(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持体側または振動源側の一方に取り付けられる第1部材と、前記第1部材に対向する対向面を有し支持体側または振動源側の他方に取り付けられる第2部材と、ゴム状弾性体から構成されると共に前記第1部材および前記第2部材とを連結する防振基体とを備える防振装置において、
前記第1部材または前記第2部材の一方に取り付けられるストッパ部材と、
前記防振基体と一体に加硫成形されるゴム状弾性体から構成される被覆部と、を備え、
前記第1部材および前記第2部材は、互いに径方向寸法の異なる円筒状部材であり、
前記第2部材は、所定の間隔をあけて前記第1部材の径方向外側に配置されると共に、円筒状に形成される外筒と、前記外筒に外周面が圧接されると共に径方向に貫通する孔部が形成された中間筒と、を備え、
前記ストッパ部材は、ヤング率が、前記被覆部のヤング率より大きい値に設定されると共に、前記第2部材から前記第1部材へ向かって前記中間筒から径方向内側へ突出する本体部と、前記本体部と一体化し、前記孔部に係合されることで前記中間筒に対する軸方向および周方向の移動が制限される係合部と、を備え、
前記被覆部は、前記本体部の軸方向両端面および径方向内側の面を被覆して前記本体部に密着し、
前記本体部は前記被覆部と共に、前記第1部材に形成される当接部と干渉して前記第1部材と前記第2部材との所定量以上の相対変位を規制することを特徴とする防振装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、
図1から
図6を参照して第1実施の形態について説明する。まず、
図1から
図3を参照して第1実施の形態における防振装置1の概略構成について説明する。
図1は本発明の第1実施の形態における防振装置1の平面図であり、
図2は
図1のII−II線における防振装置1の軸方向断面図であり、
図3は
図2のIII−III線における防振装置1の軸直角方向断面図である。なお、矢印U−D,L−R,F−Bは、防振装置1が搭載される車体(図示せず)の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
【0015】
図1に示すように、防振装置1は、第1部材10と、第1部材10の周囲を取り囲む第2部材20と、それら第1部材10と第2部材20との間に介在すると共に弾性材料(ゴム状弾性体)から構成される防振基体30とを備え、エンジンと車体との振動伝達を抑えつつエンジンの相対変位を抑制し得るように構成される。本実施の形態では、車体側に第1部材10が、エンジン側に第2部材20が連結される。第1部材10は、所定の剛性を有する金属製等の円筒状部材であり、軸方向に貫通形成された貫通孔に挿通されるボルト等の軸状部材(図示せず)により車体側に取り付けられる。
【0016】
第2部材20は、所定の剛性を有する金属製等の円筒状部材であり、偏心位置に第1部材10を内包すると共に、ブラケット等の連結部材(図示せず)によりエンジン側に取り付けられる。本実施の形態では、第2部材20は、円筒状に形成される外筒21と、外筒21に外周側から圧接される中間筒22とを備えている。
図2に示すように、中間筒22は、軸方向の中心および周方向の一部に、径方向(厚さ方向)に貫通する孔部24が形成される。
図2及び
図3に示すように、孔部24は、側面視して略矩形状に内縁が形成される。
【0017】
防振基体30は、所定の防振性能を有するゴム状弾性体から構成される部位であり、第1部材10と第2部材20とを連結し、第1部材10に対して第2部材20を弾性支持する。防振基体30は、第1部材10の外周面11を周方向に亘って被覆するゴム膜状の内側膜部31、及び、第2部材20の内周面23を周方向に亘って被覆するゴム膜状の外側膜部32が一体に加硫成形される。内側膜部31は第1部材10に加硫接着され、外側膜部32は第2部材20に加硫接着される。これにより、中間筒22と第1部材10との間に防振基体30が介設される。
【0018】
被覆部33及びストッパ部34は、ゴム状弾性体から構成される部位であり、第1部材10を挟んで軸直角方向(矢印F−B方向)の両側に設けられる。本実施の形態では、被覆部33及びストッパ部34は、被覆部33及びストッパ部34の径方向内側と第1部材10との間隔をあけて第2部材20側に設けられる。また、防振装置1は、第1部材10及び第2部材20の軸方向(
図1紙面垂直方向)を車体(図示せず)の上下方向(矢印U−D方向)へ向けると共に、被覆部33を車体の前方(矢印F方向)、ストッパ部34を車体の後方(矢印B方向)へ向けて配置される。
