(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
硬質な連結部材(3)と、指で把持する軟質な板状の把持部材(2)と、前記連結部材(3)との協同により前記把持部材(2)をその厚み方向への移動を規制すると共に前記連結部材(3)に固定する硬質な固定部材(4)とを備え、
前記固定部材(4)は、前記把持部材(2)の厚み方向の一面側に対向する第1対向部(41)を備え、
前記連結部材(3)は、長さ方向の一方にはスライダー胴体(13a)に連結する連結部(31)を備えると共に、長さ方向の他方には前記把持部材(2)の厚み方向の他面側に対向する第2対向部(35)を備え、
前記固定部材(4)の前記第1対向部(41)と前記連結部材(3)の前記第2対向部(35)のうち一方には前記把持部材(2)を貫通するまで突出する雄部(5)が形成され、他方には前記雄部(5)の先部を収容して連結する雌部(6)が形成されることを特徴とするスライドファスナーの引手。
前記連結部材(3)は、把持部材側の面について、前記連結部(31)よりも前記第2対向部(35)を窪ませて形成してあることを特徴とする請求項1記載のスライドファスナーの引手。
前記長さ方向に関して、前記固定部材(4)の前記第1対向部(41)の周縁は、前記連結部材(3)の前記第2対向部(35)の周縁と同じ位置かそれよりも内側に配置されていることを特徴とする請求項2記載のスライドファスナーの引手。
前記連結部材(3)は、前記第2対向部(35)における前記長さ方向の他端側を円弧状に膨らむ形状としてあることを特徴とする請求項1〜3のうち何れかに記載のスライドファスナーの引手。
前記雌部(6)は、前記雄部(5)の先部がかしめられる貫通穴部であり、その深さ方向の把持部材側には、前記把持部材(2)から離れるにつれて小径となる縮径部(61)を備えると共に、その深さ方向の反把持部材側には、前記縮径部(61)の最小径部分よりも大径の拡径部(62)を備えることを特徴とする請求項1〜4のうち何れかに記載のスライドファスナーの引手。
前記固定部材(4)の前記第1対向部(41)と前記連結部材(3)の前記第2対向部(35)との少なくとも一方に、前記把持部材(2)を押圧する複数の突部(71)から構成される突部群(7)を備え、
前記突部群(7)は、前記雄部(5)を中心とする円周方向に間隔をあけて前記突部(71)を配置したものであることを特徴とする請求項1〜5のうち何れかに記載のスライドファスナーの引手。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1の引手は、把持部材を連結部材に取り付ける為に、止具、かしめ鋲という2つの部品を連結部材の他に必要とするものであり、複数の部品からなる引手の一体性を向上させるには、把持部材を連結部材に取り付ける為に必要な部品数を現状よりも少なくすることが望ましい。しかも把持部材は、連結部材に取り付ける為に連結部材の孔を必須とするものであり、その孔の周囲を形成する部分から、ぶら下がったような形で支持されるため、引手の外観は、把持部材と連結部材との一体性に乏しいものとなる。また連結部材に対して連結する為に把持部材はU字状に折り返す構造であるため、側面から見れば引手の外観は、この折り返し部分を含む形となっていることも、引手の一体性を弱めるものとなっている。
なお把持部材は折り返して二枚に重ね合わせた部分をその厚み方向の両側から挟まれるので、この挟まれた部分を含む全体の厚みが厚くなりがちで、引手を薄くすることによる外観の向上を図りづらいものであった。
【0006】
さらに把持部材は、一対のファスナーストリンガーを開閉する毎に連結部材の孔の周囲を形成する部分に擦れて摩耗するため、最終的には引きちぎれることになる。より詳しく言えば、把持部材を引っ張ると、把持部材の折り返し部分の内面のみが連結部の孔の内面に円弧線状に接触して摩耗することになる。従って把持部材は、できるだけ摩耗しづらいように、連結部材に対して取り付けられていることが望ましい。
【0007】
