺の冷媒液Vfが蒸発器伝熱管内を流れる熱源温水hの熱で蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veが発生するように構成されている。蒸発器伝熱管の上流側には、熱源温水管21が接続されている。蒸発器伝熱管の下流側には、熱源温水管22が接続されている。蒸発器缶胴の底面には、蒸発器缶胴内に冷媒液Vfを供給する冷媒液管45が接続されている。
【0025】
吸収器缶胴と蒸発器缶胴とは、上部で接続されており、これにより、吸収器10と蒸発器20とが気相部で相互に連通している。吸収器10と蒸発器20とが気相部で連通することにより、吸収器10及び蒸発器20の内部の圧力が概ね等しくなっている。また、吸収器10と蒸発器20とが連通することにより、蒸発器20で発生した蒸発器冷媒蒸気Veを吸収器10に供給することができるように構成されている。
【0026】
再生器30は、希溶液Swを加熱する熱源媒体としての熱源温水hを内部に流す再生器伝熱管と、希溶液Swを散布する希溶液散布ノズルとを、再生器缶胴の内部に有している。再生器30は、散布された希溶液Swから冷媒Vが蒸発して濃度が上昇した濃溶液Saが下部に貯留されるように構成されている。再生器30では、希溶液Swが熱源温水hに加熱されることにより、希溶液Sw中の冷媒Vが離脱し、濃溶液Saと再生器冷媒蒸気Vgとが生成されるように構成されている。再生器伝熱管の上流側には、蒸発器20の蒸発器伝熱管下流部に接続された熱源温水管22が接続されている。このような接続により、蒸発器20の伝熱管を流れた後の熱源温水hが再生器30の再生器伝熱管に供給されるように構成されている。再生器30には、濃溶液Saの温度T4を検知する濃溶液温度計31が設けられている。
【0027】
再生器30の再生器伝熱管の下流側には熱源流路としての熱源温水管23が接続されている。熱源温水管23はさらに冷却水熱交換器51に接続されている。すなわち、再生器30の再生器伝熱管を流れた後の温水hが冷却水熱交換器51に供給されるように構成されている。
【0028】
再生器30の濃溶液Saが貯留される部分と吸収器10の濃溶液散布ノズルとは、濃溶液Saを流す濃溶液管35で接続されている。濃溶液管35には、再生器30の濃溶液Saを吸収器10に圧送する溶液ポンプ35pが配設されている。再生器30の希溶液散布ノズルと吸収器10の貯留部とは希溶液Swを流す希溶液管16で接続されている。濃溶液管35及び希溶液管16には、濃溶液Saと希溶液Swとの間で熱交換を行わせる溶液熱交換器38が配設されている。
【0029】
凝縮器40は、冷却媒体流路を形成する凝縮器伝熱管を、凝縮器缶胴47の内部に有している。凝縮器伝熱管には、冷却媒体としての冷却水Cwが流れる。凝縮器40は、再生器30で発生した再生器冷媒蒸気Vgを導入し、これから冷却水Cwで熱を奪って凝縮させるように構成されている。再生器冷媒蒸気Vgを冷却する前の冷却水Cwが流れる凝縮器40の入り口側の冷却水管47には、冷却水の入り口温度T1を検知する冷却水温度検知部としての冷却水入口温度計41が設けられている。凝縮器40の出口側の冷却水管48には、冷却水の出口温度T2を検知する冷却水温度検知部としての冷却水出口温度計42が設けられている。凝縮器40には、さらに缶胴内の冷媒温度、典型的には凝縮した冷媒液の温度T3を検知する冷媒温度計43が設けられている。冷媒温度計43は、凝縮器40内の凝縮温度(飽和温度あるいは露点温度とも呼ぶ)を検知する。凝縮器40には凝縮した冷媒液Vfを蒸発器20に送る冷媒液管45が接続されている。冷媒液管45には、冷媒液Vfを蒸発器20に圧送するための冷媒ポンプ46が配設されている。
【0030】
