(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述した従来の技術では、ゴム状弾性体から構成されるストッパ部が衝突して第1部材と第2部材との相対変位が規制されるときに、ストッパ部が擦れて異音が生じるという問題がある。
【0005】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、第1部材と第2部材との相対変位が規制されるときの異音の発生を抑制できる防振装置を提供することを目的としている。
【0006】
この目的を達成するために請求項1記載の防振装置によれば、支持体側または振動源側の一方に第1部材が取り付けられ、第1部材に対向する対向面を有
し第1部材の周囲を取り囲む円筒状の第2部材が支持体側または振動源側の他方に取り付けられる。ゴム状弾性体から構成される防振基体により第1部材および第2部材が連結される。
【0007】
防振基体と一体に加硫成形されるゴム状弾性体から構成されるストッパ部が、第1部材または第2部材の一方から第1部材または第2部材の他方へ向かって凸設される
。ストッパ部
は、自己潤滑性を有するゴム状弾性体から構成される潤滑部により被覆される。ストッパ部と当接部とが干渉して第1部材と第2部材との所定量以上の相対変位が規制されるときに、ストッパ部と当接部との間に潤滑部が介在するので、潤滑部の自己潤滑性によって、ストッパ部または当接部と潤滑部とが擦れるときに生じる異音を抑制できる効果がある。
ストッパ部を軸方向に貫通するすぐり部がストッパ部の軸方向端面に開口し、すぐり部が、潤滑部と一体に加硫成形され潤滑部に連成される充填部により充填される。すぐり部および充填部によって、ストッパ部から潤滑部を外れ難くできる効果がある。また、すぐり部の分だけストッパ部の体積が減少される一方、充填部の分だけ潤滑部の体積が増大されるので、ストッパ部および潤滑部がばね特性に寄与する割合を適宜設定できる効果がある。
ストッパ部は、ヤング率が、潤滑部および充填部のヤング率と異なる値に設定されている。ストッパ部と当接部とが干渉する前に、ストッパ部と当接部との間に潤滑部が介在するので、ストッパ部のヤング率と潤滑部のヤング率とを異ならせることにより、潤滑部やストッパ部が荷重を受けるときの防振装置の静特性を適宜設定できる効果がある。
【0009】
請求項
2記載の防振装置によれば、ストッパ部は、ヤング率が、潤滑部のヤング率より小さい値に設定されているので、潤滑部が荷重を受けるときに、潤滑部に被覆されたストッパ部の柔らかいばね特性を得ることができる。ストッパ部が変形した後は、ストッパ部よりヤング率が大きい潤滑部により変位が規制される。よって、請求項
1の効果に加え、ストッパ部が荷重を受けるときの柔らかいばね特性と、ストッパ部が変形した後の潤滑部による変位規制とを両立できる効果がある。
【0010】
請求項
3記載の防振装置によれば、ストッパ部および防振基体は、動的ばね定数が、潤滑部の動的ばね定数より小さい値に設定される。ストッパ部および潤滑部の非作動時には、動的ばね定数の小さい防振基体による防振効果を得ることができる。また、ストッパ部が変形を開始したときも、ストッパ部による防振効果を得ることができる。よって、請求項1
又は2の効果に加え、ストッパ部および潤滑部の非作動時、並びに、ストッパ部が荷重を受けるときの防振性能を高めることができる効果がある。
【0011】
請求項
4記載の防振装置によれば、潤滑部は、当接部へ向かって凸設される凸起部を備えているので、潤滑部が作動するときには、凸起部の先端を起点として変形が開始される。そのため、潤滑部による静ばね特性を緩やかに上昇させることができる。その結果、請求項1から
3のいずれかの効果に加え、潤滑部が作動を開始するときのフラツキを抑制することができ、潤滑部を確実に作動できる効果がある。
【0012】
請求項
5記載の防振装置によれば、ストッパ部は、軸方向端面に係合部が凸設または凹設され、係合部は潤滑部により被覆される。係合部によりストッパ部と潤滑部との接触面積を広げることができるので、請求項1から
4のいずれかの効果に加え、ストッパ部と潤滑部との密着強度を向上できる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、
図1から
図3を参照して第1実施の形態について説明する。
図1は本発明の第1実施の形態における防振装置1の平面図であり、
図2は
図1のII−II線における防振装置1の断面図であり、
図3は
図2のIII−III線における防振装置1の軸直角方向断面図である。なお、矢印U−D,L−R,F−Bは、防振装置1が搭載される車体(図示せず)の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