本発明は上記実情を考慮して創作されたものであり、その目的は、複数の部品からなる引手の一体性を少なくとも向上できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスライドファスナーの引手は、硬質な連結部材と、指で把持する軟質な板状の把持部材と、連結部材との協同により把持部材をその厚み方向への移動を規制すると共に連結部材に固定する硬質な固定部材とを備えるものとする。そして固定部材は、把持部材の厚み方向の一面側に対向する第1対向部を備えるものとする。また連結部材は、長さ方向の一方にはスライダー胴体に連結する連結部を備えると共に、長さ方向の他方には把持部材の厚み方向の他面側に対向する第2対向部を備えるものとする。その上で固定部材の第1対向部と連結部材の第2対向部のうち一方には把持部材を貫通するまで突出する雄部が形成され、他方には前記雄部の先部を収容して連結する雌部が形成されるものとする。
【0009】
固定部材と連結部材との協同により把持部材をその厚み方向への移動を規制する構成としては、固定部材の第1対向部と連結部材の第2対向部との間に隙間を介して把持部材をその厚み方向に挟む構成の他、固定部材の第1対向部と連結部材の第2対向部との間に把持部材をその厚み方向に移動不能に挟む構成がある。
【0010】
また連結部材は、把持部材側の面について連結部と第2対向部とが面一であるか否かは問わないが、把持部材を固定する部分の厚みを薄くすることによる外観の向上を図るには次のようにすることが望ましい。
すなわち、連結部材は、把持部材側の面について、連結部よりも第2対向部を窪ませて形成してあることである。
【0011】
さらに連結部材でいう前記長さ方向に関して、固定部材の第1対向部の周縁は、連結部材の第2対向部の周縁よりも内側に位置するか、外側に位置するかは問わない。但し前記したように把持部材を固定する部分の厚みを薄くする構成を採用したときに、前記長さ方向に関して固定部材の第1対向部の周縁が連結部の第2対向部の周縁よりも外側に位置する場合には固定部材の第1対向部の一部が連結部材の連結部に重なる構成もあり得ることになり、この構成のときには連結部材の連結部と固定部材の第1対向部の一部との重なり合いにより、引手の厚みが連結部材の連結部の部分において厚くならざるを得ないものとなる。そこで引手の厚みを連結部材の連結部の部分において薄くすることによる外観の向上を図るには、次のようにすることが望ましい。
すなわち、前記長さ方向に関して、固定部材の第1対向部の周縁は、連結部材の前記第2対向部の周縁と同じ位置かそれよりも内側に配置されていることである。
【0012】
また連結部材は、第2対向部における前記長さ方向の他端側の形状については問わないが、把持部材の摩耗による損傷をしづらくするには、次のようにすることが望ましい。
すなわち、連結部材は、第2対向部における前記長さ方向の他端側を円弧状に膨らむ形状としてあることである。
【0013】
さらに雌部は、雄部の先部を収容して連結する構成であれば良く、例えば貫通穴部であって、その貫通穴部の形状は一般的な円筒形(どの深さ位置においても内径が同一の円筒形)であってもよいが、この場合には雄部の中心と雌部の中心とが殆ど一致していなければ、雌部に雄部は入り難くなるし、雄部の抜け外れを防止するために雄部の先端部を貫通孔部よりも外側において貫通穴部よりも大径の膨大部とする必要があり、把持部材を固定する部分の厚みが厚くなり易い。このような事態を防ぐには次のようにすることが望ましい。
すなわち、雌部は、雄部の先部がかしめられる貫通穴部であり、その深さ方向の把持部材側には、把持部材から離れるにつれて小径となる縮径部を備えると共に、その深さ方向の反把持部材側には、縮径部の最小径部分よりも大径の拡径部を備えることである。
【0014】
また把持部材を押圧する面が、固定部材の第1対向部と連結部材の第2対向部にはそれぞれ備えられているが、これらの面は平面であるか否かを問わないものとする。ただし把持部材を挟む力をより強固なものにするには、次のようにすることが望ましい。