凝縮器40の入り口側の冷却水管47には、冷却水流量調節装置としての冷却水ポンプ49、その下流側には、冷却水Cwを冷却水管47から冷却水熱交換器51にバイパスする三方弁50が設けられている。三方弁50には、バイパス配管52が接続されている。バイパス配管52に冷却水熱交換器51が配設されている。バイパス配管52は、冷却水熱交換器51を出たあと、冷却水入口温度計41の上流側で冷却水配管47と再び合流する。冷却水熱交換器51には、入口側に熱源温水管23と出口側に熱源温水管24が接続されている。このように構成されているので、冷却水熱交換器51では、冷却水Cwと熱源温水hとが熱交換して、冷却水Cwが加熱され温度が上昇する。すなわち、昇温される。冷却水入口温度T1が昇温量としての温度上昇幅だけ上昇する結果、溶液の濃度に直接的に影響を与える出口温度T2が上昇する。実際に調節すべき昇温量としての温度上昇幅は、本実施の形態では、凝縮器を出る冷却水の出口温度T2の上昇幅である。すなわち、冷却水熱交換器51を作動させないときと比較した作動させたときの温度上昇幅である。結局は、冷却水の出口温度T2を検出して、その温度がTHLとTHHの間にあるように昇温量を調節する。ただし、冷却水の入り口温度T1と出口温度T2と冷却水の水量及び第二種ヒートポンプの運転負荷には、相関関係があるので、相関を表す相関式を導入することにより調節すべき対象を入口温度T1の上昇幅としてもよい。
【0031】
図1(b)の部分図に示すように、冷却水熱交換器51に代えて冷却水熱交換器53としてもよい。冷却水熱交換器53は、冷却水管47を流れる冷却水Cwの全量を冷却水熱交換器53に流し、熱源温水管23を三方弁54でバイパスして冷却水熱交換器53に流すように構成されている。三方弁54は、熱源温水管23に配設され、熱源温水管23を流れる熱源温水hを、冷却水熱交換器53、又はその下流側の熱源温水管24に、選択的に流す。以上の三方弁50又は54は、一体で三方弁に構成した弁であってもよいし、二方弁を2個組み合わせて構成した弁であってもよい。
【0032】
再生器缶胴と凝縮器缶胴とは、上部で接続されており、これにより、再生器30と凝縮器40とが気相部で相互に連通している。再生器30と凝縮器40とが気相部で連通することにより、再生器30及び凝縮器40の内部の圧力が概ね等しくなっている。また、再生器30と凝縮器40とが連通することにより、再生器30で発生した再生器冷媒蒸気Vgを凝縮器40に供給することができるように構成されている。
【0033】
制御装置90は、吸収ヒートポンプ1の運転を制御する機器であり、制御部91と、演算部92とを有している。制御部91は、起動指令部91−1と濃度維持部91−2とを有する。制御装置90は、特に濃度維持部91−2は、冷却水ポンプ49及び三方弁50と信号ケーブルで接続されており、冷却水ポンプ49の発停や回転速度の調節、及び三方弁50の切り替えやバイパス流量の調節を行うことができるように構成されている。本実施の形態では、冷却水ポンプ49は、回転速度を調節することにより冷却水流量を調節して、冷却水の出口温度を所定の温度に制御する。所定の温度に制御するとは、所定の幅を持った温度範囲に維持するような制御であるが、P制御、PI制御、又はPID制御により設定温度に制御するものであってもよい。三方弁50は、ステップ状に開閉を行ってバイパス流量の調節を行うことにより冷却水の温度を所定の温度範囲に維持するように制御するように構成する。ステップ状の開閉とは、全閉と全開との間の2位置の開閉であってもよいが、全閉と前開との間で複数段階に開度を変化させる開閉であってもよい。又は、連続的に開度を調節(バイパス流量を調節)して冷却水の温度を所定の設定温度に制御するように構成してもよい。三方弁50は、連続的に開度を調節して、冷却水の温度を連続的に制御してもよい。
【0034】
演算部92は、冷媒温度計43で検知した温度(凝縮器40の凝縮温度すなわち露点温度)と濃溶液温度計31で検知した濃溶液温度から、濃溶液の濃度を演算する。そして、この値を記憶する。
【0035】
図2のデューリング線図を参照して、吸収ヒートポンプ1の作用を説明する。図中、A1とA2は吸収器10内の溶液Sの状態を表す点であり、G1とG2は再生器30内の溶液Sの状態を表す点である。Eは蒸発器20、Cは凝縮器40内の冷媒Vの状態を表す点である。吸収器10内では、A2(濃溶液Sa)からA1(希溶液Sw)に変化し、再生器30内ではG1(希溶液Sw)からG2(濃溶液Sa)に変化する。A1、A2、G1、G2、E、Cは、冷却水温度が正常であり、溶液濃度が正常な運転状態にあるときの点である。一方、冷却水温度が低いため溶液濃度が高過ぎる運転状態にあるときの対応する点を、A1’のようにプライムを付して表している。破線で示すサイクルは、冷却水温度が低い場合、実線で示すサイクルは、冷却水温度を上昇させた場合である。