【0019】
図2及び
図3に示すように、被覆部33はストッパ部材40を被覆するための部位である。被覆部33及びストッパ部34は、ゴム状弾性体から構成されると共に防振基体30、内側膜部31及び外側膜部32と一体に加硫成形される。ストッパ部材40及び被覆部33は、内側膜部31の内の被覆部33と対向する当接部31aと干渉して、第1部材10と第2部材20との相対変位を規制するための部位である。また、ストッパ部34は、内側膜部31の内のストッパ部34と対向する当接部31bと干渉して、第1部材10と第2部材20との相対変位を規制するための部位である。
【0020】
ストッパ部材40は、防振基体30、内側膜部31及び外側膜部32とは圧縮特性の異なる金属製、合成樹脂製、ゴム製等の部材から構成され、ヤング率が、被覆部33のヤング率と異なる値に設定される。防振装置1の要求特性に応じてストッパ部材40の材質を適宜選択できるので、被覆部33及びストッパ部材40が荷重を受けるときの防振装置1の静特性を適宜設定できる。よって、防振装置1の静特性設計の自由度を向上できる。
【0021】
ストッパ部材40は、中間筒22から径方向内側に向けて突出される本体部41と、本体部41の径方向外側に位置する係合部42とを備えている。本体部41は、被覆部33と共に、第1部材10と第2部材20との相対変位を規制するための部位であり、軸方向視して(
図3参照)扇形状に形成される。
【0022】
係合部42は、中間筒22に位置決め固定される部位であり、中間筒22の径方向に貫通形成された孔部24に係合される。
図3に示すように、係合部42の周方向長さは、本体部41の径方向内側の周方向長さより大きく設定され、係合部42の外周面は、曲率が、外筒21の内周面の曲率と同一に設定される。また、本体部41は、軸直角方向視して(
図2参照)径方向外側(矢印F方向)から径方向内側(矢印B方向)へ向かうにつれて軸方向長さが漸次小さくなるように設定される。
【0023】
被覆部33は、外側膜部32に連成されると共に、ストッパ部材40の軸方向両端面および径方向内側の面を被覆する。これにより、ストッパ部材40は、中間筒22から径方向内側に突出する本体部41が被覆部33に密着される。
【0024】
なお、本実施の形態では、ストッパ部材40は硬質ポリウレタン製の塊状体から構成され、ストッパ部材40(本体部41)のヤング率は、被覆部33のヤング率より大きい値に設定される。また、防振基体30及び被覆部33の動的ばね定数は、ストッパ部材40(本体部41)の動的ばね定数より小さい値に設定される。
【0025】
次に
図4を参照して、ストッパ部材40の中間筒22への固定構造について説明する。
図4は
図3のIVで示す部分を拡大して示す防振装置1の拡大図である。
図4に示すように、中間筒22は、孔部24の周方向両側の縁部25が、中間筒22の径方向寸法(厚さ)より少し薄肉に形成される。縁部25は、中間筒22の内面側が延設され、孔部24の軸方向に亘って設けられる。縁部25の外面25aと外筒21との間に、中間筒22の径方向寸法より狭い隙間が形成される。
【0026】
ストッパ部材40は、中間筒22の孔部24に係合する係合部42の周方向両側に、係合部42の軸方向に亘って挟持部43が延設される。挟持部43は、中間筒22と外筒21との間に挟持される部位である。挟持部43は、縁部25の周方向長さと略同一に設定されると共に、中間筒22の径方向寸法(厚さ)より薄肉に形成さる。挟持部43の径方向寸法(厚さ)は、中間筒22の縁部25の外面25aと外筒21の内面との隙間の大きさと略同一に設定されるので、挟持部43は、中間筒22の縁部25の外面25aと外筒21との間に嵌装される。挟持部43及び縁部25を厚さ方向に貫通する貫通孔26が、挟持部43及び縁部25に連穿され、ピンやボルト等の軸状部材50が貫通孔26に嵌挿される。
【0027】
次に
図5を参照して、本実施の形態における防振装置1の製造方法について説明する。まず、
図5に示すように、中間筒22の外周面側から中間筒22の孔部24にストッパ部材40の本体部41を挿入し、ストッパ部材40の挟持部43を、中間筒22の縁部25の外面25aに当接させる。次いで、貫通孔26(
図4)に軸状部材50が嵌装され、中間筒22にストッパ部材40が固定される。
【0028】