固定部材の第1対向部と連結部材の第2対向部との少なくとも一方に、把持部材を押圧する複数の突部から構成される突部群を備えるものとし、その上で突部群は、雄部を中心とする円周方向に間隔をあけて突部を配置したものとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の引手によれば、スライダー胴体に連結する連結部と、把持部材の厚み方向の一面側に対向する第2対向部とを1部品の連結部材としてあるので、軟質な把持部材を、硬質な連結部材と固定部材との2部品によって挟むように固定できる。つまり、把持部材を連結部材に取り付ける為に必要な部品は、固定部材だけとなり、部品数を従来までの2よりも少なくすることが可能となり、引手の一体性を向上できる。また把持部材を連結部材に取り付ける為に従来のような大きな孔を連結部材に必要としないことや、従来のようなU字状に折り返す必要がないこともあって、引手の一体性をより向上できる。
【0016】
また把持部材側の面について連結部材は、連結部よりも第2対向部を窪ませて形成してあれば、窪ませた分だけ第2対向部の厚みを薄くでき、把持部材を固定する部分の厚みを薄くすることができ、引手の外観を向上できる。
【0017】
さらに連結部材でいう長さ方向に関して、固定部材の第1対向部の周縁は、連結部材の第2対向部の周縁と同じかその内側に配置してあれば、引手全体の厚みを薄くすることができ、引手の外観を向上できる。
【0018】
また連結部材は、第2対向部における前記長さ方向の他端側を円弧状に膨らむ形状としてあれば、把持部材を指で摘まんで引手を操作したときに、把持部材が連結部材の円弧状の部分によって摩耗するのを抑制できる。
【0019】
また雄部の先部がかしめられる貫通穴部を雌部とし、その深さ方向の把持部材側には、把持部材から離れるにつれて小径となる縮径部を備えると共に、その深さ方向の反把持部材側には、縮径部の最小径部分よりも大径の拡径部を備えるものであれば、雄部が雌部に入りやすくなるので、取付作業が容易になり、しかも雄部の先部がかしめられると変形してその一部が雌部の拡径部に入り込むので、一般的な円筒形の貫通穴部に比べれば、把持部材を固定する部分の厚みを薄くできる。
【0020】
さらに第1及び第1対向部の少なくとも一方に、雄部を中心とする円周方向に間隔をあけて、把持部材を押圧する突部を突出してあれば、把持部材が強固に第1及び第2対向部に挟まれることになり、把持部材の取付強度が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1実施形態の引手1を適用したスライドファスナー11の一例は、
図1に示すように、前後に延長すると共に左右に並べる一対のファスナーストリンガー12,12と、一対のファスナーストリンガー12,12の対向する左右の側縁部に沿って前後に移動可能なスライダー13と、スライダー13の移動範囲の前方に隣接する位置においてスライダー13の前進限界位置を定める一対の止具14,14と、スライダー13の移動範囲の後方に隣接する位置においてスライダー13の移動範囲の後退限界位置を定める止具15とを備える。そしてスライダー13を前後方向に移動させることによって、一対のファスナーストリンガー12,12を開閉することができる。またスライダー13は、その移動範囲の前進限界位置、又は後退限界位置に達すると、前側又は後側の止具14,15に衝突する。以後の方向性を説明するに際して、前側とは、
図1の上側であって、スライダー13が一対のファスナーストリンガー12,12を閉じる方向であって、後側とは、
図1の下側であって、スライダー13が一対のファスナーストリンガー12,12を開く方向である。ちなみに前後方向のことをスライダー13の説明において長さ方向と称することもある。また、前後方向と直交し且つ一対のファスナーストリンガー12,12を並べる方向を左右方向(幅方向)、前後方向及び左右方向に直交する方向を上下方向(厚み方向)とする。左側とは、
図1の左側であって、右側とは、
図1の右側である。上側とは、
図1の紙面に対して直交する方向、すなわち前後方向及び左右方向に直交する方向のうち手前側であって、下側とは、
図1の紙面に対して直交する方向のうち奥側である。
【0023】