【0036】
吸収ヒートポンプサイクルは、A2→A1→G1→G2→A2のように回る。この例では吸収ヒートポンプサイクルは第二種であり、熱源媒体の入口温度は102℃、発生蒸気圧力は0.4MPaGとして計算したものである。この例では、熱源媒体は80〜100℃の温水ではなく、分かり易いように102℃の蒸気、または加圧水としている。
まず冷却水温度が低い場合を説明する。冷却水の入り口温度は15℃である。この場合、A1’、G1’では、希溶液Swの濃度は63.6%であり、A2’、G2’では、濃溶液Saの濃度は、67.9%となる。図示の通り、G2’が結晶線に接近している。すなわち吸収ヒートポンプサイクル、A2’→A1’→G1’→G2’→A2’の中で、再生器30の溶液出口配管35やポンプ35Pで結晶の恐れがある状態である。
【0037】
次に冷却水の流量を約15%に絞った場合を説明する。吸収ヒートポンプサイクルは、A2→A1→G1→G2→A2で示される。この場合は、A1、G1では、希溶液Swの濃度は62.1%であり、A2、G2では、濃溶液Saの濃度は、64.6%となった。図示の通り、点G2が結晶線から十分に離れており、正常な運転状態となっている。ちなみに凝縮器40の凝縮温度(露点温度)は、C’で23.2℃が、Cで37.0℃となった。また蒸発器20の蒸発温度(露点温度)は、E’で93.5℃、Eで97.2℃である。熱源媒体の入口温度が同一の102℃であるにもかかわらず、蒸発温度に差があるのは、冷却水温度が低く且つ水量が多い場合は、水量を絞った場合よりも汲み上げる熱量が多くなるからである。
【0038】
水量を絞る代わりに、冷却水を予熱して入口温度を32℃とした場合も、冷却水の流量を絞った場合とほぼ同じ状態となる。
【0039】
上記の例では、冷却水の流量を約15%としたが、通常は30%程度が冷却水量の下限である。したがって、冷却水の流量を30%とした段階で、濃溶液の濃度がまだ高すぎるときは、
図1に示すように、冷却水Cwをバイパスして冷却水熱交換器51に流し、熱源温水hにより冷却水Cwを予熱する。この場合は、
図2のデューリング線図で説明したように、G2における濃溶液の濃度は結晶し始める状態から離れ十分に安全領域に入る。
【0040】
図1(a)に示すように、冷却水熱交換器51にバイパスした冷却水Cwを流す構成の場合は、冷却水Cwの流量を約30%に絞った後の冷却水Cwを受け入れれば足りるので、冷却水熱交換器51をコンパクトに設けることができる。
【0041】
一方、
図1(b)の部分図に示すように、冷却水管47を流れる冷却水Cwの全量を冷却水熱交換器53に流し、熱源温水管23を三方弁54でバイパスして冷却水熱交換器53に流すように構成するときは、冷却水の流量を絞らずに、冷却水熱交換器53での予熱だけで冷却水温度を上昇させることができ、あるいは冷却水ポンプ49の回転速度を下げて冷却水の流量をある程度だけ絞れば、あとは冷却水熱交換器53での予熱により冷却水温度を上昇させることができるので、凝縮器40への冷却水流量を高く維持できる。このように構成すると、凝縮器伝熱管の冷却水側のスケールの付着を抑えることができる。
【0042】
図3のフロー図を参照して、吸収ヒートポンプ1の起動時の起動指令部91−1による制御を説明する。吸収ヒートポンプ1を起動しようとするときは、冷却水の流量を下記に述べる下限流量迄予め絞っておく(ステップS1)。冷却水ポンプを回転数制御して冷却水流量を制御すれば、起動時の冷却水量を絞ることにより冷却水ポンプの運転に必要な電力を少なくできる。すなわち、熱より電力の削減を先に行う。