【0016】
図1に示すように、防振装置1は、第1部材10と、第1部材10の周囲を取り囲む第2部材20と、それら第1部材10と第2部材20との間に介在すると共に弾性材料(ゴム状弾性体)から構成される防振基体30とを備え、エンジンと車体との振動伝達を抑えつつエンジンの相対変位を抑制し得るように構成される。本実施の形態では、車体側に第1部材10が、エンジン側に第2部材20が連結される。第1部材10は、所定の剛性を有する金属製等の円筒状部材であり、軸方向に貫通形成された貫通孔に挿通されるボルト等の軸状部材(図示せず)により車体側に取り付けられる。
【0017】
第2部材20は、所定の剛性を有する金属製等の円筒状部材であり、偏心位置に第1部材10を内包すると共に、ブラケット等の連結部材(図示せず)によりエンジン側に取り付けられる。本実施の形態では、第2部材20は、円筒状に形成される外筒21と、外筒21に圧入される中間筒22とを備えている。中間筒22の内周面23及び第1部材10の外周面11に防振基体30がそれぞれ加硫接着され、中間筒22と第1部材10との間に防振基体30が介設される。
【0018】
防振基体30は、所定の防振性能を有するゴム状弾性体から構成される部位であり、第1部材10と第2部材20とを連結し、第1部材10に対して第2部材20を弾性支持する。防振基体30は、第1部材10の外周面11を周方向に亘って被覆するゴム膜状の内側膜部31、及び、第2部材20の内周面23を周方向に亘って被覆するゴム膜状の外側膜部32が一体に加硫成形される。
【0019】
第1潤滑部40及び第2潤滑部50は、表面が自己潤滑性を有するゴム状弾性体から構成される部位であり、第1部材10を挟んで軸直角方向(矢印F−B方向)の両側に設けられる。表面が自己潤滑性を有する第1潤滑部40及び第2潤滑部50を構成するゴム状弾性体としては、脂肪酸アミド等の潤滑剤がゴム状弾性体の表面にブリードして、表面の摩擦係数を低減して潤滑性を発揮するもの等が用いられる。
【0020】
本実施の形態では、第1潤滑部40及び第2潤滑部50は、第1潤滑部40及び第2潤滑部50の径方向内側と第1部材10との間隔をあけて第2部材20側に設けられる。また本実施の形態では、防振装置1は、第1部材10及び第2部材20の軸方向(
図1紙面垂直方向)を車体(図示せず)の上下方向(矢印U−D方向)へ向けると共に、第1潤滑部40を車体の前方(矢印F方向)、第2潤滑部50を車体の後方(矢印B方向)へ向けて配置される。
【0021】
図2及び
図3に示すように、第1潤滑部40は第1ストッパ部33を被覆し、第2潤滑部50は第2ストッパ部37を被覆する。第1ストッパ部33及び第2ストッパ部37は、ゴム状弾性体から構成されると共に防振基体30、内側膜部31及び外側膜部32と一体に加硫成形される。第1ストッパ部33及び第1潤滑部40は、内側膜部31の内の第1潤滑部40と対向する当接部31aと干渉して、第1部材10と第2部材20との相対変位を規制するための部位である。また、第2ストッパ部37及び第2潤滑部50は、内側膜部31の内の第2潤滑部50と対向する当接部31bと干渉して、第1部材10と第2部材20との相対変位を規制するための部位である。
【0022】
第1ストッパ部33は、軸方向視して(
図3参照)扇形状に形成される部位であり、外側膜部32に連成される径方向外側の周方向長さが、径方向内側の内面34の周方向長さより大きく設定される。また、第1ストッパ部33は、軸直角方向視して(
図2参照)径方向外側(矢印F方向)から径方向内側(矢印B方向)へ向かうにつれて軸方向長さが漸次小さくなるように設定される。そのため、第1ストッパ部33の軸方向端面は、径方向外側(矢印F方向)から径方向内側へ向かうにつれて漸次傾斜する傾斜面35が形成される。
【0023】
第1ストッパ部33は、軸方向(
図3紙面垂直方向)に貫通し、傾斜面35に軸方向端部が開口するすぐり部36が形成される。すぐり部36は、軸方向視における第1ストッパ部33の略中心に形成されると共に、傾斜面35の開口が軸方向視して円形状に形成される。
【0024】
第2ストッパ部37は、軸方向視して(
図3参照)扇形状に形成される部位であり、第1部材10を挟んで第1ストッパ部33の反対側に設けられる。第2ストッパ部37は、第1ストッパ部33と同様に、外側膜部32に連成される径方向外側の周方向長さが、径方向内側の内面38の周方向長さより大きく設定される。第2ストッパ部37は、径方向長さが、第1ストッパ部33の径方向長さより小さく設定される。また、第2ストッパ部37は、軸直角方向視して(
