【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、作業者が装着する安全帯のフックを係止して保持する被係止部に設けたコイルと、このコイルに接続されてその電気的特性の変化によってコイルを設けた被係止部へのフックの係止状態を判定する係止判定回路と、係止判定回路から得られるフック係止状態の判定信号を用いてフックの係止状態を周囲から視認できるように表示させる表示部とを備え
、
前記係止判定回路は、コイルに交流電流を供給する交流電流供給回路と、交流電流を流した状態でコイルの両端に発生する電圧を測定し増幅すると共に積分値を求める増幅・積分回路と、この増幅・積分回路の出力のピーク値を得るピークフォロー回路と、このピークフォロー回路によって得られるピーク値がフック係止に伴う透磁率上昇を示すときにフック係止状態を検知して前記判定信号を出力する検知回路とを備えることを特徴とする安全確認装置を提供する。(請求項1)
【0012】
前記被係止部にフックを係止していない状態では前記コイルはいわば空芯状態であるが、被係止部にフックを係止させた状態ではコイルに鉄芯に相当する高透磁率材料が挿入されるため、コイル内の透磁率が引き上げられて前記コイルのインダクタンスが増加する。従って、係止判定回路はこのコイルの電気的特性の変化(インダクタンスの増加)によってコイル内に高透磁率材料が存在することを判定できる。なお、コイルのインダクタンス測定は、例えば、ブリッジ回路を用いて測定するブリッジ法、共振現象を用いて測定する共振法、コイルに流れる電流と電圧の関係を用いて測定するI−V法などの種々の方法が考えられる。
【0013】
本発明における被係止部に設けたコイルは被係止部にフックを掛けたときにフックが確実にコイル内に入る位置であり、かつ、被係止部がフックに直接触れないようにコイルを構成する電線を保護できる位置に設けることが好ましい。つまり、被係止部が筒状の部材であれば、この筒内にコイルを挿入することが好ましく、断面U字状の溝を備えるものであればこの溝内にコイルを嵌入するものであることが好ましい。しかしながら、フックが直接コイルの電線に触れないように被係止部の下面に沿うように配置されるように設けたものであってもよい。
【0014】
また、安全帯のフック側に交流信号の発生回路と、この交流信号を用いて交流磁界を発生させる励磁コイルとを設けることにより、このフックを被係止部に係止させた状態では前記コイルに交流信号を発生させることも可能である。つまり、コイルに発生する交流信号源という電気的特性の変化を用いて、フックの係止状態をより確実に検出することも可能である。なお、これをコイルのインダクタンス測定と組み合わせて用いてもよい。
【0015】
何れの場合にも、フックの係止状態の判定には、コイルの電気的特性の変化が関係し、従来のように機械的に移動する可動片やリミットスイッチのような接点を設ける必要がない故に、可動片の歪みや汚れや錆などによる引っかかりが発生することがなく、その動作が安定する。加えて、フック係止状態の判定基準が作業者などにより容易には判別できないので、従来のようにビニールテープなどの他の物によって係止状態を擬似的に入力させて安全確認装置を欺くことが困難であり、それだけフックの係止状態を高い信頼性をもって判定できる。
【0016】
前記係止判定回路はフックを被係止部に係止していない状態におけるコイルの電気的特性と、フックを係止した状態におけるコイルの電気的特性の違いを用いてフックの係止状態を判定するものであり、この電気的特性の測定値を閾値と比較する比較回路と、比較結果を用いてフック係止を検知してこれ係止状態の判定信号として出力する検知回路と、この検知回路が判定信号を出力しないときの表示および判定信号を出力するときの表示を表示部に表示させるための出力回路とを備える。なお、コイルは複数設けることが可能であり、この場合、何れかのコイルの電気的特性がフックを係止した状態を示す状態であるときに、係止判定回路はフックの係止状態を判定することができる。
【0017】
前記表示部は係止判定回路がフック係止状態の判定信号を出力するときにフックの表示部にフックの係止状態を周囲から視認できるように表示させるので、作業者がフックを被係止部に係止して安全帯を正しく使用している状態であるかどうかを周囲から容易に確認することができる。表示部は作業者が視認できる位置である必要はなく、むしろ、作業者からは視認しにくい位置に配置されていることが好ましく、作業台の周囲(外壁面)、仮面の何れかを含む位置に配置されたものであることにより、作業者は安全確認装置の存在を意識することなく、本来行なうべき作業に意識を集中することができる。