次に、冷却水の温度を検出する(ステップS2)。以下冷却水の温度は常時測定を続ける。冷却水の温度は冷却水出口温度計42により検出する冷却水出口温度T2であるが、起動時は冷却水入口温度計41により検出する冷却水入口温度T1であってもよい。吸収ヒートポンプ1の起動前は、凝縮器40は作動していないので、冷却水の温度は入口も出口もほぼ等しいからである。冷却水出口温度計42を使用するときは、起動後もそのままこれを使用することができる。起動時に冷却水入口温度計41を使用したときは、連続運転に入ったときに、冷却水温度の検出を冷却水出口温度計42に切り替える。
【0043】
次に、検出した温度が起動時の所定の温度TSよりも高いかを判断する(ステップS3)。起動時の所定の温度TSは、以下のように設定する。
冷却水入口温度が低く、例えば5〜10℃の場合、これが起動可能温度例えば20℃(起動可能温度を連続運転時に想定される冷却水入口温度15℃とすると、起動直後は運転負荷が低いので、冷却水出口温度は目標とする35℃に達せず、再生器の溶液濃度も濃くなるため、この入口温度より高い温度に設定するのが良い)に達してから吸収ヒートポンプを起動する。すなわち、起動時の所定の温度TSは、15℃以上25℃以下とするとよいが、典型的には20℃である。起動をしようとする起動前は、熱源温水hは蒸発器・再生器内を流れているが吸収ヒートポンプは起動していない状態である。すなわち、冷媒ポンプ、溶液ポンプはまだ稼働していない。
【0044】
ステップS3の判断が、NOのとき(低いとき)は、冷却水熱交換器51により冷却水を予熱する(ステップS4)。ここで、予熱するには、温度差(TS−T)に応じた熱量を加える。その際、冷却水熱交換器に入る加熱源流体の流量の増加もしくは温度の上昇あるいはその両者を同時に行うが、いずれも漸増して行うと良い。そしてステップS3に戻る。ここでYES(高い)となったら、吸収ヒートポンプ1を起動する(ステップS5)。このとき、前提として冷却水の流量を下限まで絞ってあるので、冷却水の予熱に必要な時間が短縮されて速やかに起動でき、起動条件が整った後、実際に起動して連続運転に移行するときに、移行がスムーズに行われる。また、冷却水量が下限流量であることから冷却水予熱に必要な熱量が少なくて済み、熱の有効利用を一層向上させることができる。起動後は
図4のフローに移行する。
【0045】
図4のフロー図を参照して、吸収ヒートポンプ1の起動後の濃度維持部91−2による制御を説明する。起動できたら予熱を徐々に減らすとよい。このようにすると、関連機器の事情から起動時に冷却水量を下限まで絞らなかった場合でも、冷却水の流量の調節が予熱に優先して行われる制御に移行できる。冷却水の流量を下限まで絞ることなく予熱したときは、まず冷却水量を絞るようにしてもよい。予熱に必要な熱量が少なくて済み、熱の有効利用を一層向上させることができる。ここでは、冷却水量を下限量迄絞って起動した場合について説明する。
【0046】
まず冷媒温度計43により凝縮器40での凝縮温度T3を検出する。ただし、凝縮温度T3と冷却水の出口温度との間には相関関係があるので、冷却水の温度であってもよい。通常は凝縮温度T3は、冷却水の出口温度T2よりも2〜3℃程度高い。この温度は、常時検出する(ステップS6)。本実施の形態では、凝縮温度T3ではなく、冷却水出口温度T2を検出するものとする。間接的に凝縮器40内の冷媒温度を検出していることになる。このように構成すると、
図3で説明した起動時のステップS2と共通して冷却水出口温度計42を使用できる。起動時は、冷却水入口温度計41でもよかったが、ここで検出する冷却水温度は冷却水出口温度計42により検出する冷却水出口温度T2である。
また、凝縮温度や冷却水出口温度の代わりに凝縮器内圧を検出して、その圧力を演算部で温度換算しても良い。凝縮温度と凝縮器内圧とは、デューリング線図(
図2)の濃度0の線で表される、1対1の相関関係があるからである。或いは、温度換算しなくとも圧力値をそのまま制御対象値としても良い。その場合には、以下のTH温度より2〜3℃高い露点から算出される圧力が目標値となり、制御対象は常時検出される凝縮器内圧となる。圧力を使うときは、以下の記載において、例えば第一の所定の温度は、第一の所定の圧力のように読み替える。あるいは温度、圧力のいずれにも適用できるように所定の値と言ってもよい。