一対のファスナーストリンガー12,12は、前後に延長すると共に左右に平行に並べる一対のテープ12aと、一対のテープ12aにおける対向する左右の側縁部に沿って固定された一対のエレメント列12c,12cとを備えている。
【0024】
各テープ12aは、前後に長い帯状であって、その肉厚の方向は上下方向となる。また各テープ12aは、その左右の側縁部のうち一方に、他方よりも肉厚の厚い芯部12bを備えている。
【0025】
各エレメント列12cは、テープ12aの対向する側縁部に沿って前後に間隔をあけて配列された多数のエレメント12dによって形成される。本実施形態では多数のエレメント12dは、それぞれ独立しており、各エレメント12dは、芯部12bに対して固定されている。一対のファスナーストリンガー12,12を閉じる為にスライダー13を前方へ移動させると、一対のエレメント列12c,12cのエレメント12d同士が噛合し、スライダー13が前側の止具14に衝突することによって、スライダー13の更なる前方への移動が阻止される。また一対のファスナーストリンガー12,12を開く為にスライダー13を後方へ移動させると、一対のエレメント列12c,12cのエレメント12d同士が左右に分離し、スライダー13が後側の止具15に衝突することによって、スライダー13の更なる後方への移動が阻止される。
【0026】
前側の止具14は、各テープ12aの前端部に固定されており、より詳しくはエレメント列12cよりも前方に間隔をおいて固定されている。また前側の止具14は、エレメント12dよりも肉厚が厚いもので、スライダー13の前面に衝突するようになっている。
【0027】
後側の止具15は、2つのテープ12aの後端部に固定されており、より詳しくは双方のエレメント列12cよりも後方に間隔をおいて固定されている。また後側の止具15は、本実施形態では開離嵌挿具と称されるもので、2つのテープ12aのうち一方に固定された蝶棒15aと、他方に固定された箱15bとから構成される。
箱15bは、前後に延長する蝶棒15aの前部に対して平行に並べられる箱棒15cと、蝶棒15aの後部が挿入される蝶棒穴(図示略)を備える箱体15dとを備える。そして箱体15dの前面であって左右方向のうち前記一方向とは反対側の方向(図では左側)の部分には蝶棒穴(図示略)が形成され、同じく箱体15dの前面であって左右方向のうち前記一方向側の部分に箱棒15cが前方に突出する状態で接合されている。この箱15bがスライダー13の後面に衝突するようになっている。
【0028】
スライダー13は、一対のエレメント列12c,12cに係合すると共に前後に移動可能なスライダー胴体13aと、スライダー胴体13aに対して連結される引手1とを備える。スライダー胴体13aは、図示しないが、前後方向に貫通するエレメント通路(図示略)と、エレメント通路に連通すると共に左右に開口するテープ溝(図示略)が形成され、エレメント通路には一対のエレメント列12c,12cが通され、各テープ溝には対応する側のテープ12aが通される。またスライダー胴体13aにはその一部として引手取付部13bが設けられ、図示の例では引手取付部13bは、一対のエレメント12dの上方を案内する上翼板13cの上面から上方に突出するように設けられ、左右方向に貫通する貫通穴(図示略)が形成されている。そしてこの貫通穴に引手1の一部を挿通することにより、引手1はスライダー胴体13aに揺動可能に連結される。
【0029】
本発明の第1実施形態の引手1は
図1〜
図4に示すように、指で把持する軟質な把持部材2と、スライダー胴体13aに連結する連結部材3と、連結部材3との協同により把持部材2をその厚み方向への移動を移動不能に規制すると共に連結部材3に固定する固定部材4との3部品から構成される。
【0030】
把持部材2は、革、シリコン、エラストマー、デニム、フェルト等の軟質なものであり、把持部材2を摘まんでスライダー13を操作すると、一時的に変形するような柔軟性を有するものである。因みに一般的なスライダーの引手は、金属板等の硬質なものであり、金属板の引手を摘まんでスライダーを操作しても、その形状は変形しない硬いものである。また把持部材2は、板状であり、その一部に厚み方向に貫通して形成された貫通穴部21を備えている。より詳しく言えば図示の例では把持部材2は帯状であり、その帯の長さ方向の一端部(前後方向の前端部)に貫通穴部21を備えている。