【0018】
また表示部は液晶表示のようなものとして消費電力を削減することも可能であるが、警告状態を示す警告灯やパトライト(登録商標)などの光を用いた表示を行なうものであることが好ましい。加えて、表示部はフックの係止状態を検知できない時に危険を示す警告表示を行うことに加えて、フックの係止状態を検知するときに安全な状態であることを示す表示をするものであっても、逆に安全な係止状態であるときだけ発光させることにより、非係止状態を表示するものであってもよく、これによって周囲から安全な作業状態であることを示すことができる。
【0019】
前記係止判定回路は、コイルに交流電流を供給する交流電流供給回路と、交流電流を流した状態でコイルの両端に発生する電圧を測定し増幅すると共に積分値を求める増幅・積分回路と、この増幅・積分回路の出力のピーク値を得るピークフォロー回路と、このピークフォロー回路によって得られるピーク値がフック係止に伴う透磁率上昇を示すときにフック係止状態を検知して前記判定信号を出力する検知回路とを備える場合(請求
項1)には、簡潔な回路によってコイルのインダクダンス測定を的確に行なって、フックの係止状態を確実に判定することができる。
【0020】
前記被係止部は作業者を搭乗させた状態で昇降可能に形成された作業台に固定された環状体であり、前記表示部は作業台の外側から見える位置に配置され、フックが係止されていない状態で警告色で発光するLED光源を含む場合(請求
項6)には、作業台に搭乗する作業者が作業台に固定された被係止部に安全帯のフックを係止させていない状態ではLED光源は警告色(赤など)で発光するので、周囲にいる現場責任者などは、作業者が非安全作業を行なっていることを容易に確認でき、作業者に注意喚起することができる。また、作業者がフックを所定の被係止部に係止させた状態ではLED光源は警告色で発光しなくなる(例えば青で発光する)のでこれも容易に確認することができる。
【0021】
一方、LED光源が作業台の外側から見える位置に配置されているので、作業台に搭乗する作業者は、作業台に取付けられたLED光源が警告色を発光しているかどうかなど気にすることなく作業を行なうことができ、それだけ本来の作業に集中することができ、この面での安全性も確保できる。LED光源は例えばLED素子を複数並べて配置したLEDテープであり、LEDへの供給電流を調整してフックの係止状態を表示させるのに必要十分な輝度となるようにして明るすぎたり、派手すぎたりしないように調整可能とすることが好ましい。また、その取付け位置は作業台の外壁面・下面の何れかを含むものであることが好ましい。
【0022】
前記被係止部は作業者を搭載させた状態で昇降可能に形成された作業台に固定された環状体であり、前記表示部は前記作業台を昇降支持する車両の視認性の高い部位に配置され、フックが係止されていない状態で警告色で発光するLED光源を含む場合(請求
項7)には、作業台に搭乗する作業者が作業台に固定された被係止部に安全帯のフックを係止させていない状態では作業者から離れた車両側の視認性の高い位置に配置されたLED光源が警告色(赤など)で発光するので、車両近辺の周囲にいる現場責任者などは、作業者が非安全作業を行なっていることを容易に確認でき、作業者に注意喚起することができる。また、作業者がフックを所定の被係止部に係止させた状態ではLED光源は警告色で発光しなくなる(例えば青で発光する)のでこれも容易に確認することができる。なお、前記フックの係止状態が判定できないときに作業者から離れた車両に警告音を発生させる警告音発生部を備えることも考えられる。この場合、警告音によって周囲にいる現場監督などに危険作業が行なわれていることを示すことができ、現場監督などからの伝令により、できるだけ早く状況を改善させることができる。
【0023】
フックを被係止部に係止した状態においてコイル内に位置するフックの部位に取付けられて高透磁率材料からなるカバー体を備える場合(請求項
2,3)には、フックの材質が高透磁率材料でない場合であっても、フックにカバー体を設けることにより、フックの係止状態においてカバー体がコイル内に位置するので、コイルの電気的特性が変化することにより、フックの係止状態を判定することができる。
【0024】
作業者が装着する安全帯のフックの内側と被係止部の間に配置されて、フックを被係止部に掛けた状態でフックの自重によって被係止部に当接するフックの内側にかかる力を感知するセンサを備え、前記係止判定回路は、前記コイルの電気的特性の変化によるフック係止状態の感知に加えて、センサに接続されてセンサがフックの自重以上の力を感知するときにこれをフック係止状態として判定するものである場合(請求項