図2参照)径方向外側(矢印B方向)から径方向内側(矢印F方向)へ向かうにつれて軸方向長さが漸次小さくなるように設定される。そのため、第2ストッパ部37は、径方向外側(矢印B方向)から径方向内側(矢印F方向)へ向かうにつれて漸次傾斜する傾斜面39が軸方向端面に形成される。
【0025】
第1潤滑部40は、外側膜部32の一部、第1ストッパ部33の軸方向両端面および径方向内側の面を被覆する部位であり、径方向外側の面が外側膜部32の内面に接着され、径方向内側の面が内側膜部31と間隔をあけて設けられる。第1潤滑部40は、第1潤滑部40の径方向内側の面から第1ストッパ部33の内面34までの径方向厚さが、第1ストッパ部33の内面34から外側膜部32までの径方向厚さより小さく設定されている。また、第1潤滑部40は、軸方向端面が、第1部材10の軸線に対して略直交するように設定される。第1ストッパ部33は軸方向端面に傾斜面35が形成されているので、第1潤滑部40の軸方向端面が第1部材10の軸線に対して略直交することで、第1潤滑部40は、径方向外側から径方向内側に向かうにつれて、軸方向厚さ(第1潤滑部40の軸方向端面から傾斜面35までの厚さ)が漸次大きく設定される。
【0026】
第1潤滑部40は、内側膜部31と対向する径方向内側の面に、軸方向(矢印U−D方向、
図3紙面垂直方向)に沿って突条状に凸設される凸起部41が複数(本実施の形態では2つ)設けられている。また、第1潤滑部40は、第1ストッパ部33に貫通形成されるすぐり部36に充填される充填部42が連成される。
【0027】
第2潤滑部50は、外側膜部32の一部、第2ストッパ部37の軸方向両端面および径方向内側の面を被覆する部位であり、径方向外側の面が外側膜部32の内面に接着され、径方向内側の面が内側膜部31と間隔をあけて設けられる。第2潤滑部50は、軸方向端面が、第1部材10の軸線に対して略直交するように設定される。第2ストッパ部37は軸方向端面に傾斜面39が形成されているので、第2潤滑部50の軸方向端面が第1部材10の軸線に対して略直交することで、第2潤滑部50は、径方向外側から径方向内側に向かうにつれて、軸方向厚さ(第2潤滑部50の軸方向端面から傾斜面39までの厚さ)が漸次大きく設定される。
【0028】
なお、本実施の形態では、第1ストッパ部33及び第2ストッパ部37のヤング率は、第1潤滑部40及び第2潤滑部50のヤング率より小さい値に設定され、防振基体30、第1ストッパ部33及び第2ストッパ部37の動的ばね定数は、第1潤滑部40及び第2潤滑部50の動的ばね定数より小さい値に設定される。
【0029】
次に本実施の形態における防振装置1の製造方法について説明する。まず、第1部材10及び中間筒22を成形型(図示せず)に装着した後、内側膜部31及び外側膜部32を第1部材10及び第2部材20に加硫接着させつつ、防振基体30、内側膜部31、外側膜部32、第1ストッパ部33及び第2ストッパ部37を一体に加硫成形する。次いで、自己潤滑性を有するゴム状弾性体が得られるゴム組成物を用いて、第1潤滑部40、充填部42及び第2潤滑部50を加硫成形すると共に、第1潤滑部40、充填部42及び第2潤滑部50をそれぞれ第1ストッパ部33及び第2ストッパ部37に接着する。これにより、第1部材10及び中間筒22が一体化した成形体が得られる。成形型(図示せず)から成形体を取り出した後、成形体の中間筒22を外筒21に圧入して、防振装置1が得られる。
【0030】
次に
図4を参照して、第1ストッパ部33及び第1潤滑部40の軸直角方向(矢印F−B方向)の静ばね特性について説明する。
図4は、例えば自動車の加速運転時に第1ストッパ部33及び第1潤滑部40が作動する前後の静ばねの変化を連続的に示した荷重−変位曲線である。
【0031】
図4に示す比較例1は、第1ストッパ部33及び第1潤滑部40が設けられていない以外は、本実施の形態における防振装置1と同一に構成された防振装置の荷重−変位曲線である。比較例1における防振装置によれば、第1部材10(内側膜部31)と第2部材20(外側膜部32)とが干渉するまでは、防振基体30による柔らかいばね特性が得られる。第1部材10と第2部材20とが干渉した後は、曲線の傾きが急激に立ち上がる非線形の荷重−変位曲線を有している。比較例1における防振装置によれば、第1ストッパ部33及び第1潤滑部40が設けられていないので、防振基体30の変形量が大きくなり、防振基体30の耐久性が低下する。
【0032】