【0031】
固定部材4は、金属製又は樹脂製の硬質のものであり、把持部材2に比べて遥かに硬く、いわゆる剛体である。固定部材4は、把持部材2の厚み方向の一面側(
図2での上面側)に対向する第1対向部41と、第1対向部41から把持部材2を貫通するまで突出する雄部5とを備えている。第1対向部41は板状、より詳しく言えば図示の例では円盤形状であり、その中央部から雄部5を突出している。雄部5の突出長は、把持部材2の厚み寸法よりも長いものとしてある。雄部5は、柱状であり、しかも先端部に向かって徐々に細くなる形状であり、第1対向部41に連続している部分から先部の後端に向かって緩やかな傾斜角度で徐々に細くなる円柱状の部分と、先部の後端から先端部に向かって急激な傾斜角度で徐々に細くなる円錐形の部分を備えている。
【0032】
連結部材3は、金属製又は樹脂製の硬質のものであり、把持部材2に比べて遥かに硬く、いわゆる剛体である。連結部材3は、引手取付部13bから離れるように前後方向に長さを有するものであり、この前後方向のことを長さ方向とも言う。連結部材3は、長さ方向の一方にはスライダー胴体13aに連結する連結部31を備え、長さ方向の他方には把持部材2の厚み方向の他面側(
図2での下面側)に対向する第2対向部35を備え、第2対向部35には雄部5の先部を収容して連結する雌部6を備えるものである。
また連結部材3は、把持部材側の面について、連結部31よりも第2対向部35を窪ませて形成してある。より詳しく言えば把持部材側の面について、連結部31は、第2対向部35から前方(長さ方向の一方)に向かうにつれて上方へ向かって急な傾斜角度で高くなってから緩やかな傾斜角度で低くなる形状になっており、第2対向部35は水平面になっている。このように把持部材側の面について連結部31には第2対向部35よりも高い部分を有していることから、把持部材側の面について、連結部材3は連結部31よりも第2対向部35を窪ませて形成してあると言える。一方連結部材3は、把持部材2とは反対側の面(反把持部材側の面)については略面一に形成してある。より詳しく言えば、反把持部材側の面について、第2対向部35は水平面になっており、連結部31は前方(長さ方向の一方)に向かうにつれて上方に向かってゆるやかに高くなる形状になっている。
連結部材3の厚みは、連結部31の厚みt1を第2対向部35の厚みt2よりも厚く形成してあり、ちなみに連結部31の厚みt1は、その前後方向(長さ方向)のうち最も厚みの厚い部分の寸法としても良いが、図示の例では引手取付部13bに挿通する部分、いわば前端部の厚みとしてある。また第2対向部35の厚みt2は、前後方向(長さ方向)の全域に亘って厚みが略均一であるので、最も厚い部分の寸法としてある。
【0033】
連結部31は、その厚み方向に貫通する貫通穴部32を備えている。より詳しく言えば連結部31の貫通穴部32は、連結部31の中央部から第2対向部35との境界に達するまでの範囲に形成されており、それ故、連結部31はU字状に形成されている。なお連結部31は、U字状の両端部を、その先端(第2対向部35)へ向かって徐々に肉厚が薄くなるように把持部材側の面を傾斜面に形成してある。
【0034】
第2対向部35は、板状であって、その前後方向(長さ方向)の全長を把持部材2よりも短いものとしてある。また第2対向部35は、把持部材側から視てその中央部に雌部6が形成されている。この雌部6の為、第2対向部35は環状に形成されている。より詳しく言えば、第2対向部35は、略円環状であって、連結部31の左右幅よりも大きな直径の円の左右を前後方向に平行な直線で切除したような外形である。よって第2対向部35の後部は、円弧状に膨らむ形状となる。
【0035】