次に、第1部材10及び中間筒22を成形型(図示せず)に装着した後、内側膜部31及び外側膜部32を第1部材10及び第2部材20に加硫接着させつつ、防振基体30、内側膜部31、外側膜部32、被覆部33及びストッパ部34を一体に加硫成形する。ストッパ部材40の本体部41は、中間筒22の径方向内側に突出されているので、被覆部33に覆われる。これにより、第1部材10及び中間筒22が一体化した成形体が得られる。成形型(図示せず)から成形体を取り出した後、成形体の中間筒22を外筒21に圧入して、防振装置1が得られる。
【0029】
次に
図6を参照して、ストッパ部材40及び被覆部33の軸直角方向(矢印F−B方向)の静ばね特性について説明する。
図6は、例えば自動車の加速運転時にストッパ部材40及び被覆部33が作動する前後の静ばねの変化を連続的に示した荷重−変位曲線である。
【0030】
図6に示す比較例1は、ストッパ部材40及び被覆部33が設けられていない以外は、本実施の形態における防振装置1と同一に構成された防振装置の荷重−変位曲線である。比較例1における防振装置によれば、第1部材10(内側膜部31)と第2部材20(外側膜部32)とが干渉するまでは、防振基体30による柔らかいばね特性が得られる。第1部材10と第2部材20とが干渉した後は、曲線の傾きが急激に立ち上がる非線形の荷重−変位曲線を有している。比較例1における防振装置によれば、ストッパ部材40及び被覆部33が設けられていないので、防振基体30の変形量が大きくなり、防振基体30の耐久性が低下する。
【0031】
比較例2は、ストッパ部材40及び被覆部33に代えて、ゴム状弾性体から構成されるストッパ部を設けた以外は、本実施の形態における防振装置1と同一に構成された防振装置の荷重−変位曲線である。比較例2における防振装置によれば、第1部材10(内側膜部31)とストッパ部とが干渉するまでは、防振基体30による柔らかいばね特性が得られる。第1部材10とストッパ部とが干渉した後は、ストッパ部が圧縮されることで剛性が次第に高くなる。しかし、第2部材20に対する第1部材10の最終的な変位量は、ストッパ部の圧縮量に依存して、比較例1における防振装置に近づく。そのため、防振基体30の変形量が大きくなり、防振基体30の耐久性が低下する。
【0032】
実施例は、防振装置1の荷重−変位曲線である。実施例における防振装置1によれば、第1部材10(内側膜部31)と被覆部33とが干渉するまでは、動的ばね定数の小さい防振基体30による防振効果を得ることができる。第1部材10と被覆部33とが干渉した後は、被覆部33が圧縮される。被覆部33によって、被覆部33に第1部材10が衝突したときの衝撃を緩和して、ショックの発生を防止できる。
【0033】
被覆部33が圧縮されると次第に剛性が高くなるが、ストッパ部材40より動的ばね定数の小さい被覆部33により、振動(例えばエンジンが発する比較的高周波の振動など)が被覆部33及びストッパ部材40を介して車体側に伝達されることが抑制される。その結果、車室内のこもり音を軽減できる。
【0034】
被覆部33が圧縮された後は、圧縮された被覆部33及びヤング率の大きいストッパ部材40が、第1部材10及び第2部材20に直列に介設されるので、第2部材20に対する第1部材10の変位が規制される。よって、被覆部33が荷重を受けるときの柔らかいばね特性と、被覆部33が圧縮した後のストッパ部材40による変位規制とを両立できる。
【0035】
なお、本実施の形態ではストッパ部材40は硬質ポリウレタン製なので、硬質ポリウレタンに特有の減衰性能を得ることができる。よって、被覆部33が圧縮した後も、ストッパ部材40による防振効果を得ることができる。
【0036】
また、防振装置1によれば、ストッパ部材40は、径方向に孔部24が貫通形成された中間筒22に本体部41が挿入され、係合部42が孔部24に係合されるので、中間筒22に対する軸方向および周方向の移動が制限される。よって、孔部24及び係合部42により、中間筒22に対してストッパ部材40を軸方向および周方向に位置決め固定できる。
【0037】
また、外筒21に中間筒22の外周面が圧接されるので、中間筒22に貫通形成された孔部24を外筒21で塞ぐことができる。その結果、外筒21によりストッパ部材40の係合部42が覆われる。一方、被覆部33によりストッパ部材40の本体部41の表面が覆われるので、被覆部33及び外筒21によってストッパ部材40が覆われる。硬質ポリウレタン製のストッパ部材40は加水分解するおそれがあるが、被覆部33及び外筒21によってストッパ部材40が覆われるので、加水分解によるストッパ部材40の劣化を抑制できる。
【0038】