比較例2は、第1潤滑部40が設けられていない以外は、本実施の形態における防振装置1と同一に構成された防振装置の荷重−変位曲線である。比較例2における防振装置によれば、第1部材10(内側膜部31)と第1ストッパ部33とが干渉するまでは、防振基体30による柔らかいばね特性が得られる。第1部材10と第1ストッパ部33とが干渉した後は、第1ストッパ部33が圧縮されることで剛性が次第に高くなる。しかし、第2部材20に対する第1部材10の最終的な変位量は、第1ストッパ部33の圧縮量に依存して、比較例1における防振装置に近づく。そのため、防振基体30の変形量が大きくなり、防振基体30の耐久性が低下する。また、第1ストッパ部33と第1部材10(内側膜部31)とが擦れるときに異音が生じ易い。
【0033】
実施例は、防振装置1の荷重−変位曲線である。実施例における防振装置1によれば、第1部材10(内側膜部31)と第1潤滑部40とが干渉するまでは、動的ばね定数の小さい防振基体30による防振効果を得ることができる。第1部材10と第1潤滑部40とが干渉した後は、第1潤滑部40を介して第1ストッパ部33が圧縮される。第1ストッパ部33によって、第1潤滑部40に第1部材10が衝突したときの衝撃を緩和して、ショックの発生を防止できる。また、第1潤滑部40によって、第1潤滑部40と第1部材10(内側膜部31)とが擦れるときに生じる異音を抑制できる。
【0034】
第1ストッパ部33が圧縮されると次第に剛性が高くなるが、第1潤滑部40より動的ばね定数の小さい第1ストッパ部33により、振動(例えばエンジンが発する比較的高周波の振動など)が第1潤滑部40及び第1ストッパ部33を介して車体側に伝達されることが抑制される。その結果、車室内のこもり音を軽減できる。
【0035】
第1ストッパ部33が圧縮された後は、圧縮された第1ストッパ部33及びヤング率の大きい第1潤滑部40が、第1部材10及び第2部材20に直列に介設されるので、第2部材20に対する第1部材10の変位が規制される。よって、第1ストッパ部33が荷重を受けるときの柔らかいばね特性と、第1ストッパ部33が圧縮した後の第1潤滑部40による変位規制とを両立できる。
【0036】
なお、第1潤滑部40は、当接部31aへ向かう凸起部41が、軸方向(矢印U−D方向)に沿う突条状に径方向内側の面に凸設されている。第1潤滑部40が当接部31aへ当接するときには、凸起部41の先端を起点として変形が開始される。そのため、第1ストッパ部33よりヤング率の大きい第1潤滑部40による静ばね特性を緩やかに上昇させることができる。その結果、第1潤滑部40が作動を開始する(変形を開始する)ときのフラツキを抑制することができ、第1潤滑部40を確実に作動できる。
【0037】
ここで、第1潤滑部40は、第1ストッパ部33の傾斜面35に接着されると共に、径方向外側から径方向内側に向かうにつれて、軸方向厚さ(第1潤滑部40の軸方向端面から傾斜面35までの厚さ)が漸次大きく設定されている。また、第1潤滑部40は、第1潤滑部40の径方向内側の面から第1ストッパ部33の内面34までの径方向厚さが、第1ストッパ部33の内面34から外側膜部32までの径方向厚さより小さく設定されている。
【0038】
そのため、第1部材10と第2部材20とが軸直角方向(矢印F−B方向)へ相対変位して第1部材10が第1潤滑部40に押し付けられると、第1ストッパ部33を軸方向および径方向に圧縮変形させる荷重を第1ストッパ33の傾斜面35に作用させることができる。その結果、第1ストッパ部33を圧縮変形させ易くなるので、第1ストッパ部33の静ばね特性が十分に発揮される。
【0039】
なお、第1ストッパ部33は、第1ストッパ部33を軸方向に貫通する
すぐり部36が形成されており、その
すぐり部36に第1潤滑部40と同じ材質のゴム状弾性体から構成される充填部42が充填されている。その結果、第1ストッパ部33よりヤング率の大きな第1潤滑部40及び充填部42によって、第1部材10と第2部材20との変位規制効果を高めることができる。また、充填部42が第1ストッパ部33の軸方向に貫設されると共に第1潤滑部40に連成されているので、第1ストッパ部33から第1潤滑部40を脱落させ難くできる。
【0040】
次に
図5を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、第1ストッパ部33を軸方向に貫通するすぐり部36が形成され、そのすぐり部36に自己潤滑性を有するゴム状弾性体から構成される充填部42が充填される場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、すぐり部36に代えて、凸起からなる係合部102が第1ストッパ部33の軸方向端面に凸設される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図5は第2実施の形態における防振装置101の軸方向断面図である。