雌部6は、第2対向部35の内周部でもあり、厚み方向に通じる柱状の空間部63の周囲を包囲する円筒状の部分である。雌部6は、その深さ方向の把持部材2側の縮径部61と、その深さ方向の反把持部材側の拡径部62とから構成される。縮径部61は、把持部材2から離れるにつれて徐々に内径が小径となるテーパー形状としてある。拡径部62は、縮径部61の最も小径部分(最も反把持部側の部分)よりも大径であり、図示の例では把持部材2から離れるにつれて徐々に内径が大きくなるテーパー形状とし、最も大径部分では縮径部61の最も大径部分(最も把持部材側の部分)よりも大径としてある。
【0036】
また前後方向(長さ方向)に関して、固定部材4の第1対向部41の寸法S2は、連結部材3の第2対向部35の寸法S1以下(
図4では寸法S1未満)としてある。同様に左右方向に関して、固定部材4の第1対向部41の寸法は、連結部材3の第2対向部35の寸法以下(
図1では同じ寸法)としてある。そして雄部5と雌部6とがかしめられて嵌合した連結状態では、前後方向及び左右方向の何れに関しても、固定部材4の第1対向部41の周縁は、連結部材3の第2対向部35の周縁と同じ位置かそれよりも内側に配置されるものとしてある。なお、上下方向に関して、雄部5と雌部6とがかしめられて嵌合した連結状態においては、固定部材4の雄部5の先部が第2対向部35の雌部6に完全に収容されているので、この連結状態において引手1の厚みt3は、
図4(c)に示すように、固定部材4の上面から連結部材3の下面までの厚みであって、固定部材4の第1対向部41の厚みt4と、第2対向部35の厚みt2と、第1対向部41と第2対向部35の間に挟持された把持部材2の厚みとの合計値となる。またここでの第1対向部41の厚みt4は、前後方向(長さ方向)の全域に亘って厚みが略均一であるので、最も厚い部分の寸法としてある。そして引手1の厚みt3と、連結部31の厚みt1と、第2対向部35の厚みt2との関係は、t2<t1<t3となる。しかも固定部材4の第1対向部41の上面に対して連結部31の上面は段状に低くなっているので、第1対向部41の前端面に指がかかり易くなっている。
【0037】
前記した第1実施形態の引手1は、以下の手順で組み立てる。
図4(a)に示すように、連結部材3の真上に把持部材2、固定部材4を順次配置し、把持部材2の貫通穴部21の真上に連結部材3の雌部6と固定部材4の雄部5が配置されるように位置を合わせる。そして
図4(b)に示すように、把持部材2の貫通穴部21、及び連結部材3の第2対向部35の雌部6に雄部5を挿し込む。このとき雌部6と雄部5の位置が少しずれていても、雌部6の把持部材側には、把持部材2から離れるにつれて小径となる縮径部61を備えているので、雄部5が雌部6に入りやすくなるので、取付作業が容易になる。最後に
図4(c)に示すように、雄部5の先部をかしめ、雄部5の先部を雌部6の形状に一致するように変形させて連結部材3の第2対向部35の雌部6に固定する。これによって把持部材2は、前端部が固定部材4の第1対向部41と連結部材3の第2対向部35とに挟まれ、前端部以外の部分が後方に延びる状態となる。
【0038】
前記した第1実施形態の引手1は、次の(1)〜(6)の効果を有する。
(1)連結部31と第2対向部35とを1部品の連結部材3としてあるので、軟質な把持部材2を、硬質な連結部材3と固定部材4との2部品によって挟むように固定できる。つまり、把持部材2を連結部材3に取り付ける為に必要な部品は、固定部材4だけとなり、引手1の一体性を向上できる。また把持部材2を連結部材3に取り付ける為に従来のような大きな孔を連結部材3に必要としないことや、従来のようなU字状に折り返す必要がないこともあって、引手1の一体性をより向上できる。
(2)連結部材3の第2対向部35と固定部材4の第1対向部41との間に把持部材2をその厚み方向に移動不能に挟むので、把持部材2の厚み方向の両面を面状に挟むことになり、従来のような折り返し部分の内面が線状に接するものに比べれば、取付強度が向上するものと言える。しかも把持部材2は、雄部5が貫通した部分から破損しづらくなり、耐久性の高いものとなる。
(3)把持部材側の面について連結部材3は、連結部31よりも第2対向部35を窪ませて形成してあるので、窪ませた分だけ第2対向部35の厚みを薄くでき、把持部材2を固定する部分の厚みを薄くすることができ、引手1の外観を向上できる。