なお、ストッパ部材40は、挟持部43が係合部42の周方向に延設され、挟持部43が中間筒22の縁部25の外面25aに被さり、挟持部43が縁部25の外面25a(中間筒22の外周面側)に軸状部材50で固定される。ストッパ部材40の径方向内側への移動が、縁部25及び挟持部43によって規制されるので、ストッパ部材40が径方向内側へ移動することが防止される。さらに、軸状部材50によって中間筒22にストッパ部材40が固定されるので、防振装置1の製造工程において、中間筒22の外周面に外筒21を圧接する前に、ストッパ部材40が中間筒22から外れることを防止できる
中間筒22が外筒21に圧接された後、ストッパ部材40は、外筒21及び中間筒22に挟持部43が挟持される。よって、挟持部43によりストッパ部材40の径方向への移動を規制することができ、中間筒22に対してストッパ部材40を径方向に位置決め固定できる。
【0039】
なお、中間筒22の径方向寸法(厚さ)より薄肉に形成された縁部25が、孔部24の周方向両側に形成されているので、孔部24の軸方向両側に縁部25が形成される場合と比較して、薄肉の縁部25によって中間筒22の機械的強度が低下することを抑制できる。孔部24の軸方向両側の中間筒22の体積は、孔部24の周方向両側の中間筒22の体積より小さいので、孔部24の軸方向両側に薄肉の縁部25が形成されると、孔部24の軸方向両側の機械的強度が低下するおそれがあるからである。
【0040】
次に
図7を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、ストッパ部材40が軸状部材50(ストッパ部材40以外の部品)によって中間筒22に固定される場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、ストッパ部材以外の部品を使わずに、ストッパ部材140が中間筒122に係着される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図7は第2実施の形態における防振装置101の軸直角方向断面図である。
【0041】
図7に示すように防振装置101は、第1部材10と第2部材120との相対移動を規制するストッパ部材140が、第2部材120の中間筒122に取り付けられている。ストッパ部材140は、中間筒122から径方向内側に向けて突出される本体部141と、本体部141の径方向外側に位置し、中間筒122の径方向(厚さ方向)に貫通形成された孔部124に嵌挿される係合部142とを備えている。
【0042】
本体部141は、被覆部33と共に、第1部材10と第2部材120との相対変位を規制するための部位であり、軸方向視して(
図7参照)扇形状に形成される。本体部141の径方向内側端面には、軸方向(
図7紙面垂直方向)に沿って突条状に形成される複数の凸起部144が、第1部材10に向かって凸設されている。なお、ストッパ部材140は硬質ポリウレタン製であり、本体部141のヤング率は、被覆部33のヤング率より大きい値に設定される。
【0043】
次に
図8を参照して、ストッパ部材140の中間筒122への固定構造について説明する。
図8は
図7のVIIIで示す部分を拡大して示す防振装置101の拡大図である。
図8に示すように、中間筒122は、孔部124の周方向両側の縁部125が、径方向外側から径方向内側に向かって孔部124の周方向寸法(幅)が漸次小さくなるように(縁部125の径方向寸法(厚さ)が漸次小さくなるように)、先細り状に形成される。縁部125は、孔部124の軸方向に亘って連続して設けられ、縁部125の外面125aが傾斜面状に形成される。その結果、外筒21の内面と縁部125の外面125aとの間に、径方向外側から径方向内側に向かって幅狭となる隙間が、孔部124の軸方向に亘って形成される。
【0044】
ストッパ部材140は、中間筒122の孔部124に係合する係合部142の周方向両側に、係合部142の軸方向に亘って連続する挟持部143が延設される。挟持部143は、中間筒122と外筒21との間に挟持される部位である。挟持部143は、縁部125の周方向長さと略同一の周方向長さに設定されると共に、径方向内側から径方向外側に向かって漸次薄肉となる先細り状に形成される。挟持部143の径方向寸法(厚さ)は、中間筒122の縁部125の外面125aと外筒21の内面との隙間の大きさと略同一に設定されるので、挟持部143は、中間筒122の縁部125の外面125aと外筒21との間に挟持される。
【0045】