4,5)には、係止判定回路が、センサがフックの自重以上の力を感知するときに、これをフック係止状態として判定するから、フックが被係止部に掛けられた時点で係止状態を判定でき、フックの係止状態を判定した状態で係止状態の判定信号を出力する。フック係止時にはフックの自重に加えてフックに取付けられるロープの重量およびロープにかかる引っ張り力が加わった力がフックの内側にかかることになるので、フックの自重以上の力をセンサが検知したときにフックの係止状態を確実に検知することができる。
【0025】
前記センサはフックの内側に沿うように配置されたものであることにより、フックを被係止部に係止した係止状態を確実に検知することができる。なお、この場合係止判定回路は作業台または車両側に固定して設けることが好ましく、フック側にセンサを設ける場合には係止判定回路とセンサの間は例えば信号線などで接続される。
【0026】
しかしながら、センサは被係止部の上面に配置されたものであってもよい。これにより、係止判定回路とセンサの電気的な接続を容易に行なうことができる。あるいは係止判定回路とセンサは無線で接続されることも考えられる。つまり、係止判定回路の一部をフック側に設け、フック係止の判定信号を無線送信することにより出力し、作業台に設けた受信部が判定信号を無線受信することにより入力する。このように構成した場合は、作業者はセンサと係止判定回路を信号線で接続する手間がなく、簡便であると共に、それだけ作業者の意識を本来の作業に集中させることができる。
【0027】
前記センサはフックの内側に沿うように配置された帯板状基材と、この帯板状基材の内側面に配置された圧力センサと、この圧力センサの内側に配置された弾性を有する帯状の圧力分散層とを備えるものであることが考えられる。つまり、フックを被係止部に係止させるときに圧力分散層の一点にかかった力をその弾性によって分散させて圧力センサに作用させることができる。圧力センサは帯板状基材の内側に配置されているので、前記分散した力を圧力センサによって確実に感知することができる。
【0028】
帯板状基材はフックの内側に沿うように配置してフックに固定するためにフックの側面を挟み込むように断面U字状に延設させた一対の挟持片を備えることが好ましく、フックを挟持するための高摩擦抵抗を有する材料(ゴム材など)によって形成されることが好ましいが、アクリル板材のように幾らかの剛性を備える合成樹脂によって形成してフックに接着するように取付けられていてもよい。
【0029】
前記圧力センサはフックの内側に配置された帯状基材の表面のほぼ全面を覆うように取付けられる帯状の形状であることが好ましく、この圧力センサは絶縁体上に櫛歯状の電極を互いに接することがないように、かつ、各櫛歯が交互に配置されるように向かい合って形成された一対の電極と、この電極の上面に配置された導電体層を備える感圧膜と、電極の櫛歯部分を避けて電極と感圧膜との間に挿入されるスペーサ層を備えるものであることより圧力を受けたときに両電極間の抵抗値が小さくなって圧力を感知することができる。また、前記圧力分散層はスペーサ層の間に位置する感圧膜の上面に配置されるものである。
【0030】
前記圧力分散層は一点に加わる力を分散して所定の幅においてスペーサ層を押圧するように幾らかの厚さと強度を有するものであり、前記所定の幅とは圧力センサが圧力を感知する最小の幅以上となるように成形することにより、一点だけに加わった力であっても圧力センサによって正しく感知することができる。
【0031】
前記センサはフックの内側に沿うように弾性層または隙間を介して配置されて両端部においてフックに固定された金属板と、この金属板に取付けられることによりその歪を測定する圧電素子とを備えるものであってもよい。この場合、フックを被係止部に係止させるときに金属板の一点にかかった力によっ
て金属板が歪み、この金属板の歪に伴って圧電素子の抵抗値が変化することにより、センサを被係止部に係止した状態を感知することができる。
【0032】
なお、金属板はフックの自重によって幾らか撓む程度の弾性を有するものであり、圧電素子を取付ける部分の金属板は他の部分に加えて歪みやすくなるように比較的肉薄に形成するか、弾性が低い金属によって形成することが好ましい。また、金属板とフックの間にフックの内側に沿うように配置された弾性を有する帯板状基材を配置して圧電素子を安定して取付けることが好ましい。