(4)前後方向(長さ方向)に関して、固定部材4の第1対向部41の周縁を、連結部材3の第2対向部35の周縁と同じかそれよりも内側に配置してあるので、引手1全体の厚みを薄くすることができ、引手1の外観を向上できる。
(5)連結部材3の第2対向部35における後端部を円弧状に膨らむ形状とし、この後端部に対応する固定部材4の第1対向部41の後部も円弧状に膨らむ形状であるので、把持部材2を指で摘まんで引手1を操作したときに、把持部材2が連結部材3の後端部や固定部材4の後部によって摩耗するのを抑制できる。
(6)雌部6の反把持部材側には、把持部材2から離れるにつれて大径となる拡径部62を備えるので、雄部5の先部がかしめられると雌部6から抜けにくくなるので、把持部材2の取付強度が向上する。しかも、かしめられた雄部5の先端は、雌部6の拡径部62に収容されている、言い換えれば連結部材3の反把持部材側の面(把持部材2とは反対側の面)から雄部5は突出していないので、固定部材4の上面及び連結部材3の第2対向部35の下面を把持して引手1を操作する場合でも、把持しやすい。
【0039】
本発明の第2実施形態の引手1は
図5及び
図6に示すように、固定部材4の第1対向部41の把持部材側の面に、把持部材2を押圧する突部71を突出していることについて、第1実施形態の引手1と相違している。より詳しく言えば、突部71は、雄部5を中心とする半径方向外側において円周方向に間隔をあけて配置されており、これら複数の突部71により、突部群7が構成される。また突部71は、その先端を水平面とし、先端の外周に向かって徐々に細くなる円柱状に形成されている。このようにすれば、把持部材2の一面に突部71が食い込むことになり、把持部材2を連結部材3の第2対向部35と固定部材4の第1対向部41とでより強固に挟んで固定することができる。
【0040】
また突部群7を構成する突部71の配置は、
図5、
図6に示した1つの円周方向に間隔をあけるものに限らず、適宜変更可能であり、例えば
図7に示すように、突部群7は、複数の突部71を同心円状に配置するものであっても良い。また突部71の形状も、
図5、
図6に示した先端が水平面であって、その先端に向かって徐々に細くなる円柱状に形成されたものに限らず、適宜変更可能であり、例えば
図7に示すように、先端を鋭利な形状とする角錐形状とするものであっても良い。さらに固定部材4の第1対向部41の把持部材側の面から突出するものは
図5、
図6に示したような突部群7のみに限らず、適宜変更可能であり、例えば
図7に示すように、突部群7の他に、第1対向部41の把持部材側の面における外周縁部にその全周に亘って連続する外リング8を突出するものであっても良い。因みに外リング8は、突部群7を構成する各突部71と同じ突出長となっている。
【0041】
また、本発明の第2実施形態の引手1は
図6に示すように、連結部材3を構成する雌部6の拡径部62の形状が、第1実施形態の引手1と相違している。より詳しく言えば、拡径部62は、縮径部61の最も大径部分(最も把持部材側の部分)よりも大径であり、上下方向に直線的に形成された円筒形状としてある。
【0042】
また本発明の第1、第2実施形態の引手1は、把持部材側の面について連結部材3の第2対向部35の前端を円弧状に形成し、第2対向部35と連結部31との境界線を円弧状にするものであったが、これに限らず、例えば
図8に示すように、把持部材側の面について連結部材3の第2対向部35の前端を左右方向に平行に形成し、第2対向部35と連結部31との境界線を連結部材3の左右方向に延びる直線状にするものであっても良い。
【0043】
さらに本発明の第1、第2実施形態の引手1は、連結部材3を把持部材側の面について連結部31よりも第2対向部35を窪ませた形状とし、その形状の一例として、把持部材側の面について、第2対向部35を水平面とし、U字状をなす連結部31を第2対向部35の前端から前方(長さ方向の一方)に向かうにつれて上方へ向かって急な傾斜角度で高くなってから緩やかな傾斜角度で低くなる形状にしているが、これに限らず、例えば