ストッパ部材140は、挟持部143の径方向内側の本体部141の周方向両側に、周方向に向かって突出する係止凸部145が凸設される。係止凸部145は、本体部141の軸方向に沿って断続的に複数箇所に設けられる。係止凸部145は、中間筒122に貫通形成された孔部124にストッパ部材140を装着するときに用いられる部位であり、本体部141からの突出長さが、孔部124の周方向長さより係止凸部145同士を結んだ周方向長さが大きくなるように設定される。これにより、中間筒122の径方向外側から孔部124にストッパ部材140を装着する場合、縁部125に対して径方向内側に係止凸部145が位置する(縁部125を係止凸部145が乗り越える)までストッパ部材140を押し込むことで、縁部125を挟んで径方向両側に係止凸部145及び挟持部143が位置される。その結果、ストッパ部材140が中間筒122に対して径方向に移動できなくなる。また、孔部124に係合部142が嵌挿されることで、ストッパ部材140が中間筒122に対して周方向および軸方向に移動できなくなる。これによりストッパ部材140が中間筒125に固定される。
【0046】
本実施の形態における防振装置101の製造方法は、第1実施の形態における防振装置1の製造方法と同様なので説明を省略する。なお、ストッパ部材140は、孔部124に押し込まれることで、挟持部143及び係止凸部145によって中間筒122に固定されるので、第1実施の形態における防振装置1のような軸状部材50(ストッパ部材140を固定するための部品)を不要にできる。これにより、中間筒122にストッパ部材140を固定するための作業工数および部品点数を削減できる。
【0047】
また、ストッパ部材140の本体部141は、径方向内側端面に、当接部31aへ向かう凸起部144が軸方向(
図7紙面垂直方向)に沿う突条状に凸設されている。第1部材10及び第2部材20が相対移動して第1部材10がストッパ部材140と干渉するときには、ストッパ部材140は、凸起部144の先端を起点として変形が開始される。そのため、被覆部33よりヤング率の大きいストッパ部材140による静ばね特性を緩やかに上昇させることができる。その結果、ストッパ部材140が作動を開始する(変形を開始する)ときのフラツキを抑制することができ、ストッパ部材140を確実に作動できる。
【0048】
次に
図9を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態および第2実施の形態では、中間筒22,122と外筒21との間にストッパ部材40,140の挟持部43,143が挟持されることで、第2部材20,120にストッパ部材40,140が固定される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、中間筒222に形成された孔部224にストッパ部材240の係合部242が圧入されることで、第2部材220にストッパ部材240が固定される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図9は第3実施の形態における防振装置201の軸方向断面図である。
【0049】
図9に示すように防振装置201は、第1部材10と第2部材220との相対移動を規制するストッパ部材240が、第2部材220の中間筒222に取り付けられている。ストッパ部材240は、中間筒222から径方向内側に向けて突出される本体部241と、本体部241の径方向外側に位置し、中間筒222の径方向(厚さ方向)に貫通形成された孔部224に嵌入される係合部242とを備えている。
【0050】
本体部241は、被覆部33と共に、第1部材10と第2部材220との相対変位を規制するための部位であり、軸直角方向視して(
図9参照)台形状に形成される。なお、ストッパ部材240は硬質ポリウレタン製であり、本体部241のヤング率は、被覆部33のヤング率より大きい値に設定される。
【0051】
次に
図10を参照して、ストッパ部材240の中間筒222への固定構造について説明する。
図10は
図9のXで示す部分を拡大して示す防振装置201の拡大図である。
図10に示すようにストッパ部材240は、中間筒222の孔部224に係合する係合部242の径方向内側の本体部241に、軸方向(矢印U−D方向)へ向かって突出する係止凸部243が凸設される。係止凸部243は、孔部224に係合部242を嵌入するときに、係合部242の嵌入深さを制限するための部位であり、本体部241からの突出長さが、孔部224の軸方向長さより係止凸部243同士を結んだ軸方向長さが大きくなるように設定される。これにより、中間筒222にストッパ部材240を装着する場合、中間筒222の内面に係止凸部243が突き当たるまで、中間筒222の径方向内側から係合部222を孔部224に押し込むことで、ストッパ部材240の中間筒222への取り付け作業が完了する。