【0041】
図5に示すように防振装置101は、軸方向に沿って略半球状に凸設される係合部102が、第1ストッパ部33の軸方向両端面に第1ストッパ部33と一体に加硫成形されており、第1潤滑部40は、係合部102を被覆するように設けられている。本実施の形態では、係合部102は第1ストッパ部33の軸方向端面に1つずつ設けられている。係合部102により第1ストッパ部33と第1潤滑部40との接触面積を広げることができるので、第1ストッパ部33と第1潤滑部40との密着強度を向上できる。また、係合部102の分だけ、ヤング率の大きい第1潤滑部40の体積を減少させることができるので、第1潤滑部40の静ばね特性を緩和して、若干柔らかいばね特性を得ることができる。
【0042】
次に
図6を参照して第3実施の形態について説明する。第2実施の形態では、凸起からなる係合部102が第1ストッパ部33の軸方向端面に凸設される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、凹部からなる係合部202が第1ストッパ部33の軸方向端面に凹設される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図6は第3実施の形態における防振装置201の軸方向断面図である。
【0043】
図6に示すように防振装置201は、第1ストッパ部33の軸方向両端面に略半球状の係合部202が凹設されている。第1潤滑部40は、係合部202を被覆するように設けられている。本実施の形態では、係合部202は第1ストッパ部33の軸方向端面に1つずつ設けられている。係合部202により第1ストッパ部33と第1潤滑部40との接触面積を広げることができるので、第1ストッパ部33と第1潤滑部40との密着強度を向上できる。また、係合部202の分だけ、ヤング率の大きい第1潤滑部40の体積を増加させることができるので、第1潤滑部40による変位規制効果を若干高めることができる。
【0044】
次に
図7を参照して第4実施の形態について説明する。第1実施の形態から第3実施の形態では、第1ストッパ部40は、ヤング率が、第1潤滑部50のヤング率より小さい値に設定され、第1ストッパ部40及び防振基体30は、動的ばね定数が、第1潤滑部50の動的ばね定数より小さい値に設定される場合について説明した。これに対し第4実施の形態では、第1ストッパ部302は、ヤング率が、第1潤滑部304のヤング率より大きい値に設定され、第1ストッパ部302及び防振基体30は、動的ばね定数が、第1潤滑部304の動的ばね定数より小さい値に設定される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図7は第4実施の形態における防振装置301の軸直角方向断面図である。
【0045】
図7に示すように防振装置301は、防振基体30と一体に加硫成形される第1ストッパ部302と、その第1ストッパ部302を被覆する第1潤滑部304とを備えている。第1ストッパ部302は、当接部31aに向かって凸設される凸部303が、当接部31aとの対向面に軸方向(
図7紙面垂直方向)に延びる突条状に設けられている。本実施の形態では、2本の凸部303が第1ストッパ部302と一体に形成されており、凸部303は第1潤滑部304に覆われている。なお、第1ストッパ部302は、ヤング率が、第1潤滑部304のヤング率より大きい値に設定され、第1ストッパ部302及び防振基体30は、動的ばね定数が、第1潤滑部304の動的ばね定数より小さい値に設定されている。
【0046】
次に、第1ストッパ部302及び第1潤滑部304の軸直角方向(矢印F−B方向)の静ばね特性について説明する。例えば自動車の加速運転時に第1ストッパ部302及び第1潤滑部304が作動する場合には、第1部材10と第1潤滑部304とが干渉した後は、第1潤滑部304が荷重を受けることによる柔らかいばね特性を得ることができる。その結果、第1潤滑部304に第1部材10が衝突したときの衝撃を緩和して、ショックの発生を防止できる。また、第1潤滑部304の潤滑性によって第1部材10と第1潤滑部304とが擦れるときの異音の発生を抑制できる。
【0047】
第1潤滑部304が圧縮されることで剛性が次第に高くなるが、第1ストッパ部302より動的ばね定数の小さい第1潤滑部304により、振動(例えばエンジンが発する比較的高周波の振動など)が第1ストッパ部302及び第1潤滑部304を介して車体側に伝達されることが抑制される。その結果、車室内のこもり音を軽減できる。
【0048】