図9に示すように把持部材側の面について、連結部31と第2対向部35を何れも水平面とし、連結部31を第2対向部35に対して段差状に高くした形状としても良い。より詳しく言えば、
図9の例の場合に連結部31は、全体的に環状形状となるようにし、環状形状の連結部31の後辺をU字状(後辺の左右の中央が最も前方に位置し、後辺の左右の端が最も後方に位置するようなU字状)にすると共に、連結部31の後辺における左右の中央よりも前方に間隔をおいて貫通穴部32を位置するように形成してある。そして、把持部材側の面について連結部31のU字状の後辺に対して第2対向部35をその全面について段差状に低く形成したものとしてある。
【0044】
また本発明の第1、第2実施形態の引手1は、連結部材3を把持部材側の面について連結部31よりも第2対向部35を窪ませた形状とし、連結部31と第2対向部35との厚みを異ならせたものとしているが、これに限らず、例えば
図10に示すように、連結部材3を平らな板状とし、連結部31及び第2対向部35の厚みを同じ寸法とするものであっても良い。
【0045】
本発明の第3実施形態の引手1は
図11に示すように、固定部材4の形状、及び雌部6の形状、並びに雄部5が連結部材3の第2対向部35に形成され、雌部6が固定部材4の第1対向部41に形成されていることについて、第1実施形態の引手1と相違する。より詳しくは以下のとおりである。
【0046】
固定部材4は、円環形状の第1対向部41と、第1対向部41の内周部に形成される雌部6とを備えるものである。雌部6は、第1対向部41の内周部から反把持部材側へ突出する底のある円筒状である。より詳しく言えば、雌部6は、円筒状であると共にその一端部を第1対向部41の内周側に連続させる胴部65と、胴部65の他端部を塞ぐ円形の底部66とを備えている。胴部65は、その内周面が把持部材2から離隔するにつれて大径となるテーパーが付いた円筒面となっているものである。因みに、胴部65の一端部は、半径方向の肉厚を二重としたものであり、半径方向における外壁部65aと内壁部65bとを備えており、外壁部65aと内壁部65bとの連続部分が第1対向部41よりも把持部材側に突出する突部71となっている。なお外壁部65aの先端は、第1対向部41の内周側に連続している。但しここでの突部71の突出長さは、把持部材2の肉厚寸法以下であることが望ましい。
【0047】
連結部材3は、連結部31と、第2対向部35と、第2対向部35から把持部材側に突出する雄部5とを備えるものである。雄部5は、把持部材側から視て第2対向部35の中央部から突出している。この雄部5を把持部材2の貫通穴部21を挿通した上で雌部6にかしめることにより、把持部材2は連結部材3及び固定部材4に挟まれて固定され、引手1となる。
【0048】
本発明の第3実施形態の引手1は、連結部材3の第2対向部35から把持部材2側に突出するものは雄部5のみであったが、これに限らず、
図12に示すように、連結部材3の第2対向部35から把持部材側に雄部5だけでなく突部71を突出するものであっても良い。なお図では突部71は先端が鋭利な角錐状となっており、雄部5の周りを囲むように複数突出している。
【0049】
なお本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、各実施形態では連結部材3の第2対向部35と固定部材4の第1対向部41との間に把持部材2を挟持し、把持部材2をその厚み方向に移動不能に規制する構成であったが、これに限らず、連結部材3の第2対向部35と固定部材4の第1対向部41との間に把持部材2を隙間を介して挟むようにし、把持部材2の貫通穴部21に挿通した雄部5に沿って把持部材2をその厚み方向に隙間の分だけ移動可能とし、把持部材2の両側に位置する第2対向部35と第1対向部41で把持部材2の厚み方向への移動範囲を規制する構成であっても良い。なお把持部材2は、前後方向に延長する帯状であったが、前後方向に延びる部分を有していれば、左右方向に広がる部分を有していても良く、円形等の他形状であっても良い。