【0052】
本実施の形態における防振装置201の製造は、まず、中間筒222の内周面側から中間筒222の孔部224にストッパ部材240の係合部242が圧入され、中間筒222にストッパ部材240が固定される。次に、第1部材10及び中間筒222を成形型(図示せず)に装着した後、内側膜部31及び外側膜部32を第1部材10及び第2部材220に加硫接着させつつ、防振基体30、内側膜部31、外側膜部32、被覆部33及びストッパ部34を一体に加硫成形する。ストッパ部材240の本体部241は、中間筒222の径方向内側に突出されているので、被覆部33に覆われる。これにより、第1部材10及び中間筒222が一体化した成形体が得られる。成形型(図示せず)から成形体を取り出した後、成形体の中間筒222を外筒21に圧入して、防振装置201が得られる。
【0053】
本実施の形態によれば、ストッパ部材240の係合部242が、中間筒222の径方向内側から孔部224に圧入されて、中間筒222に対してストッパ部材240が位置決め固定される。よって、第1実施の形態や第2実施の形態のように中間筒22,122に縁部25,125を設ける加工を施すことを不要にできる。また、係合部242の圧入深さを制限する係止凸部243がストッパ部材240に設けられているので、ストッパ部材240の中間筒222への固定作業を簡易かつ確実に行うことができる。
【0054】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値や形状(例えば各構成の数量や寸法、形状等)は一例であり、他の数値や形状を採用することは当然可能である。
【0055】
また、上記の各実施形態は、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部または複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部または複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形して構成するようにしても良い。例えば、第2実施の形態で説明した凸起部143を、第1実施の形態や第3実施の形態におけるストッパ部材40,240に設けることは可能である。
【0056】
上記各実施の形態では、防振装置1,101,201を自動車のエンジンマウントに適用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるのではなく、振動伝達を抑えつつ相対変位を規制することが要求される各種用途に適用される。このような用途としては、例えば、自動車のサスペンションブッシュが挙げられる。また、この防振装置1,101,201の2つをロッドで連結したトルクロッドに適用することは当然可能である。なお、自動車向けの用途だけでなく、各種産業機械等に適用することは当然可能である。
【0057】
上記各実施の形態では、ストッパ部材40,140,240が第2部材20,120,220に設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1部材10にストッパ部材40,140,240及び被覆部33を設けることは当然可能である。ストッパ部材40,140,240及び被覆部33が第1部材10に設けられる場合も、第1部材10と第2部材20,12,220との相対変位を規制できるからである。
【0058】
上記各実施の形態では、第1部材10の外周面11に加硫接着されたゴム膜状の内側膜部31の一部を当接部31aとする場合について説明したが、必ずしも当接部にゴム膜は必要ではない。当接部は、第1部材10や第2部材20,12,220の表面であっても良い。
【0059】
上記各実施の形態では、第2部材20,120,220の中間筒22,122,222を外筒21に圧入する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、中間筒22,122,222の外径より内径の大きい外筒21を中間筒22,122,222に被せ、径方向に外筒21を圧縮して中間筒22,122,222の外周面を圧接することで、外筒21を中間筒22,122,222に固定することは当然可能である。
【0060】