第1潤滑部304が圧縮されて第1ストッパ部302の変形が開始されるときには、凸部303の先端を起点として変形が開始される。そのため、第1潤滑部304よりヤング率の大きい第1ストッパ部302による静ばね特性を、緩やかに上昇させることができる。その結果、第1ストッパ部302が作動を開始する(変形を開始する)ときのフラツキを抑制することができ、第1ストッパ部302を確実に作動できる。
【0049】
第1ストッパ部302及び第1潤滑部304が圧縮された後は、圧縮された第1潤滑部304及びヤング率の大きい第1ストッパ部302が、第1部材10及び第2部材20に直列に介設されるので、第2部材20に対する第1部材10の変位が規制される。よって、第1潤滑部304が荷重を受けるときの柔らかいばね特性と、第1潤滑部304が圧縮した後の第1ストッパ部302による変位規制とを両立できる。
【0050】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値や形状(例えば各構成の数量や寸法、形状等)は一例であり、他の数値や形状を採用することは当然可能である。
【0051】
また、上記の各実施形態は、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部または複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部または複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形して構成するようにしても良い。例えば、第1実施の形態で説明した凸起部41を、第4実施の形態で説明した第1潤滑部304に設けることができる。また、第1実施の形態で説明したすぐり部36及び充填部42を、第4実施の形態で説明した第1ストッパ部302及び第1潤滑部304に設けることができる。また、第2実施の形態および第3実施の形態で説明した係合部102,202を、第4実施の形態で説明した第1ストッパ部302に設けることができる。
【0052】
上記各実施の形態では、防振装置1,101,201,301を自動車のエンジンマウントに適用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるのではなく、振動伝達を抑えつつ相対変位を規制することが要求される各種用途に適用される。このような用途としては、例えば、自動車のサスペンションブッシュが挙げられる。また、この防振装置1,101,201,301の2つをロッドで連結したトルクロッドに適用することは当然可能である。なお、自動車向けの用途だけでなく、各種産業機械等に適用することは当然可能である。
【0053】
上記各実施の形態では、第1ストッパ部33,302及び第2ストッパ部37が第2部材20に設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1部材10に第1ストッパ部33,302及び第2ストッパ部37を設けることは当然可能である。また、第1潤滑部40,304及び第2潤滑部50が第1ストッパ部33,302及び第2ストッパ部37を被覆する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1部材10側(当接部31a,31b)に潤滑部を設けることは当然可能である。第1部材10と第2部材20との変位が規制されるときに、潤滑部によって異音を抑制できるからである。
【0054】
上記各実施の形態では、第1部材10の外周面11に加硫接着されたゴム膜状の内側膜部31の一部を当接部31a,31bとする場合について説明したが、必ずしも当接部にゴム膜は必要ではない。当接部は、第1部材10や第2部材20の表面であっても良い。自己潤滑性を有する潤滑部は、ゴム状弾性体同士が擦れるときの異音だけでなく、金属製等の部材とゴム状弾性体とが擦れるときの異音も抑制できるからである。
【0055】
上記各実施の形態では、第2部材20の中間筒22を外筒21に圧入する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、中間筒22の外径より内径の大きい外筒21を中間筒22に被せ、径方向に外筒21を圧縮して中間筒22の外周面を圧接することで、外筒21を中間筒22に固定することは当然可能である。
【0056】
上記各実施の形態では、第1部材10及び第2部材20の軸直角方向の相対移動を規制する第1ストッパ部33,302(ストッパ部)が設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ストッパ部によって第1部材および第2部材の軸方向の相対移動を規制する防振装置に、自己潤滑性を有するゴム状弾性体から構成される潤滑部を設けるようにすることは当然可能である。