【0047】
以下、冷却水の出口温度T2が第一の所定の温度THを設定値とし、この温度になるように制御する。以下の実施の形態では、第一の所定の温度には、下限THLと上限THHがあるものとし、冷却水の出口温度に幅があるものとし、下限THLと上限THHの間にあるように制御するものとして説明する。THは典型的には35℃、THLは34℃、THHは36℃である。この温度は第二種ヒートポンプによって数度変化するものであるが、ここでは、この温度を用いて説明する。
【0048】
まず、冷却水温度T2がTHHより低いかを判断する(ステップS7)。NOのとき(THHより高いとき)は、冷却水が予熱中かを判断する(ステップS8)。YES(予熱中)のときは、予熱を中止又は減らす(ステップS9)。ここで、予熱を減らすには、冷却水熱交換器に入る加熱源流体の流量の減少もしくは温度の低減あるいはその両者を同時に行う。その際、いずれも温度差(THH−T2)に応じて漸減するのが良い。尚、起動後の冷却水出口温度は入口温度より高くなるが、第二種ヒートポンプの運転負荷に応じて運転負荷が大であるほど出口温度は入口温度に対して高くなるので、起動後は冷却水の予熱を中止または減らすことになる場合が多い。このように、起動後は、予熱に必要な熱量は徐々に少なくなり、熱の有効利用を一層向上させることができる。また、予熱が終了後、冷却水量を増大する制御に入ることで、冷却水量を漸増すれば冷却水量の漸増に伴って第二種ヒートポンプの負荷を漸増させることができ、第二種ヒートポンプの各部材温度の熱衝撃を防ぎながら少しずつ高くすることができて、部材の長寿命化に役立つ。
そしてステップS7に戻る。ステップS8でNOの(予熱中ではない)ときは、冷却水量Fが常用水量FHと比較して少ないか比較(ステップS10)する。YESの場合(FHより少ない場合)には、冷却水の水量Fを、常用水量FHを最大量として、増とする(ステップS11)。ここで、冷却水量Fは流量差(FH−F)に応じて漸増するのが良い。そしてステップS7に戻る。ステップS10の判定が、NOの場合(FHと同量以上の場合)には、冷却水量を増やすことはできないので、そのままステップS7に戻る。なお、常用水量FHまで増としても、依然として上限温度THHよりも高いのは、真夏で気温が高いような場合であり、吸収ヒートポンプの出力が低下することになる。しかしこのような条件では、冷却水温度が原因で溶液が結晶化する心配はない。
【0049】
ステップS7でYESの(THHより低い)ときは、冷却水温度T2がTHLよりも高いかを判断する(ステップS12)。YESの(THLよりも高い)ときは、ステップS7に戻る。冷却水温度T2が、THLとTHHの間にある限りは、あるいはTHである限りは、ステップS7とステップS12との間を回り安定した運転が継続される。
【0050】
ステップS12でNOの(THLよりも低い)ときは、冷却水量Fが下限水量FLよりも多いかを判断する(ステップS13)。FLは典型的には常用流量の好ましくは15%以上、50%以下、さらに好ましくは20%以上、40%以下、典型的には30%である。ステップS13でYES(冷却水流量Fが下限値FLよりも多い)と判断したときは、流量を減とする(ステップS14)。ここで、冷却水量Fは流量差(F−FL)に応じて漸減するのが良い。そして、ステップS7に戻る。
【0051】
ステップS13でNOの(FLよりも少ない)とき、すなわち、冷却水流量が下限値と同等あるいは少ないと判断したときは、それ以上冷却水の流量を減らすことができないので、冷却水を冷却水熱交換器により予熱する(ステップS15)。ここで、予熱するには、温度差(T2−THL)に応じた熱量を加える。その際、冷却水熱交換器に入る加熱源流体の流量の増加もしくは温度の上昇あるいはその両者を同時に行うが、いずれも漸増して行うと良い。
そしてステップS12に戻る。このようにして、冷却水の水量を絞って出口温度を上昇させきれないときも、予熱により温度を上昇させることができる。