上記各実施の形態では、第1部材10及び第2部材20の軸直角方向の相対移動を規制するストッパ部材40,140,240が設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1部材および第2部材の軸方向の相対移動を規制する防振装置に、ストッパ部材40,140,240を取り付けるようにすることは当然可能である。
【0061】
上記各実施の形態では、ストッパ部材40,140,240が硬質ポリウレタン製の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、被覆部33と圧縮特性の異なる部材であれば、ストッパ部材40,140,240を、硬質ポリウレタン以外の他の合成樹脂製、金属製、ゴム製等にすることは当然可能である。
【0062】
上記各実施の形態では、ストッパ部材40,140,240のヤング率が、被覆部33のヤング率より大きい値に設定される場合、ストッパ部材40,140,240の動的ばね定数が、被覆部33の動的ばね定数より大きい値に設定される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。これとは逆に、ストッパ部材40,140,240のヤング率が、被覆部33のヤング率より小さい値に設定されること、ストッパ部材40,140,240の動的ばね定数が、被覆部33の動的ばね定数より小さい値に設定されることは当然可能である。
【0063】
この場合、第1部材10と被覆部33とが干渉した後は、被覆部33を介してストッパ部材40,140,240が圧縮される。ストッパ部材40,140,240によって、被覆部33に第1部材10が衝突したときの衝撃を緩和して、ショックの発生を防止できる。
【0064】
ストッパ部材40,140,240が圧縮されると次第に剛性が高くなるが、被覆部33より動的ばね定数の小さいストッパ部材40,140,240により、振動(例えばエンジンが発する比較的高周波の振動など)がストッパ部材40,140,240及び被覆部33を介して車体側に伝達されることが抑制される。その結果、車室内のこもり音を軽減できる。
【0065】
ストッパ部材40,140,240が圧縮された後は、圧縮されたストッパ部材40,140,240及びヤング率の大きい被覆部33が、第1部材10及び第2部材20に直列に介設されるので、第2部材20に対する第1部材10の変位が規制される。よって、ストッパ部材40,140,240が荷重を受けるときの柔らかいばね特性と、ストッパ部材40,140,240が圧縮した後の被覆部33による変位規制とを両立できる。
【0066】
上記第1実施の形態では、軸状部材50を用いてストッパ部材40を中間筒22に固定する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ストッパ部材40の嵌合部42が孔部24に嵌入される大きさに形成されていれば、軸状部材50を使わずに、ストッパ部材40を中間筒22に固定することができる。
【0067】
上記第1実施の形態および第2実施の形態では、ストッパ部材40,140の挟持部43,143が、係合部42,142の周方向に延設される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、係合部42,142の軸方向に挟持部が延設されることは当然可能である。
【0068】
上記第1実施の形態および第2実施の形態では、ストッパ部材40,140の係合部42,142の外縁が、孔部24,124の内縁と略同一の大きさに形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。係合部42,142の外縁の大きさを、孔部24,124の内縁より小さめに設定することは当然可能である。孔部24,124内に係合部42,142が位置すれば、孔部24,124の範囲内で係合部42,142の移動が制限されるからである。また、上記第1実施の形態および第2実施の形態では、ストッパ部材40,140に挟持部43,143が設けられているので、挟持部43,143によってストッパ部材40,140の位置決め固定ができるからである。
【0069】
上記第2実施の形態では、係止凸部145が本体部141の周方向に凸設されるストッパ部材140について説明し、上記第3実施の形態では、係止凸部243が本体部241の軸方向に凸設されるストッパ部材240について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。係止凸部145を本体部141の軸方向に凸設したり、係止凸部243を本体部241の周方向に凸設したりすることは当然可能である。