ここで、冷却水熱交換器を、設置場所における真冬における冷却水の最低温度(極限的には0℃)と前記下限流量、その時に供給される加熱源流体の温度と流量を想定し、冷却水を第二種ヒートポンプが必要とする温度迄温度を昇温量としての温度上昇幅だけ上昇させることができる、すなわち昇温できる熱量を得られるように設計すれば、真冬であっても第二種ヒ−トポンプを停止することなく運転を継続することができる。前述のように、ここで実際に調節すべき昇温量としての温度上昇幅は、凝縮器を出る冷却水の出口温度T2の上昇幅である。ただし、冷却水の入り口温度T1と出口温度T2と冷却水の水量及び第二種ヒートポンプの運転負荷には、相関関係があるので、相関を表す相関式を導入することにより調節すべき対象を入口温度T1の上昇幅としてもよい。
【0052】
以上の説明では、冷却水熱交換器51又は53で冷却水を加熱する熱源には、蒸発器20、再生器30で利用する熱源温水hを利用するものとしたが、それ以外のより低温の別の熱源、例えば、工場排温水等を使っても良い。こうすることにより、低温の排熱をより有効に利用することができる。
【0053】
熱源温水hは、蒸発器20、再生器30の順番で直列に流す場合で説明した。このようにすると蒸発器20での蒸発温度(蒸発圧力)を高くできるので、吸収器10で得られる温度を高くすることができる。ひいては、高い温度の被加熱媒体Wvを取り出すことができる。逆に、再生器30、蒸発器20の順番で直列に流してもよい。また、再生器30、蒸発器20に並列に流してもよい。冷却水熱交換器の熱源としては蒸発器出口、再生器出口いずれの熱源も利用できる。
【0054】
熱源温水hは、蒸発器20、再生器30の順番で直列に流した後、冷却水熱交換器51又は53で利用する実施の形態を説明した。このように構成すると、吸収ヒートポンプ1の熱源として十分に利用した後の熱源温水hを利用できるので熱源温水を有効に利用することができる。
図2のデューリング線図で説明したように、G1の温度は、86.6℃であり(熱源温水の温度はこれよりも高い)、冷却水を予熱する熱量が十分に残っているからである。一般には、蒸発器20及び/又は再生器30で利用した後の熱源温水hは、そのまま棄てられる。
【0055】
蒸発器20、再生器30で利用する熱源は、熱源温水であるとして説明したが、蒸気、排ガスを用いてもよい。また、ここでは、吸収ヒートポンプから蒸気を取り出すとしたが、液体を高温に加熱して取り出すものであっても良い。また、ここに記載した冷却水温度及び冷却水量制御方法は、冷却水を必要とする吸収冷凍機、吸収冷温水機及び第一種吸収ヒートポンプに適用しても良い。すなわち、特に断らない限り、吸収ヒートポンプは、吸収冷凍機も含む概念とする。
【0056】
冷却水昇温器として冷却水熱交換器51又は53を利用する場合で説明したが、熱源温水hを冷却水に混合する混合器、例えば冷却水管47に配設した三方弁(不図示)としてもよい。熱源温水によっては、汚染等により、冷却水に混合するのに適さない場合がある。冷却水熱交換器とすれば、そのような問題はない。冷却水の混合器とするときは、熱交換器が不要となり、構造を単純に構成することができる。
冷却水昇温器として、熱源温水等、冷却水よりも温度の高い温水と冷却水とを混合する混合器を使う場合は、昇温量は混合前の冷却水の温度から混合後の混合冷却水の温度までの温度上昇幅として把握できる。
【0057】
第一の所定の温度THは、典型的には35℃(THLは34℃、THHは35℃)であるが、THを起動時の所定の温度(許容最低温度)TL(典型的には15℃)と同じ温度、あるいはそれに極力近い温度、例えば20℃としてもよい。このときは、冷却水の供給温度が低下しても、冷却水出口温度が20℃に低下するまでは、冷却水の流量を絞ることなく、また冷却水を予熱することもなく運転する。濃溶液Saの濃度が高くなり、ヒートポンプサイクルがデューリング線図上で結晶線に近くなっても溶液Sが結晶しなければよいからである。このときは、熱源温水hのエネルギーをできるだけ多く利用することができる。但し第一の所定の温度を高めに設定すれば、より安全な運転を継続することができる。